特許第6896540号(P6896540)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896540
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】車載システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20210621BHJP
   G10L 15/22 20060101ALI20210621BHJP
   G10L 15/00 20130101ALI20210621BHJP
   G10L 13/00 20060101ALI20210621BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B60R11/02 B
   G10L15/22 453
   G10L15/00 200J
   G10L13/00 100C
   G06F3/16 630
   G06F3/16 650
   G06F3/16 680
   G06F3/16 620
   G06F3/16 550
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-139276(P2017-139276)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-18729(P2019-18729A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】工藤 信範
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−001247(JP,A)
【文献】 特開2006−211365(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/061205(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
G06F 3/16
G10L 13/00
G10L 15/00
G10L 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前席の近くに配置されたスピーカである前席側スピーカと、前席より後方の席である後方席の近くに配置されたスピーカである後方席側スピーカとを備えた車載システムであって、
前席の近くに配置されたマイクロフォンである前席側マイクロフォンと、
前記前席側マイクロフォンでピックアップした音声を前記後方席側スピーカに出力する音声伝達動作を行う音声伝達手段と、
前記前席側マイクロフォンがピックアップした音声から、予め設定した1または複数の語彙を音声認識する音声認識手段と、
前記音声認識手段が音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力を受け付け、音声入力を受け付けたユーザ操作に応じた処理を行う処理手段と、
前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記後方席に向けて、音声入力が行われたことを通知するメッセージを出力する制御手段とを有することを特徴とする車載システム。
【請求項2】
前席の近くに配置されたスピーカである前席側スピーカと、前席より後方の席である後方席の近くに配置されたスピーカである後方席側スピーカとを備えた車載システムであって、
前席の近くに配置されたマイクロフォンである前席側マイクロフォンと、
前記前席側マイクロフォンでピックアップした音声を前記後方席側スピーカに出力する音声伝達動作を行う音声伝達手段と、
前記前席側マイクロフォンがピックアップした音声から、予め設定した1または複数の語彙を音声認識する音声認識手段と、
前記音声認識手段が音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力を受け付け、音声入力を受け付けたユーザ操作に応じた処理を行う処理手段と、
前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止し、前記後方席に向けて、音声入力が行われていることを表すメッセージ、または、音声入力が行われていることと前記音声伝達動作を停止したこととを表すメッセージを出力する制御手段とを有することを特徴とする車載システム。
【請求項3】
前席の近くに配置されたスピーカである前席側スピーカと、前席より後方の席である後方席の近くに配置されたスピーカである後方席側スピーカとを備えた車載システムであって、
前席の近くに配置されたマイクロフォンである前席側マイクロフォンと、
前記前席側マイクロフォンでピックアップした音声を前記後方席側スピーカに出力する音声伝達動作を行う音声伝達手段と、
前記前席側マイクロフォンがピックアップした音声から、予め設定した1または複数の語彙を音声認識する音声認識手段と、
前記音声認識手段が音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力を受け付け、音声入力を受け付けたユーザ操作に応じた処理を行う処理手段と、
制御手段とを有し、
前記処理手段は、音声入力を受け付けたユーザ操作が所定のユーザ操作であった場合に、当該ユーザ操作の音声入力に応答して、音声入力される一連のユーザ操作を受け付ける一連ユーザ操作受付処理を開始し、
前記制御手段は、
前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記処理手段が、当該音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力に応答して、前記一連ユーザ操作受付処理を開始した場合に、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止し、前記後方席に向けて、音声入力が行われていることを表すメッセージ、または、音声入力が行われていることと前記音声伝達動作を停止したこととを表すメッセージを出力することを特徴とする車載システム。
【請求項4】
請求項3記載の車載システムであって、
前記制御手段は、
記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記処理手段において、前記一連ユーザ操作受付処理が行われておらず、かつ、当該音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力に応答して、前記処理手段が、前記一連ユーザ操作受付処理を開始しなかった場合に、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止することなく、前記後方席に向けて、音声入力が行われたことを通知するメッセージを出力することを特徴とする車載システム。
【請求項5】
請求項3または4記載の車載システムであって、
前記制御手段は、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止した後、前記一連ユーザ操作受付処理で受け付ける最後のユーザ操作に対応する語彙を前記音声認識手段が認識したときに、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を再開することを特徴とする車載システム。
【請求項6】
請求項5記載の車載システムであって、
前記制御手段は、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を再開するときに、前記後方席に向けて、前記音声伝達動作を再開することを通知するメッセージを出力することを特徴とする車載システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載の車載システムであって、
前記後方席の近くに配置されたマイクロフォンである後方席側マイクロフォンを有し、
前記音声伝達手段は、前記音声伝達動作において、前記後方席側マイクロフォンでピックアップした音声の前記前席側スピーカへの出力も行うことを特徴とする車載システム。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載の車載システムであって、
前記後方席のユーザ用のディスプレイであるリアディスプレイを有し、
前記制御手段は、前記後方席に向けたメッセージの出力を、当該メッセージの前記リアディスプレイへの表示によって行うことを特徴とする車載システム。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の車載システムであって、
前記制御手段は、前記後方席に向けたメッセージの出力を、当該メッセージを表す音声の前記リアスピーカへの出力によって行うことを特徴とする車載システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載システムにおいて、ユーザの発話音声を処理する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載システムにおいて、ユーザの発話音声を処理する技術としては、マイクロフォンで前席のユーザの発話音声をピックアップし、発話音声によるユーザ操作の音声入力を受け付ける処理と、前席のユーザの発話音声を後席側に配置したスピーカから出力することにより、前席のユーザの発話音声を後席のユーザに明瞭に伝達する処理とを行う技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
ここで、この技術では、マイクロフォンでピックアップした前席のユーザの発話音声が、ユーザ操作の音声入力用の発話音声であるかどうかを検出し、ユーザ操作の音声入力用の発話音声である場合には、当該発話音声の後席側に配置したスピーカからの出力を抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-56790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した、マイクロフォンでピックアップした前席のユーザの発話音声が、ユーザ操作の音声入力用の発話音声である場合に、当該発話音声の後席側に配置したスピーカからの出力を抑止する技術によれば、次のような問題が生じる。
【0006】
すなわち、前席のユーザの発話音声の後席側に配置したスピーカからの出力を停止しても、後席のユーザは前席のユーザの発話の有無自体は認識することができるので、後席のユーザが、前席のユーザがユーザ操作の音声入力用に発話した内容を、自身に対する発話と誤認して、前席のユーザに発話の内容を聞き返し、これに対して前席のユーザが返答するなどの、前後席双方のユーザにとって不要で煩雑、かつ、前席のユーザの音声入力を妨げる状況が生じてしまうことがある。
【0007】
また、後席のユーザが、なぜ、急に発話音声が明瞭に伝達されなくなってしまったのか分からず、故障を疑うなどの、車載システムに対する不審感を抱いてしまうこともある。
そこで、本発明は、ユーザの発話音声によるユーザ操作の音声入力を受け付ける処理と、ユーザの発話音声のスピーカからの出力による他のユーザへの発話音声の伝達を行う車載システムにおいて、ユーザ操作の音声入力用の発話音声を、他のユーザが自身への発話と誤認してしまうことを抑制することを課題とする。
【0008】
ことを軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題達成のために、本発明は、前席の近くに配置されたスピーカである前席側スピーカと、前席より後方の席である後方席の近くに配置されたスピーカである後方席側スピーカとを備えた車載システムに、前席の近くに配置されたマイクロフォンである前席側マイクロフォンと、前記前席側マイクロフォンでピックアップした音声を前記後方席側スピーカに出力する音声伝達動作を行う音声伝達手段と、前記前席側マイクロフォンがピックアップした音声から、予め設定した1または複数の語彙を音声認識する音声認識手段と、前記音声認識手段が音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力を受け付け、音声入力を受け付けたユーザ操作に応じた処理を行う処理手段と、前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記後方席に向けて、音声入力が行われたことを通知するメッセージを出力する制御手段とを備えたものである。
【0010】
このような車載システムによれば、前席のユーザがユーザ操作の音声入力を行った場合には、後席のユーザに前席でユーザ操作の音声入力が行われたことを伝えるメッセージが、後方席に向けて出力されるので、後方席のユーザが、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話した音声を、自身への発話と誤認してしまうことを抑制することができる。
【0011】
また、本発明は、前記課題達成のために、前席の近くに配置されたスピーカである前席側スピーカと、前席より後方の席である後方席の近くに配置されたスピーカである後方席側スピーカとを備えた車載システムに、前席の近くに配置されたマイクロフォンである前席側マイクロフォンと、前記前席側マイクロフォンでピックアップした音声を前記後方席側スピーカに出力する音声伝達動作を行う音声伝達手段と、前記前席側マイクロフォンがピックアップした音声から、予め設定した1または複数の語彙を音声認識する音声認識手段と、前記音声認識手段が音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力を受け付け、音声入力を受け付けたユーザ操作に応じた処理を行う処理手段と、前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止し、前記後方席に向けて、音声入力が行われていることを表すメッセージ、または、音声入力が行われていることと前記音声伝達動作を停止したこととを表すメッセージを出力する制御手段とを備えたものである。
【0012】
このような車載システムによれば、前席のユーザがユーザ操作の音声入力を開始したときに、後席のユーザに前席でユーザ操作の音声入力が行われていることを伝えるメッセージが、後方席に向けて出力されるので、後方席のユーザが、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話する音声を、自身への発話と誤認してしまうことを抑制することができる。また、前席側マイクロフォンでピックアップした音声を後方席側スピーカから出力する動作を停止するので、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話する他のユーザにとって意味のない音声を、後方席のユーザに伝達して煩わしい思いをさせてしまうことも抑止できる。
【0013】
また、前記課題達成のために、本発明は、前席の近くに配置されたスピーカである前席側スピーカと、前席より後方の席である後方席の近くに配置されたスピーカである後方席側スピーカとを備えた車載システムに、前席の近くに配置されたマイクロフォンである前席側マイクロフォンと、前記前席側マイクロフォンでピックアップした音声を前記後方席側スピーカに出力する音声伝達動作を行う音声伝達手段と、前記前席側マイクロフォンがピックアップした音声から、予め設定した1または複数の語彙を音声認識する音声認識手段と、前記音声認識手段が音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力を受け付け、音声入力を受け付けたユーザ操作に応じた処理を行う処理手段と、制御手段とを設けたものである。ここで、前記処理手段は、音声入力を受け付けたユーザ操作が所定のユーザ操作であった場合に、当該ユーザ操作の音声入力に応答して、音声入力される一連のユーザ操作を受け付ける一連ユーザ操作受付処理を開始する。また、前記制御手段は、前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記処理手段が、当該音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力に応答して、音声入力される一連のユーザ操作を受け付ける一連ユーザ操作受付処理を開始した場合に、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止し、前記後方席に向けて、音声入力が行われていることを表すメッセージ、または、音声入力が行われていることと前記音声伝達動作を停止したこととを表すメッセージを出力する。
【0014】
このような車載システムによれば、前席のユーザがユーザ操作の音声入力を行った場合には、前席でユーザ操作の音声入力が行われていることを伝えるメッセージが、後方席に向けて出力されるので、後方席のユーザが、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話する音声を、自身への発話と誤認してしまうことを抑制することができる。また、前席側マイクロフォンでピックアップした音声を後方席側スピーカから出力する動作を停止するので、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話する他のユーザにとって意味のない音声を、後席のユーザに伝達して煩わしい思いをさせてしまうことも抑止できる。
【0015】
ここで、この車載システムは、前記制御手段において、前記音声認識手段が前記語彙を音声認識したときに、前記処理手段において、前記一連ユーザ操作受付処理が行われておらず、かつ、前記処理手段が、当該音声認識した語彙に対応するユーザ操作の音声入力に応答して前記一連ユーザ操作受付処理を開始しなかった場合に、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止することなく、前記後方席に向けて、音声入力が行われたことを通知するメッセージを出力するように構成してもよい。
【0016】
また、この場合、車載システムは、前記制御手段において、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を停止した後、前記一連ユーザ操作受付処理で受け付ける最後のユーザ操作に対応する語彙を前記音声認識手段が認識したときに、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を再開するように構成してもよい。
【0017】
また、この場合には、前記制御手段において、前記音声伝達手段の前記音声伝達動作を再開するときに、前記後方席に向けて、前記音声伝達動作を再開することを通知するメッセージを出力するようにしてもよい。
【0018】
ここで、以上の車載システムは、当該車載システムに、前記後方席の近くに配置されたマイクロフォンである後方席側マイクロフォンを設け、前記音声伝達手段において、前記音声伝達動作において、前記後方席側マイクロフォンでピックアップした音声の前記前席側スピーカへの出力も行うように構成してもよい。
【0019】
このようにすることにより、上述した制御手段において音声伝達動作を停止する車載システムにおいては、普段は、後席のユーザの発話を前席のユーザが明瞭に聴取できるように伝達しつつ、前席のユーザがユーザ操作の音声入力を行っているときに、前席側スピーカから出力される後席のユーザの発話音声によって、前席のユーザのユーザ操作の音声入力が妨げられてしまうことを抑制できる。
【0020】
また、以上の車載システムは、当該車載システムに、前記後方席のユーザ用のディスプレイであるリアディスプレイを設け、前記制御手段において、前記後方席に向けたメッセージの出力を、当該メッセージの前記リアディスプレイへの表示によって行うように構成してもよい。
【0021】
また、以上の車載システムは、前記制御手段において、前記後方席に向けたメッセージの出力を、当該メッセージを表す音声の前記リアスピーカへの出力によって行うように構成してもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、ユーザの発話音声によるユーザ操作の音声入力を受け付ける処理と、ユーザの発話音声のスピーカからの出力による他のユーザへの発話音声の伝達を行う車載システムにおいて、ユーザ操作の音声入力用の発話音声を、他のユーザが自身への発話と誤認してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係る車載システムの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るICC動作制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係るICC動作制御処理の処理例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るICC動作制御処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは、自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、フロントタッチパネルディスプレイ11、リアディスプレイ12、フロントマイクロフォン13、リアマイクロフォン14、フロントスピーカ15、リアスピーカ16、制御装置17、記憶装置やディスクドライブや放送受信装置やGPS受信器やリモートコントローラなどの周辺装置18を備えている。
【0025】
ここで、フロントタッチパネルディスプレイ11は、ディスプレイとタッチパネルとを一体化した装置であり、図2a、bに示すように、フロントシート前方の左右方向について中央の位置においてダッシュボード内に設置される。
【0026】
また、リアディスプレイ12は、前後左右方向についてほぼ車室中央の位置において天井から吊り下げられた形態で設置されている。
また、フロントマイクロフォン13は、前席のユーザの発話音声をピックアップするマイクロフォンであり、たとえば、フロントタッチパネルディスプレイ11と同じ筐体内等に配置される。また、リアマイクロフォン14は、後席のユーザの発話音声をピックアップするマイクロフォンであり、たとえば、リアディスプレイ12と同じ筐体内等に配置されている。
【0027】
そして、フロントスピーカ15は、前席の搭乗者用のスピーカであり、左右のフロントドアなどに設置されており、リアスピーカ16は、後席の搭乗者用のスピーカであり、左右のリアドアなどに設置されている。
【0028】
図1に戻り、車載システムの制御装置17は、フロントタッチパネルディスプレイ11へのタッチによる操作の入力を受け付けるタッチ操作入力部171、フロントタッチパネルディスプレイ11とリアディスプレイ12への表示を制御する表示制御部172、フロントマイクロフォン13とリアマイクロフォン14がピックアップした音声を取り込むオーディオ入力部173、フロントスピーカ15とリアスピーカ16への音声の出力を制御するオーディオ出力制御部174、周辺装置18の制御を行う周辺装置制御部175、音声認識エンジン176、ICC制御部177、以上の各部を制御する制御部178、複数のアプリケーション179とを備えている。
【0029】
ここで、音声認識エンジン176は、オーディオ入力部173が取り込んだフロントマイクロフォン13がピックアップした音声を常時監視し、フロントマイクロフォン13がピックアップした音声のうちに、現在音声認識エンジンの機能を利用しているアプリケーション179が設定した音声認識辞書に登録されている語彙に所定レベル以上整合する音声が発生したときに当該語彙を音声認識して音声認識成功とし、当該語彙に予め対応づけられているユーザ操作を音声入力されたユーザ操作として認識し、現在音声認識エンジンの機能を利用しているアプリケーション179に出力する。
【0030】
また、ICC制御部177は、オーディオ入力部173が取り込んだフロントマイクロフォン13がピックアップした音声をオーディオ出力制御部174を介してリアスピーカ16に出力し、オーディオ入力部173が取り込んだリアマイクロフォン14がピックアップした音声をオーディオ出力制御部174を介してフロントスピーカ15に出力するICC(In-Car Communication)動作を行う。
【0031】
次に、各アプリケーション179は、制御部178を介して表示制御部172の機能を利用してフロントタッチパネルディスプレイ11やリアディスプレイ12への表示を行ったり、制御部178を介してタッチ操作入力部171の機能を利用してフロントタッチパネルディスプレイ11に対して行われたタッチ操作を受け付けて所定の処理を行ったり、制御部178を介して音声認識エンジン176の機能を利用して音声認識エンジン176から出力される音声入力されたユーザ操作を受け付けて所定の処理を行ったり、制御部178を介してオーディオ出力制御部174の機能を利用して各スピーカに音声を出力したり、制御部178を介して周辺装置制御部175の機能を利用して各周辺装置18を使用したりすることができる。
【0032】
なお、アプリケーション179は、たとえば、地図上で道案内を行うナビゲーションアプリケーションや、オーディオコンテンツやビジュアルコンテンツの再生出力を行うAVプレイヤアプリケーションや、TV放送受信器で受信したTVプログラムの再生出力を行うTVアプリケーション等である。
【0033】
なお、以上の制御装置17は、CPUやメモリや周辺回路を備えたコンピュータを用いて構成されるものであってよく、この場合、制御装置17の各部はCPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現されるものであってよい。
【0034】
さて、このような車載システムの構成において、制御部178は、ICC制御部177のICC動作を制御するICC動作制御処理を行う。
図3に、このICC動作制御処理の手順を示す。
図示するように、この処理では、音声認識エンジン176における音声認識成功の発生を監視する(ステップ302)。
そして、音声認識エンジン176における音声認識成功が発生したならば(ステップ302)、音声入力シーケンスが完了したかどうかを調べる(ステップ304)。
ここで、音声入力シーケンスとは、音声認識エンジン176から出力される、ステップ302で検出した音声認識成功となった音声認識において認識した語彙に対応するユーザ操作が、音声認識エンジン176の機能を利用しているアプリケーション179において、複数回の音声入力による複数のユーザ操作を順次受け付けることにより完結するユーザ操作受付処理によって受け付けられる場合には、当該複数回の一連の音声入力のシーケンスが音声入力シーケンスとなり、単一の音声入力による一つのユーザ操作を受け付けることにより完結するユーザ操作受付処理によって受け付けられる場合には、当該単一の音声入力のシーケンスが音声入力シーケンスとなる。
【0035】
そして、ステップ304では、ステップ302で検出した音声認識成功に伴って音声認識エンジン176から出力されるユーザ操作の受付によって、音声認識エンジン176の機能を利用しているアプリケーション179におけるユーザ操作受付処理が完了する場合に音声入力シーケンスが完了したと判定する。換言すれば、アプリケーション179におけるユーザ操作受付処理が未完であり、アプリケーション179が継続するユーザ操作の音声入力を待っている状態にあるときに音声入力シーケンスが完了していないと判定する。
【0036】
なお、より具体的には、音声入力シーケンスの完了の検出は、たとえば、制御部178が、ステップ302で検出した音声認識エンジン176において発生した音声認識成功となった音声認識で認識された語彙に対応するユーザ操作の受付によって音声入力シーケンスが完了するかどうかを音声認識エンジン176の機能を利用しているアプリケーション179に問い合わせ、アプリケーション179において問い合わせに対する応答を制御部178に通知し、制御部178において、当該応答に従って、音声入力シーケンスの完了の有無を検出することにより行うことができる。
【0037】
または、音声入力シーケンスの完了の検出は、たとえば、音声認識エンジン176の機能を利用しているアプリケーション179が、複数回の音声入力による複数のユーザ操作を順次受け付けることにより完結するユーザ操作受付処理を開始したときに音声入力シーケンスの開始を制御部178に通知すると共に、ユーザ操作受付処理が完結したときに、音声入力シーケンスの完了を通知し、制御部178においてアプリケーション179からの通知に基づいて、音声入力シーケンスの開始の通知を受けてから、音声入力シーケンスの完了の通知を受けるまでの期間は、音声入力シーケンスが未完とし、他の期間は、音声入力シーケンスが完了しているとすること等により行うこともできる。
【0038】
次に、ステップ304において、音声入力シーケンスが完了したと判定された場合には、前席での音声入力が発生したことを後席のユーザに、リアディスプレイ12へのメッセージの所定期間の表示やリアスピーカ16からの音声メッセージの出力により通知し(ステップ306)、ステップ302からの処理に戻る。
【0039】
一方、ステップ304において、音声入力シーケンスが完了していないと判定された場合には、ICC制御部177のICC動作の停止を制御し(ステップ308)、フロントマイクロフォン13がピックアップした音声のリアスピーカ16からの出力と、リアマイクロフォン14がピックアップした音声のフロントスピーカ15からの出力を停止する。
【0040】
なお、ステップ308では、フロントマイクロフォン13がピックアップした音声のリアスピーカ16からの出力のみを停止し、リアマイクロフォン14がピックアップした音声のフロントスピーカ15からの出力は継続するようにICC制御部177を制御してもよい。ただし、リアマイクロフォン14がピックアップした音声のフロントスピーカ15からの出力も停止することが、前席のユーザのユーザ操作の音声入力を妨げないようにする上で望ましい。
【0041】
また、次に、前席で音声入力が行われており、ICC制御部177のICC動作を停止したことを、後席のユーザに、リアディスプレイ12へのメッセージの所定期間の表示やリアスピーカ16からの音声メッセージの出力により通知する(ステップ310)。
【0042】
そして、以降は、音声認識エンジン176における音声認識成功が発生する度に(ステップ312)、音声入力シーケンスが完了したかどうかを調べる(ステップ314)。
そして、音声入力シーケンスが完了したならば(ステップ314)、ICC制御部177のICC動作の再開を制御し、ステップ308でICC制御部177のICC動作の停止を制御する前の状態に復帰する(ステップ316)。
【0043】
また、ICC制御部177のICC動作を再開したことを、後席のユーザに、リアディスプレイ12へのメッセージの表示やリアスピーカ16からの音声メッセージの出力により通知する(ステップ318)。
【0044】
そして、ステップ302からの処理に戻る。
以上、制御部178が行うICC動作制御処理について説明した。
以下、このようなICC動作制御処理の処理例を示す。
いま、制御装置17において、AVプレイヤアプリケーションと、TVアプリケーションが稼働しており、図4a1に示すように、フロントタッチパネルディスプレイ11にAVプレイヤアプリケーションが出力する画面を表示しており、図4b1に示すように、リアディスプレイ12にTVアプリケーションが出力するTVプログラムの画面を表示しているものとする。また、AVプレイヤアプリケーションは、音声認識エンジン176を利用しているものとする。
【0045】
この状態で、前席のユーザが、AVプレイヤアプリケーションに再生楽曲のスキップを行わせるために、スキップ操作の音声入力用の語彙である"次の曲"を発声すると、"次の曲"との語彙が音声認識エンジン176によって認識され、スキップ操作がAVプレイヤアプリケーションに出力される。
【0046】
そして、AVプレイヤアプリケーションは、音声認識エンジン176からのスキップ操作の出力に応答して、"次の曲"との音声入力、すなわち、スキップ操作の入力によって完結するユーザ操作受付処理を行って、当該ユーザ操作受付処理で受け付けたユーザ操作であるスキップ操作に従って、図4a2に示すように再生楽曲を再生中であった楽曲の次の楽曲に変更するスキップ動作を行う。
【0047】
ここで、この場合、AVプレイヤアプリケーションは、音声認識エンジン176からのスキップ操作の出力に応答して、"次の曲"との音声によるスキップ操作の音声入力によって完結するユーザ操作受付処理を行うので、図4b2に示すように、リアディスプレイ12には、「前席の音声操作が行われました」といったような、前席で音声入力が発生したことを伝えるメッセージが表示される。また、当該表示に代えて、もしくは、当該表示と共に、リアスピーカ16から「前席で音声操作が行われました」といったような、前席での音声入力が発生したことを伝える音声メッセージが出力される。
【0048】
ここで、このリアディスプレイ12に表示されるメッセージは、図4a3、b3に示すように、所定期間経過後に消去される。
このように、本実施形態によれば、前席のユーザがユーザ操作の音声入力を行った場合には、後席のユーザに前席での音声入力が発生したことを伝えるメッセージが出力されるので、後席のユーザが、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話した音声を、自身への発話と誤認してしまうことを抑制することができる。
【0049】
次に、いま、制御装置17において、ナビゲーションアプリケーションと、TVアプリケーションが稼働しており、図5a1に示すように、フロントタッチパネルディスプレイ11にナビゲーションアプリケーションが出力する、地図上で現在位置などを案内するナビゲーション画面を表示しており、図5b1に示すように、リアディスプレイ12にTVアプリケーションが出力するTVプログラムの画面を表示しているものとする。また、ナビゲーションアプリケーションは、音声認識エンジン176を利用しているものとする。
【0050】
この状態で、前席のユーザが、ナビゲーションアプリケーションに目的地の設定を行わせるために、目的地設定処理開始指示操作の音声入力用の語彙である"目的地"を発声すると、"目的地"との語彙が音声認識エンジン176によって認識され、目的地設定処理開始指示操作がナビゲーションプレイヤアプリケーションに出力される。
【0051】
そして、ナビゲーションアプリケーションは、音声認識エンジン176からの目的地設定処理開始指示操作の出力に応答して、目的地設定処理開始指示操作の音声入力の受け付け、目的地のカテゴリ選択操作の音声入力の受け付け、目的地施設指定操作の音声入力の受け付けで完結するユーザ操作受付処理を開始する。
【0052】
そして、当該ユーザ操作受付処理で受け付けたユーザ操作である目的地設定処理開始指示操作に従って、図5a2に示すような、目的地のカテゴリの一覧を表したカテゴリ選択画面をフロントディスプレイパネルに表示する。
【0053】
ここで、この場合、ナビゲーションアプリケーションは、上述のように複数のユーザ操作の音声入力で完結するユーザ操作受付処理を行うので、ICC制御部177のICC動作を停止して、フロントマイクロフォン13がピックアップした音声のリアスピーカ16からの出力、または、当該出力と、リアマイクロフォン14がピックアップした音声のフロントスピーカ15からの出力を停止する。
【0054】
また、図5b2に示すように、リアディスプレイ12には、「前席で音声操作をしています。前席音声の出力を停止します。」といったような、前席で音声入力が行われており、ICC制御部177のICC動作を停止したことを伝えるメッセージが表示される。また、当該表示に代えて、もしくは、当該表示と共に、リアスピーカ16から、「前席で音声操作をしています。前席音声の出力を停止します。」といったような、前席で音声入力が行われており、ICC制御部177のICC動作を停止したことを伝える音声メッセージが出力される。
【0055】
次に、前席のユーザが、図5a2に示すカテゴリ選択画面が表示されている状態、カテゴリ選択するために、カテゴリ選択操作の音声入力用の語彙である"近くのラーメン屋"を発声すると、"近くのラーメン屋"との語彙が音声認識エンジン176によって認識され、"近くのラーメン屋"のカテゴリの選択操作がナビゲーションプレイヤアプリケーションに出力され、ナビゲーションアプリケーションのユーザ操作受付処理において、"近くのラーメン屋"のカテゴリの選択操作が受け付けられる。
【0056】
そして、ナビゲーションプレイヤアプリケーションは、当該ユーザ操作受付処理で受け付けたユーザ操作である"近くのラーメン屋"のカテゴリの選択操作に従って、図5a3に示すような、"近くのラーメン屋"のカテゴリの施設の一覧を表示した、目的地施設選択画面をフロントディスプレイパネルに表示する。
【0057】
ここで、図5b2に示すようにリアディスプレイ12に表示されたメッセージは、図5b3に示すように、所定期間経過後に消去される。
次に、前席のユーザが、図5a3に示す目的地施設選択画面が表示されている状態、目的地施設を選択するために、目的地施設選択操作の音声入力用の語彙である"二つ目"を発声すると、"二つ目"との語彙が音声認識エンジン176によって認識され、"二つ目"の目的地施設選択操作がナビゲーションプレイヤアプリケーションに出力され、ナビゲーションアプリケーションのユーザ操作受付処理において、"二つ目"の目的地施設選択操作が受け付けられる。
【0058】
そして、ナビゲーションプレイヤアプリケーションは、当該ユーザ操作受付処理で受け付けたユーザ操作である"二つ目"の目的地施設選択操作に従って、目的地施設選択画面上の二つ目の目的地施設である「札幌ラーメン」目的地に設定し、ユーザ操作受付処理を完了し、フロントタッチパネルディスプレイ11の表示を、図5a4に示すようにナビゲーション画面に復帰する。ここで、ナビゲーションアプリケーションは、目的地を設定したならば、目的地までのルートを探索し、探索したルートや目的地を図5a4に示すように、ナビゲーション画面において表示する。
【0059】
また、"二つ目"の目的地施設選択操作の音声入力によって、"目的地"の音声入力によって開始されたナビゲーションプレイヤアプリケーションのユーザ操作受付処理によって受け付ける一連のユーザ操作の音声入力シーケンスは完了するので、ICC制御部177のICC動作が再開される。そして、図5b4に示すように、「前席の音声操作が終了しました。前席音声の出力を再開します」といったような、ICC制御部177のICC動作を再開したことを伝えるメッセージが一定の期間、リアディスプレイ12に表示される。また、当該表示に代えて、もしくは、当該表示と共に、リアスピーカ16から、「前席の音声操作が終了しました。前席音声の出力を再開します」といったような、ICC制御部177のICC動作を再開したことを伝える音声メッセージが出力される。
【0060】
このように、本実施形態によれば、前席のユーザがユーザ操作の音声入力を行った場合には、後席のユーザに前席での音声入力が発生したことを伝えるメッセージが出力されるので、後席のユーザが、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話した音声を、自身への発話と誤認してしまうことを抑制することができる。また、前席のユーザが一連のユーザ操作の音声入力を行っている期間中は、フロントマイクロフォン13でピックアップした音声をリアスピーカ16から出力する動作を停止するので、前席のユーザがユーザ操作の音声入力のために発話する他のユーザにとって意味のない音声を、後席のユーザに伝達して煩わしい思いをさせてしまうことも抑止できる。また、併せて、リアマイクロフォン14でピックアップした音声をフロントスピーカ15から出力する動作を停止した場合には、後席のユーザの発話によって、前席のユーザの音声入力が妨げられてしまうことも抑制できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態は、自動車の座席が前席と後席の2列である場合について説明したが、本実施形態は自動車が3列以上の座席を備えている場合についても同様に適用することができる。すなわち、この場合は、前席の列以外の全ての列の座席の、または、前席の列以外の一部の列の座席を、以上に示した実施形態における後席と同様に取り扱えばよい。
【符号の説明】
【0062】
11…フロントタッチパネルディスプレイ、12…リアディスプレイ、13…フロントマイクロフォン、14…リアマイクロフォン、15…フロントスピーカ、16…リアスピーカ、17…制御装置、18…周辺装置、171…タッチ操作入力部、172…表示制御部、173…オーディオ入力部、174…オーディオ出力制御部、175…周辺装置制御部、176…音声認識エンジン、177…ICC制御部、179…アプリケーション、178…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5