特許第6896319号(P6896319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896319レーダ受信信号処理装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896319
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】レーダ受信信号処理装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/95 20060101AFI20210621BHJP
   G01S 7/02 20060101ALN20210621BHJP
【FI】
   G01S13/95
   !G01S7/02 216
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-17917(P2017-17917)
(22)【出願日】2017年2月2日
(65)【公開番号】特開2018-124213(P2018-124213A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】諸富 和臣
(72)【発明者】
【氏名】柏柳 太郎
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/125399(WO,A1)
【文献】 特開2009−150707(JP,A)
【文献】 特開2005−227162(JP,A)
【文献】 米国特許第06133990(US,A)
【文献】 発明協会公開技報公技番号96−4540
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00− 7/42
G01S 13/00−13/95
G01W 1/00
発明推進協会公開技報WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置であって、
電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する受信信号情報取得部と、
前記受信信号情報取得部が取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くにあたり、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることにより、前記レーダサイトから近距離においても、前記レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定する受信信号情報間引き部と、
を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置。
【請求項2】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置であって、
電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有するときに、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることにより、前記レーダサイトから近距離においても、前記レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定する受信信号情報間引き部、
を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置。
【請求項3】
前記受信信号情報間引き部は、所定の大きさの物標が見落とされないように、レーダ受信信号の情報の間引き率を設定する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダ受信信号処理装置。
【請求項4】
前記受信信号情報間引き部が間引かなかったレーダ受信信号の情報と、前記受信信号情報間引き部がレーダ受信信号の情報を間引かなかった走査領域の情報とを、前記レーダ受信信号処理装置の処理結果として出力する受信信号情報出力部、をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載のレーダ受信信号処理装置。
【請求項5】
前記受信信号情報間引き部は、取得したレーダ受信信号の情報のうち、所定高度より上空でのレーダ受信信号の情報を間引くにあたり、(1)レーダ受信信号の情報に基づいて決定された最大エコー頂高度を、(2)前記レーダ受信信号処理装置のオペレータにより時期及び/若しくは場所に応じて入力された降水雲の発達限界の高度を、又は、(3)高層気象観測により得られた観測データに基づいて時期及び/若しくは場所に応じて入力された降水雲の発達限界の高度を、前記所定高度として設定する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のレーダ受信信号処理装置。
【請求項6】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理プログラムであって、
電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する受信信号情報取得ステップと、
前記受信信号情報取得ステップで取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くにあたり、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることにより、前記レーダサイトから近距離においても、前記レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定する受信信号情報間引きステップと、
を順にコンピュータに実行させるためのレーダ受信信号処理プログラム。
【請求項7】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理プログラムであって、
電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有するときに、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることにより、前記レーダサイトから近距離においても、前記レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定する受信信号情報間引きステップ、
をコンピュータに実行させるためのレーダ受信信号処理プログラム。
【請求項8】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理方法であって、
電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する受信信号情報取得ステップと、
前記受信信号情報取得ステップで取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くにあたり、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることにより、前記レーダサイトから近距離においても、前記レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定する受信信号情報間引きステップと、
を順に備えることを特徴とするレーダ受信信号処理方法。
【請求項9】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理方法であって、
電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有するときに、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることにより、前記レーダサイトから近距離においても、前記レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定する受信信号情報間引きステップ、
を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダとして、パラボラアンテナを用いるパラボラレーダが、従来から知られている。
【0003】
パラボラレーダでは、仰角方向の機械走査をある一定仰角で止めたうえで、方位角方向の機械走査を360°に渡って行ない、仰角方向の機械走査を別の一定仰角で止めたうえで、方位角方向の機械走査を360°に渡って行なう、という操作を繰り返す。よって、パラボラレーダでは、ボリュームスキャンデータを得るために、「複数周」の方位角方向の機械走査が必要であり、5分から10分程度の時間を要する。このとき、最初のスキャンと最後のスキャンで時間の差異があるので、立体的に降水雲を捉えるには、ボリュームスキャンの時間が長すぎる場合があり、観測したエコーが鉛直方向に不整合を持つ可能性がある。また、対流性エコー等の変化の激しい現象を観測するには、5分という観測時間間隔(時間分解能)も十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5443867号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元のボリュームスキャンを行なうレーダとして、DBF(Digital Beam Forming)を用いるフェーズドアレイレーダが、新しい技術として注目を集めつつある。
【0006】
フェーズドアレイレーダでは、従来のパラボラレーダの機械走査で観測していた部分を電子走査で観測することで、三次元観測を高速化できる。例えば、方位角方向の機械走査をあるセクタ内で行ないながら、仰角方向の電子走査を90°に渡って行ない、方位角方向の機械走査を別のセクタ内で行ないながら、仰角方向の電子走査を90°に渡って行なう、という操作を繰り返す。このフェーズドアレイレーダでは、方位角方向の機械走査「1周」(例えば30秒)でボリュームスキャンデータを取得できるため、パラボラレーダと比べ、観測位置の不整合が少なく、時間分解能も高い。また、パラボラレーダの「複数周」の仰角方向のデータと比べ、このフェーズドアレイレーダの仰角方向のデータは、電子走査でより密なデータを取得できるため、仰角方向の空間分解能が高い。
【0007】
このように、フェーズドアレイレーダでは、パラボラレーダより、空間分解能及び時間分解能が高くなるため、観測データのサイズが大きくなり、観測データの機器間のやり取りにおいて、必要な帯域及び時間が増えてしまう。そこで、フェーズドアレイレーダにおいて、観測データの圧縮技術を検討する必要がある。
【0008】
例えば、特許文献1では、フェーズドアレイレーダにおいて、極座標系の観測データを、所定の格子点間隔を有するメッシュからなる直交座標系の観測データに変換する。
【0009】
そして、レーダサイトから近距離においては、レーダビームが広がっていないため、直交座標系の単数のメッシュに、極座標系の複数のレンジビンが含まれる可能性がある。そこで、極座標系の複数のレンジビンのうち極座標系の単数のレンジビンのみを、直交座標系の単数のメッシュに対応させることにより、観測データを圧縮することができる。
【0010】
しかし、レーダサイトから遠距離においては、レーダビームが広がっているため、極座標系の単数のレンジビンに、直交座標系の複数のメッシュが含まれる可能性がある。そこで、極座標系の単数のレンジビンを、直交座標系の複数のメッシュのそれぞれに対応させてしまうと、観測データを圧縮するどころか、観測データを増大させてしまう。
【0011】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、レーダサイトから近距離においては、レーダ受信信号の情報の空間内密度が高いことに着目して、レーダ受信信号の情報を間引くこととした。
【0013】
具体的には、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置であって、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する受信信号情報取得部と、前記受信信号情報取得部が取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引く受信信号情報間引き部と、を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0014】
また、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理装置であって、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有する受信信号情報間引き部、を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0015】
また、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理プログラムであって、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する受信信号情報取得ステップと、前記受信信号情報取得ステップで取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引く受信信号情報間引きステップと、を順にコンピュータに実行させるためのレーダ受信信号処理プログラムである。
【0016】
また、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理プログラムであって、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有する受信信号情報間引きステップ、をコンピュータに実行させるためのレーダ受信信号処理プログラムである。
【0017】
また、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理方法であって、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する受信信号情報取得ステップと、前記受信信号情報取得ステップで取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引く受信信号情報間引きステップと、を順に備えることを特徴とするレーダ受信信号処理方法である。
【0018】
また、本開示は、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおける、レーダ受信信号を処理するレーダ受信信号処理方法であって、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、レーダサイトから所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有する受信信号情報間引きステップ、を備えることを特徴とするレーダ受信信号処理方法である。
【0019】
この構成によれば、レーダサイトから近距離においては、レーダ受信信号の情報を間引くとともに、レーダサイトから遠距離においては、レーダ受信信号の情報を増大させないため、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0020】
また、本開示は、前記受信信号情報間引き部は、前記レーダサイトから近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、前記レーダサイトから遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くすることを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0021】
この構成によれば、レーダサイトから近距離においても、レーダサイトから遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定したうえで、レーダ受信信号の情報を間引くことができるため、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0022】
また、本開示は、前記受信信号情報間引き部は、所定の大きさの物標が見落とされないように、レーダ受信信号の情報の間引き率を設定することを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0023】
この構成によれば、所定の大きさの物標が見落とされないように、レーダ受信信号の情報の空間内密度をあまり低く設定しないようにしたうえで、レーダ受信信号の情報を間引くことができるため、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0024】
また、本開示は、前記受信信号情報間引き部が間引かなかったレーダ受信信号の情報と、前記受信信号情報間引き部がレーダ受信信号の情報を間引かなかった走査領域の情報とを、前記レーダ受信信号処理装置の処理結果として出力する受信信号情報出力部、をさらに備えることを特徴とするレーダ受信信号処理装置である。
【0025】
この構成によれば、データ転送先において、間引かれなかった走査領域の情報を参照して、間引かれなかったレーダ受信信号の情報を正しく処理・表示することができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本開示によれば、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示のレーダシステムの構成を示す図である。
図2】本開示のレーダシステムの構成を示す図である。
図3】本開示の所定近距離でのレーダ受信信号の情報の間引き方法を示す図である。
図4】本開示の所定高度以上でのレーダ受信信号の情報の間引き方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0029】
(本開示の所定近距離でのレーダ受信信号の情報の間引き方法)
本開示のレーダシステムの構成を図1及び図2に示す。本開示の所定近距離でのレーダ受信信号の情報の間引き方法を図3に示す。本開示のレーダシステムRは、雨雲や航空機等の物標Tを探査するために、レーダサイト1及びレーダ受信信号処理装置2から構成される。
【0030】
なお、本実施形態では、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダとして、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうフェーズドアレイレーダを適用している。しかし、変形例として、3次元のボリュームスキャンを行なうレーダとして、方位角方向の走査方法を電子走査としてもよく機械走査としてもよく、仰角方向の走査方法を電子走査としてもよく機械走査としてもよい。
【0031】
レーダサイト1は、フェーズドアレイレーダにおいて、方位角方向の機械走査を行ないながら仰角方向の電子走査を行なうために、レーダ送信部11、レーダ受信部12、機械走査部13及び電子走査部14から構成される。レーダ送信部11は、雨雲や航空機等の物標Tへとレーダ送信波を送信する。レーダ受信部12は、雨雲や航空機等の物標Tからレーダ反射波を受信する。機械走査部13は、レーダ送受信の方位角方向の機械走査を行なう。電子走査部14は、レーダ送受信の仰角方向の電子走査を行なう。
【0032】
図1においては、レーダ受信信号処理装置2は、フェーズドアレイレーダにおけるレーダ受信信号を処理するために、受信信号情報取得部21、受信信号情報間引き部22及び受信信号情報出力部23から構成される。本開示のレーダ受信信号処理は、レーダ受信信号処理装置2にインストールされたプログラムにより、実現することができる。
【0033】
受信信号情報取得部21は、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する。本実施形態では、方位角方向の機械走査を行ない、仰角方向の電子走査を行なう。
【0034】
受信信号情報間引き部22は、受信信号情報取得部21が取得したレーダ受信信号の情報のうち、レーダサイト1から所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引く。レーダサイト1から近距離においては、レーダ受信信号の情報の空間内密度が高いからである。
【0035】
図2においては、レーダ受信信号処理装置2は、フェーズドアレイレーダにおけるレーダ受信信号を処理するために、受信信号情報間引き部22及び受信信号情報出力部23から構成される。本開示のレーダ受信信号処理は、レーダ受信信号処理装置2にインストールされたプログラムにより、実現することができる。
【0036】
受信信号情報間引き部22は、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得する。本実施形態では、方位角方向の機械走査を行ない、仰角方向の電子走査を行なう。このときに、受信信号情報間引き部22は、レーダサイト1から所定近距離でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有する。レーダサイト1から近距離においては、レーダ受信信号の情報の空間内密度が高いからである。
【0037】
図3の左上欄に示した1/4円は、1回のRHI(Range Height Indicator)観測における、レーダ受信信号の情報を示す。図3の右上欄に示した1/4円は、1回のPPI(Plan Position Indicator)観測又はCAPPI(Constant Altitude PPI)観測における、レーダ受信信号の情報を示す。図3の下欄に示した扇形は、図3の左上欄及び右上欄に示した1/4円のうち、砂地で示した一部分における、レーダ受信信号の情報を示す。図3の下欄に示した扇形では、レーダサイト1から近距離のレンジビンでのレーダ受信信号の情報が、例えば間引き率4/5で間引かれている(つまり、5個のレンジビンのうち、4個のレンジビンの割合で、レーダ受信信号の情報が間引かれている。)。
【0038】
受信信号情報間引き部22は、レーダサイト1から近距離においては、レーダ受信信号の情報を間引くとともに、レーダサイト1から遠距離においては、レーダ受信信号の情報を増大させないため、フェーズドアレイレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0039】
受信信号情報間引き部22は、レーダサイト1から近距離でのレーダ受信信号の情報ほど、レーダサイト1から遠距離でのレーダ受信信号の情報より、間引き率を高くしてもよい。図3の下欄に示した扇形では、レーダサイト1から近距離のレンジビンでのレーダ受信信号の情報が、例えば間引き率4/5で間引かれており、レーダサイト1から遠距離のレンジビンでのレーダ受信信号の情報が、例えば間引き率1/2で間引かれている。
【0040】
受信信号情報間引き部22は、レーダサイト1から近距離においても、レーダサイト1から遠距離においても、レーダ受信信号の情報の空間内密度をほぼ等しく設定したうえで、レーダ受信信号の情報を間引くことができるため、フェーズドアレイレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0041】
受信信号情報間引き部22は、所定の大きさの物標Tが見落とされないように、レーダ受信信号の情報の間引き率を設定してもよい。ここで、物標Tが空間的に広がりを有する雨雲等であるときには、レーダ受信信号の情報の間引き率を高く設定してもよい。一方で、物標Tが空間的に広がりを有さない航空機等であるときには、レーダ受信信号の情報の間引き率を低く設定すればよい。
【0042】
受信信号情報間引き部22は、所定の大きさの物標Tが見落とされないように、レーダ受信信号の情報の空間内密度をあまり低く設定しないようにしたうえで、レーダ受信信号の情報を間引くことができるため、フェーズドアレイレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0043】
受信信号情報出力部23は、受信信号情報間引き部22が間引かなかったレーダ受信信号の情報と、受信信号情報間引き部22がレーダ受信信号の情報を間引かなかった走査領域の情報とを、レーダ受信信号処理装置2の処理結果として出力する。ここで、レーダ受信信号の情報が間引かれなかった走査領域の情報は、例えばヘッダ情報として出力されて、間引かれなかったレーダ受信信号の情報は、例えばペイロード情報として出力される。
【0044】
このように、データ転送先3において、間引かれなかった走査領域の情報を参照して、間引かれなかったレーダ受信信号の情報を正しく処理・表示することができる。そして、観測データの機器間のやり取りにおいて、必要な帯域及び時間を減らすことができる。
【0045】
(本開示の所定高度以上でのレーダ受信信号の情報の間引き方法)
本開示の所定高度以上でのレーダ受信信号の情報の間引き方法を図4に示す。本開示の所定近距離でのレーダ受信信号の情報の間引き方法と、本開示の所定高度以上でのレーダ受信信号の情報の間引き方法とは、後述するように、併用することができる。
【0046】
図1においては、受信信号情報間引き部22は、受信信号情報取得部21が取得したレーダ受信信号の情報のうち、所定高度より上空でのレーダ受信信号の情報を間引く。所定高度より上空においては、ターゲットとなる降水雲が存在しないからである。
【0047】
図2においては、受信信号情報間引き部22は、電子走査又は機械走査によりレーダ受信信号の情報を取得するにあたり、所定高度より上空でのレーダ受信信号の情報を間引くかどうかを予め設定できる機能を有する。所定高度より上空においては、ターゲットとなる降水雲が存在しないからである。
【0048】
図4に示した1/4円は、1回のRHI(Range Height Indicator)観測における、レーダ受信信号の情報を示す。所定高度より上空でのレーダ受信信号の情報が、部分的に間引かれている、又は、完全に破棄されている。
【0049】
受信信号情報間引き部22は、所定高度より上空においては、レーダ受信信号の情報を間引くとともに、所定高度より下層においては、レーダ受信信号の情報を増大させないため、フェーズドアレイレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0050】
受信信号情報間引き部22は、レーダ受信信号の情報に基づいて決定された最大エコー頂高度を、所定高度として設定してもよい。ここで、最大エコー頂高度は、時刻毎に異なり、エコーが観測される最も高い高度である。
【0051】
受信信号情報間引き部22は、レーダサイト1が観測した最大エコー頂高度を、所定高度として設定したうえで、最大エコー頂高度より上空でのレーダ受信信号の情報を間引くことができるため、フェーズドアレイレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0052】
受信信号情報間引き部22は、(1)レーダ受信信号処理装置2のオペレータにより時期及び/若しくは場所に応じて入力された降水雲の発達限界の高度を、又は、(2)高層気象観測により得られた観測データに基づいて時期及び/若しくは場所に応じて入力された降水雲の発達限界の高度を、所定高度として設定してもよい。ここで、オペレータ入力値は、経験値又は観測値であり、10〜20km程度である。
【0053】
受信信号情報間引き部22は、(1)オペレータにより時期及び/若しくは場所に応じて入力された降水雲の発達限界の高度を、又は、(2)高層気象観測に基づいて時期及び/若しくは場所に応じて入力された降水雲の発達限界の高度を、所定高度として設定したうえで、降水雲の発達限界の高度より上空でのレーダ受信信号の情報を間引くことができるため、フェーズドアレイレーダにおいて、近距離及び遠距離を合わせた全体として、観測データを圧縮することができる。
【0054】
本開示の所定近距離でのレーダ受信信号の情報の間引き方法と、本開示の所定高度以上でのレーダ受信信号の情報の間引き方法とは、前述したように、併用することができる。ここで、レーダサイト1から遠距離かつ所定高度より下層においては、レーダ受信信号の情報の間引き率を低く設定すればよい。一方で、レーダサイト1から遠距離かつ所定高度より上空においては、レーダ受信信号の情報の間引き率を高く設定すればよい、又は、レーダ受信信号の情報を完全に破棄すればよい。
【0055】
実施形態では、空間方向について、観測データを圧縮している。変形例として、空間方向のみならず、時間方向についても、観測データを圧縮してもよい。例えば、物標Tの位置の時間変化を見落とさないように、時間方向の観測データの圧縮率を設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示のレーダ受信信号処理装置、プログラム及び方法は、(1)本開示の所定近距離でのレーダ受信信号の情報の間引き方法を適用する気象用途のレーダを含む一般用途のレーダと、(2)本開示の所定高度以上でのレーダ受信信号の情報の間引き方法を適用する気象用途のレーダと、に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
R:レーダシステム
T:物標
1:レーダサイト
2:レーダ受信信号処理装置
3:データ転送先
11:レーダ送信部
12:レーダ受信部
13:機械走査部
14:電子走査部
21:受信信号情報取得部
22:受信信号情報間引き部
23:受信信号情報出力部
図1
図2
図3
図4