(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成している請求項1〜6のいずれか1項に記載の補強梁。
複数の杭と、前記複数の杭によって支持された上部構造体とを有する水中構造物を補強梁を用いて補強する水中構造物の補強工法であって、前記補強梁として請求項1〜7のいずれか1項に記載の補強梁を用いることを特徴とする水中構造物の補強工法。
複数の前記柱部材は、地盤に設けられた基礎に下端部が固定された橋脚であり、前記構造物は複数の前記橋脚と、複数の前記橋脚によって支持された桁とを有する橋梁である請求項8に記載の水中構造物の補強工法。
前記第2柱部材を包囲する工程が、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第1及び第2補強梁以外の他の1つの補強梁の連結部とで共同して包囲する工程であることを特徴とする請求項10に記載の補強工法。
前記第2柱部材を包囲する工程が、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第1及び第2補強梁以外の他の2つ以上の補強梁の連結部とで共同して包囲する工程であることを特徴とする請求項10に記載の補強工法。
地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材及び第4柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向及び前記第1柱部材と前記第4柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材及び第4柱部材と、前記第1、第2、第3及び第4柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、それぞれが本体部と、前記本体部の両端部にそれぞれ配置される連結部とを有する第1、第2補強梁及び第3補強梁を含む補強梁を用いて補強する補強工法であって
前記第1柱部材を、前記第1補強梁の一端側の連結部と、前記第1柱部材と前記第3及び第4柱部材間をそれぞれ連結する前記第2及び第3補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第2柱部材を、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第2及び第3補強梁以外の他の補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第3柱部材に、前記第2補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第4柱部材に、前記第3補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第1柱部材を、前記第1柱部材に取り付けられる前記第1、第2及び第3補強梁の一端側の連結部との間に充填剤を注入して一体化する工程と、
前記第2柱部材と、前記第2柱部材に取り付けられる前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記他の補強梁の一端側の連結部との間に充填剤を注入して、前記第2柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記他の補強梁の連結部とを一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。
前記補強梁のそれぞれは、本体部と連結部とが分離可能に結合部材で結合された構成であって、前記一体化工程は、分離した連結部のそれぞれを各柱部材と一体化する工程であり、前記一体化工程の後に、前記連結部と前記本体部とを前記結合部材で結合することにより、前記柱部材と前記補強梁とを一体化する工程を含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の補強工法。
複数の前記柱部材は水中の地盤に下端部が固定された柱部材であり、前記補強梁を水面に浮遊させる工程と、前記補強梁を取付けようとする二つの柱部材の一つに誘導する工程とを更に含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1項に記載の補強工法。
前記補強梁の本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁を所定の深さに沈降させる工程を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の補強工法。
複数の前記柱部材に支持材を取り付けておき、この支持材によって前記補強梁を支持する工程を含むことを特徴とする請求項10〜17のいずれか1項に記載の補強工法。
前記支持材は前記補強梁の連結部の下端部を構成するものであり、前記補強梁を前記支持材に取り付けることで前記補強梁の連結部の下端面を塞ぐ構成であることを特徴とする請求項18に記載の補強工法。
複数の前記柱部材によって支えられた構造物であって、複数の前記柱部材のうち、互いに隣り合うn本の柱部材(但しn≧3)の間を請求項1〜7のいずれか1項に記載の補強梁によって同一高さで連結し補強したことを特徴とする構造物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、既設構造物の柱部材同士を補強梁によって連結することで構造物全体の剛性を上げて構造物の耐荷力を向上させる補強工法において用いられる、3本以上の柱部材同士を同一高さで連結することが可能な補強梁及び補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る態様は以下の態様を有する。
(1)地盤に下端部が固定された第1柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、
前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材と、
前記第1、第2及び第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、
を有する構造物を補強するために用いられる補強梁であって、
補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端部に設けられる、前記第1柱部材に取り付けられる第1連結部と、
前記補強梁本体部の他端部に設けられる、前記第2柱部材に取り付けられる第2連結部と、を有し、
前記第1連結部は、前記第1柱部材に取り付けたときに、前記第1柱部材と前記第3柱部材との間に取り付けられる他の補強梁と共同して前記第1柱部材を包囲するように構成されるものであり、
前記第2連結部は、前記第2柱部材に取り付けたときに、前記第2柱部材に取り付けられる他の補強梁と共同して前記第2柱部材を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
(2)前記第1連結部は、前記補強梁本体部の一端部に第1の結合部材で分離可能に結合されており、前記第2連結部は、前記補強梁本体部の他端部に第2の結合部材で分離可能に結合されていることを特徴とする上記(1)に記載の補強梁。
(3)前記第1連結部は、他の一つの補強梁と共同して前記第1柱部材を包囲するように構成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の補強梁。
(4)前記第1連結部は、他の2つの補強梁と共同して前記第1柱部材を包囲するように構成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の補強梁。
(5)前記第2連結部は、前記第1連結部と同じ構造である、上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の補強梁。
(6)前記第2連結部は、他の2つの補強梁と共同して前記第2柱部材を包囲するように構成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の補強梁。
(7)前記第2連結部は、他の3つの補強梁と共同して前記第2柱部材を包囲するように構成されていることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の補強梁。
(8)前記第1連結部及び第2連結部の内壁面に充填材のずれ止め用のアンカー部材が設けられている上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の補強梁。
(9)複数の前記柱部材は、水中の地盤に下端部が埋設された杭であり、前記構造物は、複数の前記杭と、複数の前記杭によって支持された上部構造体とを有する水中構造物である上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の補強梁。
(10)前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成している上記(9)に記載の補強梁。
(11)複数の前記柱部材は、地盤に設けられた基礎に下端部が固定された橋脚であり、前記構造物は複数の前記橋脚と、複数の前記橋脚によって支持された桁とを有する橋梁である上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の補強梁。
(12)地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材と、前記第1、第2及び第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、それぞれが本体部と、前記本体部の両端部にそれぞれ配置される連結部とを有する第1及び第2補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって
前記第1柱部材を、前記第1補強梁の一端側の連結部と、前記第1柱部材と前記第3柱部材間を連結する前記第2補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第2柱部材を、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第1及び第2補強梁以外の他の補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第3柱部材に、前記第2補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第1柱部材と、前記第1柱部材に取り付けられる前記第1及び第2補強梁の連結部との間に充填剤を注入して前記第1柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記第2補強梁の連結部とを一体化する工程と、
前記第2柱部材と、前記第2柱部材に取り付けられる前記第1補強梁の連結部と前記他の補強梁の連結部との間に充填剤を注入して前記第2柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記他の補強梁の連結部とを一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。
(13)前記第2柱部材を包囲する工程が、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第1及び第2補強梁以外の他の1つの補強梁の連結部とで共同して包囲する工程であることを特徴とする上記(12)に記載の補強工法。
(14)前記第2柱部材を包囲する工程が、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第1及び第2補強梁以外の他の2つ以上の補強梁の連結部とで共同して包囲する工程であることを特徴とする上記(12)に記載の補強工法。
(15)地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられ、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3柱部材及び第4柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向及び前記第1柱部材と前記第4部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材及び第4柱部材と、前記第1、第2、第3及び第4柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、それぞれが本体部と、前記本体部の両端部にそれぞれ配置される連結部とを有する第1、第2補強梁及び第3補強梁を含む補強梁を用いて補強する補強工法であって
前記第1柱部材を、前記第1補強梁の一端側の連結部と、前記第1柱部材と前記第3及び第4柱部材間をそれぞれ連結する前記第2及び第3補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第2柱部材を、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第2及び第3補強梁以外の他の補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第3柱部材に、前記第2補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第4柱部材に、前記第3補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第1柱部材を、前記第1柱部材に取り付けられる前記第1、第2及び第3補強梁の一端側の連結部との間に充填剤を注入して一体化する工程と、
前記第2柱部材と、前記第2柱部材に取り付けられる前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記他の補強梁の一端側の連結部との間に充填剤を注入して、前記第2柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記他の補強梁の連結部とを一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。
(16)地盤に下端部が固定された第1柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられる第2柱部材と、前記第1柱部材に隣接して設けられた第3乃至第5柱部材であって、前記第1柱部材と前記第3柱部材の配列方向及び前記第1柱部材と前記第4柱部材の配列方向が、前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と交差するような位置に配置されている第3柱部材及び第4柱部材と、前記第1柱部材と前記第5柱部材の配列方向が前記第1柱部材と前記第2柱部材の配列方向と同一又は交差するような位置に配置されている第5柱部材と、前記第1乃至第5柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物を、それぞれが本体部と、前記本体部の両端部にそれぞれ配置される連結部とを有する第1乃至第4補強梁を含む複数の補強梁を用いて補強する補強工法であって、
前記第1柱部材を、前記第1補強梁の一端側の連結部と、前記第1柱部材と前記第3乃至第5柱部材間をそれぞれ連結する前記第2乃至第4補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第2柱部材を、前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記第2乃至第4補強梁以外の他の補強梁の一端側の連結部とで共同して包囲する工程と、
前記第3柱部材に、前記第2補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第4柱部材に、前記第3補強梁の他端側の連結部を取り付ける工程と、
前記第5柱部材に、前記第4補強梁の他側の連結部を取り付ける工程と、
前記第1柱部材を、前記第1柱部材に取り付けられる前記第1乃至第4補強梁の一端側の連結部との間に充填剤を注入して、前記第1柱部材と、前記第1乃至第4補強梁の連結部とを一体化する工程と、
前記第2柱部材と、前記第2柱部材に取り付けられる前記第1補強梁の他端側の連結部と、前記他の補強梁の一端側の連結部との間に充填剤を注入して、前記第2柱部材と、前記第1補強梁の連結部と、前記他の補強梁の連結部とを一体化する工程と、
を含むことを特徴とする補強工法。
(17)前記補強梁のそれぞれは、本体部と連結部とが分離可能に結合部材で結合された構成であって、前記一体化工程は、分離した連結部のそれぞれを各柱部材と一体化する工程であり、前記一体化工程の後に、前記連結部と前記本体部とを前記結合部材で結合することにより、前記柱部材と前記補強梁とを一体化する工程を含むことを特徴とする上記(12)〜(16)のいずれか1項に記載の補強工法。
(18)複数の前記柱部材は水中の地盤に下端部が固定された柱部材であり、前記補強梁を水面に浮遊させる工程と、前記補強梁を取付けようとする二つの柱部材の一つに誘導する工程とを更に含むことを特徴とする(12)〜(17)のいずれか1項に記載の補強工法。
(19)前記補強梁の本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁を所定の深さに沈降させる工程を更に含むことを特徴とする(18)に記載の補強工法。
(20)複数の前記柱部材に支持材を取り付けておき、この支持材によって前記補強梁を支持する工程を含むことを特徴とする(12)〜(19)のいずれか1項に記載の補強工法。
(21)前記支持材は前記補強梁の連結部の下端部を構成するものであり、前記補強梁を前記支持材に取り付けることで前記補強梁の連結部の下端面を塞ぐ構成であることを特徴とする(20)に記載の補強工法。
(22)複数の前記柱部材によって支えられた構造物であって、複数の前記部材のうち、互いに隣り合うn本の柱部材(但しn≧3)の間を(1)〜(11)のいずれか1項に記載の補強梁によって同一高さで連結し補強したことを特徴とする構造物。
(23)地盤に下端部が固定された複数の柱部材と、前記複数の柱部材によって支持された上部構造体とを有する構造物を補強するため前記柱部材に複数取り付けられる補強梁であって、
筒体から成る補強梁本体部と、
前記補強梁本体部の一端に設けられた第1蓋部と、
前記補強梁本体部の他端に設けられた第2蓋部と、
を有し、
前記複数の柱部材の内、第1の柱部材に取り付けるために前記第1蓋部と前記第1蓋部が設けられた前記補強梁本体部の一端側とで第1柱部材連結部を構成すると共に、前記複数の柱部材の内、前記第1の柱部材とは異なる第2の柱部材に取り付けるために前記第2蓋部と前記第2蓋部が設けられた前記補強梁本体部の他端側とで第2柱部材連結部を構成し、
補強梁を前記第1の柱部材に取付けたときに、前記第1柱部材連結部と前記第1の柱部材に取付けられる他の補強梁の第1柱部材連結部とで共同して前記第1の柱部材を包囲するように構成されていることを特徴とする補強梁。
(24)前記第1蓋部は、前記補強梁本体部の一端にヒンジ継手を介して開閉可能に設けられており、前記第1の柱部材に取付けられたときに、前記他の補強梁の補強梁本体部に達する長さを有している上記(23)に記載の補強梁。
(25)前記第1蓋部は、前記補強梁本体部にヒンジ継手を介して開閉可能に設けられると共に、前記補強梁本体部一端の相対向する位置にそれぞれ一枚設けられており、前記第1の柱部材に取付けられたときに、前記他の補強梁の前記第1蓋部の端部に達する長さを有している上記(23)に記載の補強梁。
(26)前記第1柱部材連結部の前記第1蓋部は、前記補強梁本体部の一端にヒンジ継手を介して開閉可能に取付けられている、上記(23)〜(25)のいずれか1項に記載の補強梁。
(27)前記第2柱部材連結部の前記第2蓋部は、前記第2の柱部材に取付けられたときに、前記第2蓋部が設けられた前記補強梁本体部の他端側とで前記第2の柱部材の全周を覆うことが可能な構造である上記(23)〜(26)のいずれか1項に記載の補強梁。
(28)前記第2蓋部は、前記第1蓋部と同じ構造を有する、上記(23)〜(26)のいずれか1項に記載の補強梁。
(29)前記第1蓋部の閉合が前記第1蓋部の端部を前記他の補強梁の前記補強梁本体部にボルト締めすることによって行われるようになっている上記(23)又は(24)に記載の補強梁。
(30)前記第1蓋部の閉合が前記第1蓋部の端部と前記他の補強梁の前記第1蓋部の端部とをボルト締めすることによって行われる上記(25)に記載の補強梁。
(31)前記第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部の内壁面に充填材のずれ止め用のアンカー部材が設けられている上記(23)〜(30)のいずれか1項に記載の補強梁。
(32)前記柱部材は、水中の地盤に下端部が埋設された杭であり、前記構造物は、複数の前記杭と、複数の前記杭によって支持された上部構造体とを有する水中構造物である上記(23)〜(31)のいずれか1項に記載の補強梁。
(33)前記補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成している上記(32)に記載の補強梁。
(34)前記柱部材は、地盤に設けられた基礎に下端部が固定された橋脚であり、前記構造物は複数の前記橋脚と、複数の前記橋脚によって支持された桁とを有する橋梁である上記(23)〜(31)のいずれか1項に記載の補強梁。
(35)地盤に下端部が固定された複数の柱部材と、前記複数の柱部材によって支持された上部構造体とを有する構造物を、前記複数の柱部材の内、隣り合う3本の柱部材P1、P2、P3に上記(23)〜(31)のいずれか1項に記載の補強梁から選ばれる第1の補強梁と第2の補強梁を用いて連結させて補強する補強工法であって、
前記柱部材P1を前記第1の補強梁の第2柱部材連結部によって包囲する柱部材P1包囲工程と、
前記柱部材P2を前記第1の補強梁及び前記第2の補強梁のそれぞれの第1柱部材連結部によって包囲する柱部材P2包囲工程と、
前記柱部材P3と前記第2の補強梁の第2柱部材連結部とを一体化する工程と、
前記柱部材P1包囲工程後、前記柱部材P1と前記第1の補強梁の第2柱部材連結部との間に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程と、
前記柱部材P2包囲工程後、前記柱部材P2と前記第1及び前記第2の補強梁のそれぞれの第1柱部材連結部との間に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程と、
を有することを特徴とする補強工法。
(36)地盤に下端部が固定された複数の柱部材と、前記複数の柱部材によって支持された上部構造体とを有する構造物を、前記複数の柱部材の内、隣り合う柱部材P1〜Pn(n≧4)について柱部材P1と柱部材P2、及び、柱部材Pn−1と柱部材Pnには上記(27)に記載の補強梁を取付けると共に、柱部材P2〜柱部材Pn−1には上記(28)に記載の補強梁を取付けて補強する補強工法であって、
前記柱部材P1、Pnを第1番目の前記補強梁及び第n−1番目の前記補強梁の第2柱部材連結部によって包囲する第1の包囲工程と、
前記第1の包囲工程後、前記柱部材P1、Pnと各補強梁の第2柱部材連結部との間に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程と、
前記柱部材P2〜Pn−1を第2番目の補強梁から第n−2番目の前記補強梁のそれぞれの第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部によって包囲する第2の包囲工程と、
前記第2の包囲工程後、各柱部材P1〜Pnと各補強梁の第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部との間に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程と、
を有することを特徴とする補強工法。
(37)水中の地盤に下端部が固定された複数の柱部材と、前記複数の柱部材によって支持された上部構造体とを有する水中構造物を補強梁によって補強する補強工法において、
上記(23)〜(33)のいずれか1項に記載の補強梁を水面に浮遊させる工程、
前記補強梁を取り付けようとする二つの柱部材の位置に誘導する工程、
前記補強梁の第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部によって柱部材を包囲する工程、
前記第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部の蓋部を閉合する工程、
前記柱部材と柱部材連結部との取り合い部に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程、
を有することを特徴とする補強工法。
(38)前記補強梁の補強梁本体部は、内部空間を二つの仕切壁によって中央区画部と左右の第1区画部及び第2区画部とに分けられ、前記中央区画部は浮力函部を構成しており、補強梁の浮力函部に液体を注入して補強梁を所定の深さに沈降させる工程を含むことを特徴とする上記(37)に記載の補強工法。
(39)前記柱部材に支持材を取り付けておき、この支持材によって補強梁を支持する上記(37)又は(38)に記載の補強工法。
(40)補強梁として、第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部の上端部のみに塞ぎ板を設けた補強梁を用い、前記支持材が下端部の塞ぎ板を兼ねるようにした上記(38)又は(39)に記載の補強工法。
(41)上記(23)〜(34)のいずれか1項に記載の補強梁によって補強したことを特徴とする構造物。
(42)複数の柱部材によって支えられた構造物であって、互いに隣り合うn本の柱部材(但しn≧3)の1本目の柱部材と2本目の柱部材との間、及び、n本目の柱部材とn−1本目の柱部材との間をそれぞれ上記(27)に記載の補強梁によって連結し、他の隣り合う柱部材と柱部材との間を上記(28)に記載の補強梁によって連結することによって、各柱部材を同一高さで連結し補強したことを特徴とする構造物。
【0009】
なお本発明における「柱部材」は、桟橋などの上部構造体を支持する杭の他、橋桁を支持する橋脚等をも含むものである。また、その形状は円柱状のものに限られるものではなく、補強梁が連結できる形状であればよく、四角柱等の他の形状であってもよい。
また柱部材の下端部の地盤への固定の仕方としては、杭のように下端部を地盤に直接埋設して固定されるものは勿論、地盤に設けられた基礎を介して固定されるものも含むものである。
また、以下では「連結部」を「杭連結部」ということがある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の補強梁及び補強工法を用いることにより、直線、三角形、四角形又は多角形の各頂点上に配置される3本以上の柱部材同士間を同一高さで補強梁によって連結することが可能なため、補強梁を増やして補強する場合でも柱部材の高さ方向の設置領域を少なくすることができる。また補強梁の取り付け作業を行う作業者の高さ方向の移動が少なくなることにより作業者の作業負担も軽減することができ、工期の短縮や岸壁の供用停止期間も短くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の補強梁は水中構造物や橋梁などの構造物において、上部構造体を支える柱部材である杭または橋脚を補強するために用いられる。杭または橋脚を3本連結する場合と4本連結する場合とでは使用する補強梁の種類及び個数が異なる。
図1Aは、上部構造体2と、これを支える杭(P1、P2、P3)とからなる水中構造物1における3本の杭(P1、P2、P3)を、本発明の補強梁20を用いて連結して補強した状態を示す図である。
図1Bは、桁部51と、これを支える橋脚52とからなる橋梁50における橋脚(Q1、Q2、Q3)を本発明の補強梁20を用いて連結して補強した状態を示す図である。
図2Aは補強梁20を用いて水中構造物1の4本の杭(P1、P2、P3、P4)を連結した状態を示す図である。
図2Bは補強梁20を用いて橋梁50の4本の橋脚(Q1、Q2、Q3、Q4)を連結した状態を示す図である。
【0013】
以下では、構造物が杭式桟橋等の水中構造物の杭を本発明の補強梁によって補強する場合を例にとって本発明の補強方法について説明するが、橋梁の橋脚を補強する場合についても同様に以下に述べる補強方法を適用することができる。
以下の水中構造物についての説明においては、前記「柱部材」を「杭」という。
以下では、まず、杭を3本連結する場合に使用される補強梁(以下、補強梁Aという)について説明する。
【0014】
補強梁Aについては種々の実施形態が考えられるが、以下では補強梁Aの実施形態として補強梁A1、補強梁A2、補強梁A3の3つの実施形態について説明する。
【0015】
(補強梁A1)
補強梁A1の全体構造を
図3に示す。
補強梁A1は補強梁本体部10と、この補強梁本体部10の一端に設けられた第1蓋部6と補強梁本体部10の他端に設けられた第2蓋部7とからなる。補強梁本体部10は筒体から構成されている。筒体としては円筒体または角筒体等を使用できるが、以下では筒体として角筒体を使用した場合の補強梁本体部10の構成について説明する。本実施形態では、補強梁本体部10は筒体の内部が仕切壁8、9によって仕切られており、中央区画部10aと左右の第1区画部10b及び第2区画部10cとからなる。
【0016】
前記第1蓋部6と前記第1蓋部6が設けられた前記補強梁本体部10の一端側とは、補強梁の一端を第1の杭に取付けるための第1杭連結部4を構成する。また、前記第2蓋部7と前記第2蓋部7が設けられた補強梁本体部10の他端側とは、補強梁の他端を第1の杭とは異なる第2の杭に取付けるための第2杭連結部5を構成する。
そして、前記第1の杭との連結に際し、前記第1杭連結部4と前記第1の杭に取付けられる他の補強梁の第1杭連結部4とで共同して前記第1の杭を包囲する。
なお、第1杭連結部4及び第2杭連結部5の内壁面には後述する充填材(グラウト)のずれ止め用のアンカー部材14が設けられている。
【0017】
図4Aは補強梁本体部10の構成を説明する図であり、
図4Bは
図4AのX−X’線断面図である。
図4A、
図4Bに示すように、補強梁A1の補強梁本体部10は前後左右の4つの壁体14(底板)、15(頂板)、16(側板)と、前記壁体によって形成される内部空間を中央区画部10aと左右の第1区画部10bと第2区画部10cとに分ける仕切壁8、9とからなっている。
中央区画部10aは
図4Bに示すように側板16、16、底板14及び頂板15を有しており、浮力函部3を構成している。
浮力函部3における頂板15は必須ではなく、頂板15を設けない場合には浮力函部3は容器形状となり、また、頂板15を設けた場合には浮力函部3は密閉構造となり、いずれの場合でも浮力函部3は浮力によって補強梁A1を水面に浮遊させることができる。
【0018】
また、浮力函部3を密閉構造とし、浮力函部3内に注水ができるようにした場合には、浮力函部3内の空間に水や海水などの液体を注入することによって補強梁A1を水面下に沈降させることができる。更に、浮力函部3を密閉構造とし、浮力函部3内に適当な量の液体を注入して補強梁の重量と浮力とをバランスさせることにより補強梁A1の取り付け作業をし易くすることができる。なお、補強梁A1の通常の使用形態は、水面に浮かせて所定の場所まで移動させ、次いで所定の深さまで沈めるというものであるので、浮力函部3には頂板15を設けて密閉構造とするが、沈める作業を必要としない場合もあり、この場合には必ずしも頂板15は設ける必要がない。
【0019】
なお、本実施形態では、補強梁本体部10を
図3に示すように仕切壁8、9によって中央区画部10a、第1区画部10b及び第2区画部10cに区分けした例を示したが、係る構成は本発明の補強梁においては必ずしも必須ではない。
すなわち、補強梁本体部10は仕切壁8、9を備えていない補強梁本体部であっても良い。
従って、本実施形態及び後述する他の実施形態の説明においては、第1蓋部及び第2蓋部は第1区画部や第2区画部の端部に設けられる構成で示されているが、係る構成は仕切壁8、9を備えていない補強梁本体部の端部に設けられる構成に置き換えたものであって良い。
【0020】
補強梁本体部10の第1杭連結部4は第1区画部10bと開閉可能な第1蓋部6とからなっており、杭に取付けられた時に、第1区画部10bの端部と第1蓋部6とによって杭の半周部を覆う構造となっている。この第1杭連結部4と、前記杭に取付けられる同一構造の第1杭連結部を有する他の補強梁の第1杭連結部4とによって前記杭の全周が包囲される。
【0021】
補強梁A1の第2杭連結部5の構造は杭を包囲する構造を有するものであれば良く、公知の補強梁の構造を採用することができる。
その一例を
図3に示す。第2杭連結部5は杭の鉛直方向の一部を包囲して杭に取り付け可能なように開閉可能な第2蓋部7を有しており、補強梁A1が杭に取付けられたときに、前記第2区画部10cの端部と第2蓋部7とによって杭の全周を覆う構造となっている。
【0022】
第1杭連結部4の第1蓋部6及び第2杭連結部5の第2蓋部7はそれぞれ補強梁A1の補強梁本体部10にヒンジ継手11、12を介して連結されており、ボルトによって補強梁本体部10に締結される。
【0023】
本発明の補強梁A1は第1杭連結部4の構造及びこの第1杭連結部4の杭への取付け方法に特徴があるので、以下では、第1杭連結部4の杭への取付け方法について説明する。
【0024】
図5Aは、補強梁A1を2つ用いて3本の杭(P1、P2、P3)同士を同一高さで連結する過程を示す図であり、
図5Bは3本の杭同士を同一高さで連結した状態を示す図である。
図5A、
図5Bに示すように、2つの補強梁A1のそれぞれの第1杭連結部4が中央の杭P2の鉛直方向の一部の半周部を覆うことにより、杭P2の鉛直方向の一部の全周を包囲するようになっている。
【0025】
補強梁A1の第1杭連結部4の取付け方法の各工程の詳細を
図6A〜
図6Gに基づいて工程順に説明する。この取付け方法では補強梁A1を2つ用いるが、以下では、2つの補強梁A1の一方を補強梁A1と表記し、他方を補強梁A1’と表記する。
図6A:補強梁A1の第1蓋部6と補強梁本体端部21とが杭P2の半周部を覆うように補強梁A1を配置する。
図6B:補強梁A1’を杭P2側に引き込んで杭P2に対して補強梁A1の筒体の中心軸と補強梁A1’の筒体の中心軸とを一致させる。
図6C:補強梁A1’の第1蓋部6’をヒンジ継手11’の軸回りに回転させる。
図6D:補強梁A1’の第1蓋部6’が閉合位置となるようにする。
図6E:補強梁A1’の第1蓋部6’を杭P2側に引き込み、補強梁A1’の第1蓋部6’と補強梁本体端部21’とが杭P2の半周部を覆うように補強梁A1’を配置する。
図6F:補強梁本体部10’を杭P2側に引き込み、補強梁A1’の補強梁本体端部21’と第1蓋部6の蓋端部22とを突き合わせると共に、補強梁A1’の第1蓋部6’の蓋端部22’と補強梁A1の補強梁本体端部21とを突き合わせる。
図6G:補強梁A1の第1蓋部6の蓋端部22と補強梁A1’の補強梁本体端部21’とをボルト30によって締結すると共に、補強梁A1’の第1蓋部6’の蓋端部22’と補強梁A1の補強梁本体端部21とをボルト30によって締結する。
上述した通り、補強梁の杭連結部にはヒンジを介して開閉可能な蓋構成を備えているため、杭の周囲のスペースが狭い場合であっても、杭取付位置への補強梁の誘導の際には蓋部を開蓋しておくことで他の部位への衝突が回避でき侵入角度の調整や取付深度を変更するなど手間のかかる作業が軽減される。また侵入角度を調整しない代わりに梁本体の長さを自在に伸縮させるなどするような特別な構成も必要としないため、構成が簡素化でき強度やコスト的にも有効である。
【0026】
(補強梁A2)
補強梁A2の全体構造を
図7に示す。
図7に示す補強梁A2は、
図3に示した補強梁A1の第1杭連結部4の構成を変更したものである。補強梁A1では第1蓋部6をヒンジ継手11によって開閉可能としたが、補強梁A2では第1蓋部6を
図7に示すように第1蓋部6が閉合した状態になるようにボルト30によって補強梁本体端部に固定されている。
【0027】
この補強梁A2の第1杭連結部4の取付け方法の各工程の詳細を
図8に基づいて工程順に説明する。この取付け方法では補強梁A2を2つ用いるが、以下では、2つの補強梁A2の一方を補強梁A2と表記し、他方を補強梁A2’と表記する。
図8A:補強梁A2の第1蓋部6と補強梁本体端部21とが杭P2の半周部を覆うように補強梁A2を配置する。
図8B:補強梁A2’を補強梁A2’の中心軸に対して垂直の方向に杭P2側に引き込んで杭P2に対して補強梁A2の中心軸と補強梁A2’の中心軸とを一致させる。
図8C:補強梁A2’を補強梁の中心軸に平行な方向に杭P2側に引き込んで、補強梁A2’の補強梁本体端部21’と補強梁A2の第1蓋部6の蓋端部22とを突き合わせると共に、補強梁A2’の第1蓋部6’の蓋端部22’と補強梁A2の補強梁本体端部21とを突き合わせて、補強梁A2’の第1蓋部6’と補強梁本体端部21’とが杭P2の半周部を覆うようにする。
図8D:補強梁A2の第1蓋部6を補強梁A2’の補強梁本体端部21’にボルト30によって固定し、また、補強梁A2’の第1蓋部6’を補強梁A2の補強梁本体端部21にボルト30によって固定する。
【0028】
(補強梁A3)
補強梁A3の全体構造を
図9に示す。
図9に示す補強梁A3は、
図3に示した補強梁A1の第1杭連結部4の構成を変更したものである。補強梁A1では補強梁本体10の端部に第1蓋部6を1つ設けてこれをヒンジ継手11によって開閉可能とした。これに対し、補強梁A3では第1蓋部6aと第1蓋部6bとを補強梁本体部10の一端側の相対向する位置に配置し、補強梁A3を杭に取付けた時、補強梁本体10の一端側と第1蓋部6aと第1蓋部6bとで杭の半周部を覆う構造となっている。
また、第1蓋部6aは補強梁本体部10にボルト30によって固定されており、第1蓋部6bはヒンジ継手11を介して補強梁本体部10に連結されている。
【0029】
この補強梁A3の第1杭連結部4の取付け方法の各工程の詳細を
図10A〜
図10Gに基づいて工程順に説明する。この取付け方法では補強梁A3を2つ用いるが、以下では、2つの補強梁A3の一方を補強梁A3と表記し、他方を補強梁A3’と表記する。
図10A:補強梁A3の第1蓋部6a及び第1蓋部6bと補強梁本体端部21とが杭P2の半周部を覆うように補強梁A3を配置する。
図10B:補強梁A3’を杭P2側に引き込んで杭P2に対して補強梁A3の中心軸と補強梁A3’の中心軸とを一致させて、補強梁A3’の第1蓋部6a’と補強梁A3の第1蓋部6bとを対向させる。
図10C:補強梁A3’の第1蓋部6b’をヒンジ継手11の軸回りに回転させる。
図10D:補強梁A3’の第1蓋部6b’が閉合位置となるようにする。
図10E:補強梁A3’の第1蓋部6b’を杭P2側に引き込み、補強梁A3’の第1蓋部6b’と補強梁A3の第1蓋部6aとを対向させる。
図10F:補強梁A3’を杭P2側に引き込み、補強梁A3’の第1蓋部6a’の蓋端部22a’と補強梁A3の第1蓋部6bの蓋端部22bとを突き合わせると共に、補強梁A3’の第1蓋部6b’の蓋端部22b’と補強梁A3の第1蓋部6aの蓋端部22aとを突き合わせる。
図10G:補強梁A3の第1蓋部6aの蓋端部22aと補強梁A3’の第1蓋部6b’の蓋端部22b’とをボルト30によって固定すると共に、補強梁A3の第1蓋部6bの蓋端部22bと補強梁A3’の第1蓋部6a’の蓋端部22a’とをボルト30によって固定する。
このように補強梁A3も補強梁A1と同様にヒンジを介して開閉可能な蓋構成となっているため、上述したように補強梁の取付の手間軽減や補強梁構成の簡素化、コスト面でメリットがある。
【0030】
次に、杭を4本連結する場合に使用される補強梁(以下「補強梁B」という)について説明する。
補強梁Bは
図2Aに示される補強構造において杭P2と杭P3とを連結するために用いられる。
なお、杭P1と杭P2との連結及び杭P3と杭P4との連結には上記した補強梁A1〜A3を用いることができる。
補強梁Bの第1杭連結部の構造は補強梁Aにおける第1杭連結部の構造と同じである。また、補強梁Bの第2杭連結部の構造も補強梁Aにおける第1杭連結部の構造と同じ構造とすることができる。
以下では補強梁Bの実施形態として補強梁B1、補強梁B2、補強梁B3の3つの実施形態について説明する。
【0031】
(補強梁B1)
補強梁B1の全体構造を
図11に示す。
この補強梁B1は補強梁本体部10の両端部にヒンジ継手11、12を介して第1蓋部6及び第2蓋部7を連結したものであり、第1蓋部6及び第2蓋部7は開閉動作を行うことができる。この補強梁B1は、杭に取付けられる他の補強梁であって同様の第1蓋部6及び第2蓋部7を有する補強梁(例えば補強梁A1)と組み合わせて用いることができる。
すなわち、この補強梁B1も上述したような補強梁A1やA3と同様なメリットを有する。
【0032】
(補強梁B2)
補強梁B2の全体構造を
図12に示す。
この補強梁B2は補強梁本体部10の両端部に第1蓋部6及び第2蓋部7をボルト30で固定したものであり、第1蓋部6及び第2蓋部7は開閉動作ができない。この補強梁B2は、杭に取付けられる他の補強梁であって同様の第1蓋部6及び第2蓋部7を有する補強梁(例えば補強梁A2または他の補強梁B2)と組み合わせて用いることができる。
【0033】
(補強梁B3)
補強梁B3の全体構造を
図13に示す。
この補強梁B3の補強梁本体部10の両端部は、
図9に示した補強梁A3の第1杭連結部4と同様に第1蓋部6a、第1蓋部6bが設けられている。補強梁B3の第1蓋部6a、第1蓋部6bは、他の補強梁B3の第1蓋部6a及び第2蓋部6bと共同して杭を包囲するようになっている。この補強梁B3は、杭に取付けられる他の補強梁であって同様の第1蓋部6a及び第2蓋部6bを有する補強梁(例えば補強梁A3または他の補強梁B3)と組み合わせて用いることができる。
すなわち、この補強梁B3も上述したような補強梁A1やA3と同様なメリットを有する。
【0034】
図14Aは2つの補強梁A1と1つの補強梁B1とを用いて杭P1〜P4を同一高さで連結する取付け方法の過程を示す図であり、
図14Bは取り付け完了の状態を示す図である。
【0035】
補強梁A1をその第1杭連結部4を介して、また補強梁B1をその第1杭連結部4を介してそれぞれ杭P2に取付けた後、杭P2と補強梁A1の第1杭連結部4及び補強梁B1の第1杭連結部4との取り合い部にグラウトを注入して杭P2と補強梁A1の第1杭連結部4及び補強梁B1の第1杭連結部4とを一体化する。この一体化工程については後述する。
【0036】
次に、各杭の中心を結ぶ線が四角形を形成するような4本の杭を連結する場合に使用される補強梁(以下「補強梁C」という)について説明する。
補強梁Cとしては補強梁C1、補強梁C2及び補強梁C3の3つのタイプを以下に示す。
【0037】
(補強梁C1)
補強梁C1の全体構造を
図15に示す。
補強梁C1は、浮力函部3の両端に第1杭連結部4と第2杭連結部5が設けられる。
第1杭連結部4は、一方の補強梁本体端部21に設けられた、取り付けられる杭周面の一部を覆うような形状を有する部位を有している。また、第2杭連結部5も同様に、他方の補強梁本体端部21′に設けられた、取り付けられる杭周面の一部を覆うような形状を有する部位を有している。第1杭連結部4及び第2杭連結部5はそれぞれ、杭に取付けられたときに杭外周の半周を包囲するような形状となっている。なお第1杭連結部4(又は第2杭連結部5)の端部を結ぶ直線L1と補強梁本体の長さ方向の軸線L2とのなす角度(θ)はθ=45°となるように形成されており、そのため杭を補強梁C1を2つ用いて包囲するように取り付けた場合、各補強梁本体の軸線L2は互いに直交するように配置される事となる。そのため、このような補強梁C1を4つ用いれば、
図18Aに示すように、各杭の中心線を結ぶ線が四角形を形成するような4本の杭P1,P2,P3,P4を互いに連結する事が可能となる。
【0038】
(補強梁C2)
補強梁C2の全体構造を
図16に示す。補強梁C2も
図15の補強梁C1と同様、各杭の中心線を結ぶ線が四角形を形成するような4本の杭を互いに連結するための補強梁である。
補強梁C2は、
図15に示した補強梁C1において、第1杭連結部4の外周面に補強リブ18を設け、第2杭連結部5の外周面に補強リブ18′を設けたものである。
この補強リブ18、18′は第1及び第2杭連結部それぞれの外周面の杭長さ方向の所定高さに形成されており、リブの数は1つ又は複数設けられている。これにより、第1杭連結部及び第2杭連結部の構造強度を高めることができる。
図18Bは補強梁C1を使用して4本の杭を連結した状態を示す。
【0039】
(補強梁C3)
補強梁C3の全体構造を
図17に示す。補強梁C2も
図15の補強梁C1と同様、各杭の中心線を結ぶ線が四角形を形成するような4本の杭を互いに連結するための補強梁である。
補強梁C3は、
図16に示した補強梁C2において、第1杭連結部4及び第2杭連結部5と浮力函部3とを連結部材19、19′で連結したものである。
杭と杭との間隔は一定ではない場合があり、そのような場合、それぞれの杭間隔に応じた補強梁を準備するとコストが大きくなる。補強梁C3は、第1杭連結部4及び第2杭連結部5を同一仕様のものとする一方、第1杭連結部4と第2杭連結部5との間隔は浮力函部3の長さを調節することによって補強梁の長さを調節するものである。浮力函部と第1杭連結部4及び第2杭連結部5との連結は1杭連結部4と浮力函部3との連結部及び第2杭連結部5と浮力函部3との連結部の周囲に帯状の連結部材
19、19′を配設してボルトを用いて連結固定することができる。
図18Cは補強梁C3を使用して4本の杭を連結した状態を示す。
【0040】
次に、複数の杭を連結する場合において、そのうちの少なくとも1本の杭を3つの補強梁の第1杭連結部で共同して包囲する補強工法の例について述べる。
図19に示したものは6本の杭P1〜P6を6つの補強梁を用いて連結したものである。このような補強工法においては
図20A〜Cに示したような3種類の補強梁D1、D2、D3を用いることができる。
杭P3、杭P6は1本の杭を2種類、3つの補強梁の第1杭連結部によって包囲する構造を有しており、各杭を連結する補強梁はその軸線が互いに直交している。
【0041】
(補強梁D1)
補強梁D1を
図20Aに示す。この補強梁D1は、第1杭連結部4及び第2杭連結部5は同形状であり、それぞれが杭に取り付けた時に前述した補強梁C1−C3と同様、杭外周の半周を包囲する形状を有している。この補強梁D1は
図19に示す杭補強構造において、杭P1と杭P2との間及び杭P5と杭P6との間を連結する。
【0042】
(補強梁D2)
補強梁D2を
図20Bに示す。この補強梁D2は、第1杭連結部4が杭の半周に満たない部分を包囲する形状を有しており、第2杭連結部5は杭の半周を包囲する形状を有している。この補強梁D2は
図19に示す杭補強構造において、杭P1と杭P3との間、杭P2と杭P4との間、杭P3と杭P5との間、及び杭P4と杭P6との間を連結する。
【0043】
(補強梁D3)
補強梁D3を
図20Cに示す。この補強梁D3は、2つの補強梁D2の第1杭連結部4が包囲した杭の残りの領域を包囲する形状を有している。
この補強梁D3は
図19に示す杭補強構造において、杭P3と杭P4との間を連結する。
杭P3及び杭P4はそれぞれ2つの補強梁D2の第1杭連結部と1つの補強梁D3の第1杭連結部又は第2杭連結部とで共同して杭の全周が包囲される。
【0044】
次に、複数の杭を連結する場合において、そのうちの少なくとも1本の杭を4つの補強梁の第1杭連結部で共同して包囲する補強工法の例について述べる。
図21に示したものは9本の杭P1〜P9を12の補強梁を用いて連結したものである。このような補強工法においては
図20B及び
図20Cに示したような2種類の補強梁D2、D3を用いることができる。
図21に示すように、杭P2,杭P4、杭P6及び杭P8の全周は2つの補強梁D2の第1杭連結部と1つの補強梁D3の第1杭連結部又は第2杭連結部によって共同して包囲され、杭P9の全周は4つの補強梁D3の第1杭連結部又は第2杭連結部によって包囲される。
【0045】
補強梁C1〜C3及び補強梁D1〜D3は、図に示すように、第1杭連結部4と浮力函部3とはボルト30又は連結部材37によって結合される構造となっており、同じく第2杭連結部5と浮力函部3ともボルト30又は連結部材37によって結合される構造となっている。なお、第1杭連結部と浮力函部の結合構造と第2杭連結部と浮力函部の結合構造は互いに異なる構造で結合されているものであっても良い。つまり一方の杭連結部と浮力函部はボルト、他方の杭連結部と浮力函部は連結部材といったように異なる結合構造であっても良い。
杭に補強梁を取付ける際には、補強梁本体中央部である浮力函部3、第1杭連結部4及び第2杭連結部5を一体化させた補強梁の形態で取り付け作業を行っても良いが、浮力函部3、第1杭連結部4及び第2杭連結部5が分離した状態で用いても良い。つまり、杭P1と杭P2との間を補強梁で連結する際には、まず、第1杭連結部4を杭P1に取付けて一体化すると共に第2杭連結部を杭P2に取付けて一体化する。その後第1杭連結部4及び第2杭連結部5の間に浮力函部3を配置して、浮力函部3と第1杭連結部4及び第2杭連結部5それぞれとをボルト30又は連結部材37で一体化する。
このような分離構成は、各杭の間隔が長い場合、浮力函部と連結部とを一体化した状態では重量の問題等で運搬が困難な場合などにメリットがある。また連結部と浮力函部とを別体構成としておくことによって、杭間隔が変動した場合には浮力函部の構成だけを調整したもので適用できる、という利点もある。
【0046】
浮力函部3、第1杭連結部4及び第2杭連結部5が分離した状態にある補強梁を杭に取付ける作業について
図22A〜
図22Iに示す。
まず、
図15に示した補強梁C1を用いる場合について以下図に基づいて説明する。
図22A:杭P1に二つの補強梁の第1杭連結部4、4′を近づける。
図22B:第1杭連結部4、4′のフランジ38と38′とを突き合わせる。
図22C:第1杭連結部4、4′のフランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。
図22D:第1杭連結部4のフランジ39に浮力函部3のフランジ39′を近づける。
図22E:第1杭連結部4のフランジ39と浮力函部3のフランジ39′とを突き合わせる。
図22F:第1杭連結部4のフランジ39と浮力函部3のフランジ39′とをボルト30で連結固定する。
図22G:第1杭連結部4′のフランジ39に浮力函部3′のフランジ39′を近づける。
図22H:第1杭連結部4′のフランジ39と浮力函部3′のフランジ39′とを突き合わせる。
図22I:第1杭連結部4′のフランジ39と浮力函部3′のフランジ39′とをボルト30で連結固定する。
【0047】
同様に
図16に示した補強梁C2を用いる場合における補強梁の一体化工程を
図23に示した。
補強梁C2は補強梁C1において第1杭連結部及び第2杭連結部の外周にリブ18を設けたものであり、補強か一体工程は補強梁C1に示したものと同じである。
【0048】
更に
図17に示した補強梁C3を用いる場合における補強梁の一体化工程を
図24に示した。
補強梁C3を用いた補強工法は第1杭連結部4、4′と浮力函部3、3′との連結を連結部材19を用いて行う点で
図23に示した補強梁C2の補強工法と異なる。
そこで、補第1杭連結部4、4′と浮力函部3、3′との連結工程を
図24D〜
図24Iに基づいて説明する。
図24D:第1杭連結部4の連結端部4a側に連結部材19を引き込む。
図24E:第1杭連結部4の連結端部4aを連結部材19の一方の端部に挿入する。
図24F:連結部材19の他方の端部に浮力函部3の端部を挿入しリベットで連結固定する。
図24G:第1杭連結部4′の連結端部4a′側に連結部材19′を引き込む。
図24H:第1杭連結部4′の連結端部4a′を連結部材19′の一方の端部に挿入する。
図24I:連結部材19′の他方の端部に浮力函部3の端部を挿入しリベットで連結固定する。
【0049】
1本の杭を3つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程を
図25A〜25Fに示す。
この一体化工程の各工程は次の通りである。
図25A:杭P1に二つの補強梁20a、20bの第1杭連結部4、4′を近づける。
図25B:第1の補強梁20aの第1杭連結部4のフランジ38と第2の補強梁20bの第1杭連結部4′のフランジ38′とを突き合わせる。
図25C:フランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。
図25D:第3の補強梁20cの第1杭連結部4”のフランジ38”を第1の補強梁20aのフランジ38及び第2の補強梁のフランジ38′に近づける。
図25E:フランジ38とフランジ38”と突き合わせると共に、フランジ38’とフランジ38”とを突き合わせる。
図25F:フランジ38とフランジ38”とをボルト30で連結固定し、フランジ38’とフランジ38”とをボルト30で連結固定する。
なお、フランジ38‘、38“は杭連結部4に設けられたリブ18、18’と一体的にて設けられていても良い。
【0050】
1本の杭を4つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程を
図26A〜26Iに示す。
この一体化工程の各工程は次の通りである。
図26A:杭P1に二つの補強梁20a、20bの第1杭連結部4、4′を近づける。
図26B:第1の補強梁20aの第1杭連結部4のフランジ38と第2の補強梁20bの第1杭連結部4′のフランジ38′とを突き合わせる。
図26C:フランジ38と38′とをボルト30で連結固定する。
図26D:第3の補強梁20cの第1杭連結部4”のフランジ38”を第1の補強梁20aのフランジ38に近づける。
図26E:フランジ38とフランジ38”と突き合わせる。
図26F:フランジ38とフランジ38”とをボルト30で連結固定する。
図26G:第4の補強梁20dを杭P1側に引き込む。
図26H:第4の補強梁20dの第1杭連結部4’’’のフランジ38’’’を第2の補強梁20bのフランジ38’及び第3の補強梁20cのフランジ38”と突き合わせる。
図26I:フランジ38’とフランジ38’’’とをボルト30で連結固定し、フランジ38”とフランジ38’’’とをボルト30で連結固定する。
なおここでもフランジは杭連結部に設けられたリブと一体的に設けられていても良い。
【0051】
上記で示した1本の杭を3つ又は4つの補強梁の連結部で包囲して一体化する工程においても、杭連結部と浮力函部との結合は
図22A〜
図22I及び
図23A〜
図23Iに示したボルト30による連結又は
図24A〜24Iに示した連結部材19による連結のどちらも同様に適用し得るため、ここでは説明を割愛する。
【0052】
このように連結部を杭に取り付けた後、杭と補強梁の第1杭連結部との取りあい部にグラウトを注入して杭と補強梁の第1杭連結部とを一体化することは既に述べた。以下では、この一体化工程の例を
図27、
図28A〜
図28C、
図29A〜
図29Cに基づいて以下説明する。
図27は第1杭連結部4と杭P2との取り合い部にグラウトを注入して一体化する時の状態を示す図であり、補強梁を杭P2に取付けるに際しては予め杭P2に補強梁を支持するための支持材31を設けられている。
【0053】
この支持材31の例を
図28A〜
図28Cに基づいて説明する。
図28A〜
図28Cに示した例では支持材31は、4分割された受け材33と複数の支持板32とからなり、各受け材33と各支持板32は、補強梁の施工前に水中溶接又はボルトによって杭P2に取り付けておく。支持材31は補強梁の鉛直方向の位置決めをすると共に、グラウト打設時の荷重を一時的に支持する機能を有する。
図28Bは
図28Aの支持材31の上面図である。
図28B及び
図28Cに示すように、受け材33の上面にはグラウトシール34を取り付けておく。
また、補強梁の第1杭連結部4及び第2杭連結部5の上端部及び下端部にはグラウトの漏出を防ぐための塞ぎ板23が設けられる。
【0054】
補強梁の杭連結部の下端部に設けられた塞ぎ板23及び支持材31に取り付けられたグラウトシール34は、第1杭連結部4が杭P2を包囲したときに杭連結部と杭とによって形成される空間の下端部を塞ぐようになっている。塞ぎ板23及びグラウトシール34は、第1杭連結部4を杭P2に取り付けた後に、杭P2と第1杭連結部4の取り合い部にグラウトを注入して杭P2と第1杭連結部4とを一体化する際に注入したグラウトが漏出するのを防ぐ。
【0055】
上記のように、支持材31を杭に施工すると共に、杭P2の表面にグラウトの強度を高めるために鉄筋を施工してもよい。
図中に示した前記塞ぎ板23は後述するように支持材31が塞ぎ板23を兼ねるようにする場合には、塞ぎ板23は補強梁の杭連結部の内壁の上端部のみに設けるようにしても良い。
なお、本願明細書では補強梁と杭とを一体化するために充填材としてグラウトを用いる場合について説明しているが、グラウトの代わりにコンクリートを用いても良い。
【0056】
図29は支持材の他の実施態様を示す図である。この例では、
図29Aに示した支持材31は
図29Bに示すように4分割された受け材33と複数の支持板32とからなり、受け材33を第1杭連結部4の形状に合わせて四角形状とし、その上に同じく四角形状の外観を有するグラウトシール34を載置し、第1杭連結部4の壁体端部に端部部材35を設けて、この端部部材35と支持材31との間をグラウトシール34でシールしたものである。このように支持材31が杭連結部の塞ぎ板23を兼ねることにより、
図28に示したような杭連結部の底面側の塞ぎ板23を省略することができる。なお、
図29Cではシール効果を確実にするために壁体端部に端部部材35を設けたが、壁体の厚みが充分ある場合にはこの端部部材35は省略することができる。
施工後の補強梁は、引張り力に対してはボルトが抵抗し、補強梁が受ける圧縮力に対してはグラウトが抵抗する。
【0057】
図30A〜Cに補強梁A1の第2杭連結部5における第2蓋部7と塞ぎ板23とを一体化して設けた例を示す。
図30Aは補強梁A1の平面図であり、補強梁A1の第2杭連結部5の第2蓋部7と塞ぎ板23とが一体に設けられている。
図30Bは第2蓋部を閉合した状態を示し、
図30Cは補強梁A1の正面図である。
【0058】
図31A〜Cに
図30に示した補強梁A1の第2杭連結部を杭P1に取付ける様子を示す。
図31Aは塞ぎ板23を有する第2蓋部7を閉合することによって杭P1を包囲する様子を示し、
図31Bは第2蓋部7によって杭P1を包囲した後、第2杭連結部5と杭P1との取り合い部にグラウトを注入して一体化した状態を示す図であり、
図31CのA−A断面を示す。
図31Cは杭P1及び該杭P1に取付けられた補強梁A1の正面図である。
なお、上記では、補強梁A1の第2杭連結部5における第2蓋部7と塞ぎ板23とを一体化して設けた例を示したが、第1杭連結部4においても同様にして塞ぎ板を設けることができる。
また、ここでは補強梁A1を例に説明しているが、上述した他の実施態様に係る補強梁においても同構成を設ける事が可能である。つまり補強梁D2や補強梁D3のように柱部材を3つで包囲する場合においても、同様に分割された塞ぎ板を予め補強梁の連結部に一体化しておき、杭にとりつけて一体化した時に塞ぎ板が補強梁下端部全体を塞ぐ構成であって良い。勿論、一つの補強梁の連結部に補強梁下端部全体を覆う塞ぎ板が一体的に形成されているものであっても良い。
【0059】
次に補強梁を杭に取り付ける方法の作業手順を
図7に示した補強梁A2を用いた場合を例にして、
図32A〜
図32Fに基づいて説明する。
図32A〜Fにおける(a)は水中構造物の正面図であり、(b)は水中構造物の平面図である。
【0060】
(1)支持材取付工程(
図32A参照)
図32Aは補強梁を杭Pに取り付ける位置を決めると共にグラウト打設時に補強梁の荷重を一時的に支持するための支持材31を水中溶接又はボルトによって取り付ける工程を示す図である。
【0061】
(2)補強梁誘導工程(
図32B参照)
図32Bは補強梁20を所定の杭Pの位置に誘導する工程を示したものである。
図32Bの(b)に示すように補強梁20の4隅には補強梁20を所定の位置に誘導するための4本のワイヤ41が設けられている。補強梁20は浮力函部の浮力によって水面に浮かんだ状態とされ、ワイヤ41を適宜の杭Pに掛け回して各ワイヤ41をウインチ40によって巻き上げることによって補強梁20を目的の杭の位置に誘導する。
【0062】
(3)仮固定工程(
図32C参照)
図32Cは補強梁20を所定の杭Pの位置に誘導して杭Pに仮固定する工程を示す図である。補強梁20の第2蓋部7が開放され、補強梁20がワイヤ操作によって所定の杭Pまで誘導されて、補強梁が杭Pに仮固定された状態を示している。
(4)蓋閉合工程(
図32D参照)
図32Dは蓋部7を閉合する状態を示している。
【0063】
(5)蓋閉合完了工程(
図32E参照)
図32Eは蓋部7を閉合しボルトを締結して蓋部7の閉合を完了した状態を示している。
【0064】
(6)注水・グラウト注入工程(
図32F参照)
図32Fは、補強梁20の浮力函部3内に液体(水、海水等)を注入して補強梁20を所定の深さまで沈降させて支持体31によって支持した状態を示している。この後、杭連結部の杭取り合い部にグラウトを注入し固化させて補強梁20と杭Pとを一体化させることにより、補強作業を終了する。
なお、支持体31の位置を適宜に調節することにより、補強梁20の一部が水面上に現れるようにしても良いし、補強梁20を更に深い位置で杭Pに取り付けてもよいが、
図32Fに示すように水面下の浅い位置に取り付けることにより高い補強効果が得られる。
【0065】
上記の実施形態では柱部材を補強梁によって3本または4本の杭を連結する場合について述べた。しかしながら、本発明の補強方法は4本以上の柱部材を補強梁によって連結する場合にも適用できる。すなわち、複数の柱部材の内、隣り合う柱部材P1〜Pn(n≧4)を連結する際には、柱部材P1と柱部材P2、及び、柱部材Pn−1と柱部材Pnの連結には補強梁A1〜A3を用い、柱部材P2〜柱部材Pn−1の連結には補強梁B1〜B3を用いることができる。
【0066】
その場合、補強工法は以下の工程1)〜4)を有することでなされる。
1)柱部材P1、Pnを第1番目の前記補強梁及び第n−1番目の前記補強梁の第2柱部材連結部によって包囲する第1の包囲工程
2)前記第1の包囲工程後、前記柱部材P1、Pnと各補強梁の第2柱部材連結部との間に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程
3)前記柱部材P2〜Pn−1を第2番目の補強梁から第n−2番目の前記補強梁のそれぞれの第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部によって包囲する第2の包囲工程
4)前記第2の包囲工程後、各柱部材P1〜Pnと各補強梁の第1柱部材連結部及び第2柱部材連結部との間に充填材を注入して補強梁と柱部材とを一体化する工程
【0067】
本発明の補強梁20の高さ(梁高)は杭Pの直径よりも大きな寸法とすると共に補強梁20を水面下の浅い杭部分に取り付けることが補強効果を高める点から好ましい。杭径が1200mmφの杭に対しては補強梁としては例えば梁高さ2000mm、梁幅1500mmのものが使用される。梁高の高い部材を杭に被せて補強梁そのもので杭を高さ方向に補強するため、軸力の他、曲げモーメントを伝えるため杭同士を結合する効果は従来のストラットやブレースを用いるものに比べてより高いものとなる。そして、こうした効果により、少ない部材数での補強が可能となるため工期を短縮することができる。既設桟橋の補強では、施工期間の短縮化が必須であるため本発明の補強工法は特に有効である。
【0068】
また、地震の際には地盤は揺れの周期の特性(地震卓越周期)を示すが、補強梁によって水中構造物の杭を補強すると共に、補強梁の浮力函部内に重量のある固形材料(例えばコンクリート、礫等)を施工して水中構造物の重量付けを行い、水中構造物の固有周期を変えて地震卓越周期から水中構造物の固有周期を離すことによって耐震性を向上することができる。
【0069】
以上の通りであるが、本発明は上述した実施態様に限定されるものではない。例えば、上述した実施態様の補強梁は、直線上に配列した3本又はそれ以上の柱部材の連結、もしくは互いに直交する四角形の頂点状に配置された3本又はそれ以上の柱部材の連結で説明しているが、これには限定されない。即ち、第1の柱部材と第2の柱部材とを結ぶ直線状の配列方向に対し、第1の柱部材と他の1本、もしくはそれ以上の柱部材それぞれとを結ぶ直線状の配列方向とが同一、もしくは角度をなして交差する方向に配置されるような配置、例えば3本で三角形の各頂点を形成する、4本で四辺形の頂点や台形の頂点を形成するような柱部材の配置であっても、同様に適用可能なものである。なお、ここでいう「(2つの柱部材を結ぶ)配列方向と同一」とは、当該配列方向がなす直線上は勿論、実質的に直線上と実質同一と見做せるものも含むものである。
従って補強梁本体のそれぞれの端部に設けられる連結部は、1つの柱部材を4つまたはそれ以上の連結部で共同して包囲するような形状で構成されたものであっても良い。
また上記の説明では、水中の地盤に埋め込みによって固定された複数の柱で支持された水中構造体を有する構造物の補強を例として説明しているが、下端部が地盤の基礎に固定された複数の橋脚などの柱部材で支持されている橋桁などの構造体を有する地上構造物、例えば橋梁の補強についても同様に適用できるものである。
つまり本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能なものである。
本発明は構造物の柱部材を補強する補強梁に関する。地盤に下端部が固定された第1柱部材と、第1柱部材に隣接した第2柱部材と、第1柱部材に隣接した第3柱部材であって、第1柱部材と第3柱部材の配列方向が第1柱部材と第2柱部材の配列方向と交差する位置にある第3柱部材と、第1乃至第3柱部材を含む複数の柱部材で支持される上部構造体と、を有する構造物の補強梁であって、補強梁本体部と、補強梁本体部の一端部に設けられ第1柱部材に取り付けられる第1連結部と、補強梁本体部の他端部に設けられ第2柱部材に取り付けられる第2連結部と、を有し、第1連結部は第1柱部材に取り付けたときに、第1柱部材と第3柱部材との間に取り付けられる他の補強梁と共同して第1柱部材を包囲するように構成され、第2連結部は、第2柱部材に取り付けたときに、第2柱部材に取り付けられる他の補強梁と共同して第2柱部材を包囲するように構成されている補強梁。