特許第6896426号(P6896426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896426
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】搾乳器及び搾乳器のための搾り出し具
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/06 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   A61M1/06
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-559424(P2016-559424)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公表番号】特表2017-509418(P2017-509418A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015056575
(87)【国際公開番号】WO2015150225
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月15日
【審判番号】不服2020-3566(P2020-3566/J1)
【審判請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】14162521.0
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】アールデルス アルノルド
(72)【発明者】
【氏名】ベウネン ロイ エミール ペトロネラ
(72)【発明者】
【氏名】ストゥレメイェール ロレット フランシスカ セオドラ
【合議体】
【審判長】 佐々木 一浩
【審判官】 井上 哲男
【審判官】 栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5071403(US,A)
【文献】 特表2012−524559(JP,A)
【文献】 特表平9−503923(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/032608(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の乳首から母乳を出すための搾乳器のための搾り出し具であって、
前記搾り出し具は、第1の圧力室及び第2の圧力室を有する搾乳器本体を有し、
前記第1の圧力室は、前記第1の圧力室において圧力を生成するための圧力ユニットに接続されるよう構成され、
前記第2の圧力室は、胸部受容漏斗と、母乳出口と、前記胸部受容漏斗から前記母乳出口への母乳経路と、を有し、
前記第1の圧力室と前記第2の圧力室とは、気体透過性であり液体非透過性である通気性膜により離隔され、前記通気性膜は、疎水性膜であり、前記通気性膜は、織布及び不織布膜構造の両方を有する混合型の膜構造を有し、前記母乳経路のなかの液体から前記第1の圧力室を離隔する、搾り出し具。
【請求項2】
前記通気性膜は、細菌保持性の疎水性通気性膜である、請求項1に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項3】
前記通気性膜は、エアロゾル環境において細菌保持性である、請求項2に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項4】
前記通気性膜は、疎水性の裏地を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項5】
前記通気性膜は、両方の方向において、気体透過性であり液体非透過性である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項6】
前記通気性膜の少なくとも一部は、母乳出口に対して或る角度で配置される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項7】
前記通気性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン又は発泡ポリテトラフルオロエチレンのうち1つ以上を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項8】
前記通気性膜を支持するための支持構造を更に有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項9】
前記通気性膜と前記搾乳器本体との間に配置された封止部を更に有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項10】
前記搾り出し具の摩耗、特に前記通気性膜の摩耗を示す、摩耗インジケータを更に有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項11】
前記通気性膜の表面積を減少させるための制限器を更に有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項12】
前記母乳経路と前記通気性膜との間に配置された、飛沫保護部を更に有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項13】
前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室のうち少なくとも一方が、前記通気性膜にアクセス可能となるよう構成された、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の搾乳器のための搾り出し具。
【請求項14】
人間の乳首から母乳を出すための搾乳器であって、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の搾り出し具と、
圧力を生成するための圧力ユニットと、
を有する搾乳器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の乳首から母乳を搾り出すための搾乳器に関し、更に詳細には搾乳器のための搾り出し具に関する。
【背景技術】
【0002】
搾乳器は、哺乳瓶に母乳を絞り出すために母親によって利用される装置である。一般に母乳は、乳首が位置させられる搾乳器の真空室に負圧を生成することにより搾り出される。胸部に当てられる搾乳器の部分は、搾り出し具と呼ばれ得る。
【0003】
衛生的な理由から、殆どの搾乳器は隔膜を利用している。非透過性の弾力性のあるシリコーンの隔膜が、胸部と真空ポンプとの間の衛生的な遮蔽として機能する。胸部に真空を生成するため、隔膜はストロークを為す必要がある。真空ポンプは隔膜を曲げ、それにより真空室における空気を膨張させる。当該膨張は、胸部において必要とされる真空を生成する。ポンプ側における真空が解放されると、弾力性のある隔膜は、再び静置位置へと動く。真空ポンプにおける真空は胸部における真空を間接的に引き起こすため、衛生的な機能が実装される。この概念は良く確立されており、長年に亘り業界で利用されている。
【0004】
米国特許出願公開US2012/0116299A1は、隔膜としての非透過性の弾力性のあるシリコーンの膜が、真空室に負圧を生成する、搾乳器を開示している。
【0005】
国際特許出願公開WO2014/045159A1は、隔膜としての非透過性の変形可能な膜を備えた、更なる搾乳器を開示している。該搾乳器は、該膜の変形を制限するリミッタを有する。斯くして、該膜のストロークの容積が制限され得る。
【0006】
国際特許出願公開WO2008/057218A2は、汚れが真空ポンプの送気管に入ることを防止する障壁として非透過性の弾力性のある隔膜を備えた、更なる従来の搾乳器を開示している。
【0007】
胸部に真空を生成するために隔膜はストロークを為す必要があるため、大きな空気の容積が必要とされる。ストロークは、隔膜の変位のため搾乳器において十分に大きな空気の容積が利用可能である場合にのみ、為され得る。従って、必要とされる空気の容積は、搾乳器の最小限のサイズを制限する。
【0008】
米国特許US5,071,403は、搾乳器のポンプを母乳による汚れから保護することに関する。真空ポンプに引き入れられる空気が、該真空ポンプと胸部収縮フードとを相互接続する空気の通路に配置された多孔質体を通過する。母乳が該多孔体に到達し該多孔質体を湿らせると、少なくとも該多孔質体が湿った場所においては、空気がもはや該多孔質を通過できなくなる。母乳と多孔質体との接触の度合いに依存して、胸部受容フードの内部に到達する真空の量が低減され又は除去され、これにより母乳の更なる搾り出しを低減又は停止する。ポンプを保護するため、真空ポンプへの継続した空気の流れが、低減又は停止される。それ故、親水性の多孔質体が、ポンプを保護する真空ラインにおける障壁として機能する。
【0009】
米国特許出願公開US2003/004459A1は、真空ポンプと真空ラインとの更なる離隔のための任意の親水性フィルタを備えた搾乳器を開示している。
【0010】
米国特許出願公開US2007/135761A1は、ポンピングされる母乳の体積のような搾乳器の用途についての情報を表示することができる液晶ディスプレイを備えた搾乳器を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来の搾乳器に比して胸部における真空圧が不変のままの、より小型な搾り出し具を提供することにある。更なる目的は、特にレンタル利用及び/又は病院用の、搾り出し具及び搾乳器の衛生機能を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様においては、人間の乳首から母乳を出すための搾乳器のための搾り出し具であって、
前記搾り出し具は、第1の圧力室及び第2の圧力室を有する搾乳器本体を有し、
前記第1の圧力室は、前記第1の圧力室において圧力を生成するための圧力ユニットに接続されるよう構成され、
前記第2の圧力室は、胸部受容漏斗と、母乳出口と、前記胸部受容漏斗から前記母乳出口への母乳経路と、を有し、
前記第1の圧力室と前記第2の圧力室とは、気体透過性であり液体非透過性である通気性膜により離隔され、前記通気性膜は、疎水性膜である、搾り出し具が提示される。
【0013】
本発明の更なる態様においては、人間の乳首から母乳を出すための搾乳器であって、
以上に説明された搾り出し具と、
圧力を生成するための圧力ユニットと、
を有する搾乳器が提示される。
【0014】
本発明の好適な実施例は、従属請求項において定義される。本発明の搾乳器は、本発明の搾り出し具及び従属請求項において定義されたものと同様の及び/又は同一の好適な実施例を持つことは、理解されるべきである。
【0015】
先行技術による非透過性のシリコーン隔膜を用いる代わりに、母乳経路から第1の圧力室を離隔するため、気体透過性であり液体非透過性である通気性膜を用いることが提案される。本発明者はこれにより、気体及び液体に対して非透過性である隔膜により胸部と圧力ユニットとを厳重に離隔する確立された概念を破る。
【0016】
女性の胸部が胸部受容漏斗のなかに位置させられると、第2の圧力室の開口が封止され閉じられる。従って、哺乳瓶のような母乳受容器が母乳出口に接続されると、第2の圧力室の開口が封止され閉じられる。当業者は、本文脈において「封止される」との語は、密閉されて封止されることに限定されるものではなく、母乳が搾り出され得る限り少しの漏れは許容されることを、理解するであろう。胸部受容漏斗は、母乳経路を介して母乳出口と流体連通している。
【0017】
動作時において、圧力ユニットは、第1の圧力室において、例えば負圧又は真空のような圧力を生成しても良い。第1の圧力室と第2の圧力室との間の通気性膜のため、該圧力は、乳首から母乳を搾り出すための第2の圧力室における対応する真空を引き起こす。第1の圧力室における負圧が解放されると、このことは第2の圧力室における対応する圧力を引き起こす。例えば、真空と周囲圧力とのシーケンスは、乳児の吸引運動を模倣し、授乳を促進し得る。該通気性膜は空気に対して透過性であるため、隔膜を動かす必要なく第2の真空室において負圧が生成されることができる。それ故、空間要件が著しく軽減される。
【0018】
換言すれば、弾力性のある隔膜の動きのための搾乳器本体における空気の容積を提供する必要がない。弾力性のある隔膜の動きのための該容積は、死容積とも呼ばれる。それ故、柔軟なシリコーンの膜を変位させるための死容積は、省略されることができる。第1の利点として、このことは設計の自由度を増大させ、低減されたサイズを持ち改善された取り扱いを実現した搾乳器を可能とする。第2の利点として、圧力ユニットにより変位させられる必要がある空気の容積が低減され、従ってより小さく安価な圧力ユニットが利用されることができる。
【0019】
更に、弾力性のあるシリコーンの隔膜が曲げられる必要がある、即ちシリコーンの隔膜のばね力に打ち克つためにかなりのポンプのパワーが必要とされる、従来の搾乳器とは異なり、通気性膜は、圧力ユニットに対する、より小さな抵抗をもたらすことができる。このことは、より小さく安価な圧力ユニットの利用を更に支持する。
【0020】
従来の搾乳器のためのシリコーンの隔膜は、種々の硬さ及び形状でつくられ得ることは、留意されるべきである。これらは全て異なる弾性挙動を持つが、いずれの設計も小さな圧力降下を可能とするための設計の最適化を必要とする。大面積の膜は、隔膜に亘って比較的小さな圧力降下を可能とするが、製品のどこかに大きな直径を必要とし、製品の設計を制限する。小さな面積は、より大きな設計の自由度に導くが、より大きな圧力降下に導いてしまう。当該圧力降下は、より強力な真空ポンプを要求することとなる。しかしながら、より強力な真空ポンプは、より大きい及び/又は高価なものとなる。先行技術とは異なり、本発明の一態様による方法は、非常に小さな圧力降下を可能とし、より小型で且つより安価な搾り出し具及び搾乳器を実現する。
【0021】
更に、本発明の一態様による通気性膜は、単一の又は二重の曲線状の面のような、あらゆる種類の形状に装着されることができ、一方、先行技術による可動隔膜は、効率良く動作するためには特定の形状を必要とする。
【0022】
更なる利点として、柔軟で曲がる隔膜が省略されるため、搾乳器本体の洗浄可能性が改善され得る。このことは、従来波型の又は折り畳まれた隔膜が利用されている、小型の搾り出し具について、特に有利である。換言すれば、従来の搾乳器における弾力性のあるシリコーンの隔膜は、該弾力性のある隔膜がポンピング工程において上下に動かされたときに変形させられる蛇腹部を含み得る。隔膜の十分な曲がる能力を提供するため、蛇腹部が必須となり得る。本発明の一態様による通気性膜の利点は、該通気性膜が、変形される必要がないことである。このことは、蛇腹部又は波型部の必要を回避し、膜の洗浄工程を簡単化する。換言すれば、該通気性膜は、平坦な、部分的に平坦な、又は略平坦な膜であっても良く、従って洗浄工程を簡単化する。
【0023】
更に有利にも、前記搾り出し具は、前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室と、前記圧力室の間における前記通気性膜と、を1つのエンティティとして備えた搾乳器を有する。これにより、エンティティの数が減少させられ、該搾乳器の取り扱いが簡素化されることができる。
【0024】
ここで使用される「通気性膜」なる語は、気体は通過するが液体は通過しない、通気性である膜に関する。該通気性膜は、半透過性膜とも呼ばれ得る。例えば、該膜は、空気を通すが、ミルク及び/又は水を通さない。通気性膜を選択するための主なパラメータは例えば、必要とされる流量、膜における必要とされる圧力降下(膜空気制限)、生体適合性、衛生/洗浄特性、レーザ加工、接着、超音波溶接等のような担体への装着を有する。
【0025】
本発明の一態様による通気性膜は、疎水性膜である。疎水性膜の利点は、水及び母乳をはじく点である。水及び/又は母乳の小滴は、自動的に該膜から離れる。このことは、第1の圧力室と第2の圧力室との間のガス交換のために、該通気性膜の十分な領域が利用可能となることを確実にする。それ故、該通気性膜のサイズは、非疎水性又は親水性の通気性膜と比較して、低減されることができる。湿されられ得る膜とは異なり、幾分かの安全余裕を持つ大きな表面積を備える必要がない。十分なガスの体積流量を提供するため、表面積の幾分かが小滴により遮断される場合には、安全余裕が必要とされる。斯くして、水及び/又は母乳が該通気性膜に到達したときでも、所与の表面積の膜における低い圧力降下がもたらされ得る。有利にも、該通気性膜は、空気が通過することを許容するが、水又は母乳が通過することを許容しない、疎水性の多孔質膜である。それ故、小滴が第1の圧力室に到達しない。
【0026】
更に、本発明者は、疎水性であることは、細菌保持に好適な影響を及ぼし、真空の管及びポンプに細菌が転送されることを防ぐことができることを見出した。それ故、特にレンタル利用又は病院での利用のため、衛生機能が改善され得る。疎水性の特性、及び従って疎水性の通気性膜の母乳をはじく挙動のため、母乳と通気性膜との間の接触時間が低減され得る。これにより、母乳に担持されている菌及び細菌を、該通気性膜並びに更にはポンプ及び真空ラインに転送する可能性が、更に低減され得る。
【0027】
更なる利点として、疎水性の通気性膜は、液体浸透挙動に好適な影響を及ぼす。疎水性の特性及び液体をはじく挙動のため、液体非透過性に関する要件は低減される。それ故例えば、搾乳器の典型的な圧力における全体的な液体非透過性の挙動を維持しつつ、より薄い膜又はより大きな孔の径を持つ膜が利用されることができる。これにより、膜における小さな圧力降下が実現されることができ、これにより、より小さな領域及び従ってより小型な膜が利用されることができ、及び/又は、より小さなポンプのパワーしか必要とされなくなる。
【0028】
有利にも、該疎水性の挙動は、用途に調整される。
【0029】
有利にも、該通気性膜は、細菌保持性の疎水性通気性膜である。細菌保持を決定するために利用される方法は、ASTM規格に記載されている。液体の濾過のために用いられるフィルタにおける細菌保持は、ASTM F838−05(2013)規格「Standard Test Method for Determining Bacterial Retention of Membrane Filters Utilized for Liquid Filtration」に記載されたように決定されても良い。
【0030】
更なる改善例においては、該疎水性の通気性膜は、エアロゾル環境において細菌保持性である。エアロゾルは、空気又はその他の気体中の、微小な固体粒子又は液体の小滴の混合物、特にコロイドとみなされ得る。先行技術は、液体としての母乳が真空ポンプに到達することを防ぐことに重点を置くが、本発明者は、エアロゾル成分もが考慮されるべきであることを認識した。真空圧力のため液相から気相への転移が助長され、通気性膜が液体非透過性であるにもかかわらず、この状態において、望ましくない成分が該膜を通過できるようにする。特に、細菌のような菌が潜在的に、液体非透過性であるが気体透過性である膜を通過して輸送されることができる。それ故、細菌保持性の膜であって、エアロゾル環境において細菌保持性である、疎水性の通気性膜を使用することが提案される。エアロゾル環境における細菌保持は、ASTM F2101−14規格「Standard Test Method for Evaluating the Bacterial Filtration Efficiency (BFE) of Medical Face Mask Material, Using a Biological Aerosol of Staphylococcus Aureus」に記載されたようなBFE(bacterial filtration efficiency)試験により決定されても良い。
【0031】
一実施例においては、該通気性膜(50)は、織布及び不織布膜構造の両方を有する混合型の膜構造を有する。当該実施例の利点は、織布材料及び不織布材料の利点が組み合わせられることである。例えば、織布層が、不織布層の上に配置されても良い。織布層は、第2の圧力室に面しても良い。不織布層は、第1の圧力室に面しても良い。織布層は、液体非透過性であっても良く、そのため第1の膜段階として該通気性膜を母乳が通過することを防止しても良い。織布層の利点は、該層の摩擦電気特性であり得る。第2の膜段階として、不織布層が、エアロゾル環境において細菌保持性であっても良い。不織布層の利点は、不織布層が高い効率で低い抵抗をもたらし得ることである。
【0032】
一実施例においては、該通気性膜は、疎水性の裏地を有する。裏地は、該通気性膜の支持層、特に堅固な支持層に関連する。有利にも、該疎水性の裏地は、第2の圧力室に面する。疎水性の裏地の使用は、該通気性膜の更なる層に液体が接触することを防止し得る。それ故、疎水性の裏地は有利にも、1つ以上の更なる特に高い効率の膜層と組み合わせられることができ、ここで該更なる層は非疎水性であっても良い。
【0033】
一実施例においては、該通気性膜は、両方の方向において、気体透過性であり液体非透過性である。換言すれば、気体は第1の圧力室から第2の圧力室へと及び第2の圧力室から第1の圧力室へと通過することができ、液体はいずれの方向においても遮断される。一方向型の透過性膜と異なり、斯かる双方向通気性膜は、ユーザに不快感をもたらし得る、胸部及び乳首における真空圧力の継続的な構築を回避する。
【0034】
一実施例においては、該通気性膜は、母乳出口に対して或る角度で配置される。有利にも、該通気性膜はこれにより、搾り出し具が人間の乳首に当てられたときに、水平面に対して或る角度で配置される。換言すれば、該通気性膜は、搾り出し具の典型的な使用の間、非水平方向にあることとなる。該角度は、母乳出口の平面に対して決定されても良く、該母乳出口平面は、母乳容器が搾乳器本体に接続されたときに該母乳容器の縁部が位置する平面に対応しても良い。本実施例の利点は、母乳及び/又は水の小滴が、重力に引かれるために自動的に膜から離れることができる点である。更なる改善例においては、該通気性膜は幾つかの小部分を有し、該通気性膜のこれら小部分は互いに対して或る角度で配置される。このことは、該搾乳器が使用されるときに、該通気性膜の少なくとも1つの小部分が、非水平方向に配置されることを確実にする。例えば、四角錐形状又は部分的に非水平な自由形状が利用されても良い。
【0035】
一実施例においては、該通気性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン又は発泡ポリテトラフルオロエチレンのうち1つ以上を有する。更なる実施例においては、該通気性膜は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン及び/又は発泡ポリテトラフルオロエチレンから成る。斯かる物質からつくられた通気性膜の利点は、それほど高くないコストで製造されることができる点である。更に、材料は、洗剤を使うものであっても使わないものであっても、手による洗浄、食器洗い機及び温水を含む、予測される洗浄工程に耐えるよう設計されても良いが、ガンマ線、ETO、オートクレーブ減菌及び消毒方法のような、病院で用いられる種類の洗浄手法に耐えることが可能であっても良い。
【0036】
該通気性膜は、衛生的な遮蔽として構成される。有利にも、該通気性膜の特性は、単に気体透過性であり液体非透過性であることを超えて、更に衛生的な遮蔽機能を実現する。このことは例えば、孔の開口の構造及びサイズが細菌のような望ましくない成分が通過することを防ぐような、多孔質材料を選択することによって実装され得る。代替として、又はこれに加えて、膜の厚さがこれに応じて選択される。
【0037】
一実施例においては、該搾り出し具は更に、該通気性膜を支持するための支持構造を有する。該支持構造は、該膜の一体部分として、別個の専用の要素として、又は該搾乳器の一部として、実装されても良い。換言すれば、該支持構造は、該通気性膜のための担体として機能する。該支持構造は、特にかけられる圧力により過度に該膜が曲がることを防止するため、力学的な安定をもたらすよう構成されても良い。例えば、該支持構造は、メッシュ構造のような堅固な構造であっても良い。有利にも、該支持構造は、該支持構造が母乳経路と接触しないよう、第1の圧力室に面する該通気性膜の側に実装される。これにより、該支持構造は、洗浄が容易である。更に有利にも、該支持構造は、該通気性膜の好適な取り扱いを可能とする。更に有利にも、該支持構造はまた、該膜をユーザによる損傷から保護する。
【0038】
一実施例においては、該搾り出し具は更に、該通気性膜と該搾乳器本体との間に配置された封止部を有する。例えば、該封止部は、第1の真空室と第2の真空室との間の漏れ、特に液体の漏れを防止するよう構成された、該通気性膜のまわりの封止環である。一実施例においては、該通気性膜は、封止用のシリコーンの封止部、及び支持構造として硬質プラスチック環を備えた、封止環を有する。本実施例の利点は、封止部及び支持構造を含む該通気性膜が、容易な洗浄のために搾乳器本体から離隔され得る点である。代替の実施例においては、該通気性膜は、該搾乳器本体に直接に固定され、それにより漏れを防止する。この実施例の利点は、非常に少ない量の材料しか利用されず、そのため製造コストが低減される点である。
【0039】
一実施例においては、該搾り出し具は更に、該搾り出し具の摩耗、特に該通気性膜の摩耗を示す、摩耗インジケータを有する。この利点は、該摩耗インジケータが、該装置がどれだけ頻繁に利用されたかを示唆する点である。従って、該摩耗インジケータは、例えば該通気性膜又は封止部が交換されるべき時はいつかを示し得る。該摩耗インジケータは、手で操作されるカウンタ、又は例えば青色インジケータのような時間経過とともに色褪せる色としてのカウンタのような、カウンタとして実装されても良い。
【0040】
一実施例においては、該搾り出し具は更に、該通気性膜の表面積を減少させるための制限器を有する。換言すれば、例えば該通気性膜の表面積を減少させることによって、該通気性膜によりもたらされる抵抗が調整されることができる。斯くして、該制限器は、該通気性膜の有効表面積を調整するために利用され得る。該通気性膜の小さな表面積は、第2の圧力室における圧力の、より遅い構築に導き得る。それ故、圧力ユニットを制御する代わりに、機械的な制限器が利用されても良い。これにより、より簡素で、より効高価ではない、圧力ユニットが利用されることができる。制限器の使用はまた、単に適切な制限器を選択することによって、女性により要求されるように胸部における種々の圧力条件を提供するために同一のポンピング機構が利用されることができる、手動の搾乳器に有利である。代替としては、該制限器は、第1の圧力室から第2の圧力室への又は第2の圧力室から第1の圧力室へのガス体積流に該膜がかける抵抗を定義する、該膜の一体部分である。
【0041】
一実施例においては、該搾り出し具は更に、母乳経路と通気性膜との間に配置された、飛沫保護部を有する。本実施例の利点は、該飛沫保護部が、母乳が該通気性膜に到達することを防ぐための、更なる遮蔽して機能する点である。それ故、該飛沫保護部は、該通気性膜のかなりの部分が液体によって被覆され、十分な量の空気を通せなくなってしまうことを防止する。
【0042】
一実施例においては、前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室のうち少なくとも一方が、該通気性膜にアクセス可能となるよう構成される。この実施例の利点は、洗浄の目的のための容易なアクセスを提供する点である。例えば、該搾乳器本体の第2の圧力室は、該通気性膜の洗浄及び/又は交換のため、開けられることができ該通気性膜へのアクセスを提供する蓋を有しても良い。代替として、又はこれに加えて、第2の圧力室からのアクセスが提供されても良い。任意の飛沫保護部は、洗浄のために取り外され、よけておくことができる、柔軟な要素として実装されても良い。
【0043】
一実施例においては、該搾り出し具は更に、前記母乳出口へ接続される母乳容器を有する。該搾り出し具は、協働する取り付け具を持つ母乳集め瓶のような容器が搾乳器本体に結合されることを可能とする取り付け具を有しても良い。代替としては、該母乳容器は、搾乳器本体の一部を形成する。有利にも、母乳は重力によって該容器又は保存容器へと流れる。第2の真空室は、該母乳容器によって封止されても良い。代替として、又はこれに加えて、該母乳出口は更に、搾り出された母乳が、第2の圧力室を出ることを許容しつつ、空気が該母乳出口を通って該第2の圧力室に入ることを防止する、一方向弁を有する。
【0044】
前記圧力ユニットは、該搾り出し具において直接に配置された、又はリモートの位置に配置された、手動ポンピング又は電動ポンプであっても良い。該圧力ユニットは、第1の圧力室に接続されるよう構成される。リモートの圧力ユニットは、管システムによって第1の圧力室に接続されても良い。それ故、該搾り出し具は任意に、リモートの真空ユニットへの接続のための管システムを有しても良い。
【0045】
ここで用いられる「負圧」又は「真空」なる用語は、周囲の圧力に対して小さな圧力を示す。
【0046】
以上に説明された搾り出し具は、胸部において真空を生成するためのストロークを為すための隔膜のための大きな空間がもはや必要とされなくなるため、より小型の搾り出し具の設計を可能とする。より小型の搾り出し具、及びより小さな加圧されるべき空間は、低減されたパワーを持つ、より小さな圧力ユニットの機器を実現する。より小さな圧力ユニットは、一般にあまり高価ではない。更に、膜の機器により、通気性膜が母乳に対して非透過性であり、それにより胸部受容漏斗と母乳出口との間の母乳経路から圧力ユニットが離隔されるため、衛生機能が維持される。
【0047】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施例を参照しながら説明され明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】搾乳器の第1の実施例の斜視図を示す。
図2】利用の間の搾乳器を示す。
図3】搾乳器の第2の実施例の分解図を示す。
図4】第3の実施例による搾り出し具を示す。
図5】第4の実施例による搾り出し具を示す。
図6】通気性膜の実施例を示す。
図7(A)】通気性膜の更なる実施例を示す。
図7(B)】通気性膜の更なる実施例を示す。
図8】インタフェースアセンブリの実施例の斜視図を示す。
図9】膜パラメータ間の関係を示す。
図10(A)】保持機構を示す。
図10(B)】保持機構を示す。
図10(C)】保持機構を示す。
図10(D)】保持機構を示す。
図11】粒子サイズに対する保持機構の関係の例を示す。
図12(A)】粒子に対する膜パラメータの影響を示す。
図12(B)】粒子に対する膜パラメータの影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、搾り出し具2と、例えば負圧又は真空のような圧力を生成するための圧力ユニット30と、を有する搾乳器1の実施例を示す。搾り出し具2は、搾乳器本体10と、哺乳瓶の形をとる母乳容器40と、を有する。搾乳器本体10は、搾乳器1の搾り出し具2の一部である。本実施例においては、圧力ユニット30は、電動真空ユニットである。代替としては、手動の圧力ユニット又はポンプが利用されても良い。電動真空ユニット30は、管31を介して、搾乳器本体10に接続されている。斯くして、電動真空ユニット30は、女性の胸部に当てられるべき搾乳器1の当該部分のサイズを低減させるため、リモートの位置に配置されることができる。代替としては、該真空ユニットは、例えば米国特許出願公開US2012/0116299A1に示されるように、搾り出し具2の搾乳器本体10に直接に配置されても良い。
【0050】
搾り出し具2は、第1の圧力室11及び第2の圧力室21を持つ、搾乳器本体10を有する。本実施例においては、これら圧力室は、真空室とも呼ばれ得る。第1の圧力室11は、管31乃至電動真空ユニット30への接続のためのコネクタ12を介して、真空ユニット30に接続されるよう構成される。
【0051】
例えば母乳を双方の乳首から同時に出すために、複数の搾り出し具2が共通の圧力ユニット30を共有しても良いことは、留意されるべきである。
【0052】
第2の圧力室21は、胸部受容漏斗22と、母乳出口23と、胸部受容漏斗22から母乳出口23までの母乳経路24と、を有する。斯くして、胸部受容漏斗22は、母乳経路24を介して、母乳出口23と流体連通している。胸部受容漏斗22は更に、迅速な母乳の流れを静かに、快適に且つ穏やかに提供するため、柔らかく温かい感触を提供するよう構成され、乳児の吸引動作を模倣する、マッサージクッション25を有しても良い。
【0053】
第1の圧力室11と第2の圧力室21とは、通気性膜50により離隔される。通気性膜50は、気体透過性であり且つ液体非透過性であり、第2の圧力室21における母乳経路24から、第1の圧力室11を離隔する。通気性膜50は、疎水性の通気性膜である。
【0054】
図2は、搾り出し具2の典型的な利用の間の、女性100の胸部102から母乳101を出す搾乳器1の利用を示す。女性の胸部102が搾り出し具2の部受容漏斗22に置かれると、第2の圧力室21の開口が封止され閉じられる。これにより、第2の圧力室21の母乳出口23が、母乳容器40により封止されて閉じられる。
【0055】
図3は、本発明の一態様による搾乳器1の更なる実施例を示す。搾乳器1は、手動の操作のために構成される。搾乳器1は、第1の圧力室11及び第2の圧力室21を有する搾乳器本体10を有する搾り出し具2を有する。第1の圧力室11は、第1の圧力室11において圧力を生成するための圧力ユニット30に接続されるよう構成される。
【0056】
図1に示されるような電動圧力ユニットを使う代わりに、本実施例においては、圧力ユニット30は、ハンドル部32及びピストン33を有する手動の圧力ユニットである。ハンドル部32は、搾乳器本体10に配置された接合部13と係合する。これにより、圧力ユニット30のハンドル部32の操作が、第1の圧力室11におけるピストン33の上下運動を引き起こし、それによって第1の圧力室11における空気の体積を変位させる。ピストンポンプは、従来の隔膜ポンプよりも空間を必要とせず、従ってより小型の設計を可能とすることは、留意されるべきである。また、第1の圧力室11において圧力を生成するための代替の手段が利用されても良い。
【0057】
第2の圧力室21は、改善されたユーザの快適さのためのマッサージクッション25を任意に備えていても良い、胸部受容漏斗22を有する。第2の圧力室21は更に、母乳出口23として機能する開口を有する。任意に、一方向弁26が母乳出口23に配置されていても良い。該一方向弁は、第2の圧力室21から母乳容器40へとミルクを通過させるよう構成される。母乳容器40は、例えばねじによって搾乳器本体10の底部に接続可能であり、これにより第2の圧力室21の下端を閉じる。
【0058】
第1の圧力室11と第2の圧力室21とは、胸部受容漏斗22から母乳出口23の開口への母乳経路24から第1の圧力室11を離隔するため、気体透過性であり液体非透過性である疎水性の通気性膜50によって離隔される。任意に、通気性膜50は、搾乳器本体10に固定される。このことは、取り扱われるべき部品の数を減少させ、それにより取り扱いの誤りを低減させる。
【0059】
通気性膜50の実施例は、図6、7a及び7bを参照しながら、以下に更に詳細に説明される。
【0060】
図4は、第1の圧力室11及び第2の圧力室21を持つ搾乳器本体10を有する搾り出し具2の第3の実施例を示す。第1の圧力室11は、管31を介して、リモートの圧力ユニットに接続されるよう構成される。
【0061】
有利な改善例においては、これら要素は、例えばPhilips社の搾乳器モデルAvent(登録商標)SCF334/02より知られたような従来の隔膜ベースの搾乳器を改良するよう構成される。
【0062】
第1の圧力室11と第2の圧力室21とを離隔するため、第1の圧力室11と第2の圧力室21とは、気体透過性であり液体非透過性である疎水性の通気性膜50によって離隔される。通気性膜50は、疎水性の通気性膜である。空気が通過する一方、第2の圧力室における水及び/又は母乳は遮断されるため、例えば第1の圧力室11に生成された真空は、第2の圧力室21における真空をも引き起こす。これにより、通気性膜50が、衛生的な遮蔽として機能する。疎水性であることは更に、細菌保持に好適な影響を及ぼし、真空の管31及びポンプに細菌が転送されることを防ぐ。
【0063】
ここでもまた、第2の圧力室21は、胸部受容漏斗22、母乳出口23、及び胸部受容漏斗22から母乳出口23までの母乳経路24を有する。図示された実施例においては、母乳出口23は、フラップの形をとる一方向弁26の任意の代替実施例を備える。
【0064】
搾乳器本体10は、母乳の小滴から通気性膜50を遮蔽するための、第2の圧力室21内に配置された任意の滴よけ14を有する。これにより、滴よけ14は、過度の母乳が通気性膜50に到達することを防止する、第1の障壁として機能することができる。母乳の小滴は、疎水性の通気性膜50からは自動的に離れることができる。
【0065】
インタフェースアセンブリ60が第1の圧力室11に配置され、管31を介して真空ユニットへの接続を提供するよう構成される。インタフェースアセンブリ60は、第1の圧力室11を封止するための蓋61を有する。有利にも、該搾り出し具のインタフェースアセンブリ60は、第1の圧力室11における空気の死容積を低減させる、1つ以上の容積低減要素62を有する。これにより、真空にされる必要がある空気の容積が、かなり低減される。斯くして、より小型の及び/又はより安価な真空ユニットが用いられることができる。
【0066】
代替の実施例においては、既存の搾乳器との互換性の必要がない場合には、第1の圧力室11の容積は、設計により低減させられても良い。このことは、ストロークを実行するための隔膜の必要性がないため、可能となる。
【0067】
図4に示された実施例においては、第1の圧力室11の上部の直径は、通気性膜50の直径以上である。斯くして、第1の圧力室11は、インタフェースアセンブリ60が取り外されたときに、通気性膜50へのアクセスを可能とするよう構成される。本実施例の利点は、洗浄又は交換のための通気性膜50への容易なアクセスである。
【0068】
図6は、通気性膜50の実施例を、より詳細に示す。通気性膜50は、気体透過性であり液体非透過性である、通気性の中央膜部分51を有する。剛性の環52の形をとる支持構造が、力学的な安定性を提供するため、中央膜部分51の周縁部に配置されても良い。任意に、剛性の環52は、通気性の中央膜部分51の表面積を所望の面積に限定するための制限器として構成される。
【0069】
更に、シリコーンの封止部のような封止部53が、例えば漏れを防止するため、搾乳器本体10の壁部に対する封止部として備えられても良い。該封止部は、第2の圧力室から第1の圧力室へと母乳が流れることを防止する限り、気密である必要はないことは、留意されるべきである。任意の摩耗インジケータ58が、封止部53を含む通気性膜50の摩耗を示唆し、これにより通気性膜50を交換するべき時を示唆する。
【0070】
図7A及び7Bは、通気性膜50に力学的な安定性をもたらすための代替の構造を示す。
【0071】
図7Aに示された実施例においては、例えば硬質プラスチック又は金属からつくられたメッシュ構造54が、通気性膜50の一方の面又は両方の面に備えられる。有利にも、該支持構造は、容易な洗浄のため、第1の真空室に面するほうの通気性膜50の側に配置される。
【0072】
図7Bに示された代替の実施例においては、通気性膜50は、該膜が通気性であることを確実にする、サブ層56及び57よりもかなり強い及び/又は硬い、担体層55を有しても良い。サブ層56及び57の透過性は、適切なメッシュ構造及び/又は層厚を選択することによって、気体透過性で液体非透過性となるように調節される。これら層の少なくとも一方は疎水性である。例えば、層55及び/又はサブ層56が疎水性であり、第2の圧力室に面し、このときサブ層57は疎水性である必要はない。メッシュ構造の代わりに、不織構造のような代替の多孔質構造が利用されても良い。織物構造と不織構造との両方を有する混合膜が利用されても良い。例えば、サブ層56が織物の疎水構造であり、サブ層57が不織構造である。
【0073】
一実施例においては、該膜の孔のサイズ及び厚さが、所望される衛生機能を実現する。一実施例においては、孔のサイズは1μmよりも小さく、特に500nmよりも小さく、特に100nmよりも小さい。本実施例の利点は、細菌のような菌が遮断されることができる点である。有利にも、孔のサイズは単に平均値ではなく、膜のどこかで菌が通過することを防止するため、全ての孔が規定された孔のサイズよりも小さい。
【0074】
一実施例においては、例えば1μmといった第1の孔サイズを持つ2つのサブ層56、57が積層され、該第1の孔サイズよりも小さい見掛けの又は有効孔サイズを持つ膜を実現する。サブ層56、57の孔サイズは、同一であっても良いし又は異なっていても良い。
【0075】
任意に、図7Bにおいて、通気性膜の保護のため、層57の上端に更なる支持層が配置される。有利にも、該支持構造は更に、例えば洗浄工程の間の、ユーザによる損傷から該膜を保護する。
【0076】
図5は、図4に基づく搾り出し具の実施例を示す。図5は、代替のインタフェースアセンブリ60を示す。本実施例においては、搾り出し具2のインタフェースアセンブリ60は、第1の圧力室11及び通気性膜50を有する。例えば、インタフェースアセンブリ60は、任意に搾乳器本体10の上部をも封止する、シリコーンのインタフェースアセンブリとして製造されても良い。任意に、例えば洗浄のため、通気性膜50が取り外されることができる。インタフェースアセンブリ60の断面図が、図5に示されている。インタフェースアセンブリ60の斜視図が、図8に示されている。
【0077】
インタフェースアセンブリ60は任意に、従来の搾乳器本体10を変更するよう構成され、搾乳器本体10の死容積を低減させるための任意の容積低減要素62を有する。この場合には、第2の圧力室21の容積が低減され得る。
【0078】
有利にも、図5を参照しながら示されるように、通気性膜50は非水平に配置され、これにより、矢印64に示されるように、母乳の小滴63が重力によって落ちることを可能とする。換言すれば、通気性膜50は、搾り出し具2が人間の乳首に当てられたときに、水平面に対して或る角度をもって配置される。斯くして、母乳の小滴63が通気性膜50に到達する場合には、小滴63が自動的に離れる。有利にも、通気性膜50は、小滴63を落とすことを更に支援する、疎水性材料からつくられる。
【0079】
該膜は通気性であるが、該膜は気体の体積流量に対する空気の制限をもたらす。該空気の制限、該膜の表面積、及び圧力ユニットのパワーが、所望の気体の体積流量を実現するよう整合される。特に、該通気性膜は、搾乳器機能を実現するのに十分に低い、空気の制限を持つ。例えば、該空気の制限は、例えば毎分0.3リットルの自由流れをもたらすことができ、例えば−1000mbarの最終的真空を持つ、真空ポンプを使って、15mlの小容積が、約1.2秒で−333mbarまで減圧されることができるように、選択される。第1の圧力室が最小の容積を持つ場合、1000mbarの差分圧力が、略即時に該通気性膜にかかる。15mlという第2の圧力室の容積の例は小さいが、一般的に当業者は、小型であり、安価であり及び/又はエネルギー効率の良い圧力ユニットの使用を可能とするために、第1の及び/又は第2の圧力室の容積を更に低減させるであろう。これらの値は、搾乳器についての値の例として理解されるべきである。当業者は、母乳の抽出を可能とする他の値も一般的に選択され得ることを、理解するであろう。
【0080】
以上に鑑み、空気の制限を持つ通気性膜は、例えば−1000mbarの圧力差が該膜にかけられ、該膜が所定の表面積を持つ場合、例えば少なくとも毎分0.3リットルの流量を該膜が提供すると規定されても良い。これらのパラメータは、当業者が、該通気性膜の必要な流量パラメータQを決定し、それに応じて該膜を選択することを可能とする。流量パラメータQは、Q=膜を通る流量/(膜の表面積*該膜における圧力差)として定義され得る。搾乳器については、該表面積は好適には可能な限り小さい。小さな膜の更なる利点は、低い材料コストであり得る。有利な実施例においては、該表面積は、30mmの半径を持つディスク型領域に対応する2827mmより小さく、特に、15mmの半径を持つディスク型領域に対応する707mmより小さい。該空気の制限、及び最大膜表面積に鑑み、適切な膜が決定されることができる。
【0081】
望ましい圧力プロファイル、即ち時間により変化する圧力は、適切な圧力ユニットを用い、該通気性膜の空気の制限を考慮に入れて、適用され得る。
【0082】
疎水性の通気性膜の空気の制限又は抵抗の要件は、算出により決定され得る。該膜を通る空気の速度v[m/s]は、必要とされる真空のプロファイル、即ち特定の体積におけるdP/dtを介して決定されることができる。該膜による圧力降下(dP)は有利にも、低パワーで小型なポンプの使用(更には膜における低い応力)を可能とするため、例えば100mbarより小さく、特に50mbarより小さく、更に特に20mbarより小さく、といったように、可能な限り低く保たれる。有利にも、例えば設計の自由度を確実にし、損傷のリスクを低減させ、コスト効率を改善する等のため、表面積は可能な限り小さく保たれる。例えば、該膜は、約20mmの直径及び約350mmの表面積を持つ、略円形の膜である。これに基づき、該膜について許容される最大抵抗は、以下のように算出され得る:
dP[Pa]=R[Pas/kg]・q[kg/s]
q[kg/s]=v[m/s]・A[m]・rho[kg/m
R[Pas]=(dP[Pa]/A[m])・(1/v[m/s])・(1/rho[kg/m])
斯くして、該膜の特性の決定は、当該最大抵抗Rと、細菌保持(ASTM F2101−14)のような該膜の保持要件と、に基づくものであっても良い。該膜の効率は、該膜が必要とされる保持力及び必要とされるRを満たすか否かを決定する。
【0083】
膜の効率900に影響を与えるパラメータが、図9を参照しながら例示される。これらパラメータは、膜の効率に影響を与える複数の態様である。幾つかのパラメータは、図9において矢印で示される、互いに対する相互依存性を持つ。例えば、膜の効率は、孔のサイズ901、孔の形状902、孔の構造903、膜及び/又は構成物の厚さ904、粒子移動距離905、繊維被覆906、繊維の向き907、繊維混合908、繊維形状909、膜の裏打ち層及び/又は表層910、繊維径911、摩擦電気パラメータ912、及び材料タイプ913により影響を受ける。
【0084】
任意に、粒子を捕捉する可能性を増大させるたえ、粒子速度が低下させられても良い。
【0085】
相互依存性に関しては、例えば粒子移動距離905は、構成物の厚さ904、孔の構造903、繊維混合908及び繊維の向き907に依存する。図12Aに示されるように、参照番号1202において直線の繊維1201に入り直線の経路1203に沿って移動する粒子1004は、参照番号1205において湾曲した繊維1204に入り曲がった経路1206に沿って移動する粒子1004に比べて、短い移動距離905を持つ。湾曲した繊維1204に沿った長い移動距離は、直線の繊維1201に比べて好適な保持特性をもたらす。しかしながら、保持と流れ抵抗との間にトレードオフが存在し得る。
【0086】
図10A乃至10Dは、種々の保持機構を示す。図10Aは、篩効果を示す。粒子経路1003に沿って移動する粒子1004は、膜の繊維1001間を通過することができず、従って保持されるが、空気流1002は、該膜を通過する。図10Bは、慣性質量効果を示す。粒子経路1003に沿って移動する粒子1004は、膜の繊維1001によって遮断される。該粒子の慣性質量により、該粒子は該繊維のまわりの空気流1002に追従せず、繊維1001に衝突する。図10Cは、粒子経路1003に沿って移動する粒子1004が、膜の繊維1001に向けて引かれ、これにより該膜を通過することを防止される、遮断効果を示す。当該効果は、図12Bを参照しながらも例示される。例えば、活性炭1210は、気体粒子を含む粒子1004を遮断することが可能であり、斯くして該粒子を通過させることを防止する。図10Dは、拡散効果を示す。粒子1004は、波型の拡散経路1003に沿って進み、膜の繊維1001と衝突し、該通気性膜を通過しない。
【0087】
粒子サイズに依存して、上述の保持機構のうちの1つ以上が組み合わせられても良い。図11は、図10A乃至10Dを参照しながら説明された保持機構に対する、粒子サイズ(μm)の関係の例を示す。例えば、粗い膜の範囲1101については、図10Aの篩効果1104Aが利用され得る。微細な膜の範囲1102については、図10Bの慣性質量効果1104Bが利用され得、極小のフィルタリング1103については、図10Cの遮断効果1104C及び図10Dの拡散効果1104Dの利用が好適な結果を示す。
【0088】
該膜は、1つ以上の膜、及び任意に1つ以上の支持層の合成体として適用されても良い。膜は、裏打ち及び/又は表面、特に疎水性の裏打ち及び/又は表面を備えられても良いし、又は膜のみであっても良い。斯くして合成体においては、濾過特性が、1つ以上の同一の又は異なる膜により生成されても良く、任意に裏打ち及び/又は表面により更に支持されても良い。
【0089】
結論として、人間の乳首から母乳を出すための搾乳器及び搾乳器のための搾り出し具が提示された。有利にも、第1の圧力室を母乳経路から離隔するための疎水性の通気性膜を用いる提案される方法は、より小型で、高価ではない搾り出し具及び搾乳器を提供し、非透過性の弾力性のある隔膜を用いる搾り出し具に比べて、衛生機能が改善されるか又は少なくとも維持される。
【0090】
本発明は図面及び以上の記述において説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものであって限定するものではないとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。
【0091】
請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一の要素又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。
【0092】
請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B