(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スチレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定において、分子量1万〜2万の割合が2.0%〜5.0%である、請求項1に記載の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0013】
1.板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物
本実施形態の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物は、分岐度が0.85〜1.00であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる測定において、ピークトップの分子量が11万〜28万であり、分子量100万以上の割合が2.0%〜6.0%であり、且つ、分子量2万〜10万の割合が23%〜35%であるスチレン系樹脂を含むことを要し、また、任意に選択される添加剤等を含むことができる。
【0014】
(スチレン系樹脂)
本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、上記の構成を有するためにゲル状物質によるリスクが少なく、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の成形安定性を向上させることができるとともに、板状押出発泡体の独立気泡率及び強度を高め、外観を優れたものとすることができる成分である。
【0015】
<分岐度>
本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、分岐度が0.85〜1.00であることを要し、また、0.87〜1.00であることが好ましく、0.90〜1.00であることがより好ましく、0.94〜1.00であることがさらに好ましい。ここで、分岐度は、絶対分子量10
6.5=316万における、直鎖ポリスチレンであるNBS706に対し、回転半径がどの程度小さくなっているかの指標であり、分岐度が1.00である場合は、分岐が全くない場合であり、分岐度が小さいほど、対象のポリマーが分岐していることを表している。分岐度が0.85よりも小さい場合には、分岐が多くなりすぎ、ゲル状物質によるリスクが大きくなって成形安定性が悪化する虞があるとともに、分岐鎖一本あたりの分子量が小さくなるため、絡み点の数が少なくなり、板状押出発泡の様な高い発泡倍率時(高ひずみ時)に絡み合いがほどけ、十分な成形加工性が得られないことがある。
なお、スチレン系樹脂の分岐度は、例えば、スチレン系単量体をラジカル重合する際に使用する、分岐剤の種類及び添加量等を調節することによって制御することができる。
【0016】
<分子量特性>
本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定されるピークトップの分子量(Mtop)が、11万〜28万であることを要し、また、11万〜15万であることが好ましく、11万〜14万であることがより好ましい。スチレン系樹脂のMtopが11万より小さい場合には、極端に低分子量成分が多くなり、板状に押出発泡成形することができない虞がある。また、スチレン系樹脂のMtopが28万よりも大きい場合には、流動性が低下し、高い発泡倍率を有する板状押出発泡体が得られない虞がある。
【0017】
本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、高分子量成分の割合が適切な範囲に制御されていることを要する。具体的には、本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される分子量100万以上の割合が、2.0%〜6.0%であることを要し、また、3.5%〜6.0%であることが好ましく、5.0%〜6.0%であることがより好ましい。スチレン系樹脂の分子量100万以上の割合が2.0%未満であると、成形加工性、成形安定性並びに板状押出発泡体の独立気泡率及び強度の少なくともいずれかが不十分となる虞があり、6.0%を超えると、押出発泡成形時の流動性に劣るため、成形安定性及び板状押出発泡体の外観が不良となる虞がある。
【0018】
本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、低分子量成分の割合も適切な範囲に制御されていることを要する。具体的には、本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される分子量2万〜10万の割合が、23%〜35%であることを要し、また、27%〜35%であることが好ましく、28%〜35%であることがより好ましい。スチレン系樹脂の分子量2万〜10万の割合が23%未満又は35%超であると、成形加工性及び成形安定性に優れたスチレン系樹脂組成物、並びに強度が高い板状押出発泡体を得ることができない。また、スチレン系樹脂の分子量2万〜10万の割合が23%未満であると、高い発泡倍率(例えば、35%以上)の板状押出発泡体が得られない虞がある。
【0019】
また、本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、さらに低分子量成分の割合、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定される分子量1万〜2万の割合が、好ましくは2.0%〜5.0%であり、より好ましくは2.0%〜3.0%であり、さらにより好ましくは2.5%〜3.0%である。スチレン系樹脂の分子量1万〜2万の割合を2.0%〜5.0%の範囲にすることにより、本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物を用いて板状押出発泡体を製造した際に、特に外観に優れた板状押出発泡体を得ることができる。
【0020】
なお、上記のスチレン系樹脂の分子量特性は、例えば、スチレン系単量体をラジカル重合する際における、複数の反応器の組み合わせ、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する重合溶媒の種類及び量等を調節することによって制御することができる。
【0021】
<スチレン系樹脂の調製>
本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、例えば、スチレン系単量体を、熱重合するか、又は有機過酸化物等の重合開始剤を用いて重合した後、未反応の単量体等の揮発性成分を除去する(脱揮する)ことによって、得ることができる。
【0022】
−重合−
本実施形態で用いるスチレン系樹脂を得るための重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式であっても連続式であってもよいが、生産性の点から、連続式であることが好ましい。連続式の塊状重合法としては、例えば、スチレン系単量体としてのスチレンに対し、必要に応じて重合溶媒、重合開始剤、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、原料溶液を調製する。次いで、直列及び/又は並列に配列された1個以上の反応器と、未反応の単量体等の揮発性成分を除去する(脱揮する)ための装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
なお、本実施形態に用いるスチレン系樹脂は、特定の分岐剤(例えば、多官能ビニル化合物共重合体)を用いることなく調製することができる。そして、理論に限定されないが、本実施形態における板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物は、上記特定の分岐剤を含まなければ、ゲル状物質によるリスクを低減することができ、成形安定性をより高めることができる。
【0023】
重合開始剤としては、特に制限はないが、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン及びn−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、及びジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、及びイソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、並びにt−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。重合開始剤は、スチレン系単量体に対して0.005質量%〜0.08質量%使用することが好ましい。
【0024】
本実施形態で用いるスチレン系樹脂を重合により得る際には、重合反応の制御の観点から、必要に応じて重合溶媒を使用することができる。重合溶媒は、一般的に、連続式の塊状重合法や連続式の溶液重合法において、重合速度や分子量などを調整するために用いられる。重合溶媒としては、特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、並びにヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。重合溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、ゲル化の制御、生産性の向上、分子量の増大等の観点から、通常、重合反応器内の組成として1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0025】
また、本実施形態で用いるスチレン系樹脂を重合により得る際には、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、特に制限はないが、例えば、α−メチルスチレンダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、及びn−オクチルメルカプタン等を挙げることができる。連鎖移動剤は、スチレン系単量体に対して0.01質量%〜0.50質量%使用することが好ましい。
【0026】
ここで、本実施形態で用いるスチレン系樹脂を得るためには、上述した分子量特性をきめ細かく制御することが重要である。そして、本実施形態で用いるスチレン系樹脂は、例えば、複数の反応器を準備し、それぞれの反応器で、高分子量成分や低分子量成分のスチレン系樹脂を調製した後、それらを混合、連結することで、得ることができる。また、装置構成としては、2つ以上の反応器を並列及び/又は直列に連結した構成とすることができ、具体的には、例えば、スチレン系単量体の濃度が高い重合前半にあたる反応器で、必要な割合の分子量100万以上のスチレン系樹脂成分と、必要な割合の分子量2万〜10万のスチレン系樹脂成分とをそれぞれ予め重合し、これらが他の反応器で混合又は合流できるようになっている装置構成とすることができる。
【0027】
分子量100万以上のスチレン系樹脂成分を重合する反応器には、重合溶媒とスチレン系単量体との比率がスチレン系単量体濃度で75質量%〜95質量%の重合用溶液を仕込み、100℃〜115℃の温度で、反応器出口の固形分濃度が35質量%〜45質量%になるまで重合することが好ましい。
一方、分子量2万〜10万のスチレン系樹脂成分を重合する反応器には、重合溶媒とスチレン系単量体の比率がスチレン系単量体濃度で70質量%〜90質量%の重合用溶液を仕込み、100℃〜160℃の温度で、反応器出口の固形分濃度が40質量%〜65質量%になるまで重合することが好ましい。
そして、これらの反応器で重合した各スチレン系樹脂成分を混合する際には、反応器出口の固形分濃度の差を20質量%以内、反応器出口の温度差を25℃以内に制御することが好ましい。
さらに、分子量100万以上の成分を重合する反応器と分子量2万〜10万の成分の成分を重合する反応器の原料供給流量の比率は、0.7:0.3〜0.8:0.2の範囲内に制御することが好ましい。
【0028】
ここで、スチレン系樹脂を高分子量化する(分子量100万以上のスチレン系樹脂成分を調製する)ための方法としては、例えば、重合反応において、重合溶媒を少なく、及び/又は反応温度を低くして、重合速度を抑える方法が挙げられる。また、高分子量成分は、四官能開始剤を用いた重合により、効率的に得ることができる。
【0029】
また、スチレン系樹脂を低分子量化する(分子量2万〜10万のスチレン系樹脂成分を調製する)ための方法としては、例えば、重合反応において、重合溶媒を多く、及び/又は反応温度を高くして、重合速度を高める方法が挙げられる。なお、低分子量成分の調製の際には、重合溶媒以外に連鎖移動剤を併用することができる。また、低分子量成分は、熱重合又は単官能開始剤や二官能開始剤を用いた重合により、効率的に得ることができる。
【0030】
なお、複数の反応器で高分子量成分や低分子量成分のスチレン系樹脂を調製する場合には、それぞれの反応器で得た分子量成分がスチレン系樹脂全体で所望の割合となる様に、各反応器の滞留時間を設定することが好ましい。ここで、反応器の滞留時間は、例えば、原料の供給流量を調節することによって制御することができる。また、各反応器における重合条件は、重合後半にあたる反応器でスチレン系樹脂のピークトップの分子量が所定範囲内に入るように、適切に調節することが好ましい。
【0031】
また、複数の反応器で高分子量成分や低分子量成分のスチレン系樹脂を調製して混合、連結する際には、各反応器の液粘度及び圧力を適切な範囲に制御することが重要である。ここで、反応器の液粘度及び圧力は、例えば、反応器に仕込むスチレン系単量体と重合溶媒の量比や、反応器内で生成するスチレン系樹脂の固形分濃度及び反応器温度を調節することによって制御することができる。これらの反応器内の液を混合させる際には、反応器間にスタティックミキサー等の混練器を介して両者の液を混練することが好ましい。
【0032】
反応器としては、例えば、完全混合型反応器、層流型反応器、重合を進行させながら一部の重合液を抜き出すループ型反応器等が挙げられる。ここで、分子量100万以上の成分を重合する反応器としては、粘度の高い高分子量成分を安定的に低温で重合させるという観点から、完全混合型反応器を使用することが好ましい。
【0033】
−脱揮−
本実施形態で用いるスチレン系樹脂の調製においては、例えば、重合によりスチレン系樹脂を得たあとに、未反応の単量体等の揮発性成分を除去する(脱揮する)ことができる。脱揮装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機などの通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機などが用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
【0034】
(添加剤等)
本実施形態における板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物は、任意に選択される添加剤等を含むことができ、例えば、必要に応じて、ゴム質を含有する成分としてHI−PS樹脂、MBS樹脂等のゴム強化芳香族ビニル系樹脂やSBS等の芳香族ビニル系熱可塑性エラストマーを、1%〜50%程度含んでいてもよい。また、上記板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物は、未反応の単量体の回収工程における高分子の熱分解を抑制するために、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−フェニルペンチル)エチル]−4,6−ジ−t−フェニルペンチルアクリレートのような加工安定剤が含まれていてもよく、また、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸及びその塩や、エチレンビスステアリルアミド等の滑剤、流動パラフィン、白色鉱油等の可塑剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。その他、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えば発泡剤、核剤、難燃剤、着色剤等を、本実施形態の目的を損なわない範囲で組み合わせて、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物に含有させてもよい。発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、フロン、及び水等が挙げられ、ブタンが好適である。それ以外の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、タルク等の通常用いられる発泡核剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。またスチレン系樹脂をペレットとする場合には、当該ペレットの外部潤滑剤として、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等をペレットにまぶして使用してもよい。
【0035】
酸化防止剤は、一般的に、熱成形時又は光暴露により生成したハイドロパーオキシラジカル等の過酸化物ラジカルを安定化するか、又は生成したハイドロパーオキサイド等の過酸化物を分解することができる成分である。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、及び過酸化物分解剤が挙げられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、ラジカル連鎖禁止剤として、過酸化物分解剤は、系中に生成した過酸化物をさらに安定なアルコール類に分解して自動酸化を防止することができる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、以下に限定されないが、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スタイレネイテドフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキレイテッドビスフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、及び3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキシスピロ〔5・5〕ウンデカン等が挙げられる。過酸化物分解剤としては、以下に限定されないが、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の有機リン系過酸化物分解剤、並びにジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート、及び2−メルカプトベンズイミダゾール等の有機イオウ系過酸化物分解剤が挙げられる。酸化防止剤の添加量は、板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物中のスチレン系樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上0.5質量部以下である。
【0036】
難燃剤としては、以下に限定されないが、難燃性やスチレン系樹脂との相溶性等の観点から、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、臭素化SBSブロックポリマー、及び2,2−ビス(4’(2”,3”−ジブロモアルコキシ)−3’,5’−ジブロモフェニル)−プロパン等の臭素系難燃剤、並びに臭素化ビスフェノール系難燃剤が挙げられる。
【0037】
臭素化ビスフェノール系難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールF−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)テトラブロモビスフェノールA−ビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、及びテトラブロモビスフェノールAオリゴマーのエポキシ基付加物等が挙げられる。臭素化ビスフェノ−ル系難燃剤の中でも、特に、テトラブロモビスフェノ−ルA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)、及びテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)は、スチレン系樹脂との混練時において分解しにくく、難燃効果も高く発現し易い傾向にあるため、好ましい。テトラブロモビスフェノ−ルA−ビス(2,3−ジブロモプロピルエーテル)とテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモ−2メチルプロピルエーテル)とを併用すると、難燃性と熱安定性とに優れる傾向にあるため、より好ましい。
【0038】
臭素系難燃剤を用いる際には、臭素化イソシアヌレート系難燃剤を難燃助剤として併用することが好ましい。臭素化イソシアヌレート系難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、モノ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、ジ(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、モノ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、ジ(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート、及びトリス(2,3,4−トリブロモブチル)イソシアヌレート等が挙げられる。臭素化イソシアヌレートの中でも、特に、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートは極めて高い難燃効果が発現するため、好ましい。
【0039】
臭素系難燃剤の含有量としては、板状押出発泡体中のスチレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上9質量部以下であり、さらに好ましくは2質量部以上8質量部以下である。臭素系難燃剤の含有量が0.1質量部以上である場合には、十分な難燃性を得ることができ、また、10質量部以下である場合には、板状押出発泡体を製造する際の成形不良を十分に抑制することができる。
【0040】
上記流動パラフィンは、例えば、食品衛生法、食品、添加物等の規格基準で定められた流動パラフィンから選択することができる。この種の流動パラフィンの具体例としては、以下に限定されないが、エクソンモービル社から市販されているクリストールN52、クリストールN62、クリストールN72、クリストールN82、クリストールN122、クリストールN172、クリストールN262、クリストールN352、プライモールN542等が挙げられる。また、(株)松村石油研究所から市販されているモレスコホワイトP−40、モレスコホワイトP−55、モレスコホワイトP−60、モレスコホワイトP−70、モレスコホワイトP−80、モレスコホワイトP−85、モレスコホワイトP−100、モレスコホワイトP−120、モレスコホワイトP−150、モレスコホワイトP−200、モレスコホワイトP−230、モレスコホワイトP−260、モレスコホワイトP−300、モレスコホワイトP−35 0、モレスコホワイトP−350P等が挙げられる。さらに、三光化学工業(株)から市販されている流動パラフィン40−S、60−S、70−S、80−S、90−S、100−S、120−S、150−S、260−S、350−S等が挙げられる。さらにまた、CK Witco Corporationから市販されているホワイトミネラルオイルが挙げられる。
【0041】
上記流動パラフィンの分子量は通常、動粘度で規定される。本実施形態における流動パラフィンとしては、例えば、試験方法JIS K2283で規定される40℃の動粘度が0.1mm
2/秒〜60mm
2/秒の範囲のものを用いることができ、1mm
2/秒〜40mm
2/秒のものが好ましい。また、流動パラフィンの好ましい重量平均分子量は、150〜500の範囲であり、より好ましくは180〜450の範囲であり、さらに好ましくは200〜350の範囲である。重量平均分子量は、例えばガスクロマトグラフィーを用い、流動パラフィンの各分子量成分の重量平均値をとることで求められる。この粘度範囲あるいはこの分子量範囲の流動パラフィンを用いる場合、より高粘度あるいはより高分子量の流動パラフィンに比較して、得られる板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物を大きく可塑化し、成形性の向上、例えば板状押出発泡体の表面光沢の向上をもたらす傾向にある。なお、粘度0.1mm
2/秒以上あるいは重量平均分子量150以上の流動パラフィンを用いることは、得られる板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の成形加工時に、金型汚染や成形品表面へのブリードを効果的に抑制する傾向があるため、好ましい。
【0042】
上記板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物における流動パラフィンの含有量は、好ましくは0.50質量%未満であり、より好ましくは0.30質量%未満であり、さらに好ましくは0.10質量%未満である。流動パラフィンの含有量が0.50質量%未満であることにより、板状押出発泡体の発泡成形性を良好に維持することができる。
【0043】
(スチレン系樹脂組成物の用途)
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、成形条件の変更による影響を受けにくく、優れた成形安定性を発揮するという特性上、二軸延伸シート、押出シート、発泡押出シート、射出成形、ブロー成形等の用途等においても、幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。
【0044】
2.板状押出発泡体
本実施形態の板状押出発泡体は、上記の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物を含む、厚み5mm〜100mmの板状押出発泡体であって、上記の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物を押出発泡成形することによって得られる。
本実施形態の板状押出発泡体は、上記の構成を有する板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物を押出発泡成形することによって得られるため、独立気泡率及び強度が高くて外観が良い。
【0045】
本実施形態の板状押出発泡体は、上記の板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物から製造することができる。より詳細には、上記スチレン系樹脂組成物を発泡させることにより、本実施形態の板状押出発泡体を製造することができる。上記発泡に際しては、通常知られている方法を用いて行うことができる。また、押出発泡時の発泡剤や発泡核剤については上述した物質等の、通常用いられる物質を使用できる。
なお、本実施形態の板状押出発泡体は、断熱効果等の観点から、発泡体密度が20g/L以上50g/L以下であることが好ましく、上記の値を目安に好ましく製造することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
<測定及び評価方法>
各測定及び評価は、以下の方法に基づいて行った。
【0048】
(1)分岐度の測定
スチレン系樹脂の分岐度の測定では、多角度散乱検出器(MALS)を用い、以下の条件とした。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:Shodex製KF806−Lを直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:各例のスチレン系樹脂組成物10mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:100μl
測定温度:40℃
流速:1.00mL/分
検出器:示差屈折計
MALS検出器:Malvern社製 Viscotek SEC−MALS 20
MALS検出角度:12°、20°、28°、36°、44°52°、60°、68°、76°、84°、90°、100°、108°、116°、124°、132°、140°、148°、156°、164°
MALS検出器温度:35℃
【0049】
標準試料としてPS105Kを使用し、解析ソフトOmniSEC5.1を用いて解析を行い、横軸にlog Molecular weight、縦軸にlog radius of gyrationのグラフを作成した。また、このグラフに、直鎖ポリスチレン(NBS706)についての、log Molecular weightの値が5.0〜6.0の範囲での線形の近似直線を作成し、これを、分岐構造を持たない直鎖ポリスチレンの基準値とした。ここで、log Molecular weightの値が6.0、6.5の時のlog radius of gyrationの値をそれぞれ<Rg6.0>、<Rg6.5>と定義し、NBS706の<Rg6.0>、<Rg6.5>をそれぞれ<Rg6.0>NBS、<Rg6.5>NBSと定義する。なお、<Rg6.5>NBSは、近似直線の外挿値から計算することができる。
【0050】
そして、分岐度=<Rg6.5>/<Rg6.5>NBSと定義する。この分岐度は、絶対分子量10
6.5=316万における、直鎖ポリスチレンであるNBS706に対し、回転半径がどの程度小さくなっているかの指標であり、分岐度が小さいほど、対象のポリマーが分岐していることを表している。
【0051】
(2)分子量等の測定
スチレン系樹脂のピークトップ分子量(Mtop)、分子量100万以上の割合、分子量2万〜10万の割合、及び分子量1万〜2万の割合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、以下の条件で測定した。
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:各例のスチレン系樹脂組成物5mgを10mLの溶媒に溶解
注入量:10μl
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
【0052】
なお、検量線の作成には、東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
また、分子量100万以上の割合、分子量2万〜10万の割合、及び分子量1万〜2万の割合は、分子量とdW/dlogMとの割合から計算した。
【0053】
(3)発泡倍率の測定
まず、単軸押出機、ミキサー、ロータリークーラー、及びダイからなる押出発泡機を用いて、各例のスチレン系樹脂組成物100質量部に対して、発泡核剤としてのタルク(日本ミストロン製、ミストロンベーパー)1質量部、難燃剤としてのヘキサブロモシクロドデカン3質量部、さらに熱安定剤及び発泡剤(LPG(ノルマルブタン/イソブタン=70/30<体積分率>))を添加し、厚み30mmの板状押出発泡体を製造した。その際、樹脂の溶融ゾーンの温度を150℃〜230℃、ロータリークーラーの温度を140℃〜170℃、ダイ温度を130℃に調整した。
次に、ISO10350に基づいて、板状押出発泡体の発泡体密度(ρf)を測定した。なお、測定装置としては、株式会社島津製作所製の比重計(SGM−220−60測定器)を使用した。そして、上記で求めた発泡体密度(ρf)及び板状押出発泡体用スチレン系樹脂組成物の密度(ρ)を用いて、次式より、板状押出発泡体の発泡倍率を算出した。
発泡倍率=ρ/ρf
【0054】
(4)独立気泡率の評価
まず、上記(3)で製造した板状押出発泡体から、一辺が25mmの平面正方形状の試験片を2枚切り出した。なお、板状押出発泡体から試験片を切り出すにあたっては、板状押出発泡体の表面が試験片に含まれないように、板状押出発泡体の内部から切り出すこととした。次いで、得られた2枚の試験片を厚み方向に複数枚重ね合わせて積層体を作製した。この積層体の見掛け体積V1を、ノギスで測定した。次に、この積層体の体積V2を、カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン合同会社から市販されている全自動ピクノメーター「Ultraform1200e」を用い、ASTM D2856−87に準拠して、1−1.34−1気圧法により測定した。そして、板状押出発泡体の独立気泡率を、下記式に基づいて算出した。
独立気泡率(%)=100−100×(V1−V2)/V1
各例の板状押出発泡体について、独立気泡率が90%以上の場合を「○」、85%以上90%未満の場合を「△」、85%未満の場合を「×」として評価した。
【0055】
(5)圧縮強度の評価
上記(3)で製造した板状押出発泡体を用い、JIS K7220に準拠して、板状押出発泡体の圧縮強度(kPa)を測定した。
各例の板状押出発泡体について、圧縮強度が3.0kPa以上の場合を「○」、2.0kPa以上3.0kPa未満の場合を「△」、2.0kPa未満の場合を「×」として評価した。
【0056】
(6)外観の評価
上記(3)で製造した板状押出発泡体の平滑性について、目視にて確認した。そして、各例の板状押出発泡体の外観について、凹凸がなく表面が平滑である場合を「○」、一部に凹凸が見られる場合を「△」、明らかに表面が平滑ではない場合を「×」として評価した。
【0057】
(7)成形安定性の評価
ダイ温度を120℃及び140℃の2条件で調整したこと以外は上記(3)と同様にして、板状押出発泡体を製造し、それぞれの板状押出発泡体について、上記(4)〜(6)と同様の方法で、独立気泡率、圧縮強度及び外観の評価を行った。そして、全ての評価が「○」である場合を「◎」、全ての評価が「○」及び「△」のどちらかである場合(全ての評価が「○」である場合を除く)を「○」、少なくとも1つの評価が「×」がある場合を「×」として、成形安定性を評価した。
【0058】
<スチレン系樹脂組成物の製造例>
(実施例1)
スチレン89.5質量部、及び重合溶媒としてのエチルベンゼン10.5質量部の混合液100質量部に対し、重合開始剤1としての2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製:パーテトラA)0.028質量部を添加した重合用溶液を、5.4リットルの完全混合型反応器に0.81リットル/hrで連続的に仕込み、101℃に調整した。完全混合型反応器と並列に接続された、攪拌器を備え、3ゾーン(ゾーン1,2,3)で温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−1に、スチレン73.2質量部、重合溶媒としてのエチルベンゼン26.5質量部及び連鎖移動剤としてのα−メチルスチレンダイマー0.35質量部の液約100質量部に対し、重合開始剤2としての1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製:パーヘキサC]0.023質量部を添加した重合用溶液を、0.22リットル/hrで連続的に仕込み、層流型反応器−1の温度を126/131/119℃に順次調整した。
完全混合型反応器と層流型反応器−1の液を合わせて、引き続き、攪拌器を備え、3ゾーン(ゾーン1,2,3)で温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−2、及びそれと直列に配された、攪拌器を備え、3ゾーン(ゾーン1,2,3)で温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−3に、連続的に仕込んだ。層流型反応器−2及び層流型反応器−3の温度を、それぞれ、123℃/138℃/150℃及び151℃/158℃/166℃に順次調整した。
次いで、層流型反応器−3からの重合溶液を、240℃の温度に加熱された真空脱揮槽に供給し、未反応の単量体や溶媒などの揮発性成分を取り除き、72時間の連続運転の後に、スチレン系樹脂を含む組成物(スチレン系樹脂組成物)を得た。スチレン系樹脂組成物の製造条件、並びに、スチレン系樹脂の各種測定の結果、及び、上記スチレン系樹脂組成物から製造される板状押出発泡体の各種測定・評価の結果を、表1に示す。
【0059】
(実施例2〜14、比較例1〜6)
実施例2〜14及び比較例1〜6では、分岐度、ピークトップの分子量、分子量100万以上の割合、分子量2万〜10万の割合、及び分子量1万〜2万の割合を表1及び2に示すように制御するため、表1及び表2に示すように製造条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして、スチレン系樹脂組成物を得た。上記スチレン系樹脂組成物から製造される板状押出発泡体の各種測定・評価の結果を、表1及び表2に示す。
【0060】
(実施例15、比較例7)
実施例15及び比較例7では、完全混合型反応器、層流型反応器−2、層流型反応器−3を直列に接続し、完全混合型反応器の液のみを層流型反応器−2に流し込み、層流型反応器−1の液は層流型反応器−3のゾーン2に流し込んで合流させたこと以外は実施例1と同様とした。そして、分岐度、ピークトップの分子量、分子量100万以上の割合、分子量2万〜10万、及び分子量1万〜2万の割合を表1及び表2に示すように制御するため、表1及び表2に示すように製造条件を変更したこと以外は実施例1と同様にして、スチレン系樹脂組成物を得た。上記スチレン系樹脂組成物から製造される板状押出発泡体の各種測定・評価の結果を、表1及び表2に示す。
【0061】
(比較例8)
比較例8では、攪拌機を備えた5リットルの層流型反応器−1、7リットルの層流型反応器−2、及び7リットルの層流型反応器−3を直列に連結し、その後に、実施例1〜15、比較例1〜7と同様の真空脱揮槽を配置した装置構成とした。そして、スチレン93.5質量部、重合溶媒としてのエチルベンゼン6.5質量部、重合開始剤2としての1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.024質量部を含む重合用溶液を、1.0リットル/hrで連続的に仕込み、層流型反応器−1の温度を104/107/109℃に順次調整した。
引き続き、層流型反応器−2、及び層流型反応器−3に、連続的に仕込んだ。層流型反応器−2及び層流型反応器−3の温度を、それぞれ、110℃/113℃/114℃及び125℃/129℃/133℃に順次調整した。
次いで、層流型反応器−3からの重合溶液を、240℃の温度に加熱された真空脱揮槽に供給し、未反応の単量体や溶媒などの揮発性成分を取り除き、72時間の連続運転の後に、スチレン系樹脂を含む組成物(スチレン系樹脂組成物)を得た。スチレン系樹脂組成物の製造条件、並びに、スチレン系樹脂の各種測定の結果、及び、上記スチレン系樹脂組成物から製造される板状押出発泡体の各種測定・評価の結果を、表2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1及び2から明らかなように、高分子量成分が少ない、すなわち分子量100万以上の割合が2.0%未満である比較例1〜4、6では、樹脂の強度が弱いため、押出発泡成形時に樹脂が体積膨張する際に樹脂の破断が起こり、高い独立気泡率を維持することができなかった。特に、分子量100万以上の割合が最も低く、分子量2万〜10万の割合が高く、ピークトップの分子量も低い比較例6では、板状押出発泡体の形に成形することができなかった。比較例1〜4では、成形安定性も低かった。比較例1〜4の中で、低分子量成分も少ない、すなわち分子量2万〜10万の割合が23%未満である比較例4では、押出発泡成形時の流動性に劣るため、圧縮強度は最も低いレベルではなかったものの、35%以上の発泡倍率の板状押出発泡体が得られなかった他、板状押出発泡体の外観も悪かった。一方、比較例1〜4の中で、分子量2万〜10万の割合が十分に高く、分子量100万以上の割合が比較的高かった比較例1及び2では、板状押出発泡体の外観はそれほど悪いレベルではなかった。さらに、比較例1〜4の中で、分子量2万〜10万の割合が高く、分子量100万以上の割合が低い比較例3では、板状発泡体の発泡倍率は高いものの、独立気泡率、圧縮強度、外観、成形加工性の全てが劣っていた。これとは逆に、分子量100万以上の割合が比較的高い比較例8では、圧縮強度は高めであったものの、分子量2万〜10万の割合が低く、ピークトップ分子量も高いため、35%以上の発泡倍率の板状押出発泡体が得られなかった他、板状押出発泡体の独立気泡率、外観、成形安定性はいずれも劣っていた。さらに、比較例の中で、分子量2万〜10万の割合が最も低い比較例5では、著しく流動性が劣り、板状押出発泡体を成形することができなかった。一方、比較例の中で、分子量100万以上の割合とピークトップ分子量とが比較的高い比較例7では、分子量2万〜10万の割合が低く、押出発泡成形時の流動性に劣るため、独立気泡率と圧縮強度は高かったものの、35%以上の発泡倍率の板状押出発泡体が得られなかった他、成形安定性が劣っていた。
【0065】
これに対し、実施例1〜実施例15では、表1から明らかな様に、成形安定性が比較例1〜比較例8よりも高く、押出条件の変更による影響を受けにくいことが分かる。さらに、実施例1〜実施例15の板状押出発泡体は、特定の分岐剤を用いることなく調製することができ、ゲル状物質によるリスクも少ないため、外観、独立気泡率及び製品強度が良好であった。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。