(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896481
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】法人税申告書の作成装置、作成方法、及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/00 20120101AFI20210621BHJP
【FI】
G06Q40/00 410
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-68793(P2017-68793)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-169955(P2018-169955A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】513056101
【氏名又は名称】フリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】平栗 遵宜
(72)【発明者】
【氏名】泉 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】足立 紘亮
【審査官】
田中 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−030383(JP,A)
【文献】
特開2009−008761(JP,A)
【文献】
特開2001−126008(JP,A)
【文献】
特開2002−279145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法人税の申告書を作成するための方法であって、
コンピュータが、申告を行う法人が必要とする一組の別表を前記法人に関連づけるステップと、
前記一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを前記法人の申告書作成に用いられる作業端末に送信するステップと、
前記別表データにより前記作業端末に表示される別表上の項目が選択されたことに応じて、前記別表の側方に前記項目の関連情報を表示させるステップと
を含み、
前記関連情報は、前記項目の情報とともに表示され、(a)前記項目の値によりその値が変動する1又は複数の関連項目の情報又は(b)その値が前記項目の値を変動させる1又は複数の関連項目の情報を含み、
前記関連項目の情報が選択されたことに応じて、前記関連項目が含まれる関連別表を表示させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記関連情報は、前記別表の右方に表示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関連情報は、前記項目に対する作業者によるコメントであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記別表は、前記別表データにより表示される別表上の項目に対する所定の動作がなされた際に、作業者によるコメントの入力を可能とするものであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記別表データは、前記別表データにより表示される別表上の項目に対する所定の動作がなされた際に、作業者によるコメントの入力のみを可能とするものであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
コンピュータに、法人税の申告書を作成するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
申告を行う法人が必要とする一組の別表を前記法人に関連づけるステップと、
前記一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを前記法人の申告書作成に用いられる作業端末に送信するステップと、
前記別表データにより前記作業端末に表示される別表上の項目が選択されたことに応じて、前記別表の側方に前記項目の関連情報を表示させるステップと
を含み、
前記関連情報は、前記項目の情報とともに表示され、(a)前記項目の値によりその値が変動する1又は複数の関連項目の情報又は(b)その値が前記項目の値を変動させる1又は複数の関連項目の情報を含み、
前記関連項目の情報が選択されたことに応じて、前記関連項目が含まれる関連別表を表示させるステップをさらに含むことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
法人税の申告書を作成するための装置であって、
申告を行う法人が必要とする一組の別表を前記法人に関連づけ、
前記一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを前記法人の申告書作成に用いられる作業端末に送信し、
前記別表データにより前記作業端末に表示される別表上の項目が選択されたことに応じて、前記別表の側方に前記項目の関連情報を表示させ、
前記関連情報は、前記項目の情報とともに表示され、(a)前記項目の値によりその値が変動する1又は複数の関連項目の情報又は(b)その値が前記項目の値を変動させる1又は複数の関連項目の情報を含み、
前記関連項目の情報が選択されたことに応じて、前記関連項目が含まれる関連別表を表示させることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法人税申告書の作成装置、作成方法、及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国において、法人は、決算期末から二月以内に法人税の確定申告を行うことが求められている。法人税は、法人の所得に課される税金であるところ、決算上の利益から直接的に計算されるものではなく、税法上の所得という考え方に従って導かれる。そこで、決算上ないし会計上の利益に対して税務上の調整項目を反映させることで法人税額が計算されている。
【0003】
こうした税務調整は「別表」と呼ばれる書類を作成することで行われるが、その数は企業の規模によっては膨大となる。現在、国税については別表一(一)から別表十八までおよそ200種類の別表があり、地方税についても同様に多くの別表がある。
【0004】
これらの別表の間には、ある別表内の項目の値が他の別表内の項目の値に転記される場合、ある別表の内の項目の値に基づいて他の別表内の項目の値が算出される場合等、有機的な関連性を伴うことが少なくなく、税理士は、こうした関連性に対する深い理解の下で、申告書を完成させていく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、我が国における会計事務所の実務としては、必ずしも税務調整に知悉した税理士が別表作成業務のすべての行うものではなく、事務所員が一次作業者として作成し、場合によっては二次作業者が確認、修正等を行い、最終的に税理士が内容を確認し、必要な修正を加えて完成させていることが多い。
【0006】
既存の法人税申告書の作成ソフトは、使用者が税務調整に知悉していることを前提としており、税務申告の実務と必ずしも一致していない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、法人税の申告書を作成する装置、方法及びそのためのプログラムにおいて、税務調整に知悉していない者による別表作成に伴う困難を緩和することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、法人税の申告書を作成する方法であって、申告を行う法人が必要とする一組の別表を前記法人に関連づけるステップと、前記一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを前記法人の申告書作成に用いられる作業端末に送信するステップと、前記法人データにより前記作業端末に表示される別表上の項目が選択されたことに応じて、前記別表の側方に前記項目の関連情報を表示させるステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記関連情報は、前記別表の右方に表示されるものであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記関連情報は、前記項目に対する作業者によるコメントであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記別表は、前記別表データにより表示される別表上の項目に対する所定の動作がなされた際に、作業者によるコメントの入力を可能とするものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第5の態様は、第3の態様において、前記別表データは、前記別表データにより表示される別表上の項目に対する所定の動作がなされた際に、作業者によるコメントの入力のみを可能とするものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第6の態様は、第1又は第2の態様において、前記関連情報は、前記項目の情報とともに表示され、前記項目の値によりその値が変動する1又は複数の関連項目の情報を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第7の態様は、第1又は第2の態様において、前記関連情報は、前記項目の情報とともに表示され、その値が前記項目の値を変動させる1又は複数の関連項目の情報を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の第8の態様は、第6又は第7の態様において、前記関連項目の情報が選択されたことに応じて、前記関連項目が含まれる関連別表を表示させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記関連別表は、前記関連項目が選択される前に表示されていた別表の代わりに表示されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記関連情報は、選択された関連項目に対する1又は複数の関連項目に更新されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の第11の態様は、第8の態様において、前記関連別表は、前記関連情報の代わりに表示されることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第12の態様は、第8乃至第11のいずれかの態様において、前記関連別表は、選択された関連項目が強調されて表示されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第13の態様は、第8乃至第12のいずれかの態様において、前記関連別表は、縦方向又は横方向の少なくとも一方に関して選択された関連項目を中央付近に配置して表示されることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第14の態様は、コンピュータに、法人税の申告書を作成する方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、申告を行う法人が必要とする一組の別表を前記法人に関連づけるステップと、前記一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを前記法人の申告書作成に用いられる作業端末に送信するステップと、前記法人データにより前記作業端末に表示される別表上の項目が選択されたことに応じて、前記別表の側方に前記項目の関連情報を表示させるステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第15の態様は、法人税の申告書を作成する装置であって、申告を行う法人が必要とする一組の別表を前記法人に関連づけ、前記一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを前記法人の申告書作成に用いられる作業端末に送信し、前記法人データにより前記作業端末に表示される別表上の項目が選択されたことに応じて、前記別表の側方に前記項目の関連情報を表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、別表上の項目が選択されたことに応じて、当該別表の側方に当該項目の関連情報を表示させることにより、税務調整に知悉していない者による別表作成に伴う困難を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる法人税申告書の作成方法を示す流れ図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる申告書の作成画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
(本発明の全体像)
図1は、本発明の一実施形態にかかる法人税申告書の作成方法を示す流れ図である。当該方法は、オンプレミスのサーバ又はコンピュータにより、ウェブブラウザ又は専用のアプリケーションを介して用いるサービスとして提供することができ、また、クラウド上のサーバにより提供することができる。クラウド上のサーバによるウェブサービスとして主に以下では説明をするものの、サーバないしコンピュータにアプリケーションをインストールしてスタンドアローンで動作可能としても、本発明の精神の少なくとも一部は同様に適用可能である。
【0027】
サーバは、通信インターフェースなどの通信部と、プロセッサ、CPUなどの処理部と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部を備え、各処理を行うためのプログラムを処理部において実行することによって、以下で説明する各機能を実現することができる。当該サーバは1又は複数の装置ないしサーバを含むことがあり、また当該プログラムは1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。
【0028】
サーバでは、まず、申告を行う法人を識別するための法人IDを生成した上で、当該法人が必要とする一組の別表を当該法人に関連づける(S101)。関連づけられた別表を表示画面上に表示するための別表データ又は当該別表を示す別表IDが法人IDと関連づけて記憶される。この記憶は、当該サーバの記憶部において行ってもよく、また当該サーバからネットワークを介してアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体において行ってもよい。
【0029】
当該法人が必要とする一組の別表としては、すべての法人において必要となる必須別表のほかに、法人毎に必要となる別表があり、法人毎に必要となる別表の判定の少なくとも一部は、当該法人の財務諸表データを参照して行うことができる。より具体的には、たとえば、当該法人の財務諸表に含まれる勘定科目から関連する別表を選択することができる。
【0030】
次に、サーバは、たとえば当該法人の申告書作成に用いられる会計事務所の作業端末に対し、関連づけられた一組の別表のうちの少なくともいずれかの別表の別表データを送信する(S102)。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態にかかる申告書の作成画面を示す図である。作成画面200には、表示する別表を選択するためのプルダウン210があり、プルダウン210をクリック又はタップすることで、当該法人に関連づけられた別表の一覧を表示し、表示すべき別表を選択することができる。
図2では、別表四が表示されている。作成画面200で表示すべき別表が選択されたことを示す選択通知を作業端末からサーバに送信し、これを受け取ったサーバから当該別表の別表データを作業端末に送信してもよく、あるいは作業端末に別表データを記憶しておき、選択に応じて適宜ウェブブラウザなどの表示領域に表示してもよい。
【0032】
作成画面200には、別表を表示するための第1の表示領域220があり、その側方、たとえば右方に、表示される別表に関連する関連情報を表示するための第2の表示領域230がある。関連情報としては、別表内の項目に対する1又は複数の作業者による1又は複数のコメントの一覧、別表内の項目の値によりその値が変動する1又は複数の関連項目の情報、その値が別表内の項目の値を変動させる1又は複数の関連項目の情報等が挙げられる。
【0033】
図2では、別表四(簡易様式)221の項目「当期利益又は当期欠損の額」222が選択されており、選択された項目222により変動する5つの関連項目の情報が当該項目の情報の下に、選択された項目222を変動させる1つの関連項目の情報が当該項目の情報の上に表示されている(S103)。このように、選択された項目222とそれと有機的な関連を有する他の項目との結びつきを可視化することによって、特に項目の選択に応じて動的に可視化することによって、税務調整に精通しているとまでは言えない者が作業者であっても、適切な別表作成を行うことが可能となる。
【0034】
図2では、第2の表示領域230に上から下に向かって変動を与えていく項目の情報を表示させているが、これを横方向に表示させてもよく、下から上に向かって表示させることも考えられる。
【0035】
ある項目とその項目により変動する項目との対応づけをサーバの記憶部又はそこからアクセス可能な記憶装置又は記憶媒体にて対応テーブルないし対応ルールとして保持しておくことにより、これを参照して、たとえばマップ又はダイアログとしての階層的又は非階層的な可視化が可能となる。マップ状の可視化としては、別表間で影響を及ぼす項目を木構造として関連づけることによって行う方法が挙げられる。
【0036】
第2の表示領域230に表示される、選択された項目の情報231とともに表示される関連項目の情報232が作業者によってクリック、タップなどにより選択された場合(S104)、当該関連項目が含まれる関連別表を作業端末に表示させる。選択されたことを示す選択通知を作業端末からサーバに送信し、これを受け取ったサーバから関連別表の別表データを作業端末に送信してもよく、あるいは作業端末に別表データを記憶しておき、選択に応じて適宜ウェブブラウザなどの表示領域に表示してもよい(S105)。このように、別表内の項目の選択に応じて関連する他の項目が動的に可視化されることに加えて、さらに次に作業をすべき別表の表示までを滑らかにつなぐ動線を与えることによって、従来の技術とはまったく異なる体験がもたらされる。
【0037】
関連別表の表示は、関連項目が選択される前に表示されていた別表の代わりに又はこれに重ねて表示することができる。この場合、第2の表示領域230内の関連情報は、選択された関連項目に対する1又は複数の関連項目に更新することができる。あるいは、関連別表の表示は、関連情報の代わりに又はこれに重ねて表示することもできる。関連別表が表示される際には、選択された関連項目をたとえば点滅させるなど、強調して表示してもよい。関連別表は、第1の表示領域220又は第2の表示領域230において、縦方向又は横方向の少なくとも一方に関して選択された関連項目を中央付近に配置して表示させることが好ましい。
【0038】
なお、上述及び後述の説明において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。
【0039】
また、上述の説明では、主に別表間のつながりについて述べてきたが、同一の別表内で影響を与える関係にある項目同士を同色にしたり、他の別表の値に基づいて算出された値が上書きにより修正された項目に黄色等の異なる色を与えたりすることで、別表間に加えて別表内でも複雑なつながりを可視化して提示することができる。
【0040】
(コメントの詳細)
第1の表示領域220に表示された別表221内の項目に対しては、作業者によるコメントを残すことができる。コメントを残す項目223を選択して、たとえば右クリック又はそれに相当する入力などの所定の動作を作業者が行うことで、コメントの入力を可能とすることができる。さらに、所定の動作によりコメントの入力のみを可能とすることで、不慣れな作業者の業務効率の改善につながる。
【0041】
図2では、税理士である税理士太郎が気付いたコメント224Aを残し、税理士の前に作業を行った申告花子が所要の確認を行った旨のコメント224Bをしている例を示している。申告花子がまず、不明な点・不安の残る点等をコメントし、それに対して税理士が回答したり修正指示を出したりすることもある。
【0042】
これらのコメントは、項目毎、別表毎、申告毎等、適宜の範囲で第2の表示領域230に表示可能としてもよい。前年度までのコメントを表示可能とすることで、法人毎の留意点を確認することができるため、たとえば項目213、第2の表示領域230等に対する所定の動作によって、当該項目、別表、又は申告書に対する過去のコメントを表示してもよい。
【0043】
第2の表示領域230にコメントの一覧が表示される場合、いずれかのコメントを作業者がクリック又はタップしたことに応じて、当該コメントに対応する別表を第1の表示領域220に表示させ、さらには、当該コメントに対応する項目を強調したり中央付近に配置したりして表示させることができる。当該コメントに対応する項目が選択されて表示される場合には、第2の表示領域230は、当該コメントに対応する項目の1又は複数の関連項目を表示するように更新するのが好ましい。
【符号の説明】
【0044】
200 作成画面
210 別表選択のプルダウン
220 第1の表示領域
221 別表
222 選択された項目
223 コメントを残す項目
224A コメント
224B コメント
230 第2の表示領域
231 選択された項目の情報
232 選択された項目の関連項目の情報