(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0011]以下の「発明を実施するための形態」は本質的に単に例示であり、本発明を限定することならびに本発明の用途および使用を限定することを意図されない。本文献を通して見られる「例示」という用語は「例」という用語と同義であり、またこの「例示」という用語は、以下の説明が本発明の複数の非限定の例を単に提供するものであり、特許請求の範囲の記載される本発明の範囲を限定するものとして一切解釈されるべきではない、ことを強調するために以下で繰り返し利用される。
【0009】
[0012]以下では、比較的コンパクトであり、軽量であり、高いエネルキー効率を有し、デザインによって拡大縮小可能である、球状運動量制御(SMC)装置の実施形態を説明する。「球状(spherical)」という用語によって示されるように、SMC装置の実施形態が、慣性質量またはロータを収容する概略球状のキャビティを含み、この慣性質量またはロータが、キャビティの実質的に中心点を横断する直交軸を中心として回転させられ得る。「球状運動量制御装置」または「SMC装置」という記述で見られる「球状」という用語は、後で詳細に説明される、このキャビティの概略幾何形状、および、ハウジング組立体の内部とロータ支持軸との間に形成される対応する球面支承インターフェースの概略幾何形状を指すのに利用される。したがって、本文献の特許請求の範囲のセクションで特徴または構成要素が曖昧さを残さず明確に「球状」として説明されない限りにおいて、上で言及した記述で見られる「球状」という用語は、SMC装置の任意の他の特徴または構成要素を限定するものとしてみなされるべきではない。SMC装置のロータ、および、SMC装置は、一般に、いくつかの実施形態において概略球状の形状要素(form factor)を有してよいが、すべての実施形態において球状の幾何形状を有することが必要というわけではない。
【0010】
[0013]SMC装置が、概略球状のキャビティの壁と、ロータを設置するところのロータ支持軸との間に形成される球面支承インターフェースを有する。ロータ支持軸が、さらに、両側にある拡大終端部分または「ポーラーエンドキャップ」を有することができ、その間を細長いシャフトが延在する。ポーラーエンドキャップがロータ支持軸の長手方向軸に沿ってロータを越えて延在してよく、その結果、ロータの外側表面とキャビティ壁との間に円周方向の隙間または放射状の障害物が設けられる。特定の実施形態では、ポーラーエンドキャップが外側球状キャップ表面を有することができ、この外側球状キャップ表面が、球状キャビティの境界を画定するハウジング組立体の内部に接触し、それによりハウジング組立体との面支承インターフェースを形成する。この場合、球状キャビティの内部および/またはポーラーエンドキャップが、例えば、連続層または戦略的に配置される隆起パッド(raised pad)として存在する低摩擦材料で被覆され得る。別法として、回転要素ベアリングがポーラーエンドキャップに接触するようにハウジング組立体の内部に埋め込まれてもよく、または逆に、ハウジング組立体の内部に接触するようにポーラーエンドキャップ内に埋め込まれてもよい。さらに別の実施形態では、いくらかのトレードオフまたは不利が生じるが、磁気ベアリングおよびエアベアリングなどのアクティブベアリングシステムを含めた、他の支承インターフェースが、直交軸を中心としたロータ支持軸の回転を促進するのに利用され得る。
【0011】
[0014]球面支承インターフェースを実装するための具体的な手法に関係なく、ロータ支持軸のシャフトと周囲のロータとの間に第2の支承インターフェースがさらに設けられる。1つまたは複数のスピンベアリング(例えば、回転要素ベアリング)がこのインターフェースのところに設けられてよく、それにより、ロータ支持軸の周りでロータを低摩擦で回転させることが可能となる。SMC装置の動作中、電磁駆動システムがスピン軸を中心としたロータの回転を駆動する。ロータ支持軸は、ロータの回転と共にスピン軸を中心として回転しても回転しなくてもよい。最終的に高効率のローラ支持システムまたはロータサスペンションシステムが得られ、これが、摩擦損失を極端に低くしてスピン軸を中心としてロータを高速で回転させることおよび電磁駆動システムにより定期的に駆動することを可能にする。さらに、ロータ支持軸の向き(および、ひいてはロータおよびスピン軸の向きが)が正確に調整され得ることから、ロータの角度方向または回転速度のいずれかを調整することにより3次元空間内の任意の所与の方向におけるホスト衛星(host satellite)(または、他の乗り物)の適切な姿勢調整が実施され得る。3次元空間内での任意の方向での高度に制御されるトルクの出力を可能にするSMC装置の能力により、低減される数(例えば、1つまたは2つ)の運動量制御装置を含む姿勢調整システムを作ることが可能となる。このような姿勢調整システムは、一般に3つから4つのリアクションホイール組立体(RWA)および制御モーメントジャイロ(CMG)を含む従来の姿勢調整システムと比較して、得られる姿勢制御システムの全体のコスト、重量、エンベロープ(envelope)および複雑さを大幅に低減するのを可能にし得る。
【0012】
[0015]
図1および2は、本発明の例示の実施形態に従って示される、SMC装置10のそれぞれ等角図および部分分解図である。SMC装置10はさらに、装置10の中心を横断する垂直な断面に沿う形で、
図3および4の断面図にも示される。SMC装置10は、比較的コンパクトであり、軽量であり、拡大縮小可能であり、高いエネルギー効率を有するデザインであることを特徴とし、したがって、小型衛星または「SmallSat」の機内に配備されるのに良好に適する。したがって、以下では、主に小型衛星に関連させてSMC装置10を説明する。しかし、SMC装置10(および、本明細書で説明される他のSMC装置)が任意の特定の用途および使用法のみに限定されないことを強調しておく。SMC装置10は、代わりに、サイズに関係なくまたそのような乗り物が宇宙空間で操作されるものであるかどうかに関係なく、多様な異なる種類の乗り物の機内に配備され得、さらには、乗り物ではない(non−vehicular)用途およびプラットフォームでも利用され得る。
【0013】
[0016]
図1〜4をまとめて参照すると、SMC装置10が、概略球状のキャビティ14を取り囲むハウジング組立体12を有する。ロータ16およびロータ支持軸18が概略球状のキャビティ14内に含まれる。ロータ16がロータ支持軸18に設置され、スピン軸20(
図2および3)を中心としてロータ支持軸18を基準として回転することができる。加えて、ロータ16およびロータ支持軸18の両方が、
図3および4において座標の凡例24によって示されるX軸、Y軸およびZ軸に一致する3つの直交軸を中心として回転することができる。3つの直交軸(X軸、Y軸およびZ軸)は概略球状のキャビティ14の実質的に中心点を横断し、この中心点も
図3に示される記号22によって示されている(ロータ16の質量中心とも表される)。ロータ16およびロータ支持軸18が、スピン軸20に非平行である軸を中心として一体に回転する。特定の事例では、ロータ16がスピン軸20を中心としてロータ支持軸18と一体に回転してもよい。しかし、しばしば、ロータ支持軸18はロータ16より低い速度でスピン軸20を中心として回転する場合もあり、または、ロータ16が通常は軸20を中心として回転しない場合もあり、これは、SMC装置10の設計パラメータおよび動作パラメータによって決定される。
【0014】
[0017]
図1〜4に示される比較的単純な実施例では、ハウジング組立体12が上側半球半体26および下側半球半体28を有する。ハウジング組立体12の半体26、28が一体に接合されて概略球状のシェルを形成し、この概略球状のシェルがロータ16およびロータ支持軸18を取り囲む。シェル半体26、28が、概略球状のキャビティ14の境界を画定するかまたは概略球状のキャビティ14を画定するように組み合わされる内側キャビティ壁30を有する。シェル半体26、28は、このように概略球状のキャビティ14を画定するように、一体にボルト留めされ得るか、クランプされ得るか、または、他の形で取り付けられ得る。SMC装置10が組み立てられるときに概略球状のキャビティ14が密閉されるような実施形態では、ハウジング組立体12が、1つまたは複数の示されない密閉要素(例えば、ガスケットまたはOリング)と、地球上での試験のためにキャビティ14内に真空を引き入れるのを可能にする真空ポートとをさらに有することができるが、このような必要性はすべての実施形態に当てはまるわけではない。上で示したように、示される実施例ではハウジング組立体12は非常に単純に示されている。別の実施形態では、ハウジング組立体12は、取付具、溶接、ねじ式の取り付け、および、他の接合技術、の任意の組み合わせを利用して一体に接合される追加のまたは代替の構成要素を有してもよい。SMC装置10の実際の実装形態では、ハウジング組立体12は、宇宙船設置インターフェース(spacecraft mounting interface)(例えば、ハウジング組立体12の中央部分の周りに延在するボルト孔を備える円周方向フランジ)およびワイヤリングハーネスなどの、示されない多様な他の構成要素を有してもよく、通常はそのような構成要素を有することになる。
【0015】
[0018](i)ロータ16がキャビティ14のエンベロープ内に嵌合されること、および、(ii)ロータ16がエネルギーを蓄積する慣性要素として十分に機能すること、を条件として、ロータ16は任意の幾何形状および構造を有することができる。しかし、一般には、ロータの全体質量を基準とした、その動作速度範囲においてロータ16の運動量発生能力を最適化することが望ましい。これは、静止するハウジング組立体12(具体的には、キャビティ壁30)と高速でスピンするロータとの間での接触を起こさないようにしながらキャビティの寸法および製造公差が許容するのと同程度にロータ16の実質的部分または大部分をスピン軸20から離して配置することにより、達成され得る。これに関連して、
図3および4に示されるように、ロータ16は、有益には、径方向に厚みの増した幾何形状を有する中間セクション領域または赤道領域32を有する。3次元で見る場合、厚みの増した赤道領域32は、フライホイールとして効果的に機能する環状構造である。ロータ16は、赤道領域32に加えて、ロータ支持軸18に対してロータ16を位置合わせする内側管状コア34を有し、例えば、この管状コア34はそこを通る長手方向チャネルを有することができ、ロータ支持軸18のシャフトがその長手方向チャネルを通って延在する。赤道領域32を内側管状コア34に物理的に接続するための接合部分36がさらに設けられる。示される実施例では、接合部分36が球状シェルの形態をとり、その結果、ロータ16が実質的に球状の外側の幾何形状40を有するようになる。したがって、以下では接合部分36を「ロータシェル部分36」と称するが、他の実施形態では、ロータシェル部分36が、赤道領域32を管状コア34に接合するのに適する異なる形態を有してもよく、これは、径方向に延在するウェブまたはディスク形状のウェブなどである。
【0016】
[0019]上で示したように、赤道領域32は、ロータ16の質量−運動量変換能力(mass−to−momentum capability)を最適化するために比較的薄い壁のロータシェル部分36と比較して径方向に厚みの増した幾何形状を有するように作られる。このようにして、ロータの質量のかなりの部分をロータの中間セクションの周りに集中させることができ、具体的には、運動量を蓄積する(momentum−storing)フライホイールとして機能する赤道領域32内に集中させることができる。加えて、所望される場合、ロータの質量をさらに低減するために、1つまたは複数の空隙または開口部がロータ16の中にまたはロータ16を通るように形成され得、例えば、
図3および4に示されるように、環状空隙38がロータ16の中かつスピン軸20の周りに設けられてよい。ロータ16は任意の数の構成要素から作られてよく、
図1〜4に示される実施形態では、環状空隙38を取り囲むように溶接されるかまたは他の形で接合される2つ以上の構成要素から作られ得る。ロータ16の構成要素は、しばしば、鋼などの金属または合金から作られる(しかし、必ずというわけではない)。別の実装形態では、ロータ16が、カーボン繊維複合材などの複合材料から作られる、ロータ中間セクションの周りに添着される補助リムを有することができる。
【0017】
[0020]ロータ16は、後で説明する磁気駆動システムとの磁気相互作用を可能にするような形で外側表面40に跨って分布される交互の磁気極性を有する領域を有するように製造される。
図2でグラフィック42により示されるように、また、
図3に概略的に示されるように、交互のN極およびS極を有する領域が環状バンドとして配置され得、ロータ16の中間セクションの周りに延在する。これは、例えば、ロータ16のボディ内に、永久磁石、および可能性として磁極片などの他の強磁性構造を埋め込むことにより、達成され得る。円周方向のアレイまたは環状のグループとしてU形または馬蹄形の磁石44がロータ16のボディ内に埋め込まれ得るという1つの手法を示している
図4の断面図を例えば考察する。見られるように、各磁石44が、そのそれぞれのN極およびS極を隣り合う磁石44のN極およびS極にそれぞれ隣接させるように、配置される。追加の利点として、厚みの増した赤道領域32の中に磁石44を配置することで、ロータ16の中央平面の周りに質量を集中させるのをさらに補助することになる。別の実施形態では、例えばロータ16の外側表面の全体に跨って変化する磁気極性の別個の領域を作るために、他のロケーションにおいてロータ16内に追加の永久磁石が埋め込まれ得る。さらに別の可能性として、ロータ16は、例えばロータ16を強磁性材料から作り、ゴルフボールの窪んだ表面とある程度同様の手法で外側ロータ表面40内に凹部または「窪み」を設けることにより、ロータ16のボディに跨って可変磁気抵抗のポイントを設けるように、設計され得る。
【0018】
[0021]
図1に示されるように、SMC装置10が、ロータ16およびロータ支持軸18の移動を磁気的に制御する電磁駆動システム46をさらに有する。SMC装置10の動作中、制御装置54が、概略球状のキャビティ14の周りに分布される電磁石のアレイを選択的に励磁し、それにより、スピン軸20を中心としたロータ16のスピン速度を制御し、さらには、概略球状のキャビティ14内でのロータ16およびロータ支持軸18の角度方向を制御する。特定の事例では、電磁駆動システム46がさらに、スピン軸20を中心としたロータ支持軸18のスピン速度を直接に制御することができる。電磁駆動システム46が、これらの機能を行うのに適する、動力源、電磁石、センサ、温度管理デバイス、および、配線系統のアーキテクチャ、の任意の組み合わせを有することができる。示される実施例では、電磁駆動システム46が3つの制御リング構造48、50、52(
図1、3および4に示される)を有する。これらは後での段落でより完全に説明される。電磁駆動システム46が制御装置54および動力源56をさらに有し、これらの両方が
図1に概略的に示されている。制御装置54は、任意の適切な数の、個別の、マイクロプロセッサ、ナビゲーション装置、メモリ、動力供給源、ストレージデバイス、インターフェースカード、および、当技術分野で既知の他の標準的な構成要素、を利用して実装され得る。加えて、制御装置54が、本明細書で説明される、種々の方法、処理タスク、計算、および、制御機能を実行するように設計される任意の数のソフトウェアプログラムまたは命令を有することができるかまたはそれらと協働することができる。
【0019】
[0022]制御リング構造48、50、52が相互に直交する関係で概略球状のキャビティ14の周りに配置される。
図3および4に最も明瞭に示されるように、各制御リング構造48、50、52が電磁石58の環状のグループまたは円周方向のアレイを含み、これらの電磁石58が周囲のリングボディ60内に埋め込まれるかまたは収容される。各制御リング構造48、50、52のリングボディ60は、電磁石58をそれらの所望の位置で保持するのに適する任意の環状の固定具または構造であってよい。例えば、特定の実施形態では、制御リング構造48、50、52のリングボディ60の各々が射出成形されるリングを備えることができ、その中に電磁石58が埋め込まれる。配線系統(部分的にのみ示される)が電磁石58から制御装置54まで延在してよく、さらに動力源56に接続される。電磁石58は、すべての必要なロータ回転角度に跨るようにロータの移動を動的に駆動するのに適する多様な異なるステータ巻き付け技術に従って巻き付けられてよい。電磁石アレイの配置およびデザインは代替的実施形態では変化してよく、例えば、電磁石の球状アレイが概略球状のキャビティ14の実質的に全体の周りに分布されてよく、それを囲んでよい。SMC装置の動作中、制御装置54が、ロータ16のスピン速度、ロータ16の角度方向、および、ロータ支持軸18の角度方向を制御するような形で励振磁界のタイミングおよびロケーションを制御するために電磁石58を適切に励磁する。ロータまたは慣性質量の回転を電磁気的に駆動するための制御スキームは一般的な意味では既知であり、本文献の恩恵を受ける当業者によるSMC装置10内での使用法に適合するとして認識される。選択される電磁石58とロータ16との間の磁気相互作用が
図4の磁束線のグラフィック62により限定的な説明的な意味で示されている。
【0020】
[0023]
図1〜4を継続して参照すると、
図2および3に最も明瞭に示されるように、ローラ支持心棒18が2つのポーラーエンドキャップ66、68の間を延在してそこで終端する細長いロータシャフト64を有する。ポーラーエンドキャップ66、68がロータシャフト64の両端部に添着され、それらと共に一体に形成されてよい。ポーラーエンドキャップ66、68がロータシャフト64を基準として拡大される放射状の幾何形状を有し、その結果、エンドキャップ66、68が径方向においてロータシャフト64を越えて延在することになる。ロータ支持軸18はロータ支持軸18の長手方向軸に対して垂直である中線平面(midline plane)を中心として横方向に実質的に左右対称であってよく、心棒の各半体が実質的に茸形状の断面幾何形状を有する。ロータ支持軸18は複数の部片(例えば、シャフトとエンドキャップとのインターフェースのところに茸の形状の断面幾何形状を有する2つの半体)から作られてよく、SMC装置10の製造中にこれらの複数の部片がねじ式に取り付けられるかまたは別の形で接合されて心棒18を作り、後で説明するスピンベアリングの位置を定める。加えて、特定の実施形態では、ロータ支持軸18が磁化され得、その結果、ポーラーエンドキャップ66、68が、電磁駆動システム46との磁気相互作用のさらに別の可能性を実現するように互いに反対の磁気極性を有するようになる。
【0021】
[0024]球面支承インターフェースがポーラーエンドキャップ66、68とハウジング組立体12の内側キャビティ壁30との間に設けられる。球面支承インターフェースは、キャビティ14の実質的に中心点を横切る3つの直交軸(座標の凡例24で示されるX軸、Y軸およびZ軸)を中心としたロータ支持軸18(および、ひいてはロータ16)の移動を制限するような、概略球状の幾何形状を有する任意の種類の支承インターフェースであってよい。加えて、球面支承インターフェースは、理想的には、その角度的な可動範囲(ROM:Range of Motion)の全体にわたってロータ支持軸18をしっかり支持し、一方で、支持心棒18とキャビティ壁30との間のインターフェースを比較的低摩擦にする。ロータ16は望ましくは球面支承インターフェースから窪んでおり、それにより、ハウジング組立体12と高速でスピンするロータとが望まれずに接触することが回避される。したがって、ロータ16は、望ましくは、外側ロータ表面40とハウジング組立体12の内側キャビティ壁30との間に放射状の隙間または円周方向の障害物を設けるように、寸法決定される。したがって、ロータ支持軸18は、スピン軸20に沿う最大長さ(L
AXLE)を有することができ(
図3で両方向の矢印70によって示される)、対して、ロータ16が、L
AXLEより小さい最大外径(D
ROTOR;
図3で両方向の矢印72によって示される)を有する。さらに、ロータ支持軸18の長さが概略球状のキャビティ14の内径(D
CAVITY)とほぼ等しいがそれよりわずかに小さくなるように寸法決定され、その結果、D
CAVITY>L
AXLE>D
ROTORとなる。
【0022】
[0025]球面支承インターフェースに沿う摩擦を最小にするために、
図2および3に示されるように、多数の回転要素ベアリング74がポーラーエンドキャップ66、68内に埋め込まれ得る。回転要素ベアリング74が、概略球状のキャビティ14を画定する内側キャビティ壁30に接触するようにポーラーエンドキャップ66、68から外側に突出する。この事例では、内側キャビティ壁30に実質的に滑らかな表面が与えられ、これが3次元的外側レースとして機能し、その上をベアリング74の回転要素が移動することができる。回転要素ベアリング74は示される実施例ではシングルポイントボールベアリングであるが、宇宙空間で使用されるように適合され(SMC装置10が宇宙船の機内に配備される場合)、ポーラーエンドキャップ66、68に一体化される特殊なボール状伝達ユニット(ball transfer unit)として一般にみなされてよい。各回転要素ベアリング74が単一の球状回転要素またはボールを含むことができ、これがポーラーエンドキャップ66、68内に形成されるポケットまたはキャビティ内で捕捉される。回転要素ベアリング74が、スピン軸20を中心として軸対称であるアレイとして、ポーラーエンドキャップ66、68の外側面に跨って分布され、それにより、概略球状のキャビティ14内での心棒18の角度方向に関係なくロータ支持軸18を均等に支持する。言い換えると、回転要素ベアリング74はロータ支持軸18(具体的には、ポーラーエンドキャップ66、68の外側面)内に埋め込まれ、概略球状のキャビティ14を画定するハウジング組立体12の内部部分に接触するようにローラ支持心棒18から外側に突出する。別の実施形態では、回転要素ベアリング74が、ポーラーエンドキャップ66、68の周りに分布される1つまたは複数のリングとして構成される円筒形ローラなどの、別の種類の回転要素を含むことができる。このような実施形態では、ローラは、概略球状のキャビティ14の内側表面の半径に適合するように丸みをつけられてよい。
【0023】
[0026]スピン軸20を中心としたロータ16の回転を促進するために、ロータ支持軸18とロータ16との間に第2の支承インターフェースがさらに設けられる。例えば、
図3に示されるように、第1の精密なスピンベアリング76がロータシャフト64の第1の端部部分の周りの、ポーラーエンドキャップ66に隣接するロケーションのところに配置され得、対して、第2の精密なスピンベアリング78がロータシャフト64の第2の反対側の端部部分の周りの、ポーラーエンドキャップ68に隣接するロケーションのところに配置され得る。ロータ16は凹部88を有するように形成され、その中でスピンベアリング76、78が対合可能に受けられる。したがって、示される実施例では、スピンベアリング76、78がロータ16内に埋め込まれるかまたはロータ16内で窪んでよいが、このような必要性はすべての実施形態に当てはまるわけではない。スピンベアリング76、78は、ロータ16とロータ支持軸18との間に低摩擦回転インターフェースを提供するように選択される。スピンベアリング76、78は、各々が、環状外側リング80およびカップ形状内側リング82を有する環状ボールベアリングの形態をとる。「外側」および「内側」という用語は概略球状のキャビティ14の中心を基準として定義される。スピンベアリング76、78が、リング80、82の間で捕捉される複数の回転要素84(例えば、ボール)をさらに有する。スピンベアリング76、78が保持ナット86を利用してロータシャフト64の周りで固定され得、この保持ナット86がロータシャフト64にねじ式に係合され得、ベアリング76、78の全体に所望の軸方向予荷重を作用させるように締められ得る。スピンベアリング76、78は、ローラ16のその角度的なROMの全体にわたっての押しつけ支持を強化するためにテーパ状のレースが与えられ得る(つまり、ベアリング76、78がテーパ状のレースのボールベアリング(tapered race ball bearing)であってよい)。別の実施形態では、スピンベアリング76、78がローラーベアリングなどの別の種類の回転要素ベアリングであってもよい。
【0024】
[0027]ロータ支持軸18とロータ16との間のインターフェースのところに精密なスピンベアリングを設けることにより、および/または、静止するハウジング組立体12とロータ16との間に連続するように結合される2つの回転インターフェースを設けることにより、摩擦損失を非常に低減してロータの回転が開始および維持され得る。したがって、SMC装置10が、定期的に電磁気的に駆動することのみで(電磁駆動システム46の静止モードで行われ得る)、したがって消費動力を最小にして、長時間にわたってロータ16の高速回転を支持することができる。このように、SMC装置10は高エネルギー効率の運動量制御装置を提供し、これは、例えば数週間または数年間のスケールのミッション期間といったような長期間のミッションに取り組むことになる小型衛星の機内に配備され得る。加えて、キャビティ壁30とポーラーエンドキャップ66、68との間の物理的インターフェースおよびロータ支持軸18とロータ16との間の物理的インターフェースがロータ16をしっかりと構造的に支持する。これにより、ロータ16とハウジング組立体12とを物理的に接触させることなく、SMC装置10が大きい磁気的な過渡的荷重に耐えることが可能となる。対照的に、電磁サスペンションシステムを利用する運動量制御装置は摩擦損失を非常に低くすること(実質的にゼロにすること)を達成し得るが、通常、電磁気的なロータのサスペンションを高い信頼性で維持するためには多量の消費動力を必要とし、動力供給の一時的中断の被害を受けやすく、また一般に、スピンするロータと静止するハウジングの内部とを物理的に接触させることなく大きい磁気的な過渡的荷重に耐えることができない。最後に、高エネルギー効率であることに加えて、SMC装置10はさらに、比較的コンパクトであり、軽量であり、容易に拡大縮小可能である。
【0025】
[0028]SMC装置10の上述の実施形態では、回転要素ベアリングが、ハウジング組立体の内部に接触して球面支承インターフェースに沿う摩擦損失を低減するように、ポーラーエンドキャップ内に埋め込まれる。別の実施形態では、球面支承インターフェースが、キャビティ壁内に埋め込まれてロータ支持軸のポーラーエンドキャップに接触するポイントベアリングなどの、他の種類の回転要素ベアリングを有することができるか、または、他のロケーションに配置される回転要素ベアリングを有することができる。さらにこの点を説明すると、
図5が代替的実施形態のSMC装置10’の部分断面図であり、ここでは、同様の構造的特徴を示すのに同様の参照符号が利用されるが、これらの特徴がある程度変化している可能性があることを示すためにプライム(’)記号が追加されている。
図5に示される実施形態では、回転要素ベアリング90が概略球状のキャビティ14’の内部の周りに選択的に配置され(例えば、キャビティ14’と同心の球状アレイとして)、それにより、いわゆる「点在型(studded)」のキャビティインターフェースを形成する。
図2および3に関連させて上で説明した回転要素ベアリング74と同様に、回転要素ベアリング90は特殊なボール状伝達ユニットと実質的に同様であるシングルポイントボールベアリングであってよいが、これは宇宙空間で使用されるように適合され、ハウジング組立体12に一体化される。回転要素ベアリング90のボールがハウジング組立体12’の内部(具体的には、キャビティ壁30’の中)に埋め込まれ、ロータ支持軸18に接触するようにキャビティ14’の中へと径方向に突出する。回転要素ベアリング90は概略球状のキャビティ14’の内部の周りに戦略的に配置され、SMC装置10’の構成要素は、ロータ支持軸18’の任意の所与の角度位置において、心棒18’を物理的に支持するために回転要素ベアリング90のサブセットをポーラーエンドキャップ66’、68’に接触させるように、寸法決定される。ポーラーエンドキャップ66’、68’が、3次元の内側レースウェイとして効果的に機能するためのやはり滑らかな球状キャップの幾何形状(例えば、キャビティ14’の一部分に各々が実質的に適合する外側表面の幾何形状)を与えられ、概略球状のキャビティ14’内のロータ支持軸18’の角度方向を変更されるかまたは調整されるときにベアリング90がその内側レースウェイに沿って移動する。言い換えると、回転要素ベアリング90の球状アレイが内側キャビティ壁30’の周りに分布されて概略球状のキャビティ14’の中へと内側に突出し、ポーラーエンドキャップ66’、68’の外側球状キャップ表面に係合され、それにより球面支承インターフェースを形成する。
【0026】
[0029]別の実施形態では、球面支承インターフェースが他の形態をとることができるかまたは追加の構造的特徴を有することができる。例えば、ポーラーエンドキャップが外側球状キャップ表面を有することができ、この外側球状キャップ表面が球状キャビティを画定するハウジング組立体の内部に接触し、それによりハウジング組立体と共に面支承インターフェースを形成する。本明細書で見られる「面支承」という用語は、2つ以上の摺動表面の間に低摩擦インターフェースが形成されことを示し、支承インターフェースの幾何形状が平面であることを意味しない。例えば、SMC装置10”の別の実施形態を示している
図6を考察する。ここでは、同様の構造的特徴を示すのに同様の参照符号が利用されるが、これらの特徴がある程度変化している可能性があることを示すためにダブルプライム(”)記号が追加されている。
図6の実施形態では、ポーラーエンドキャップ66”、68”がやはり実質的に滑らかな球状キャップの幾何形状を与えられる。加えて、ハウジング組立体12”の内部表面(具体的には、内側キャビティ壁30”)に実質的に滑らかな球状の幾何形状が与えられ、それにより、ロータ16”およびスピン軸20”の向きを変更するためにロータ支持軸18”の角度方向を調整するときに、キャビティ壁30”に対してのまたはキャビティ壁30”に沿うポーラーキャップ66”、68”の摺動移動を促進する。摩擦損失をさらに低減するために、1つまたは複数の層の低摩擦材料92がポーラーエンドキャップ66”、68”の外側球状キャップ表面の上に付着され得る。加えてまたは別法として、1つまたは複数の層の低摩擦材料94が、概略球状のキャビティ14”を画定するハウジング組立体12”の内部表面の上に付着され得る。付着される低摩擦材料は、SMC装置10”の動作中に摩擦損失を低減しながらポーラーエンドキャップ66”、68”を物理的に支持するような形で、連続層(例えば、
図6に示される材料層92のところで示される)として形成され得るかまたは隆起パッド(例えば、材料層94のところで示される)として別個に分布され得、あるいは、球面支承インターフェースに沿って他の形で分布される。
【0027】
[0030]このように、比較的コンパクトであり、軽量であり、拡大縮小可能であり、消費動力の観点で高いエネルギー効率を有する、SMC装置の複数の実施形態を提示してきた。上述のSMC装置の実施形態は、ロータ支持軸またはスピン軸を中心とした慣性質量またはロータの高速回転を促進するような高効率の低摩擦損失アーキテクチャを特徴とし、これが、3次元空間内で任意の所望される向きへと選択的に正確に調整され得る。このように、スピンするロータの回転方向を選択的に調整することによりおよび/またはロータの回転速度を選択的に調整することにより、ホスト衛星(または、他の乗り物)の所望される姿勢調整が実現され得る。3次元空間内の任意の方向でのトルクの出力を可能にするSMC装置の能力により、低減される数の装置を含む姿勢調整システムを作ることが可能となる。結果として、3つから4つのCMGまたはRWAを含む従来の姿勢調整システムと比較して、姿勢調整システムの全体のコスト、重量、複雑さおよびエンベロープを大幅に低減するのを可能にするような、単一のSMC装置または対をなすSMC装置(冗長性のために)を利用する姿勢調整システムが作られ得る。
【0028】
[0031]上記の「発明を実施するための形態」では複数の例示の実施形態を提示してきたが、多数の変形形態が存在することを認識されたい。また、例示の実施形態が単に例であり、本発明の範囲、利用可能性または構成を限定することを一切意図されないことを認識されたい。むしろ、上記の「発明を実施するための形態」は、本発明の例示の実施形態を実装するための好都合なロードマップを当業者に提供するものである。添付の特許請求に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、例示の実施形態で説明される要素の機能および構成において種々の変更が行われ得ることを理解されたい。
以下は、本出願の出願当初の本発明の各種形態である。
(形態1) 中心点を有する概略球状のキャビティ(14)を含むハウジング組立体(12)と、
前記概略球状のキャビティ内に配置されるロータ支持軸(18)と、
前記ロータ支持軸と前記ハウジング組立体との間に形成される球面支承インターフェースであって、前記球面支承インターフェースが、前記概略球状のキャビティの実質的に前記中心点を横断する3つの直交軸を中心として回転するように前記ロータ支持軸の移動を制限する、球面支承インターフェースと、
前記ロータ支持軸に設置されてスピン軸(20)を中心として前記ロータ支持軸に関して回転可能であるロータ(16)とを備える、球状運動量制御装置(10)。
(形態2) 形態1に記載の球状運動量制御装置(10)において、
前記ロータ支持軸(18)が、
両端部を有するシャフト(64)と、
前記シャフトの前記両端部に結合され、前記球面支承インターフェースに沿って前記ハウジング組立体(12)に係合されるポーラーエンドキャップ(66、68)とを備える、球状運動量制御装置(10)。
(形態3) 形態1に記載の球状運動量制御装置(10)において、
前記ロータ(16)が管状コア(34)を備え、前記ロータ支持軸(18)が前記管状コア(34)を通って延在し、前記球状運動量制御装置が、前記管状コアの端部部分と前記ロータ支持軸の端部部分との間に配置される第1のスピンベアリング(76、78)をさらに備える、球状運動量制御装置(10)。