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特許6896568シーラント塗布ノズル及びシーラント塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896568
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】シーラント塗布ノズル及びシーラント塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   B05C1/02 101
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-163367(P2017-163367)
(22)【出願日】2017年8月28日
(65)【公開番号】特開2019-37954(P2019-37954A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】高萩 道信
(72)【発明者】
【氏名】後藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】井加田 朗
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−178965(JP,U)
【文献】 特開2004−296330(JP,A)
【文献】 特表平04−506628(JP,A)
【文献】 特開平11−070351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラントが含浸可能であって、被塗布部材と接触することで接触部分が弾性変形する多孔性の含浸部と、
前記含浸部に対して前記シーラントを供給するシーラント供給部と、
前記接触部分を外部に露出させるように前記含浸部を囲む基部と、
前記基部と前記含浸部との間に形成され、前記シーラントを貯留する貯留部と、を備えるシーラント塗布ノズル。
【請求項2】
前記含浸部には、凹部が形成され、
前記凹部が前記シーラント供給部とされている請求項1に記載のシーラント塗布ノズル。
【請求項3】
記シーラント供給部は、前記貯留部に前記シーラントを供給可能とされ、
前記含浸部と前記貯留部とは隣接していて、
前記基部は、前記接触部分の周囲において弾性変形可能とされている請求項1または請求項2に記載のシーラント塗布ノズル。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のシーラント塗布ノズルと、
先端に前記シーラント塗布ノズルが設けられたアーム部と、
前記アーム部を所望の位置に移動させる駆動部と、
前記シーラント供給部に対して、所望の量の前記シーラントを供給するシーラント供給装置と、を備えるシーラント塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント塗布ノズル及びシーラント塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機の機体外板等を接合する際にボルトを使用する場合、頭部が外板等の表面から突出しない皿ボルトが多く用いられる。皿ボルトで外板等を接合する場合、防水性の向上、電食の防止、気密性の確保等の理由から、外板に形成されたボルト穴の円錐状の面取り部に対し、シーラントを塗布する必要がある。面取り部に対してシーラントを塗布する方法としては、作業者が手塗によって塗布する方法や、AR(Automatic Riveter)等の装置を用いて塗布する方法がある。
【0003】
面取り部に対し、シーラントを塗布する装置には、例えば特許文献1に記載の装置がある。特許文献1には、ドリル皿もみ機によって形成された皿穴にシーラントを付着させる塗布器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−130162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ARを使用して面取り部にシーラントを塗布する際には、塗布器の先端に金属製のノズルを用いていることが考えられる。このような金属製のノズルの先端部には、シーラントを吐出するための吐出穴が複数形成されていて、この吐出穴からシーラントを定量吐出させたあとに、外板に形成されたボルト穴の面取り部にノズルを接触させることで、面取り部にシーラントを塗布する。
【0006】
しかしながら、このようなノズルでは、吐出穴からシーラントが吐出された状態(すなわち吐出穴からシーラントが所定量突出した状態)で面取り部にノズルを接触させるので、接触した際に、吐出穴に対応する領域とそれ以外の領域とでは、シーラントの塗布態様が異なる。具体的には、吐出穴に対応する領域では、ノズルによって押し付けられるように塗布されるのに対し、吐出穴に対応する領域以外の領域では、ノズルによって押し付けられたシーラントが伸ばされることで塗布される。このように、領域によってシーラントの塗布態様が異なるので、面取り部に対して、均一にシーラントを塗布することができない可能性がある。
【0007】
大量にシーラントを吐出し、面取り部からはみ出すように塗布した場合には、均一に塗布できると考えられるが、この場合には、はみ出したシーラントを清掃する作業が発生するという問題があった。
また、はみ出したシーラントが面取り部以外の領域に付着することで、ARに使用しているセンサー類(たとえば、光電センサーや画像センサー)が異常検知し、設備が頻繁に停止してしまい、設備の稼働率が低下する可能性がある。
【0008】
また、このようなノズルは、金属製であり変形しないので、多様な形状の面取り部に対してシーラントを塗布することができない。これにより、異なった形状の面取り部に対してシーラントを塗布する場合には、手作業によってノズルの段取替えを行う必要がある。段取替えを行っている間は、設備を稼働することができないので、設備の稼働率が低下する可能性がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、適量のシーラントを均一に塗布することができ、かつ、迅速に作業を行うことができるシーラント塗布ノズル及びシーラント塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のシーラント塗布ノズル及びシーラント塗布装置は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係るシーラント塗布ノズルは、シーラントが含浸可能であって、被塗布部材と接触することで接触部分が弾性変形する多孔性の含浸部と、前記含浸部に対して前記シーラントを供給するシーラント供給部と、を備える。
【0011】
上記構成では、シーラント供給部から含浸部に対してシーラントが供給されると、含浸部にシーラントが含浸した状態となる。シーラントが含浸した状態の含浸部が被塗布部材と接触し、接触部分が弾性変形すると、変形量に応じた量のシーラントが、接触部分から滲み出る。そして、滲み出たシーラントが、被塗布部材に対して塗布される。
【0012】
このように、含浸部の変形量に応じて滲み出たシーラントのみが被塗布部材に塗布されるので、被塗布部材に塗布されるシーラントの量を調整し易くすることができる。また、含浸部は多孔性なので、接触部分全体からシーラントが吐出される。したがって、シーラントを被塗布部材に対して適量かつ均一に塗布することができる。なお、多孔性の含浸部としては、例えば、布材、網材、スポンジ材等を用いて構成することができる。
【0013】
また、含浸部が被塗布部材と接触することで接触部分が弾性変形する。このように、接触部分が被塗布部材に対応した形状に変形するので、多様な形状の被塗布部材に対して含浸部が接触可能となる。したがって、多様な形状の被塗布部材に対してシーラントを塗布することができる。
【0014】
また、シーラント塗布ノズルに供給されたシーラントが、含浸部によって含浸されるので、シーラント塗布ノズルが被塗布部材と接触していない状態では、シーラントがシーラント塗布ノズルから吐出されにくい。これにより、シーラント塗布ノズルからのシーラントの飛散及び滴下を抑制することができる。したがって、シーラント塗布ノズルから意図しないシーラントの吐出を抑制することができ、シーラントが被塗布部材以外に付着することを抑制することができる。
【0015】
本発明の一態様に係るシーラント塗布ノズルは、前記含浸部には、凹部が形成され、前記凹部が前記シーラント供給部とされていてもよい。
【0016】
上記構成では、含浸部に凹部が形成され、この凹部がシーラント供給部とされている。すなわち、シーラント供給部が、含浸部の内側に配置されている。これにより、シーラント供給部が含浸部の外側に配置された場合と比べて、シーラント供給部と含浸部のうちシーラント供給部から最も離れた箇所との距離が短くなる。したがって、含浸部全体に対して均一にシーラントを含浸させやすくすることができる。
【0017】
本発明の一態様に係るシーラント塗布ノズルは、前記接触部分を外部に露出させるように前記含浸部を囲む基部と、前記基部と前記含浸部との間に形成され、前記シーラントを貯留する貯留部と、を備え、前記シーラント供給部は、前記貯留部に前記シーラントを供給可能とされ、前記含浸部と前記貯留部とは隣接していて、前記基部は、前記接触部分の周囲において弾性変形可能とされていてもよい。
【0018】
上記構成では、基部と含浸部との間に貯留部が形成され、含浸部と貯留部とが隣接しているので、含浸部に含浸されているシーラントが減少した場合に、貯留部に貯留されているシーラントが含浸部に浸透する。このように、含浸部に含浸されているシーラントが減少した場合には、貯留部から含浸部に対してシーラントを供給することができる。また、上記構成では、基部が含浸部の接触部分の周囲において弾性変形可能とされている。これにより、含浸部と被塗布部材とが接触した際に、基部も弾性変形する。基部が弾性変形すると、基部と含浸部との間に形成された貯留部が縮小する。貯留部が縮小すると、貯留部に貯留されていたシーラントが含浸部に押し出される。したがって、シーラントを塗布する際に、基部が弾性変形する場合には、より好適に貯留部から含浸部に対してシーラントを供給することができる。
【0019】
このように、シーラント塗布ノズル内でシーラントを貯留し、貯留したシーラントを含浸部に供給することができるので、外部からシーラント塗布ノズルにシーラントを供給することができない状態でも、連続的にシーラントを塗布することができる。
【0020】
また、シーラント塗布ノズル内の貯留部において、含浸されていない状態のシーラントを貯留している。同量のシーラントを貯留する場合には、含浸部に含浸された状態よりも、含浸されていない状態の方が、体積が小さい。したがって、含浸された状態のみでシーラントを貯留する場合に比べて、より多くのシーラントをシーラント塗布ノズル内に貯留することができる。
【0021】
本発明の一態様に係るシーラント塗布装置は、上記いずれかのシーラント塗布ノズルと、先端に前記シーラント塗布ノズルが設けられたアーム部と、前記アーム部を所望の位置に移動させる駆動部と、前記シーラント供給部に対して、所望の量の前記シーラントを供給するシーラント供給装置と、を備える。
【0022】
上記構成では、含浸部の変形量に応じた量のシーラントが被塗布部材に塗布される。含浸部の変形量(すなわち、塗布されるシーラントの量)は、含浸部と被塗布部材との接触度合によって決定する。含浸部と被塗布部材との接触度合は、シーラント塗布ノズルが設けられたアーム部を移動させる駆動部によって決まる。
このように、上記構成では、比較的制御し易い駆動部の動きによって、被塗布部材に対して塗布するシーラントの量が決まるので、塗布するシーラントの量を調整し易くすることができる。
したがって、たとえば、アーム部の移動を一定とした場合には、塗布するシーラントの量も一定とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、適量のシーラントを均一に塗布することができ、かつ、迅速に作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るシーラント塗布装置の斜視図である。
図2図1に示すシーラント塗布装置の側面図である。
図3図1に示すシーラント塗布装置の平面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るシーラント塗布ノズルの断面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係るシーラント塗布ノズルの断面図であって、シーラント塗布ノズルと面取り部とが接触する前の状態を示す図である。
図5B】本発明の一実施形態に係るシーラント塗布ノズルの断面図であって、シーラント塗布ノズルと面取り部とが接触している状態を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るシーラント塗布装置の作動を示す模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係るシーラント塗布ノズル及びシーラント塗布装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るシーラント塗布装置1は、AR(Automatic Riveter)100に適用される。AR100(図6参照)は、航空機の機体外板等を接合する際に用いられる装置である。
【0026】
図1から図3に示されるように、シーラント塗布装置1は、シーラント供給装置2と、シーラント供給装置2の一部を保持するアーム部3と、アーム部3を移動させる駆動部4(図6参照)と、シーラント供給装置2からシーラントが供給されるシーラント塗布ノズル5(図4参照)とを備える。
【0027】
シーラント供給装置2は、内部にシーラントが充填されている充填部11と、充填部11からシーラントを押し出すピストン12と、一端が充填部11に接続されて押し出されたシーラントが流通する供給管13とを有する。シーラント供給装置2は、上述のようにシーラント塗布装置1の一部を構成しているが、シーラント塗布装置1から着脱可能に構成されている。
【0028】
充填部11は、樹脂等で形成された円筒形状部材であり、円筒面が鉛直面と直行するように配置される。充填部11の一端には供給管13が接続され、他端は後述するピストン12の押出し部16によって閉止されている。このように、充填部11の内部には空間が形成され、この空間内にシーラントが充填されている。
【0029】
ピストン12は、図6に示されているように、サーボモータ15によって駆動される。ピストン12は、充填部11の内部に配置されて充填部11の内壁面に対して摺動自在に係合する押出し部16と、サーボモータ15の駆動力によって充填部11の内部の空間を減少させるように押出し部16を押圧する押圧部17とを有する。ピストン12は、樹脂等で形成されている。なお、サーボモータ15と押圧部17とは、相対移動を許容するように接続されている。
【0030】
供給管13は、図1図3に示されているように、樹脂等で形成されて可撓性を有する圧送用の管体であり、アーム部3に沿うように配置される。供給管13は充填部11とノズル取付け部14とを接続している。また、供給管13の内部にはシーラントが流通する。
【0031】
アーム部3は、一端が駆動部4に接続されて第1アーム部21と、第1アーム部21の他端から充填部11と略平行方向に延びる第2アーム部22と、第2アーム部22の先端に設けられるノズル取付け部14とを有する。第2アーム部22には、該第2アーム部22に沿うように延びる供給管収容溝23が形成されている。供給管収容溝23は、上方に開口していて、供給管収容溝23内に供給管13が配置される。
【0032】
ノズル取付け部14は、第2アーム部22に固定される固定部から所定の方向に延びている。また、ノズル取付け部14は、先端方向(自由端方向)に開口する有底の略円筒状の部材であって、側面に開口が形成されている。側面に形成された開口と供給管13の他端とが連通可能に構成されている。また、ノズル取付け部14の先端部分の内周面には、シーラント塗布ノズル5が螺合する雄ねじが形成されている。
【0033】
駆動部4は、図6に示すように、ノズル取付け部14に取り付けられたシーラント塗布ノズル5を水平方向に移動させる水平シリンダ部25と、シーラント塗布ノズル5を上下方向に移動させる上下カム26とを有する。水平シリンダ部25が駆動することで、水平シリンダ部25やサーボモータ15等を具備する固定部27に対して、上下カム26やシーラント供給装置2等を具備する可動部28が相対的に移動する。
【0034】
シーラント塗布ノズル5は、図4に示すように、基部31と、基部31の内側に設けられる有底の略円柱形状の含浸部32と、含浸部32の内周側に形成されるシーラント供給路(シーラント供給部)33と、含浸部32の外周側に形成される貯留空間(貯留部)34とを有する。また、シーラント塗布ノズル5の外周面(詳細には、基部31の外周面31d)には、ノズル取付け部14の内周面と螺合する雌ねじが形成されている。
【0035】
基部31は、樹脂等で形成されて弾性を有する部材(例えば、ゴム)で形成された略円柱体であり、着脱可能にノズル取付け部14に取り付けられる。基部31の先端は、外径が先端に向かって次第に縮径するテーパ状に形成される。また、基部31の内部には、含浸部32及び貯留空間34が設けられる内部空間31aが形成されている。また、基部31の末端面31c(ノズル取付け部14の位置する側の面)の平面視略中央には、末端面31cから内部空間31aに貫通する基部内流路31bが形成されている。なお、基部31は、ゴム以外の部材で形成してもよい。
【0036】
含浸部32は、末端方向(ノズル取付け部14の位置する方向)に開口した有底の円筒体である。すなわち、含浸部32の末端面32dの平面視略中央には、先端方向に凹む凹部32cが形成されていている。そして、この凹部32cが含浸部内流路32eを構成している。含浸部32は、弾性を有する多孔性の部材(例えば、スポンジ材)で形成され、シーラントを含浸可能となっている。また、含浸部32は、先端部分が基部31の先端部分から所定長さだけ突出するように配置されている。すなわち、含浸部32は、先端部分(後述する面取り部35aと接触する接触部分)を露出するように基部31に囲まれている。
含浸部32の先端面32aの外周部分は、外周縁に向かうに従って末端側に近づくように傾斜する傾斜面32bとなっている。また、含浸部32は、基部31よりも弾性率の小さい部材で形成される。なお、含浸部32は、スポンジ材以外の部材で形成してもよく、例えば、フェルト等の布材や、網状の部材で形成してもよい。
【0037】
シーラント供給路33は、基部31に形成される基部内流路31bと、含浸部32の内部に形成される含浸部内流路32eとが連通することで構成されている。シーラント塗布ノズル5がノズル取付け部14に取り付けられた状態では、シーラント供給路33は、ノズル取付け部14を介して供給管13と連通する。
【0038】
貯留空間34は、基部31と含浸部32との間に形成される。貯留空間34は、含浸部32の外周面に沿うように形成される環状の閉空間である。すなわち、貯留空間34と含浸部32とは隣接して設けられている。
【0039】
また、本実施形態に係るARは、シーラント塗布装置1のほかに、加工対象物(被塗布部材)(被塗布部材)にボルト穴35を形成するドリル36と、ボルト穴35にボルトを挿入するボルト挿入装置(図示省略)と、AR100に備えられた各種装置を制御する制御部(図示省略)とを備えている。本実施形態では、加工対象物として、航空機の外板を用いた例について説明している。
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。
【0040】
次に、AR100を用いて、外板を接合する方法について図6を用いて説明する。具体的には、第1外板40と第2外板41とを接合する方法について説明する。
まず、第1外板40と第2外板41とを板間に隙間が形成されないように、クランプピース42とロワアンビル43とで挟んで固定する。第1外板40と第2外板41とを固定した状態で、ドリル36によって第1外板40と第2外板41とを貫通するボルト穴35を形成する。本実施形態におけるドリル36は、皿ボルト用のボルト穴を形成するドリルを採用しているので、ボルト穴35には、円錐状の面取り部35aが形成される。
ボルト穴35が形成されると、防水性の向上、電食の防止、気密性の確保等の理由から、ボルト穴35の面取り部35aに対して、シーラントを塗布する。本実施形態におけるシーラントは、半液体状のシール材である。シーラントは、シーラント塗布装置1を用いて塗布する。具体的には、シーラント塗布ノズル5を、水平シリンダ部25によって水平方向の移動に移動させ、かつ、上下カム26によって上下方向の移動させることで、クランプピース42の側面に形成された開口を通過させて、面取り部35aと1秒間ほど接触させる。面取り部35aにシーラントを塗布する方法の詳細については後述する。
面取り部35aにシーラントが塗布されると、ボルト挿入装置によって、ボルト穴35にボルト(図示省略)が挿入される。ボルトが挿入されることによって、第1外板40と第2外板41とが接合される。
【0041】
次に、シーラント塗布装置1を用いて、面取り部35aにシーラントを塗布する方法を図5A図5B及び図6を用いて説明する。
まず、図6に示すように、シーラント塗布ノズル5を移動させていない待機位置(すなわち、図6に示されている位置)で、サーボモータ15が駆動させ、ピストン12を充填部11の内部の空間を減少させるように移動させる。ピストン12が移動し、充填部11の内部の空間が減少すると、充填部11の内部の空間に充填されていたシーラントは、供給管13内に流入する。そこからさらに、ピストン12が同方向に移動すると、その押圧力によって、供給管13内をシーラントが流通する。供給管13内を流通したシーラントは、ノズル取付け部14を介してシーラント塗布ノズル5に到達する。
【0042】
シーラント塗布ノズル5に到達したシーラントは、図5Aの白抜き矢印で示すように、シーラント供給路33に流入する。シーラント供給路33に流入したシーラントは、シーラント供給路33に面する含浸部32の内周面から含浸部32に浸入する。含浸部32に浸透したシーラントは、含浸部32全体に及ぶので、含浸部32全体がシーラントを含浸された状態となる。
含浸部32全体にシーラントが含浸された状態から、さらに、シーラントを含浸部32に供給すると、含浸部32からシーラントがあふれ、含浸部32と隣接する貯留空間34に流入する。すなわち、貯留空間34には、シーラント供給路33から含浸部32を介してシーラントが供給される。
このとき、含浸部32の先端部分からもシーラントがあふれるが、シーラント塗布ノズル5は、待機位置に位置しているので、先端部分からあふれたシーラントが、加工対象物である外板や、AR100が備える他の装置等に付着することはない。貯留空間34内にシーラントが十分に貯留されると、サーボモータ15を停止する。サーボモータ15を停止させるタイミングは、シーラント塗布ノズル5に圧力等を検出する装置を設け、シーラント塗布ノズル5内の状態に基づいて停止してもよいし、所定の量のシーラントを押出すと停止するようにしてもよい。
【0043】
サーボモータ15を停止させた後に、駆動部4によって上述のようにシーラント塗布ノズル5をボルト穴35の面取り部35aに接触させる。シーラントが含浸した状態の含浸部32が面取り部35aと接触すると、図5Bで示すように接触部分が面取り部35aの形状に対応するように弾性変形する。このとき、変形量に応じた量のシーラントが、接触部分から滲み出る。そして、滲み出たシーラントが、面取り部35aに対して塗布される。
このとき、図5Bのように、基部31の先端部分も変形する。基部31の先端部分が変形すると、基部31と含浸部32との間に形成された貯留空間34が縮小する。貯留空間34が縮小すると、貯留空間34内に貯留されていたシーラントが含浸部32に押し出される。したがって、貯留空間34から含浸部32に対してシーラントが供給される。また、たとえ、基部31が弾性変形しない場合であっても、含浸部32に含浸されているシーラントが減少した場合には、貯留空間34に貯留されているシーラントが含浸部32に浸透するので、貯留空間34から含浸部32にシーラントが供給される。
【0044】
シーラントを塗布すると、駆動部4によって、シーラント塗布ノズル5と面取り部35aとの接触を解除する。このようにして、面取り部35aに対してシーラントを塗布する。
【0045】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、含浸部32の変形量に応じて滲み出たシーラントのみが面取り部35aに塗布されるので、面取り部35aに塗布されるシーラントの量を調整し易くすることができる。また、含浸部32は多孔性なので、接触部分全体からシーラントが吐出される。したがって、シーラントを面取り部35aに対して適量かつ均一に塗布することができる。また、適量かつ均一に塗布することができるので、シーラントを塗布する際に、面取り部35aからシーラントがはみ出すことを防止することができる。シーラントがはみ出した場合には、はみ出したシーラントを除去しなくてはならないが、本実施形態では、シーラントのはみ出しを防止できるので、はみ出したシーラントを除去する作業を省くことができる。これにより、設備稼働率を向上させることができる。
また、面取り部35aからシーラントがはみ出すと、はみ出したシーラントが面取り部35a以外の領域に付着することで、AR100に使用しているセンサー類(たとえば、光電センサーや画像センサー)が異常検知し、設備が頻繁に停止してしまい、設備の稼働率が低下する可能性があるが、本実施形態ではこのような事態が発生しないので、設備稼働率の低下を防止することができる。
【0046】
また、含浸部32が面取り部35aと接触することで接触部分が弾性変形する。このように、接触部分が面取り部35aに対応した形状に変形するので、多様な形状の面取り部35aに対して含浸部32が接触可能となる。したがって、多様な形状の面取り部35aに対してシーラントを塗布することができる。航空機の外板を接合する際には、様々な形状のボルトが使用される。ボルトの形状が異なれば、当然ボルト穴の形状も異なるが、本実施形態では、多様な形状の面取り部35aに対してシーラントを塗布することができるので、形状の異なるボルト穴に対しても、シーラント塗布ノズル5の段取替えをしなくてもシーラントを塗布することができる。したがって、設備稼働率を向上させることができる。
【0047】
また、シーラント塗布ノズル5に供給されたシーラントが、含浸部32によって含浸されるので、シーラント塗布ノズル5が面取り部35aと接触していない状態では、シーラントがシーラント塗布ノズル5から吐出されにくい。これにより、シーラント塗布ノズル5からのシーラントの飛散及び滴下を抑制することができる。したがって、シーラント塗布ノズル5から意図しないシーラントの吐出を抑制することができ、シーラントが面取り部35a以外に付着することを抑制することができる。
【0048】
また、含浸部32に凹部32cが形成され、この凹部32cがシーラント供給路33の一部とされている。すなわち、シーラント供給路33の一部が、含浸部32の内側に配置されている。これにより、シーラント供給路33が含浸部32の外側に配置された場合と比べて、シーラント供給路33と、含浸部32のうちシーラント供給路33から最も離れた箇所との距離が短くなる。したがって、含浸部32全体に対して均一にシーラントを含浸させやすくすることができる。
【0049】
また、含浸部32に含浸されているシーラントが減少した場合には、貯留空間34から含浸部32に対してシーラントを供給することができる。また、基部31が弾性変形する場合には、基部31によって貯留空間34が縮小されるので、より好適に貯留空間34から含浸部32に対してシーラントを供給することができる。これにより、シーラント塗布ノズル5内でシーラントを貯留し、貯留したシーラントを含浸部32に供給することができるので、外部からシーラント塗布ノズル5にシーラントを供給することができない状態でも、複数のボルト穴の面取り部に対して、連続的にシーラントを塗布することができる。
【0050】
また、含浸部32の変形量に応じた量のシーラントが面取り部35aに塗布される。含浸部32の変形量(すなわち、塗布されるシーラントの量)は、含浸部32と面取り部35aとの接触度合によって決定する。含浸部32と面取り部35aとの接触度合は、シーラント塗布ノズル5が設けられたアーム部3を移動させる駆動部4によって決まる。
このように、本実施形態では、比較的制御し易い駆動部4の動きによって、面取り部35aに対して塗布するシーラントの量が決まるので、塗布するシーラントの量を調整し易くすることができる。したがって、たとえば、アーム部3の移動を一定とした場合には、塗布するシーラントの量も一定とすることができる。
【0051】
また、シーラント塗布ノズル5を金属などと比較して安価な樹脂等で形成することで、シーラント塗布ノズル5を使い捨てとした場合であっても、原料コストの上昇を抑制することができる。また、使い捨てとしない場合には、シーラント塗布ノズル5の洗浄が必要となるが、使い捨てとすることで、シーラント塗布ノズル5の洗浄工程を削減することができるので、設備稼働率を向上させることができる。
【0052】
また、含浸部32の先端面32aに傾斜面32bを形成している。このように、シーラントを塗布する含浸部32を面取り部35aの形状と対応する形状としているので、より好適にシーラントを塗布することができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に係る発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、本実施形態では、シーラントを塗布する際に、シーラント塗布ノズル5と面取り部35aとを接触させるだけの例を説明したが、塗布する際に、シーラント塗布ノズル5と面取り部35aとを接触させた後に、シーラント塗布ノズル5全体をシーラント供給路33が伸びる方向軸を中心として回転させてもよい。また、シーラント塗布ノズル5に振動発振器を取り付けて、シーラント塗布ノズル5と面取り部35aとが接触している際に、シーラント塗布ノズル5を振動させてもよい。また、シーラント塗布ノズル5と面取り部35aとを複数回接触させてもよい。
また、本実施形態では、基部31を弾性体で形成したが、基部31は、金属等で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 シーラント塗布装置
2 シーラント供給装置
3 アーム部
4 駆動部
5 シーラント塗布ノズル
11 充填部
12 ピストン
13 供給管
14 ノズル取付け部
15 サーボモータ
16 押出し部
17 押圧部
31 基部
32 含浸部
32a 先端面
32b 傾斜面
32c 凹部
33 シーラント供給路(シーラント供給部)
34 貯留空間(貯留部)
35 ボルト穴
35a 面取り部
40 第1外板
41 第2外板
100 AR
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6