特許第6896266号(P6896266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896266
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】頭部筋活動検知装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/22 20060101AFI20210621BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   A61B5/22 100
   A61B5/11 100
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-74761(P2017-74761)
(22)【出願日】2017年4月4日
(65)【公開番号】特開2018-175030(P2018-175030A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】諸麥 俊司
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−116609(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/073677(WO,A1)
【文献】 特開2018−061752(JP,A)
【文献】 特開2006−129885(JP,A)
【文献】 特開2012−120832(JP,A)
【文献】 特表2013−528871(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0157255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22,5/24−5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の頭部に装着される装着部材と、
前記装着部材が前記頭部に装着される時に前記頭部の側頭部と接触するように、前記装着部材における前記頭部側の面に設けられ、前記装着時において前記側頭部の筋活動により入力される力に応じた信号を出力するようにそれぞれ構成された複数の筋活動センサを含む、センサ部と、
前記センサ部の前記各筋活動センサからそれぞれ出力される前記信号に基づいて、前記側頭部における前記センサ部と対向する部分の筋肉の収縮が生じたか否かを判断する、判断部と、
を備え、
前記センサ部の前記各筋活動センサは、それぞれ
前記装着部材よりも前記頭部側に配置された誘電体と、
前記誘電体における前記装着部材側の面に設けられた第1電極と、
前記誘電体における前記頭部側の面に設けられた第2電極と、
を備えた、静電容量型の筋活動センサであり、
前記誘電体は、前記装着時において前記側頭部の筋活動により前記筋活動センサに入力される力に応じて前記第1電極及び第2電極間の距離を変化させられるように構成されており、
前記センサ部の前記複数の筋活動センサは、
前記複数の筋活動センサの各々の前記誘電体どうしが一体に構成され、
前記複数の筋活動センサの各々の前記第1電極どうしが一体に構成され、
前記複数の筋活動センサの各々の前記第2電極が、それぞれ前記誘電体を介して前記第1電極と対向した状態で、互いから離間している、頭部筋活動検知装置。
【請求項2】
前記センサ部の前記複数の筋活動センサは、前記頭部の前後方向に配列されている、請求項1に記載の頭部筋活動検知装置。
【請求項3】
前記装着部材には、一対の前記センサ部が設けられており、
前記一対のセンサ部のうち一方のセンサ部が、前記装着部材が前記頭部に装着される時に前記頭部の右側頭部と接触するように、前記装着部材に設けられており、
前記一対のセンサ部のうち他方のセンサ部が、前記装着部材が前記頭部に装着される時に前記頭部の左側頭部と接触するように、前記装着部材に設けられており、
前記判断部は、前記センサ部毎に、前記判断を行う、請求項1又は2に記載の頭部筋活動検知装置。
【請求項4】
前記装着部材は、前記頭部の少なくとも耳に掛けられるように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の頭部筋活動検知装置。
【請求項5】
前記装着部材は、眼鏡型フレームであり、
前記眼鏡型フレームのテンプル部に、前記センサ部の前記複数の筋活動センサが、前記テンプル部に沿って設けられている、請求項4に記載の頭部筋活動検知装置。
【請求項6】
前記眼鏡型フレームの両方の前記テンプル部にそれぞれ前記センサ部が設けられており、
前記判断部は、前記センサ部毎に、前記判断を行う、請求項5に記載の頭部筋活動検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の頭部の筋活動を検知する頭部筋活動検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の頭部の筋肉の動き(以下、筋活動ともいう。)を検知する頭部筋活動検知装置として、頭部に装着される環状のベルトと、該ベルトに設けられ、筋活動を検出するように構成された、筋活動センサと、を備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/073677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、頭部の筋肉の付き方(筋肉の位置や筋肉の動き方)には個人差があるものである。しかしながら、上述したような頭部筋活動検知装置では、検知対象とされる筋肉(例えば、側頭筋)の筋活動を1つの筋活動センサのみで検知することから、そのような着用者の個人差に十分に対応できず、安定的な筋活動の検知ができないおそれがあった。
【0005】
本発明は、着用者の個人差に対応でき、安定的な筋活動の検知が可能な、頭部筋活動検知装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の頭部筋活動検知装置は、
人間の頭部に装着される装着部材と、
前記装着部材が前記頭部に装着される時に前記頭部の側頭部と接触するように、前記装着部材における前記頭部側の面に設けられ、前記装着時において前記側頭部の筋活動により入力される力に応じた信号を出力するようにそれぞれ構成された複数の筋活動センサを含む、センサ部と、
前記センサ部の前記各筋活動センサからそれぞれ出力される前記信号に基づいて、前記側頭部における前記センサ部と対向する部分の筋肉の収縮が生じたか否かを判断する、判断部と、
を備えている。
【0007】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記センサ部の前記複数の筋活動センサは、前記頭部の前後方向に配列されていると、好適である。
【0008】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記装着部材には、一対の前記センサ部が設けられており、
前記一対のセンサ部のうち一方のセンサ部が、前記装着部材が前記頭部に装着される時に前記頭部の右側頭部と接触するように、前記装着部材に設けられており、
前記一対のセンサ部のうち他方のセンサ部が、前記装着部材が前記頭部に装着される時に前記頭部の左側頭部と接触するように、前記装着部材に設けられており、
前記判断部は、前記センサ部毎に、前記判断を行うと、好適である。
【0009】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記装着部材は、前記頭部の少なくとも耳に掛けられるように構成されていると、好適である。
【0010】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記装着部材は、眼鏡型フレームであり、
前記眼鏡型フレームのテンプル部に、前記センサ部の前記複数の筋活動センサが、前記テンプル部に沿って設けられていると、好適である。
【0011】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記眼鏡型フレームの両方の前記テンプル部にそれぞれ前記センサ部が設けられており、
前記判断部は、前記センサ部毎に、前記判断を行うと、好適である。
【0012】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記センサ部の前記各筋活動センサは、それぞれ
前記装着部材よりも前記頭部側に配置された誘電体と、
前記誘電体における前記装着部材側の面に設けられた第1電極と、
前記誘電体における前記頭部側の面に設けられた第2電極と、
を備えた、静電容量型の筋活動センサであり、
前記誘電体は、前記装着時において前記側頭部の筋活動により前記筋活動センサに入力される力に応じて前記第1電極及び第2電極間の距離を変化させられるように構成されていると、好適である。
【0013】
本発明の頭部筋活動検知装置において、
前記センサ部の前記複数の筋活動センサは、
前記複数の筋活動センサの各々の前記誘電体どうしが一体に構成され、
前記複数の筋活動センサの各々の前記第1電極どうしが一体に構成され、
前記複数の筋活動センサの各々の前記第2電極が、それぞれ前記誘電体を介して前記第1電極と対向した状態で、互いから離間していると、好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着用者の個人差に対応でき、安定的な筋活動の検知が可能な、頭部筋活動検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る頭部筋活動検知装置を、人間の頭部への装着状態で示す、概略図である。
図2図1の頭部筋活動検知装置の要部を、頭部への装着状態で示す、上面図である。
図3図1の頭部筋活動検知装置の要部を示す斜視図である。
図4図1の頭部筋活動検知装置のセンサ部を示す分解斜視図である。
図5図1の頭部筋活動検知装置による作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態について例示説明する。
【0017】
まず、図1図4を参照して、本発明の一実施形態に係る頭部筋活動検知装置1の構成を説明する。図1は、本実施形態の頭部筋活動検知装置1を、人間の頭部への装着状態で示している。頭部筋活動検知装置1は、人間の頭部の筋肉の動きを検知するものであり、例えば、介護現場で用いられるロボットや医療の現場で用いられる医療機器等のあらゆる装置に対する入力装置として好適に利用できる。
図1の例において、本実施形態の頭部筋活動検知装置1は、人間の頭部に装着される装着部材としての眼鏡型フレーム10と、複数の筋活動センサ120を有するセンサ部20と、センサ部20の各筋活動センサ120から出力される信号を取得して所定の信号処理を行う信号取得部30と、信号取得部30を介してセンサ部20から得られた信号に基づいて、判断処理や出力処理等の種々の処理を行うコンピュータ40と、を備えている。
ただし、頭部筋活動検知装置1は信号取得部30を備えなくてもよく、その場合、センサ部20の筋活動センサ120とコンピュータ40とが直接、有線又は無線により通信可能にされてもよい。また、頭部筋活動検知装置1はコンピュータ40を備えなくてもよい。
【0018】
図2は、図1の頭部筋活動検知装置1の眼鏡型フレーム10及びセンサ部20のみを、頭部への装着状態で示す、上面図である。図3は、図1の頭部筋活動検知装置1の眼鏡型フレーム10及びセンサ部20のみを、頭部へ装着されていない状態で示す、斜視図である。図4は、図1の頭部筋活動検知装置1のセンサ部20を示す分解斜視図である。
図1図3に示すように、センサ部20は、眼鏡型フレーム10に取り付けられている。これにより、眼鏡型フレーム10及びセンサ部20は、人間の頭部に装着される装着部100を構成している。センサ部20は、眼鏡型フレーム10に、クリップ又はマジックテープ(登録商標)等により取り外し可能に取り付けられてもよいし、あるいは、接着剤又は締結具等により固定されてもよい。
【0019】
眼鏡型フレーム10は、本実施形態において装着部材を構成しており、一般的な眼鏡フレームと同様に、着用者の鼻の上に掛けられるように構成されたフロント部11と、着用者の両側の耳に掛けられるように構成された一対のテンプル部12とを有する。フロント部11には一対のレンズが嵌め込まれて通常の眼鏡としても用いられてもよいし、レンズが嵌め込まれていなくてもよい。図の例において、フロント部11及びテンプル部12は、それぞれ例えば樹脂及び/又は金属で構成されており、フロント部11とテンプル部12との間はヒンジ連結されている。テンプル部12は、少なくともセンサ部20と接触する表面近傍の部分が、非導電性材料(例えば樹脂)から形成されている。
【0020】
センサ部20は、図1の例において、左右両側のテンプル部12にそれぞれ設けられている。センサ部20の筋活動センサ120は、図1及び図2に示すように、眼鏡型フレーム10が人間の頭部に装着される時に頭部の側頭部と接触するように、対応するテンプル部12における頭部側の面(すなわち、もう一方のテンプル部12と対向する側の面)に、設けられる。より具体的に、センサ部20は、図1の例のように、テンプル部12における頭部側の面のうち、フロント部11とは反対側の部分、すなわち装着時に着用者の耳の上側又は後側(図の例では耳の上側)に位置する部分に、設けられる。
図の例では、センサ部20が、装着時に着用者の耳の上側に位置するようにテンプル部12上に配置されていることから、着用者の耳の上側の筋肉M1L、M1R(側頭筋又は上耳介筋)の筋活動の検知が可能となる。一方、センサ部20が、装着時に着用者の耳の後側に位置するようにテンプル部12上に配置される場合、着用者の耳の後側の筋肉M2L、M2R(後耳介筋)の筋活動の検知が可能となる。
【0021】
図の例では、テンプル部12における頭部側の面が凹凸のない平滑面からなり、センサ部20は、その厚み分だけ、テンプル部12から頭部側へと突出している。しかし、センサ部20のテンプル部12からの突出高さが低減するよう又は無くなるよう、センサ部20は、テンプル部12の頭部側の面に形成された凹部内に収容されてもよい。
【0022】
センサ部20は、図1の例において、複数の筋活動センサ120が頭部の前後方向に配列された、センサアレイを構成している。より具体的に、センサ部20の複数の筋活動センサ120は、テンプル部12に沿って(すなわち、テンプル部12の延在方向と略平行な方向に沿って)一列に配列されている。これにより、センサ部20の複数の筋活動センサ120は、検知対象の筋肉M1L、M1Rが頭部の前後方向に動いても、これを正確に検知できる。
本例において、頭部筋活動検知装置1は、各筋活動センサ120から出力される信号を、それぞれ別々のチャンネルの信号として用いる。より具体的には、図2に示すように、着用者の左側頭部に装着される左側のテンプル部12Lに設けられたセンサ部20は、その左側のテンプル部12Lに沿って配列された4つの筋活動センサ120を有しており、これらの筋活動センサ120は、フロント部11に近い順番に、それぞれチャンネルCHL1〜CHL4に対応している。また、着用者の右側頭部に装着される右側のテンプル部12Rに設けられたセンサ部20は、その右側のテンプル部12Rに沿って配列された4つの筋活動センサ120を有しており、これらの筋活動センサ120は、フロント部11に近い順番に、それぞれチャンネルCHR1〜CHR4に対応している。
【0023】
ただし、テンプル部12に設けられたセンサ部20の複数の筋活動センサ120は、そのテンプル部12の頭部側の面上で、任意の方向に、任意の配列形態(一列又は複数列等)で、配列されてもよい。
また、センサ部20は、左側又は右側のいずれか一方の側頭部のみに対応して設けられてよい。すなわち、センサ部20は、いずれか一方のテンプル部12のみに設けられてもよい。
【0024】
上述のように、本実施形態の頭部筋活動検知装置1では、検知対象の筋肉に対向配置されるセンサ部20が複数の筋活動センサ120を含んでおり、これらの複数の筋活動センサ120によって、検知対象の筋肉の収縮を検知するようにされている。このため、後述するように、仮に1つの筋活動センサ120のみによって検知対象の筋肉の収縮を検知する場合に比べて、着用者に個人差のある頭部の筋肉の付き方(筋肉の位置や筋肉の動き方)に依らずに、安定的な筋活動の検知が可能になる。
【0025】
また、本例では、センサ部20が、眼鏡型フレーム10のテンプル部12に設けられているので、テンプル部12が着用者の耳に掛かるように装着されることによって、センサ部20が、側頭部上の所定位置に位置決めされる。これにより、例えば同じ測定対象者に複数回にわたって眼鏡型フレーム10を装着する場合に毎回同じ頭部上の位置に眼鏡型フレーム10ひいてはセンサ部20を配置することが可能となる。また、眼鏡型フレーム10の着用中に眼鏡型フレーム10ひいてはセンサ部20が位置ずれするのを抑制できる。よって、センサ部20を頭部上の所定位置に簡単に精度よく配置できる。また、眼鏡型フレーム10は、例えば環状のベルトに比べて、着用者の頭部に与え得る圧迫感を低減できるため、着用者の快適性を向上できる。
ただし、センサ部20は、眼鏡型フレーム10に限らず、例えば環状のベルト、ヘッドフォン型フレーム、又は耳掛け式フレーム等、人間の頭部に装着されるように構成された任意の装着部材に設けられてよい。ただし、装着部材は、例えば眼鏡型フレーム10又は耳掛け式フレーム等、少なくとも耳に掛けられるように構成されたものであると、装着部材ひいてはセンサ部20の位置ずれを効果的に抑制できる点で、好ましい。
【0026】
センサ部20の筋活動センサ120は、外力が筋活動センサ120に加わるとそれに応じた信号(例えば電気信号)を出力するものであれば、任意のタイプの筋活動センサ(例えば静電容量型の圧力センサ又は力センサ、圧電型の圧力センサ又は力センサ、感圧導電性ゴムを用いた圧力センサ又は力センサ等)から構成されてよい。本例において、筋活動センサ120は、静電容量型の筋活動センサであり、外力が加わるとそれに応じた電気信号(例えば電圧)を出力するように構成されている。
筋活動センサ120は、眼鏡型フレーム10が頭部に装着されている状態において頭部と接触するようにテンプル部12上に配置されているので、頭部の筋活動により筋活動センサ120に対応する部分の筋肉が、隆起したり、隆起していない状態に戻ったりすると、それにより筋活動センサ120に入力される加圧方向(押圧方向)又は減圧方向(押圧方向とは反対の方向)の力に応じた信号を出力する。
なお、本例では、入力される力に応じた信号を出力するように構成された筋活動センサ120に基づいて筋活動の検知を行うので、例えばそれ以外のセンサ(例えば非接触型のセンサ)に基づいて筋活動の検知を行う場合に比べて、より高精度な筋活動の検知が可能となる。
ただし、例えば、頭部筋活動検知装置1が、センサ部20の各筋活動センサ120からの信号に基づいて、着用者が噛んでいるか否かを判断する場合は、各筋活動センサ120によって筋収縮の程度を正確に把握できる必要はなく、各筋活動センサ120からの信号が、筋収縮によって入力される力に応じて変化すれば足りる。
【0027】
信号取得部30は、本例において、各筋活動センサ120と配線50を介して接続されており、各筋活動センサ120から出力される信号(すなわち、各チャンネルの信号)に対して、チャンネル毎に、所定の信号処理を行う。信号取得部30が行う信号処理は、例えば、筋活動センサ120から出力される信号(例えば電圧)に基づいて別の値(例えば静電容量値)を算出する処理や、アナログ−デジタル変換する処理等、任意の処理が可能である。
信号取得部30により信号処理された信号は、コンピュータ40によって用いられる。信号取得部30により信号処理された信号は、例えば有線又は無線の通信手段を介してコンピュータ40に出力されてもよいし、あるいは、USB等の外部記憶部を介してコンピュータ40に移されてもよい。
信号取得部30は、図1の例のように配線50を介して装着部100から離れて配置されてもよいし、あるいは、眼鏡型フレーム10又はセンサ部20に設けられて装着部100の一部を構成してもよい。
【0028】
コンピュータ40は、例えば、CPU又はMPU等からなる判断部と、RAM及び/又はROM等からなる記憶部と、ディスプレイ、プリンタ、出力端子等からなる出力部と、マウス、キーボード、入力端子等からなる入力部と、を有する。記憶部には、判断部が処理するためのプログラムや、種々のデータが記憶される。
本例において、コンピュータ40の判断部は、信号取得部30を介して各筋活動センサ120から出力される信号(各チャンネルの信号)に基づいて、左側、右側のテンプル部12毎に(すなわち左側、右側のテンプル部12L、12Rにそれぞれ設けられたセンサ部20L、20R毎に)、筋活動の検知に関する所定の判断処理を行う。具体的に、例えば、判断部は、眼鏡型フレーム10の着用者の左側頭部又は右側頭部の、それぞれセンサ部20に対応する部分の筋肉M1L、M1Rの収縮(隆起)が生じたか否かの判断処理を行う。判断部の処理については、後にさらに詳しく説明する。
判断部は、コンピュータ40のユーザによる入力部の操作に応じて、判断結果をディスプレイに表示してもよい。また、判断部は、判断結果に応じて制御信号を出力端子を介して他の装置へ出力してもよい。
【0029】
図3及び図4に示すように、本例のセンサ部20は、テンプル部12よりも頭部側に配置され、テンプル部12に沿って延在する1つの誘電体123と、誘電体123におけるテンプル部12側の面に設けられた1つの第1電極121と、誘電体123における頭部側の面(すなわち誘電体123における第1電極121とは反対側の面)に設けられた複数(具体的には4つ)の第2電極122と、を備えている。第1電極121と各第2電極122とは、それぞれ、配線50により信号取得部50に接続されている。各第2電極122どうしは、互いから略等間隔に離間されている。そして、第2電極122毎に、第2電極122とこれに対向する部分の誘電体123及び第1電極121とが、1つの筋活動センサ120を構成している。言い換えれば、センサ部20の複数の筋活動センサ120は、テンプル部12に沿って略等間隔に配列されており、各筋活動センサ120の誘電体123どうしは一体に構成され、各筋活動センサ120の第1電極121どうしは一体に構成され、各筋活動センサ120の第2電極122は、それぞれ誘電体123を介して第1電極121と対向した状態でテンプル部12に沿って、この例では略等間隔に、配列されている。各筋活動センサ120の誘電体123どうし、第1電極121どうしを、それぞれ一体に構成することにより、センサ部20の製造がより簡単となる。
ただし、各第2電極122どうしの間隔(ひいては筋活動センサ120どうしの間隔)は等間隔である必要はない。また、各筋活動センサ120の誘電体123どうし、及び/又は、第1電極121どうしは、それぞれ別体に構成されてもよい。
【0030】
第1電極121及び第2電極122は、外力が加わると柔軟に変形可能に構成されることが好ましい。これにより、筋活動センサ120が筋肉の動きに対してより忠実に追従するように変形でき、ひいては、より高精度な筋活動の検知が可能となる。また、着用者の快適性を向上できる。
例えば、第1電極121及び第2電極122は、柔軟なシート状の導電性部材(例えば銅箔テープ又は導電布)から構成されて、誘電体123上に接着剤等により貼り付けられてもよいし、あるいは、真空成膜、メッキ処理、又は導電性ペーストの塗布によって、誘電体123上に形成されてもよい。
【0031】
誘電体123は、眼鏡型フレーム10の装着時において頭部の筋活動により筋活動センサ120に入力される力に応じて第1電極121及び第2電極122間の距離を変化させられるように、構成されている。第1電極121及び第2電極122間の距離の変化に応じて、第1電極121及び第2電極122間の静電容量が変化し、ひいては、筋活動センサ120から配線50を介して信号取得部30へ出力される信号(例えば電圧)が変化する。これにより、筋活動センサ120に入力される力の検知、ひいては、筋活動センサ120に対応する部分での側頭部の筋活動の検知が、可能となる。
【0032】
誘電体123は、外力が加わると柔軟に変形可能に構成されることが好ましい。これにより、筋活動センサ120が筋肉の動きに対してより忠実に追従するように変形でき、ひいては、より高精度な筋活動の検知が可能となる。また、着用者の快適性を向上できる。
本例では、誘電体123は、その全体が、樹脂の発泡体(例えばウレタンフォーム)から構成されている。ただし、誘電体123は、複数の誘電体材料層が積層されてなる積層構造からなるものでもよく、その場合、例えば一部の層のみが樹脂の発泡体からなるものでもよい。
【0033】
本例では、各筋活動センサ120の誘電体123どうしが一体に構成されているが、誘電体123が外力に応じて柔軟に変形可能に構成されていることから、一方の筋活動センサ120に力が入力された時に、隣接する他の筋活動センサ120も同様に変形してしまうこと(すなわち筋活動センサ120どうしの干渉)を、効果的に抑制できる。すなわち、センサ部20の各筋活動センサ120が、個々に独立して動作することができる。
【0034】
ここで、図5を参照して、コンピュータ40の判断部が、信号取得部30を介して各筋活動センサ120から出力される信号に基づいて行う判断処理として、ある測定対象者(ここでは「測定対象者X」とする。)の左側頭部又は右側頭部の、それぞれセンサ部20に対応する部分の筋肉M1L、M1Rの収縮(隆起)が生じたか否かの判断処理の一例を説明する。
今回の測定に先立って、コンピュータ40の記憶部には、予め、測定対象者Xについて、今回の測定に用いるのと同じ頭部筋活動検知装置1を用いて測定して得られた基準測定データが記憶されている。本例では、測定対象者Xの基準測定データは、測定対象者Xが装着部100を着用した状態で左側の歯で噛んだ時に左側のテンプル部12Lに設けられた各筋活動センサ120から出力された信号(各チャンネルCHL1〜CHL4の信号)に基づき得られた左側基準波形WL0と、測定対象者Xが装着部100を着用した状態で右側の歯で噛んだ時に右側のテンプル部12Rに設けられた各筋活動センサ120から出力された信号(各チャンネルCHR1〜CHR4の信号)に基づき得られた右側基準波形WR0である。これらの左側基準波形WL0、右側基準波形WR0は、横軸をチャンネル、縦軸を各チャンネルの出力としたときの波形である。縦軸の各チャンネルの出力は、具体的には、各チャンネルの筋活動センサ120から出力される信号の値そのものでもよいし、あるいは、各チャンネルの筋活動センサ120から出力される信号に基づいて算出又は変換して得られる値でもよい。
【0035】
そして、今回の測定時において、判断部は、各テンプル部12L、12Rに設けられた各筋活動センサ120からの信号に基づいて、テンプル部12L、12Rにそれぞれ対応する測定結果としての左側比較波形、右側比較波形を得て、これらをそれぞれ左側基準波形WL0、右側基準波形WR0と比較し、その比較結果に基づいて、それぞれ左側、右側のセンサ部20L、20Rに対応する部分の筋肉M1L、M1Rの収縮(隆起)が生じたか否かの判断を行う。
【0036】
例えば、判断部は、テンプル部12L、12R毎に、測定結果として得られる比較波形と予め得られた基準波形とが近似しているか否かに基づいて、筋肉M1L、M1Rの収縮(隆起)が生じたか否かの判断を行う。
この場合、図5(a)の例のように、測定中のあるタイミングで得られた左側比較波形WL1、右側比較波形WR1を、それぞれ左側基準波形WL0、右側基準波形WR0と比較した結果、左側比較波形WL1が左側基準波形WL0に近似しており、右側比較波形WR1が右側基準波形WR0に近似していない場合、判断部は、左側のセンサ部20Lに対応する部分の筋肉M1Lに収縮が生じ、右側のセンサ部20Rに対応する部分の筋肉M1Rには収縮が生じなかった(ひいては、測定対象者Xは左側の歯のみで噛んだ)と判断する。また、図5(b)の例のように、測定中の別のタイミングで得られた左側比較波形WL2、右側比較波形WR2を、それぞれ左側基準波形WL0、右側基準波形WR0と比較した結果、左側比較波形WL2が左側基準波形WL0に近似しておらず、右側比較波形WR2が右側基準波形WR0に近似している場合、判断部は、左側のセンサ部20Lに対応する部分の筋肉M1Lには収縮が生じず、右側のセンサ部20Rに対応する部分の筋肉M1Rには収縮が生じた(ひいては、測定対象者Xは右側の歯のみで噛んだ)と判断する。
なお、比較波形と基準波形とが近似しているか否かの判断基準は、例えば、所定範囲を超える比較波形と基準波形とのずれがあるか否か等、任意の基準を用いてよい。
【0037】
頭部の筋肉の付き方(ひいては、筋肉の位置や筋肉の動き方)には個人差があることから、テンプル部12に設けられた複数の筋活動センサ120から出力された信号に基づいて得られる波形には、個人差がある。図5の例のように、測定時にテンプル部12に設けられた複数の筋活動センサ120から出力された信号に基づいて得られる比較波形を、別途予め同じ測定対象者から得られた基準波形と比較して、筋活動を検知することにより、そのような個人差にも対応し、安定的かつ高精度な筋活動の検知が可能になる。
【0038】
なお、上述した例に限られず、判断部は、テンプル部12L、12R毎に、同じ測定対象者から測定時に得られる比較波形と予め得られた基準波形とに基づいて、任意の方法で、筋活動の検知に関する判断を行ってよい。例えば、判断部は、テンプル部12L、12R毎に、比較波形と基準波形とからそれぞれ得られる値(例えば、平均値、最大値、積分値等)どうしを比較することにより、筋活動の検知に関する判断を行ってもよい。
【0039】
なお、図5の例において、コンピュータ40の判断部は、各筋活動センサ120から出力される信号に基づいて、測定対象者Xの左側頭部又は右側頭部の、それぞれセンサ部20に対応する部分の筋肉M1L、M1Rの収縮(隆起)が生じたか否かの判断結果に応じて、出力部により制御信号を他の装置(例えば、介護現場で用いられるロボットや医療の現場で用いられる医療機器等)へ出力してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の頭部筋活動検知装置は、例えば、介護や医療の現場等で用いられる種々の装置への入力装置として利用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 頭部筋活動検知装置
10 眼鏡型フレーム(装着部材)
11 フロント部
12、12L、12R テンプル部
20、20L、20R センサ部
30 信号取得部
40 コンピュータ
50 配線
100 装着部
120 筋活動センサ
121 第1電極
122 第2電極
123 誘電体
M1L、M2L、M1R、M2R 筋肉
図1
図2
図3
図4
図5