(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、下げ振り錘を用いた方法では、振り子運動を収束させるために時間を要する。これに対し、鉛直器を用いて、上方から下方の目盛板を視認する方法がある。鉛直器を用いれば、容易に下方の目盛板から、孔の鉛直度を把握することができる。
【0007】
しかし、孔の鉛直度を測定するためには、孔の内部に目盛板などを設置する必要がある。その際に、孔径が小さく、孔の深さが深くなると、孔内へ目盛板を設置することが困難であり、さらに、目盛板を視認することも困難となる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、孔の鉛直度を確実に測定することが可能なターゲット装置および孔の鉛直度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、削孔した孔の鉛直度を測定する際に鉛直器とともに用いられるターゲット装置であって、本体と、前記本体に接続された吊り下げ部材と、前記本体に配置された指標表示部及び発光部と、を有し、前記発光部は、前記指標表示部へ光を照射可能であ
り、前記指標表示部の水平を保つための水平維持機構を具備し、前記水平維持機構は、フロート構造であり、前記本体の内部が上下に二つの空間に仕切られ、上方の空間に液体が充填され、前記液体上に前記指標表示部が浮いた状態であり、前記指標表示部の上方には空間が形成されていることを特徴とするターゲット装置である。
【0010】
前記本体の前記上下に仕切られた下方の空間に、前記発光部が配置され、前記指標表示部は前記発光部からの光を透過可能であってもよい。
【0014】
前記指標表示部と前記発光部との間に、光拡散部が配置されてもよい。
また、前記吊り下げ部材が、前記本体上部の外周部近傍に複数接続されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、ターゲット装置を、吊り下げ部材によって孔内に吊降ろすことができるため、径の小さな孔であっても、孔内に容易にターゲット装置を配置することができる。また、発光部によって指標表示部に光が照射されるため、暗い孔内であっても、確実に指標表示部を視認することができる。
【0016】
また、発光部を指標表示部の下方に配置し、発光部によって指標表示部の背面から光を照射することで、発光部が、指標表示部の視認の妨げとなることがない。
【0017】
また、水平維持機構を設けることで、本体が傾いた際にも、指標表示部の水平を維持することができるため、より正確に鉛直度を測定することができる。
【0018】
このような水平維持機構として
、指標表示部を液体に浮かせたフロート構造を用いれば、簡易な構造で指標表示部の水平を維持することができる。
【0019】
また、光拡散部を配置することで、発光部から照射された光が、指標表示部の全体に略均一に照射されるため、指標表示部の視認性が優れる。特に、発光部がLED光源の場合には、光の指向性が強いため、光拡散部がないと、指標表示部の一部のみが輝度が強くなる場合があるが、光拡散部を設けることで、このようなグレア感を抑制することができる。
【0020】
第2の発明は、削孔した孔の鉛直度を測定する方法であって、本体と、前記本体に接続された吊り下げ部材と、前記本体に配置された指標表示部及び発光部を有し、前記発光部は前記指標表示部へ光を照射可能であ
り、前記指標表示部の水平を保つための水平維持機構を具備し、前記水平維持機構は、フロート構造であり、前記本体の内部が上下に二つの空間に仕切られ、上方の空間に液体が充填され、前記液体上に前記指標表示部が浮いた状態であり、前記指標表示部の上方には空間が形成されているターゲット装置を、前記吊り下げ部材によって、前記孔の上方から前記孔の内部へ吊降ろし、前記孔の上方に配置した鉛直器によって、前記指標表示部を視認して、前記孔の鉛直度を測定することを特徴とする孔の鉛直度測定方法である。
また、前記吊り下げ部材が、前記本体上部の外周部近傍に複数接続され、それぞれ前記孔の内壁面に沿って上方まで導かれてもよい。
【0021】
第2の発明によれば、小径の孔であっても確実に内部にターゲット装置を配置し、鉛直度を測定することができる。また、発光部によって指標表示部に光が照射されるため、暗い孔内であっても、確実に指標表示部を視認することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、孔の鉛直度を確実に測定することが可能なターゲット装置および孔の鉛直度測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態にかかるターゲット装置1について説明する。
図1はターゲット装置1の斜視図であり、
図2は、ターゲット装置1の断面図である。なお、以下の説明において、吊り下げ部材5の図示を省略する場合がある。ターゲット装置1は、主に、本体3、吊り下げ部材5、指標表示部9、発光部11等からなる。
【0025】
本体3は、例えば円筒状の容器である。本体3の上面の円周部近傍には、吊り部7が複数個所に設けられる。吊り部7には、吊り下げ部材5が接合される。吊り下げ部材は、例えば水糸のような本体3の重量によって適度な張力が生じ、略直線状に緊張される部材である。
【0026】
本体3の上部には、指標表示部9が設けられる。指標表示部9には、互いに直交する線が付されており、中心部と、中心から等間隔に形成された目盛とで構成される。なお、指標表示部9は、透明または半透明の部材で構成される。したがって、指標表示部9の目盛り線以外の部位は、光が透過可能である。指標表示部9に付される線はこれに限らず、中心部からの距離と角度が示されるものであってもよい。
【0027】
図2に示すように、本体3の内部には、発光部11が配置される。すなわち、発光部11は、指標表示部9の背面側に配置される。発光部11は、例えばLED光源であり、本体3の内部に配置された電源と接続される。なお、発光部11の電源を外部に配置し、導線を吊り下げ部材5に沿って本体3の内部に導入して、発光部11と接続してもよい。また、本体3は、例えば、上部の蓋部3aを脱着することが可能であり、発光部11の操作やメンテナンスを行うことができる。また、発光部11の操作部を本体3の外部に設けてもよい。また、本体3の内部であって、発光部11の周囲に、指標表示部9側へ光を反射させる光反射板を配置してもよい。
【0028】
指標表示部9の背面側には、必要に応じて光拡散部13が配置される。すなわち、光拡散部13は、指標表示部9と発光部11との間に配置される。光拡散部13は、例えばすりガラスのような半透明な部材であって、光が光拡散部13に入射・透過する際に、その光が拡散されて均一化される。このため、指標表示部9の上面から、発光部11が直接視認されず(発光部11からの直接光が低減され)、視認者のグレア感を抑制し、指標表示部9の略全体へ光を拡散させることができる。
【0029】
なお、指標表示部9が形成される部材と光拡散部13とを別体で構成するのではなく、本体3の上部を光拡散部13で構成し、光拡散部13の上面に指標表示部9を設けてもよい。すなわち、光拡散部13の上面に、目盛り線を付してもよい。
【0030】
次に、ターゲット装置1を用いた、孔の鉛直度の測定方法について説明する。まず、
図3(a)に示すように、施工対象に孔15を削孔する。例えば、構造体の壁部を、上方からコアボーリングなどで削孔する。なお、孔15のサイズ(径)は、ターゲット装置1の外径よりもわずかに大きく、ターゲット装置1が自重で孔15の下部に進行できる。例えば、ターゲット装置1の外径に対して、数mm程度大きな径の孔15を設ける。
【0031】
次に、孔15の上方から、吊り下げ部材5によってターゲット装置1を孔15の内に吊降ろし、孔15の内部にターゲット装置1を設置する(
図3(b))。この際、前述したように、ターゲット装置1の外径が、孔15と略一致するため、孔15の内部において、ターゲット装置1の位置決めがなされ、孔15の中心とターゲット装置1の中心とを略一致させることができる。
【0032】
この状態で、孔15の上方に鉛直器17を配置し、使用者が鉛直器17によって、孔15内のターゲット装置1の指標表示部9を視認する。鉛直器17の視界中心(孔15の上部の中心位置)と、指標表示部9の目盛の位置を把握することで、孔15の鉛直度を把握することができる。
【0033】
なお、孔15が深い場合には、孔15の底部近傍が暗く、ターゲット装置1の指標表示部9を視認することが困難な場合がある。この場合には、発光部11を点灯させてターゲット装置1を配置すればよい。発光部11を発光させることで、発光部11からの光が、発光部11の上方に配置された指標表示部9に照射される。指標表示部9は、発光部11からの光を透過するため、指標表示部9の目盛を容易に視認することができる。
【0034】
なお、鉛直器17の視界中心に、吊り下げ部材5が入らないように、吊り下げ部材5は、ターゲット装置1の上部の外周部近傍に複数個所の吊り部7に接続されて、それぞれ、孔15の内壁面に沿って上方まで導かれ、孔15の上方で、それぞれ別々に固定される。
【0035】
以上、本実施形態によれば、孔15の径が小さく、深い場合であっても、確実にターゲット装置1を孔15内に配置することができる。このため、鉛直器17によって指標表示部9を孔15の上方から視認することで、孔15の鉛直度を測定することができる。
【0036】
また、ターゲット装置1の指標表示部9は、背面側から発光部11によって光を照射することができる。このため、暗い孔15の内部においても、容易に指標表示部9を視認することができる。なお、孔15内を照らすことが可能であれば、発光部11を用いなくてもよい。
【0037】
次に、第2の実施形態について説明する。
図4は、ターゲット装置1aの斜視図であり、
図5(a)は、ターゲット装置1の平面図、
図5(b)は、ターゲット装置1の断面図である。なお、以下の説明において、ターゲット装置1と同様の機能を奏する構成については、
図1〜
図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
ターゲット装置1aは、ターゲット装置1とほぼ同様の構成であるが、ジンバル装置19が設けられる点で異なる。ジンバル装置19は、リング部材18a、18bと、軸21a、21bから構成される。本体3の外周には、軸21a(
図5(a)参照)によってリング部材18aが接続される。軸21aは、本体3の中心を通る一直線上にそれぞれ配置される。リング部材18aは、本体3に対して、軸21aを回転軸として回転可能である。なお、軸21aは、本体3の重心よりも上方に配置される。
【0039】
また、リング部材18aの外周には、軸21bによって、リング部材18bが接続される。軸21bと軸21aに対して直交する一直線上にそれぞれ形成される。リング部材18bは、リング部材18aに対して、軸21bを回転軸として回転可能である。また、リング部材18bの軸21bと直交する部位には、それぞれ吊り部7が形成される。
【0040】
吊り部7でターゲット装置1を吊り下げると、吊り下げ部材5の長さの差や孔15の内壁と本体3との部分的な接触などによって、リング部材18bが水平方向から傾く場合がある。この場合には、軸21bによってリング部材18bがリング部材18aに対して回転し、リング部材18aを水平にすることができる。さらに、リング部材18aが、軸21bの方向に対して、水平方向から傾いている場合には、軸21aによって本体3がリング部材18aに対して回転し、本体3を水平にすることができる。
【0041】
前述したように、本体3の重心よりも上方に軸21aが配置されるため、本体3の重心は、軸21aよりも下方となる。このため、本体3の自重によって、本体3のいずれの方向への傾きに対しても軸21a、21bによってリング部材18a、18bが回転し、本体3を常に水平に保つことができる。すなわち、指標表示部9を水平に保つことができる。このように、ジンバル装置19は、指標表示部9の水平を保つための水平維持機構として機能する。
【0042】
なお、2軸のジンバル装置19について説明したが、リング部材18aと軸21aのみを用いて、1軸の水平方向維持機構であってもよい。この場合には、リング部材18aの軸21aと直交する部位に、それぞれ吊り部7を設ければよい。
【0043】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ジンバル装置19によって、指標表示部9を常に水平に保つことができるため、より正確に孔15の鉛直度を測定することができる。
【0044】
次に、第3の実施形態について説明する。
図6(a)は、第3の実施形態にかかるターゲット装置1bを示す断面図である。ターゲット装置1bは、ターゲット装置1とほぼ同様の構成であるが、内部に液体23が封入される点で異なる。
【0045】
ターゲット装置1bの本体3の内部は、光拡散部13によって、上下に二つの空間に仕切られる。光拡散部13の下方の空間には、発光部11が配置される。また、光拡散部13の上方の空間には液体23が充填される。なお、図示した例では、光拡散部13によって空間を仕切っているが、他の部材で仕切ってもよい。いずれの場合でも、発光部11からの光が、ターゲット装置1bの上方に透過可能であればよい。
【0046】
液体23は、例えば水である。液体23には、指標表示部9が浮いた状態となる。すなわち、指標表示部9は、液体よりも比重の軽い板状部材で形成される。この際、指標表示部9の上方には空間が形成される。
【0047】
図6(b)は、ターゲット装置1bを傾けた状態を示す図である。ターゲット装置1bが傾いても、液体23の液面は、水平を保つ。また、液面の上方には空間が形成されるため、液体23に浮かぶ指標表示部9も水平を維持することができる。このように、液体23に指標表示部9を浮かべたフロート構造とすることで、指標表示部9の水平を保つための水平維持機構として機能させることができる。
【0048】
第3の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、内部に液体23を封入し、指標表示部9を浮かべるだけであるため、構造が簡易である。なお、液体23がこぼれなければ、指標表示部9の上方の空間を密閉せずに、開放してもよい。
【0049】
次に、第4の実施形態について説明する。
図7は、ターゲット装置1を孔15の内部に配置した状態を示す図である。本実施形態では、孔15の内部に、あらかじめ水などの液体25を注入する。その状態で、ターゲット装置1が孔15内に吊降ろされて、ターゲット装置1が液体25に浮かべられる。
【0050】
ターゲット装置1の重心が、本体3の径方向の中心であって、本体3の高さ方向の中心よりも下方にあり、かつ、ターゲット装置1全体の比重が液体25の比重よりも小さければ、ターゲット装置1は、液体25に対してまっすぐに浮かぶ。すなわち、上部の指標表示部9が水平に維持される。
【0051】
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ターゲット装置1を孔15の内部で液体25にまっすぐに浮かべることで、指標表示部9の水平を維持することができる。
【0052】
次に、第5の実施形態について説明する。
図8は、第5の実施形態にかかるターゲット装置1cを孔15に挿入した状態を示す平面図である。ターゲット装置1cは、ターゲット装置1とほぼ同様の構成であるが、本体3の外周部に、スペーサ27が設けられる点で異なる。すなわち、ターゲット装置1cは、径方向に突出するスペーサ27を有する。
【0053】
スペーサ27は、例えば弾性体であり、変形可能である。スペーサ27は、本体3の外周の全周に設けられてもよく、または、図示したように、複数個所に所定の間隔で配置されてもよい。
【0054】
ターゲット装置1cを孔15に挿入して吊降ろす際に、スペーサ27の先端が孔15の内面と接触し、弾性変形する。この弾性変形によって、孔15の内面をスペーサ27で押圧しながら、ターゲット装置1cの自重によって、孔15内へターゲット装置1cを吊降ろすことができる。すなわち、ターゲット装置1cを孔15に挿入すると、ターゲット装置1cの本体3の外面と孔15の内面との間には隙間が生じるが、スペーサ27は、この隙間を埋めて、本体3を孔15の略中心に配置させるものである。
【0055】
第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本体3の外径と孔15の内径との差が大きい場合でも、ターゲット装置1cを孔15の略中心に配置することができる。スペーサ27は、孔15の内壁と本体3との間隔に応じて任意に調整し、設けることでもよい。
【0056】
次に、第6の実施形態について説明する。
図9(a)は、第6の実施形態にかかるターゲット装置1dを示す断面図である。ターゲット装置1dは、指標表示部9が、本体3の下方に配置される。また、発光部11は、本体3の上端部近傍の内面に配置される。すなわち、指標表示部9は、発光部11の下方に配置される。
【0057】
発光部11は、指標表示部9の上方から光を照射する。このため、暗い孔内であっても、上方の鉛直器によって、容易に指標表示部9を上方から視認することができる。
【0058】
なお、発光部11としては、
図9(a)に示すように、複数の電球を、周方向に一定の間隔で配置してもよく、または、電球を一つのみとしてもよい。また、
図9(b)に示すように、リング状の発光部11としてもよい。
【0059】
第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、指標表示部9は、発光部11の下方に配置してもよい。なお、指標表示部9の視認性を考慮すると、発光部11を指標表示部9の下方に配置した方が、発光部11が指標表示部9を視認する際の妨げとなることが少ない。
【0060】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0061】
例えば、各実施形態における各構成は、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。