(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量部)に対して、高炉スラグ微粉末およびフライアッシュを含まない、または、高炉スラグ微粉末とフライアッシュのいずれか一方または両方を、合計量が50質量部以下となる量で含む請求項1又は2に記載の水硬性粉末組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の水硬性粉末組成物は、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン(3CaO・3Al
2O
3・CaSO
4)を50質量%以上の割合で含むアウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末を含む水硬性粉末組成物であって、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量%)中、ポルトランドセメント粉末の含有率が20〜40質量%であり、カルシウムアルミネート粉末の含有率が2〜20質量%であり、アウイン含有クリンカー粉末の含有率が20〜50質量%であり、石膏粉末の含有率がSO
3換算値で5〜30質量%であり、可溶性硫酸塩粉末の含有率がSO
4換算値で1〜12質量%であるものである。
【0008】
本発明で用いられるポルトランドセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、材料にかかるコストを低減する観点から、普通ポルトランドセメントおよび早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0009】
ポルトランドセメント粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2,000〜7,000cm
2/g、より好ましくは2,500〜6,500cm
2/g、さらに好ましくは2,800〜6,000cm
2/g、特に好ましくは3,000〜5,500cm
2/gである。該ブレーン比表面積が2,000cm
2/g以上であれば、水硬性粉末組成物の強度発現性がより向上する。該ブレーン比表面積が7,000cm
2/g以下であれば、水硬性粉末組成物の作業性がより向上する。
【0010】
本発明の水硬性粉末組成物に含まれる、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量%)中、ポルトランドセメント粉末の含有率は、20〜40質量%、好ましくは21〜39質量%、より好ましくは22〜38質量%である。該含有率が20質量%未満であると、水硬性粉末組成物の強度発現性が低下する。該含有率が40質量%を超えると、硬化後の寸法安定性が低下する。
【0011】
ポルトランドセメント粉末は、ポルトランドセメントを所望のブレーン比表面積を有する粉末状となるまで粉砕した後、他の材料と混合してもよく、他の材料と混合した後、混合物中のポルトランドセメント粉末が所望のブレーン比表面積を有するまで粉砕してもよい。
【0012】
本発明で用いられるカルシウムアルミネート粉末の、CaO/Al
2O
3のモル比は、好ましくは0.8〜3.0、より好ましくは1.0〜2.8、特に好ましくは1.2〜2.6である。該モル比が0.8以上であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性がより大きくなり、常温(例えば、20℃)で、水硬性粉末組成物の水和反応が進みやすくなる。該モル比が3.0以下であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性が過度に大きくならず、硬化時間の制御がしやすくなり、作業性がより向上する。
【0013】
カルシウムアルミネート粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2,000〜7,000cm
2/g、より好ましくは2,500〜6,500cm
2/g、特に好ましくは3,000〜6,000cm
2/gである。該ブレーン比表面積が2,000cm
2/g以上であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性がより大きくなり、水硬性粉末組成物の水和反応が進みやすくなる。該ブレーン比表面積が7,000cm
2/g以下であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性が過度に大きくならず、硬化時間の制御がしやすくなり、作業性がより向上する。
【0014】
本発明の水硬性粉末組成物に含まれる、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量%)中、カルシウムアルミネート粉末の含有率は、2〜20質量%、好ましくは3〜19質量%、より好ましくは4〜18質量%である。該含有率が2質量%未満であると、硬化後、常温環境下における、硬化体の強度が低下する。また、硬化後、水中等の低温環境下における膨張が大きくなる。該含有率が20質量%を超えると、硬化体の乾燥収縮が大きくなる。
【0015】
カルシウムアルミネート粉末は、カルシウムアルミネートを所望のブレーン比表面積を有する粉末状となるまで粉砕した後、他の材料と混合してもよく、他の材料と混合した後、混合物中のカルシウムアルミネート粉末が所望のブレーン比表面積を有するまで粉砕してもよい。
また、本発明で用いられるカルシウムアルミネート粉末を含む材料として、市販のアルミナセメントを用いてもよい。
また、カルシウムアルミネート粉末は、結晶質でも非晶質でもよく、これらの混合物であってもよい。
【0016】
本発明で用いられるアウイン含有クリンカー粉末中のアウイン(3CaO・3Al
2O
3・CaSO
4)の割合は、50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは58質量%以上である。該割合が50質量%未満であると、硬化体の乾燥収縮が大きくなる。該割合の上限値は、特に限定されないが、通常、70質量%である。
アウイン含有クリンカー粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2,500〜6,000cm
2/g、より好ましくは3,000〜5,500cm
2/g、特に好ましくは3,500〜5,000cm
2/gである。該ブレーン比表面積が2,500cm
2/g以上であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性がより大きくなり、水硬性粉末組成物の水和反応が進みやすくなる。該ブレーン比表面積が6,000cm
2/g以下であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性が過度に大きくならず、硬化時間の制御がしやすくなり、作業性がより向上する。
【0017】
本発明の水硬性粉末組成物に含まれる、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量%)中、アウイン含有クリンカー粉末の含有率は、20〜50質量%、好ましくは25〜48質量%、特に好ましくは28〜45質量%である。該含有率が20質量%未満であると、硬化体の乾燥収縮が大きくなる。該含有率が50質量%を超えると、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性が過度に大きくなり、硬化時間の制御が難しくなり、作業性が低下する。
【0018】
アウイン含有クリンカー粉末は、アウイン含有クリンカーを所望のブレーン比表面積を有する粉末状となるまで粉砕した後、他の材料と混合してもよく、他の材料と混合した後、混合物中のアウイン含有クリンカー粉末が所望のブレーン比表面積を有するまで粉砕してもよい。
【0019】
本発明で用いられる石膏の例としては、二水石膏、半水石膏及び無水石膏等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、反応性の観点から無水石膏が好ましく、II型無水石膏がより好ましい。
石膏粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3,000〜10,000cm
2/g、より好ましくは4,000〜9,000cm
2/g、さらに好ましくは5,000〜8,500cm
2/g、特に好ましくは5,500〜8,000cm
2/gである。該ブレーン比表面積が3,000cm
2/g以上であれば、水硬性粉末組成物の水和反応の反応性がより大きくなり、水硬性粉末組成物の水和反応が進みやすくなる。また、硬化体の強度が大きくなる。該ブレーン比表面積が10,000cm
2/g以下であれば、粉砕にかかるコストを低減することができる。
【0020】
本発明の水硬性粉末組成物に含まれる、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量%)中、石膏粉末の含有率は、SO
3換算値で、5〜30質量%、好ましくは8〜28質量%、より好ましくは10〜26質量%である。
該含有率が5質量%未満であると、硬化体の乾燥収縮が大きくなる。該含有率が30質量%を超えると、水中等の低温環境下における、硬化体の膨張が大きくなる。
【0021】
石膏粉末は、石膏を所望のブレーン比表面積を有する粉末状となるまで粉砕した後、他の材料と混合してもよく、他の材料と混合した後、混合物中の石膏粉末が所望のブレーン比表面積を有するまで粉砕してもよい。
【0022】
本発明で用いられる可溶性硫酸塩の例としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸リチウム等が挙げられる。中でも、材料にかかるコストを低減する観点から、硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄が好ましい。
なお、本明細書中、「可溶性硫酸塩」とは、20℃の条件下における、水100gに溶解する量が10g以上である硫酸塩をいう。
可溶性硫酸塩粉末のブレーン比表面積は、特に限定されるものではない。また、可溶性硫酸塩の粒径は、可溶性硫酸塩をより均一に混ざりやすくする観点から、例えば、2.0mm以下、好ましくは1.0mm以下、より好ましくは0.5mm以下、特に好ましくは0.1mm以下である。なお、粒径とは、可溶性硫酸塩粉末を構成する、可溶性硫酸塩の粒における最大寸法(例えば、断面がだ円である粒においては、長軸の寸法をいう。)をいう。
【0023】
ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量(100質量%)中、可溶性硫酸塩粉末の含有率は、SO
4換算値で1〜12質量%、好ましくは2〜11質量%、より好ましくは2.5〜10質量%である。該含有率が上記数値範囲内であれば、水中等の低温環境下における、硬化体の膨張を小さくすることができる。
【0024】
本発明の水硬性粉末組成物は、廃棄物利用促進等の観点から、高炉スラグ微粉末とフライアッシュのいずれか一方または両方を含んでいてもよい。
水硬性粉末組成物が、高炉スラグ微粉末とフライアッシュのいずれか一方または両方を含む場合、その合計量は、ポルトランドセメント粉末、カルシウムアルミネート粉末、アウイン含有クリンカー粉末、石膏粉末、および、可溶性硫酸塩粉末の全量100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、特に好ましくは40質量部以下である。該量が50質量部以下であれば、硬化体の乾燥収縮の増加および硬化体の強度の低下を抑えつつ、廃棄物の利用を図ることができる。
該量の下限値は、廃棄物利用促進等の観点から、好ましくは5質量部、より好ましくは8質量部である。
【0025】
高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積は、好ましくは2,000〜10,000cm
2/g、より好ましくは2,500〜8,000cm
2/g、特に好ましくは3,000〜6,000cm
2/gである。該ブレーン比表面積が2,000cm
2/g以上であれば、硬化体の強度をより十分に確保できる。該ブレーン比表面積が10,000cm
2/g以下であれば、水硬性粉末組成物の流動性および作業性がより向上する。
【0026】
フライアッシュの例としては、「JIS A 6201:2008(コンクリート用フライアッシュ)」に規定する、フライアッシュI種、II種、III種およびIV種等が挙げられる。中でも、硬化体の強度をより十分に確保できる観点から、フライアッシュI種、II種およびIII種が好ましい。
フライアッシュのブレーン比表面積は、好ましくは2,000〜10,000cm
2/g、より好ましくは2,500〜8,000cm
2/g、特に好ましくは3,000〜6,000cm
2/gである。該ブレーン比表面積が2,000cm
2/g以上であれば、硬化体の強度をより十分に確保できる。該ブレーン比表面積が10,000cm
2/g以下であれば、水硬性粉末組成物の硬化前の流動性および作業性がより向上する。
【0027】
本発明の水硬性粉末組成物は、必要に応じて他の材料を配合してもよい。
必要に応じて配合される他の材料の例としては、細骨材、粗骨材、セメント混和剤、水等が挙げられる。
細骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材、またはこれらの混合物等が挙げられる。
粗骨材としては、特に限定されず、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、海砂利、砕石、スラグ粗骨材、及び軽量粗骨材、又はこれらの混合物等が挙げられる。
細骨材の配合量は、特に限定されないが、例えば、水硬性粉末組成物100質量部に対して、好ましくは50〜700質量部、より好ましくは80〜400質量部である。
また、粗骨材を用いる場合、細骨材率は、好ましくは5〜60%、より好ましくは30〜50%である。細骨材率が前記範囲内であれば、水硬性粉末組成物の流動性や作業性が向上する。
【0028】
セメント混和剤の例としては、生石灰や消石灰等の石灰や、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウムカリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、ヘプトン酸、ヘプトン酸ナトリウム等の硬化時間調整剤や、炭酸リチウム等の硬化促進剤や、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等のセメント分散剤や、増粘剤や、保水剤や、保湿剤や、分離低減剤や、膨張材や、収縮低減剤や、消泡剤や、起泡剤や、発泡剤や、AE剤等が挙げられる。
セメント混和剤の配合量は、セメント混和剤の種類等によっても異なるが、材料にかかるコスト低減等の観点から、水硬性粉末組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.5〜6質量部である。
【0029】
上記水硬性粉末組成物、セメント混和剤、細骨材、および水を含むセメント組成物において、水と水硬性粉末組成物の質量比(水/水硬性粉末組成物)は、好ましくは0.2〜0.6、より好ましくは0.3〜0.55である。該質量比が0.2以上であれば、セメント組成物の流動性および作業性が向上する。該質量比が0.6以下であれば、セメント組成物の強度発現性が向上する。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)普通ポルトランドセメント;太平洋セメント社製、ブレーン比表面積:3,150cm
2/g
(2)早強ポルトランドセメント;太平洋セメント社製、ブレーン比表面積:4,500cm
2/g
(3)カルシウムアルミネートA;CaO/Al
2O
3のモル比:1.3、ブレーン比表面積:5,000cm
2/g
(4)カルシウムアルミネートB;CaO/Al
2O
3のモル比:2.2、ブレーン比表面積:3,000cm
2/g
(5)アウイン含有クリンカー粉末;アウインの含有率:61.8質量%、ブレーン比表面積:4,000cm
2/g
(6)石膏;II型無水石膏、ブレーン比表面積:7,000cm
2/g
(7)可溶性硫酸塩A;無水硫酸ナトリウム、1級試薬、粒径:0.1mm以下
(8)可溶性硫酸塩B;硫酸第一鉄・無水和物、1級試薬、粒径:0.1mm以下
(9)高炉スラグ微粉末;エスメント関東社製、商品名「エスメント4000(石膏未添加品)」、ブレーン比表面積:4,100cm
2/g
(10)フライアッシュ;常磐火力産業社製、「JIS A 6201:1999(コンクリートフライアッシュ)」に規定されるフライアッシュII種、ブレーン比表面積:3,920cm
2/g
(11)硬化時間調整剤;クエン酸(食品添加用)
(12)硬化促進剤;炭酸リチウム、1級試薬
(13)膨張材;太平洋マテリアル社製、商品名「太平洋エクスパン(構造用)」
(14)収縮低減剤;太平洋マテリアル社製、商品名「テトラガードPW」
(15)高性能減水剤A;太平洋マテリアル社製、商品名「NF−200」
(16)高性能減水剤B;BASFジャパン社製、商品名「メルメントF10M」
(17)細骨材;珪砂、愛知県三河産、FM1.8
(18)水;上水道水
【0031】
[実施例1〜10]
セメント組成物を調製した後、乾燥収縮、低温水中膨張および圧縮強さを、後述の方法を用いて測定した。
セメント組成物の調製は、上記材料を、表1に示す配合(ただし、表1中、無水石膏の数値はSO
3換算値であり、無水硫酸ナトリウムおよび硫酸第一鉄の数値はSO
4換算値である。)に従って、水硬性粉末組成物の材料および細骨材(珪砂)をホバート型ミキサーに投入して、20秒間空練りした後、さらに、高性能減水剤と硬化時間調整剤と水を予め混合してなる水溶液を投入して、180秒間混練することで行った。セメント組成物を調製する際の温度は、乾燥収縮、低温水中膨張、または圧縮強さの測定における養生温度に合わせた温度とし、セメント組成物は、乾燥収縮等の測定毎に調製を行った。
結果を表1に示す。
【0032】
(1)乾燥収縮:得られたセメント組成物を用いて、40×40×160mmの角柱状の供試体を作製し、該供試体を用いて、「JIS A 1129−3:2010(モルタル及びコンクリートの長さ変化測定方法−第3部:ダイヤルゲージ方法)」に準拠して、材齢91日における長さ変化率を測定した。脱型、養生および基長の測定は成形48時間後に行い、セメント組成物の調製から脱型までを20℃の環境下で行い、脱型後の養生は20℃、相対湿度60%の環境下で行った。
(2)低温水中膨張:セメント組成物の調製から脱型までを、20℃の環境下に代えて、5℃の環境下で行い、かつ、脱型後の養生を、20℃、相対湿度60%の環境下に代えて、5℃の水中の環境下で行う以外は、上述した乾燥収縮における長さ変化率の測定と同様にして、材齢91日における長さ変化率を測定した。
(3)圧縮強さ:「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、圧縮強さを測定した。脱型は成形48時間後に行い、脱型後の養生条件として、A:20℃、相対湿度60%の条件(表1、2中「圧縮強さA」と示す。)、B:5℃、相対湿度70%の条件(表1、2中、「圧縮強さB」と示す。)の二種類を行い、それぞれの条件で養生した場合の、材齢28日における圧縮強さを測定した。
なお、乾燥収縮及び低温水中膨張の判断の目安として、長さ変化率の絶対値が500×10
−6以下であれば、良好(寸法安定性に優れている)と判断できる。
【0033】
[比較例1〜11]
上記材料を、表2に示す配合(ただし、表2中、無水石膏の数値はSO
3換算値であり、無水硫酸ナトリウムの数値はSO
4換算値である。)に従って、水硬性粉末組成物の材料および細骨材(珪砂)をホバート型ミキサーに投入して、20秒間空練りした後、さらに、表2に示す種類のセメント混和剤(硬化促進剤、硬化時間調整剤、収縮低減剤)と水を予め混合してなる水溶液を投入して、180秒間混練し、セメント組成物を調製した。
得られたセメント組成物を用いて、実施例1と同様にして、乾燥収縮、低温水中膨張、圧縮強さを測定した。
結果を表2に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表1〜2から、本発明の水硬性粉末組成物(実施例1〜10)の硬化体の乾燥収縮は、−121〜−48×10
−6であり、低温水中膨張は86〜163×10
−6であり、寸法安定性が高いことがわかる。また、本発明の水硬性粉末組成物(実施例1〜10)の硬化体の圧縮強さは、養生条件A(20℃、相対湿度60%)では34〜54N/mm
2であり、養生条件B(5℃、相対湿度70%)では41〜54N/mm
2であることがわかる。
一方、比較例1〜5における硬化体(ポルトランドセメントのみ、または、ポルトランドセメントと膨張材を含む水硬性粉末組成物)の乾燥収縮は、−1280〜−681×10
−6であり、乾燥収縮が大きいことがわかる。また、比較例2、3、5(ポルトランドセメントと膨張材を含む水硬性粉末組成物)の低温水中膨張は732〜901×10
−6であり、膨張材を添加することによって、低温条件下の膨張が大きくなる(寸法安定性が低くなる)ことがわかる。
【0037】
また、比較例6(カルシウムアルミネート粉末を50質量%で含み、かつ、アウイン含有クリンカー粉末および可溶性硫酸塩粉末を含まないもの)の低温水中膨張は886×10
−6であり、低温条件下の膨張が大きいことがわかる。
比較例7(カルシウムアルミネート粉末を含まないもの)の低温水中膨張は924×10
−6であり、低温条件下の膨張が大きいことがわかる。また、圧縮強さが18〜22N/mm
2であり、実施例1〜10における圧縮強さと比較して小さいことがわかる。
比較例8(カルシウムアルミネート粉末を28質量%で含むもの)の乾燥収縮は−685×10
−6であり、低温水中膨張は887×10
−6であることから、寸法安定性が低いことがわかる。また、圧縮強さが25〜32N/mm
2であり、実施例1〜10における圧縮強さと比較して小さいことがわかる。
比較例9(石膏粉末を35質量%で含むもの)の低温水中膨張は4,200×10
−6を超えるものであり、低温条件下の膨張が大きいことがわかる。
比較例10(可溶性硫酸塩粉末を含まないもの)の低温水中膨張は3,500×10
−6を超えるものであり、低温条件下の膨張が大きいことがわかる。また、圧縮強さが18〜31N/mm
2であり、実施例1〜10における圧縮強さと比較して小さいことがわかる。
比較例11(可溶性硫酸塩粉末を15質量%で含むもの)の低温水中膨張は3,012×10
−6であり、低温条件下の膨張が大きいことがわかる。