特許第6896275号(P6896275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 白井グループ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000004
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000005
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000006
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000007
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000008
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000009
  • 特許6896275-廃棄物の収集運搬処理方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896275
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】廃棄物の収集運搬処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/26 20120101AFI20210621BHJP
   G06Q 10/04 20120101ALI20210621BHJP
   B65F 5/00 20060101ALI20210621BHJP
   B65F 3/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   G06Q50/26
   G06Q10/04
   B65F5/00
   B65F3/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-152144(P2017-152144)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-32631(P2019-32631A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年7月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年2月8日 日経エコロジー2017年3月号記事にて公表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年6月21日 東京都「持続可能な資源利用」に向けたモデル事業の報告書にて公表
(73)【特許権者】
【識別番号】517276457
【氏名又は名称】白井グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176164
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 州志
(72)【発明者】
【氏名】白井 徹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 研二
(72)【発明者】
【氏名】豊泉 勝人
【審査官】 塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−155530(JP,A)
【文献】 特開2004−001991(JP,A)
【文献】 特開2003−141222(JP,A)
【文献】 特開2014−056291(JP,A)
【文献】 特開2009−040593(JP,A)
【文献】 特開平06−239401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0377445(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
B65F 3/00
B65F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の廃棄物排出事業者から出される廃棄物を、該廃棄物の量、種類及び排出日に応じて、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物排出業者が指定する複数の廃棄物処理事業者を使って収集運搬処理を行う前記廃棄物の収集運搬処理方法であって、
前記複数の廃棄物排出事業者と、前記複数の収集運搬事業者と、前記複数の廃棄物処理事業者とを契約を通して一体的に運営させる連携機能を有し、
前記連携機能によって行う前記廃棄物の収集運搬処理方法が、
ホストコンピュータおよび前記ホストコンピュータが有する情報記憶演算処理通信手段において、前記複数の廃棄物排出事業者の各位置情報と、前記複数の廃棄物排出事業者から出されるそれぞれの廃棄物の種類、量及び排出日と、前記複数の収集運搬事業者が有する各収集運搬車両の積載可能量と、前記各収集運搬車両が収集運搬及び処理のために立ち寄る前記廃棄物排出事業者の各地点における前記廃棄物の平均的な積込み所要時間と、前記収集運搬事業者が前記廃棄物を前記廃棄物処理事業者まで運搬して荷降ろしを行うときに要する平均的な荷降ろし所要時間と、前記複数の廃棄物排出事業者を経由して前記廃棄物処理事業者の一又は複数の事業者まで戻る移動時間と、を含む収集運搬処理情報を取得・管理し、前記収集運搬処理情報に基づき、前記廃棄物を収集運搬処理する必要最小の収集運搬車両台数と前記各収集運搬車両の収集運搬処理の最適コースを算定し選択する最小台数・コース選択工程、
前記必要最小の収集運搬車両台数と前記収集運搬処理の最適コースとを、情報端末機、端末コンピュータ及びインターネットの少なくともいずれかの手段を経由して前記複数の収集運搬事業者の中から選択する所望の収集運搬事業者に指示し、該指示に従って前記廃棄物を収集する工程、
前記収集した廃棄物を、前記複数の廃棄物処理事業者の中から前記情報端末機、端末コンピュータ及びインターネットの少なくともいずれかの手段を経由して指示される廃棄物処理事業者まで運搬する工程、及び
前記廃棄物の収集運搬及び処理の完了報告を前記複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物処理事業者からそれぞれ受け取り、少なくとも前記収集運搬及び処理の完了を記載した法的マニフェストを前記ホストコンピュータから前記複数の廃棄物排出事業者に電子情報として、又は書面で通知する工程を有し、
前記最小台数・コース選択工程では、前記複数の収集運搬事業者が合意する領域内で前記各収集運搬車両による前記収集運搬及び処理の所要時間が均等になるように平準化して振り分けることにより、前記最適な収集運搬コースが選択されることを特徴とする廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項2】
前記最小台数・コース選択工程は、前記複数の収集運搬事業者が合意する領域内において、前記複数の収集運搬事業者の各収集運搬車両が収集運搬及び処理の際に立ち寄る前記廃棄物排出事業者が、隣接する回収場所間距離として所定の距離の範囲内で密集又は近接する狭い地域を選んで、前記複数の各収集運搬車両の間で前記収集運搬及び処理の所要時間が均等になるように平準化して振り分けることにより前記収集運搬処理最適コースを設定することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の廃棄物の収集運搬処理方法において、
前記収集運搬車両は、前記最適な収集運搬コースとして選択されたコースに従って、車両基地から出発し、前記複数の廃棄物排出事業者の中から前記ホストコンピュータによって指示された事業者を次々に移動することにより廃棄物を収集し、前記廃棄物を前記複数の廃棄物処理事業者の中から前記ホストコンピュータによって指示された業者先まで運搬して下した後、前記収集運搬車両基地に戻るルートを有することを特徴とする廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項4】
前記ホストコンピュータが有する記憶装置には、前記廃棄物の収集運搬処理に関する各種の情報として、さらに、前記複数の収集運搬事業者がそれぞれ有する廃棄物収集運搬車両の台数、及び前記廃棄物収集運搬車両の各々が従来から使用している収集運搬コースの情報の少なくともいずれかが記憶され、前記ホストコンピュータが有する記憶装置に記憶された各種の情報は必要に応じて前記ホストコンピュータが有する表示装置に表示されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項5】
前記ホストコンピュータが有する記録装置には、さらに、前記最適な収集運搬コースに従って収集運搬を行うときに使用するコースの時間ごとのあらかじめ登録した平均的な交通渋滞の情報及びリアルタイムの交通情報の少なくともいずれかが格納されるとともに、前記最適な収集運搬コースが、前記各種の収集運搬処理情報に加えて、前記収集運搬を行う時間帯に発生する前記収集運搬コースの交通渋滞に関する情報に基づいて、最小の収集運搬車両台数を使って最短時間で収集運搬を行うことができるように選択されることを特徴とする請求項4に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項6】
前記ホストコンピュータ、及び前記情報端末機又は端末コンピュータの少なくともいずれかが、さらに、前記最適な収集運搬コースの情報を出力する出力装置を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項7】
前記ホストコンピュータが、前記契約に基づく費用、収集運搬に要する実際の費用、及び前記処理及び処分の費用の少なくとも何れかを算出し、それらの費用の少なくともいずれかを前記複数の収集運搬事業者間で一括して精算する精算手段を有し、必要に応じて、前記清算した費用が前記ホストコンピュータから前記複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物処理事業者の各業者に個別に通知されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項8】
前記最適な収集運搬コースにおいて、前記複数の廃棄物排出事業者の中で最終に立ち寄る廃棄物排出事業者の場所から、前記複数の廃棄物処理事業者の中から指示される廃棄物処理事業者の場所までの運搬コースは、最初に指定される第1の廃棄物処理事業者によって見積もられる廃棄物処理コストが他の廃棄物処理業者のそれよりも高い場合には、前記複数の廃棄物排出事業者がコスト的に許容する他の廃棄物処理事業者の中から、最短時間で前記収集運搬処理を行うことができる第2の廃棄物処理事業者を新たに選定し直すことにより前記廃棄物の収集運搬処理を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【請求項9】
前記複数の廃棄物排出事業者から受ける廃棄物処理の依頼は、電話、ファックス及びインターネットの少なくともいずれかの通信手段によって前記複数の収集運搬事業者又は前記連携を遂行する連携事業者に属する1又は2以上の営業事業者が受け、前記依頼を受けると同時、又は前記依頼を受けた後に、前記営業事業者から少なくとも前記複数の廃棄物排出事業者の名簿、及び前記廃棄物の量と種類が情報として前記ホストコンピュータに入力されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の廃棄物排出事業者から出される廃棄物を、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者を使って効率的に収集運搬処理することにより、運搬収集時に稼働させる車両の台数削減と稼働時間の短縮化を図ることができる廃棄物の収集運搬処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源循環、環境保全、及び資源の有効活用等の観点から、ごみ等の廃棄物や資源物の収集、運搬及び処理を効率的に、かつ、より低コストで行うことが求められており、特に、都市部においては社会的にも経済的にも大きな課題となっている。
【0003】
都市部では、大手事業者が入るオフィスビルから排出されるごみの収集、運搬及び処理は、比較的効率的に行われるのに対して、中小事業者や小規模店舗等からのごみについては効率的になっていないのが現状である。これは、排出場所が分散し、排出されるごみの種類も多岐にわたるだけでなく、排出量が少量で、排出頻度も定期的ではないためである。また、廃棄物や資源物の収集運搬業者は、ごみの排出事業者及び処理事業者と個別に契約しているため、同じ地域内で複数の排出事業者及び処理事業者が重複しながら、それぞれ独立して個別にごみの収集運搬処理にあたっている。そのため、小さくエリア内及び狭い道路で多くの収集運搬車両が行きかうことになり、都市部の交通混雑を助長するだけでなく、二酸化炭素や窒素酸化物の排出量の増大等の環境悪化の要因にもなっている。こういった点からも、効率的な廃棄物の収集運搬処理システムを構築することが必要である。
【0004】
廃棄物の管理システムについては、従来から様々な提案がなされている。例えば、廃棄物の処分に必要な各種の情報を、排出事業者、収集運搬事業者及び処分処理業者から集め、それらの情報を一括で管理することにより、廃棄物の収集から最終処理までの管理を容易に行うとともに、廃棄物が適正に、かつ、合法的に処理されたことを公開する廃棄物の管理システム又は廃棄物管理支援装置とそのプログラムが提案されている(特許文献1及び2を参照)。
【0005】
また、特許文献3には、中央基地と地域密着型に配慮したエリア基地の個々に組織化した情報技術により情報ネットワーク化し、該情報ネットワークによる連携のもとに、廃棄物の排出量及び種類に関わりなく排出情報をコンピュータによる情報技術により整理し、収集運搬企業に提供する小口排出産業廃棄物の適正な集荷システムが開示されている。この集荷システムは、散逸且つ、非定常に小口に排出する産業廃棄物を適正に集荷し、再資源処理施設に運搬することを目的としている。
【0006】
さらに、経済的なごみ収集輸送システムとして、非特許文献1には、ごみ収集域の各集積所のごみを処理場まで輸送するときに収集車の最大積量を考慮して、最小の時間で搬出輸送するものを最適な状態と定義して、数多くの収集輸送順序の組み合わせの中から、最適な収集順序を見出すために、動的計画法及び遺伝的アルゴリズムを用いた算定手法が提示されている。一方、特許文献4には、ごみ収集輸送システムに関するものではないものの、情報通信ネットワークに接続されたサーバーコンピュータにより構成された貨物の共同配送を支援するためのシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−83007号公報
【特許文献2】特開2012−221233号公報
【特許文献3】特開2004−246656号公報
【特許文献4】特開2004−213466号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】藤野 和徳、「遺伝的アルゴリズムによるごみ収集輸送計画」、土木会論文集、1997年、No.558/II−38、pp.139−146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記で述べたように、都市部には多くの廃棄物排出事業者が集中して存在しており、それら排出事業者は収集運搬事業者と個別に契約して、特定の廃棄物処理事業者を選んで廃棄物の処理を行っているのが現状である。そのため、複数の収集運搬事業者及び廃棄物処理事業者が同じ地域内で重複して廃棄物の収集運搬を行っており、小さいエリア内や狭い道路で多くの収集運搬車両が行きかう状況に至っている。さらに、廃棄物の収集運搬時間は特定の時間に集中して行われる傾向にあるため、同じ地域内で収集運搬時に稼働する車両の台数が結果的に多くなり、収集運搬処理が非効率となっている。これらは、都市部の交通混雑を助長する結果を招くだけでなく、二酸化炭素や窒素酸化物の排出量を増大させる等の環境悪化の要因にもなっている。
【0010】
また、廃棄物排出事業者の複数が離れた距離に散在する場合は、それら廃棄物排出事業者と個別に契約した収集運搬事業者が、わざわざ遠回りして依頼先である廃棄物排出事業者に立ち寄って廃棄物の収集運搬を行う必要がある。その場合、収集運搬車両は走行距離が長くなり、相対的に長時間にわたって稼働する結果となるため、環境面だけではなく、長時間労働による人件費の高騰や労働資源の不足及び処理コストの上昇等の経済性の点においても大きな負荷を発生させる。
【0011】
以上のような状況では都市部における廃棄物の収集運搬処理方法が将来的に行き詰るか又は、コスト的に大きな負担を強いられることが予想される。そのため、これまでとは発想を異にする新しい廃棄物の収集運搬処理方法を構築することが強く求められるようになってきた。
【0012】
しかしながら、前記の特許文献1〜2に記載された廃棄物の管理システム及び廃棄物管理支援プログラムは、ある特定の契約関係にある廃棄物排出事業者、収集運搬事業者及び廃棄物処理業者の元で、廃棄物の収集から最終処理までの管理及び廃棄物処理に関する情報の収集管理及び公開するものであって、その適用が限定的であり、効率的な収集運搬処理方法として適用するにはシステム的に十分でないことが分かった。
【0013】
前記特許文献3に記載の集荷システムは、主に小口排出産業廃棄物を適正集荷するため、全国的な中央基地及び地域密着型に配置したエリア基地を情報技術により情報ネットワーク化するものであるが、単なる情報の収集、管理及び提供を行う方法が開示されただけで、効率的な収集運搬処理を行うための具体的な方法についてはほとんど開示されておらず不明である。そのため、前記特許文献3に記載の方法を、効率的な収集運搬処理方法を構築するためにそのまま適用することは難しい。
【0014】
また、前記非特許文献1に記載されたごみ収集輸送システムは、前記の特許文献1〜2に記載された発明と同様に、特定の契約関係にある廃棄物排出事業者、収集運搬事業者及び廃棄物処理業者の元で最適な取集順序を見出すための算定手法であるが、都市部で大きな課題となっている効率的な収集運搬処理方法に対して、前記算定手法をどのように適用するのかについて具体的な開示がされていない。
【0015】
同様に、前記特許文献4に記載の貨物の共同配送を支援するためのシステムについても、廃棄物の効率的な収集運搬処理を行うための技術課題が何ら記載されておらず、その技術課題を解決するため、廃棄物を具体的にどのようにして共同配送する方法については不明である。
【0016】
本発明は、上記した公知例では解決できなかった従来の問題点に鑑みてなされたものであって、複数の廃棄物排出事業者から出される廃棄物を、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者を使って効率的に収集運搬処理することにより、運搬収集時に稼働させる車両の台数削減と稼働時間の短縮化を図ることができる廃棄物の収集運搬処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記特許文献1〜3に記載の廃棄物の管理システム、及び前記非特許文献1に記載のごみ処理システムを、更に発展及び進化させる形で構築した廃棄物の収集運搬処理方法である。すなわち、複数の廃棄物排出事業者と、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者と、複数の廃棄物処理事業者とを契約を通して一体的に連携させるという新しい概念のもとに、それらの各事業者が取り扱う廃棄物の収集運搬処理に関する各種の情報を一括で管理し、該各種の情報に基づいて廃棄物収集運搬車両の台数の最小化と最適コースの選択を行う工程、前記選択される収集運搬処理の最適コースに従って廃棄物を収集及び運搬する工程、及び廃棄物の処理運搬処理の完了について法的マニュフェストを含めて前記複数の廃棄物排出事業者に通知する工程を採用することにより、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0018】
本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、複数の廃棄物排出事業者から出される廃棄物を、該廃棄物の量、種類及び排出日に応じて、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物排出事業が指定する複数の廃棄物処理事業者を使って収集運搬処理を行う前記廃棄物の収集運搬処理方法であって、
前記複数の廃棄物排出事業者と、前記複数の収集運搬事業者と、前記複数の廃棄物処理事業者とを契約を通して一体的に運営させる連携機能を有し、
前記連携機能によって行う前記廃棄物の収集運搬処理方法が、
ホストコンピュータおよび前記ホストコンピュータが有する情報記憶演算処理通信手段において、前記複数の廃棄物排出事業者の各位置情報と、前記複数の廃棄物排出事業者から出されるそれぞれの廃棄物の種類、量及び排出日と、前記複数の収集運搬事業者が有する各収集運搬車両の積載可能量と、前記各収集運搬車両が収集運搬及び処理のために立ち寄る前記廃棄物排出事業者の各地点における前記廃棄物の平均的な積込み所要時間と、前記収集運搬事業者が前記廃棄物を前記廃棄物処理事業者まで運搬して荷降ろしを行うときに要する平均的な荷降ろし所要時間と、前記複数の廃棄物排出事業者を経由して前記廃棄物処理事業者の一又は複数の事業者まで戻る移動時間と、を含む収集運搬処理情報を取得・管理し、前記収集運搬処理情報に基づき、前記廃棄物を収集運搬処理する必要最小の収集運搬車両台数と前記各収集運搬車両の収集運搬処理の最適コースを算定し選択する最小台数・コース選択工程、
前記必要最小の収集運搬車両台数と前記収集運搬処理の最適コースとを、情報端末機、端末コンピュータ及びインターネットの少なくともいずれかの手段を経由して前記複数の収集運搬事業者の中から選択する所望の収集運搬事業者に指示し、該指示に従って前記廃棄物を収集する工程、
前記収集した廃棄物を、前記複数の廃棄物処理事業者の中から前記情報端末機、端末コンピュータ及びインターネットの少なくともいずれかの手段を経由して指示される廃棄物処理事業者まで運搬する工程、及び
前記廃棄物の収集運搬及び処理の完了報告を前記複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物処理事業者からそれぞれ受け取り、少なくとも前記収集運搬及び処理の完了を記載した法的マニフェストを前記ホストコンピュータから前記複数の廃棄物排出事業者に電子情報として、又は書面で通知する工程を有し、
前記最小台数・コース選択工程では、前記複数の収集運搬事業者が合意する領域内で前記各収集運搬車両による前記収集運搬及び処理の所要時間が均等になるように平準化して振り分けることにより、前記最適な収集運搬コースが選択されることを特徴とする廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[2]本発明は、前記最小台数・コース選択工程を実行するときには、前記複数の収集運搬事業者が合意する領域内において、前記複数の収集運搬事業者の各収集運搬車両が収集運搬及び処理の際に立ち寄る前記廃棄物排出事業者が、隣接する回収場所間距離として所定の距離の範囲内で密集又は近接する狭い地域を選んで、前記複数の各収集運搬車両の間で前記収集運搬及び処理の所要時間が均等になるように平準化して振り分けることにより前記収集運搬処理最適コースを設定することを特徴とする前記[1]に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[3]本発明は、前記[1]又は[2]に記載の廃棄物の収集運搬処理方法において、前記収集運搬車両は、前記最適な収集運搬コースとして選択されたコースに従って、車両基地から出発し、前記複数の廃棄物排出事業者の中から前記ホストコンピュータによって指示された事業者を次々に移動することにより廃棄物を収集し、前記廃棄物を前記複数の廃棄物処理事業者の中から前記ホストコンピュータによって指示された業者先まで運搬して降ろした後、前記収集運搬車両基地に戻るルートを有することを特徴とする廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[4]本発明は、前記ホストコンピュータが有する記憶装置には、前記廃棄物の収集運搬処理に関する各種の情報として、さらに、前記複数の収集運搬事業者がそれぞれ有する廃棄物収集運搬車両の台数、及び前記廃棄物収集運搬車両の各々が従来から使用している収集運搬コースの情報の少なくともいずれかが記憶され、前記ホストコンピュータが有する記憶装置に記憶された各種の情報は必要に応じて前記ホストコンピュータが有する表示装置に表示されることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[5]本発明は、前記ホストコンピュータが有する記録装置には、さらに、前記最適な収集運搬コースに従って収集運搬を行うときに使用するコースの時間ごとのあらかじめ登録した平均的な交通渋滞の情報及びリアルタイムの交通情報の少なくともいずれかが格納されるとともに、前記最適な収集運搬コースが、前記各種の収集運搬処理情報に加えて、前記収集運搬を行う時間帯に発生する前記収集運搬コースの交通渋滞に関する情報に基づいて、最小の収集運搬車両台数を使って最短時間で収集運搬を行うことができるように選択されることを特徴とする前記[4]に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[6]本発明は、前記ホストコンピュータ、及び前記情報端末機又は端末コンピュータの少なくともいずれかが、さらに、前記最適な収集運搬コースの情報を出力する出力装置を有することを特徴とする前記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[7]本発明は、前記ホストコンピュータが、前記契約に基づく費用、収集運搬に要する実際の費用、及び前記処理及び処分の費用の少なくとも何れかを算出し、それらの費用の少なくともいずれかを前記複数の収集運搬事業者間で一括して精算する精算手段を有し、必要に応じて、前記清算した費用が前記ホストコンピュータから前記複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物処理事業者の各業者に個別に通知されることを特徴とする前記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[8]本発明は、前記最適な収集運搬コースにおいて、前記複数の廃棄物排出事業者の中で最終に立ち寄る廃棄物排出事業者の場所から、前記複数の廃棄物処理事業者の中から指示される廃棄物処理事業者の場所までの運搬コースは、最初に指定される第1の廃棄物処理事業者によって見積もられる廃棄物処理コストが他の廃棄物処理事業者のそれよりも高い場合には、前記複数の廃棄物排出事業者がコスト的に許容する他の廃棄物処理事業者の中から、最短時間で前記収集運搬処理を行うことができる第2の廃棄物処理事業者を新たに選定し直すことにより前記廃棄物の収集運搬処理を行うことを特徴とする前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[9]本発明は、前記複数の廃棄物排出事業者から受ける廃棄物処理の依頼が、電話、ファックス及びインターネットの少なくともいずれかの通信手段によって前記複数の収集運搬事業者又は前記連携を遂行する連携事業者に属する1又は2以上の営業事業者が受け、前記依頼を受けると同時、又は前記依頼を受けた後に、前記営業事業者から少なくとも前記複数の廃棄物排出事業者の名簿、及び前記廃棄物の量と種類が情報として前記ホストコンピュータに入力されることを特徴とする前記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の廃棄物の収集運搬処理方法を提供する。
[発明の効果]
【発明の効果】
【0019】
本発明による廃棄物の収集運搬処理方法は、複数の廃棄物排出事業者から出される廃棄物を、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者と複数の廃棄物処理依頼事業者とを契約によって一体的に連携させて収集運搬及び処理を行うことにより、廃棄物の効率的な収集運搬処理を行うことができる。その結果、運搬収集時に稼働させる車両の台数削減と稼働時間の短縮化を図るとともに、排出する二酸化炭素排出量と窒素酸化物の排出量とを削減することができる。従来、公知例などの個別の技術ではなしえなかった効果として、都市全体を走行する廃棄物運搬車両数と運転手数を削減することで廃棄物収集運搬コストを削減し、かつ、交通渋滞と大気汚染を緩和し低炭素都市になるという効果を生み出す。
【0020】
また、廃棄物の収集運搬処理に要する費用についても、前記複数の収集運搬事業者の収集運搬情報をホストコンピュータに伝達し整理することで、費用を一括して精算する精算手段をとり、必要に応じて廃棄物処理コストが安い廃棄物処理事業者を選択する方法を採用することにより、費用分担の公平化及び処理費用の低減を図ることができる。さらに、前記複数の廃棄物排出事業者から受ける廃棄物処理の依頼を前記収集運搬事業者又は営業事業者に属する1又は2以上の営業事業者が受け、前記依頼や法的マニフェストの管理をホストコンピュータで一体的に処理することにより、利便性の高い廃棄物の収集運搬処理方法を提供することで、複数の収集運搬事業者の事業の継続、連帯感の醸成、排出事業者の安心感のアップを図ることができる。このような統合効果は従来の公知技術ではなしえないものである。
【0021】
本発明による廃棄物の収集運搬処理方法は、以上のような効果を奏することから、特に都市部の廃棄物や資源物の収集、運搬及び処理の高効率化と都市環境の改善に同時に大きく貢献することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による廃棄物の収集運搬処理方法の構成を示す概略図である。
図2】本発明による廃棄物の収集運搬処理方法の基本コンセプトを説明する模式図である。
図3図1に示す連携用コンピュータによって行われる付加的な工程及び機能を示す図である。
図4】本発明の収集運搬処理方法において、廃棄物処理の依頼を営業会社が一括して受けるシステムの例を示す模式図である。
図5】収集運搬事業者の3社が独自に設定して廃棄物の収集運搬処理を行うときの連携前の回収コースを示す図である。
図6】本発明の収集運搬処理方法に従って3社連携のシミュレーションを行うことによって選択された新たな2つの回収ルートを示す図である。
図7】本発明の実施例2で行った連携後の実走行において移動回数に伴う廃棄物排出場所間の距離の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、本発明による廃棄物の収集運搬処理方法の構成を概略図で示す。図1に示すように、本発明による廃棄物の収集運搬処理は、複数の廃棄物排出事業者(例えば1〜pの廃棄物排出事業者)から出される廃棄物を、該廃棄物の量、種類及び排出日に応じて、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業者(例えば1〜mの収集運搬事業者)によって収集し(収集工程)、複数の廃棄物処理事業者(例えば1〜nの廃棄物処理事業者)のいずれかの事業者まで運搬した後(運搬工程)、そこで処理が行われる。ここで、廃棄物の処理に関するフローは、所謂マニフェスト伝票と呼ばれる帳票を用いて行われるため、1〜pの廃棄物排出事業者によって1〜mの収集運搬事業者と1〜nの廃棄物処理事業者が選ばれる。選ばれる廃棄物処理事業者は、廃棄物の処理に関して従来からの実績が考慮される。本発明は、図1に示す1〜pの廃棄物事業者、1〜mの収集運搬事業者、及び1〜nの廃棄物処理事業者を、それぞれ契約を通して一体的に運営させるための連携機能を有することが第1の特徴である。
【0024】
本発明による連携機能は、図1に示す1〜mの収集運搬事業者のいずれか1事業者が、1〜pの廃棄物排出事業者の中で実際に廃棄物の収集を行うために立ち寄る廃棄物排出事業者の1又は複数を選び、最終的に1〜nの廃棄物処理事業者のいずれか1又は複数の事業者に運搬するときの車両台数及び運搬コースを選定することを目的として遂行される。具体的には、図1において実線で囲む枠内の各工程に従って機能するように連携用ホストコンピュータを用いて行われる。
【0025】
図1に示す実線で囲む枠内において、収集運搬処理情報管理工程は、次の最小台数・コース選択工程を行うために必要となる各種の情報を連携用ホストコンピュータが有する情報記憶演算処理通信手段によって取得し、それらの情報を実際の演算処理を行うまで前記情報の記録、格納及び管理を行う工程である。前記各種の情報としては、少なくとも、1〜pの廃棄物排出事業者、1〜mの収集運搬事業者、及び1〜nの廃棄物処理事業者に関する情報として、1〜pの廃棄物排出事業者の住所などの各位置情報と、1〜pの廃棄物排出事業者から出されるそれぞれの廃棄物の種類、量及び排出日と、1〜mの収集運搬事業者が有する各車両の積載可能量と、前記各収集運搬車両が収集運搬及び処理のために立ち寄る前記廃棄物排出事業者及び前記廃棄物処理事業者の各地点における前記廃棄物の平均的な積込み所要時間と、1〜mの収集運搬事業者が廃棄物を1〜nの廃棄物処理事業者まで運搬して荷降ろしを行うときに要する平均的な荷降ろし所要時間と、1〜mの収集運搬事業者が1〜pの廃棄物排出事業者の回収場所を経由して1〜nの廃棄物処理事業者まで戻る移動時間とが含まれる。
【0026】
最小台数・コース選択工程においては、前記各種の情報に基づいて、1〜mの収集運搬事業者のいずれかが稼働させる車両の必要最小台数及び各車両の収集運搬処理最適コースを選択する。このとき、それらの選択は、1〜mの収集運搬事業者の中から選択する所望の事業者の車両が実際に廃棄物を排出する複数の廃棄物排出事業者に立ち寄って行うときの収集運搬処理時間が各車両間でできるだけ均等になるように平準化して振り分けることによって処理を行う。これは、前記稼働する複数の車両の間で収集運搬処理時間に大きなばらつきがあるルートを選択する場合、複数の車両で合算したときの総収集運搬処理時間が、収集運搬処理時間の長い車両による影響を強く受け、結果的に長くなるためである。この考え方に基づく算定方法は、前記非特許文献1に開示されるように、特定の契約関係にある廃棄物排出事業者、収集運搬事業者及び廃棄物処理事業者の元で最適な収集順序を見出す際に適用が試みられていたが、その適用は小さなエリア内で個別に分離して行う場合に限定されていた。本発明の最小台数・コース選択工程においては、この考え方を基に、複数の廃棄物排出事業者、複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者を使って一体的に一括して算定を行うともに、その適用をより広域的なエリアまでに拡張して適用できるようにしたのが第2の特徴である。なお、本発明における平準化とは、前記複数の収集運搬事業者において、各事業者が実施する収集運搬処理のための所要時間の差異を小さくして、できるだけ均等になるように振り分けることにより最適化された収集運搬処理コースの選定を行う操作を意味する。そのため、前記所要時間のすべてを同じ時間に平均化することには必ずしも求められておらず、各所要時間の間には若干の差異が認められる。本発明における収集運搬処理時間が均等になるように平準化する算定方法については、後で詳細に述べる。
【0027】
最小台数・コース選択工程において処理されて得られる最小台数・コース選択結果は、情報端末機、端末コンピュータ及びインターネットの少なくともいずれかの手段を経由して、1〜mの収集運搬事業者の中から選択する所望の事業者に連携用ホストコンピュータから指示される。選択された収集運搬事業者は、その指示に従って実際に廃棄物を収集し、前記のように1〜pの廃棄物排出事業者によって指定された廃棄物処理事業者の1又は複数の事業者まで運搬する。
【0028】
このようにして廃棄物の収集運搬処理が行われた後、廃棄物の収集運搬及び処理の完了報告を、1〜mの収集運搬事業者及び1〜nの廃棄物処理業事業者の中から実際の収集運搬処理に携わった事業者の1又は複数の事業者からそれぞれ受け取り、少なくとも前記収集運搬及び処理の完了を記載した法的マニフェストを連携用ホストコンピュータから実際に廃棄物を排出した廃棄物排出事業者の1又は複数に電子情報として、又は書面で通知する。これらの通知は、自動又は手入力等の手動で行うことができる。
【0029】
以上が、本発明による廃棄物の収集運搬処理方法が有する基本的な工程である。本発明は、図1に示す各工程を行うことにより、単独の収集運搬事業者が所定の処理事業者を使って個別に廃棄物の処理を行っていた従来の方法に代えて、より広域的な範囲で複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理業者を使って効率的に廃棄物の処理を行うことができる。すなわち、単独の収集運搬事業者が従来から踏襲していた廃棄物の収集運搬処理コースには縛られないで、複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者を一体的に連携させる。その場合、複数の収集運搬事業者が従来からそれぞれ個別に有していた複数の収集運搬処理コースを含めて、運搬車両の台数を最小にし、短時間で廃棄物の収集運搬処理を行うことが可能になるような経路を組み合わせて最適なコースとして選択が行われる。
【0030】
次に、本発明の特徴である連携機能によって一体的に運営して行う収集運搬処理方法の技術的意義を、連携機能を適用しない従来の収集運搬処理方法と対比して図面を用いて説明する。図2は、本発明の基本コンセプトを説明する図である。図2の(a)は、連携前の従来から行われている収集方法を示す図であり、各個社(収集運搬事業者)が個別に各顧客(廃棄物排出事業者)との契約に基づいて廃棄物の収集運搬を行い、廃棄物処理事業者まで運搬してそこで処理を行う方法である。また、図の(b)は、各社の連携収集によって効率的な収集を行う本発明の収集運搬処理方法を示す図である。図2には、収集運搬事業者としてA社及びB社の2社を例として挙げている。
【0031】
図2の(a)に示す従来技術において、収集運搬事業A社は、個別に複数の廃棄物排出事業者(図において○で示す5地点)に立ち寄り、矢印(→)で示すコースに従って、それぞれ廃棄物を収集及び運搬を行った後、最終的に個別に契約した廃棄物処理事業者(A処)に立ち寄り、そこで廃棄物の処理を行う。そして、収集運搬処理を行った後の車両は、A社に帰還するコースをたどる。収集運搬事業B社の場合も、個別に契約した廃棄物排出事業者(図において●で示す5地点)に立ち寄って別のコースをたどって収集運搬を行い、最終的に個別に契約した廃棄物処理事業者(B処)に立ち寄り、そこで廃棄物の処理を行った後、B社に帰還するコースをたどる。
【0032】
図2の(a)に示すように、A社とB社とがそれぞれ収集を行う収集コースにおいて狭いエリア内で近接又は密集する地点(図中、点線の枠内で囲まれたA社の2地点及びB社の4地点を含む計6地点)が存在するにも関わらず、A社とB社は個別で全く異なるコースをたどるため、効率的な収集運搬が行われず、結果的にA社とB社とも廃棄物を運搬するための距離が長くなっている。そのため、所定の時間で廃棄物の収集運搬処理を行うときの運搬車両の台数が、運搬距離にも依存するものの、例えば、A社は3台が、B社では2台が必要となり、稼働させる台数が計5台となる。
【0033】
それに対して、本発明においてはA社とB社の間で連携収集を行うことにより効率的な収集が可能になる。具体的には、A社及びB社による収集運搬処理の全ルートについて各収集運搬時間を短くするだけでなく、前記点線の枠内で囲まれた6地点について特に着目し、前記各収集運搬時間が2社の間で収集運搬処理のための所要時間ができるだけ均等になるように平準化を行ったコースに組み直すことにより実現される。A社及びB社において組み直した後の収集運搬処理コースをそれぞれ示したのが図2の(b)である。
【0034】
図2の(b)において実線の2つの枠内に示すように、前記点線の枠内で囲まれた6地点の中で、連携収集前にA社が収集コースとしていた2地点(A)はB社の収集コースに組み込まれる。また、連携収集前にB社が収集コースとしていた2地点(B)はA社の収集コースに組み込まれる。残りの2地点についてはコースの最適化を行った後でも変更されないで、連携収集前と同じBコースに留まっている。
【0035】
図2の(b)から分かるように、A社及びB社の各収集運搬処理コースは、図2の(a)と比べて互いに重複する部分がほとんどなく、収集運搬処理に要する時間の平準化も行われることが容易に推察できる。したがって、廃棄物の収集運搬処理を行うときの運搬車両の台数が、例えばA社は3台が2台に、また、B社では2台が1台に減らすことが可能になる。結果的に、稼働させる運搬車両の総台数は3台となるため、連携前と比べて、台数の削減及び稼働時間の短縮化ができる。さらに、運搬車両の台数減少と稼働時間の短縮化は二酸化炭素及び窒素酸化物の排出量の削減にも寄与するため、環境への負荷の大幅な低減を図ることができる。
【0036】
図2においてA社及びB社の2社による連携収集によって奏する効果を示したが、連携する収集運搬事業者は3社以上でも同じ基本コンセプトによって効率的な収集を行うことができる。また、廃棄物処理業者についても2社以上の場合を含めて、複数の廃棄物収集運搬事業者と組み合わせて一体的に連携させて運搬車両の最小台数及びコース選択を行うことにより、より効率的な廃棄物の収集運搬処理を行うことができる。本発明においては、複数の廃棄物排出事業者、複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者の連携を行うときに契約を通して参加する各事業者の数が多いほど適用する地域が広がり、運搬車両の台数減少と稼働時間の短縮化の効果がより顕著に現れる。特に、都市部の廃棄物収集運搬処理において大きな効果を得ることができる。
【0037】
次に、本発明における最小台数・コース選択工程において収集運搬処理時間の短縮化及び複数の事業者間で収集運搬処理時間が均等になるように平準化する算定方法について説明する。
【0038】
収集運搬処理時間の短縮化及び複数の事業者間で行う収集運搬処理時間が均等になるように行う平準化は、基本的に上記非特許文献1に開示された算定方法を活用して行う。まず、収集運搬車両の最大積載量を考慮して、最小の時間で搬出輸送するものを最適な状態と定義して、数多くの収集輸送順序の組み合わせの中から、最適な収集順序、すなわち収集運搬処理コースを見出すものである。このときの算定方法としては、動的計画法、遺伝的アルゴリズム及び机上で考えられるルートを試行錯誤によって選ぶ方法等があるが、算定の精度を高めること及び算定のための処理時間を短くできること等の点から動的計画法及び遺伝的アルゴリズムの少なくともいずれかを使用するのが実用的である。
【0039】
本発明においては、前記収集輸送順序の組み合わせを算定するときに使用する基本情報としては、単独の収集運搬事業者が所定の廃棄物処理事業者を使って個別に廃棄物の処理を行っていた従来の収集運搬処理に関する各種の情報だけに限定されない。その情報に加えて、複数の廃棄物排出事業者、複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者が連携して一体的に収集運搬処理を行うものとして、各事業者との関係を1対1に細分化した状態で行ったときの収集運搬処理時間を独立に調査して得られる情報を用いる。このとき取得する情報は、従来の収集運搬処理に関する情報よりも情報量が膨大になるが、連携前に個別に廃棄物の処理を行っていた従来の収集運搬処理に関する各種の情報を利用することにより、情報取得及び整理のための時間を節約することができる。ここで取得する情報としては、具体的には図1に示す収集運搬処理情報管理工程で説明した種類の情報が含まれる。
【0040】
最適な収集運搬処理コースの選定は、前記のようにして取得された各種の情報を用いて、基本的に次の3つのプロセスにより行う。
(1)動的計画法により、廃棄物処理事業者を含めて、複数の廃棄物排出事業者間を移動するときの最小移動時間及びその経路を算定する。
(2)収集時の運搬車両1台で収集運搬処理する場合の収集コース(収集地点の順序)を遺伝的アルゴリズムにより決定する。
(3)各収集運搬車両の稼働時間ができるだけ均等になるように平準化を行った収集運搬処理コースを、対象とする複数の収集運搬車両に振り分ける。
【0041】
本発明においては、前記複数の収集運搬事業者が合意する領域内で廃棄物の収集運搬処理に携わる廃棄物排出事業者、収集運搬事業者及び廃棄物処理事業者の数が、前記非特許文献1に開示された場合よりも多くなる。そのため、例えば、図2において点線の枠内で示すように、狭いエリアの所定の距離内で近接又は密集して存在する廃棄物排出事業者に着目して選び出す。そして、前記狭いエリア内に存在するすべての収集コースを、それら複数の廃棄物排出事業者の回収場所(地点)に立ち寄って運搬車両1台で収集運搬処理を行うときの収集コース(収集地点の順序)の中に組み入れる。このとき、運搬車両としては前記狭いエリアを通過する複数の収集運搬事業者のすべての運搬車両を対象にする。一方、狭いエリア内に存在しない廃棄物排出事業者の回収場所については、個別に廃棄物の処理を行っていた従来の収集運搬処理に関する各種の情報をそのまま利用し、前記狭いエリア内に存在する廃棄物排出事業者に関する情報と組み合わせる。
【0042】
このようにして組み合わせた情報を使って、上記(1)及び(2)のプロセスに従い、収集時の運搬車両1台で収集運搬処理する場合の収集コース(収集地点の順序)を半自動で試行錯誤的に行う処理方法又は動的計画法及び遺伝的アルゴリズム等の方法により決定する。さらに、上記(3)のプロセスによって各収集運搬車両の稼働時間ができるだけ均等になるように平準化した収集運搬処理コースを、対象とする複数の収集運搬車両に振り分ける。
【0043】
このとき、前記狭いエリアは、複数の廃棄物排出事業者においてそれぞれ密集又は近接して隣接する回収場所間距離が1km未満である回収場所を選んで決めるのが実用的であり、さらに300m以内が好ましい。前記隣接する回収場所間距離が1km以上のエリア内に存在する複数の廃棄物排出事業者を選んで遺伝的アルゴリズム等によって平準化を行い、収集コース(収集地点の順序)を決定しても、長い移動距離に費やす時間が総収集運搬時間に対して占める比率が大きくなり、前記狭いエリアを規定する技術的意味が薄れてくる。そのため収集運搬車両台数の削減に対する効果が十分に得られない。本発明においては、前記隣接する回収場所間距離を300m以下とさらに限定することにより、上記(3)のプロセスによる算定方法が有効に機能し、収集運搬処理時間の短縮化及び運搬車両台数の減少という本発明の効果が顕著に得られることが分かった。これらの根拠となる、前記狭いエリアの範囲を決める際に基準となる回収場所間の距離の特性については、後述の実施例3において詳細に説明する。
【0044】
本発明の収集運搬処理方法において実際に廃棄物の収集運搬を担当する各車両は、図2の(b)の例で示すように、前記連携用ホストコンピュータを用いた算定方法によって最適な収集運搬コースとして選択されたコースに従って、所属する収集運搬事業者の車両基地から出発し、前記複数の廃棄物排出事業者の中から前記連携用ホストコンピュータによって指示された事業者を次々に移動することにより廃棄物を収集し、廃棄物を前記複数の廃棄物処理事業者の中から前記連携用ホストコンピュータによって指示された業者先まで運搬して降ろした後、前記車両基地に戻るルートを有する。
【0045】
本発明で使用する連携用コンピュータは、図1に示す工程以外にも様々な工程を経ることによって廃棄物の収集運搬処理方法の機能を向上させることができる。図3に、連携用コンピュータによって行われる付加的な工程及び機能をまとめて示す。
【0046】
図3の収集運搬処理情報管理工程において点線で囲んだ枠内に示すように、前記情報管理工程には、さらに前記複数の収集運搬事業者がそれぞれ有する収集運搬用車両の台数の情報、及び各車両が従来から使用している収集運搬コースの情報の少なくともいずれかが記憶される。前者は実際に廃棄物の収集運搬処理に使用することができる台数であり、廃棄物の量に応じて1つの収集運搬事業者では能力的に対応できない場合、2又はそれ以上の複数の収集運搬事業者を選んで収集運搬処理に当たるように前記ホストコンピュータから指示を行うときのベースとなる情報である。また、後者は、前記複数の収集運搬事業者が連携前に既に有していた情報であるが、廃棄物排出事業者が所定の距離内で近接又は密集して存在する前記狭いエリアに含まれない地域で収集運搬処理を行うときの収集運搬コースの情報として使用することができる。
【0047】
上記2つの情報は、契約を通して収集運搬事業者の新規参加または入れ替えが行われる場合、適宜、更新されて前記ホストコンピュータ内に記憶される。また、前記ホストコンピュータが有する記憶装置に記憶された各種の情報は、確認を行うことが必要な場合等、必要に応じて前記ホストコンピュータが有する表示装置に表示される。また、表示装置は、前記ホストコンピュータだけでなく、収集運搬事業者1〜mの各事業者が有する情報端末機、端末コンピュータ及びインターネットの少なくともいずれかの手段に備えられる。その表示装置を用いて、収集運搬事業者1〜mの各事業者は連携によって最適化された収集運搬コース及び各種の情報の確認を行うことができる。
【0048】
本発明は、図3において一点鎖線で囲んだ枠内に示すように、収集運搬処理情報管理工程に、収集運搬処理を行うときに使用するコースの時間ごとの平均的な交通渋滞の情報及びリアルタイムの交通情報の少なくともいずれかをあらかじめ外部機関から取得し、登録して格納させておくことが好ましい。これは、収集運搬車両による収集運搬時間が、走行距離だけでなく、道路の混雑状態によっても大きな影響を受けるためである。これらの情報は、最小台数・コース選定工程で選定した最適な収集運搬コースにあらかじめ適用することにより、前記収集運搬コースの適否の再確認だけでなく、最小時間の再計算によってより最適な収集運搬コースへの変更を行う場合に使用することができる。それにより、実際の道路交通渋滞が反映されるため、最小の収集運搬車両台数を使って最短時間で収集運搬を行うことが可能になる。
【0049】
道路の混雑は、各地域固有の平均的な交通渋滞によってある程度の推定が可能であるが、交通事故等の突発的な事故、道路工事及び雨や風等の気象状況等によっても変わる。そのため、より正確な収集運搬時間を算定する場合は、VICS(登録商標)等の道路交通情報システムから得られるリアルタイムの交通情報が必要になる。したがって、最小台数・コース選定工程において、コースの時間ごとの平均的な交通渋滞の情報及びリアルタイムの交通情報の両者を使用することにより、最小台数・コース選定をより正確に、かつ、確実に行うことができる。
【0050】
図3に示すように、本発明で使用する連携用ホストコンピュータ、及び情報端末機又は端末コンピュータの少なくともいずれかは、さらに、前記最適な収集運搬コースの情報を出力する出力装置を有することが好ましい。この出力装置は、コースの確認を行うだけでなく、各種の情報の出力、収集運搬処理作業記録及びその確認、又は関係者へ作業上の注意の喚起、及び収集運搬処理作業において発生する問題点を明示するためにも利用することができる。
【0051】
また、図2(a)に示すように、各収集運搬事業者は、他の事業者が収集運搬していた廃棄物排出事業者との契約費用や収集運搬及び処理を行ったときの実際の費用を従来から単独で知ることができないことが分かった。そこで、本発明においては、前記ホストコンピュータが有する各種費用に関する情報を整理してその清算を行うこととする。具体的には、本発明で使用する連携用ホストコンピュータは、図3において二点鎖線で囲んだ枠内に示すように、複数の廃棄物排出事業者、複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者を連携させるために取り交わす契約に関わる費用、収集運搬に要する実際の費用、及び前記処理及び処分の費用の少なくとも何れかを算出し、それらの費用の少なくともいずれかを前記複数の収集運搬事業者間で一括して精算する精算手段を有することが好ましい。そして、前記清算した費用は、前記ホストコンピュータから前記複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物処理事業者の各業者に個別に通知される。
【0052】
このような精算手段を活用することにより、廃棄物の収集運搬及び処理作業で発生する費用を正確、かつ、公正に算出することができるため、連携によるトラブルを未然に防止する効果が得られる。また、清算した費用の中で、契約者の一定数以上が許容できる金額を連携のための資金としてプールし、定期的に積み立てるようなシステムを構築することも可能になる。仮に、複数の収集運搬事業者又は複数の廃棄物処理事業者の間で収集運搬処理作業の受注に偏りが出た場合、相対的に受注の少ない事業者に対して、前記積み立てた資金の一部を短期的な救済の意味合いで提供又は貸し出しを行うことができる。それにより、本発明による連携の枠組みに収集運搬事業者が参画する経済的メリットが生まれ、廃棄物の収集運搬処理の事業を安定的に、かつ、継続することができる。さらに、事業者間の連帯感が強まることにより実際の収集運搬処理に携わる事業者の質の向上を図ることが容易になる。また、廃棄物排出事業者からの信頼感が得られるようになるため、安全で確実な収集運搬処理作業が行われるようになり、結果的に地域住民の安心感の醸成を図ることに役立つ。このような従来知られていない新たな効果は、従来の収集運搬方法では得られることができないものである。
【0053】
本発明による廃棄物の収集運搬処理方法は、運搬収集時に稼働させる車両の台数削減と稼働時間の短縮化を図るため、複数の運搬車両間で収集運搬のための移動時間が最小になるように最適な収集運搬処理コースの選定を行う。その際、廃棄物の処理費用については複数の廃棄物処理事業者間でほとんど変わらないとしてコースの選定を行っている。しかしながら、廃棄物の処理費用に対してもコストを十分に配慮する必要があることを見出したので、各事業者間で処理費用を実費ベースで請求しあうようにする。
【0054】
そこで、本発明においては、前記最適な収集運搬コースにおいて、前記複数の廃棄物排出事業者の中で最終に立ち寄る廃棄物排出事業者の場所から、前記複数の廃棄物処理業者の中から指示される廃棄物処理業者の場所までの運搬コースを、最初に指定される第1の廃棄物処理事業者によって見積もられる廃棄物処理コストが他の廃棄物処理業者のそれよりも高い場合には、前記複数の廃棄物排出事業者がコスト的に許容する他の廃棄物処理業者の中から、最短時間で前記収集運搬処理を行うことができる第2の廃棄物処理事業者を新たに選定し直すことが好ましい。それにより、複数の廃棄物処理業者の間にも処理コスト低減の意識が生まれ、結果的に廃棄物の収集運搬処理をより安価に行うことができる。
【0055】
前記廃棄物処理事業者において、第1から第2の事業者に変更するときの処理コストの目安をあらかじめ前記連携用ホストコンピュータで決めておいてもよい。例えば、第1及び第2の廃棄物処理事業者において、収集運搬費用を所要時間当たりで除すことによって時間当たりの移動単価として計算した移動コストと、廃棄物処理コストとをそれぞれ求めておき、第1及び第2の廃棄物処理事業者の間で生まれる処理コストの差及び移動時間の差を比べたとき、処理コストの差が移動時間の違いに起因する移動コストの差よりも所定の比率(例えば10%)よりも大きい場合は、廃棄物処理事業者を第1から第2へ変更することを自動的に行う方法を採用することができる。
【0056】
それ以外の単純な方法として、例えば、第1の廃棄物処理事業者の処理コストが、第2の廃棄物処理事業者のそれに比べて10%値以上である場合は自動的に第2の事業者への変更を行い、一方、10%値未満であれば、収集運搬処理時間がより短い第1の事業者を選択するという方法である。10%という数値は収集運搬事業者へのヒアリングで明らかになった数値であるが、処理コストを比較するときの目安となる基準は廃棄物の種類や地域によって異なるので必ずしも10%値に限定されず、複数の事業者間の合意の基に別の基準を決めることができる。
このように、移動単価と廃棄物処理コストの両方を評価する方法、及び、コストと時間を両方評価することで廃棄物処理事業者を選択するという考えは従来なかったものである。
【0057】
本発明は、さらに、複数の廃棄物排出事業者から受ける廃棄物処理の依頼を、電話、ファックス及びインターネットの少なくともいずれかの通信手段によって前記複数の収集運搬事業者又は連携を遂行する連携事業者に属する1又は2以上の営業事業者が受けるシステムを有することが好ましい。ここで、前記営業事業者とは、複数の廃棄物排出業者と実際に廃棄物の収集運搬及び処理を実行する複数の収集運搬事業者及び複数の廃棄物処理事業者とを統括的に橋渡しする役目を担う事業者であって、前記連携事業者の一つが担う場合と、前記連携事業者以外の事業者(別法人)が担う場合とがある。図4に、本発明の収集運搬処理方法において廃棄物処理の依頼を営業事業者が一括して受けるシステムの例を模式的に示す。
【0058】
図4に示す例は、営業事業者の1又は2以上が、本発明の連携による廃棄物の収集運搬処理を主体的に行う連携を遂行する連携事業者に属している例である。前記1〜pの廃棄物排出事業者、前記連携事業者に属する営業事業者の1又は2以上、1〜mの収集運搬事業者及び1〜nの廃棄物処理事業者が法的に必要な関係者間で連名契約または個別契約を締結した上で、前記営業事業者は複数の廃棄物排出業者から依頼を受け、具体的にはその依頼内容及び依頼された排出事業者情報を基に配車計画管理を行い、該配車計画管理に基づいて複数の収集運搬事業者の中から選んだ事業者に必要な配車台数と選定コースを指示する。指示を受けた収集運搬事業者は必要な運搬車両台数を用いて、廃棄物を収集運搬し、複数の廃棄物処理事業者の中から選んだ事業者の場所まで移動した後、その場所で処理を行う。ここで、配車計画管理には、図1又は図3に示すように、連携用ホストコンピュータを用いて廃棄物の収集運搬処理のために使用する車両の最小台数の算定及び最適コースの選択を行う工程が含まれる。
【0059】
廃棄物の収集運搬及び処理後の完了報告は、上記で述べたように、前記複数の収集運搬事業者及び前記複数の廃棄物処理業事業者からそれぞれ受け取り、少なくとも前記収集運搬及び処理の完了を記載した法的マニフェストを前記ホストコンピュータから前記複数の廃棄物排出事業者、収集運搬事業者及び廃棄物処理事業者に電子情報として、又は書面で通知する。また、図4に示すように、廃棄物の収集回収物量を含む前記完了報告が営業事業者を経由して複数の廃棄物排出事業者に通知される方法を採用してもよい。このとき、廃棄物の収集運搬処理に要する費用についても、インターネット等を経由して営業事業者が複数の廃棄物排出事業者に代行請求し、売り上げとして入金を受けることができる。
【0060】
図4に示すシステムは、廃棄物排出事業者からの依頼に対してきめ細やかな対応ができ、利便性に優れ、かつ、収集運搬事業者の一社単独が実行するよりも台数の削減と距離の短縮化が図れるためコストを低減できるという利点を有する。また、廃棄物排出事業者からの数多くの依頼を前記収集運搬事業者が集中して受けることがないため、連携事業者によって事務的に迅速な対応ができる点で好都合であり、広い地域にまたがって多くの依頼を受けることが可能になる。こで、前記営業事業者の1又は複数は前記連携事業者に属することには限定されず、前記複数の収集運搬事業者にそれぞれ属していても、前記と同じような効果を得ることができる。
【実施例】
【0061】
以下において、本発明に基づく実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>
本発明による廃棄物の収集運搬処理方法が、連携収集を行うことによって実際にどの程度の効果が得られるのかをシミュレーションにより検証を行った。
【0063】
図5は、収集運搬事業者がA社、B社及びC社の3社であるとし、各社が独自に設定して廃棄物の収集運搬処理を行うときの連携前の回収コースである。連携前の回収コースは、図中においてそれぞれ黒の実線で示している。図5に示す3社独自のルートに代えて、3社を連携させて図1に示す方法に従ってシミュレーションした結果、選択された新たなルートが図6である。そのシミュレーションの手順を以下に述べる
【0064】
まず連携させる3社すべてが立ち寄る廃棄物排出事業者(回収場所)と廃棄物処理事業者の住所をホストコンピュータに入力し、登録する。さらに、収集運搬車両の積載可能量、廃棄物の種類、量及び排出日、各回収場所での積み込み時間、並びに廃棄物処理事業者の場所で実施する荷降ろし時間の入力及び登録も合わせて行う。これらの情報は、連携前の3社独自のルートで行われていた収集運搬処理の情報を使用することができる。また、実際に現場調査を行って得られる基礎情報を基に、収集運搬事業者からの要望(回収要望日、時間帯、排出見込量)等を考慮し、交通事情や収集運搬車両の運転手のノウハウ等も加味して、より現実的なルートになるように調整した情報を使用してもよい。さらに、シミュレーションをより簡単に行うため、例えば、後者の情報(収集運搬車両の積載可能量、廃棄物の種類、量及び排出日、各回収場所での積み込み時間、並びに廃棄物処理事業者の場所で実施する荷降ろし時間)のいずれかを、3社が立ち寄る廃棄物排出事業者(回収場所)と廃棄物処理事業において同じ条件に設定することも可能である。
【0065】
本実施例においては、図1に示す最小台数・コース選択工程において、A、B及びCの各社の制約条件として収集運搬車両の稼働制限時間と積載量をある程度加味しつつ、上記各種の情報に基づいて、最も短い時間で回収するルートを自動的又は半自動的にシミュレーションした。さらに、遺伝的アルゴリズムを用いて、各収集運搬車両間で収集運搬及び処理のための稼働時間ができるだけ均等になるように複数の収集運搬車両に平準化して振り分けることにより収集運搬処理コースを選択した。そのようにして選択された新たなコースが図6に示す黒の実線で示されている。もし、平準化されなければ、収集運搬車両の稼働時間に大きな差が生じる場合があり、収集運搬車両の運用に無駄が生じてしまうだけでなく、収集運搬事業者間の公平感が損なわれることになるので、平準化が必要である。
【0066】
図6に示すように、3社が連携することにより、設定した車両稼働制限時間の範囲内で、かつ過積載にならないように、3社すべてが立ち寄る廃棄物排出事業者(回収場所)と廃棄物処理事業者を車両2台で回ることができる2つのコースを選択することができた。それが、図6に示す連携後の第1コースと第2コースである。このように、3社の連携によって廃棄物の収集運搬時に稼働させる車両の台数を3台から2台とすることができ、1台の削減ができることが確認された。
【0067】
<実施例2>
東京都内の2区に跨るある地域及びその近郊地域を選び、民間回収の事業系一般廃棄物及び産業廃棄物のそれぞれの回収について本発明の収集運搬処理方法を適用してシミュレーションによる検証を行った。合わせて、それらの地域について実走行による検証を行い、シミュレーション結果と実走行の結果を対比することにより本発明の収集運搬処理方法の有効性を調べた。まず、シミュレーションによる検証結果を説明する。
【0068】
上記選択した地域において、現状の収集運搬事業者はA社、B社及びC社の3社である。A社、B社及びC社の廃棄物回収場所は、一般廃棄物(可燃廃棄物)において、それぞれ370箇所、35箇所及び50箇所であり、産業廃棄物(不燃廃棄物)の場合は、それぞれ166箇所、12箇所及び30箇所である。前記3社が現状のままで一般廃棄物(可燃物)及び産業廃棄物(不燃物)の回収をそれぞれ行うときの車両台数(台)、総走行距離(km/日)及び総走行時間(時間/日)を下記表1において「現状」の欄に示す。表1に示すこれらの値は、3社が回収を行うときに稼働させる車両の値をすべて合わせたものである。また、表1に併記するCO排出量は、回収時に使用する収集運搬車両の燃費を3.79km/Lとし、CO排出係数を2.58kg/Lとして計算した例である。
【0069】
引き続き、上記3社を連携させて廃棄物の回収を行うとしたときのシミュレーションを実施例1と同様の方法で行い、収集運搬車両の最小台数とそれぞれの車両の最適コースを選択した。このようにして選択されたコースに従って上記選択した地域内を収集運搬車両が走行するときの車両台数(台)、総走行距離(km/日)及び総走行時間(時間/日)を、表1において「最適化後」の欄に示す。また、表1には、合わせて現状とシミュレーションによる最適化後との差を削減効果として%で示している。
【0070】
【表1】
【0071】
可燃廃棄物について現状と連携による最適化後とを対比すると、表1に示すように、稼働する車両台数は連携後でも連携前の現状と同じ3台であり、削減効果が見られなかった。この3台は、現状では連携各社が独自のコースを走行させるものであるのに対して、連携後は他社のコースも含めて廃棄物の回収を行うものである。
【0072】
連携3社の連携収集にかかる総走行距離は、現状(連携前)の189kmに対して150kmに短縮できることが分かった。連携による総走行距離の削減効果は20.6%となった。
【0073】
総走行時間は、現状では3社を合わせて32時間20分であるのに対して、連携による最適化後によって30時間06分に短縮できることが分かった。連携による総走行時間の削減効果は6.9%である。総走行距離に比べて総走行時間の削減効果が小さかった理由は、総走行時間には廃棄物の回収時間が含まれており、回収時間そのものを大きく削減できなかったためである。今回対象にした地域は多数の店が収集し回収場所が多いために、回収作業時間の短縮化が十分にできなかったものと考えている。
【0074】
このように、総走行時間の削減効果が6.9%と小さいことが車両台数の削減に影響を与えており、結果的に、最適化後においても車両1台まるごと削減できるほどの削減効果を創出することができなかった。本実施例ではシミュレーションの対象地域が比較的狭い地域であり、かつ、限られた廃棄物排出事業者と収集運搬事業者でシミュレーションを実施したためであり、より広い地域を対象にし、より多くの廃棄物排出事業者と収集運搬事業者が参画した連携を行うことにより、稼働車両1台分の走行時間の削減が可能になると推察される。
【0075】
CO排出量については、現状の3社独自回収では一日当たり総計で129kg/日の排出量が計算されるが、連携による最適化後によって102kg/日まで削減でき、削減効果は20.6%であることが分かった。これは、削減効果が総走行距離の短縮効果によるためであり、総走行距離の場合と同じ20.6%の削減効果となる。
【0076】
次に、不燃廃棄物について現状と連携による最適化後との対比を行う。表1に示すように、稼働する車両台数は現状が3台であるのに対して、連携による最適化後では2台の稼働まで削減できることが分かった。
【0077】
連携3社の連携収集にかかる総走行距離は、現状(連携前)の144kmに対して112kmに短縮できることが分かった。連携による総走行距離の削減効果は22.3%となった。
【0078】
総走行時間は、現状では3社を合わせて23時間54分であるのに対して、連携による最適化後によって16時間48分にまで短縮できることが分かった。連携による総走行時間の削減効果は29.7%である。
【0079】
このように、不燃廃棄物の場合は、可燃廃棄物の場合と比べて回収場所の数が少なく、総走行時間に対する総回収時間の比率が小さいため、総走行時間の削減効果が大きくなったものと考えている。それにより、稼働する車両台数を現状の3台から最適後の2台へと1台の削減を行うことができ、大きな効果が創出できた。
【0080】
CO排出量については、現状の3社独自回収では一日当たり総計で98kg/日の排出量が計算されるが、連携による最適化後によって76kg/日まで削減でき、削減効果は22.3%であることが分かった。
【0081】
以上のようにシミュレーションに基づく対比において、連携による最適化後は、現状に比べて車両台数(台)、総走行距離(km/日)、総走行時間(時間/日)及びCO排出量のどの項目においても現状に対して削減効果が確認できた。そこで、可燃廃棄物についてシミュレーションによる削減効果を実走行と対比して効果の検証を行った。
【0082】
実走行検証においては廃棄物を実際には回収せずに、シミュレーションによって最適化されたルートを指示通りに収集運搬車両で模擬的に移動した。その際、収集運搬車両は廃棄物排出事業者の各回収場所で指定された回収時間を停車だけさせることとした。前記回収場所は、最適化されたルートに従って順番を守って移動を行った。そして、回収場所間の移動時間を実測定し、これらのデータを加算することで総移動時間(=走行時間+回収時間)とした。このようにして得られた実走行の結果を下記表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表1に示すように現状の総走行距離は189kmであったものが、連携によるシミュレーションでは150kmで約20.6%の削減効果が得られたが、表2に示す実走行においてはそれが171kmとなり、削減効果も約10%に留まった。一方、収集所要時間を比べると、現状の所要時間は32時間20分であったものが(表1を参照)、連携によるシミュレーションでは30時間06分であり、実走行の所要時間は27時間43分となった。実走行による収集所要時間は現状よりも約14%まで削減でき、シミュレーションよりも削減効果が大きくなった。
【0085】
ここで、総走行距離についてシミュレーションと実走行との削減効果の差異は、実際に対象地域を取集しているドライバーと実走行検証時のドライバーとの経験の差と考えている。例えば、現地の道路事情に詳しいか否か等である。また、収集所要時間の削減効果の差異は、シミュレーションでは走行時間を安全寄りにみており、やや多く見積もっていること、また、実走行の検証を歩行者や車両の往来が少ない時を選んで行ったことに起因するものと考えている。
【0086】
以上のように、実走行値はシミュレーション最適値と差がみられるものの、その差は小さく、本発明は廃棄物の収集運搬方法を現行よりも効率的に行えることが確認された。
【0087】
<実施例3>
上記実施例2において行った実走行の連携収集による削減効果について分析を行った。各収集運搬車両の総稼働時間は走行時間と廃棄物の回収時間との和であるが、このうち後者の回収時間は連携にかかわらず必要な時間であるから削減は困難である。一方。前者の走行時間については回収場所間の移動距離の短縮に伴って削減できるため、前記回収場所間の移動距離がどのように分布しているかを着目することによって連携による削減効果を分析することができる。
【0088】
図7に、上記実施例2で行った連携後の実走行において移動回数に伴う廃棄物排出場所間の距離の分布を示す。移動回数は、A社、B社及びC社の可燃廃棄物回収場所にそれぞれ対応する370箇所、35箇所及び50箇所で行ったときの合計の455回である。
【0089】
図7に示すように、移動件数の約10%に当たる42件は1km以上の移動を行う必要があったが、それ以外の約90%の移動件数については移動距離が1km未満においてほぼ均等に分布していることが分かる。すなわち、可燃廃棄物回収場所間の距離が1km未満である回収場所を選んで回収を行うことにより、収集運搬車両の稼働時間に対して連携による平準化の効果を得ることができる。さらに、可燃廃棄物回収場所間の距離が300m以下であれば移動距離のばらつきが非常に少なくなり、連携による平準化の効果がさらに顕著に現れる。
【0090】
したがって、本発明の収集運搬処理方法は、複数の廃棄物排出事業者から廃棄物が排出された回収場所のすべての中から、隣接する回収場所間の距離が1km未満にある狭いエリア内に存在する場所を重点的に選んで、その狭いアリア内で複数の収集運搬事業者を連携させることが好ましい。この狭いエリアは、例えば、図2において点線の枠内で囲む地域に相当すると考えることができる。このように、連携による削減効果が顕著に現れる回収場所を絞ることにより、図1及び図3に示す前記最小台数及びコース選択工程において連携に必要な情報の入力量を低減できるともに演算処理時間の短縮化を図ることができるため、コースの最適化と指示を迅速に行うことができる。さらに、前記狭いエリアの範囲を、隣接する回収場所間の距離が300m以下に含まれる地域に限定することにより、収集運搬時に稼働させる車両の台数削減と稼働時間の短縮化という本発明の効果を十分に得ながら、コースの最適化と指示を行うときに一層の迅速化を図り、効果も飛躍的に増大させることができる。
【0091】
なお、図7に示すように、1km以上の遠隔地を走行する移動は件数が約10%と少ないものの、調査の結果、移動に費やす時間の比率が総走行時間に対して約40%を占めた。この比率は、効率的な収集運搬処理を行う上で無視できない値であり、総走行時間の短縮化を行うためには1km以下の遠隔地を減らすことが必要である。その対応策としては、本発明の連携を広い範囲で進めることにより連携に参画する収集運搬会社を増していくことが考えられる。例えば、上記実施例2においてA社、B社及びC社にとって遠隔地であった地域に別の収集運搬会社を加えて連携数を増やすことができれば、前記遠隔地が別業者にとっては1km未満となる可能性が出てくる。このような連携拡大を広い地域で進めることによって参画前者の収集運搬処理の効率向上を図ることができるだけでなく、都市そのものへの環境負荷を大きく低減することができる。以上のような事実と効果は発明者が初めて明らかにしたものである。
【0092】
なお、上記の実施例では廃棄物の種類を特定せずに説明したが、段ボール、新聞紙、ビン、缶、プラスチックなどは廃棄物(処理費をもらうごみ)である場合と、有価資源物(買い取ることができる資源)となる場合がある。これは、有価資源物の市場値によって変化する。資源物も廃棄物収集運搬事業者が回収していることから、本発明は廃棄物だけに限らず資源物についても適用されるものである。この場合、資源物については法的マニフェストが不要な場合がある。
【0093】
以上のように、本発明による廃棄物の収集運搬処理方法は、複数の廃棄物排出事業者から出される廃棄物を、複数の収集運搬車両を有する複数の収集運搬事業会社と複数の廃棄物処理依頼事業者とを契約によって一体的に連携させて収集運搬処理を行うことにより、廃棄物の効率的な収集運搬処理を行うことができ、その結果、運搬収集時に稼働させる車両の台数削減と稼働時間の短縮化を図ることができる。したがって、特に都市部において、廃棄物や資源物の収集、運搬及び処理の高効率化及び環境負荷の低減に対して大きく貢献することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7