(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る工具経路を生成するための方法を説明する。同様な又は対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。理解を容易にするために、図の縮尺は変更されている場合がある。
【0014】
図1は、本開示の方法を実施する装置を示すブロック図である。本開示は、NC加工によって被加工物を加工するための工具経路を生成する方法を提供する。本開示の方法は、例えば、コンピュータ、サーバー、タブレット、又は、その他の計算装置である、装置50によって実施されることができる。装置50は、例えば、ハードディスク等の記憶装置51、CPU等のプロセッサ52、液晶ディスプレイ及び/若しくはタッチパネル等の表示装置53、マウス、キーボード及び/若しくはタッチパネル等の入力装置54、不図示のROM(read only memory)、並びに/又は、不図示のRAM(random access memory)等の構成要素を備えることができ、これらの構成要素は、バス(不図示)等を介して互いに接続されることができる。本開示の方法は、例えば、装置50に組み込まれたCAM(Computer Aided Manufacture)システム上で実施されることができる。
【0015】
図2は、本開示の方法によって工具経路が生成される被加工物の例を示す斜視図である。本開示の方法は、
図2に示されるような、互いに非平行な対立面11,12を有する被加工物1の加工に適している。なお、本開示の方法は、このような互いに非平行な対立面を有する被加工物を加工することに限定されず、様々な被加工物にも適用可能であり得ることに留意されたい。
【0016】
被加工物1は、例えば、タービンに含まれる羽根等であることができる。被加工物1は、例えば、羽根へと加工される長尺の本体13と、本体13の両端部に連結された一対の保持部14,15と、を備えることができる。本体13は、湾曲した平たい形状を有している。本体13の両端部は互いに非平行であり、したがって、本体13の両端部に連結された保持部14,15の対立面11,12も非平行である。保持部14,15は、本体13の加工の際に把持されることができる。
【0017】
図3は、本開示の方法を示すフローチャートである。本開示の方法は、例えば、オペレータが表示装置53に示された被加工物1を見ながら、装置50のプロセッサ52によって実行されることができる。本開示の方法では、先ず、被加工物の形状が指定される(ステップS100)。具体的には、
図5は、
図1の被加工物を示す側面図であり、ステップS100では、例えば、CAD(Computer Aided Design)システムで作成された被加工物1の形状Gが、CAMシステムによって読み込まれることができる。形状Gは、被加工物に含まれる点、辺、及び、面などの形状データを含んでいる。形状Gは、例えば、3次元直交座標系であるXYZ軸座標系で定義されることができる。
【0018】
図3を再び参照して、続いて、加工形状に対して、第1の基準平面及び第2の基準平面が設定される(ステップS102)。具体的には、
図6は、第1の基準平面及び第2の基準平面を設定することを示す側面図であり、オペレータは、表示装置53に示された形状G上で、一方の面12の付近で、面12に概ね平行な平面内で三角形TR1が得られるように、形状G上の3点f
1,f
2,f
3を選択することができる。三角形TR
1を含む平面が、第1の基準平面RS
1として設定される。同様に、オペレータは、表示装置53に示された形状G上で、他方の面11の付近で、面11に概ね平行な平面内で三角形TR
2が得られるように、3点s
1,s
2,s
3を選択することができる。三角形TR
2を含む平面が、第2の基準平面RS
2として設定される。点f
1,f
2,f
3,s
1,s
2,s
3の各々は、X座標値、Y座標値、及び、Z座標値を有する。
【0019】
図3を再び参照して、続いて、第1の基準平面の傾き及び第2の基準平面の傾きが算出される(ステップS104)。具体的には、
図7は、第1の基準平面の傾き及び第2の基準平面の傾きを算出することを示す側面図であり、プロセッサ52は、第1の基準平面RS1の法線方向n
1を、上記の点f
1,f
2,f
3の座標値を次式(1)に代入することによって算出する。同様に、プロセッサ52は、第2の基準平面RS2の法線方向n
2を、上記の点s
1,s
2,s
3の座標値を次式(2)に代入することによって算出する。
【0022】
図3を再び参照して、続いて、第1の基準点及び第2の基準点を設定する(ステップS106)。具体的には、
図7を参照して、オペレータは、例えば、表示装置53に示された形状G上で、第1の基準平面RS
1上の任意の1点を選択することができ、選択された点が、第1の基準点p
1として設定される。同様に、オペレータは、例えば、表示装置53に示された形状G上で、第2の基準平面RS
2上の任意の1点を選択することができ、選択された点が、第2の基準点p
2として設定される。オペレータは、例えば、第1の基準点p
1として、第1の基準平面RS
1に沿った形状Gの断面の概ね中心の点を選択することができる。同様に、オペレータは、例えば、第2の基準点p
2として、第2の基準平面RS
2に沿った形状Gの断面の概ね中心の点を選択することができる。点p
1,p
2の各々は、X座標値、Y座標値、及び、Z座標値を有する。
【0023】
図3及び
図7を参照して、続いて、プロセッサ52は、第1の基準点p
1から第2の基準点p
2へ向かうベクトル(以下、第1の基準ベクトルとも称され得る)Δpを、点p
1,p
2の座標値を次式(3)に代入することによって算出する(ステップS108)。
【0025】
続いて、プロセッサ52は、第1の基準ベクトルΔpに垂直なベクトル(以下、第2の基準ベクトルとも称され得る)hを、任意の適切な方法によって選択する(ステップS110)。例えば、第2の基準ベクトルhは、次式(4),(5)によって算出されることができる。
【0028】
続いて、
図3を再び参照して、ユーザーは、第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間を補間するための補間パラメータt
1,t
2・・・t
i(iは、1からm+1までの整数)選択する(ステップS112)。具体的には、
図8は、第1の基準平面及び第2の基準平面の間に複数の第3の基準平面を補間することを示す側面図であり、mは、第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間の形状Gがいくつの区分に分割されるか、を示す値であり、第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間には、互いに非平行なm−1個の第3の基準平面RS
3が補間される。例えば、第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間に複数の第3の基準平面RS
3が補間される場合、mは、3以上の整数であることができる。
【0029】
例えば、
図8に示されるように、第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間の形状Gを複数の区分(
図8では6つの区分)に均等に分割する場合には、補間パラメータt
iは、次式(6)によって算出されることができる。
【0031】
補間パラメータt
1は、第1の基準平面RS
1のためのパラメータであり、補間パラメータt
m+1は、第2の基準平面RS
2のためのパラメータであり、補間パラメータt
2〜t
mは、複数の第3の基準平面RS
3のためのパラメータである。なお、第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間の形状Gは、複数の区分に不均等に分割されてもよいことに留意されたい。例えば、第1の基準ベクトルΔpに沿って形状が大きく変化する部分等は、他の箇所と比較して細かく分割されてもよい。例えば、オペレータは、上記のように第1の基準平面RS
1と第2の基準平面RS
2との間の形状Gを複数の区分に均等に分割した後、以下に示すステップのうちの任意のステップの後に、補間パラメータt
1,t
2・・・t
iを補正してもよい、及び/又は、新たな補間パラメータを挿入してもよい。また、補間パラメータt
1,t
2・・・t
iは、上記の式(6)の代わりに、非線形な関数によって算出されてもよい。
【0032】
続いて、プロセッサ52は、全ての補間パラメータt
1,t
2・・・t
iに対して、以下のステップS114〜S126を実行する。
【0033】
図4は、
図3の後工程を示すフローチャートである。プロセッサ52は、補間パラメータt
iを用いて、次式(7)により、各基準平面における基準点d
iを算出する(ステップS114)。
【0035】
ここで、
図8に示されるように、基準点d
1は、第1の基準平面RS
1の上記の第1の基準点p
1に相当し、基準点d
m+1は、第2の基準平面RS
2の上記の第2の基準点p
2に相当することに留意されたい。基準点d
2〜d
mは、各第3の基準平面RS
3における第3の基準点として設定される。基準点d
iの各々は、x座標値d
xi、y座標値d
yi、及び、Z座標値d
ziを有する。
【0036】
続いて、プロセッサ52は、補間パラメータt
iを用いて、第1の基準平面RS1の法線方向n
1と第2の基準平面RS2の法線方向n
2との間を球面補間する次式(8)により、各基準平面の傾き(法線方向)dn
iを算出する(ステップS116)。
【0038】
ここで、
図8に示されるように、法線方向dn
1は、第1の基準平面RS
1の上記の法線方向n
1に相当し、法線方向dn
m+1は、第2の基準平面RS
2の上記の法線方向n
2に相当することに留意されたい。法線方向dn
2〜dn
mは、各第3の基準平面RS
3における法線方向として設定される。以上の方法によって、本実施形態では、第1の基準平面RS1の法線方向n
1及び第2の基準平面RS2の法線方向n
2の間で均等に補間された複数の第3の傾きdn
iが得られる。なお、複数の第3の傾きdn
iは、別の方法によって算出されてもよく、例えば、法線方向n
1及び法線方向n
2の間で不均等に補間されてもよいことに留意されたい。
【0039】
続いて、プロセッサ52は、補間パラメータt
iを用いて、次式(9)〜(11)により、各基準平面における座標軸u
i,v
i,w
iを算出する(ステップS118)。
【0043】
ここで、
図8に例示されるように、座標軸u
iは、第2の基準ベクトルh及び各基準平面の法線方向dn
iに垂直な方向として定義され得る。また、座標軸v
iは、各基準平面の法線方向dn
i及び座標軸u
iに垂直な方向として定義され得る。また、座標軸w
iは、各基準平面の座標軸u
i及び座標軸v
iに垂直な方向として定義され得る。座標軸w
iは、各基準平面の法線方向dn
iと一致する。このようにして、座標軸u
i,v
i,w
iを順次算出することができる。
【0044】
続いて、プロセッサ52は、次式(12)により、XYZ軸座標系から各基準平面におけるu
iv
iw
i軸座標系への変換行列M
iを算出する(ステップS120)。
【0046】
続いて、プロセッサ52は、次式(13)に基づいて、XYZ軸座標系において形状Gに含まれる全ての点qを、u
iv
iw
i軸座標系における点r
iへと変換し、u
iv
iw
i軸座標系における形状G
iを算出する(ステップS122)。
【0048】
続いて、プロセッサ52は、形状G
iに対して、各基準平面(第1の基準平面RS
1、第2の基準平面RS
2、又は、第3の基準平面RS
3)に基づく部分工具経路TP'
iを生成する(ステップS124)。部分工具経路TP'
iは、様々な方法によって生成されることができる。例えば、部分工具経路TP'
iは、等高線加工における各等高線を生成するための方法によって生成されてもよい。このような方法は、例えば、以下の2つの方法を含む。
【0049】
図9は、1つの第3の基準平面に沿った
図1の被加工物の概略的な断面図であり、
図10は、
図9の第3の基準平面に対して、この第3の基準平面の固有座標系において部分工具経路を生成することを示す概略図である。NC加工では、工具60に工具基準点61が設定され、工具基準点61が、生成された部分工具経路TP'
iをたどるように、NC加工が制御される。工具基準点61は、例えば、工具60の径方向の中心に設定されることができる。
【0050】
第1の方法では、部分工具経路TP'
iは、対応する基準平面RS
3内に上記の工具基準点61が位置するように、形状G
iと工具60との接触位置62を算出することによって生成されることができる。この場合、部分工具経路TP'
iは、基準平面RS
3内に位置する一方、接触位置62は、形状G
iによっては、基準平面RS
3内には存在しないかもしれない。
【0051】
第2の方法では、部分工具経路TP'
iは、対応する基準平面RS
3内に形状G
iと工具60との接触位置62が位置するように、接触位置62と上記の工具基準点61との間の距離分だけ、G
iの輪郭をオフセットさせることによって生成されることができる。この場合、接触位置62は、基準平面RS
3内に位置する一方、各部分工具経路TP'
iは、形状G
iによっては、基準平面RS
3内には存在しないかもしれない。
【0052】
図11は、
図10の部分工具経路を被加工物全体の基準座標系に変更することを示す概略図である。
図3及び
図11を参照して、続いて、プロセッサ52は、次式(14)に基づいて、u
iv
iw
i軸座標系において部分工具経路TP'
iに含まれる全ての点j
iを、XYZ軸座標系における点k
iへと変換し、XYZ軸座標系における部分工具経路TP
iを算出する(ステップS126)。
【0054】
続いて、プロセッサ52は、全ての補間パラメータt
1,t
2・・・t
iに対して、部分工具経路TP
iが算出されたか否かを判断する(ステップS128)。全ての部分工具経路TP
iが算出された場合には、全ての部分工具経路TP
iを順に接続することによって、工具経路を生成する(ステップS130)。全ての部分工具経路TP
iが算出されていない場合には、ステップS114に戻る。
【0055】
図12は、複数の部分工具経路を接続することによって工具経路を生成することを示す概略図である。複数の部分工具経路TP
iは、様々な方法によって接続されることができる。例えば、
図12では、隣接する部分工具経路TP
i同士を滑らかに接続することによって、螺旋状の工具経路HPが生成されている。なお、「螺旋状の工具経路」とは、工具経路HPのXY平面上の範囲がZ軸に沿って一定の経路(すなわち、円筒表面に沿うような経路)、及び、工具経路HPのXY平面上の範囲がZ軸に沿って変化する経路(例えば、円錐表面に沿うような経路)の双方を含む。
【0056】
続いて、プロセッサ52は、生成された工具経路を記憶装置51に保存し(ステップS132)、一連の動作を終了する。
【0057】
以上のような本開示の方法によれば、被加工物1に対して、互いに非平行な複数の第3の基準平面RS
3が設定され、複数の第3の基準平面RS
3に基づいて、複数の非平行な部分工具経路TP
iが生成される。したがって、互いに非平行な対立面11,12の各々に対して、平行な部分工具経路TP
iを設定することが可能である。よって、互いに非平行な対立面11,12を有する被加工物1に適した工具経路を生成することができる。
【0058】
また、本開示の方法では、工具60が、工具経路をたどる工具基準点61を含んでおり、各部分工具経路TP
iは、対応する第3の基準平面RS
3内に工具基準点61が位置するように、被加工物1と工具60との接触位置62を算出することによって生成されることができる。この場合、工具基準点61を基準にして、部分工具経路TP
iを生成することができる。
【0059】
また、本開示の方法では、各部分工具経路TP
iは、対応する第3の基準平面RS
3内に被加工物1と工具60との接触位置62が位置するように、接触位置62と工具基準点61との間の距離分だけ被加工物1の輪郭をオフセットさせることによって生成されてもよい。この場合、接触位置62を基準にして、部分工具経路TP
iを生成することができる。
【0060】
また、本開示の方法では、第1の基準平面RS
1が、第1の傾きn
1を有しており、第2の基準平面RS
2が、第2の傾きn
2を有しており、当該方法は、第1の基準平面RS
1に対して、第1の基準点p
1を設定する工程と、第2の基準平面RS
2に対して、第2の基準点p
2を設定する工程と、を備えている。また、複数の第3の基準平面RS
3を補間する工程は、複数の第3の基準平面RS
3が、第1の基準点p
1及び第2の基準点p
2の間に均等に補間された複数の第3の基準点d
2〜d
mを含むように、かつ、第1の傾きn
1及び第2の傾きn
2の間で均等に補間された複数の第3の傾きdn
2〜dn
mを有するように、複数の第3の基準平面RS
3を決定することを含んでいる。さらに、工具経路を生成する工程は、隣接する第3の基準平面RS
3の部分工具経路TP
i同士を滑らかに接続することによって、螺旋状の工具経路HPを生成することを含んでいる。したがって、滑らかな工具経路を生成することができる。
【0061】
工具経路を生成するための方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。当業者であれば、上記の実施形態の様々な変形が可能であることを理解するだろう。また、当業者であれば、上記の方法の工程は、矛盾が生じない限り、上記と異なる順番で実施されてもよいことを理解するだろう。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、第1の基準平面RS
1及び第2の基準平面RS
2を含む、全ての基準平面に対して、部分工具経路TP
iが生成されている。しかしながら、部分工具経路TP
iは、第3の基準平面RS
3のみに対して生成されてもよい。また、部分工具経路TP
iは、複数の第3の基準平面RS
3のうちの一部の連続する2つ以上の第3の基準平面RS
3のみに対して生成されてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態では、隣接する部分工具経路TP
i同士を滑らかに接続することによって、螺旋状の工具経路HPが生成されている。しかしながら、複数の部分工具経路TP
iは、他の方法によって接続されてもよく、例えば、Z軸に平行な接続経路によって接続されたステップ状の工具経路が生成されてもよい。