特許第6896522号(P6896522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロードの特許一覧

特許6896522エッチング方法およびプラズマエッチング用材料
<>
  • 特許6896522-エッチング方法およびプラズマエッチング用材料 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896522
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】エッチング方法およびプラズマエッチング用材料
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   H01L21/302 105A
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-125070(P2017-125070)
(22)【出願日】2017年6月27日
(65)【公開番号】特開2019-9335(P2019-9335A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】占部 継一郎
(72)【発明者】
【氏名】沈 鵬
(72)【発明者】
【氏名】徐 志宇
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン スタフォード
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−39277(JP,A)
【文献】 特開平9−181054(JP,A)
【文献】 特開2006−128245(JP,A)
【文献】 特開2017−50529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化炭化水素を含むガスと、Cを含むガスとをプラズマ反応チャンバー内に導入し、前記プラズマ反応チャンバー内でプラズマにより活性種を形成させてSi含有材料のエッチングを行うことを特徴とする、エッチング方法。
【請求項2】
前記Si含有材料が、シリコン、窒化シリコン、アモルファスカーボン、ドープドアモルファスカーボン、金属窒化物、金属酸化物、有機フォトレジストおよび金属よりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第1膜と、SiO、SiON、SiOC、SiOH、およびSiOCHよりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第2膜とを有し、
前記Si含有材料のうち前記第2膜を選択的に除去することを特徴とする、請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化炭化水素が下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエッチング方法。
・・・・・(1)
(上記一般式(1)中、aは1以上5以下であり、bは1以上9以下であり、cは0以上4以下であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子よりなる群から選択される1種のハロゲン原子である。)
【請求項4】
前記ハロゲン化炭化水素が、CF、CFI、CI,CI、CI、C、C、C、C、C、C、C、CHF、CHF、CH、CHF、CHF、C、C、CHFおよびCよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化炭化水素が、CおよびCよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記プラズマ反応チャンバー内に不活性ガスをさらに導入する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記不活性ガスが、N、He、Ar、Ne、KrおよびXeよりなる群から選択される少なくとも1種のガスを含むことを特徴とする、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記プラズマ反応チャンバー内に酸化性ガスをさらに導入する、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記酸化性ガスは、O、O、CO、CO、NO、NO、NOF、SOまたはCOSよりなる群から選択される少なくとも1種のガスを含むことを特徴とする、請求項8に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記Si含有材料が0.5:1〜20:1の深さ対幅のアスペクト比の凹部を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記Si含有材料が21:1〜300:1の深さ対幅のアスペクト比の凹部を有することを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項12】
前記Cの純度が99.9重量%以上100重量%未満であり、かつ、含酸素不純物が0重量ppm以上100重量ppm以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項13】
前記含酸素不純物としてHOを含み、前記HOの含有量が0.1重量ppb以上20重量ppm以下であることを特徴とする、請求項12に記載のエッチング方法。
【請求項14】
前記含酸素不純物としてトリフルオロ酢酸を含み、前記トリフルオロ酢酸の含有量が0.1重量ppb以上20重量ppm以下であることを特徴とする、請求項12または請求項13に記載のエッチング方法。
【請求項15】
前記Cは、前記プラズマ反応チャンバー内に導入される前に、表面粗度が0〜6ミクロンである内表面を有する金属製容器に収納されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載のエッチング方法。
【請求項16】
およびハロゲン化炭化水素を含み、
前記ハロゲン化炭化水素は、CF、CFI、C3I,CI、CI、C、C、C、C、C、C、C、CHF、CHF、CH、CHF、CHF、C、C、CHFおよびCよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、プラズマエッチング用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法およびプラズマエッチング用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン酸化物含有膜を選択的にエッチングする工程は、集積回路(IC)、マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)、光学素子等の製造工程において広く用いられるプロセス工程である。
【0003】
窒化ケイ素、フォトレジスト等のような材料に対して、例えばシリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜等を選択的にプラズマエッチングする材料として種々のフルオロカーボンガスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、選択性の高いエッチングを実行するため、分子内に酸素原子を有するオキシフルオロカーボンガスも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015−533029号公報
【特許文献2】特開2005−39277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示される方法では、フルオロカーボンガスは酸素ガス等の酸化剤と共に使用されることにより、凹部(例えばトレンチやホール)の底部および側壁へフルオロカーボン系ポリマーを形成しながらエッチングをすることができる。該方法によれば、酸化剤の導入量を制御することにより、凹部の側壁に堆積するフルオロカーボンポリマーの厚みを制御し、側壁を保護しながら垂直方向にエッチングすることができる。しかしながら、フルオロカーボンガスと酸化剤は分子量、分子径の異なる別個の分子であるため、フルオロカーボンガスと酸化剤の両方を所望の濃度で凹部の底部まで均一に導入することは困難であった。従って、特に高アスペクト比の凹部において選択的エッチングを実現することは困難であった。
【0006】
上記特許文献2に開示されるエッチング方法では、オキシフルオロカーボン系のガスの使用が提案されている。しかしながら、特許文献2に開示されているオキシフルオロカーボンガスは分子内の酸素原子数が2個以下であり、十分なエッチング速度を確保するためには追加的な酸化剤の導入が必要となる。従って、オキシフルオロカーボンと、該オキシフルオロカーボンとは分子量・分子径の異なる別個の分子である酸化剤の両方を所望の濃度で凹部の底部まで均一に導入することは困難であった。さらに、該方法ではエッチングは実行できるものの、凹部の側壁へのポリマー堆積は起こらないか、あるいは堆積量が少なく、凹部や基板へのダメージを与える恐れがある。その結果、エッチング対象ではないマスク材料とエッチング対象材料とのエッチングの選択性は低くなる傾向にある。
【0007】
このため、シリコン酸化物含有膜のエッチング速度が速く、かつ、選択的にシリコン酸化物含有膜をエッチングできるエッチング方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、シリコン酸化物含有膜を選択的にエッチングするため、オキシフルオロカーボン系ガスおよびハロゲン化炭化水素を使用するプラズマエッチング方法を見出した
【0009】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
本明細書中で使用する場合、「エッチング」という用語は、イオン衝撃によって化学反応を垂直方向に促進させることで、マスクされた構造の縁に沿って基板に対して直角に垂直側壁を形成する、プラズマエッチングプロセス(すなわち、乾式エッチングプロセス)を指す(Manos and Flamm, Plasma Etching An Introduction, Academic Press, Inc. 1989 pp.12-13)。エッチングプロセスは、基板に、ビア、トレンチ、チャネルホール、ゲートトレンチ、ステアケースコンタクト、コンデンサホール、コンタクトホール等、もしくはそれらを組み合わせた構造を有する開口部を作製する。本明細書中で前記開口部は凹部ともいう。
【0011】
「選択性」という用語は、或る材料のエッチング速度と、別の材料のエッチング速度との比率を意味する。「選択性エッチング」又は「選択的にエッチングする」という用語は、2つの材料間に1:1よりも大きいか又は小さいエッチング選択性を有することを意味する。
【0012】
「付着係数」という用語は、膜表面に到達した分子のうち、化学吸着および/または物理吸着されるものの割合を意味する。付着係数は膜の表面状態、付着する分子の性質により変化する。一般的には分子量が大きく分子径が大きい分子の方が、付着係数が小さい傾向にある。
【0013】
明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、それらの適切な化学量論比を考慮することなく、SiN及びSiO等のSi含有膜が挙げられることに留意されたい。ケイ素含有膜としては、結晶Si、ポリシリコン(ポリSi又は多結晶Si)、又はアモルファスシリコン等の純シリコン(Si)膜;窒化ケイ素(Si)膜;若しくは酸化ケイ素(Si)膜;又はそれらの混合物を挙げることができ、式中、k、l、m及びnは包含的に1〜6の範囲をとる。好ましくは、窒化ケイ素がSi(式中、k及びlはそれぞれ0.5〜1.5の範囲をとる)である。より好ましくは、窒化ケイ素がSiである。好ましくは、酸化ケイ素がSi(式中、nは0.5〜1.5の範囲をとり、mは1.5〜3.5の範囲をとる)である。より好ましくは、酸化ケイ素がSiO又はSiOである。ケイ素含有膜はまた、酸化ケイ素ベースの誘電体材料、例えば、SKW Associates, Inc.によるBlack Diamond II材料又はBlack Diamond III材料等の有機物ベース又は酸化ケイ素ベースのLow−k誘電体材料とすることができる。ケイ素含有膜はまた、B、C、P、As及び/又はGe等のドーパントを含んでいてもよい。アモルファスカーボン含有膜はまた、金属元素、B、P、As及び/又はGe等のドーパントを含んでいてもよい。
【0014】
[適用例1]
本発明に係るエッチング方法の一態様は、
ハロゲン化炭化水素を含むガスと、無水トリフルオロ酢酸(C)を含むガスとをプラズマ反応チャンバー内に導入し、前記プラズマ反応チャンバー内でプラズマにより活性種を形成させてSi含有材料のエッチングを行うことを特徴とする。
【0015】
かかる適用例によれば、ハロゲン化炭化水素を含むガスと、Cを含むガスとがプラズマ反応チャンバー内で混合され、精度の高いエッチングが実行できる。またCの一分子内には3個の酸素原子が含まれることから、酸化剤を追加することなくマスク材料に対してエッチング対象材料を選択的にエッチングできる。さらに、主にハロ
ゲン化炭化水素の効果により凹部側壁にフルオロカーボンポリマーの堆積を制御したエッチングが実行可能となり、Si含有材料基板に対して垂直方向に精度の高いエッチングが実行できる。
【0016】
ハロゲン化炭化水素を含むガスとCを含むガスとの流量比は特に限定されず、ハロゲン化炭化水素としてCを使用する場合には、例えば9:1〜7:3とすることができ、好ましくは9:1〜8:2とすることができる。本明細書において「流量比」とは、単位時間当たりの体積流量の比率である。
【0017】
[適用例2]
適用例1のエッチング方法において、
前記Si含有材料は、SiN、アモルファスカーボン、炭素以外の元素をドーピングしたアモルファスカーボン、Si、金属窒化物、金属酸化物、有機フォトレジストおよび金属よりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第1膜と、SiO、SiON、SiOC、SiOH、およびSiOCHよりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第2膜とを有し、
前記Si含有材料のうち前記第2膜を選択的に除去することができる。
【0018】
[適用例3]
適用例1または適用例2のエッチング方法において、
前記ハロゲン化炭化水素が下記一般式(1)で表わされる化合物であることができる。
・・・・・(1)
(上記一般式(1)中、aは1以上5以下であり、bは1以上9以下であり、cは0以上4以下であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子よりなる群から選択される1種のハロゲン原子である。)
【0019】
aは好ましくは3以上5以下であり、bは好ましくは1以上9以下であり、cは好ましくは2以上3以下であり、Xは好ましくはフッ素原子および/またはヨウ素原子である。
【0020】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例のエッチング方法において、
前記ハロゲン化炭化水素が、CF、CFI、CI、CI、CI、C、C、C、C、C、C、C、CHF、CHF、CH、CHF、CHF、C、C、CHFおよびCよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことができる。
【0021】
かかる適用例によれば、ハロゲン化炭化水素が分子内にフッ素原子を含むことから、エッチング対象であるSiO、SiON、SiOC、SiOH、およびSiOCHよりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第2膜との反応により揮発性のSiFが形成され、より効率的にエッチングを実行することができる。さらに、ハロゲン化炭化水素が分子内に炭素原子を含むことから、エッチング対象中の酸素原子を揮発性の炭素酸素化合物(CO、CO等)の発生により除去することができる。
【0022】
[適用例5]
適用例1ないし適用例3のいずれか1例のエッチング方法において、
前記ハロゲン化炭化水素が、CおよびCよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことができる。
【0023】
かかる適用例によれば、プラズマ励起により発生するハロゲン化炭化水素およびC
の活性種は、付着係数が低く、エッチング対象であるSi含有材料に形成された凹部の底部まで到達することができる。従って、前記凹部の底部まで均一、高精度にエッチングすることができる。
【0024】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか1例のエッチング方法において、
前記プラズマ反応チャンバー内に不活性ガスをさらに導入することができる。
【0025】
かかる適用例によれば、プラズマ安定性が高まり、プラズマ条件の制御が容易になる。
【0026】
[適用例7]
適用例6のエッチング方法において、
前記不活性ガスが、N、He、Ar、Ne、KrおよびXeよりなる群から選択される少なくとも1種のガスを含むことができる。
【0027】
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか1例のエッチング方法において、
前記プラズマ反応チャンバー内に酸化性ガスをさらに導入することができる。
【0028】
[適用例9]
適用例8のエッチング方法において、
前記酸化性ガスは、O、O、CO、CO、NO、NO、NOF、SOまたはCOSよりなる群から選択される少なくとも1種のガスを含むことができる。
【0029】
かかる適用例によれば、エッチング対象であるSi含有材料に形成された凹部に堆積されるポリマーの厚みをより精密に制御し、エッチングを制御することができる。
【0030】
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか1例のエッチング方法において、
前記Si含有材料が0.5:1〜20:1の深さ対幅のアスペクト比の凹部を有することができる。
【0031】
[適用例11]
適用例1ないし適用例9のいずれか1例のエッチング方法において、
前記Si含有材料が21:1〜300:1の深さ対幅のアスペクト比の凹部を有することができる。
【0032】
適用例10および11によれば、フルオロカーボンガスと酸化剤とを導入する場合と比較して、プラズマ反応チャンバー内に導入される所定ガス流量あたりのハロゲン原子含有量が多くなる。すなわち、フルオロカーボンガスと酸化剤とをそれぞれ導入する場合よりも、分子内に酸素原子を有する無水トリフルオロ酢酸(C)とハロゲン化炭化水素を導入する方が、導入されるガス全体量に占めるハロゲン原子量が多くなる。単位流量あたりのハロゲン原子含有量が多いことにより、エッチング速度が速くなる。また本適用例ではエッチングの選択性も高いことから、特にアスペクト比の大きい、比較的深い凹部のエッチングに特に好適である。高速かつ高精度のエッチングを実行できる点においては、アスペクト比が比較的小さく、浅い凹部のエッチングにも好適である。
【0033】
[適用例12]
適用例1ないし適用例11のいずれか1例のエッチング方法において、
前記Cの純度が99.9重量%以上100重量%未満であり、かつ、含酸素
不純物が0重量ppm以上100重量ppm以下であることができる。
【0034】
[適用例13]
適用例12のエッチング方法において、
前記含酸素不純物としてHOを含み、前記HOの含有量が0.1重量ppb以上20重量ppm以下であることができる。
【0035】
かかる適用例によれば、含酸素不純物含有量(特にHO含有量)が少ないことから、Cの分解反応が抑制され、Cの分解に伴うエッチング性能の低下を低減させることができる。
【0036】
[適用例14]
適用例12または適用例13のエッチング方法において、
前記含酸素不純物としてトリフルオロ酢酸を含み、前記トリフルオロ酢酸の含有量が0.1重量ppb以上20重量ppm以下であることができる。
【0037】
かかる適用例によれば、トリフルオロ酢酸が有する水素原子によりマスク材料(特にSiN)がエッチングされて、エッチングの選択性が低下する現象を抑制することができる。さらに、本適用例では含酸素不純物含有量(特にHO含有量)が少ないことから、Cの分解反応が抑制され、Cの分解に伴うエッチング性能の低下も低減させることができる。
【0038】
[適用例15]
適用例1ないし適用例14のいずれか1例のエッチング方法において、
前記Cは、前記プラズマ反応チャンバー内に導入される前に、表面粗度が0〜6ミクロンである内表面を有する金属製容器に収納されることができる。表面粗度は原子間力顕微鏡(AFM)またはレーザー顕微鏡により測定することができる。
【0039】
かかる適用例によれば、容器内表面に付着した不純物がプラズマチャンバー内に供給されるCに混入する恐れが少ない。また容器内表面に付着した不純物に起因するCの分解、および分解に伴うトリフルオロ酢酸の発生を低減することができる。これによりエッチング性能の低下を抑制できる。
【0040】
[適用例16]
本発明に係るプラズマエッチング用材料の一態様は、
およびハロゲン化炭化水素を含み、
前記ハロゲン化炭化水素は、CF、CFI、CI、CI、CI、C、C、C、C、C、C、C、CHF、CHF、CH、CHF、CHF、C、C、CHFおよびCよりなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする。
【0041】
かかる適用例によれば、ハロゲン化炭化水素を含むガスと、Cを含むガスとがプラズマ反応チャンバー内で混合されることにより、精度の高いエッチングが実行できる。またCの分子内には酸素原子が含まれることから、マスク材料に対してエッチング対象材料を選択的にエッチングできる。さらにエッチング対象であるSi含有材料に形成された凹部側壁にフルオロカーボンポリマーを堆積させながらエッチングを実行することから、Si含有材料基板に対して垂直方向に精度の高いエッチングが実行できる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係るエッチング方法によれば、ハロゲン化炭化水素を含むガスと、Cを含むガスとがプラズマ反応チャンバー内で均一に混合され、エッチング速度が速く、精度の高いエッチングが実行できる。またCの分子内には酸素原子が含まれることから、酸化性ガスを導入しない条件においてもマスク材料に対してエッチング対象材料を選択的にエッチングできる。さらに凹部側壁にフルオロカーボンポリマーを堆積させながらエッチングを実行することから、Si含有材料基板に対して垂直方向に精度の高いエッチングが実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本実施形態で好適に用いられるエッチング装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に記載された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
【0045】
1.エッチング方法
本実施形態に係るエッチング方法は、ハロゲン化炭化水素を含むガスと、Cを含むガスとをプラズマ反応チャンバー内に導入し、前記プラズマ反応チャンバー内でプラズマにより活性種を形成させてSi含有材料のエッチングを行う方法である。また、本実施形態に係るエッチング方法では、前記プラズマ反応チャンバー内に不活性ガスをさらに導入してもよく、前記プラズマ反応チャンバー内に酸化性ガスをさらに導入してもよい。ハロゲン化炭化水素を含むガス、Cを含むガス、不活性ガスおよび酸化性ガスは、プラズマ反応チャンバー導入前に混合されてもよく、プラズマ反応チャンバー内で混合されてもよい。
【0046】
以下、本実施形態に係るエッチング方法について説明する。
【0047】
1.1.ハロゲン化炭化水素を含むガスおよびCを含むガスによるエッチング方法
本実施形態に係るエッチング方法は、Si含有材料のエッチングに使用することができる。ここでSi含有材料は、被エッチング処理体であるが、該被エッチング処理体と比較的エッチングされにくい材料(例えばマスク材料)との組み合わせであってもよい。被エッチング処理体であるSi含有材料としては、ケイ素原子を含む材料であれば特に限定されず、ケイ素原子および酸素原子を含む材料(例えばシリコン酸化物含有膜)であってもよい。ケイ素原子および酸素原子を含む材料は、シリコン窒化物、アモルファスカーボン、ドープドアモルファスカーボン、Si、金属窒化物、金属酸化物、有機フォトレジストおよび金属よりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第1膜により一部が被覆されていてもよい。ケイ素原子および酸素原子を含む材料は、SiO、SiON、SiOC、SiOH、およびSiOCHよりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第2膜であってもよい。被エッチング処理体がシリコン酸化物である場合、第1膜としてはSiN、アモルファスカーボンおよび/またはポリシリコンが特に好適である。
【0048】
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係るエッチング方法について説明する。図1は、本実施形態で好適に用いられる装置の概略構成図である。
【0049】
まず、図1に示すように、Si含有材料である被エッチング処理体11をプラズマ反応チャンバー21内に収容する。Si含有材料は、用途によって異なるが、第1膜および第2膜を含むことができる。第1膜の具体例としては、SiN、アモルファスカーボン、ド
ープドアモルファスカーボン、Si、金属窒化物、金属酸化物、有機フォトレジスト、金属またはこれらの材料のあらゆる組み合わせを含む材料が挙げられるが、これらに限定されない。第2膜の具体例としては、ケイ素原子および酸素原子を含む材料が挙げられる。ケイ素原子および酸素原子を含む材料としては、SiO、SiON、SiOC、SiOH、SiOCHまたはこれらの材料のあらゆる組み合わせを含む材料が挙げられるが、これらに限定されない。これらの被エッチング処理体11は、第2膜で一部が被覆されていてもよい。被エッチング処理体11は、被エッチング処理体ホルダー12上に配置することができる。プラズマ反応チャンバー21内には、エッチング処理を行うための被エッチング処理体を1〜200個程度収容することができる。
【0050】
このとき、真空ポンプ45と圧力調整機構22により、プラズマ反応チャンバー21内の圧力を所定の圧力とし、温度調節機構23によりプラズマ反応チャンバー21内の温度を所定の温度とする。圧力調整機構22には背圧弁または圧力調整弁を用いることができるが、これらに限定されない。温度調節機構23には、循環式冷却装置(チラー)や電気ヒーターによる温度調節機構を用いることができるが、これに限定されない。
【0051】
プラズマ反応チャンバー21内の温度は、温度調節機構23により−20℃以上200℃以下の範囲の温度に設定することができる。プラズマ反応チャンバー21内の被エッチング処理体11の温度の下限値は好ましくは−20℃であり、より好ましくは0℃である。プラズマ反応チャンバー21内の被エッチング処理体11の温度の上限値は好ましくは150℃であり、より好ましくは100℃である。
【0052】
プラズマ反応チャンバー21内の圧力の下限値は、好ましくは0.1mTorrであり、より好ましくは1mTorrであり、さらに好ましくは10mTorrである。プラズマ反応チャンバー21内の圧力の上限値は、好ましくは1000Torrであり、より好ましくは100Torrであり、さらに好ましくは1Torrである。
【0053】
プラズマ反応チャンバー21は、例えばステンレススチール製や、表面被覆されたステンレススチール製とすることができるが、これに限定されない。
【0054】
続いて、ハロゲン化炭化水素を含むガスとCを含むガスとをプラズマ反応チャンバー21内に導入する。図1に示すように、ハロゲン化炭化水素を含むガスの容器31から、ハロゲン化炭化水素を含むガスの流量調節機構32を介して供給されるガスと、Cを含むガスの容器33からCを含むガスの流量調整機構34を介して供給されるガスとが、プラズマ反応チャンバー21の上流側で合流してからプラズマ反応チャンバー21に導入することもできる。ハロゲン化炭化水素を含むガスとCを含むガスとが流量調節機構32および34からそれぞれプラズマ反応チャンバー21に導入され、プラズマ反応チャンバー21内で混合されてもよい。
【0055】
ハロゲン化炭化水素を含むガスとCを含むガスとの流量比は、ハロゲン化炭化水素の種類および特性、エッチング対象材料の特性により異なる。ハロゲン化炭化水素としてCを使用する場合には、ハロゲン化炭化水素を含むガスとCを含むガスの流量比は例えば9:1〜7:3であり、好ましくは9:1〜8:2である。本明細書において流量比とは単位時間当たりの体積流量の比率である。
【0056】
この際、ハロゲン化炭化水素を含むガスおよび/またはCを含むガスは、ガス状態または液体状態でプラズマ反応チャンバー21内に導入することができる。ガス状態で導入する場合には、容器31および/または容器33から直接に蒸気を導出する方法、容器31および/または容器33内の材料の液滴をヒーター上に滴下し、発生した蒸気を導入するダイレクトインジェクション方法、または容器31にキャリアガスを導入して
バブリングによりハロゲン化炭化水素の蒸気を同伴させて導入する方法が好適に用いられるが、これらに限定されない。バブリングするために導入するキャリアガスとしては、Ar、He、N、およびそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。ハロゲン化炭化水素を含むガスおよび/またはCを含むガスを液体状態で導入する場合には、プラズマ反応チャンバー21内に液滴を滴下し蒸発させる方法が好適に用いられる。流量調整機構32はハロゲン化炭化水素を含むガスの性状、特性等に応じて、流量調整機構34はCを含むガスの性状、特性等に応じて、マスフローコントローラ、可変リークバルブ、または液体流量計を使用することができるが、これらに限定されない。
【0057】
プラズマ反応チャンバー21内に導入されるハロゲン化炭化水素を含むガスの流量は、流量調整機構32により、例えば0.1SCCM〜2000SCCMの範囲内のガス流量または液体流量とする。プラズマ反応チャンバー21内に導入されるCを含むガスの流量は、流量調整機構34により、例えば0.1SCCM〜2000SCCMの範囲内のガス流量または液体流量とする。前記流量はプラズマ反応チャンバー21の容量、被エッチング処理体の個数、ハロゲン化炭化水素および/またはCを含むガスの性状等に応じて変更することができる。
【0058】
プラズマ反応チャンバー21内にハロゲン化炭化水素を含むガスおよび/またはCを含むガスを導入する時間は、プラズマ反応チャンバー21の容量、被封孔処理体の個数、ガスの性状等に応じて変更することができ、例えば5秒から60分の範囲とすることができる。
【0059】
ハロゲン化炭化水素は、下記一般式(1)で表わされる化合物であることが好ましい。
・・・・・(1)
(上記一般式(1)中、aは1以上5以下であり、bは1以上9以下であり、cは0以上4以下であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子よりなる群から選択される1種のハロゲン原子である。aは好ましくは3以上5以下であり、bは好ましくは1以上9以下であり、cは好ましくは2以上3以下であり、Xは好ましくはフッ素原子および/またはヨウ素原子である。)
【0060】
ハロゲン化炭化水素の具体例としては、CF、CFI、CI,CI、CI、C、C、C、C、C、C、C、CHF、CHF、CH、CHF、CHF、C、C、CHFおよびC等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。ハロゲン化炭化水素とCの分子量および/または分子径が近似する場合には、さらに均一なエッチングが行われやすく、より好適である。
【0061】
プラズマ反応チャンバー21内では、プラズマにより活性種を形成させてSi含有材料のエッチングを行う。プラズマ反応チャンバー21内に導入されたハロゲン化炭化水素およびCを含む混合ガスは、プラズマにより活性種を形成する。プラズマは、RF電力またはDC電力を印加することによって発生させることができる。プラズマは、25W〜20000Wの範囲を取るRF電力で発生させることができる。プラズマは、プラズマ反応チャンバー21内部で発生するかまたは存在する。プラズマはまた、RF電力を両電極に印加してデュアルCCPで発生してもよく、ICPモードで発生してもよい。プラズマのRF周波数は、200kHz〜1GHzの範囲とすることができる。異なる周波数の種々のRF電源を、同じ電極で連結して利用することもできる。さらに、プラズマRFパルス化を使用してプラズマエッチング反応を制御することもできる。
【0062】
1.2.不活性ガスの導入
プラズマを維持するために、プラズマ反応チャンバー21内に不活性ガスをさらに導入することができる。不活性ガスは、He、N、Ar、Xe、Kr、Neまたはそれらの組み合わせとすることができる。ハロゲン化炭化水素、Cおよび不活性ガスは、プラズマ反応チャンバー21に導入する前に混合してもよい。ハロゲン化炭化水素、Cおよび不活性ガスは、プラズマ反応チャンバー21に別個に導入された後、プラズマ反応チャンバー21内で混合されてもよい。ハロゲン化炭化水素およびCガスをプラズマ反応チャンバー21に断続的に導入しながら、不活性ガスをプラズマ反応チャンバー21に連続的に導入してもよい。導入する不活性ガス量は、ハロゲン化炭化水素、Cおよび不活性ガスの合計量の0%v/v〜99.5%v/vとすることが好ましく、10%v/v〜99%v/vとすることがより好ましく、50%v/v〜95%v/vとすることが特に好ましい。プラズマを安定に発生させ、プラズマ反応チャンバー21内で活性種を発生させるためには、Arガスが特に好適である。
【0063】
1.3.酸化性ガスの導入
プラズマ反応チャンバー21内に酸化性ガスをさらに導入することもできる。本発明においては、Cの分子内に3個の酸素原子が含まれるため、酸化性ガスを導入しなくてもエッチングを実施することができる。しかし、より精密にエッチングを制御するために、酸化性ガスを導入してもよい。酸化性ガスとしては、O、O、CO、CO、NO、NO、NOF、SOまたはCOSよりなる群から選択される少なくとも1種のガスおよびこれらの組み合わせを使用することができる。ハロゲン化炭化水素、Cおよび酸化性ガスは、プラズマ反応チャンバー21に導入する前に混合してもよい。酸化性ガスを、ハロゲン化炭化水素およびCとは別に、プラズマ反応チャンバー21に導入してもよい。ハロゲン化炭化水素およびCガスをプラズマ反応チャンバー21に断続的に導入しながら、酸化性ガスをプラズマ反応チャンバー21に連続的に導入してもよい。導入する酸化性ガス量は、ハロゲン化炭化水素、Cおよび酸化性ガスの合計量の0%v/v〜100%v/vとすることができる(100%とは、連続的な導入ではなく、酸化性ガス以外のガスと純粋な酸化性ガスを交互に導入するような場合をいう。例えばハロゲン化炭化水素およびCを混合して一定時間導入した後に、ハロゲン化炭化水素およびCの供給を停止して、100%v/vの酸化性ガスを導入する工程を繰り返すような場合である)。
【0064】
本実施形態に係るエッチング方法によれば、シリコン含有材料の表面にポリマー膜を形成して保護する機能を有するハロゲン化炭化水素を含むガスと、シリコン含有材料の表面をエッチングする機能を有するCを含むガスとが、プラズマ反応チャンバー内で均一に混合されるので、エッチング速度が速く、かつ、精度の高いエッチングが実行できる。また、エッチング対象であるSi含有材料に形成された凹部をエッチングする場合には、該凹部の側壁を保護しながら、該凹部の底部をより選択的にエッチングすることができる。かかるエッチング方法は、酸素等の酸化性ガスを導入することなく実施することができるため、Si含有材料の凹部をエッチングするにあたり、エッチングを実行する部位に均一な組成比の活性種を供給することができる。従って均一性の高いエッチングを実行することができる。酸化性ガスを導入した場合には、さらに高精度に制御されたエッチングを実施することもできる。
【0065】
1.4.Cの純度
は、その製造工程に起因する不純物としてトリフルオロ酢酸を含有することがある。また、Cは、含酸素不純物により分解されやすく、分解生成物としてトリフルオロ酢酸が生成することもある。さらにプラズマ条件下においては、これらの酸化性物質である含酸素不純物も励起され、水素・水酸化ラジカルを発生し、プロセス上不要な酸化還元反応を引き起こすという問題がある。よって、Cの純度は99.9重量%以上100重量%未満であることが好ましい。特に含酸素不純物はエッチング
性能低下に及ぼす影響が大きいことから、含酸素不純物含有量は0重量ppm以上100重量ppm以下であることが好ましい。含酸素不純物含有量の上限値は100重量ppmであることが好ましいが、50重量ppmであることがより好ましく、5重量ppmであることが特に好ましい。
【0066】
含酸素不純物の中でも、HOは特に反応性が高い上、Cの充填工程、充填容器、供給配管からの混入可能性があり、HO含有量を制御することはエッチング性能を制御する上で重要である。よって、C中のHO含有量は、0.1重量ppb以上20重量ppm以下であることが好ましい。C中のHO含有量の上限値は20重量ppmであることが好ましいが、1重量ppmであることがより好ましく、100重量ppbであることが特に好ましい。
【0067】
また、C中にHOが含有すると、トリフルオロ酢酸が発生しやすい。トリフルオロ酢酸もHOと同様にエッチング性能を低下させる。さらにトリフルオロ酢酸はSiNをエッチングするため、エッチングの選択性を低下させる。このため、C中のトリフルオロ酢酸は0.1重量ppb以上20重量ppm以下であることが好ましい。C中のトリフルオロ酢酸含有量の上限値は20重量ppmであることが好ましいが、1重量ppmであることがより好ましく、100重量ppbであることが特に好ましい。
【0068】
上記のように純度が高く、含酸素不純物量(特にHO含有量およびトリフルオロ酢酸)の少ないCを使用すれば、選択性が高く、高性能なエッチングを実行することができる。
【0069】
1.5.Cの供給容器および容器内面処理
本実施形態に係るエッチング方法において、C中の不純物を低減させるため、Cはプラズマ反応チャンバー内に導入される前には、表面粗度が0〜6ミクロンである内表面を有する金属製容器に収納されることが好ましい。表面粗度が0〜6ミクロンである内表面を有する金属製容器は、容器洗浄後の乾燥工程において内表面に残留する水分が除去されやすい。従って容器内水分濃度が低い状態でCを充填することができ、水分含有量の低いCをプラズマ反応チャンバー内に供給することができる。
【0070】
表面粗度が0〜6ミクロンである内表面を有する金属製容器を作成するためには、金属製容器の内部を、例えば防錆剤を含む研磨剤で湿式研磨する。金属製容器としては、特に限定されず、ステンレススチール製、マンガン鋼製、またはクロムモリブデン製であってもよい。湿式研磨では、金属製容器の内表面の表面粗度が6ミクロン以下になるようにすることが好ましい。研磨剤としては、特に限定されずセラミックス製研磨剤、アルミナ含有セラミックス製研磨剤、シリカアルミナ研磨剤またはこれらの組み合わせを使用しても良い。研磨剤は1種類のみを用いてもよいが、第1研磨剤により研磨した後に、組成の異なる第2研磨剤により研磨すると、さらに効果的である。第2研磨剤による研磨は複数回実施してもよい。研磨剤は1〜50g程度を水1リットルに懸濁させて使用することができ、例えば第1研磨剤は水1リットルに対して5〜10g程度、第2研磨剤は水1リットルに対して10〜20g使用することができるが、これに限定されない。第1研磨剤としてセラミックス製研磨剤を使用し、第2研磨剤としてアルミナ含有セラミックス製研磨剤を使用することが好ましいが、これに限られず任意の研磨剤を使用することができる。
【0071】
研磨後に金属製容器を洗浄し、乾燥する。洗浄は水洗浄(特に純水洗浄)のみでもよいが、酸洗浄を行った後に水洗浄を行うとより効果的である。水洗浄には、球状アルミナシリカを懸濁させた水を使用することもできる。酸洗浄にはクエン酸二アンモニウム、リン酸
二水素ナトリウム、二リン酸水素ナトリウムの少なくとも1種からなるものであれば好ましく、中でもクエン酸二アンモニウムが特に好ましい。クエン酸二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、二リン酸水素ナトリウムの少なくとも1種であれば金属製容器内面の防錆被膜に悪影響を与えにくく、かつ、洗浄作業環境が穏やかであり、酸洗浄液を廃棄する際の中和も容易である。特にクエン酸二アンモニウムであれば、金属原子、リン原子、硫黄原子を含まないため、金属製容器内に充填する材料を汚染する恐れが低く、該材料を使用した成膜工程にも悪影響を与えにくい点で好ましい。乾燥工程は、窒素ガス、乾燥空気等を容器内部に吹き付けることにより実施することができるが、特にこれに限定されず不活性ガスであればよい。ヒーターを用いて金属製容器を加熱し、さらに水分残留量を低減することもできる。
【0072】
以上の湿式研磨工程、洗浄工程、乾燥工程を経ることにより、内表面の表面粗度が0〜6ミクロンである表面粗度の低い金属製容器を得ることができる。表面粗度の低い金属表面には水分が吸着されにくい。よって、表面粗度の低い金属製容器内には水分残留量が少ない。このため表面粗度の低い金属製容器内にCを充填することにより、水分含有量の少ない、高純度のCを貯蔵することができる。高純度のCを使用すれば、高性能のプラズマエッチングを実行することができる。
【0073】
1.6.作用効果
本実施形態に係るエッチング方法によれば、ハロゲン化炭化水素と、Cを含むガスとをプラズマ反応チャンバー内に導入して、プラズマによって活性種を発生させることができる。こうして発生した活性種は、Si含有材料のプラズマエッチングを実行する。特にSiO、SiON、SiOC、SiOH、およびSiOCHに代表されるケイ素原子と酸素原子を有する膜を高いエッチング速度でエッチングすることができる。このため、SiN、アモルファスカーボン、ドープドアモルファスカーボン、Si、金属窒化物、金属酸化物、有機フォトレジストおよび金属よりなる群から選択される少なくとも1種の材料からなる第1膜と、ケイ素原子および酸素原子を含有する第2膜とを有するSi含有材料をエッチングする場合に、高いエッチング速度で、第2膜を選択的に除去することができる。本実施形態に係るエッチング方法では、Si含有材料に形成された凹部をエッチングする場合において、凹部の側壁に堆積するポリマーにより該側壁を保護しながら、高速で凹部の底部のみをエッチングすることができる。また、凹部の底部に供給される活性種の組成比が安定であることから均一なエッチングを実行できる。以上のことから、本実施形態に係るエッチング方法は、高アスペクト比を有する凹部のエッチングにも、低アスペクト比を有する凹部のエッチングにも好適である。
【0074】
また、別実施形態として、不活性ガスを添加してプラズマを安定させ、さらにエッチングの効率を向上させることができる。さらに別の実施形態として酸化性ガスを添加して、より精密にエッチングを制御することもできる。
【0075】
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
2.1.容器内面処理
を含むガスを貯蔵するための金属製容器について、容器内表面処理を行った。容器内表面処理は、湿式研磨工程、洗浄工程、乾燥工程の順に実施された。
【0077】
湿式研磨工程では、複数の金属製容器の内部に研磨剤と防錆剤とを内部に収容した状態で、水平に支持した。次に金属製容器をその軸心周りで右周りに自転させつつ、水平軸芯周りで左周りに公転させる湿式研磨装置に取り付けて湿式研磨を行った。このような湿式
研磨装置によれば、研磨剤は遠心力によって公転軌跡外方側に集中し、その研磨剤に対して金属製容器内面が相対的に回転移動することになる。すると金属製容器内面が研磨剤と接触することで研磨される。研磨剤は1種類のみを用いてもよいが、第1研磨剤により研磨した後に、組成の異なる第2研磨剤により研磨すると、さらに効果的である。第2研磨剤による研磨は複数回実施してもよい。本実施例においては第1研磨剤による研磨後には、金属製容器の内表面の表面粗度は3〜5ミクロン程度であった。第1研磨剤による研磨後に、第2研磨剤による研磨を実施したところ、金属製容器の内表面の表面粗度は1ミクロン程度であった。
【0078】
湿式研磨工程に続く洗浄工程では、研磨工程終了後の金属製容器に球状アルミナシリカ(粒径5mm)と純水を充填し、その軸心周りに回転させる。回転後に金属製容器内に残留する研磨剤及び防錆剤を除去する。次に金属製容器の内面を純水によって洗浄し、前記金属容器内表面に生成した防錆被膜に付着したダストを除去した。さらに酸洗浄液を用いて純水では取り除くことの出来なかったダストをさらに除去した。その後、酸洗浄液が金属製容器内に残留するのを防ぐため、再度純水によって洗浄を行った。
【0079】
洗浄工程に続く乾燥工程では、金属製容器は120℃でベーキングを行った。ベーキングは空気中で行ってもよいが、乾燥窒素ガスでパージしながら行うことにより、さらに残留水分量を低減することができる。
【0080】
以上の処理により得られた金属製容器の内表面の表面粗度は、AFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、表面粗度最大値(Rmax)が3ミクロンであった。
【0081】
<容器内表面処理条件>
・使用した金属製容器:ステンレススチール製、内容量1L、円筒型
・使用した金属製容器の初期の表面粗度:15ミクロン
・使用した第1研磨剤:粒径5mmの球状セラミックス製研磨剤、水1リットルに対して5g
・使用した第2研磨剤:粒径5mmの球状アルミナ含有セラミックス研磨剤、水1リットルに対して15g
・使用した酸洗浄液:0.1%クエン酸二アンモニウム水溶液
・ベーキング条件:窒素ガス流通下、120℃、12時間
【0082】
2.2.C純度
後述の実施例および比較例で用いたCの純度は、下表1に示す通りであった。Cについて純度および不純物含有量を測定した結果を表1に示す。高純度であり、水分およびトリフルオロ酢酸含有量が低いCを後述の実施例1ないし実施例3に使用することにより、高いエッチング性能が得られた。
【0083】
【表1】
【0084】
2.3.エッチング速度の測定
所定の条件下におけるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコン膜およびアモルファスカーボン膜のエッチング速度の測定には、SemiLab社製エリプソメトリー(機種名:SE−2000)、日立製作所社製SEM(機種名:S−5200)を使用した。
【0085】
2.4.エッチングの選択比の測定
所定の条件下におけるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコンおよびアモルファスカーボン膜のエッチング速度を上述の方法により測定し、シリコン酸化膜のエッチング速度を、シリコン窒化膜、ポリシリコンまたはアモルファスカーボン膜のエッチング速度で除した値を選択比とした。
【0086】
2.5.実施例1
図1に示す装置を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコンおよびアモルファスカーボン膜のエッチングを実施した結果を表2および表3に示す。ハロゲン化炭化水素、Cおよび不活性ガスは、それぞれマスフローコントローラにより制御された流量を供給し、プラズマ反応チャンバー導入前に混合した後に、プラズマ反応チャンバー21に導入した。ハロゲン化炭化水素およびCの合計流量は10SCCM,不活性ガスの流量は90SCCMとした。プラズマ反応チャンバー21に導入されたガスはプラズマにより励起される。プラズマ反応チャンバー21内の温度は25℃となるように温度調節機構により調整した。プラズマ反応チャンバー21内の圧力は30mTorrとなるように圧力調整機構により調整した。
【0087】
プラズマ反応チャンバー21には、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜およびポリシリコン膜のうちいずれか一つの膜を有する被エッチング処理体を配置し、それぞれの膜について一定時間、エッチングを行った。エッチング実行後にプラズマ反応チャンバー21内を不活性ガスによりパージした。その後、プラズマ反応チャンバー21内を大気圧にまで復圧し、被エッチング処理体を取出した。取出した被エッチング処理体について、エッチング速度を測定した。
【0088】
エッチング速度の測定は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜およびポリシリコン膜についてはエリプソメトリーによりエッチングされた膜の厚みを測定し、エッチングを実行した時間当たりのエッチング速度を算出した。アモルファスカーボン膜については走査型電子顕微鏡(本明細書において「SEM」ともいう)によりエッチングされた膜の厚みを測定し、エッチングを実行した時間当たりのエッチング速度を算出した。
【0089】
<実施例1の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜、ポリシリコン膜
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン(流量90SCCM)
・ハロゲン化炭化水素:C
・ハロゲン化炭化水素(C)およびCの合計流量:10SCCM(それぞれの流量は表2および表3中に示す)
・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0090】
表2に、ハロゲン化炭化水素(ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン、C)およびCの流量比を変化させた場合における各被エッチング処理体のエッチング速度測定結果を示す。表3に、表2に示した測定結果から算出したエッチングの選択性を示す。エッチングの選択性は、シリコン酸化膜のエッチング速度を、シリコン酸化膜以外の膜のエッチング速度で除した値で表わしている。エッチングの性能は、エッチング速度および選択性の観点から評価される。エッチング速度が速く、選択性が高いエッチングが実行されることが好ましい。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
実施例1では、酸化性ガスを導入しなくともシリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜またはポリシリコン膜と比較してシリコン酸化膜を選択的にエッチングすることができた。特にハロゲン化炭化水素(C)とCの流量比が9:1〜7:3である場合にはエッチング速度が速く、エッチングの選択性が高いことから、エッチング性能が高いという結果が得られた。ハロゲン化炭化水素(C)とCの流量比が9:1〜8:2である場合にはさらにエッチング速度が速いことから、エッチング性能がさらに高い結果が得られた。
【0094】
2.6.実施例2
実施例1と同様に、図1に示す装置を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコンおよびアモルファスカーボン膜のエッチングを実施した結果を表4および表5に示す。ハロゲン化炭化水素とCの合計流量は6.0SCCM、不活性ガスの流量は94SCCMとした。
【0095】
<実施例2の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜、ポリシリコン膜
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン(流量94SCCM)
・ハロゲン化炭化水素:C
・ハロゲン化炭化水素(C)およびCの合計流量:6.0SCCM(それぞれの流量は表4および表5中に示す)
・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0096】
表4に、ハロゲン化炭化水素(C)およびCの流量比を変化させた場合における各被エッチング処理体のエッチング速度測定結果を示す。表5に、表4に示した測定結果から算出したエッチングの選択性を示す。エッチングの選択性は、シリコン酸化膜のエッチング速度を、シリコン酸化膜以外の膜のエッチング速度で除した値で表わしている。エッチング速度が0nm/min未満の場合は、エッチングが実行されずに成膜が実行された場合である。エッチング速度が0nm/min以下の場合については、エッチング選択性の算出は行っていないため、表5中では“−”で示している。
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
実施例2では、実施例1よりも全ガス流量中に占めるハロゲン化炭化水素(C)とCの流量がさらに少ない条件において、酸化性ガスを導入しなくともシリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜またはポリシリコン膜と比較してシリコン酸化膜をさらに選択的にエッチングすることができた。
【0100】
2.7.実施例3
実施例1と同様に、図1に示す装置を用いて、Low−k膜のエッチングを実施した。ハロゲン化炭化水素とCの合計流量は6.0SCCM,不活性ガスの流量は94SCCMとした。
【0101】
<実施例3の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:Low−k膜(SKW Associates, Inc.社より購入のBlack DiamondII(登録商標)膜)
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン(流量94SCCM)
・ハロゲン化炭化水素:C(流量1.5SCCM)
・Cの流量:4.5SCCM
・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0102】
上記条件によりエッチングしたLow−k膜について、XPS(X線光電子分光光度計、Thermo Fisher Scientific社製K−Alpha)を用いてダメージ深さを測定した結果、ダメージ深さは30nmと低い値であった。本明細書において「Low−k膜のダメージ深さ」とは、エッチングを実施した後のLow−k膜中の炭素組成比が、エッチングを実施する前のLow−k膜中の炭素組成比の95%にまで回復した深さをいう。Low−k膜がエッチングによりダメージを受けた場合、Low−k膜中の炭素組成比は減少する。このため、エッチングによるダメージがLow−k膜中のどの深さまで及ぶかは、XPSにより深さ方向にLow−k膜中の炭素組成比を測定することにより確認することができる。
【0103】
エッチングによるLow−k膜へのダメージを評価する別の方法として、Low−k膜のFTIR(赤外分光光度計)による分析をする方法がある。FTIRによるSi−O−Si結合に起因する波数1060cm-1付近の強度と、Si−CH結合に起因する波数1270cm-1付近の強度との比率を求める方法である。Low−k膜へのダメージがある場合には、Si−O−Si結合に起因する波数1060cm-1付近の強度に対す
る、Si−CH結合に起因する波数1270cm-1付近の強度は小さくなる。本実施例では、Si−CH結合に起因する波数1270cm-1付近の強度はエッチング前と比較して、エッチング後には12.9%減少するにとどまり、ダメージが少なかったことが確認できた。
【0104】
実施例1と同様の方法で、上記Low−k膜のエッチング速度を測定した結果、エッチング速度は143nm/minであり、十分に速いエッチング速度を得ることができた。
【0105】
以上のことから、実施例3では、Low−k膜へのダメージが少なく、エッチング速度が十分に速いエッチングを実施できることが確認された。
【0106】
2.8.実施例4
ハロゲン化炭化水素としてCを使用した以外は、実施例1と同様の条件で、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコンおよびアモルファスカーボン膜のエッチングを実施した。その結果、実施例1とほぼ同様の結果が得られ、酸化性ガスを導入しなくてもシリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜またはポリシリコン膜と比較してシリコン酸化膜を選択的にエッチングできることがわかった。
また、ハロゲン化炭化水素としてCを使用した以外は、実施例3と同様の条件で、Low−k膜のエッチングを実施した。その結果、実施例3とほぼ同様の結果が得られ、Low−k膜へのダメージが少なく、エッチング速度が十分に速いエッチングを実施できることが確認された。
【0107】
2.9.比較例1
の代わりに、ハロゲン化炭化水素として広く用いられているCを使用した以外は、実施例1と同様にしてエッチングを行った。図1に示す装置を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコン、およびアモルファスカーボン膜のエッチングを実施した結果を表6および表7に示す。ハロゲン化炭化水素(C)の流量は10SCCM,不活性ガスおよび酸化性ガス(O)の合計流量は90SCCMとした。
【0108】
<比較例1の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜、ポリシリコン膜
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン
・酸化性ガス:酸素
・不活性ガスおよび酸化性ガスの合計流量:90SCCM(それぞれの流量は表8および表9中に示す)
・ハロゲン化炭化水素:C(流量10SCCM)
・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0109】
表6に、不活性ガスおよび酸化性ガスの流量比を変化させた場合における各被エッチング処理体のエッチング速度測定結果を示す。表7に、表6に示した測定結果から算出したエッチングの選択性を示す。エッチングの選択性は、シリコン酸化膜のエッチング速度を、シリコン酸化膜以外の膜のエッチング速度で除した値で表わしている。
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
比較例1では、酸化性ガス(酸素)を導入しない場合および導入量が少ない場合(本比較例においては酸素流量6SCCM以下)にエッチングが全く実行されず、逆に被エッチング対象である膜上に膜が堆積した。酸化性ガス導入量を増加させるとエッチングが実行されるが、エッチング速度および選択性が十分である範囲は少ない。例えば、エッチング速度が600nm/min以上であり、かつ、シリコン酸化膜のエッチング選択性が10以上である範囲は、酸化性ガス導入量が13SCCM〜14SCCMの範囲に限られている。これは高いエッチング性能を得るには、酸化性ガス導入量の調整をしなければならず
、エッチングの制御が困難であることを示している。
【0113】
2.10.比較例2
の代わりに、オキシフルオロカーボンであるパーフルオロヒドロフラン(CO)を使用した結果を表8、表9に示す。酸化性ガスは使用せず、ハロゲン化炭化水素としてCを使用した。実施例1と同様にして、図1に示す装置を用いて、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、ポリシリコンおよびアモルファスカーボン膜のエッチングを実施した。ハロゲン化炭化水素とCOの合計流量は10SCCM、不活性ガスの流量は90SCCMとした。
【0114】
<比較例2の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜、ポリシリコン膜
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン(流量90SCCM)
・ハロゲン化炭化水素:C
・ハロゲン化炭化水素(C)およびCOの合計流量:10SCCM(それぞれの流量は表8および表9中に示す)
・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0115】
表8に、ハロゲン化炭化水素(C)およびCOの流量比を変化させた場合における各被エッチング処理体のエッチング速度測定結果を示す。表9に、表8に示した測定結果から算出したエッチングの選択性を示す。エッチングの選択性は、シリコン酸化膜のエッチング速度を、シリコン酸化膜以外の膜のエッチング速度で除した値で表わしている。
【0116】
【表8】
【0117】
【表9】
【0118】
比較例2では、分子内に酸素ガスを有するCOを使用したにもかかわらず、酸化性ガス(酸素)を導入しない場合にエッチング速度が非常に遅いことが確認された。導入されたオキシフルオロカーボンの分子内の酸素原子数が少ないことが原因と考えられる。
【0119】
2.11.比較例3
前述の実施例1では、ハロゲン化炭化水素であるCと、Cを導入してエッチングを行った結果を示したが、本比較例では同様のエッチングをCを導入しない条件で実施した結果を示す。ハロゲン化炭化水素の流量は0SCCM、Cの流量は6〜10SCCM、不活性ガスの流量は90〜94SCCMとした。それぞれの流量は表10および表11に記載した。
【0120】
<比較例3の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜、ポリシリコン膜
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン(流量90〜94SCCM)
・ハロゲン化炭化水素:なし

・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0121】
表10に、比較例3における各被エッチング処理体のエッチング速度測定結果を示す。表11に、表10に示した測定結果から算出したエッチングの選択性を示す。エッチングの選択性は、シリコン酸化膜のエッチング速度を、シリコン酸化膜以外の膜のエッチング速度で除した値で表わしている。
【0122】
【表10】
【0123】
【表11】
【0124】
比較例3では、Cのみを使用し、ハロゲン化炭化水素を導入しない場合には、ハロゲン化炭化水素を導入した場合と比較してエッチング速度が遅く、選択性も低いことが確認された。ハロゲン化炭化水素(C)との混合により、シリコン酸化膜表面に適切な厚みのフルオロカーボンポリマー膜が形成され、エッチング速度が大きくなる。また、シリコン窒化膜、アモルファスカーボン膜、ポリシリコン膜上には、より厚いポリマーが堆積し、イオン衝撃から保護されることにより、選択性が向上すると考えられる。
【0125】
2.12.比較例4
実施例3と同様に、図1に示す装置を用いて、Low−k膜のエッチングを実施した。ハロゲン化炭化水素であるC(流量は10SCCM)、酸素(流量は13SCCM)、不活性ガス(Ar、流量は77SCCM)を使用した。
【0126】
<比較例4の実験条件>
・プラズマ反応チャンバー:LAMリサーチ社製 4520XLEを使用した。
・温度:25℃
・被エッチング処理体:Low−k膜(SKW Associates, Inc.社より購入のBlack DiamondII(登録商標)膜)
・処理容器内圧力:30mTorr
・不活性ガス:アルゴン(流量77SCCM)
・ハロゲン化炭化水素:C(流量10SCCM)
・酸素:流量13SCCM
・エッチング時間:60秒
・高周波電力:27MHz,750W
・高周波バイアス電力:2MHz,1500W
【0127】
上記条件によりエッチングしたLow−k膜について、実施例4と同様にXPSを用いてダメージ深さを測定した結果、ダメージ深さは57.3nmと実施例4と比較して大きい値であった。
【0128】
上記条件によりエッチングしたLow−k膜について、実施例4と同様にFTIRによ
る分析を行った。その結果、比較例4では、Si−CH結合に起因する波数1270cm-1付近の強度はエッチング前と比較して、エッチング後には24.9%減少した。実施例4では12.9%であったのに対し、本比較例4ではダメージが大きいことが確認できた。
【0129】
実施例4と同様の方法で、上記Low−k膜のエッチング速度を測定した結果、エッチング速度は11nm/minであり、エッチング速度は非常に遅かった。
【0130】
を用いない比較例4では、Low−k膜へのダメージが大きく、エッチング速度が遅いことが確認できた。
【0131】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、昨日、方法、および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0132】
11…被エッチング処理体、12…被エッチング処理体ホルダー、21…プラズマ反応チャンバー、22…圧力調整機構、23…温度調節機構、31…ハロゲン化炭化水素容器、32…ハロゲン化炭化水素流量調整機構、33…C容器、34…C流量調整機構、35…不活性ガス容器、36…不活性ガス流量調整機構、37…酸化性ガス容器、38…酸化性ガス流量調整機構、41…マッチングボックス、42…電極、43…マッチングボックス、44…バイアス電源、45…真空ポンプ、47…プラズマ発生用電源
図1