【実施例】
【0009】
図1は、本発明に係る接続構造を板状住宅に係る建物の廊下側に適用した実施例の建物1の平面図である。
建物1は、桁行方向に連続配置された複数の住戸2と、該複数の住戸2に沿ってその一方の側に配置された共用廊下3と、該複数の住戸に沿ってその他方の側に配置されたバルコニー4とを備えた、中高層の集合住宅として構成されている。
【0010】
建物1は、その共用廊下3の外側に、桁行方向に延びる、柱5と梁6からなるラーメン構造の架構面を備えている(アウトフレーム逆梁)。また、バルコニー4の側には、桁行方向に延びる、柱7と梁8からなるラーメン構造の架構面を備えている(アウトフレーム逆梁)。
梁間方向に延びる耐震壁10は、複数の住戸2を仕切る戸境壁として形成されており、共用廊下3の側に位置する柱5及びバルコニー4の側に位置する柱7及び7aと接続されている。
複数層にわたって連層的に配置される耐震壁10の各層の耐震壁10は、一枚の板状の壁体(壁板)で構成され、通常、鉄筋コンクリート造とされる。梁様に主筋、さらには横筋を備えた、壁厚と同じ厚さの内蔵梁を備えたものが好ましい。
【0011】
以下、耐震壁10と、この耐震壁10に接続する、共用廊下3の外側に位置する柱5との接続構造について、
図1〜6を参照して説明する。
耐震壁10の水平方向端部(共用廊下3側の端部)と柱5との間に、人の通行の用に供することが可能な間隔を置いて、耐震壁10と柱5とを接続する、扁平梁20が設けられている。上記「人の通行の用に供することが可能な間隔」を置くことにより、この部分(開口部)を共用廊下3として使用することができるようになっている。
【0012】
扁平梁20は、
図1,3,4,5に示すとおり、耐震壁10の壁厚よりも大きい梁幅をもつものであり、一方側が柱5と接続されるとともに、水平方向に帯状に延びて、他方側において、耐震壁10と接続されるが、扁平梁20は、耐震壁10の水平方向端部(柱5に向かい合う側の端部)よりも耐震壁10の中央側に向けて所定距離(Lx)、食い込む、耐震壁10との定着部(扁平梁−耐震壁接合部)21を備えている。
扁平梁20は、定着部21において、梁の伸びる方向において耐震壁10と接合されるとともに、面材である耐震壁10を両側から掴むような態様で接合されている。
扁平梁20は、
図2〜5に示すとおり、扁平梁主筋22、扁平梁せん断補強筋23を備え、また、定着部21において、ねじれ補強筋24を備えている。ねじれ補強筋24は、
図5に示すとおり、平面視コ字状のものを例示している。
上記所定距離(Lx)は例えば、扁平梁20の梁せいの1.0倍〜2.0倍程度(200〜1200mm程度)であり、扁平梁20の梁幅は柱幅の0.8倍〜1.2倍(800〜1200mm程度)である。また、扁平梁20の梁せいは壁厚の1.0倍〜3.0倍程度(200〜600mm程度)、かつ開口幅の凡そ1/2以下である。
扁平梁20のせいが大きくなり、開口幅に対する梁せいの比(梁せい/開口幅)が大きくなりすぎると、繊維補強コンクリートなどの特殊なコンクリートを使わない限り、扁平梁20の両端で曲げ降伏する靭性型の設計が難しくなる。
【0013】
前述のとおり、定着部21は、耐震壁(壁板)10の端部上端において、フラットスラブにおけるキャピタルのように作用する。すなわち、定着部21において、扁平梁主筋22の引張力は付着力によってコンクリートに伝達され、該定着部21のねじれ抵抗によって、耐震壁10に伝達される。
また、扁平梁20は、その幅方向において、スラブ30のRC規準の有効幅員内に配されたスラブ筋(扁平梁主筋と同様に曲げ補強筋として作用する鉄筋)31とともに「扁平T型梁」として形成されている。
図1において、RC規準の有効幅員内のスラブ筋31が見込まれる範囲(有効幅)を、扁平梁20の左右両側にハッチングで模式的に図示している。
符号11は耐震壁縦筋、符号12は耐震壁横筋を示す。
なお、
図3、4において、スラブのY方向主筋、扁平梁20と直交する梁6の配筋は、図示省略している。
【0014】
扁平梁20の曲げモーメントを壁板に伝達するメカニズムに関連して、
図6を参照して説明する。
扁平梁のモーメントMによる曲げ圧縮力Cと曲げ引張力T(地震時は正負交番)により、定着部21にはねじれモーメントが作用する。このねじれモーメントに抵抗するのは、コンクリート断面(Lx×Lz)のねじれ抵抗T
rCと、せん断補強筋およびねじれ抵抗筋によるせん断抵抗の合計Σ
iT
rRBである。(一般に、壁板の両側に突出部があるので、上図の2倍の抵抗がある。2面摩擦)
すなわち、次の式が成立するように接合部を設計する。
【0015】
【数1】
【0016】
図1に示すとおり、扁平梁の定着部21の、耐震壁10の中央側における端部に、建物の外壁ライン(居室空間の外壁面)2aを一致させることにより、梁形の突出がないすっきりとした見栄えのよい室内空間が得られ、間取りへの悪影響を避けることができる。
【0017】
図7は、板状住宅に係る建物の梁間方向の両側(図の左右両側)に、本発明に係る耐震壁と柱との接続構造を適用した例を示す建物1の立面図である。
桁行方向の構面は、柱と梁(逆梁)のラーメン構面(アウトフレーム)として構成されている。
柱5と耐震壁(壁板)10は、開口部(図中の×で示す部分)をおいてT型扁平梁20で接続されており、耐震壁10の上端部には、内蔵梁主筋が通る、壁厚と同じ厚さの内蔵梁が設けられている。
柱−耐震壁間に作用する鉛直力は、扁平梁20で担う構造となっており、せん断力の負担は、壁板10と両側の柱5,5で分担する。
扁平梁20を用いることは、梁端で曲げ降伏する変形性能に富む性能に設計するために好都合であるとともに、開口部の面積を大きく採れるという建築計画上の利点もある。
また、建物1の外壁ラインを同図の一点鎖線で示す位置に設定する、つまり、扁平梁20の定着部21の、耐震壁10の中央側における端部に、建物1の外壁ラインを一致させることにより、梁形の突出がない居室空間が得られるとともに、地震時の損傷を扁平梁に集約でき、被災後の復旧もしやすくなる。
【0018】
本発明に係る耐震壁と柱との接続構造は、中高層のマンション等の集合住宅のほか、病院その他の建物の外部廊下やバルコニー等に適用することができる。
以上、発明を実施するための形態を説明したが、本発明は上記したものに限定されず、本発明の要旨の範囲で適宜、付加、変更等なし得るものである。