特許第6896469号(P6896469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896469
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】位置調整シム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/18 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   E02F9/18
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-57001(P2017-57001)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-159232(P2018-159232A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】塩入 裕一
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−221294(JP,A)
【文献】 特開平04−025611(JP,A)
【文献】 特開2012−062634(JP,A)
【文献】 実開平06−018462(JP,U)
【文献】 実開昭55−120692(JP,U)
【文献】 特開2009−041659(JP,A)
【文献】 特開2011−132774(JP,A)
【文献】 特開2008−075372(JP,A)
【文献】 特開平03−195698(JP,A)
【文献】 特開平11−229441(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0611716(KR,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0138242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/18
B66C 23/00−23/94
B66F 9/00−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の本体部に前記建設機械のバランスを保つためのカウンタウエイトを固定要素を用いて取り付ける際に、前記カウンタウエイトの前記本体部に対する位置と傾きとを調整するための位置調整シムであって、
前記位置調整シムは、前記本体部の左右両側に上方に向かって延びるブラケットと前記カウンタウエイトとの間に挟み込まれ、前記ブラケットと前記カウンタウエイトとを前記固定要素で締め付けて前記本体部と前記カウンタウエイトとの間に形成される隙間と前記本体部に対する前記カウンタウエイトの傾きとを調整するためのものであり、
前記位置調整シムは、前記左右両側で2本の前記固定要素が用いられる位置に対応する上下位置の2つのシム本体と、前記シム本体同士を連結する連結体とを有し、
前記シム本体には、対応する前記固定要素を挿入させて当該位置調整シムを前記固定要素に引っかけるための切り欠きがそれぞれ形成され、
前記各シム本体に形成された前記切り欠きの入り口から前記各シム本体の中心側に向かう該切り欠きの延びる方向が相互に一致し、前記切り欠きが延びる方向は、前記各シム本体の中心同士を結んだ線に対して一定の傾き角をなして傾いており、
前記連結体は帯状をなし、該連結体の長手方向の一端は、一方の前記シム本体の前記切り欠き入り口の側部につながれ、該連結体の長手方向の他端は、他方の前記シム本体の前記切り欠き入り口の反対側につながれている、ことを特徴とする位置調整シム。
【請求項2】
前記切り欠きは、前記シム本体の中心に向かって形成されている導入部と、前記シム本体中心に形成されている先端部とで構成されており、前記導入部の両側部は、相互に平行をなし直線状に延び、該導入部と該先端部とは一体に形成されている、請求項1に記載の位置調整シム。
【請求項3】
手で持つための把持部が当該位置調整シムの縁部から外側に向けて突出している、
請求項1又は2に記載の位置調整シム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置調整シムに関し、さらに詳しくは、建設機械のカウンタウエイトの位置を調整するために用いられる位置調整シムに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械では、機械のバランスを維持するために、機械の後部にカウンタウエイトが取り付けられている。具体的に、カウンタウエイトは、建設機械の本体部を構成している本体フレームの後部で、本体フレームから後方に延びる1対の梁材の上に載せる形態で設置される。近年、建設機械は、高いスペックが要求されるだけでなく、美しい見栄えを有することが要求されている。そうした点で、カウンタウエイトのエンジンルーム等に対する位置ずれや傾きは見栄えを悪くしていまい、市場での競争力を低下させてしまう。そのため、カウンタウエイトの位置ずれや傾きをなくすための工夫を行う種々の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1で提案されている技術は、本体フレームを構成している梁材にカウンタウエイトをボルト締めして本体フレーム上に載せる構成に関する技術である。具体的に、この構成では、本体フレームから後方に延びる梁材にボルトを通すための貫通穴を形成すると共に、ボルトがねじ込まれるボルト穴をカウンタウエイトの下面であって、梁材の貫通穴に対応する位置に形成している。ボルトは、梁材の下側から貫通孔に通され、カウンタウエイトのボルト穴にねじ込まれることにより、カウンタウエイトを梁材に固定している。この構成では、カウンタウエイトと、本体フレーム及びカバーとの間にできる隙間を調整する手段がさらに設けられている。隙間を調整する手段は、カウンタウエイトを梁材に固定するためのボルトの隣に、ボルトを梁材にねじ込むと共にボルトの先端をカウンタウエイトの下面突き当て、梁材からボルトが突出する長さを調節している。隙間を調整する手段は、梁材からボルトが突出する長さを調節することにより、本体フレームに対するカウンタウエイトの傾きを調整している。また、この構成では、カウンタウエイトと梁材との間に形成される隙間にシムを挟み込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−75372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1で提案されている構成は、カウンタウエイトの本体フレーム及びカバーに対する傾きを調整することはできる。しかし、この構成は、カウンタウエイトの本体フレーム及びカバーに対する傾きを調整しているだけなので、カウンタウエイトとエンジンルームとの間に形成される隙間を正確に調整することまではできない。そのため、建設機械の外観を美しくするという市場の要求に応えることが困難である。また、ボルトを梁材からねじ込んでボルトの先端をカウンタウエイトの下面に突き当てるという構成なので、傾きを調整する作業が重労働である。また、ボルトが緩んだ場合、カウンタウエイトの傾きが変化してしまう。特許文献1で提案されている構成には、こうしたいくつかの問題点がある。
【0006】
本出願人は、カウンタウエイトと本体フレーム及びカバーとの間に形成される両方の隙間を調整することができる構成を従来から採用している。その構成は、例えば、図5に示すように、本体部2を構成する本体フレーム30の左右両側に位置するサイドフレーム41の後部にカウンタウエイト10を固定要素50で締め付けるものである。サイドフレーム41の後部には、上方に向かって延びるブラケット43が設けられており、カウンタウエイト10は、このブラケット43に固定要素50で締め付けられる。具体的に、本体部2の前後方向に貫通する複数の穴44,45がブラケット43の上部に縦に並んで形成されている。一方、カウンタウエイト10には、ブラケット43の穴44,45に対応する位置にボルト穴11a,11bが形成されている。カウンタウエイト10は、本体フレーム30から後方に延びる梁材(図示せず。)の上に載せられた後に、ブラケット43に固定要素50が通され、カウンタウエイト10のボルト穴11a,11bに固定要素50がねじ込まれる。その際、各固定要素50の位置では、ブラケット43とカウンタウエイト10との間にシム200が個別に挟み込まれる。なお、ブラケット43と固定要素50の頭部との間には、固定要素50が緩むことを防止するワッシャー51が設けられる。
【0007】
シム200には切り欠き201が形成されている。切り欠き201には、その内部に固定要素50が挿入される。組み立ての過程で、シム200は切り欠き201に固定要素50を挿入させることにより固定要素50に引っかけられている。こうしたシム200は、ブラケット43とカウンタウエイト10とにより挟み込まれることにより、本体フレーム30及びカバー(図示せず。)とカウンタウエイト10の間の隙間、及び本体フレーム30及びカバーに対するカウンタウエイト10の傾きを調整する。すなわち、この構成では、ブラケット43の穴44,45及びカウンタウエイト10のボルト穴11a,11bが縦に並んで複数設けられているので、ブラケット43とカウンタウエイト10との間にシム200を挟み込むことで、本体フレーム30及びカバーとカウンタウエイト10の間の隙間、及び本体フレーム30及びカバーに対するカウンタウエイト10の傾きの両方を調整することができる。
【0008】
ところが、カウンタウエイト10を本体部2に組み付けるときに、各固定要素50の位置でシム200を挟み込む作業は手間がかかる。具体的に、図5に示すように、カウンタウエイト10を取り付ける工程で、シム200を固定要素50の位置に配置して挟み込むときに、シム200が固定要素50の周りを回転してしまい、シム200が落下してしまう。そのため、接着剤等を利用して、シム200をブラケット43の座面又はカウンタウエイト10の座面に接着して落下することを防止していた。その結果、シム200を取り付けるための工程に時間と手間が費やされていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の固定要素でカウンタウエイトを本体部に固定する際に簡単にセットすることができ、且つ一度セットした後に落下することを抑制できる位置調整シムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る位置調整シムは、建設機械の本体部に前記建設機械のバランスを保つためのカウンタウエイトを複数の固定要素を用いて取り付ける際に、前記カウンタウエイトの前記本体部に対する位置と傾きとを調整するための位置調整シムであって、前記固定要素が用いられる位置に対応する数のシム本体と、前記シム本体同士を連結する連結体とを有し、前記シム本体には、前記固定要素を挿入させて当該位置調整シムを前記固定要素に引っかけるための切り欠きがそれぞれ形成され、各シム本体に形成された前記切り欠きの入り口から中心側に向かう該切り欠きの延びる方向が相互に一致している、ことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、位置調整シムが、上記のようにシム本体と連結体とで構成されているので、複数のシムを固定要素が用いられる位置に同時に取り付けることができる。その際、シム本体には、ボルト等の固定要素を挿入させて位置調整シムを固定要素に引っかけるための切り欠きがそれぞれ形成されているので、位置調整シムを固定要素に引っかけておくことにより、シム本体を各固定要素の位置に取り付けることができる。また、複数の固定要素に引っかけることにより位置調整シムが固定要素の周りを回転して落下してしまうことを防止することができる。また、各シム本体に形成された切り欠きの入り口から中心側に向かう該切り欠きの延びる方向が相互に一致しているので、複数のシム本体を固定要素の位置に配置するときに、複数のシムを同じ方向から固定要素に近づけて引っかけることができ、容易に位置調整シムを取り付けることができる。
【0012】
本発明に係る位置調整シムにおいて、前記切り欠きは、当該シム本体の周辺の一部から斜めに延びて形成されている。
【0013】
この発明によれば、切り欠きがシム本体の周辺の一部から斜めに延びて形成されているので、位置調整シムを固定要素の位置に取り付けるときに、固定要素が用いられる位置に対し位置調整シムを斜め上方から固定要素に向け移動させて取り付けることができる。そのため、カウンタウエイトが固定要素で取り付けられるブラケット及びカウンタウエイトの側方からシムを取り付けることができ、位置調整シムの取り付け作業を容易に行うことができる。
【0014】
本発明に係る位置調整シムにおいて、隣り合う前記シム本体は、その一方の前記シム本体の前記切り欠きの入り口の奥側と、他方の前記シム本体の中心を挟んで前記切り欠きの入り口とは反対側の周辺の一部とが前記連結体で連結されている。
【0015】
この発明によれば、隣り合うシム本体は、その一方のシム本体の切り欠きの入り口の奥側と、他方のシム本体の中心を挟んで切り欠きの入り口とは反対側の周辺の一部とが連結体で連結されているので、連結体により邪魔されることなく切り欠きの内側に固定要素を挿入させて位置調整シムを固定要素に引っかけることができる。
【0016】
本発明に係る位置調整シムにおいて、手で持つための把持部が当該位置調整シムの縁部から外側に向けて突出している。
【0017】
この発明によれば、手で持つための把持部が当該位置調整シムの縁部から外側に向けて突出しているので、把持部を手で掴んで位置調整シムを固定要素が用いられる位置に移動させて引っかけることができる。そのため、容易に位置調整シムを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の固定要素でカウンタウエイトを本体部に固定する際に、位置調整シムを簡単にセットすることができ、且つ一度位置調整シムを固定要素の位置にセットしたら外れることを効果的に抑制してカウンタウエイトの本体部に対する位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る整備用窓口開閉機構が適用された建設機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
図2】本発明に係る位置調整シムの平面図である。
図3】本体フレームの左右に設けられたサイドフレームのブラケットとカウンタウエイトでシムを挟み込む形態を説明するための説明図である。
図4】位置調整シムを取り付ける過程を説明するための説明図である。
図5】従来用いられていたシムをサイドフレームのブラケットとカウンタウエイトで挟み込む形態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態及び図面に記載した形態と同じ技術的思想の発明を含むものであり、本発明の技術的範囲は実施形態の記載や図面の記載のみに限定されるものでない。なお、本発明が適用される建設機械は特に限定されないが、以下では、油圧ショベル1を例に挙げて説明する。
【0021】
[油圧ショベルの概要]
油圧ショベル1は、図1に示すように、本体部2と本体部2から外側に向けて延びる作業ユニット15により構成されている。本体部2は、その下部をなし、本体部2を走行される走行体3と、走行体3に対して水平に旋回可能な旋回体7とで構成されている。走行体3には、走行フレーム4とクローラ5と駆動力をクローラ5に伝えるモータ6とが主に設けられている。旋回体7には、オペレータが着座して油圧ショベル1を操作するためのオペレータキャビン8と、エンジンや油圧機器等を内部に設けているエンジンルーム9と、後部にて機械のバランスをとるためのカウンタウエイト10とが設けられている。一方、作業ユニット15は、旋回体7から前方に延びるブーム16と、ブーム16の先端に支持されたアーム17と、アーム17の先端に支持されたバケット18とにより構成されている。
【0022】
[本発明の基本構成]
本発明に係る位置調整シム20は、油圧ショベル1等の建設機械の本体部2に、油圧ショベル1のバランスを保つためのカウンタウエイト10を複数の固定要素50を用いて取り付ける際に、カウンタウエイト10の本体部2に対する位置と傾きとを調整するためのものである。位置調整シム20は、固定要素50が用いられる位置に対応する数のシム本体21a,21bと、シム本体21a,21b同士を連結する連結体27と、を有している。シム本体21a,21bには、固定要素50を挿入させて位置調整シム20を固定要素50に引っかけるための切り欠き22がそれぞれ形成されている。各シム本体21a,21bに形成された切り欠き22の入り口23から中心Cに向かう切り欠き22の延びる方向は、相互に一致している。
【0023】
本発明によれば、複数の固定要素50でカウンタウエイト10を本体部2に固定する際に、位置調整シム20を簡単にセットすることができ、且つ一度位置調整シム20を固定要素50の位置にセットしたら脱落することを効果的に抑制してカウンタウエイト10の本体部2に対する位置を調整することができるという特有の効果を奏する。以下、位置調整シム20の具体的な構成、取り付けの形態及び作用について説明する。説明するに当たり、本発明に係る位置調整シム20が備えるシム本体21a,21bは、固定要素50の数に対応して設けられるが、以下では、固定要素50の数が2つである場合を例にして説明する。
【0024】
[位置調整シム]
図2は、位置調整シム20の一実施形態を示している。この位置調整シム20は、2つのシム本体21a,21b、2つのシム本体21a,21b同士を連結している連結体27及び作業者等が手で掴む把持部28を有している。2つのシム本体21a,21bは、所定の間隔を空けて配置されている。2つのシム本体21a,21bの間隔は、サイドフレーム40,41のブラケット42,43に形成された2ヶ所の穴44,45の間隔、及びカウンタウエイト10に形成された2ヶ所のボルト穴11a,11bの間隔に対応している。各シム本体21a,21bの外形は特に限定されないが、図2に示した例のシム本体21a,21bは、その外形が略四角形をなしている。ただし、シム本体21a,21bの外形は、例えば円形とすることもできる。シム本体21a,21bには、周辺の一部から中心Cに向かって延びる切り欠き22がそれぞれ形成されている。切り欠き22は、周辺の一部からシム本体21a,21bの中心Cに向かって形成されている導入部24aと、シム本体21a,21bの中心Cに形成されている先端部24bとで構成されている。導入部24aの両側部は、相互に平行をなし直線状に延びている。先端部24bは半円状に形成されている。これらの導入部24aと先端部24bとは一体に形成されている。導入部24aは、その内側でボルト等の固定要素50をシム本体21a,21bの周辺から中心Cに挿入させる部位である。挿入された固定要素50は、先端部24bの内側でシム本体21a,21bの中心Cに位置される。
【0025】
この切り欠き22が延びる方向は各シム本体21a,21bの中心C同士を結んだ線Lに対して一定の傾き角θをなして傾いている。2つのシム本体21a,21bに形成されている切り欠き22が延びる方向とシム本体21a,21bとを結んだ線とがなす傾き角θは同じである。
【0026】
連結体27は、複数のシム本体21a,21bをつないでいる構成要素である。図2に示した例の位置調整シム20の連結体27は、2つのシム本体21a,21bを連結している。連結体27は、隣り合うシム本体21a,21bについて、その一方のシム本体21aの切り欠き22の入り口23の奥側25と、他方のシム本体21bの中心Cを挟んで切り欠き22の入り口23とは反対側の周辺の一部26とを連結している。この連結体27は、帯状をなしている。この連結体27の長手方向の一端は、図2の上側に位置するシム本体21aの切り欠き22の入り口23の奥側25につながれている。これに対し、連結体27の長手方向の他端は、図2の下側に位置するシム本体21bの切り欠き22の入り口23が設けられた周辺とは中心Cを挟んだ反対側に位置する対辺をなす周辺の一部26につながれている。連結体27は、その長手方向における一方のシム本体21a,21b側の所定領域27aは斜めに延び、所定領域27aと他方のシム本体21a,21bとの間の領域27bは、直線状に延びている。斜めに延びる所定領域27aは、切り欠き22の側縁の一方を構成している。
【0027】
図2に示した位置調整シム20を構成している連結体27の形状は、1つの例を示すものであり、連結体27の形状は、固定要素50を切り欠き22の内側に挿入させることを阻害しない形状であれば、限定はない。例えば、連結体27を直線状に形成したり、図2の右側に凸状に湾曲した形状に形成したり、図2の右側に凸状に屈曲させて矩形状に形成したりするなど、種々の形状にすることができる。
【0028】
把持部28は、手で位置調整シム20を掴むための構成要素であり、位置調整シム20の縁部から外側に向けて突出している。図2に示した例の位置調整シム20では、把持部28は、図2の上側に位置するシム本体21aの右側の縁部から外側に突出して構成されている。把持部28を設ける位置は、特に限定されないが、位置調整シム20をサイドフレーム40,41のブラケット42,43とカウンタウエイト10とを連結するための2本の固定要素50に引っかける作業を行い易くするために、図2の上側に位置するシム本体21aに設けることが望ましい。
【0029】
こうした位置調整シム20の厚さは、1mm以上、4mm以下に形成することが好ましい。ただし、位置調整シム20は、厚さが1種類だけのものを形成することには限定されず、厚さが異なる複数の種類のものを設けるとよい。例えば、1.2mm、1.6mm、2.3mm及び3.2mmの位置調整シム20を設けるとよい。ただし、この4種類の位置調整シム20の他にも必要に応じ異なる種類の厚さに形成されたものを設けることができる。こうした位置調整シム20は、必要に応じて、1枚だけで用いる形態、複数枚重ねて用いる形態のいずれかの形態で用いられる。複数枚重ね合わせて用いる場合、位置調整シム20は、同じ厚さの物を重ねて用いる形態、異なる厚さのものを重ねて用いる形態のどちらの形態でも必要に応じて用いられる。
【0030】
以上に説明した構成の位置調整シム20は、サイドフレーム40,41のブラケット42,43に形成された2ヶ所の穴44,45及びカウンタウエイト10に形成された2ヶ所のボルト穴11a,11bを固定要素50でつなぐ際に、位置調整シム20の2つのシム本体21a,21bを同時に固定要素50の外周側から引っかけることができる。そのため、位置調整シム20が固定要素50を中心にして回ってしまうことがなく、位置調整シム20が落下することがない。
【0031】
以上、2つのシム本体21a,21bを備えた位置調整シム20を例に本発明の位置調整シム20について説明した。ただし、シム本体は、用いられる固定要素50の数に応じて、3つ以上位置調整シム20に備えることもできる。
【0032】
[位置調整シムが挟み込まれる形態]
図3は、図2を参照して説明した位置調整シム20がサイドフレーム40,41に設けられたブラケット42,43とカウンタウエイト10とにより挟み込まれる形態を示している。この位置調整シム20が用いられる油圧ショベル1は、図3に示すように、本体部2における左右方向の中央に設けられた本体フレーム30と、本体フレーム30の左右両側に設けられたサイドフレーム40,41とを有している。図3において、図の左側が油圧ショベル1の前部であり、図の右側が油圧ショベル1の後部である。また、油圧ショベル1の後部にはカウンタウエイト10が取り付けられる。
【0033】
左右両側のサイドフレーム40,41の後部には、上方に延びるブラケット42,43がそれぞれ設けられている。これらのブラケット42,43は、カウンタウエイト10がボルト等の固定要素50によって固定される部位である。各ブラケット42,43には、油圧ショベル1の前後方向に貫通している穴44,45が上下方向の2ヶ所に形成されている。これらの穴44,45は、カウンタウエイト10をブラケット42,43に固定するときに、固定要素50が通される部位である。
【0034】
一方、カウンタウエイト10の前面には、両サイドにボルト穴11a,11bが上下の2ヶ所に形成されている。これらのボルト穴11a,11bは、カウンタウエイト10をブラケット42,43に固定するときに、固定要素50がねじ込まれる部位である。各ボルト穴11a,11bは、ブラケット42,43に形成されている穴44,45の位置に対応する部分にそれぞれ形成されている。
【0035】
位置調整シム20は、ブラケット42,43とカウンタウエイト10とを固定要素50で固定するときに、ブラケット42,43の後面とカウンタウエイト10の前面の間に配置され、ブラケット42,43とカウンタウエイト10とで挟み込まれる。その際、上側に位置するシム本体21aは、ブラケット42,43の上側の穴44に通され、且つカウンタウエイト10の上側のボルト穴11aにねじ込まれる固定要素50に引っかけられる。一方、下側に位置するシム本体21bは、ブラケット42,43の下側の穴45に通され、且つカウンタウエイト10の下側のボルト穴11bにねじ込まれる固定要素50に引っかけられる。
【0036】
固定要素50としては、例えばボルトが用いられる。固定要素50としてのボルトは、ブラケット42,43の前面側から穴44,45に通される。その際、ボルトの頭部とブラケット42,43との間にはワッシャー51が配置される。このワッシャー51は、ボルトの緩み止めとして機能する
【0037】
[位置調整シムを取り付ける過程の詳細]
図4を参照して位置調整シム20を取り付ける過程の詳細を説明する。まず、図4(A)に示すように、位置調整シム20をブラケット42,43とカウンタウエイト10とをつなぐための2本の固定要素50の上側から固定要素50に向けて移動させる。移動は、把持部28を手で持って行う。その際、上側に位置するシム本体21aの切り欠き22を上側に位置する固定要素50に向けると共に、下側に位置するシム本体21bの切り欠き22を下側に位置する固定要素50に向ける。次に、図4(B)に示すように、上側に位置するシム本体21aの切り欠き22の位置を上側に位置する固定要素50の位置に一致させる。同様に、下側に位置するシム本体21bの切り欠き22の位置を下側に位置する固定要素50の位置に一致させる。
【0038】
その後、図4(C)に示すように、各シム本体21a,21bの切り欠き22の内側に固定要素50をそれぞれ挿入させ、上側に位置するシム本体21aを上側の固定要素50に引っかけると共に、下側のシム本体21bを下側の固定要素50に引っかける。各シム本体21a,21bの切り欠き22は傾きの角度が同じであるため、上側に位置するシム本体21aの切り欠き22の入り口23を上側の固定要素50の位置に一致させると共に、下側に位置するシム本体21bの切り欠き22の入り口23を下側の固定要素50の位置に一致させた後、位置調整シム20全体を下方に移動させるだけで、各切り欠き22の最も奥である先端部24bに固定要素50を位置させることができる。この位置調整シム20は、各シム本体21a,21bが固定要素50にそれぞれ引っかけられる構成をなしているので、各シム本体21a,21bが各固定要素50に引っかけられた形態では、位置調整シム20が固定要素50を中心として回転することがない。
【0039】
位置調整シム20の各シム本体21a,21bが、各固定要素50に引っかけられた後、固定要素50が固定される。具体的に、固定要素50としてボルトを用いた場合、ボルトが締め付けられる。固定要素50が固定されることにより、位置調整シム20は、ブラケット42,43の後面とカウンタウエイト10の前面とで挟み込まれる。位置調整シム20は、ブラケット42,43の後面とカウンタウエイト10の前面との間に隙間を形成させる。ここで設定される隙間が、本体フレーム30及びカバー(図示せず。)とカウンタウエイト10との間に形成される隙間の大きさと、本体フレーム30及びカバーに対するカウンタウエイト10の傾きとを設定している。
【0040】
固定要素50を固定するときに、本体フレーム30及びカバーとカウンタウエイト10との間に形成される隙間の大きさ、及び本体フレーム30及びカバーに対するカウンタウエイト10の傾きがあらかじめ設定した値からずれているときは、厚さが異なる位置調整シム20を挟み込んだり、複数の位置調整シム20を重ねて挟み込んだりして、調整を行う。例えば、本体フレーム30及びカバーとカウンタウエイト10との間に形成される隙間が基準よりも大きい場合、薄い位置調整シム20に変更して調整を行う。これに対し、隙間が基準値よりも小さい場合、厚い位置調整シム20に変更したり、位置調整シム20を重ねて使用したりして調整する。
【0041】
以上、本実施形態の位置調整シム20を用いた場合、左右のサイドフレーム40,41にそれぞれ設けられたブラケット42,43にカウンタウエイト10を固定要素50で取り付ける際に、左右に2本ずつ用いられる固定要素50に対し、1つの位置調整用シムを用いるだけで位置調整を行うことができるので、従来に比べて組み立ての工程を削減することができる。また、上下に位置するシム本体21a,21bを上下の2ヶ所で用いられる固定要素50にそれぞれ引っかけて用いるので、位置調整シム20が固定要素50の周りで回転して落下してしまうことがない。そのため、位置調整シム20を接着剤等でブラケット42,43又はカウンタウエイト10に接着したり、はがしたりする必要が無い。その結果、位置調整を短時間で且つ容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル
2 機械本体部
3 走行体
4 走行フレーム
5 クローラ
6 モータ
7 旋回体
8 オペレータキャビン
9 エンジンルーム
10 カウンタウエイト
11a,11b ボルト穴
15 作業ユニット
16 ブーム
17 アーム
18 バケット
20 位置調整シム
21a,21b シム本体
22 切り欠き
23 入り口
24a 導入部
24b 先端部
25 奥側
26 周辺の一部
27 連結体
28 把持部
30 本体フレーム
40,41 サイドフレーム
42,43 ブラケット
44,45 穴
50 固定要素
51 ワッシャー
図1
図2
図3
図4
図5