特許第6896483号(P6896483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896483
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】水性塗料組成物及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 157/00 20060101AFI20210621BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20210621BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20210621BHJP
【FI】
   C09D157/00
   C09D5/08
   C09D7/61
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-71172(P2017-71172)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172504(P2018-172504A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕太
(72)【発明者】
【氏名】水野 俊之
(72)【発明者】
【氏名】田辺 知浩
(72)【発明者】
【氏名】甲斐上 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 瑞樹
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−186021(JP,A)
【文献】 特開2006−342221(JP,A)
【文献】 特開平07−041702(JP,A)
【文献】 特開2006−052247(JP,A)
【文献】 特開平06−287478(JP,A)
【文献】 特開2013−209447(JP,A)
【文献】 特開平8−60037(JP,A)
【文献】 特開2012−21136(JP,A)
【文献】 特開平7−097536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性樹脂、防錆顔料及び水を含む水性塗料組成物であって、
前記水分散性樹脂は、重量平均分子量が5,000〜300,000の樹脂であって、重合性不飽和基と該重合性不飽和基以外の基であって、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基とを有する第1のモノマーと、重合性不飽和基を有する少なくとも1種の第2のモノマーとを繰り返し単位として含む樹脂であり、
前記水性塗料組成物の不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が3〜37質量%であり、
せん断速度0.1s−1の粘度が50〜200Pa・sであり、且つせん断速度1,000s−1の粘度が0.2〜1Pa・sであることを特徴とする水性塗料組成物。
【請求項2】
前記不揮発分中における顔料体積濃度が30〜65体積%であることを特徴とする請求項1に記載の水性塗料組成物。
【請求項3】
前記水分散性樹脂は、50体積%粒子径(D50)が50〜300nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
【請求項4】
前記水分散性樹脂は、重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項5】
前記水分散性樹脂は、ガラス転移温度が−50〜40℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項6】
前記第1のモノマーが、前記非芳香族炭化水素基の炭素数が6以上であるモノマー(a)を含み、
前記不揮発分中におけるモノマー(a)由来の繰り返し単位の含有量が1〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
【請求項7】
油が表面に付着した基材を請求項1〜のいずれか一項に記載の水性塗料組成物で塗装して塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物及び該水性塗料組成物を用いた塗装方法に関し、特には、優れた油面適性と初期の耐水性を両立すると共に、大気中へのホルムアルデヒド放散量が極めて少ない水性防錆塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼面の塗装には、従来、有機溶剤系錆止め塗料が使用されていたが、近年、環境保全や作業環境の改善の面から、有機溶剤系塗料から水系塗料へ移行しつつあり、鉄鋼面に適用する防食塗料においても種々の検討が行われている。例えば、国際公開第2013/140953号(特許文献1)には、防食性に優れる水性エポキシ樹脂塗料組成物が提案されている。
【0003】
しかしながら、水と油は相溶しないことから、表面に油類が存在する鉄鋼面を水系塗料で塗装すると、はじきによる外観不良や付着性低下が生じるといった問題があり、油面(具体的には油が付着した基材表面)への付着性に優れる水性塗料が検討されている。
【0004】
特開平7−41702号公報(特許文献2)は、水系共重合樹脂エマルジョン、防錆顔料、親水性有機溶剤、増粘剤、分散剤、湿潤剤、及び消泡剤を特定の割合で含む完全リサイクル型油面防錆性水系樹脂塗料組成物を記載しており、これによって、油類の付着した複雑形状の金属基材表面に直接塗装が可能であり、ディッピング塗装するときは余分の塗料は速やかに流れ落ち、タマリ、ハジキがなく、エッジカバーが良く、かつ防錆性に優れ、耐水性の良好な水系塗料組成物を提供することができるとしている。
【0005】
特開2001−181557号公報(特許文献3)は、(a)CH2=CRCOO(Cn2nCOO)m−H〔式中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、nは、2〜10の整数を示し、mは、1〜5の整数を示す。〕で示されるエチレン性不飽和単量体、(b)(i)分子内にα,β−エチレン性不飽和基を2個以上有する単量体、(ii)カルボキシル基との反応性を有する官能基を含有するエチレン性不飽和単量体、及び(iii)アルコキシシリル基を含有するエチレン性不飽和単量体、からなる群より選ばれる1種以上の単量体、及び(c)上記(a)及び(b)の単量体と異なり、これらと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を特定の割合で乳化重合して得られるエマルション樹脂をバインダーとして含有することを特徴とする水性塗料組成物を記載しており、これによって、環境汚染や臭気の発生源となるVOCを使用しなくとも、また使用したとしても少量の添加で、油面密着性や、耐ブロッキング性、耐水性等に優れた塗膜を形成する水性塗料組成物を提供することができるとしている。
【0006】
特開2013−209447号公報(特許文献4)は、アルキド樹脂と、乾性油、半乾性油及びこれらの脂肪酸からなる油脂と、前記油脂を主原料とする油脂加工品とからなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応成分に重合性ビニル単量体を特定の割合にて反応させて得られた水系樹脂を含み、かつ、油長が20〜70であることを特徴とする水性樹脂組成物を記載しており、これによって、単に常乾型水性であるだけでなく、油面付着性や塗膜物性に優れた防錆塗膜を形成し得る常乾型水性防錆塗料組成物を提供することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2013/140953号
【特許文献2】特開平7−41702号公報
【特許文献3】特開2001−181557号公報
【特許文献4】特開2013−209447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の塗料組成物は、例えば鋼材表面に付着した油が比較的親水性の高い油である場合、油との馴染みは良いものの、例えば脆弱な黒皮残存鋼材表面に対しては付着性が不十分であり、十分な塗装を行うことが困難であった。また、特許文献3に記載の塗料組成物も、例えば脱脂が不十分である金属基材表面に対しては付着性を有しているが、脆弱な黒皮残存鋼材表面に対して十分な塗装を行うことは困難であった。このように、特許文献2〜3に記載の塗料組成物は、脆弱な黒皮残存鋼材等の高度な油面適性が求められる基材にまで適用できるものではなかった。
【0009】
これに対して、特許文献4に記載の樹脂組成物から調製される塗料組成物は、脆弱な黒皮残存鋼材等にも塗装可能な優れた油面適性を実現している。しかしながら、特許文献4で用いる水系樹脂は、アルキド樹脂等の反応部分に由来するアルキド部位を樹脂骨格中に有することから、塗膜の完全硬化に時間を要し、その間の耐水性が劣り、また、大気中へのホルムアルデヒド放散量が多いといった課題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、優れた油面適性と初期の耐水性を両立すると共に、大気中へのホルムアルデヒド放散量が極めて少ない水性防錆塗料組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、優れた油面適性と初期の耐水性を両立すると共に、大気中へのホルムアルデヒド放散量が極めて少ない塗膜を形成可能な塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーと他のモノマーから得られる特定の重量平均分子量を有する共重合体を、該重合性不飽和モノマー由来の繰り返し単位の不揮発分中における含有量が特定の割合になるように配合させることによって、油面適性に優れる水性塗料組成物を提供できることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基を有する重合性不飽和モノマーと他のモノマーとの共重合体は、アルキド樹脂のような樹脂骨格を有することを要しないため、初期の耐水性に優れ、大気中へのホルムアルデヒド放散量を抑えることも可能である。
【0012】
即ち、本発明の水性塗料組成物は、水分散性樹脂、防錆顔料及び水を含む水性塗料組成物であって、
前記水分散性樹脂は、重量平均分子量が5,000〜300,000の樹脂であって、重合性不飽和基と該重合性不飽和基以外の基であって、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基とを有する第1のモノマーと、重合性不飽和基を有する少なくとも1種の第2のモノマーとを繰り返し単位として含む樹脂であり、
前記水性塗料組成物の不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が3〜37質量%であることを特徴とする。
【0013】
本発明の水性塗料組成物の好適例においては、前記不揮発分中における顔料体積濃度が30〜65体積%である。
【0014】
本発明の水性塗料組成物の他の好適例においては、せん断速度0.1s−1の粘度が50〜200Pa・sであり、且つせん断速度1,000s−1の粘度が0.2〜1Pa・sである。
【0015】
本発明の水性塗料組成物の他の好適例において、前記水分散性樹脂は、50体積%粒子径(D50)が50〜300nmの範囲内にある。
【0016】
本発明の水性塗料組成物の他の好適例において、前記水分散性樹脂は、重量平均分子量が5,000〜200,000の範囲内にある。
【0017】
本発明の水性塗料組成物の他の好適例において、前記水分散性樹脂は、ガラス転移温度が−50〜40℃の範囲内にある。
【0018】
本発明の水性塗料組成物の他の好適例において、前記第1のモノマーが、前記非芳香族炭化水素基の炭素数が6以上であるモノマー(a)を含み、
前記不揮発分中におけるモノマー(a)由来の繰り返し単位の含有量が1〜30質量%である。
【0019】
また、本発明の塗装方法は、油が表面に付着した基材を上記の水性塗料組成物で塗装して塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水性塗料組成物によれば、優れた油面適性と初期の耐水性を両立すると共に、大気中へのホルムアルデヒド放散量が極めて少ない水性防錆塗料組成物を提供することができる。
【0021】
また、本発明の塗装方法によれば、優れた油面適性と初期の耐水性を両立すると共に、大気中へのホルムアルデヒド放散量が極めて少ない塗膜を形成可能な塗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の水性塗料組成物(以下、単に本発明の塗料組成物ともいう)を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、水分散性樹脂、防錆顔料及び水を含む水性塗料組成物であって、前記水分散性樹脂は、重量平均分子量が5,000〜300,000の樹脂であって、重合性不飽和基と該重合性不飽和基以外の基であって、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基とを有する第1のモノマーと、重合性不飽和基を有する少なくとも1種の第2のモノマーとを繰り返し単位として含む樹脂であり、前記水性塗料組成物の不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が3〜37質量%であることを特徴とする。
【0023】
本発明の塗料組成物において、上記水分散性樹脂は、水中に分布して不均質系(例えば乳濁液又は懸濁液)を形成可能な樹脂であり、重合性不飽和基と該重合性不飽和基以外の基であって、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基とを有する第1のモノマーと、重合性不飽和基を有する少なくとも1種の第2のモノマーとを繰り返し単位として含む樹脂である。本発明の塗料組成物においては、上記第1のモノマーに由来する繰り返し単位の含有量が不揮発分中に特定の割合で含まれるように水分散性樹脂を配合することで、優れた油面適性を発揮することができる。また、上記水分散性樹脂は、アルキド樹脂のような樹脂骨格を有さずに優れた油面適性を発揮することができるため、優れた油面適性と初期の耐水性の両立ができると共に、大気中へのホルムアルデヒド放散量を抑えることも可能である。
【0024】
上記水分散性樹脂は、重合性不飽和基と該重合性不飽和基以外の基であって、炭素数が4以上である非芳香族炭化水素基とを有する第1のモノマーを繰り返し単位として含んでおり、これにより、油面適性を向上させている。
【0025】
ここで、「重合性不飽和基」とは、重合反応を起こす不飽和基であり、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基又はアリル基を構成する炭素−炭素二重結合が挙げられる。そして、「重合性不飽和基を有するモノマー」は、重合性不飽和基を介して重合反応を起こすモノマーである。
【0026】
また、「非芳香族炭化水素基」とは、芳香環を有しない炭化水素基であり、例えば直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基や環状の炭化水素基が挙げられる。また、直鎖又は枝分かれ鎖に環構造が結合している炭化水素基や環構造に直鎖又は枝分かれ鎖が結合している炭化水素基等、直鎖、枝分かれ鎖及び環構造の組み合わせからなる炭化水素基も含まれる。なお、本発明において、「非芳香族炭化水素基」は、重合性不飽和基以外の基である。
【0027】
本発明の塗料組成物においては、上記水分散性樹脂を構成する第1のモノマーの「非芳香族炭化水素基」の炭素数が4以上であると、油面適性の向上効果が得られる。油面適性の向上効果の観点から、「非芳香族炭化水素基」の炭素数は6以上が好ましく、9以上が更に好ましい。一方、「非芳香族炭化水素基」の炭素数の上限に特に制限はないものの、塗膜硬度(耐ブロッキング性)の観点から、「非芳香族炭化水素基」の炭素数は18以下が好ましく、16以下が更に好ましい。
【0028】
本発明において、「非芳香族炭化水素基」の具体例としては、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ラウリル、セチル、ステアリル等が挙げられる。なお、上記第1のモノマーは、これら「非芳香族炭化水素基」を1つ又は複数有することができる。
【0029】
上記第1のモノマーの具体例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、上記第1のモノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の塗料組成物においては、不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が3〜37質量%である。不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が3質量%以上であると、優れた油面適性を発揮することができる。一方、不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量が37質量%以下であれば、十分な樹脂の水分散性を確保することができる。本発明の水性塗料組成物においては、不揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量は8〜37質量%であることが好ましい。なお、揮発分中における第1のモノマー由来の繰り返し単位の含有量は、不揮発分中に占める水分散性樹脂の割合や水分散性樹脂を構成する第1のモノマーの割合を調整することで、容易に調整することができる。
また、上述の通り、第1のモノマーの非芳香族炭化水素基の炭素数は6以上が好ましい。このため、本発明の塗料組成物においては、第1のモノマーが、非芳香族炭化水素基の炭素数が6以上であるモノマー(a)を含み、該塗料組成物の不揮発分中におけるモノマー(a)由来の繰り返し単位の含有量が1〜30質量%であることが好ましく、1〜28質量%であることが更に好ましい。
【0031】
本発明の塗料組成物において、水分散性樹脂を構成する繰り返し単位に占める第1のモノマー由来の繰り返し単位の割合は、21〜72質量%の範囲が好ましい。
【0032】
上記水分散性樹脂は、上記第1のモノマーに加えて、重合性不飽和基を有する少なくとも1種の第2のモノマーを繰り返し単位として含む樹脂である。上記水分散性樹脂が第1のモノマーのみから構成されていると、十分な樹脂の水分散性を確保することができない。ここで、「第2のモノマー」とは、「重合性不飽和基を有するモノマー」のうち第1のモノマーとは異なるモノマーであり、第1のモノマーと共重合させることが可能である。
【0033】
第2のモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレートや、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、安息香酸ビニル等の芳香族系重合性不飽和モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー;N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドや、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシ置換アミドモノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;マレイン酸やフマル酸のジアルキルエステル;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル等のモノマー;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート、燐酸基含有(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アタクリレートへのラクトン付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのエチレンオキシドの開環付加物やプロピレンオキシドの開環付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体や3量体、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。なお、上記第2のモノマーは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記水分散性樹脂は、第2のモノマーのうち、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート及び安息香酸ビニルよりなる群から選択される少なくとも1種の芳香族系重合性不飽和モノマーを繰り返し単位として含むことが好ましい。かかる芳香族系重合性不飽和モノマーを用いることで、塗膜とした際の耐水性等の塗膜性能を向上させることができる。本発明の水性塗料組成物において、水分散性樹脂を構成する繰り返し単位に占める芳香族系重合性不飽和モノマー由来の繰り返し単位の割合は、例えば0質量%を超え、79質量%以下の範囲である。
【0035】
上記水分散性樹脂は、第2のモノマーのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アタクリレートへのラクトン付加物、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートへのエチレンオキシドの開環付加物又はプロピレンオキシドの開環付加物、及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの2量体又は3量体よりなる群から選択される少なくとも1種のヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマーを繰り返し単位として含むことが好ましい。かかるヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマーを用いることで、樹脂の水分散性を向上させることができる。本発明の水性塗料組成物において、水分散性樹脂を構成する繰り返し単位に占めるヒドロキシ基含有重合性不飽和モノマー由来の繰り返し単位の割合は、0質量%を超え5質量%以下であることが好ましい。
【0036】
上記水分散性樹脂は、第2のモノマーのうち、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニル安息香酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート及び燐酸基含有(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の酸基含有重合性不飽和モノマーを繰り返し単位として含むことが好ましい。かかる酸基含有重合性不飽和モノマーを用いることで、樹脂の水分散性を向上させることができる。本発明の水性塗料組成物において、水分散性樹脂を構成する繰り返し単位に占める酸基含有重合性不飽和モノマー由来の繰り返し単位の割合は、3〜7質量%の範囲が好ましい。
【0037】
本発明の塗料組成物において、上記水分散性樹脂は、分散液の形態で使用されることが好ましい。ここで、水分散性樹脂を含む分散液(以下、樹脂分散液ともいう)は、該樹脂が水又は水を主溶媒とする溶媒中に分布している不均質系を意味し、必要に応じて界面活性剤等の添加剤が含まれる。
【0038】
本発明の塗料組成物において、樹脂分散液は、例えば、高速攪拌機等を使用することにより強制的なせん断力を加えながら、必要に応じて界面活性剤を用いて、水分散性樹脂を水中で乳化させることによって調製できる。或いは、樹脂分散液を以下のように調製することもできる。有機溶剤媒体中にて重合してなる水分散性樹脂に対して、必要に応じて界面活性剤を加えて、水中への相転換を行うことによって樹脂分散液を調製でき、必要に応じて蒸留等によって樹脂分散液中に含まれる有機溶剤を除去してもよい。また、水を媒体とし、水中で重合を行うことによっても、樹脂分散液を調製できる。
【0039】
上記水分散性樹脂は、第1のモノマーと第2のモノマーの共重合により合成できるが、重合を行う際には、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキシド、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキシド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、2,2−ビス(4,4−ジt-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の有機過酸化物系重合開始剤等の重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、上記重合を行う際には、必要に応じて2−メルカプトエタノール、n−オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等の連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記重合を有機溶剤中で行う場合、該有機溶剤としては、水と混合し得る極性を持つ有機溶剤が好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、t−アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。また、必要に応じて、キシレン、トルエン等の芳香族有機溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤等も併用できる。
【0042】
上記水分散性樹脂の調製においては、重合後に塩基性物質を用いて中和を行う場合もある。塩基性物質としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。塩基性物質は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
本発明の塗料組成物において、上記水分散性樹脂は、その重量平均分子量が5,000〜300,000の範囲内にあり、5,000〜200,000の範囲内にあることが好ましく、5,000〜100,000の範囲内にあることがより好ましく、10,000〜100,000の範囲内にあることが更に好ましい。上記特定した範囲内の分子量であれば、油面適性に優れると共に、塗膜の耐久性、特には初期の耐水性をも向上させることができる。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定した値であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0044】
本発明の塗料組成物において、上記水分散性樹脂は、そのガラス転移温度が−50〜40℃であることが好ましく、−30〜20℃の範囲内にあることがより好ましく、−10〜20℃であることが更に好ましい。上記特定した範囲内のガラス転移温度であれば、塗膜表面に存在する油分との馴染みがよくなり油面適性が更に向上すると共に、塗膜硬度等の塗膜性能を向上させることができる。
【0045】
なお、本発明において、ガラス転移温度(Tg)とは、次のFOX式を用いて計算されるものをいう。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wi/Tgi+・・・+Wn/Tgn
上記FOX式において、Tgは、n種類のモノマーからなるポリマーのガラス転移温度(K)であり、Tg(1、2、i、n)は、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度(K)であり、W(1、2、i、n)は、各モノマーの質量分率であり、W1+W2+・・・+Wi+・・・+Wn=1である。
【0046】
本発明の塗料組成物において、上記水分散性樹脂は、その酸価が25〜60であることが好ましい。上記特定した範囲内の酸価であれば、水分散性を向上させることができる。本発明において、樹脂の酸価とは、樹脂1gを中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0047】
本発明の塗料組成物において、不揮発分の含有量は、55〜73質量%であることが好ましく、55〜65質量%であることがより好ましい。また、本発明の水性塗料組成物において、不揮発分中における水分散性樹脂の含有量は、15〜45質量%であることが好ましく、27〜43質量%であることがより好ましい。なお、不揮発分とは、水や有機溶剤等の揮発する成分を除いた成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分であるが、本発明においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取り扱う。
【0048】
本発明の塗料組成物において、水分散性樹脂は、50体積%粒子径(D50)が50〜300nmの範囲内にあることが好ましく、50〜200nmの範囲内にあることがより好ましい。上記特定した範囲内の50体積%粒子径であれば、油面適性をより確実に向上させることができる。本発明において、50体積%粒子径(D50)は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばSALD−7000:株式会社島津製作所社製)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0049】
本発明の塗料組成物に用いる防錆顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、亜鉛粉末、酸化亜鉛、メタホウ酸バリウム、珪酸カルシウム、リン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、バナジン酸/リン酸混合顔料等が挙げられる。また、本発明の水性塗料組成物において、不揮発分中における防錆顔料の含有量は、3〜10質量%であることが好ましい。
【0050】
本発明の塗料組成物において、不揮発分中における顔料体積濃度は30〜65体積%であることが好ましく、30〜50体積%にあることがより好ましく、30〜47体積%であることが更に好ましい。上記特定した範囲内の顔料体積濃度であれば、塗料が基材に付着している油分と一体化して塗膜を形成できるとともに、乾燥した後の塗膜が優れた防錆性や耐水性を有する。なお、ここでいう顔料とは、塗料組成物中に含まれる全ての顔料を指しており、防錆顔料以外の顔料が使用される場合はその顔料も含まれる。不揮発分中における顔料体積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)は、不揮発分を構成する各成分の組成及び比重から計算により求めることができる。
【0051】
本発明の塗料組成物は、水性塗料であるが、水性塗料とは、水を主溶媒として含む塗料である。本発明の塗料組成物において、水の含有量は、27〜45質量%であることが好ましく、35〜45質量%であることがより好ましい。また、本発明の塗料組成物は、完全水系化することも可能であり、使用される溶媒に占める水の割合は、好ましくは50質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0052】
本発明の塗料組成物には、その他の成分として、各種樹脂、顔料、有機溶剤、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、成膜助剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び導電性付与剤等を目的に応じて適宜配合することができる。これら成分は、市販品を好適に使用することができる。なお、これら成分には有機溶剤が使用されている場合もある。本発明の水系塗料組成物中において、有機溶剤の含有量は、好ましくは15質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
【0053】
ここで、その他の成分である樹脂としては、塗料業界において通常使用されている樹脂を例示することができ、具体的には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を一種単独で用いても良く、二種以上組み合わせて用いてもよい。また特に本発明の塗料組成物中において、その他の成分である樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂から選ばれることが好ましく、逆に、アルキド樹脂は油面適性には優れるものの初期の耐水性に劣ることから、使用する場合であっても、本発明の塗料組成物における油長は20以下であることがより好ましい。
【0054】
また、その他の成分である顔料としては、塗料業界において通常使用されている顔料を例示することができ、具体的には、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の着色顔料、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の体質顔料、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金、ステンレス、ガラスフレーク等の光輝顔料等が挙げられる。これら顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
また、本発明の塗料組成物が水以外の溶媒を含む場合、その溶媒としては、水と混合し得る極性を持つ有機溶剤が好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、t−アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等が挙げられる。
【0056】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0057】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1s−1の粘度が50〜200Pa・sであり、且つせん断速度1,000s−1の粘度が0.2〜1Pa・sであることが好ましい。上記特定した範囲内の粘度であれば、塗装作業性に優れるとともに、塗料が基材の脆弱面、油面付着面に一部浸透して乾燥し、一体化した塗膜を形成し得ることから、油面適性に優れる塗料組成物が得られる。なお、本発明において、粘度はTAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を23℃に調整した後測定される。
【0058】
本発明の塗料組成物において、塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できる。
【0059】
また、本発明の塗料組成物により塗装できる基材としては、特に限定されるものではないが、例えば、鉄鋼、亜鉛めっき鋼(例えばトタン板)、錫めっき鋼(例えばブリキ板)、ステンレス鋼、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属又は合金を少なくとも一部に含む金属系基材が好適に挙げられる。これら基材は、防錆油、圧延油等の油が付着している場合が多く、本発明の塗料組成物を用いた塗装が有効である。特に、本発明の塗料組成物によれば、鋼材表面に見られるような黒皮が表面に付着した基材に対しても好適に塗装を行うことができる。通常、黒皮が付着した基材は、黒皮の隙間等に油分が多く存在しており、優れた油面適性が求められる。
なお、基材には、各種表面処理、例えば酸化処理やプライマー処理が施された基材が含まれ、基材表面の少なくとも一部に旧塗膜(本発明の塗料組成物の塗装を行う前に既に形成されている塗膜)が存在していてもよい。
【0060】
本発明の塗料組成物により塗装できる基材としては、上述したように各種材質の基材が挙げられるが、その具体例としては、各種建築材料の他、建築物や構築物及びそれらの部材が挙げられる。なお、本発明において、建築物とは、人間が居住又は滞在する目的で建築された構造物を意味し、例えば住宅やビル、工場等が挙げられ、構築物とは、人間が居住又は滞在する目的以外のために建設された構造物を意味し、例えば橋梁、タンク、プラント配管、煙突等が挙げられる。建築物や構築物の部材としては、例えば屋根や壁等が挙げられる。
【0061】
次に、本発明の塗装方法を詳細に説明する。本発明の塗装方法は、油が表面に付着した基材を水性塗料組成物で塗装して塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とし、ここで、該水性塗料組成物が、上述した本発明の水性塗料組成物である。このため、本発明の塗装方法によれば、油が表面に付着した基材に対しても、好適に塗装を行うことができる。
【0062】
本発明の塗装方法において、基材表面に付着した油としては、例えば、防錆油、圧延油、切削油、及びプレス油等の金属加工油が挙げられ、各種市販品が想定される。
【0063】
また、本発明の塗装方法において、基材は、上述した本発明の塗料組成物の説明において記載されたとおりであるが、特に、本発明の塗装方法によれば、鋼材表面に見られるような黒皮が表面に付着した基材に対しても好適に塗装を行うことができる。
【0064】
本発明の塗装方法において、塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できる。
【実施例】
【0065】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
<合成例1>
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備える反応容器に、メチルエチルケトンを120質量部入れ、加熱撹拌し、90℃に達してから、スチレンを380質量部、n−ブチルアクリレートを360質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを20質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製:カヤエステルO)40質量部を予め混合して得た混合物を5時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃を保持したまま、更に重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製:カヤエステルO)10質量部とメチルエチルケトン20質量部の混合物を1時間かけて滴下した。得られた混合物を、引き続き90℃で6時間撹拌を続けて反応させた後、冷却した。得られた混合物に対して、メチルエチルケトン50質量部で希釈を行い、不揮発分80質量%、樹脂の重量平均分子量が17,000である樹脂溶液1を得た。
【0067】
<合成例2〜26>
表1〜表2に示す配合処方にて反応を行った以外は、合成例1と同様の方法により、樹脂溶液2〜26を調製した。各樹脂溶液について、不揮発分、及び樹脂の重量平均分子量を表1〜表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
<合成例27>
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備える反応容器に、樹脂溶液1を330質量部、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製:カレンズMOI)を3質量部、メチルエチルケトンを10質量部入れ、加熱撹拌し、90℃に達してから、2時間撹拌を続けた。続いてスチレンを45質量部、n−ブチルアクリレートを15質量部、アクリル酸を20質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製:カヤエステルO)10質量部を予め混合して得た混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃を保持したまま、更に重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製:カヤエステルO)10質量部とメチルエチルケトン10質量部の混合物を2時間かけて滴下した。さらに90℃で6時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた混合物にジメチルエタノールアミンを22質量部加えて攪拌し、さらにイオン交換水530質量部を加えた。これから、エバポレーターを用いて減圧下(約50mmHg)、50℃にてメチルエチルケトンを80質量部留去し、次いでイオン交換水を50質量部、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルを50質量部添加し、不揮発分35質量%、水分散性樹脂のガラス転移温度(Tg)17℃、水分散性樹脂の酸価42mgKOH/g、水分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)70nm、水分散性樹脂の重量平均分子量32,000である樹脂分散液1を得た。なお、ここでの水分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)は、塗料組成物の調製後の粒子径とほぼ同一であると考える。
【0071】
<合成例28、30〜48、52〜54、及び56〜63>
表3〜5に示す配合処方にて反応を行った以外は、合成例27と同様の方法により、樹脂分散液2、4〜22、26〜28、及び30〜37を調製した。各樹脂分散液について、不揮発分、水分散性樹脂のガラス転移温度(Tg)、水分散性樹脂の酸価、水分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)、及び水分散性樹脂の重量平均分子量を表3〜5に示す。なお、合成例60、61及び63に従い調製された樹脂分散液34、35及び37は、樹脂の分散不良のため、後述する評価を行うことができなかった。
【0072】
<合成例29>
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備える反応容器に、樹脂溶液3を330質量部、メチルエチルケトンを10質量部入れ、加熱撹拌し、90℃に達してから、スチレンを45質量部、n−ブチルアクリレートを15質量部、アクリル酸を20質量部、及び重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製:カヤエステルO)3質量部を予め混合して得た混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃を保持したまま、更に重合開始剤(化薬アクゾ株式会社製:カヤエステルO)10質量部とメチルエチルケトン10質量部の混合物を2時間かけて滴下した。さらに90℃で6時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた混合物にジメチルエタノールアミンを22質量部加えて攪拌し、さらにイオン交換水530質量部を加えた。これから、エバポレーターを用いて減圧下(約50mmHg)、約50℃にてメチルエチルケトンを80質量部留去し、イオン交換水を50質量部、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルを50質量部添加し、不揮発分35質量%、水分散性樹脂のガラス転移温度(Tg)19℃、水分散性樹脂の酸価44mgKOH/g、水分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)114nm、水分散性樹脂の重量平均分子量38,000である樹脂分散液3を得た。
【0073】
<合成例49〜51、及び55>
表3〜表5に示す配合処方にて反応を行った以外は、合成例29と同様の方法により、樹脂分散液23〜25、及び29を調製した。各樹脂分散液について、不揮発分、水分散性樹脂のガラス転移温度(Tg)、水分散性樹脂の酸価、水分散性樹脂の50体積%粒子径(D50)、及び水分散性樹脂の重量平均分子量を表3〜表5に示す。
【0074】
<追加の樹脂分散液>
特開2001−181557号公報の実施例1に従い、樹脂分散液を調製した。なお、該樹脂分散液中の樹脂の重量平均分子量は検出限界を超えるものであり、300,000を超える重量平均分子量を有する樹脂であった。
また、特開2013−209447号公報の合成例10に従い、樹脂分散液を調製した。
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
次に、水性防錆塗料組成物の製造例を以下に示す。
【0079】
<製造例1>
上記合成例27で得られた樹脂分散液1 47.0質量部、顔料分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製:Disperbyk-190)0.5質量部、消泡剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製:byk-093)0.5質量部、着色顔料(戸田ピグメント株式会社製:130ED)5.0質量部、防錆顔料(テイカ株式会社製:K-White #140W)5.0質量部、及び体質顔料(竹原化学工業株式会社製:サンライトSL-1000)37質量部を予め混合した後に、ボールミルにて30分間分散処理した。この分散処理後の混合物に、ディスパー(塗料攪拌機)にて攪拌しながら、イオン交換水5質量部を加えて水性防錆塗料組成物(実施例1)を得た。
【0080】
<製造例2〜48>
表6〜10に示す配合処方に従って、製造例1と同様の方法により、実施例2〜44並びに比較例1〜3及び5の水性防錆塗料組成物を調製した。
【0081】
<追加の水性防錆塗料組成物>
国際公開第2013/140953号の製造例3−1(下塗り塗料3−1の調製例)に従い、比較例4の水性防錆塗料組成物を調製した。
【0082】
上記の実施例1〜44並びに比較例1〜3及び5の水性防錆塗料組成物について、TAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、せん断速度0.1(1/s)、及び1000(1/s)における各粘度(いずれも温度23℃の粘度)を測定し、結果を表6〜10に示した。表中、せん断速度0.1(1/s)における粘度を粘度1に示し、せん断速度1000(1/s)における粘度を粘度2に示す。
【0083】
上記の実施例1〜44及び比較例1〜5の水性防錆塗料組成物について、下記の作製方法1及び2に従い試験板を作製し、下記の方法及び基準で油面付着性評価A及びB、塗膜硬度評価、防錆性評価、ホルムアルデヒド放散量評価、並びに初期耐水性評価を行った。結果を表6〜10に示す。
【0084】
< 試験板の作製方法1 >
黒皮鋼板(SPHC(熱間圧延軟鋼板及び鋼帯JIS G3131):1.6×70×150mm)をキシレンで脱脂した後、防錆油〔JIS K 2246(1994)NP−3−2〕を塗布量1.0g/mとなるように均一に塗布し、23℃・50%RHの雰囲気下に1週間放置し、目的とする試験板を得た。
【0085】
< 試験板の作製方法2 >
黒皮鋼板(SPHC(熱間圧延軟鋼板及び鋼帯JIS G3131):1.6×70×150mm)をキシレンで脱脂した後、防錆油〔JIS K 2246(1994)NP−3−2〕を塗布量3.0g/mになるように均一に塗布し、23℃・50%RHの雰囲気下に1週間放置し、目的とする試験板を得た。
【0086】
< 油面付着性評価A >
上記作製方法1に従って作製した試験板に、実施例1〜44及び比較例1〜5の水性防錆塗料組成物を4ミルアプリケーターで塗布し、23℃・50%RHの雰囲気下に1週間放置して乾燥させ塗膜を作製し、その後、JIS K 5674 7.11 付着安定性のd)試験方法に従ってセロハン粘着テープによる付着性を試験し、規定の面積(セロハン粘着テープ50mm長)において、はく離しなかった塗膜の面積(付着面積率)を算出し、以下の基準により評価を行った。
◎ : 付着面積率が98%以上であった。
〇 : 付着面積率が70%以上、98%未満であった。
× : 付着面積率が70%未満であった。
【0087】
< 油面付着性評価B >
上記作製方法2に従って作製した試験板に、実施例1〜44及び比較例1〜5の水性防錆塗料組成物を4ミルアプリケーターで塗布し、23℃・50%RHの雰囲気下に1週間放置して乾燥させ塗膜を作製し、その後、JIS K 5674 7.11 付着安定性のd)試験方法に従ってセロハン粘着テープによる付着性を試験し、規定の面積(セロハン粘着テープ50mm長)において、はく離しなかった塗膜の面積(付着面積率)を算出し、以下の基準により評価を行った。
◎ : 付着面積率が98%以上であった。
〇 : 付着面積率が70%以上、98%未満であった。
× : 付着面積率が70%未満であった。
【0088】
本明細書において、油面適性に優れた水性防錆塗料組成物とは、上記の油面付着性評価Aにおいて評価結果が◎、及び○であるものを指し、また、上記の油面付着性評価Bにおいて評価結果が◎、及び○であるものは、更に優れた油面適性を有する水性防錆塗料組成物であることを意味する。
【0089】
< 塗膜硬度評価 >
JIS K 5400−1959に準拠した具体的な測定方法を説明する(特開2009−255549号公報参照)。まず、スォードロッカーを水平な面に置き、垂直軸が該水平面と垂直になるように垂直安定用のオモリで調節する。試験板固定装置に標準ガラス板をセットして、固定し、標準ガラス板の板面に水準器を載せ、縦と横の方向について水平となるように、試験板固定装置の調節足で高さを調節する。垂直軸が調節されたスォードロッカーを試験板(標準ガラス板)の上に載せ、スォードロッカーに転がり運動を与えてから風よけを被せ、風よけの外部から水準器の状態を観察する。スォードロッカーの水準器Bのアワが水準器Bのオオイの陰に隠れて初めて見えなくなった時を0(スタート)と数える。その後、転がり運動1往復ごとにカウント数を1ずつ加え、水準器Cのアワが水準器Cのオオイの陰に隠れて初めて見えなくなるまで、カウントし、この値をスォードロッカー値とする。
標準ガラス板のスォードロッカー値は50であるので、5回の測定でスォードロッカー値が50±1になるように、水準器B,Cそれぞれの傾きを調整する。また、50±1往復に要する時間が60±5秒になるように、周期調整用オモリの垂直位置を調整する。次に、試験板を標準メタクリルメチル板(ポリメチルメタクリレート)に変え、スォードロッカー値が、5個とも20±1になるように、水準器B,Cのそれぞれの傾きを調整する。これを繰り返して、両標準板でそれぞれの測定値が上記基準を満たしたとき、水準器B,Cを固定する。なお、雰囲気温度は20〜23℃、湿度は20〜40%RHとする。試験板を、スォードロッカー値を測定すべき試料へと変更し、上記と同様の方法で、スォードロッカー値を測定する。同一の試料を5つ用意し(n=5)、それぞれについてスォードロッカー値を測定し、5個のスォードロッカー値のうち大きい方から3個についての平均を求め、それを最終値とする。この最終値が、対象試料のスォードロッカー値であり、これを2倍した値が塗膜硬度となる。
なお、測定用試料については、実施例1〜44及び比較例1〜5の水性防錆塗料組成物を、縦150mm、横70mmのガラス板上に、6milのアプリケータで塗布して作製した。
◎:塗膜硬度12以上
○+:塗膜硬度7以上11以下
○:塗膜硬度3以上6以下
×:塗膜硬度3未満
【0090】
<防錆性評価>
水性防錆塗料組成物に関してJIS K 5674の7.12において規定されたサイクル腐食性(サイクルD)の試験方法に則って防錆性の評価を行った。
○:36サイクルでd)評価及び判定に記載の基準に合格した。
×:36サイクルでd)評価及び判定に記載の基準に不合格であった。
【0091】
<ホルムアルデヒド放散量評価>
水性防錆塗料組成物に関してJIS K5600−4−1:2012において規定された測定方法に則ってホルムアルデヒド放散量の測定値を求めた。
○:ホルムアルデヒド放散量が0.12mg/L以下
×:ホルムアルデヒド放散量が0.12mg/Lを超える
【0092】
<初期耐水性評価>
上記防錆性評価と同様の方法で作製した試験板を、23℃・50%RHの雰囲気下に8時間静置して乾燥した後、試験板の下半分を23℃の水道水に24時間浸せきし、取り出した試験板の外観をただちに観察し、以下の基準により初期耐水性の評価を行った。
◎ : 浸せき部の塗膜に膨れがなく、非浸せき部と比較して目視で色相の差がなかった。
○ : 浸せき部の塗膜に膨れはないが、非浸せき部との色相の差が明確であった。
× : 浸せき部の塗膜に膨れが認められた。
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】