(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リング状の保持部材と、該保持部材を挟み両側に該保持部材と同心に配設されたリングギアと、前記保持部材の両側に該保持部材と前記リングギアとの間に前記保持部材と同心に配設された回転軸受と、前記リングギアの中央部に該リングギアと一体に設けられた偏向光学部材と、前記リングギアそれぞれに対応して設けられた偏向モータと、該偏向モータの回転力を前記リングギアに伝達する駆動伝達手段と、前記リングギアを該リングギアの回転軸心と平行な方向に付勢する付勢手段とを具備し、前記回転軸受の外輪が前記保持部材、前記リングギアのいずれか一方に形成された外輪嵌合部と嵌合固定され、前記回転軸受の内輪が前記保持部材、前記リングギアのいずれか他方に形成された内輪嵌合部と嵌合固定され、両側の前記リングギアがそれぞれ独立して回転可能に前記保持部材に支持され、前記リングギアが前記付勢手段に付勢された状態で、各偏向モータにより前記リングギアと一体に前記偏向光学部材を独立して回転可能とした偏向装置。
前記保持部材の外周面に支持板が固着され、該支持板は各リングギアの側面と平行に延出する延出部を有し、前記付勢手段は、前記リングギアの側面に固着されたリング状の磁性体部材と、前記延出部の前記磁性体部材と対向する部位に設けられた磁石とからなる請求項1に記載の偏向装置。
前記保持部材の外周面に等角度間隔で複数の支持板が固着され、該支持板は各リングギアの側面と平行に延出する延出部を有し、前記付勢手段は、各延出部に前記保持部材と同心に設けられたリング状の磁性体部材と、前記リングギアの側面の前記磁性体部材と対向する部位に設けられた磁石とからなる請求項1に記載の偏向装置。
前記付勢手段は、各リングギアの周面にそれぞれ外周側に突出する様に設けられたリング状の磁性体部材と、前記保持部材の外周面に前記磁性体部材と対向する様設けられた磁石とからなる請求項1に記載の偏向装置。
前記リングギアの表面に該リングギアと同心の分度盤が設けられ、前記延出部のうちの1つには前記分度盤と対向する部位に測角センサが設けられた請求項2又は請求項3に記載の偏向装置。
前記保持部材の外周面に支持板が固着され、該支持板は各リングギアの側面と平行に延出する延出部を有し、前記リングギアの側面に該リングギアと同心の分度盤が設けられ、前記延出部の前記分度盤と対向する部位に測角センサが設けられた請求項4に記載の偏向装置。
測距光を発する発光素子と、前記測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、前記反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子とを有し、該受光素子からの前記受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を偏向する光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作用及び前記測距部の測距作用を制御する演算制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、請求項1〜請求項6のいずれか1つであり、前記演算制御部は、前記射出方向検出部が検出した偏角に基づき前記測定対象物の水平角、鉛直角を測定し、前記測距部からの距離値及び前記水平角、鉛直角から、前記測定対象物の3次元座標を求める様構成した測量機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0018】
先ず、
図1に於いて、本発明の第1の実施例に係る偏向装置を具備する測量機1について説明する。
【0019】
該測量機1は、支持装置としての三脚2を介して設置される。図中、Oは前記測量機1の光軸を示しており、更に光軸が偏向されていない状態(基準光軸)を示している。又、
図1中、7はターゲット又は測定対象物としてのプリズムを示し、該プリズム7はポール8の所定位置(例えば、下端から既知の距離)に設けられている。
【0020】
前記測量機1は、回転台5を介して前記三脚2に取付けられている。前記回転台5は、レバー6を有し、該レバー6の操作により、前記測量機1を上下方向(鉛直方向)、又は横方向(水平方向)に回転させることができ、又所要の姿勢で固定することも可能となっている。
【0021】
図2により前記測量機1について説明する。
【0022】
該測量機1は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、撮像部14、射出方向検出部15、モータドライバ16、姿勢検出部17、通信部18、演算制御部19、記憶部20、撮像制御部21、画像処理部22、表示部25を具備し、これらは筐体9に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13等は測距部30を構成する。
【0023】
前記測距光射出部11は射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に偏向光学部材としての第1反射鏡29が設けられ、前記受光部12の受光光軸31上に偏向光学部材としての第2反射鏡32が設けられ、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
【0024】
前記発光素子27はパルスレーザ光線を発し、前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測距光23として射出する。
【0025】
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象物(即ち、前記プリズム7)からの反射測距光24が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、上記した様に、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸40とする(
図1参照)。
【0026】
偏向された前記射出光軸26上に、即ち前記受光光軸31上に光軸偏向部35が配設される。該光軸偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部35によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31と合致する。
【0027】
前記光軸偏向部35を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ34が配設され、又受光素子33、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。前記結像レンズ34は、前記反射測距光24を前記受光素子33に結像する。
【0028】
前記測距光射出部11より発せられた前記測距光23は、前記光軸偏向部35によって測定対象物に向って偏向され、前記プリズム7に照射される。
【0029】
該プリズム7で反射された前記反射測距光24は前記光軸偏向部35により前記受光光軸31と合致する様に偏向され、前記受光部12に入射する。
【0030】
前記反射測距光24は前記結像レンズ34によって、前記受光素子33に結像する。該受光素子33は前記反射測距光24を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部13に入力される。該測距演算部13は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
【0031】
前記撮像部14は、前記測量機1の前記基準光軸Oと平行な撮像光軸38を有し、前記光軸偏向部35による最大偏角(例えば±20゜)より大きい画角、例えば50°の画角を有するカメラであり、前記測量機1の測定範囲を含む画像データを取得する。前記撮像光軸38と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとの位置関係は既知となっている。又、前記撮像部14は、静止画像、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0032】
前記撮像部14の撮像素子39は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸38を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
【0033】
前記射出方向検出部15は、前記光軸偏向部35による前記測距光軸40の偏向角、偏向方向を検出し、検出結果は前記演算制御部19に入力する。
【0034】
前記モータドライバ16は、前記演算制御部19からの制御信号に基づき、前記光軸偏向部35の偏向動作を行うモータ(後述)の駆動を行う。
【0035】
前記姿勢検出部17は、前記測量機1(前記筐体9)の水平に対する傾斜を検出し、検出信号を前記演算制御部19に入力する。尚、該姿勢検出部17としては、特許文献4に開示された姿勢検出
装置を使用することができる。
【0036】
前記通信部18は、リモートコントローラ(図示せず)により遠隔操作を行う場合は、リモートコントローラとのデータ通信を可能とするものである。
【0037】
前記記憶部20には、前記撮像部14で取得した画像、前記測距演算部13からの測距データ、前記射出方向検出部15で取得される射出方向のデータ、偏向角のデータ、前記姿勢検出部17で検出される傾斜データ等のデータ類が格納される。
【0038】
又、前記記憶部20には、測定を実行する為の測定シーケンスプログラム、前記光軸偏向部35の射出方向を演算する為のプログラム、前記姿勢検出部17からの傾斜検出結果に基づき測距データを補正する為の補正プログラム等の各種プログラムが格納されている。
【0039】
前記演算制御部19は、前記撮像部14、前記測距部30、前記光軸偏向部35等の作動を制御すると共に前記記憶部20に格納されているプログラムに基づき測距を実行し、画像処理を行い、射出方向の偏角を演算し、測距結果の補正を行う。
【0040】
前記撮像制御部21は、前記撮像部14の撮像を制御する。前記撮像制御部21は、前記撮像部14が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量機1で測定するタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部19は画像と測距データとの関連付けも実行する。
【0041】
前記表示部25は、前記撮像部14により取得した画像を表示し、測定状況、測距データ等を表示する。尚、該表示部25はタッチパネルとされ、操作部としても機能する。
【0042】
前記光軸偏向部35について説明する。
【0043】
前記光軸偏向部35は、1対のプリズム偏向盤36a,36b及び該プリズム偏向盤36a,36bを個別に回転する偏向モータ37a,37bを有する。
【0044】
前記プリズム偏向盤36a,36bは平行であり、該プリズム偏向盤36a,36bの軸心は、前記基準光軸Oと合致し、前記プリズム偏向盤36a,36bは前記基準光軸Oを中心に回転する。
【0045】
前記プリズム偏向盤36a,36bそれぞれは偏向光学部材(後述)として、平行に配列された複数の棒状の光学プリズムを有している。全ての光学プリズムは断面が3角形(楔形状)のガラスの光学部材であり、同一の屈折特性を有している。
【0046】
前記プリズム偏向盤36a,36bそれぞれの回転位置、該プリズム偏向盤36a,36b間の相対回転角によって、前記プリズム偏向盤36a,36bを透過する前記測距光軸40の偏向方向、偏向角が決定される。従って、前記プリズム偏向盤36a,36bそれぞれの回転位置を制御することで、前記測距光軸40を任意の位置にある測定対象物に向けることができ、測定対象物の測距、測角を行うことができる。
【0047】
更に、前記測距光23を射出しつつ、前記プリズム偏向盤36a,36bを個別に回転すれば、前記測距光23を任意のパターンでスキャンさせることができ、パルス毎に測距を行えば、スキャン軌跡に沿って点群データを取得することができ、レーザスキャナとして測定を行うこともできる。
【0048】
次に、
図3〜
図6を参照して、本発明の第1の実施例に係る前記光軸偏向部35の詳細について説明する。
【0049】
リング形状の保持部材である回転軸受ホルダ41の左右両側に、前記プリズム偏向盤36a,36bが設けられている。
【0050】
前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとは同構造であるので、以下、前記プリズム偏向盤36aについて説明する。
【0051】
前記回転軸受ホルダ41には、両側から回転軸受嵌合孔42が穿設され、内周の中央に断面矩形の回転軸受受け凸部43が形成され、外輪嵌合部が形成される。又、前記回転軸受ホルダ41の外周には、取付け用フランジ44が形成されている。
【0052】
前記回転軸受嵌合孔42に回転軸受45が嵌合され、該回転軸受45の外輪が前記回転軸受受け凸部43に当接する。前記外輪の外周面は前記回転軸受嵌合孔42の内周面と接着され、前記外輪の側面は前記回転軸受受け凸部43の側面と接着され、前記回転軸受45の外輪は前記回転軸受ホルダ41に固着される。
【0053】
リングギア46が前記回転軸受ホルダ41と同心に、且つ該回転軸受ホルダ41と対向して配設される。前記リングギア46は、外周面にギア歯が刻設されたタイミングプーリとなっている。前記リングギア46の前記回転軸受ホルダ41側の側面(内側面)には、前記リングギア46と同心の円環溝が刻設され、該円環溝の内縁は、内輪嵌合部を形成する。更に、該内輪嵌合部は、前記回転軸受45の内輪と嵌合する軸部47となっている。又、前記回転軸受45の外輪の周囲には、隙間48が形成され、前記リングギア46は前記回転軸受45の外輪とは非接触となっている。
【0054】
前記軸部47は、前記回転軸受45の内輪に接着され、該内輪と前記リングギア46とは固定され、一体に回転する様になっている。
【0055】
前記リングギア46に円環溝を刻設することで、該リングギア46の内縁がリング状に突出する。更に、内縁を前記軸部47とすることで、前記リングギア46に別途軸部を形成することなく、即ち前記リングギア46の軸長(厚み)を増すことなく、前記リングギア46を前記回転軸受45によって回転自在に支持することができる。更に、前記回転軸受45の一部が前記円環溝に収納されるので、前記プリズム偏向盤36aの軸長(厚み)を極めて短くすることができる。
【0056】
前記回転軸受45の内輪の内部に、偏向光学部材が設けられる。該偏向光学部材は、奇数の複数本(図示では3本)の光学プリズム50,51,52から構成される。該光学プリズム50,51,52は、図示では紙面に対して垂直方向に延出する棒状の光学部材であり、3本の前記光学プリズム50,51,52は平行に配設される。又、該光学プリズム50,51,52の材質は、一般的に光学ガラスが用いられる。
【0057】
該光学プリズム50,51,52が集合した外形形状は、前記回転軸受45の内輪に嵌合する円形状となっている。又、前記光学プリズム50,51,52のそれぞれは、前記軸部47の端面、又は前記回転軸受45の内輪に接着され、又は前記軸部47の端面と前記回転軸受45の内輪の両方に接着され、前記光学プリズム50,51,52は前記リングギア46と一体化される。
【0058】
前記光学プリズム50,51,52は、前記回転軸受45の内輪に直接嵌合する構造であるので、前記光学プリズム50,51,52の厚みの一部が、前記回転軸受45の厚みに吸収される。従って、前記光学プリズム50,51,52を含む前記プリズム偏向盤36aの軸長を極めて短くすることができる。
【0059】
前記光学プリズム50,51,52の数、大きさについては、特に制限はないが、前記プリズム偏向盤36aの軸心、即ち前記基準光軸Oが通過する中央の前記光学プリズム51については、前記測距光23の光束が分割されない様、前記光学プリズム51の幅(
図7(A)に於いて高さ)が前記測距光23の光束の直径より大きいことが望ましい。
【0060】
尚、上記説明では、光学プリズムの材質を光学ガラスとしたが、前記測距光23が透過する中央部分のみを光学ガラスとし、前記反射測距光24が入射する他の部分は合成樹脂材料のフレネルレンズで構成してもよい。
【0061】
前記取付け用フランジ44の前記プリズム偏向盤36a側の側面(
図4中、左側面)にはモータ基板55が固着され、該モータ基板55に前記偏向モータ37aが取付けられる。
【0062】
該偏向モータ37aの出力軸56に駆動タイミングプーリ57が固着される。該駆動タイミングプーリ57と前記リングギア46とにタイミングベルト58が掛回される。前記駆動タイミングプーリ57は前記リングギア46に対して小径であり、ギア比は既知となっている。
【0063】
前記取付け用フランジ44は、前記光軸偏向部35を支持する為の構造部材に固定される。例えば、前記筐体9に固定される。従って、前記回転軸受ホルダ41は構造部材に支持され、前記プリズム偏向盤36a,36bはそれぞれ回転軸受45,45を介して前記回転軸受ホルダ41に回転自在に支持される。
【0064】
前記リングギア46の側面(該リングギア46の軸心と直交する面)で且つ前記プリズム偏向盤36bと対向しない面には、前記リングギア46と同心でリング状の磁性体部材59、例えばリング状の鉄板が所要の方法、例えば接着により固着されている。又、前記リングギア46には、前記磁性体部材59と同心で、該磁性体部材59の外周側にリング状の分度盤61が所要の方法、例えば接着により固着されている。
【0065】
又、前記取付け用フランジ44の端面の前記モータ基板55及び前記偏向モータ37a,37bと干渉しない部位(例えば、
図3中、紙面に対して左右の部位)には、支持板62が設けられている。該支持板62は、対向する2箇所に設けられ、断面コ字状に屈曲された板状の部材となっている。該支持板62は、前記取付け用フランジ44の周面との間に所定の間隔の隙間が形成される様、スペーサ63を介して前記取付け用フランジ44に固着されている。
【0066】
前記支持板62は、前記プリズム偏向盤36aのリングギア46aの側面と平行に延出する延出部62aと、前記プリズム偏向盤36bのリングギア46bの側面と平行に延出する延出部62bとを有している。前記リングギア46aの側面と前記延出部62aとの間に所定の間隔の隙間が形成され、前記リングギア46bの側面と前記延出部62bとの間に所定の間隔の隙間が形成される。尚、前記延出部62a,62bは、前記光学プリズム50,51,52とは重ならず、前記測距光23及び前記反射測距光24を遮らない様になっている。
【0067】
前記延出部62aの、前記磁性体部材59と対向する部分には、磁石64が設けられている。又、前記延出部62aの、前記分度盤61と対向する部分には、該分度盤61の値を読取る為の測角センサ65が設けられている。前記分度盤61と前記測角センサ65によりエンコーダ60aが構成され、前記磁性体部材59と前記磁石64とにより付勢手段が構成される。尚、前記測角センサ65は、複数の前記延出部62aの内の1つに設けられればよい。
【0068】
前記磁性体部材59と前記磁石64との間に作用する磁力により、前記プリズム偏向盤36aが前記リングギア46の回転軸心と平行且つ前記プリズム偏向盤36bから離反(又は近接)する方向に付勢される様に、前記磁性体部材59の配置、前記磁石64の数を設定する。前記リングギア46が付勢されることで、前記回転軸受45の内輪が外輪に対して押圧される。
【0069】
尚、前記延出部62bについても同様に、前記磁石64が設けられて付勢手段が構成され、前記測角センサ65が設けられエンコーダ60bが構成される。
【0070】
従って、前記プリズム偏向盤36aの前記回転軸受45に対して、又前記プリズム偏向盤36bの前記回転軸受45に対して、それぞれ付勢手段により与圧が付与され、ガタツキが防止される。又、前記エンコーダ60a,60bによって、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転が個々に検出される。
【0071】
前記偏向モータ37aが駆動すると、前記出力軸56を介して前記駆動タイミングプーリ57が回転され、該駆動タイミングプーリ57の回転は、前記リングギア46に伝達される。更に、前記駆動タイミングプーリ57は、前記リングギア46に対して小径であり、回転は減速して伝達される。
【0072】
前記プリズム偏向盤36bの構成は、同構造で前記プリズム偏向盤36aと対称の構成であるので、以下、説明を省略する。更に、
図3、
図4では、前記偏向モータ37a,37b、前記駆動タイミングプーリ57は、光軸偏向部の軸心に対して180°の位置に設けられているが、他の部材に干渉しない位置であればよく、90°の位置でも60°の位置でもよい。
【0073】
又、
図3、
図6では、前記支持板62は対向する2箇所、即ち180°の角度間隔で設けられているが、前記モータ基板55と干渉せず、等角度ピッチであれば、120°の角度間隔で3つ、90°の角度間隔で4つ設けてもよい。
【0074】
上記した様に、前記プリズム偏向盤36aは前記取付け用フランジ44に対して回転自在に支持され、同様に前記プリズム偏向盤36bも前記取付け用フランジ44に対して回転自在に支持される。従って、前記プリズム偏向盤36a,36bは相互に干渉されることなく、自在に回転し得る。
【0075】
本実施例では、前記測角センサ65(前記エンコーダ60a,60b)からの検出信号に基づき、前記偏向モータ37a,37bを制御し、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転角、回転速度等を制御しているが、前記偏向モータ37a,37bにそれぞれエンコーダを取付け、各エンコーダからの検出信号に基づき前記プリズム偏向盤36a,36bの回転角を検出し、更に回転速度等を制御してもよい。或は、前記偏向モータ37a,37bとしてパルスモータ用い、該パルスモータに印加する駆動パルス数を制御することで回転を制御し、又回転角をパルス数によって検出してもよい。
【0076】
前記偏向モータ37a,37bを個別に制御することで、前記プリズム偏向盤36a,36bを個別に任意の方向に、任意の回転速度で制御することができ、前記測距光軸40を任意の方向に、任意の速さで偏向することができる。
【0077】
前記タイミングベルト58による回転の伝達は、ギア同士を直接噛合させた場合に比べバックラッシが少なく、更に前記駆動タイミングプーリ57と前記リングギア46間は減速されているので、前記偏向モータ37aによる回転駆動の分解能、回転精度は高められる。
【0078】
又、前記リングギア46a,46bの側面に前記磁性体部材59,59を設け、該磁性体部材59,59と対向してそれぞれ前記磁石64,64を設けることで、前記磁性体部材59,59と前記磁石64,64との間に吸引力が作用し、前記プリズム偏向盤36a,36bが互いに離反(又は近接)する方向に付勢される。従って、前記回転軸受45の内輪、外輪間に与圧が作用し、前記リングギア46a,46bが回転する際のガタツキが抑制され、該リングギア46a,46bを安定して高精度に回転させることができる。
【0079】
又、前記磁石64,64をそれぞれ等角度の角度間隔で設けているので、前記リングギア46a,46bに対して均等に磁力が作用し、より高精度に回転させることができる。
【0080】
更に、上記した様に、前記光軸偏向部35による最大偏角を±20°と設定した場合、1つのプリズム偏向盤36aでは180°の回転で最大の偏角量は20°となる。従って、前記プリズム偏向盤36aの回転誤差は、偏角の誤差にすると1/9となる。従って、高精度で偏角の制御が行える。
【0081】
尚、前記リングギア46を回転させる為の駆動伝達手段として、タイミングプーリ、タイミングベルトを用いたが、タイミングプーリ、タイミングベルトに代え、前記リングギア46にピニオンギアを噛合させ、駆動伝達手段とし、ギア結合により、前記ピニオンギアにより直接前記リングギア46を回転させる様にしてもよい。この場合も、バックラッシ等の誤差が減少するので、高精度の偏角精度が得られる。
【0082】
次に、前記光軸偏向部35の作用について説明する。
【0083】
前記演算制御部19は、前記偏向モータ37a,37bの回転方向、回転速度、該偏向モータ37a,37b間の回転比を制御すること、該偏向モータ37a,37bを正逆回転させること等で、前記光軸偏向部35による多様な偏向作用を制御することができる。
【0084】
前記射出方向検出部15は、前記エンコーダ60a,60bからの信号に基づき、前記偏向モータ37a,37bの回転角を検出する。或は、前記偏向モータ37a,37bに入力する駆動パルスをカウントすることで、前記偏向モータ37a,37bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部15は、前記偏向モータ37a,37bの回転角に基づき、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部15は、前記光学プリズム50,51,52の屈折率と、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転位置とに基づき、各パルス光毎の前記測距光23の偏角、射出方向を演算し、演算結果は測距結果に関連付けられて前記演算制御部19に入力される。
【0085】
又、前記測距光23の偏角、射出方向から測定点の水平角、鉛直角を演算し、測定点について、水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定対象物の3次元データを求めることができる。
【0086】
更に、前記偏向モータ37a,37bの駆動の制御で、回転速度を変えて回転すること、正逆回転すること等、前記プリズム偏向盤36a,36bを連続的に回転させつつ前記測距光23を射出させることで、多様なスキャン態様で、該測距光23のスキャンを実行できる。
【0087】
前記光軸偏向部35の偏向作用、スキャン作用について、
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)を参照して説明する。
【0088】
尚、
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)に於いて、前記プリズム偏向盤36aの光学プリズムについては、符号を50a,51aとし、前記プリズム偏向盤36bの光学プリズムについては、符号を50b,51bとする。尚、前記光学プリズム52については、前記光学プリズム50と同等であるので説明を省略する。
【0089】
尚、図
7(A)では、説明を簡略化する為、前記プリズム偏向盤36a,36bについて、前記光学プリズム50と前記光学プリズム51とを分離して示している。又、図
7(A)は、前記プリズム偏向盤36aの前記光学プリズム50a,51aと前記プリズム偏向盤36bの前記光学プリズム50b,51bが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば±20°)が得られる。又、最小の偏角は、前記プリズム偏向盤36a,36bのいずれか一方が180°回転した位置であり、該プリズム偏向盤36a,36b間で前記光学プリズム50a,51aと50b,51bの相互の光学作用が相殺され、偏角は0°となる。従って、前記プリズム偏向盤36a,36bを経て射出、受光されるパルスレーザ光線の光軸(前記測距光軸40)は前記基準光軸Oと合致する。
【0090】
前記発光素子27から前記測距光23が発せられ、該測距光23は前記投光レンズ28で平行光束とされ、前記光学プリズム51a,51bを透過して前記プリズム7に向って射出される。又、前記光学プリズム51a,51bによって所要の方向に偏向されて射出される(図
7(A))。
【0091】
前記プリズム7で反射された前記反射測距光24は、前記光学プリズム50a,50bを透過して入射され、前記結像レンズ34により前記受光素子33に集光される。
【0092】
前記反射測距光24が前記光学プリズム50a,50bを透過することで、前記反射測距光24の光軸は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される(
図7(A))。
【0093】
前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bの回転位置の組合わせにより、射出する測距光の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0094】
又、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとの位置関係を固定した状態で前記偏向モータ37a,37bにより、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを一体に回転すると、前記光学プリズム51a,51bを透過した前記測距光23が描く軌跡は前記測距光軸40を中心とした円となる。
【0095】
従って、前記発光素子27によりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部35を回転させれば、前記測距光23を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記プリズム偏向盤36a,36bは一体に回転していることは言う迄もない。
【0096】
次に、
図7(B)は、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを相対回転させた場合を示している。前記プリズム偏向盤36aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記プリズム偏向盤36bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記プリズム偏向盤36a,36bによる光軸の偏向は、該プリズム偏向盤36a,36b間の角度差をθとして、合成偏向Cとなる。
【0097】
従って、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記プリズム偏向盤36a,36bを透過した前記測距光23は、直線状にスキャンされる。従って、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを逆向きに等速度で往復回転させることで、
図7(B)に示される様に、測距光を合成偏向C方向に直線の軌跡で往復スキャンさせることができる。
【0098】
更に、
図7(C)に示される様に、前記プリズム偏向盤36aの回転速度に対して遅い回転速度で前記プリズム偏向盤36bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光23が走査されるので、該測距光23の軌跡はスパイラル状となる。
【0099】
上記した様に、前記プリズム偏向盤36a、前記プリズム偏向盤36bの回転方向、回転速度を個別に制御することで、前記測距光23のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心として照射方向(半径方向のスキャン)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々のスキャンパターンが得られる。
【0100】
前記測距光23をスキャンさせる過程で、各パルス毎に測距データ、測角データを取得すれば、点群データが取得でき、本実施例の前記測量機1をレーザスキャナとして使用することができる。
【0101】
更に、本実施例では、前記ポール8を移動し、別の測定点に設置した場合の前記プリズム7の視準については、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転だけでよく、前記測量機1の回転は必要ない。従って、瞬時に他の測定点への視準が可能となる。
【0102】
又、本実施例では、前記測距光軸40を水平、鉛直の2方向に高速で
偏向可能であり、任意のパターンで高速で連続したスキャンが可能である。更に、スキャンパターンの
変更により、スキャン密度の
変更、スキャン中に特定の測定点への光軸を固定すること等、多様な測定が可能となる。
【0103】
尚、前記光軸偏向部35は、種々の変更が可能である。
図8、
図9は、第1の実施例の変形例を示している。
【0104】
該変形例では、対向する2つの前記延出部62a,62aに掛渡ってリング状の磁性体部材66が設けられている。又、該磁性体部材66と前記リングギア46は同心であり、該リングギア46の側面には、前記磁性体部材66と対向する様に、磁石67が2箇所に設けられている。尚、前記変形例では、前記磁石67は2箇所に設けられているが、等角度の角度間隔であれば3箇所以上に設けられてもよい。例えば、120°の角度間隔で3箇所に設けてもよいし、90°の角度間隔で4箇所に設けてもよい。
【0105】
又、第1の実施例では、前記光学プリズム50,51,52が前記回転軸受45の内輪に直接嵌合する構成であったが、前記変形例では、前記リングギア46に嵌合凹部70を形成し、該嵌合凹部70に前記光学プリズム50,51,52が嵌合している。
【0106】
上記した変形例の場合も、第1の実施例と同様、前記磁石67と前記磁性体部材66との間で生じる磁力により、前記プリズム偏向盤36aが前記リングギア46を回転軸心と平行に前記プリズム偏向盤36bと離反(又は近接)する様(前記プリズム偏向盤36bが前記プリズム偏向盤36aと離反(又は近接)する様)に付勢される。従って、前記リングギア46が回転する際のガタツキが抑制され、該リングギア46を安定して高精度に回転させることができる。
【0107】
次に、
図10〜
図13に於いて、本発明の第2の実施例について説明する。尚、
図10〜
図13中、
図3〜
図6中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0108】
第2の実施例では、リングギア46の外周面の取付け用フランジ44側の周縁に、リング状の磁性体部材68、例えばリング状の鉄板が回転軸受ホルダ41と平行に、且つ外周側に突出する様に設けられている。前記磁性体部材68は、前記リングギア46に嵌合して設けてもよいし、前記リングギア46にネジ止めされてもよい。
【0109】
又、前記取付け用フランジ44の外周面のモータ基板55及び偏向モータ37a,37bと干渉しない位置(例えば、
図10、
図12中、紙面に対して左右方向の位置)に、磁石69が2箇所に設けられている。該磁石69の配置は、中心に関して対称となっている。又、該磁石69は前記磁性体部材68,68間に位置し、前記磁石69の両端面と上下の前記磁性体部材68との間にはそれぞれ所定の間隔が形成される。
【0110】
該磁性体部材68と前記磁石69との間の間隙は、前記磁性体部材68と前記磁石69とが接触しない範囲でできるだけ小さいことが望ましい。前記磁性体部材68と前記磁石69との間に磁力による吸引が作用し、前記回転軸受45に軸心方向の与圧が発生し、該回転軸受45のガタツキが抑制される。
【0111】
上記した様に、前記リングギア46の周縁に前記磁性体部材68を設け、前記取付け用フランジ44の周面に前記磁石69を設けることで、前記磁性体部材68と前記磁石69との間に作用する磁力によって、前記プリズム偏向盤36a,36bが互いに近接(又は離反)する方向に付勢される。従って、前記回転軸受45の内輪、外輪間に軸心方向の与圧が作用し、前記プリズム偏向盤36a,36bが回転する際のガタツキが抑制され、該プリズム偏向盤36a,36bを高精度に回転させることができる。
【0112】
尚、第2の実施例では、前記磁石69を対向する2箇所、即ち180°の角度間隔で設けているが、前記モータ基板55と干渉せず、等角度の角度間隔であれば、120°の角度間隔で3箇所、90°の角度間隔で4箇所に設けてもよいのは言う迄もない。
【0113】
又、第2の実施例では、支持板62は1箇所に取付けられ、延出部62aの分度盤61と対向する部分に測角センサ65が設けられている。
【0114】
尚、第1の実施例、第2の実施例では、前記リングギア46の一側面(軸心と直交する面)に前記分度盤61を設け、該分度盤61と対向する延出部62a,62bに前記測角センサ65を設け、エンコーダとしているが、駆動タイミングプーリ57の回転軸にエンコーダを設け、該駆動タイミングプーリ57の回転角を検出することで、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転角を検出する様にしてもよい。