特許第6896144号(P6896144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896144
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】工具経路生成方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4097 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   G05B19/4097 B
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-504641(P2020-504641)
(86)(22)【出願日】2018年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2018009335
(87)【国際公開番号】WO2019171599
(87)【国際公開日】20190912
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭平
(72)【発明者】
【氏名】小野 孝二
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−048092(JP,A)
【文献】 特開平06−110523(JP,A)
【文献】 特開2000−084794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を加工するための工具経路を生成する工具経路生成方法において、
前記被加工物に対して、第1の基準平面を設定する工程と、
前記被加工物に対して、前記第1の基準平面に非平行な第2の基準平面を設定する工程と、
前記第1の基準平面及び前記第2の基準平面に基づいて、前記第1の基準平面と前記第2の基準平面との間に、互いに非平行な複数の第3の基準平面を補間する工程と、
前記複数の第3の基準平面の各々に対して、被加工物を加工するための部分工具経路を、当該第3の基準平面に基づいて生成する工程と、
前記複数の第3の基準平面の前記部分工具経路を順に接続することによって、工具経路を生成する工程と、
を備えることを特徴とした工具経路生成方法。
【請求項2】
工具が、前記工具経路をたどる工具基準点を含んでおり、
各部分工具経路は、対応する第3の基準平面内に前記工具基準点が位置するように、前記被加工物と前記工具との接触位置を算出することによって生成される、請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項3】
工具が、前記工具経路をたどる工具基準点を含んでおり、
各部分工具経路は、対応する第3の基準平面内に前記被加工物と前記工具との接触位置が位置するように、前記接触位置と前記工具基準点との間の距離分だけ前記被加工物の輪郭をオフセットさせることによって生成される、請求項1に記載の工具経路生成方法。
【請求項4】
前記第1の基準平面が、第1の傾きを有しており、
前記第2の基準平面が、第2の傾きを有しており、
前記第1の基準平面に対して、第1の基準点を設定する工程と、
前記第2の基準平面に対して、第2の基準点を設定する工程と、
を更に備え、
前記複数の第3の基準平面を補間する工程は、
前記複数の第3の基準平面が、前記第1の基準点及び前記第2の基準点の間に均等に補間された複数の第3の基準点を含むように、かつ、前記第1の傾き及び前記第2の傾きの間で均等に補間された複数の第3の傾きを有するように、前記複数の第3の基準平面を決定すること、
を含み、
前記工具経路を生成する工程は、
隣接する第3の基準平面の前記部分工具経路同士を接続することによって、螺旋状の工具経路を生成すること、
を含む、請求項1に記載の工具経路生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、工具と被加工物とを相対移動させて被加工物を加工する工作機械の工具経路の生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、与えられた加工プログラムに応じて加工を行う。工作機械がマシニングセンタの場合、加工プログラムは主軸により回転する工具を被加工物に対して移動させる経路である工具経路を通る動作をするように記述される。工具経路は、無数の経路が考えられるが、工具経路によって、加工の効率・精度は大きく変わる。また、被加工物の形状によって、工具経路に適・不適がある。そのため、被加工物の形状に応じた適切な工具経路を生成することが望まれる。よりよい工具経路を求めるため、CAM(Computer aided manufacturing)装置が用いられ、CAM装置は被加工物の形状から適切な工具経路を求め、加工条件を加味して加工プログラムを作成する。工具経路のパターンには様々なパターンが知られているが、それらの1つに等高線経路がある。等高線経路を用いた加工では、工具が、加工面を等高線動作で加工する。この等高線加工は、様々な被加工物に対して使用され得る。例えば、特許文献1は、等高線加工によって金型を作製するための方法を開示している。NCデータの生成では、等高線経路を生成すべく、Y軸方向に沿って設定された複数のXZ平面の各々において、1つの加工軌跡が生成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−94955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加工物が等高線加工で加工される場合、いくつかの被加工物では、高さ方向(複数の等高線が配列される方向)の両端部が、互いに非平行な基準平面を有する場合がある。このような場合、一方の基準平面又は双方の基準平面に対して、平行に等高線を設定できない可能性がある。この場合、等高線に平行でない基準平面を有する端部を複数の等高線によって加工しなければならず、長い加工時間及び粗い表面といった不利益が生じ得る。
【0005】
本発明は、互いに非平行な対立の基準平面を有する被加工物に適した工具経路を生成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、被加工物を加工するための工具経路を生成する方法において、被加工物に対して、第1の基準平面を設定する工程と、被加工物に対して、第1の基準平面に非平行な第2の基準平面を設定する工程と、第1の基準平面及び第2の基準平面に基づいて、第1の基準平面と第2の基準平面との間に、互いに非平行な複数の第3の基準平面を補間する工程と、複数の第3の基準平面の各々に対して、被加工物を加工するための部分工具経路を当該第3の基準平面に基づいて生成する工程と、複数の第3の基準平面の部分工具経路を順に接続することによって、工具経路を生成する工程と、を備える、工具経路生成方法である。
【0007】
本開示の一態様によれば、被加工物に対して、互いに非平行な複数の第3の基準平面が設定され、複数の第3の基準平面に基づいて、複数の非平行な部分工具経路が生成される。したがって、互いに非平行な対立面に対して、それぞれ平行な部分工具経路を設定することが可能である。よって、互いに非平行な対立面を有する被加工物に適した工具経路を生成することができる。
【0008】
工具が、工具経路をたどる工具基準点を含んでおり、各部分工具経路は、対応する第3の基準平面内に工具基準点が位置するように、被加工物と工具との接触位置を算出することによって生成されてもよい。この場合、工具基準点を基準にして、各部分工具経路を生成することができる。
【0009】
また、各部分工具経路は、対応する第3の基準平面内に被加工物と工具との接触位置が位置するように、接触位置と工具基準点との間の距離分だけ被加工物の輪郭をオフセットさせることによって生成されてもよい。この場合、被加工物と工具との接触位置を基準にして、各部分工具経路を生成することができる。
【0010】
第1の基準平面が、第1の傾きを有しており、第2の基準平面が、第2の傾きを有しており、第1の基準平面に対して、第1の基準点を設定する工程と、第2の基準平面に対して、第2の基準点を設定する工程と、を更に備えてもよく、複数の第3の基準平面を補間する工程は、複数の第3の基準平面が、第1の基準点及び第2の基準点の間に均等に補間された複数の第3の基準点を含むように、かつ、第1の傾き及び第2の傾きの間で均等に補間された複数の第3の傾きを有するように、複数の第3の基準平面を決定することを含んでもよく、工具経路を生成する工程は、隣接する第3の基準平面の部分工具経路同士を接続することによって、螺旋状の工具経路を生成することを含んでもよい。この場合、滑らかな工具経路を生成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに非平行な対立の基準平面を有する被加工物に適した工具経路を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の方法を実施する装置を示すブロック図である。
図2】本開示の方法によって工具経路が生成される被加工物の例を示す斜視図である。
図3】本開示の方法の工程の一部を示すフローチャートである。
図4図3の後工程を示すフローチャートである。
図5図1の被加工物を示す側面図である。
図6】第1の基準平面及び第2の基準平面を設定することを示す側面図である。
図7】第1の基準平面の傾き及び第2の基準平面の傾きを算出することを示す側面図である。
図8】第1の基準平面及び第2の基準平面の間に複数の第3の基準平面を補間することを示す側面図である。
図9】1つの第3の基準平面に沿った図1の被加工物の概略的な断面図である。
図10図9の第3の基準平面に対して、この第3の基準平面の固有座標系において部分工具経路を生成することを示す概略図である。
図11図10の部分工具経路を被加工物全体の基準座標系に変更することを示す概略図である。
図12】複数の部分工具経路を接続することによって工具経路を生成することを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る工具経路を生成するための方法を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合がある。
【0014】
図1は、本開示の方法を実施する装置を示すブロック図である。本開示は、NC加工によって被加工物を加工するための工具経路を生成する方法を提供する。本開示の方法は、例えば、コンピュータ、サーバー、タブレット、又は、その他の計算装置である、装置50によって実施されることができる。装置50は、例えば、ハードディスク等の記憶装置51、CPU等のプロセッサ52、液晶ディスプレイ及び/若しくはタッチパネル等の表示装置53、マウス、キーボード及び/若しくはタッチパネル等の入力装置54、不図示のROM(read only memory)、並びに/又は、不図示のRAM(random access memory)等の構成要素を備えることができ、これらの構成要素は、バス(不図示)等を介して互いに接続されることができる。本開示の方法は、例えば、装置50に組み込まれたCAM(Computer Aided Manufacture)システム上で実施されることができる。
【0015】
図2は、本開示の方法によって工具経路が生成される被加工物の例を示す斜視図である。本開示の方法は、図2に示されるような、互いに非平行な対立面11,12を有する被加工物1の加工に適している。なお、本開示の方法は、このような互いに非平行な対立面を有する被加工物を加工することに限定されず、様々な被加工物にも適用可能であり得ることに留意されたい。
【0016】
被加工物1は、例えば、タービンに含まれる羽根等であることができる。被加工物1は、例えば、羽根へと加工される長尺の本体13と、本体13の両端部に連結された一対の保持部14,15と、を備えることができる。本体13は、湾曲した平たい形状を有している。本体13の両端部は互いに非平行であり、したがって、本体13の両端部に連結された保持部14,15の対立面11,12も非平行である。保持部14,15は、本体13の加工の際に把持されることができる。
【0017】
図3は、本開示の方法を示すフローチャートである。本開示の方法は、例えば、オペレータが表示装置53に示された被加工物1を見ながら、装置50のプロセッサ52によって実行されることができる。本開示の方法では、先ず、被加工物の形状が指定される(ステップS100)。具体的には、図5は、図1の被加工物を示す側面図であり、ステップS100では、例えば、CAD(Computer Aided Design)システムで作成された被加工物1の形状Gが、CAMシステムによって読み込まれることができる。形状Gは、被加工物に含まれる点、辺、及び、面などの形状データを含んでいる。形状Gは、例えば、3次元直交座標系であるXYZ軸座標系で定義されることができる。
【0018】
図3を再び参照して、続いて、加工形状に対して、第1の基準平面及び第2の基準平面が設定される(ステップS102)。具体的には、図6は、第1の基準平面及び第2の基準平面を設定することを示す側面図であり、オペレータは、表示装置53に示された形状G上で、一方の面12の付近で、面12に概ね平行な平面内で三角形TR1が得られるように、形状G上の3点f1,f2,f3を選択することができる。三角形TR1を含む平面が、第1の基準平面RS1として設定される。同様に、オペレータは、表示装置53に示された形状G上で、他方の面11の付近で、面11に概ね平行な平面内で三角形TR2が得られるように、3点s1,s2,s3を選択することができる。三角形TR2を含む平面が、第2の基準平面RS2として設定される。点f1,f2,f3,s1,s2,s3の各々は、X座標値、Y座標値、及び、Z座標値を有する。
【0019】
図3を再び参照して、続いて、第1の基準平面の傾き及び第2の基準平面の傾きが算出される(ステップS104)。具体的には、図7は、第1の基準平面の傾き及び第2の基準平面の傾きを算出することを示す側面図であり、プロセッサ52は、第1の基準平面RS1の法線方向n1を、上記の点f1,f2,f3の座標値を次式(1)に代入することによって算出する。同様に、プロセッサ52は、第2の基準平面RS2の法線方向n2を、上記の点s1,s2,s3の座標値を次式(2)に代入することによって算出する。
【0020】
【数1】
【0021】
【数2】
【0022】
図3を再び参照して、続いて、第1の基準点及び第2の基準点を設定する(ステップS106)。具体的には、図7を参照して、オペレータは、例えば、表示装置53に示された形状G上で、第1の基準平面RS1上の任意の1点を選択することができ、選択された点が、第1の基準点p1として設定される。同様に、オペレータは、例えば、表示装置53に示された形状G上で、第2の基準平面RS2上の任意の1点を選択することができ、選択された点が、第2の基準点p2として設定される。オペレータは、例えば、第1の基準点p1として、第1の基準平面RS1に沿った形状Gの断面の概ね中心の点を選択することができる。同様に、オペレータは、例えば、第2の基準点p2として、第2の基準平面RS2に沿った形状Gの断面の概ね中心の点を選択することができる。点p1,p2の各々は、X座標値、Y座標値、及び、Z座標値を有する。
【0023】
図3及び図7を参照して、続いて、プロセッサ52は、第1の基準点p1から第2の基準点p2へ向かうベクトル(以下、第1の基準ベクトルとも称され得る)Δpを、点p1,p2の座標値を次式(3)に代入することによって算出する(ステップS108)。
【0024】
【数3】
【0025】
続いて、プロセッサ52は、第1の基準ベクトルΔpに垂直なベクトル(以下、第2の基準ベクトルとも称され得る)hを、任意の適切な方法によって選択する(ステップS110)。例えば、第2の基準ベクトルhは、次式(4),(5)によって算出されることができる。
【0026】
【数4】
【0027】
【数5】
【0028】
続いて、図3を再び参照して、ユーザーは、第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間を補間するための補間パラメータt1,t2・・・ti(iは、1からm+1までの整数)選択する(ステップS112)。具体的には、図8は、第1の基準平面及び第2の基準平面の間に複数の第3の基準平面を補間することを示す側面図であり、mは、第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間の形状Gがいくつの区分に分割されるか、を示す値であり、第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間には、互いに非平行なm−1個の第3の基準平面RS3が補間される。例えば、第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間に複数の第3の基準平面RS3が補間される場合、mは、3以上の整数であることができる。
【0029】
例えば、図8に示されるように、第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間の形状Gを複数の区分(図8では6つの区分)に均等に分割する場合には、補間パラメータtiは、次式(6)によって算出されることができる。
【0030】
【数6】
【0031】
補間パラメータt1は、第1の基準平面RS1のためのパラメータであり、補間パラメータtm+1は、第2の基準平面RS2のためのパラメータであり、補間パラメータt2〜tmは、複数の第3の基準平面RS3のためのパラメータである。なお、第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間の形状Gは、複数の区分に不均等に分割されてもよいことに留意されたい。例えば、第1の基準ベクトルΔpに沿って形状が大きく変化する部分等は、他の箇所と比較して細かく分割されてもよい。例えば、オペレータは、上記のように第1の基準平面RS1と第2の基準平面RS2との間の形状Gを複数の区分に均等に分割した後、以下に示すステップのうちの任意のステップの後に、補間パラメータt1,t2・・・tiを補正してもよい、及び/又は、新たな補間パラメータを挿入してもよい。また、補間パラメータt1,t2・・・tiは、上記の式(6)の代わりに、非線形な関数によって算出されてもよい。
【0032】
続いて、プロセッサ52は、全ての補間パラメータt1,t2・・・tiに対して、以下のステップS114〜S126を実行する。
【0033】
図4は、図3の後工程を示すフローチャートである。プロセッサ52は、補間パラメータtiを用いて、次式(7)により、各基準平面における基準点diを算出する(ステップS114)。
【0034】
【数7】
【0035】
ここで、図8に示されるように、基準点d1は、第1の基準平面RS1の上記の第1の基準点p1に相当し、基準点dm+1は、第2の基準平面RS2の上記の第2の基準点p2に相当することに留意されたい。基準点d2〜dmは、各第3の基準平面RS3における第3の基準点として設定される。基準点diの各々は、x座標値dxi、y座標値dyi、及び、Z座標値dziを有する。
【0036】
続いて、プロセッサ52は、補間パラメータtiを用いて、第1の基準平面RS1の法線方向n1と第2の基準平面RS2の法線方向n2との間を球面補間する次式(8)により、各基準平面の傾き(法線方向)dniを算出する(ステップS116)。
【0037】
【数8】
【0038】
ここで、図8に示されるように、法線方向dn1は、第1の基準平面RS1の上記の法線方向n1に相当し、法線方向dnm+1は、第2の基準平面RS2の上記の法線方向n2に相当することに留意されたい。法線方向dn2〜dnmは、各第3の基準平面RS3における法線方向として設定される。以上の方法によって、本実施形態では、第1の基準平面RS1の法線方向n1及び第2の基準平面RS2の法線方向n2の間で均等に補間された複数の第3の傾きdniが得られる。なお、複数の第3の傾きdniは、別の方法によって算出されてもよく、例えば、法線方向n1及び法線方向n2の間で不均等に補間されてもよいことに留意されたい。
【0039】
続いて、プロセッサ52は、補間パラメータtiを用いて、次式(9)〜(11)により、各基準平面における座標軸ui,vi,wiを算出する(ステップS118)。
【0040】
【数9】
【0041】
【数10】
【0042】
【数11】
【0043】
ここで、図8に例示されるように、座標軸uiは、第2の基準ベクトルh及び各基準平面の法線方向dniに垂直な方向として定義され得る。また、座標軸viは、各基準平面の法線方向dni及び座標軸uiに垂直な方向として定義され得る。また、座標軸wiは、各基準平面の座標軸ui及び座標軸viに垂直な方向として定義され得る。座標軸wiは、各基準平面の法線方向dniと一致する。このようにして、座標軸ui,vi,wiを順次算出することができる。
【0044】
続いて、プロセッサ52は、次式(12)により、XYZ軸座標系から各基準平面におけるuiii軸座標系への変換行列Miを算出する(ステップS120)。
【0045】
【数12】
【0046】
続いて、プロセッサ52は、次式(13)に基づいて、XYZ軸座標系において形状Gに含まれる全ての点qを、uiii軸座標系における点riへと変換し、uiii軸座標系における形状Giを算出する(ステップS122)。
【0047】
【数13】
【0048】
続いて、プロセッサ52は、形状Giに対して、各基準平面(第1の基準平面RS1、第2の基準平面RS2、又は、第3の基準平面RS3)に基づく部分工具経路TP'iを生成する(ステップS124)。部分工具経路TP'iは、様々な方法によって生成されることができる。例えば、部分工具経路TP'iは、等高線加工における各等高線を生成するための方法によって生成されてもよい。このような方法は、例えば、以下の2つの方法を含む。
【0049】
図9は、1つの第3の基準平面に沿った図1の被加工物の概略的な断面図であり、図10は、図9の第3の基準平面に対して、この第3の基準平面の固有座標系において部分工具経路を生成することを示す概略図である。NC加工では、工具60に工具基準点61が設定され、工具基準点61が、生成された部分工具経路TP'iをたどるように、NC加工が制御される。工具基準点61は、例えば、工具60の径方向の中心に設定されることができる。
【0050】
第1の方法では、部分工具経路TP'iは、対応する基準平面RS3内に上記の工具基準点61が位置するように、形状Giと工具60との接触位置62を算出することによって生成されることができる。この場合、部分工具経路TP'iは、基準平面RS3内に位置する一方、接触位置62は、形状Giによっては、基準平面RS3内には存在しないかもしれない。
【0051】
第2の方法では、部分工具経路TP'iは、対応する基準平面RS3内に形状Giと工具60との接触位置62が位置するように、接触位置62と上記の工具基準点61との間の距離分だけ、Giの輪郭をオフセットさせることによって生成されることができる。この場合、接触位置62は、基準平面RS3内に位置する一方、各部分工具経路TP'iは、形状Giによっては、基準平面RS3内には存在しないかもしれない。
【0052】
図11は、図10の部分工具経路を被加工物全体の基準座標系に変更することを示す概略図である。図3及び図11を参照して、続いて、プロセッサ52は、次式(14)に基づいて、uiii軸座標系において部分工具経路TP'iに含まれる全ての点jiを、XYZ軸座標系における点kiへと変換し、XYZ軸座標系における部分工具経路TPiを算出する(ステップS126)。
【0053】
【数14】
【0054】
続いて、プロセッサ52は、全ての補間パラメータt1,t2・・・tiに対して、部分工具経路TPiが算出されたか否かを判断する(ステップS128)。全ての部分工具経路TPiが算出された場合には、全ての部分工具経路TPiを順に接続することによって、工具経路を生成する(ステップS130)。全ての部分工具経路TPiが算出されていない場合には、ステップS114に戻る。
【0055】
図12は、複数の部分工具経路を接続することによって工具経路を生成することを示す概略図である。複数の部分工具経路TPiは、様々な方法によって接続されることができる。例えば、図12では、隣接する部分工具経路TPi同士を滑らかに接続することによって、螺旋状の工具経路HPが生成されている。なお、「螺旋状の工具経路」とは、工具経路HPのXY平面上の範囲がZ軸に沿って一定の経路(すなわち、円筒表面に沿うような経路)、及び、工具経路HPのXY平面上の範囲がZ軸に沿って変化する経路(例えば、円錐表面に沿うような経路)の双方を含む。
【0056】
続いて、プロセッサ52は、生成された工具経路を記憶装置51に保存し(ステップS132)、一連の動作を終了する。
【0057】
以上のような本開示の方法によれば、被加工物1に対して、互いに非平行な複数の第3の基準平面RS3が設定され、複数の第3の基準平面RS3に基づいて、複数の非平行な部分工具経路TPiが生成される。したがって、互いに非平行な対立面11,12の各々に対して、平行な部分工具経路TPiを設定することが可能である。よって、互いに非平行な対立面11,12を有する被加工物1に適した工具経路を生成することができる。
【0058】
また、本開示の方法では、工具60が、工具経路をたどる工具基準点61を含んでおり、各部分工具経路TPiは、対応する第3の基準平面RS3内に工具基準点61が位置するように、被加工物1と工具60との接触位置62を算出することによって生成されることができる。この場合、工具基準点61を基準にして、部分工具経路TPiを生成することができる。
【0059】
また、本開示の方法では、各部分工具経路TPiは、対応する第3の基準平面RS3内に被加工物1と工具60との接触位置62が位置するように、接触位置62と工具基準点61との間の距離分だけ被加工物1の輪郭をオフセットさせることによって生成されてもよい。この場合、接触位置62を基準にして、部分工具経路TPiを生成することができる。
【0060】
また、本開示の方法では、第1の基準平面RS1が、第1の傾きn1を有しており、第2の基準平面RS2が、第2の傾きn2を有しており、当該方法は、第1の基準平面RS1に対して、第1の基準点p1を設定する工程と、第2の基準平面RS2に対して、第2の基準点p2を設定する工程と、を備えている。また、複数の第3の基準平面RS3を補間する工程は、複数の第3の基準平面RS3が、第1の基準点p1及び第2の基準点p2の間に均等に補間された複数の第3の基準点d2〜dmを含むように、かつ、第1の傾きn1及び第2の傾きn2の間で均等に補間された複数の第3の傾きdn2〜dnmを有するように、複数の第3の基準平面RS3を決定することを含んでいる。さらに、工具経路を生成する工程は、隣接する第3の基準平面RS3の部分工具経路TPi同士を滑らかに接続することによって、螺旋状の工具経路HPを生成することを含んでいる。したがって、滑らかな工具経路を生成することができる。
【0061】
工具経路を生成するための方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。また、当業者であれば、上記の方法の工程は、矛盾が生じない限り、上記と異なる順番で実施されてもよいことを理解するだろう。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、第1の基準平面RS1及び第2の基準平面RS2を含む、全ての基準平面に対して、部分工具経路TPiが生成されている。しかしながら、部分工具経路TPiは、第3の基準平面RS3のみに対して生成されてもよい。また、部分工具経路TPiは、複数の第3の基準平面RS3のうちの一部の連続する2つ以上の第3の基準平面RS3のみに対して生成されてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、隣接する部分工具経路TPi同士を滑らかに接続することによって、螺旋状の工具経路HPが生成されている。しかしながら、複数の部分工具経路TPiは、他の方法によって接続されてもよく、例えば、Z軸に平行な接続経路によって接続されたステップ状の工具経路が生成されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 被加工物
60 工具
61 工具基準点
62 接触位置
2−dm 第3の基準点
dn2−dnm 法線方向(第3の傾き)
HP 工具経路
1 法線方向(第1の傾き)
2 法線方向(第2の傾き)
1 第1の基準点
2 第2の基準点
RS1 第1の基準平面
RS2 第2の基準平面
RS3 第3の基準平面
TPi 部分工具経路
図1
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