特許第6896554号(P6896554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896554
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ガス警報器
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/16 20060101AFI20210621BHJP
   G01N 27/16 20060101ALI20210621BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   G08B21/16
   G01N27/16 Z
   G01N27/12 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-152154(P2017-152154)
(22)【出願日】2017年8月7日
(65)【公開番号】特開2019-32632(P2019-32632A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中島 唯宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋隆
(72)【発明者】
【氏名】豊田 和男
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 正幸
(72)【発明者】
【氏名】宮城 正樹
【審査官】 西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−357467(JP,A)
【文献】 特開2004−192530(JP,A)
【文献】 特開2008−176656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00−27/24
G08B19/00−21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートアップとヒートダウンとのサイクルを繰り返す制御が行われるヒータと、前記ヒータによるヒートアップ及びヒートダウンによって高温駆動状態と低温駆動状態とを交互に繰り返すセンサ素子とを有し、前記高温駆動状態において周囲に検出対象となる第1のガスが存在する場合にその濃度に応じた信号を出力すると共に、前記低温駆動状態において周囲に検出対象となる第1のガスと異なる第2のガスが存在する場合にその濃度に応じた信号を出力するガスセンサと、
前記ガスセンサからの信号に基づいて所定濃度以上の第1又は第2のガスが検出されると異常状態であると判断する異常判断手段と、
前記異常判断手段により異常状態であると判断された場合に、警報部より警報出力させて異常状態を報知する報知制御手段と、を備えたガス警報器であって、
電源投入直後の特定時間中のヒートダウン時間に対するヒートアップ時間の比率を前記特定時間経過後におけるヒートダウン時間に対するヒートアップ時間の比率よりも大きくして前記ヒータをヒートアップ及びヒートダウンさせるヒータ制御手段を備え
前記ヒータ制御手段は、
前記特定時間中の前半に前記ヒータを継続的にヒートアップさせる継続的ヒートアップ時間を、前記特定時間経過後のガス検出時に前記ヒータをヒートアップさせる検出時ヒートアップ時間よりも長くするように、前記ヒータを継続的にヒートアップさせ、
前記特定時間中の後半に前記ヒータを継続的にヒートダウンさせる、
ことを特徴とするガス警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒータによってセンサ素子を加熱するヒートアップと、ヒータを非加熱状態とするヒートダウンとを繰り返し、センサ素子を高温駆動状態と低温駆動状態とで交互に駆動させるガスセンサが知られている。このようなガスセンサは、高温駆動状態において第1のガス(例えばメタンガス)を検出すると共に、低温駆動状態において第2のガス(例えば一酸化炭素ガス)を検出する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−192530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1のようなガスセンサはセンサ素子が所定の目標温度まで到達しなければ、上記の第1のガス及び第2のガスの濃度を正確に検出することができなくなってしまう。このため、上記ガスセンサを備えるガス警報器においては、電源投入してからガスセンサが充分に暖まるまでの初期遅延時間が発生する。このような初期遅延時間はガス事業者がガス警報器を家庭等に設置する場合において、設置時間の長期化を招き、設置作業の効率低下を招いてしまう。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、ヒータによりセンサ素子を加熱してガスを検出するガスセンサを備えるガス警報器において設置作業の効率低下を抑制することが可能なガス警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス警報器は、ヒートアップとヒートダウンとのサイクルを繰り返す制御が行われるヒータと、前記ヒータによるヒートアップ及びヒートダウンによって高温駆動状態と低温駆動状態とを交互に繰り返すセンサ素子とを有し、前記高温駆動状態において周囲に検出対象となる第1のガスが存在する場合にその濃度に応じた信号を出力すると共に、前記低温駆動状態において周囲に検出対象となる第1のガスと異なる第2のガスが存在する場合にその濃度に応じた信号を出力するガスセンサと、前記ガスセンサからの信号に基づいて所定濃度以上の第1又は第2のガスが検出されると異常状態であると判断する異常判断手段と、前記異常判断手段により異常状態であると判断された場合に、警報部より警報出力させて異常状態を報知する報知制御手段と、を備えたガス警報器であって、電源投入直後の特定時間中のヒートダウン時間に対するヒートアップ時間の比率を前記特定時間経過後におけるヒートダウン時間に対するヒートアップ時間の前記比率よりも大きくして前記ヒータをヒートアップ及びヒートダウンさせるヒータ制御手段、を備え、前記ヒータ制御手段は、前記特定時間中の前半に前記ヒータを継続的にヒートアップさせる継続的ヒートアップ時間を、前記特定時間経過後のガス検出時に前記ヒータをヒートアップさせる検出時ヒートアップ時間よりも長くするように、前記ヒータを継続的にヒートアップさせ、前記特定時間中の後半に前記ヒータを継続的にヒートダウンさせる、ことを特徴とする。
【0007】
このガス警報器によれば、電源投入直後の特定時間において、ヒートダウン時間に対するヒートアップ時間の比率を特定時間経過後における比率よりも大きくしてヒータをヒートアップ及びヒートダウンさせる。このため、電源投入直後の特定時間においては、ヒートアップ時間がヒートダウン時間に対して長くなり、早めの昇温が行われることとなる。従って、ヒータによりセンサ素子を加熱してガスを検出するガスセンサを備えるガス警報器において設置作業の効率低下を抑制することができる。
【0008】
加えて、このようなガスセンサは急激な加熱による劣化が懸念されるが、特定時間においてはヒートダウンも行われるため、このような懸念も防止される。
また、このガス警報器によれば、特定時間中の前半にヒータを継続的にヒートアップさせ、特定時間中の後半にヒータを継続的にヒートダウンさせるため、前半のヒートアップによって早期にセンサ素子を昇温させつつも後半にヒートダウンを行ってセンサ劣化を抑えることができる。
【0011】
また、本発明のガス警報器において、前記ヒータ制御手段は、前記特定時間経過後における前記比率のヒートアップとヒートダウンとのサイクルを所定回数繰り返したときに、昇温前の前記センサ素子を目標温度まで昇温させることができる場合において、前記特定時間経過後におけるヒートアップ時間に対して前記所定回数を乗算して得られる加熱時間が前記特定時間中において確保されるように1又は複数回のヒートアップを行うことが好ましい。
【0012】
このガス警報器によれば、加熱時間が特定時間中において確保されるように1又は複数回のヒートアップを行うため、特定時間中に適正時間だけヒートアップを行うこととなり、過剰な加熱を抑えてセンサ劣化を適切に防止しつつ設置作業の効率低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヒータによりセンサ素子を加熱してガスを検出するガスセンサを備えるガス警報器において設置作業の効率低下を抑制することが可能なガス警報器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るガス警報器を示すブロック図である。
図2図1に示したヒータ制御部によるヒータ制御の様子を示す図である。
図3】比較例に係る初期遅延時間を示す図である。
図4】本実施形態に係る初期遅延時間を示す第1の図である。
図5】本実施形態に係る初期遅延時間を示す第2の図である。
図6図3図5に示したヒータ制御によるセンサ素子の感度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るガス警報器を示すブロック図である。なお、以下に示すガス警報器は、検出対象ガスの高濃度異常を警報するものを説明するが、これに限らず、火災や人感などの他の警報器と組み合わされたものであってもよい。
【0017】
同図に示すように、ガス警報器1は、検出対象となるガスの濃度が所定濃度以上であること(異常状態)を検出した場合に警報出力して、ガスの濃度が所定濃度以上であることを報知するものであって、ガスセンサ10と、CPU20と、音声出力部(警報部)30と、表示部(警報部)40とを備えている。
【0018】
ガスセンサ10は、周囲の検出対象となるガスの濃度に応じた信号を出力するものである。本実施形態においてガスセンサ10は、半導体式のものを想定しているが、これに限らず、接触燃焼式のセンサであってもよい。このようなガスセンサ10は、ヒータ11と、センサ素子12とを備えている。
【0019】
ヒータ11は、センサ素子12を加熱するものである。センサ素子12は、ヒータ11によって目標温度(活性温度)まで加熱されることで、所定のガスに対して好適な感度を有するものである。このセンサ素子12は、酸化錫タイプのものであって、周囲に検出対象ガスが存在すると、その濃度に応じて抵抗値が減少するものである。また、センサ素子12には定電圧が付与されているため、周囲の検出対象ガスの濃度に応じて電流出力が増加することとなる。このように本実施形態に係るガスセンサ10は、電流変化を濃度に応じた信号として出力するものである。
【0020】
CPU20は、ガス警報器1の全体を制御するものであって、本実施形態においては概略的に、ヒータ制御部(ヒータ制御手段)21、異常判断部(異常判断手段)22、及び報知制御部(報知制御手段)23を備えている。
【0021】
ヒータ制御部21は、ヒータ11に対して電圧を印加したり遮断したりすることで、ヒートアップとヒートダウンとのサイクル(以下ヒートサイクルという)を繰り返す制御を実行するものである。図2は、図1に示したヒータ制御部21によるヒータ制御の様子を示す図である。なお、図2に示すヒータ制御は後述する特定時間経過後のヒータ制御である。
【0022】
図2に示すように、ヒータ制御部21は、所定のヒートアップ時間T1と、所定のヒートダウン時間T2とを交互に繰り返す制御を実行する。これにより、センサ素子12は、高温駆動状態と低温駆動状態とを交互に繰り返すこととなる。
【0023】
ここで、本実施形態においては、ヒートアップ状態からヒートダウン状態へ移行する直前がメタン検出ポイントとなっており、ヒートダウン状態からヒートアップ状態へ移行する直前が一酸化炭素検出ポイントとなっている。すなわち、本実施形態に係るガスセンサ10は、高温駆動状態において周囲にメタンガス(第1のガス)が存在する場合にその濃度に応じた信号を出力すると共に、低温駆動状態において周囲に一酸化炭素ガス(第2のガス)が存在する場合にその濃度に応じた信号を出力する。
【0024】
再度、図1を参照する。異常判断部22は、ガスセンサ10からの信号に基づいて所定濃度以上の第1又は第2のガスが検出されると異常状態であると判断するものである。報知制御部23は、異常判断部22により異常状態であると判断された場合に、音声出力部30及び表示部40より警報出力させて、異常状態を報知させるものである。
【0025】
音声出力部30は例えばスピーカやブザー及びこれを駆動する回路から構成されている。表示部40は例えばLEDや液晶ディスプレイ及びこれを駆動する回路から構成されている。
【0026】
ここで、本実施形態に係るガス警報器1は、ガスセンサ10が所定の目標温度(高温駆動状態において約350℃〜400℃、低温駆動状態において約70℃〜100℃)まで達しなければ上記メタンガスや一酸化炭素ガスの濃度を正確に検出できなくなってしまう。特に、メタンガスを正確に検出するためには、センサ素子12の温度を一度約350℃〜400℃程度まで昇温させる必要がある。このため、本実施形態に係るガス警報器1においては、電源投入してからガスセンサ10が充分に暖まるまでの初期遅延時間が発生する。
【0027】
図3は、比較例に係る初期遅延時間を示す図である。図3に示すように、比較例に係るヒータ制御部は、電源投入直後、5秒のヒートアップ時間T1と、15秒のヒートダウン時間T2とを交互に繰り返す制御を実行する。そして、ヒータ制御部は、1回20秒のヒートサイクルを3回繰り返すことで、ガスセンサを目標温度まで到達させる。
【0028】
しかし、比較例においては、1回20秒のヒートサイクルを3回繰り返すため、60秒の初期遅延時間が発生してしまう。特に、ガス事業者にとって、このような初期遅延時間は長く感じられると共に、設置時間が長くなって設置作業の効率低下を招いてしまう。
【0029】
そこで、本実施形態に係るヒータ制御部21は、電源投入直後の特定時間において、ヒートダウン時間T2に対するヒートアップ時間T1の比率(T1/T2)を、特定時間経過後における比率よりも大きくしてヒータ11をヒートアップ及びヒートダウンさせる。
【0030】
詳細に説明すると、特定時間は例えば30秒である。30秒の特定時間経過後においてヒータ制御部21は、図3に示したヒートサイクルと同様に、5秒のヒートアップ時間T1と、15秒のヒートダウン時間T2とを交互に繰り返す制御を実行する。ここで、特定時間経過後は、ヒートダウン時間T2に対するヒートアップ時間T1の比率が「1/3」となる。本実施形態に係るヒータ制御部21は、特定時間中において、比率を特定時間経過後の比率よりも大きくする。具体的に本実施形態においては、比率を「1」とする。これにより、電源投入直後の特定時間においては、ヒートアップ時間T1がヒートダウン時間T2に対して長くなり、早めの昇温が行われることとなる。
【0031】
図4は、本実施形態に係る初期遅延時間を示す第1の図である。図4に示すように、ヒータ制御部21は、特定時間中の前半にヒータ11を15秒間だけ継続的にヒートアップさせ(すなわち15秒のヒートアップ時間T1を設け)、特定時間中の後半にヒータ11を15秒間だけ継続的にヒートダウンさせる(すなわち15秒のヒートダウン時間T2を設ける)。これにより、初期遅延時間(特定時間に相当)を30秒に短縮することとなる。
【0032】
図5は、本実施形態に係る初期遅延時間を示す第2の図である。図5に示すように、ヒータ制御部21は、ヒータ11を5秒間だけヒートアップさせ(すなわち5秒のヒートアップ時間T1を設け)、その後ヒータ11を5秒間だけヒートダウンさせる(すなわち5秒のヒートダウン時間T2を設ける)。ヒータ制御部21は、これを1サイクルとして、3サイクル繰り返す。これにより、初期遅延時間(特定時間に相当)を30秒に短縮することとなる。
【0033】
以上のように、図4及び図5に示す例では、初期遅延時間を短縮して設置作業の効率低下を抑制することができる。加えて、このようなガスセンサ10は急激な加熱による劣化が懸念されるが、特定時間においてはヒートダウンも行われるため、このような懸念も防止される。
【0034】
ここで、図4及び図5に示す例において、ヒータ制御部21は、図3に示す比較例と同じだけの加熱時間を確保している。まず、本実施形態では、特定時間経過後における比率(1/3)のヒートサイクルを3回(所定回数)繰り返したときに、センサ素子12を目標温度まで昇温させることができる(図3参照)。このような場合において、ヒータ制御部21は、特定時間経過後におけるヒートアップ時間T1(すなわち5秒)に対して所定回数(すなわち「3」)を乗算して得られる加熱時間(すなわち15秒)が特定時間中において確保されるように1又は複数回のヒートアップを行う。
【0035】
これにより、特定時間中に適正時間だけヒートアップを行うこととなり、過剰な加熱を抑えてセンサ劣化を適切に防止しつつ設置作業の効率低下を抑制することとなる。
【0036】
図6は、図3図5に示したヒータ制御によるセンサ素子12の感度を示すグラフである。なお、図6において、破線は図3に示したヒータ制御によるセンサ素子12の感度を示しており、実線は図4に示したヒータ制御によるセンサ素子12の感度を示している。また、二点鎖線は図5に示したヒータ制御によるセンサ素子12の感度を示している。
【0037】
図6に示すように、図4及び図5に示す30秒時点でのセンサ素子12の感度(高温図4及び高温図5)は、図3に示した60秒時点のセンサ素子12の感度(高温図3)と同等となっている。このため、図4及び図5に示すヒータ制御であっても充分にガスセンサ10を第1及び第2のガスを検出可能に昇温させたといえる。
【0038】
ここで、図6に示す高温図3、高温図4及び高温図5とは、温度65℃湿度95%の環境に15日間放置した後に、図3図5のそれぞれのヒータ制御を行ったことを示している。このため、放置された環境の違いから、高温図3に示す感度は常温図3及び低温図3にも示す感度と異なっている。なお、図示を省略したが、常温放置及び低温放置の後に、図4及び図5のヒータ制御を行った場合も高温放置の場合と同様に、30秒時点で充分な感度を示した。
【0039】
このようにして、本実施形態に係るガス警報器1によれば、電源投入直後の特定時間において、ヒートダウン時間T2に対するヒートアップ時間T1の比率を特定時間経過後における比率よりも大きくしてヒータ11をヒートアップ及びヒートダウンさせる。このため、電源投入直後の特定時間においては、ヒートアップ時間T1がヒートダウン時間T2に対して長くなり、早めの昇温が行われることとなる。従って、ヒータ11によりセンサ素子12を加熱してガスを検出するガスセンサ10を備えるガス警報器1において設置作業の効率低下を抑制することができる。
【0040】
加えて、このようなガスセンサ10は急激な加熱による劣化が懸念されるが、特定時間においてはヒートダウンも行われるため、このような懸念も防止される。
【0041】
また、特定時間中の前半にヒータ11を継続的にヒートアップさせ、特定時間中の後半にヒータ11を継続的にヒートダウンさせるため、前半のヒートアップによって早期にセンサ素子12を昇温させつつも後半にヒートダウンを行ってセンサ劣化を抑えることができる。
【0042】
また、加熱時間が特定時間中において確保されるように1又は複数回のヒートアップを行うため、特定時間中に適正時間だけヒートアップを行うこととなり、過剰な加熱を抑えてセンサ劣化を適切に防止しつつ設置作業の効率低下を抑制することができる。
【0043】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0044】
例えば、上記実施形態において第1及び第2のガスの検出ポイントは図2に示すものでなくともよい。さらに、第1のガスはメタンガスに限らず、第2のガスも一酸化炭素ガスに限られるものではない。加えて、特定時間は30秒に限るものではないし、図4及び図5に示す例において特定時間と初期遅延時間とは一致しているが、特に一致していなくともよい。すなわち、特定時間を10秒とし、図5に示したヒートサイクルを1回だけ実行し、その後は図3に示した比較例と同様のヒータ制御を行ってもよい。この場合、特定時間は10秒となるが、初期遅延時間は50秒になると予測される。
【0045】
また、上記実施形態においてガス警報器1は、検出対象となるガスの濃度が所定濃度以上であることを検出した場合に警報出力するものであるが、この所定濃度は、第1のガスと第2のガスとで異なる値のものであってもよいし、同じ値となっていてもよい。
【0046】
さらに、図4に示す例においては、30秒の特定時間の前半15秒をヒートアップ時間T1とし、後半15秒をヒートダウン時間T2としているが、ここでいう前半及び後半とは特定時間の半分を区切りとするものではなく、特定時間の5秒や10秒経過時間を区切りとするものなどであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 :ガス警報器
10 :ガスセンサ
11 :ヒータ
12 :センサ素子
20 :CPU
21 :ヒータ制御部(ヒータ制御手段)
22 :異常判断部(異常判断手段)
23 :報知制御部(報知制御手段)
30 :音声出力部(警報部)
40 :表示部(警報部)
T1 :ヒートアップ時間
T2 :ヒートダウン時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6