(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基板保持部は、前記処理液供給部から前記処理液が供給された前記基板を回転させて前記液膜を形成させ、前記液膜が形成されてから前記液膜の全体が凝固するまでの間、前記基板の回転速度を前記液膜の形成時の回転速度以下とする請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用可能な基板処理装置の概要について説明する。以下において、基板とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板をいう。以下では主として半導体基板の処理に用いられる基板処理システムを例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも本発明を適用可能である。
【0014】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態である基板処理装置の概略構成を示す図である。基板処理装置1は、半導体ウエハ等の円盤状の基板Wに対して処理液による洗浄やエッチング処理などの湿式処理を施す湿式処理装置である。湿式処理としては各種の公知技術を適用することができるが、特に基板上面に形成した液膜を凝固させるプロセスを含む処理に好適なものである。基板処理装置1は、チャンバ70内に設けられた基板保持部10、スプラッシュガード20および処理液吐出部30,40と、これらの各部を制御する制御ユニット80とを備えている。
【0015】
基板保持部10は、基板表面を上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるものである。この基板保持部10は、スピンベース111と回転支軸112とが一体的に結合されたスピンチャック11を有している。スピンベース111は平面視において略円形形状を有しており、その中心部に、略鉛直方向に延びる中空状の回転支軸112が固定されている。回転支軸112はモータを含むチャック回転機構103の回転軸に連結されている。チャック回転機構103は円筒状のケーシング101内に収容され、回転支軸112はケーシング101により、鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持されている。
【0016】
チャック回転機構103は、制御ユニット80のチャック駆動部87からの駆動により回転支軸112を回転軸周りに回転させる。これにより、回転支軸112の上端部に取り付けられたスピンベース111が鉛直軸周りに回転する。制御ユニット80は、チャック駆動部87を介してチャック回転機構103を制御して、スピンベース111の回転速度を調整することが可能である。
【0017】
スピンベース111の周縁部付近には、基板Wの周端部を把持するための複数個のチャックピン114が立設されている。チャックピン114は、円形の基板Wを確実に保持するために3つ以上設けてあればよく(この例では6つ)、スピンベース111の周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。チャックピン114のそれぞれは、基板Wの外周端面を押圧する押圧状態と、基板Wの外周端面から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0018】
スピンベース111に対して基板Wが受け渡しされる際には、複数のチャックピン114のそれぞれを解放状態とする一方、基板Wを回転させて所定の処理を行う際には、複数のチャックピン114のそれぞれを押圧状態とする。このように押圧状態とすることによって、チャックピン114は基板Wの周端部を把持してその基板Wをスピンベース111から所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板Wはその表面を上方に向け、裏面を下方に向けた状態で支持される。なお、チャックピン114としては、上記に限定されず種々の公知の構成を用いることができる。
【0019】
スピンチャック11に基板Wが保持された状態、より具体的にはスピンベース111に設けられたチャックピン114によって基板Wがその周縁部を保持された状態でチャック回転機構103が作動することで、基板Wは鉛直方向の回転軸AX周りに回転する。以下では、このようにして回転する基板Wの上面および下面にそれぞれ符号Wa、Wbを付す。また、上面側の回転中心を符号Caにより、下面側の回転中心を符号Cbによりそれぞれ表す。
【0020】
スピンチャック11により水平姿勢に支持される基板Wの下方に、冷媒吐出部12が設けられている。後述するように、冷媒吐出部12は、基板Wの上面Waに液膜が形成された基板Wの下面Wbに向けて液膜を構成する液体の凝固点よりも低温の冷媒を吐出し、液膜を凝固させる機能を有する。冷媒吐出部12は、基板Wより少し小さい円盤状の外形を有し、水平な上面を基板下面Wbと対向させて配置された対向部材121と、対向部材121の中心部に取り付けられて鉛直方向下向きに延びる供給管122とを備えている。供給管122は回転支軸112の中空部に挿通されているが、回転支軸112とは接続されていない。したがって、スピンチャック11が回転する際にも、冷媒吐出部12は回転しない。
【0021】
供給管122は中空の管であり、その上端部が対向部材121の中心部で上向きに開口している。供給管122は制御ユニット80の冷媒供給部86に接続されており、冷媒供給部86から供給される冷媒を基板下面Wbに向けて吐出する。これにより基板下面Wbと対向部材121の上面との間のギャップ空間に冷媒が供給される。すなわち、供給管122の上端は、基板Wの下面側回転中心Cbに向けて開口する吐出口を有するノズルとして機能する。そこで、以下において必要な場合には、この部分を「下面ノズル123」と称する。このように、冷媒吐出部12は吐出した冷媒を基板下面Wbに触れさせることで基板Wを冷却し、基板上面Waに担持される液膜を凝固させる。冷媒としては液体、気体のいずれも使用可能である。
【0022】
またケーシング101の周囲には、スピンチャック11に水平姿勢で保持されている基板Wの周囲を包囲するようにスプラッシュガード20がスピンチャック11の回転軸に沿って昇降自在に設けられている。このスプラッシュガード20は回転軸に対して略回転対称な形状を有しており、それぞれスピンチャック11と同心円状に配置されて基板Wから飛散する処理液を受け止める複数段の(この例では2段の)ガード21と、ガード21から流下する処理液を受け止める液受け部22とを備えている。そして、制御部80に設けられたガード昇降部85がガード21を段階的に昇降させることで、回転する基板Wから飛散する薬液やリンス液などの処理液を分別して回収することが可能となっている。
【0023】
スプラッシュガード20の周囲には、エッチング液等の薬液、リンス液、溶剤、純水、DIW(脱イオン水)など各種の処理液を基板Wに供給するための液供給部が少なくとも1つ設けられる。この例では、
図1に示すように、2組の処理液吐出部30,40が設けられている。処理液吐出部30は、制御部80のアーム駆動部83により駆動されて鉛直軸回りに回動可能に構成された回動軸31と、該回動軸31から水平方向に延設されたアーム32と、アーム32の先端に下向きに取り付けられたノズル33とを備えている。アーム駆動部83により回動軸31が回動駆動されることで、アーム32が鉛直軸回りに揺動し、これによりノズル33は、スプラッシュガード20よりも外側の退避位置(
図1に実線で示す位置)と基板Wの回転中心の上方位置(
図1に点線で示す位置)との間を移動する。ノズル33は、基板Wの上方に位置決めされた状態で、制御部80の処理液供給部84から供給される所定の処理液を吐出し、基板Wの表面に処理液を供給する。
【0024】
同様に、処理液吐出部40は、アーム駆動部83により回動駆動される回動軸41と、これに連結されたアーム42と、アーム42の先端に設けられて処理液供給部84から供給される処理液を吐出するノズル43とを備えている。なお、処理液吐出部の数はこれに限定されず、必要に応じて増減されてもよい。
【0025】
スピンチャック11の回転により基板Wが所定の回転速度で回転した状態で、これらの処理液吐出部30,40がノズル33,43を順次基板Wの上方に位置させて処理液を基板Wに供給することにより、基板Wに対する湿式処理が実行される。処理の目的に応じて、各ノズル33,43からは互いに異なる処理液が吐出されてもよく、同じ処理液が吐出されてもよい。また、1つのノズルから2種類以上の処理液が吐出されてもよい。基板Wの回転中心付近に供給された処理液は、基板Wの回転に伴う遠心力により外側へ広がり、最終的には基板Wの周縁部から側方へ振り切られる。基板Wから飛散した処理液はスプラッシュガード20のガード21によって受け止められて液受け部22により回収される。
【0026】
上記の他、この基板処理システム1の制御ユニット80には、予め定められた処理プログラムを実行して各部の動作を制御するCPU81と、CPU81により実行される処理プログラムや処理中に生成されるデータ等を記憶保存するためのメモリ82と、処理の進行状況や異常の発生などを必要に応じてユーザーに報知するための表示部88とが設けられている。
【0027】
次に、以上のように構成された基板処理装置1の動作について説明する。上記の基板処理装置1は各種の処理に適用可能であるが、ここでは基板Wに対し適宜の湿式処理を実行した後、基板Wの上面Waに処理液による液膜を形成しこれを凝固させるための処理について説明する。このような処理は、例えば、処理液が凝固する時の体積変化を利用して基板Wから付着物を遊離させる洗浄処理(凍結洗浄処理)や、液膜を凝固させた凝固膜を昇華させることで基板Wを乾燥させる乾燥処理(昇華乾燥処理)などに適用される。これらの処理の原理は公知であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
図2は第1実施形態の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。また、
図3はこの動作における各部の状態を模式的に示す図である。以下に説明する基板処理装置1の動作は、CPU81がメモリ82に予め記憶された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を実行させることにより実現される。最初に、装置に搬入された基板Wをワークとして適宜の湿式処理が行われる(ステップS101)。湿式処理としては多くの公知技術が知られており、本実施形態においてもそれらの処理を適用することができる。そこで、ここでは詳しい説明を省略する。
【0029】
湿式処理の終了後、チャック駆動部87からの駆動によってチャック回転機構103が作動することで、スピンチャック11が所定の液膜形成用速度で回転される。これにより湿式処理後の基板Wが液膜形成用速度で回転する(ステップS102)。そして、ノズル33が基板Wの回転中心Caの上方に位置決めされ(ステップS103)、ノズル33から液膜形成用の処理液が吐出される(ステップS104)。
図3(a)に示すように、ノズル33から吐出される処理液Lが回転する基板Wの回転中心Caに供給されると、遠心力の作用により処理液Lは基板Wの外周部に向けて広がる。処理液Lの供給量および基板Wの回転速度が適宜に設定されることにより、基板Wの上面Waの全体を覆う液膜LFが形成される。
【0030】
液膜LFを形成させるための処理液としては、例えば炭酸エチレン、スルフォラン、ターシャリーブチルアルコール、ジメチルスルホキシド、酢酸などが用いられる。また、基板Wの回転速度は、供給された処理液が振り切られないように比較的低く、例えば300rpm以下に設定される。なお基板Wの回転速度により液膜LFの厚さを制御することが可能である。
【0031】
処理液Lが基板Wに所定時間供給され液膜LFが形成されると(ステップS105においてYES)、ノズル33は処理液の吐出を停止し、基板W側方の退避位置に移動する(ステップS106)。基板Wが液膜形成用速度またはそれ以下の回転速度である凝固用回転速度で回転を継続することにより(ステップS107)、基板Wの上面Waが所定厚さの液膜LFで覆われた状態が維持される。
【0032】
続いて、制御ユニット80の冷媒供給部86が冷媒吐出部12に向けて冷媒を送出し、これにより冷媒吐出部12の下面ノズル123から所定流量の冷媒が吐出され基板下面Wbの回転中心Cbに供給される(ステップS108)。冷媒は処理液Lの凝固点よりも低温の液体または気体である。
図3(b)に示すように、基板下面Wbの中心部が冷媒Fに触れて基板Wが冷却されることで、基板上面Waに形成されている液膜LFのうち中央部が凝固して凝固膜FFに転換する。
【0033】
上記した処理液Lの凝固点は室温付近である。このため、冷媒Fとしては例えば冷水を用いることができる。冷水の温度としては0℃ないし10℃程度とすることができる。冷媒として比熱の比較的大きな液体を使用することで、液膜LFを効率よく冷却することができる。また冷媒供給部86としては水を摂氏数度程度まで冷却し送出する機能があればよいので、比較的簡単な設備で冷媒を供給することが可能となる。したがって装置コストおよび処理コストを抑えることが可能である。冷媒としては上記の他、水にエチレングリコールを添加した混合溶液、ハイドロフルオロエーテル(HFE)やフロリナートなどのパーフルオロカーボンなどを使用可能である。
【0034】
当初の流量での冷媒の供給が所定時間継続された後(ステップS109においてYES)、冷媒Fの供給量および基板Wの回転速度の少なくとも一方が増加される(ステップS110)。
図3(c)に示すように、基板下面Wbの周縁部Wpまでより多くの冷媒が供給されることで、基板上面Wa側の凝固膜FFが中央部から周縁部に広がり、最終的に基板上面Waの全体が凝固膜FFにより覆われることになる。
【0035】
図3(d)は処理中の基板Wの温度分布を示している。冷媒供給の初期段階では、
図3(d)に実線で示すように、回転中心Ca近傍の基板中央部が処理液Lの凝固点Tfよりも低温になっていたとしても、冷媒が周縁部に広がるのに伴う温度上昇により、基板Wの周縁部は十分に冷却されない。つまり、基板周縁部に近くなるほど、冷媒が有する冷却能力は低下する。このため、基板Wの周縁部では液膜が凝固しなかったり、凝固するのに時間がかかったりするという問題が生じ得る。
【0036】
この実施形態では、基板Wへの一定量の冷媒Fの供給が所定時間行われた後、冷媒Fの供給量および基板Wの回転速度の一方または両方が経時的に増加される。基板下面Wbの周縁部Wpにおける供給量が増加することで単位時間あたりに基板下面Wbを通過する冷媒Fの量が増加し、これにより冷媒Fによる基板Wの冷却能力が向上する。また、基板下面Wbに沿って流れる冷媒Fの流速が高くなることで、冷媒Fが低温状態を維持したまま基板周縁部Wpに到達する。このため、
図3(d)に破線で示すように基板周縁部と中央部との間の温度差を短時間で減少させることが可能になる。その結果、基板Wの全体を短時間で液膜Lの凝固点Tfよりも低温まで低下させることが可能となり、液膜全体を凝固させるために必要な時間を短縮することができる。
【0037】
凝固膜FFの均質性を良好なものとするためには、最初に液膜LFの中央部を凝固膜FFに転換させ、凝固した領域を周縁部に向けて順次拡大させてゆくことが好ましい。本実施形態では、基板下面Wbの回転中心Cbに向けて冷媒Fを供給し、しかもその後で冷媒Fの供給量および基板Wの回転速度の少なくとも一方を増加させることで、このような要求に対応する液膜の凝固を実現することができる。
【0038】
図4は冷媒供給量および基板回転速度の変化態様を例示する図である。
図4(a)および
図4(b)において、時刻T1はステップS108の開始時点、時刻T2はステップS110の開始時点にそれぞれ対応している。冷媒Fの供給量および基板Wの回転速度については、
図4(a)に示すように時刻T2から連続的に増加する態様であってもよく、また
図4(b)に示すように時刻T2から段階的に増加する態様であってもよい。
【0039】
図2に戻って動作説明を続ける。冷媒供給量および基板回転速度の少なくとも一方が増加された時刻T3から所定時間が経過すると(ステップS111においてYES)、下面ノズル123からの冷媒Fの吐出および基板Wの回転が停止される(ステップS112、時刻T4)。基板上面Wa全体が凝固膜FFで覆われたワークがチャンバ90から搬出されて(ステップS113)、外部装置での後処理工程に供される。
【0040】
なお、ステップS110において基板Wの回転速度が増加される態様においては、基板Wの回転速度は最大でも液膜形成用速度以下とされる。こうすることで、まだ凝固していない液膜LFが基板Wの高速回転により振り切られることが確実に防止される。
【0041】
以上のように、この発明に係る基板処理装置の第1実施形態においては、基板下面Wbの回転中心Cb付近に冷媒Fが供給されることによって液膜LFの中心部が凝固し始める。そして、冷媒Fの供給量および基板Wの回転速度の少なくとも一方が増加されることにより、基板Wの周縁部に供給される冷媒Fの単位時間当たりの量が多くなる。これにより冷媒Fによる冷却能力が向上し、液膜全体を凝固させるために要する時間を短くすることができる。
【0042】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る基板処理装置の第2実施形態について説明する。この実施形態の基板処理装置の構成の多くは第1実施形態のものと共通であり、また装置によってなされる処理の目的や内容も第1実施形態と概ね共通である。そこで、以下の説明では、第1実施形態の構成と同一または対応する構成には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。また、
図5においては、図を見やすくするために、
図1の構成と同一の構成に付すべき一部の符号を省略している。
【0043】
図5は本発明の第2実施形態である基板処理装置の概略構成を示す図である。この基板処理装置1aにおいて、第1実施形態の基板処理装置1と最も大きく異なるのは基板保持部の構成である。すなわち、第2実施形態の基板処理装置1aは、第1実施形態の基板保持部10に代えて基板保持部10aを備えている。基板保持部10aでは、第1実施形態の冷媒吐出部12に代えて冷媒吐出部13が設けられる。また、この差異に起因して制御ユニット80aの構成が一部異なっている。すなわち、第2実施形態の基板処理装置1aの制御ユニット80aでは、第1実施形態の冷媒供給部86に代えて冷媒供給部89を備えている。
【0044】
図6は第2実施形態の基板処理装置の主要部を示す図である。
図5および
図6(a)に示すように、基板処理装置1aの冷媒吐出部13は、基板Wの下方に配置される複数の(この例では3つの)下面ノズル131,132,133を備えている。このうち第1下面ノズル131は基板Wの下面側回転中心Cbの直下位置に上向きに開口する吐出口を有する。また、第2下面ノズル132は基板Wの径方向において第1下面ノズル131よりも外側の位置に上向きに開口する吐出口を有する。さらに、第3下面ノズル133は基板Wの径方向において第2下面ノズル132よりもさらに外側の位置に上向きに開口する吐出口を有する。
【0045】
第1ないし第3下面ノズル131〜133は、それぞれスピンチャック11の回転支軸112の中空部に設けられた供給管を介して冷媒供給部89に接続されている。これらの供給管およびノズルはスピンチャック11に接続されておらず、スピンチャック11の回転によっても回転しない。
【0046】
冷媒供給部89は、冷媒Fを送出する送出部890と、第1ないし第3バルブ891〜893と、バルブ制御部894とを備えている。より詳しくは、送出部890と第1下面ノズル131とを接続する配管の途中に第1バルブ891が設けられる。また、送出部890と第2下面ノズル132とを接続する配管の途中に第2バルブ892が設けられる。また、送出部890と第3下面ノズル133とを接続する配管の途中に第3バルブ893が設けられる。
【0047】
第1ないし第3バルブ891〜893は、バルブ制御部894からの制御に応じて、互いに独立して開閉動作が可能である。すなわち、バルブ制御部894は、第1ないし第3バルブ891〜893を個別に制御することで、送出部890から第1ないし第3バルブ891〜893のそれぞれに供給される冷媒の量および供給タイミングを互いに独立して調整することができる。第1ないし第3バルブ891〜893を介して送出される冷媒Fは、第1ないし第3下面ノズル131〜133から基板下面Wbに向けて吐出される。基板下面Wbに供給された冷媒Fは、基板Wの回転に伴う遠心力の作用により、基板Wbに沿って周縁部側へ流れる。
【0048】
平面視における第1ないし第3下面ノズル131〜133の配置は任意である。例えば
図6(b)に示すようにこれらが一列に配置されてもよく、また
図6(c)に示すように、第1下面ノズル131から第2下面ノズル132に向かう方向と、第1下面ノズル131から第3下面ノズル133に向かう方向とが互いに異なっていてもよい。また、以下のような構成であってもよい。
【0049】
図7および
図8は第2実施形態の変形例を示す図である。
図7に示す変形例では上記に加えて第2下面ノズル134が設けられ、全部で4つの下面ノズルが設けられる。これらのうち第1下面ノズル131は基板Wの回転中心Cbの直下位置に設けられる一方、第2ないし第4下面ノズル132〜134は、基板Wの径方向における回転中心Cbからの距離が互いに異なる位置に配置される。
図7においては第2ないし第4下面ノズル132〜134が基板Wの周方向において互いに等角度間隔に配置されているが、上記例と同様、平面視における各下面ノズルの配置は任意である。
【0050】
図8に示す変形例では、スピンチャック11に保持される基板Wの下方に、基板下面Wbと対向する対向面140を有する円盤状の対向部材14が配置される。対向部材14の下部には鉛直方向に延びる支軸145が設けられ、支軸145はスピンチャックの回転支軸112の中空部に挿通されている。対向部材14はスピンチャック11に接続されておらず、スピンチャック11の回転によっても回転しない。
【0051】
対向部材14の対向面140には複数の(この例では3つの)冷媒吐出口141,142,143が設けられている。このうち第1吐出口141は基板Wの下面側回転中心Cbの直下位置に設けられている。また、第2吐出口142は基板Wの径方向において第1吐出口141よりも外側の位置に設けられる。さらに、第3吐出口143は基板Wの径方向において第2吐出口142よりもさらに外側の位置に設けられる。この場合も、平面視における冷媒吐出口141,142,143の配置は任意である。
【0052】
冷媒吐出口141,142,143のそれぞれは、対向部材14の支軸145に設けられた流路および適宜の配管を介して冷媒供給部のバルブ891,892,893にそれぞれ接続されている。したがって、バルブ制御部894が第1ないし第3バルブ891〜893を個別に制御することで、送出部890から第1ないし第3バルブ891〜893を介して第1ないし第3吐出口141〜143のそれぞれから吐出される冷媒の量および供給タイミングを互いに独立して調整することができる。対向面140と基板下面Wbとの間のギャップ空間に吐出された冷媒Fは基板下面Wbに供給され、基板Wの回転に伴う遠心力の作用により、基板Wbに沿って周縁部側へ流れる。
【0053】
図9は第2実施形態の基板処理装置の動作を示すフローチャートである。以下に説明する基板処理装置1aの動作は、CPU81がメモリ82に予め記憶された制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を実行させることにより実現される。なお、この動作における多くの工程は第1実施形態のものと同じであるので、それらの各工程の説明を簡略化する。また、以下の動作説明は
図5および
図6に示される構成を前提としたものであるが、
図7および
図8に示される構成においても動作は基本的に同じである。
【0054】
最初に、装置に搬入された基板Wをワークとして適宜の湿式処理が行われる(ステップS201)。湿式処理の終了後、スピンチャック11が所定の液膜形成用速度で回転され、これにより基板Wが液膜形成用速度で回転する(ステップS202)。そして、ノズル33が基板Wの回転中心Caの上方に位置決めされ(ステップS203)、ノズル33から液膜形成用の処理液Lが吐出される(ステップS204)。処理液Lが基板Wに所定時間供給され液膜LFが形成されると(ステップS205においてYES)、ノズル33は処理液の吐出を停止し、基板W側方の退避位置に移動する(ステップS206)。基板Wは、液膜形成用速度またはそれ以下の回転速度である凝固用回転速度で回転を継続する(ステップS207)。ここまでは第1実施形態の動作と同じである。
【0055】
この状態から、バルブ制御部894が第1バルブ891を開く。そうすると、送出部890から送出される冷媒Fが第1下面ノズル131から吐出され、基板Wの下面側回転中心Cb付近に供給される(ステップS208)。これにより、基板Wの中心部が冷却され、液膜の凝固が開始される。所定時間の経過後(ステップS209においてYES)、バルブ制御部894が第2バルブ892を開き、第2下面ノズル132からの冷媒Fの吐出が開始される(ステップS210)。さらに所定時間の経過後(ステップS211においてYES)、バルブ制御部894が第3バルブ893を開き、第3下面ノズル133からの冷媒Fの吐出が開始される(ステップS212)。
【0056】
このように、この実施形態の基板処理装置1aにおける液膜の凝固プロセスでは、当初は基板下面Wbの回転中心Cb直下に設けられた第1下面ノズル131から基板下面Wbに冷媒Fが供給され、その後、基板下面Wbの周縁部により近い第2下面ノズル132、第3下面ノズル133から順次冷媒Fの供給が開始される。第2下面ノズル132から吐出される冷媒Fは、第1下面ノズル131から吐出され基板下面Wbに沿って第2下面ノズル132との対向位置まで流れてくる冷媒Fと合流する。この場合、第2下面ノズル132から吐出される冷媒の方が低温であるため、当該位置よりも外側における基板Wに対する冷却能力が向上する。また、第3下面ノズル133から吐出される冷媒Fは、第1下面ノズル131および第2下面ノズル132から吐出され基板下面Wbに沿って第3下面ノズル133との対向位置まで流れてくる冷媒Fよりも低温であるため、当該位置よりも外側における基板Wに対する冷却能力がさらに向上する。
【0057】
特にこの実施形態では、冷媒Fの供給量が経時的に増加されることに加えて、その増加分の冷媒Fが供給される位置が、より基板Wの周縁部に近い位置に順次移行してゆく。これにより、冷媒Fの冷却能力をより基板周縁部に近い位置で発揮させることが可能となり、周縁部に近いほど冷媒Fの冷却能力が低下するという問題が効果的に解消される。
【0058】
各下面ノズルからの冷媒Fの吐出が所定時間継続された後(ステップS213においてYES)、第1実施形態と同様に、各下面ノズルからの冷媒Fの吐出および基板Wの回転が停止される(ステップS214)。基板上面Wa全体が凝固膜FFで覆われたワークがチャンバ90から搬出されて(ステップS215)、処理は終了する。
【0059】
なお、
図8に示す変形例においても、基板Wの回転中心Cbに最も近い位置に設けられた第1吐出口141に連通する配管に第1バルブ891が、次いで基板Wの回転中心Cbに近い位置に設けられた第2吐出口142に連通する配管に第1バルブ892が、そして最も回転中心Cbから遠い第3吐出口143に連通する配管に第3バルブ893がそれぞれ設けられている。したがって、上記の動作のように、第1バルブ891、第2バルブ892および第3バルブ893がこの順に開くことで、基板Wの中心から周縁部に向けて順次冷媒の供給量が増やされることになる。
【0060】
以上のように、この実施形態では、液膜を凝固させるプロセスにおいて、当初は基板下面Wbの回転中心Cbの近傍に冷媒Fが供給される。そして、より外側への冷媒供給が順次追加的に実施されて、周縁部における冷媒の供給量が増加する。これにより、周縁部ほど冷媒の温度が上昇することで低下する冷却能力を補って、基板Wの周縁部まで高い冷却能力で冷却することができる。したがって、基板上面Wa側に形成された液膜LFを短時間でかつ良好に凝固させることができる。
【0061】
基板に対する冷却能力を当初から基板全面において高めておくのではなく、中心から周縁部に向けて経時的に冷却能力が高められる。これにより、液膜の凝固はその中心から周縁部に向かって進行することとなり、凝固膜FFを均質なものとすることが可能である。
【0062】
<第3実施形態>
図10は本発明に係る基板処理装置の第3実施形態の主要部を示す図である。なお、
図10においては、第1実施形態と共通の構成であるチャンバ70および制御ユニット80の記載を省略している。この実施形態の基板処理装置においても、多くの構成は第1実施形態のものと共通であり、また装置によってなされる処理の目的や内容も第1実施形態と概ね共通である。そこで、以下の説明では、第1実施形態の構成と同一または対応する構成には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。また、
図10においては、図を見やすくするために、
図1の構成と同一の構成に付すべき一部の符号を省略している。
【0063】
第3実施形態の基板処理装置1bは、冷媒吐出部の構成が第1実施形態のものと相違している。すなわち、第3実施形態の基板処理装置1bにおいては、基板保持部10bに冷媒吐出部15が設けられている。冷媒吐出部15は、スピンベース111の上部に固定され、上面が基板Wの下面Wbと対向する対向面150となった円盤状の対向部材151と、対向部材151の中心部の開口部に設けられた下面ノズル152と、対向部材151の上面(対向面)150に設けられた複数の整流部材153とを備えている。
【0064】
この実施形態では、対向部材151がスピンベース111に取り付けられており、スピンベース111と一体的に回転する。基板Wを保持するチャックピン114は対向部材151の周縁部に取り付けられている。したがって、スピンベース111が回転するとき、対向部材151、チャックピン114およびチャックピン114に保持される基板Wが一体的に鉛直方向の回転軸AX周りに回転する。
【0065】
一方、この実施形態では下面ノズル152はスピンベース111、対向部材151のいずれにも接続されておらず回転しない。しかしながら、これらと一体的に回転する構成であってもよい。下面ノズル152は制御ユニット80の冷媒供給部86(
図1)に接続されており、冷媒供給部86から供給される冷媒Fを基板下面Wbの回転中心Cb付近に向けて吐出する。
【0066】
整流部材153は例えば樹脂材料により薄板または膜状に形成された弾性部材であり、対向部材151の回転中心から周縁部に向かう外向きの傾きを持って対向面150から斜め上向きに延びている。
図10に示すように、整流部材153は、径方向には対向部材151の回転中心から周縁部に向けて異なる位置に複数設けられており、また周方向には連続した環状にまたは複数の部材による断続した環状に設けられている。
【0067】
対向部材151の回転中心からの距離が異なる整流部材153の間では、該距離が大きいものほど復元力が大きくなるように構成されている。材料の選択により復元力が調整されてもよく、また同一材料で厚みを変えることにより復元力が調整されてもよい。スピンベース111とともに対向部材151が回転するとき、遠心力の作用により、各整流部材153の上端部には対向部材151の径方向外側への力が加わる。この力による弾性変形の大きさが同一回転速度において回転中心に近いものほど大きくなるように、各整流部材153が調整されている。したがって、対向部材151が回転するとき、その回転中心に近い整流部材153ほど遠心力による外側への傾きが大きく、回転中心から遠い整流部材153は傾きが小さい。
【0068】
このように構成された基板処理装置1bの動作は
図2に示す第1実施形態の動作と同じである。ただしこの第3実施形態においては、ステップS107における凝固用速度は比較的低く設定される。そのため、冷媒供給の初期段階では、
図10(b)に示すように、比較的低速で回転する対向部材151に設けられた各整流部材153の傾きは小さく、下面ノズル152から吐出される冷媒Fは基板下面Wbの回転中心Cbの近傍に滞留する。これにより基板上面Wa側では液膜LFの中央部が凝固膜FFに転換する。
【0069】
ステップS110において回転速度が高められると、
図10(c)に示すように、回転中心に近い整流部材153ほど大きく傾く。これにより冷媒Fは外側へ広がり、基板上面Wa側では凝固膜FFの範囲が広がる。外側の整流部材153の傾きが小さいため、整流部材がない場合に比べて、冷媒Fが基板Wb下面に接触している時間が長くなる。これにより基板Wがより効果的に冷却されて液膜LFを短時間で凝固させることができる。そして、最終的には冷媒Fが基板下面Wbの周縁部に到達して振り切られ、液膜LFはその周縁部まで含めた全体が凝固膜FFに転換する。このため、整流部材がない場合に比べ短時間で、かつ優れた熱効率で液膜LFを凝固させることが可能である。
【0070】
ステップS110において冷媒Fの供給量が増加される場合においても、基板下面Wbに沿った冷媒Fの広がりを整流部材153が一時的に抑制することで基板Wに対する冷却能力が高まり、そのような領域が順次中心部から周縁部に向けて広がってゆくことで、液膜LFをその中心から周縁部に向けて順次凝固させてゆくことができる。この場合においては対向部材151が回転することは必須ではなく、したがって
図1に示す第1実施形態の対向部材121に整流部材を設けることも有効である。
【0071】
<その他>
以上のように、上記各実施形態では、上面Waに液膜LFが形成された基板Wの下面Wbの回転中心Cbに冷媒Fを供給することで基板Wを冷却し、液膜LFを凝固させる。そして、基板Wの周縁部に向かうほど冷媒Fの温度が上昇し冷却能力が低下するのを補うために、周縁部に向けて順次冷却能力が高められてゆく。具体的には、周縁部における供給量および流速の少なくとも一方が、当初は比較的低く、その後は経時的に増加するように構成されている。これにより、液膜の中心から周縁部に向けて順次凝固させ、しかも凝固を短時間で完了させることができる。
【0072】
これらの実施形態では、液膜が形成された面とは反対側の基板下面に冷媒が供給されるため、冷媒としては気体、液体のいずれも使用可能である。特に比熱の大きい液体を冷媒として用いれば、高い冷却能力を得ることができる。基板上面の液膜に直接冷媒を供給する場合、冷媒としては気体が用いられ、液体と同等の冷却能力を得るためには気体をより低温まで冷却したり、液膜に対しノズルを走査移動させたりすることが必要となり、装置構成が複雑となる。上記各実施形態ではこのような構成が不要であり、装置コストおよび処理コストを低く抑えることが可能となる。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態における処理液Lおよび冷媒Fの種類は単なる例示であって、上記構成において使用される処理液や冷媒は特に限定されない。また処理液は単体に限定されず、複数の物質の混合液や溶液であってもよい。また冷媒としては処理液の凝固点よりも低温である流体を用いることができ、気体、液体のいずれであってもよい。
【0074】
また、上記実施形態の基板処理装置は基板Wに対する湿式処理と、液膜形成と、液膜の凝固とを実行するものである。しかしながら、本発明の実施形態はこれに限定されず、少なくとも液膜形成と液膜の凝固とを実行する処理装置全般に本発明を適用することが可能である。例えば、外部の処理装置で湿式処理が実行された後の基板がワークとして本発明の実施形態である基板処理装置に搬入される構成であってもよい。また、液膜凝固後の後工程を本発明の実施形態である基板処理装置が実行する構成であってもよい。
【0075】
例えば、液膜が凝固する際の体積変化を利用して基板から付着物を除去する凍結洗浄(相変化洗浄)を上記実施形態の基板処理装置で実行することも可能である。すなわち、上記のようにして基板W表面の液膜LFを凝固させた後、処理液供給部40から凝固膜を融解または溶解させるための処理液(例えば温水)を基板Wに供給して凝固膜を除去し、さらに基板Wを高速回転させて処理液を振り切ることで、基板の凍結洗浄および乾燥プロセスを完了させることが可能である。
【0076】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明において例えば、冷媒供給部は、基板の下面の回転中心に向けて供給する冷媒の供給量を増加させるように構成されてもよい。このような構成によれば、基板の回転に伴って回転中心から周縁部に到達する冷媒の供給量も増加するため、周縁部における冷却能力を向上させることがができる。
【0077】
また例えば、基板保持部は、冷媒供給部から冷媒の供給が開始された後に基板の回転速度を増大させるように構成されてよい。このような構成によれば、基板に沿って流れる冷媒の流速が増加し、冷媒の温度があまり上昇しないうちに冷媒を基板の周縁部に到達させることができる。これにより、基板周縁部での冷却能力が向上する。
【0078】
また例えば、冷媒供給部は、基板の径方向における回転中心からの距離が異なり、各々が基板の下面に向けて冷媒を吐出する複数の吐出口を有し、複数の吐出口のそれぞれからの冷媒の吐出を異なるタイミングで開始させるように構成されてよい。このような構成によれば、基板の回転中心と周縁部とで冷媒の供給量を独立して調整することが可能であり、回転中心と周縁部との間における冷媒の冷却能力の差異を補償することができる。
【0079】
また例えば、基板保持部は、処理液供給部から処理液が供給された基板を回転させて液膜を形成させ、液膜が形成されてから液膜の全体が凝固するまでの間、基板の回転速度を液膜の形成時の回転速度以下とするように構成されてよい。このような構成によれば、形成された液膜を基板から落下させることなく凝固させることが可能であり、基板全体を凝固膜で覆うことが可能となる。
【0080】
また例えば、基板保持部は、基板の下面と対向して基板との間にギャップ空間を形成する対向部材を有し、冷媒供給部は、ギャップ空間に冷媒を供給するように構成されてよい。このような構成によれば、ギャップ空間に冷媒を一時的に留まらせることで基板をより効果的に冷却することができる。
【0081】
この場合において、冷媒供給部は、対向部材の上面に開口する吐出口から冷媒を吐出させる構成であってよい。このような構成によれば、吐出口からギャップ空間に供給された冷媒を、基板の回転によって生じる遠心力により基板周縁部まで確実に到達させることができる。
【0082】
あるいは例えば、冷媒供給部は、対向部材の上面に設けられて吐出口から基板の周縁部へ向かう冷媒の流れを一時的に規制する整流部材を有する構成であってよい。このような構成によれば、基板下面における冷媒の流れを整流部材が能動的に制御することで、基板をさらに効果的に冷却することができる。