特許第6896586号(P6896586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896586
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】原子炉水位計
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/035 20060101AFI20210621BHJP
   G01F 23/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   G21C17/035
   G01F23/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-208225(P2017-208225)
(22)【出願日】2017年10月27日
(65)【公開番号】特開2019-78727(P2019-78727A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】伏見 篤
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−140100(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0177122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/002−17/035
G21C 17/10
G21C 17/112
G21C 17/00
G01F 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉水位を計測する複数の水位センサを備え、
複数の前記水位センサのそれぞれは、少なくとも1つのヒータ回路と、少なくとも1つの温度計回路を備え、
前記ヒータ回路のそれぞれは、少なくとも1つのヒータを備え、
前記温度計回路のそれぞれは、1つの温度計を備え、
それぞれの前記水位センサにおいて、前記温度計のうちの少なくとも1つは、他の前記水位センサの前記温度計の1つと高さ方向の位置が略同一であり、
複数の前記水位センサにおいて、それぞれの前記ヒータ回路の中で最高の位置にある前記ヒータは、他の前記ヒータ回路の中で最高の位置にある前記ヒータのうちの少なくとも1つと高さ方向の位置が異なる、
ことを特徴とする原子炉水位計。
【請求項2】
複数の前記水位センサに接続された水位計測装置を備え、
前記水位計測装置は、
前記ヒータ回路に接続され、前記ヒータ回路の異常を検知する第1の不具合検知装置と、
前記温度計回路に接続され、前記温度計回路の異常を検知する第2の不具合検知装置と、
前記第1の不具合検知装置と前記第2の不具合検知装置が検知した異常に基づいて、前記原子炉水位の計測に使用する前記水位センサを変更する計測制御装置を備える、
請求項1に記載の原子炉水位計。
【請求項3】
複数の前記水位センサに接続された水位計測装置を備え、
前記水位計測装置は、
前記ヒータ回路に接続され、前記ヒータ回路の異常を検知する第1の不具合検知装置と、
前記温度計回路に接続され、前記温度計回路の異常を検知する第2の不具合検知装置と、
前記第1の不具合検知装置と前記第2の不具合検知装置が検知した異常に基づいて、前記原子炉水位の計測に使用する前記ヒータ回路と前記温度計回路を変更する計測制御装置を備える、
請求項1に記載の原子炉水位計。
【請求項4】
複数の前記水位センサのうち少なくとも1つは、1つの前記ヒータ回路と、複数の前記温度計回路を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の原子炉水位計。
【請求項5】
複数の前記水位センサのうち少なくとも1つは、複数の前記ヒータ回路と、複数の前記温度計回路を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の原子炉水位計。
【請求項6】
前記温度計は、熱電対、差動式熱電対、ガンマサーモメータ、測温抵抗体、及びサーミスタのうち1つ又は複数である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の原子炉水位計。
【請求項7】
前記第1の不具合検知装置は、前記ヒータ回路の断線、短絡、及び地絡を異常として検知し、
前記第2の不具合検知装置は、前記温度計回路の断線、短絡、及び地絡を異常として検知し、
前記計測制御装置は、異常を起こした前記水位センサと、前記原子炉水位の計測に使用する前記水位センサとの対応を示すテーブルを格納しており、前記第1の不具合検知装置と前記第2の不具合検知装置が検知した異常に基づいて、前記テーブルに従って、前記原子炉水位の計測に使用する前記水位センサを変更する、
請求項2に記載の原子炉水位計。
【請求項8】
前記第1の不具合検知装置は、前記ヒータ回路の断線、短絡、及び地絡を異常として検知し、
前記第2の不具合検知装置は、前記温度計回路の断線、短絡、及び地絡を異常として検知し、
前記計測制御装置は、異常を起こした前記水位センサと、前記原子炉水位の計測に使用する前記ヒータ回路と前記温度計回路との対応を示すテーブルを格納しており、前記第1の不具合検知装置と前記第2の不具合検知装置が検知した異常に基づいて、前記テーブルに従って、前記原子炉水位の計測に使用する前記ヒータ回路と前記温度計回路を変更する、
請求項3に記載の原子炉水位計。
【請求項9】
基準水柱との差圧に基づいて水位を計測する差圧式水位計を備え、
前記差圧式水位計の水位の計測範囲は、前記水位センサの水位の計測範囲と少なくとも一部が重複している、
請求項1に記載の原子炉水位計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉容器内の水位を計測する原子炉水位計に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉では、通常運転時には原子炉内の炉心上部に冷却水と蒸気の境界である水位が形成される。加圧水型原子炉でも、通常運転状態では圧力容器の内部で沸騰が生じて水面が形成されることはないが、事故時には原子炉内の水位の監視が重要になる。沸騰水型原子炉及び加圧水型原子炉は、ともに、燃料の冷却を確保するために燃料が水中に没していることが必要であり、事故時に炉心が冷却水から露出して除熱が不十分とならないように、原子炉容器内の水位(原子炉水位)が監視され、原子炉水位(以下、単に「水位」とも称する。)に応じた安全機能が作動する仕組みになっている。
【0003】
従来、沸騰水型原子炉の水位は、差圧式水位計が用いられ、基準水柱からの圧力と炉内水位に応じた圧力とが計装配管で差圧伝送器に導かれて得られた差圧信号として計測される。原子炉水位計(以下、単に「水位計」とも称する。)は、計測に使用される計装配管及び差圧伝送器を備え、計測範囲や目的に応じて複数の種類が備えられている。例えば、冷却水と蒸気の分離性能を高く保つために狭い範囲を精密に監視する通常運転用の水位計の他に、過渡時や事故時に安全機能を作動させるために広範囲をカバーする水位計が設置されている。
【0004】
このような従来の水位計に対して、応答性改善やダイバーシティ確保の観点から、温度検出素子とヒータとを組合せた水位センサを原子炉内に設置し、原子炉水位を原子炉内で直接計測する方法が検討されている。この水位センサでは、ヒータへの通電により上昇した温度を温度検出素子が検出し、水中と気中での温度変化の違いを利用して水位を計測する。水位を計測するには、温度検出素子とヒータを複数の高さ位置(水位検出位置)に設置する必要がある。
【0005】
特許文献1には、沸騰水型原子炉の炉内計装管内の複数の高さ位置に設置された熱電対とヒータ線とからなる水位及び温度検出センサと、熱電対の温度を測定する温度計測装置と、ヒータ線への電流を制御するヒータ制御装置と、ヒータ線への通電前の熱電対温度と通電時の熱電対温度上昇量とを蒸気雰囲気、水雰囲気、センサ故障に関連付ける閾値テーブルを備えた原子炉水位及び温度計測装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、発熱体と、発熱体の周囲を囲って設置される断熱体と、発熱体の断熱体に囲まれた断熱部分と断熱体に囲まれていない非断熱部分との温度差を計測する温度差計測装置(通常、「ガンマサーモメータ」と呼ばれる)を炉心下端部から原子炉圧力容器の底部に亘って配置した炉心下部水位計測装置と、同様の温度差計測装置を炉心の鉛直方向範囲内に配置した炉心内水位計測装置と、温度差に基づいて原子炉の水位を評価する水位評価装置とからなる原子炉水位計測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−140100号公報
【特許文献2】特開2013−108905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
原子炉内に設置することを前提とした水位センサは、水位を直接検出できる利点がある一方で、万一の事故の場合には炉心の異常加熱や落下物との衝突などによる破損や故障のリスクがある。このため、特許文献1に示されたような、熱電対とヒータからなる水位センサを複数配置して、一部の水位センサが破損や故障などの異常(不具合)を起こしても他の水位センサで水位の計測を継続する構成が考えられる。
【0009】
しかし、ヒータを複数の水位検出位置に設置すると、ヒータへの通電時にリード線で消費する電力が大きく、万一の事故時にバッテリー等で電力を供給する場合の容量が増大する。また、ヒータのそれぞれに通電する必要があるため、全てのヒータに通電するのに時間がかかり、計測に要する時間も多くなる。全てのヒータに通電する時間を短縮して計測時間を短縮するためには、多くの電源供給設備が必要である。
【0010】
ヒータへの通電時の消費電力を抑制するために、複数の水位センサのヒータに対して共通のリード線で通電する構成とすると、リード線が破損した場合には複数の水位センサが動作しなくなり、所望の複数の位置での水位の計測が継続できなくなる。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、原子炉内に水位センサを設置可能であり、一部の水位センサが異常を起こした場合にも水位の計測を継続することができ、かつ消費電力の抑制と計測時間の短縮を達成できる原子炉水位計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による原子炉水位計は、原子炉水位を計測する複数の水位センサを備え、複数の前記水位センサのそれぞれは、少なくとも1つのヒータ回路と、少なくとも1つの温度計回路を備え、前記ヒータ回路のそれぞれは、少なくとも1つのヒータを備え、前記温度計回路のそれぞれは、1つの温度計を備え、それぞれの前記水位センサにおいて、前記温度計のうちの少なくとも1つは、他の前記水位センサの前記温度計の1つと高さ方向の位置が略同一であり、複数の前記水位センサにおいて、それぞれの前記ヒータ回路の中で最高の位置にある前記ヒータは、他の前記ヒータ回路の中で最高の位置にある前記ヒータのうちの少なくとも1つと高さ方向の位置が異なる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、原子炉内に水位センサを設置可能であり、一部の水位センサが異常を起こした場合にも水位の計測を継続することができ、かつ消費電力の抑制と計測時間の短縮を達成できる原子炉水位計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1による原子炉水位計の全体構成図。
図2】本発明の実施例1による原子炉水位計の構成の一例を示す図。
図3】本発明の実施例1による原子炉水位計の構成の別の例を示す図。
図4】本発明の実施例1による原子炉水位計の構成のさらに別の例を示す図。
図5】温度計回路の不具合検知装置の構成例を示す図。
図6】計測制御装置が備える選択装置が格納した選択テーブルの一例を示す図。
図7】本発明の実施例2による原子炉水位計の水位センサの構成を示す図。
図8】本発明の実施例3による原子炉水位計の全体構成図。
図9】本発明による原子炉水位計が備える水位センサの構成の一例を示す図。
図10】ヒータに通電したときに熱電対が検出する温度の変化の一例を、水位センサが水中にある場合と水外にある場合について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による原子炉水位計は、水位センサ(以下、単に「センサ」とも称する。)を原子炉内に複数備え、原子炉水位を計測する。本発明による原子炉水位計は、例えば事故時などの過酷な環境下において、一部のセンサが破損や故障などの異常(不具合)を起こした場合にも水位を継続して計測できる。さらに、水位の計測に使用するヒータの数を少なくすることができるので、水位の計測で消費される電力を抑制できるとともに、ヒータに通電する時間を短縮して電源設備を増加することなく計測時間を短縮できる。
【0016】
初めに、本発明による原子炉水位計が備える水位センサについて、簡単に説明する。この水位センサは、温度計とヒータを備え、ヒータで周囲を加熱したときの温度変化(温度上昇)を温度計で測定し、水中と気中での温度変化の違いを利用して水位を計測する。温度計には、熱電対、差動式熱電対、ガンマサーモメータ、測温抵抗体、及びサーミスタなどの既存の温度計のうち、1つ又は複数を用いることができる。
【0017】
図9は、本発明による原子炉水位計が備える水位センサの構成の一例を示す図である。水位センサ6は、ヒータ回路64と、温度計回路61と、絶縁体68と、金属シース69を備える。ヒータ回路64は、ヒータ62と、ヒータ62に通電するリード線であるヒータリード63を備える閉回路である。温度計回路61は、温度計(例えば、熱電対67)を備える閉回路である。熱電対67は、クロメル線65と、アルメル線66を備える。絶縁体68は、ヒータ回路64と温度計回路61を絶縁する。金属シース69は、ヒータ回路64と温度計回路61と絶縁体68を収納する。ヒータ62に通電すると、ヒータ62が発熱して熱電対67で検出する温度が上昇する。
【0018】
図10は、ヒータ62に通電したときに熱電対67が検出する温度の変化の一例を、水位センサ6が水中にある場合と水外(気中)にある場合について示す図である。図10では、水位センサ6が水中にある場合に熱電対67が検出する温度の変化を「水中」で示す曲線で表し、水位センサ6が水外にある場合に熱電対67が検出する温度の変化を「水外」で示す曲線で表している。
【0019】
水位センサ6が水中にある場合、すなわち金属シース69の外側が水である場合には、水の熱伝達率が比較的大きいので、ヒータ62で発生した熱が金属シース69から水に伝わる。このため、熱電対67が検出する温度は、上昇が抑制され、変化が小さい。一方、水位センサ6が水外(気中)にある場合、すなわち金属シース69の外側が水ではない(気中である)場合には、気中での熱伝達率が小さいので、ヒータ62で発生した熱が金属シース69の外に伝わりにくい。このため、熱電対67が検出する温度は、大きく上昇し、変化が大きい。
【0020】
水位センサ6は、ヒータ62による加熱に対する水中と水外での温度のこのような応答の違いを利用して、水位を計測する。例えば、熱電対67が検出する温度の変化量にしきい値を設定して、温度の変化量がしきい値以上の場合は水位センサ6が水外(気中)にあると判断し、しきい値未満の場合は水位センサ6が水中にあると判断する。原子炉水位計は、このような水位センサ6が高さ方向に複数並べて配置され、水位センサ6の位置が気中か水中かを判別することで、離散的に水位を計測することができる。
【0021】
以下、本発明の実施例による原子炉水位計を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、水位センサが原子炉内に設置された、本発明の実施例1による原子炉水位計の全体構成図である。本実施例による原子炉水位計は、原子炉内に設置された水位センサ6、及び水位センサ6に接続された水位計測装置15を備える。水位計測装置15は、温度計測装置16、ヒータ制御装置18、計測制御装置20、温度計回路61の不具合検知装置21、及びヒータ回路64の不具合検知装置22を備える。計測制御装置20は、選択装置19を備える。選択装置19は、後述する選択テーブルを格納している。
【0023】
原子炉圧力容器1の内部には、周囲をシュラウド2で囲まれた炉心3が設置されている。炉心3内では、図示しない多数の燃料集合体が、炉心支持板4と上部格子板5に支持されている。炉心3内には、複数の炉内計装管7が設置されている。図1では、1つの炉内計装管7のみを示している。
【0024】
水位センサ6は、複数の炉内計装管7内に設置されている。1つの炉内計装管7内には、複数の水位センサ6a〜6fが設置されている。水位センサ6は、図1には示していないが、ヒータ回路64と温度計回路61を備える。複数の炉内計装管7の間では、設置されている水位センサ6の数、ヒータ回路64が備えるヒータ62の数や高さ方向の位置、及び温度計回路61が備える温度計(例えば、熱電対67)の高さ方向の位置は、互いに同じでも異なっていてもよい。水位センサ6の詳細な構成については、後述する。
【0025】
水位センサ6には、信号ケーブル23及びヒータケーブル24が接続されている。信号ケーブル23は、温度計回路61に接続される。ヒータケーブル24は、ヒータ回路64に接続される。
【0026】
信号ケーブル23及びヒータケーブル24は、炉内計装管7の下端から原子炉圧力容器1の外へ導かれ、水位計測装置15に接続されている。信号ケーブル23は、水位センサ6の温度計回路61と不具合検知装置21を接続し、不具合検知装置21と温度計測装置16を接続する。すなわち、水位センサ6の温度計回路61は、信号ケーブル23によって、温度計回路61の不具合検知装置21を介して温度計測装置16に接続される。ヒータケーブル24は、水位センサ6のヒータ回路64と不具合検知装置22を接続し、不具合検知装置22とヒータ制御装置18を接続する。すなわち、水位センサ6のヒータ回路64は、ヒータケーブル24によって、ヒータ回路64の不具合検知装置22を介してヒータ制御装置18に接続される。
【0027】
温度計測装置16、ヒータ制御装置18、不具合検知装置21、22は、計測制御装置20に接続されている。
【0028】
温度計測装置16は、信号ケーブル23によって水位センサ6の温度計(熱電対67)の測定値を入力し、温度計が検出した温度を計測制御装置20に出力する。
【0029】
ヒータ制御装置18は、計測制御装置20からの指示を入力し、この指示に従って水位センサ6のヒータ62への通電を制御する。ヒータ制御装置18は、ヒータケーブル24によってヒータ62に通電する。
【0030】
計測制御装置20は、水位センサ6のヒータ62に通電し、水位センサ6の温度計(熱電対67)が検出した温度変化から原子炉水位を求める。また、計測制御装置20は、温度計測装置16と、ヒータ制御装置18と、不具合検知装置21、22を制御する。計測制御装置20は、不具合検知装置21、22が水位センサ6の不具合(例えば、温度計回路61とヒータ回路64の断線、短絡、及び地絡などの異常)を検知したら、検知した不具合に基づいて、通電するヒータ回路64を変更したり温度を取得する温度計回路61を変更したりして、水位の計測に使用するヒータ回路64と温度計回路61、または水位の計測に使用する水位センサ6を変更する。
【0031】
炉内計装管7は、下部が原子炉圧力容器1の下部に取り付けられた炉内計装ハウジング8及び炉内計装案内管9に挿入されており、上部が上部格子板5に固定されている。炉内計装ハウジング8及び炉内計装管7には、通水口10、11、12が設けられている。通水口10、11は、水位センサ6の下部に設置され、通水口12は、炉内計装管7の上端付近に設置されている。通水口10、11、12は、炉心3の内部と炉内計装管7の内部とを連通し、原子炉水位が上部格子板5よりも下方に低下した場合に、炉内計装管7内の水位と原子炉水位とが一致するように、冷却水13が流れる。炉内計装管7の内部には、止水栓14が設けられている。止水栓14は、通水口11よりも下方に取り付けられており、炉内計装管7の下端から冷却水13が漏えいするのを防止する。
【0032】
炉内計装管7の内部には、中性子検出器34が備えられている。中性子検出器34は、原子炉圧力容器1に設置された中性子束測定装置35に接続されている。さらに、原子炉圧力容器1には、蒸気から水分を除去するための湿分分離器36と蒸気乾燥器37が設置されている。
【0033】
本実施例による原子炉水位計が備える水位センサ6について、詳しく説明する。本実施例による原子炉水位計は、複数の水位センサ6を備える。水位センサ6のそれぞれは、少なくとも1つのヒータ回路64と、少なくとも1つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64のそれぞれは、高さ方向の位置が互いに異なる少なくとも1つのヒータ62を備える。温度計回路61のそれぞれは、1つの温度計(例えば、熱電対67)を備える。それぞれの水位センサ6において、温度計は、ヒータ62に通電したときの温度の変化を感度よく検出できるように、ヒータ62の近くに設置するのが好ましい。
【0034】
それぞれの水位センサ6において、温度計(熱電対67)のうち少なくとも1つは、他の水位センサ6の温度計の1つと高さ方向の位置が略同一である。複数の水位センサ6において、それぞれのヒータ回路64の中で最高の位置にあるヒータ62は、他のヒータ回路64の中で最高の位置にあるヒータ62のうちの少なくとも1つと高さ方向の位置が異なる。なお、2つの温度計について高さ方向の位置が略同一とは、計測した水位が同じであるとみなせるような位置に2つの温度計が設置されているということである。
【0035】
原子炉水位計は、水位の低下による炉心3の異常加熱や落下物との衝突などにより、上方に位置する水位センサ6から破損や故障などの不具合が生じると考えられる。本実施例による原子炉水位計は、複数の水位センサ6を備えるので、1つの水位センサ6に不具合が生じても、他の水位センサ6を用いて水位を計測できる。原子炉水位計は、高さ方向の位置が略同一である温度計(熱電対67)を複数備えるので、1つの温度計に不具合が生じても、高さ方向の位置が略同一の他の温度計を用いて水位を計測できる。各ヒータ回路64の中で最高の位置にあるヒータ62は、他のヒータ回路64の中で最高の位置にあるヒータ62のうちの少なくとも1つと高さ方向の位置が異なるので、上方に位置するヒータ62から不具合が生じても、不具合が生じていないヒータ62を用いて水位を計測できるとともに、水位の計測に使用する温度計の数の増加を抑制できる。
【0036】
不具合が生じた場合に備えて設置する水位センサ6の数を増やしても、高さ方向の位置が略同一である複数の温度計を備えているので、水位の計測に使用するヒータ62の数を少なくすることができ、ヒータ62への通電時の消費電力を抑制できる。
【0037】
上記の特徴を備える原子炉水位計の構成例を、図2〜4を用いて説明する。
【0038】
図2は、本実施例による原子炉水位計の構成の一例を示す図である。図2には、原子炉水位計に設けられた3つの水位センサ60a〜60cを示している。水位センサ60a〜60cは、図9を用いて説明したように、金属シース69に収納されたヒータ回路64と温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、ヒータ62とヒータリード63を備える。温度計回路61は、温度計である熱電対67を備える。なお、水位センサ60a〜60cは、1つの炉内計装管7の中に設けられていてもよく、複数の炉内計装管7の中に分けて設けられていてもよい。
【0039】
水位センサ60aは、1つのヒータ回路64と、2つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、1本のヒータリード63に2つのヒータ62(62a1、62a2)が接続された構成を備える。ヒータ62a1とヒータ62a2は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の一方は、熱電対67(67a1)を備え、他方は、熱電対67(67a2)を備える。
【0040】
水位センサ60bは、2つのヒータ回路64と、3つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64の一方は、1本のヒータリード63に3つのヒータ62(62b1、62b2、62b3)が接続された構成を備え、他方は、1本のヒータリード63に2つのヒータ62(62b4、62b5)が接続された構成を備える。ヒータ62b1とヒータ62b2とヒータ62b3は、高さ方向の位置が互いに異なる。ヒータ62b4とヒータ62b5は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の1つは、熱電対67(67b1)を備え、他の1つは、熱電対67(67b2)を備え、残りの1つは、熱電対67(67b3)を備える。
【0041】
水位センサ60cは、1つのヒータ回路64と、1つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、1本のヒータリード63に1つのヒータ62(62c1)が接続された構成を備える。温度計回路61は、熱電対67(67c1)を備える。
【0042】
水位センサ60a〜60cのそれぞれにおいて、熱電対67のうち少なくとも1つは、他の水位センサ60a〜60cの熱電対67の1つと高さ方向の位置が略同一である。図2に示した例では、水位センサ60aの熱電対67a2は、水位センサ60bの熱電対67b1と高さ方向の位置が略同一である。また、水位センサ60bの熱電対67b3は、水位センサ60cの熱電対67c1と高さ方向の位置が略同一である。
【0043】
水位センサ60a〜60cの各ヒータ回路64において、最高の位置にあるヒータ62は、他のヒータ回路64内の最高の位置にあるヒータ62のうちの少なくとも1つと、高さ方向の位置が異なる。図2に示した例では、水位センサ60aのヒータ回路64では、ヒータ62a1が最高の位置にあるヒータ62であり、水位センサ60bの2つのヒータ回路64では、ヒータ62b1とヒータ62b4がそれぞれ最高の位置にあるヒータ62であり、水位センサ60cのヒータ回路64では、ヒータ62c1が最高の位置にあるヒータ62である。ヒータ回路64内の最高の位置にあるヒータ62であるヒータ62a1、ヒータ62b1、ヒータ62b4、及びヒータ62c1は、高さ方向の位置が互いに異なる。
【0044】
水位センサ60a〜60cに不具合が起きていないときは、ヒータ62a1、62a2、62b4、62b5と熱電対67a1、67a2、67b2、67b3を用いて水位を計測する。例えば、水位センサ60aに不具合が起きた場合は、ヒータ62b1、62b2、62b3と熱電対67b1、67b2、67b3を用いて水位を計測する。水位センサ60aと、水位計センサ60bのうち上部のヒータ62b1を含むヒータ回路64または熱電対67b1に不具合が生じた場合には、ヒータ62b4、62b5、62c1と熱電対67b2、67b3、67c1を用いて水位を計測する。水位センサ60aと60bの全てに不具合が起きた場合は、ヒータ62c1と熱電対67c1を用いて水位を計測する。このように、ヒータ回路64や温度計回路61(または水位センサ)に不具合が起きた場合には、水位の計測に使用するヒータ回路64と温度計回路61(または水位センサ)を変更することで、継続して水位を計測する。
【0045】
図3は、本実施例による原子炉水位計の構成の別の例を示す図である。図3には、原子炉水位計に設けられた4つの水位センサ60d〜60gを示している。水位センサ60d〜60gのそれぞれは、ヒータ回路64を1つだけ備える。なお、水位センサ60d〜60gは、1つの炉内計装管7の中に設けられていてもよく、複数の炉内計装管7の中に分けて設けられていてもよい。1つの水位センサが1つのヒータ回路64を備えるので、ヒータ回路64のヒータリード63の直径を大きくして抵抗を小さくでき、ヒータ62への通電時の消費電力を抑制することができる。
【0046】
水位センサ60dは、1つのヒータ回路64と、2つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、1本のヒータリード63に、2つのヒータ62(62d1、62d2)が接続された構成を備える。ヒータ62d1とヒータ62d2は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の一方は、熱電対67(67d1)を備え、他方は、熱電対67(67d2)を備える。
【0047】
水位センサ60eは、1つのヒータ回路64と、2つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、1本のヒータリード63に、2つのヒータ62(62e1、62e2)が接続された構成を備える。ヒータ62e1とヒータ62e2は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の一方は、熱電対67(67e1)を備え、他方は、熱電対67(67e2)を備える。
【0048】
水位センサ60fは、1つのヒータ回路64と、2つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、1本のヒータリード63に、2つのヒータ62(62f1、62f2)が接続された構成を備える。ヒータ62f1とヒータ62f2は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の一方は、熱電対67(67f1)を備え、他方は、熱電対67(67f2)を備える。
【0049】
水位センサ60gは、1つのヒータ回路64と、1つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64は、1本のヒータリード63に、1つのヒータ62(62g1)が接続された構成を備える。温度計回路61は、熱電対67(67g1)を備える。
【0050】
水位センサ60d〜60gのそれぞれにおいて、熱電対67のうち少なくとも1つは、他の水位センサ60d〜60gの熱電対67の1つと高さ方向の位置が略同一である。図3に示した例では、水位センサ60dの熱電対67d2は、水位センサ60eの熱電対67e1と高さ方向の位置が略同一である。水位センサ60eの熱電対67e2は、水位センサ60fの熱電対67f1と高さ方向の位置が略同一である。水位センサ60fの熱電対67f2は、水位センサ60gの熱電対67g1と高さ方向の位置が略同一である。
【0051】
水位センサ60d〜60gの各ヒータ回路64において、最高の位置にあるヒータ62は、他のヒータ回路64内の最高の位置にあるヒータ62のうちの少なくとも1つと、高さ方向の位置が異なる。図3に示した例では、水位センサ60dのヒータ回路64では、ヒータ62d1が最高の位置にあるヒータ62である。水位センサ60eのヒータ回路64では、ヒータ62e1が最高の位置にあるヒータ62である。水位センサ60fのヒータ回路64では、ヒータ62f1が最高の位置にあるヒータ62である。水位センサ60gのヒータ回路64では、ヒータ62g1が最高の位置にあるヒータ62である。ヒータ回路64内の最高の位置にあるヒータ62であるヒータ62d1、ヒータ62e1、ヒータ62f1、及びヒータ62g1は、高さ方向の位置が互いに異なる。
【0052】
水位センサ60d〜60gに不具合が起きていないときは、ヒータ62d1、62d2、62f1、62f2と熱電対67d1、67d2、67f1、67f2を用いて水位を計測する。例えば、水位センサ60dに不具合が起きた場合は、ヒータ62e1、62e2、62g1と熱電対67e1、67e2、67g1を用いて水位を計測する。水位センサ60d、60eに不具合が起きた場合は、ヒータ62f1、62f2と熱電対67f1、67f2を用いて水位を計測する。このように、ヒータ回路64や温度計回路61(または水位センサ)に不具合が起きた場合には、水位の計測に使用するヒータ回路64と温度計回路61(または水位センサ)を変更することで、継続して水位を計測する。
【0053】
図4は、本実施例による原子炉水位計の構成のさらに別の例を示す図である。図4には、原子炉水位計に設けられた2つの水位センサ60h〜60iを示している。水位センサ60h〜60iのそれぞれは、複数のヒータ回路64を備える。なお、水位センサ60h〜60iは、1つの炉内計装管7の中に設けられていてもよく、複数の炉内計装管7の中に分けて設けられていてもよい。1つの水位センサが複数のヒータ回路64を備えるので、原子炉水位計の全体で温度計回路61の数が増加するのを抑制できるとともに、1つのヒータ回路64に不具合が起きた場合でも、他のヒータ回路64を用いることで水位を継続して計測することができる。図3に示した例では、7つの温度計回路61を用いて4点の水位を計測するが、図4に示した例では、5つの温度計回路61を用いるだけで4点の水位を計測できる。
【0054】
水位センサ60hは、2つのヒータ回路64と、2つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64の一方は、1本のヒータリード63に、2つのヒータ62(62h1、62h2)が接続された構成を備え、他方は、1本のヒータリード63に、1つのヒータ62(62h3)が接続された構成を備える。ヒータ62h1とヒータ62h2は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の1つは、熱電対67(67h1)を備え、他の1つは、熱電対67(67h2)を備える。
【0055】
水位センサ60iは、2つのヒータ回路64と、3つの温度計回路61を備える。ヒータ回路64の一方は、1本のヒータリード63に、3つのヒータ62(62i1、62i2、62i3)が接続された構成を備え、他方は、1本のヒータリード63に、1つのヒータ62(62i4)が接続された構成を備える。ヒータ62i1とヒータ62i2とヒータ62i3は、高さ方向の位置が互いに異なる。温度計回路61の1つは、熱電対67(67i1)を備え、他の1つは、熱電対67(67i2)を備え、残りの1つは、熱電対67(67i3)を備える。
【0056】
水位センサ60h〜60iのそれぞれにおいて、熱電対67のうち少なくとも1つは、他の水位センサ60h〜60iの熱電対67の1つと高さ方向の位置が略同一である。図4に示した例では、水位センサ60hの熱電対67h2は、水位センサ60iの熱電対67i1と高さ方向の位置が略同一である。
【0057】
水位センサ60h〜60iの各ヒータ回路64において、最高の位置にあるヒータ62は、他のヒータ回路64内の最高の位置にあるヒータ62のうちの少なくとも1つと、高さ方向の位置が異なる。図4に示した例では、水位センサ60hの2つのヒータ回路64では、ヒータ62h1とヒータ62h3がそれぞれ最高の位置にあるヒータ62であり、水位センサ60iの2つのヒータ回路64では、ヒータ62i1とヒータ62i4がそれぞれ最高の位置にあるヒータ62である。ヒータ62h1は、ヒータ62h3、ヒータ62i1、及びヒータ62i4と高さ方向の位置が互いに異なり、ヒータ62h3は、ヒータ62h1、及びヒータ62i4と高さ方向の位置が互いに異なり、ヒータ62i1は、ヒータ62h1、及びヒータ62i4と高さ方向の位置が互いに異なり、ヒータ62i4は、ヒータ62h1、ヒータ62h3、及びヒータ62i1と高さ方向の位置が互いに異なる。
【0058】
水位センサ60h〜60iに不具合が起きていないときは、ヒータ62h1、62h2、62i2、62i3と熱電対67h1、67h2、67i2、67i3を用いて水位を計測する(ヒータ62i1は通電される)。例えば、水位センサ60hに不具合が起きた場合は、ヒータ62i1、62i2、62i3と熱電対67i1、67i2、67i3を用いて水位を計測する。水位センサ60hと、水位計センサ60iのうち上部のヒータ62i1を含むヒータ回路64または熱電対67i1に不具合が生じた場合には、ヒータ62i4と熱電対67i3を用いて水位を計測する。このように、ヒータ回路64や温度計回路61(または水位センサ)に不具合が起きた場合には、水位の計測に使用するヒータ回路64と温度計回路61(または水位センサ)を変更することで、継続して水位を計測する。
【0059】
図5は、温度計回路61の不具合検知装置21の構成例を示す図である。不具合検知装置21は、スイッチ41と、不具合検知回路を備える。不具合検知回路は、電源42、電流計43、44、及び抵抗45、46を備える。
【0060】
スイッチ41は、計測制御装置20からの指令により、水位センサ6に接続された信号ケーブル23が、温度計測装置16に接続された信号ケーブル23に接続するのと、不具合検知回路に接続するのを切り替える。
【0061】
計測制御装置20は、水位センサ6が水位を計測する(すなわち、温度を測定する)とき以外のときに、スイッチ41を切り替えて水位センサ6に接続された信号ケーブル23を不具合検知回路に接続し、温度計回路61の不具合を検知する。
【0062】
不具合検知装置21は、水位センサ6の温度計回路61の不具合(異常)を検知するための装置である。不具合検知装置21は、水位センサ6に接続された信号ケーブル23が不具合検知回路に接続し、電源42がこの信号ケーブル23に電圧を印加したときに、電流計43、44に流れる電流を測り、電流計43、44の計測値を計測制御装置20に送出する。計測制御装置20は、電流計43に流れる電流から、温度計回路61に接続された不具合検知回路の抵抗を求め、この抵抗が実用上無限大であれば温度計回路61が断線しており、この抵抗が実用上ゼロであれば温度計回路61が短絡していると判定する。また、計測制御装置20は、電流計44に一定以上の電流が流れれば、温度計回路61が地絡していると判定する。不具合検知装置21は、このようにして温度計回路61の異常(断線、短絡、または地絡)を検知することができる。
【0063】
ヒータ回路64の不具合検知装置22は、温度計回路61の不具合検知装置21と同様の構成を備え、水位センサ6のヒータ回路64の不具合(断線、短絡、または地絡という異常)を検知するための装置である。計測制御装置20は、不具合検知装置22の電流計の計測値から、ヒータ回路64が断線、短絡、または地絡していると判定することができる。
【0064】
図6は、計測制御装置20が備える選択装置19(図1参照)が格納した選択テーブルの一例を示す図である。選択テーブルは、不具合を起こした水位センサ6を示す異常センサ欄と、異常センサ欄の水位センサ6が不具合を起こしたときに水位の計測に使用する水位センサ6を示す選択センサ欄を有する。図6には、一例として、図1に示した原子炉水位計の水位センサについての選択テーブルを示している。
【0065】
図6に示した選択テーブルでは、例えば、不具合を起こした水位センサ(異常センサ)が水位センサ6aのみのときは、水位の計測に使用する水位センサ(選択センサ)が水位センサ6b、6d、6fであり、異常センサが水位センサ6a〜6cのときは、選択センサが水位センサ6d、6fであることを示している。なお、異常センサがないときは、水位センサ6a、6c、6eを水位の計測に使用する。
【0066】
計測制御装置20は、水位センサ6の不具合(例えば、温度計回路61やヒータ回路64の断線、短絡、または地絡)を検知したら、選択テーブルに従って水位の計測に使用する水位センサ6を変更し、異常センサに応じた選択センサを用いて水位の計測を継続する。
【0067】
図6に示した選択テーブルには、一例として、水位の低下とともに炉心3が上部から異常加熱していき、上方にある水位センサ6から不具合を生じていく場合について、異常センサと選択センサの組み合わせを示している。本実施例による原子炉水位計では、最大3本の水位センサ6を使用することで、所望の水位が全て計測できる。このため、水位の計測に使用する水位センサ6の数を少なくすることができ、水位の計測で消費される電力を抑制できる。なお、選択テーブルの選択センサは、所望の水位が全て計測できるように異常センサに応じて決めればよく、水位センサ6の温度計の高さ位置に応じて(すなわち、高さ位置が同じ温度計が存在しないように)決めるのが望ましい。
【0068】
なお、図6に示した選択テーブルは、不具合を起こした水位センサ6と、水位の計測に使用する水位センサ6との対応を示しているが、不具合を起こした温度計回路61とヒータ回路64と、水位の計測に使用する温度計回路61とヒータ回路64との対応を示すこともできる。
【0069】
計測制御装置20は、温度計回路61とヒータ回路64の不具合(断線、短絡、または地絡)を検知したら、選択テーブルに従って水位の計測に使用する温度計回路61とヒータ回路64を変更し、変更後の温度計回路61とヒータ回路64を用いて水位の計測を継続する。
【実施例2】
【0070】
図7は、本発明の実施例2による原子炉水位計の水位センサ70a〜70bの構成を示す図である。水位センサ70aは、2つのヒータ回路74と、3つの温度計回路71と、3つの断熱体75(75a、75b、75c)と、金属シース69を備える。水位センサ70bは、1つのヒータ回路74と、1つの温度計回路71と、1つの断熱体75(75d)と、金属シース69を備える。本実施例による原子炉水位計では、水位センサ70の温度計回路71がガンマサーモメータで構成されている。
【0071】
水位センサ70aのヒータ回路74の一方は、1本のヒータリード73に、3つのヒータ72(72a1、72a2、72a3)が接続された構成を備え、他方は、1本のヒータリード73に、2つのヒータ72(72a4、72a5)が接続された構成を備える。水位センサ70bのヒータ回路74は、1本のヒータリード73に、1つのヒータ72(72b1)が接続された構成を備える。
【0072】
断熱体75aは、ヒータ72a1の周囲を囲う。断熱体75bは、ヒータ72a2、72a4の周囲を囲う。断熱体75cは、ヒータ72a3、72a5の周囲を囲う。断熱体75dは、ヒータ72b1の周囲を囲う。
【0073】
温度計回路71は、ガンマサーモメータであり、断熱部分と非断熱部分とに接点を有する差動式熱電対77を温度計として備える。水位センサ70aの温度計回路71の1つは、差動式熱電対77(77a1)を備え、他の1つは、差動式熱電対77(77a2)を備え、残りの1つは、差動式熱電対77(77a3)を備える。水位センサ70bの温度計回路71は、差動式熱電対77(77b1)を備える。差動式熱電対77は、一方の接点が断熱体75に囲まれており、他方の接点が断熱体75に囲まれていない。すなわち、差動式熱電対77a1〜77a3、77b1は、それぞれ、一方の接点が断熱体75a〜75c、75dの内部に位置し、他方の接点が断熱体75a〜75c、75dの外部に位置する。
【0074】
水位センサ70aの2つのヒータ回路74では、ヒータ72a1とヒータ72a4が最高の位置にあるヒータ72である。水位センサ70bのヒータ回路74では、ヒータ72b1が最高の位置にあるヒータ72である。ヒータ回路74内の最高の位置にあるヒータ72であるヒータ72a1、ヒータ72a4、及びヒータ72b1は、高さ方向の位置が互いに異なる。ヒータ72a1は、ヒータ72a4により高い位置にあり、ヒータ72a4は、ヒータ72b1より高い位置にある。
【0075】
例えば、水位センサ70aにおいて、異常加熱や落下物との衝突などにより、上方に位置するヒータ72a1を備えるヒータ回路74に破損や故障などの不具合(例えば、断線、短絡、及び地絡などの異常)が生じても、もう一方のヒータ回路74(ヒータ72a4を備えるヒータ回路74)を用いて水位の計測を継続することができる。
【0076】
本実施例による原子炉水位計は、図7に示したような水位センサ70を複数本組み合わせて構成することができ、実施例1による原子炉水位計と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0077】
図8は、本発明の実施例3による原子炉水位計の全体構成図である。本実施例による原子炉水位計は、実施例1(図1)による原子炉水位計の構成に差圧式水位計が追加された構成を備える。差圧式水位計は、基準水柱を定める基準面器38と、差圧伝送器(差圧計)39、40を備え、基準水柱との差圧に基づいて水位を計測する。差圧式水位計の水位の計測範囲は、水位センサ6の水位の計測範囲と少なくとも一部が重複している。この重複している計測範囲では、差圧式水位計と水位センサ6の両方で原子炉水位を計測できる。
【0078】
この重複している計測範囲内に水位があるときに、差圧式水位計に異常が生じると、計測した水位が差圧式水位計と水位センサ6とで異なる。このことを利用すると、水位センサ6は、差圧式水位計に異常が発生したか否かを監視できる。本実施例による原子炉水位計は、差圧式水位計に異常が発生していない場合は、差圧式水位計を用いて空間について連続的に水位が計測できるので、水位をより高精度に計測できるというメリットがある(水位センサ6は、空間について離散的に水位を計測する)。また、本実施例による原子炉水位計は、例えば故障や冷却水の消失などによって差圧式水位計に異常が発生しても、水位センサ6を用いることで水位の計測を継続できるというメリットもある。
【0079】
本実施例による原子炉水位計は、水位センサ6の代わりに、実施例2による原子炉水位計の水位センサ70(図7)を備えることもできる。
【0080】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…原子炉圧力容器、2…シュラウド、3…炉心、4…炉心支持板、5…上部格子板、6,6a〜6f…水位センサ、7…炉内計装管、8…炉内計装ハウジング、9…炉内計装案内管、10,11,12…通水口、13…冷却水、14…止水栓、15…水位計測装置、16…温度計測装置、18…ヒータ制御装置、19…選択装置、20…計測制御装置、21…温度計回路の不具合検知装置、22…ヒータ回路の不具合検知装置、23…信号ケーブル、24…ヒータケーブル、34…中性子検出器、35…中性子束測定装置、36…湿分分離器、37…蒸気乾燥器、38…基準面器、39,40…差圧伝送器、41…スイッチ、42…電源、43,44…電流計、45,46…抵抗、60a〜60c,60d〜60g,60h〜60i…水位センサ、61…温度計回路、62,62a1〜62a2,62b1〜62b5,62c1,62d1〜62d2,62e1〜62e2,62f1〜62f2,62g1,62h1〜62h2,62i1〜62i4…ヒータ、63…ヒータリード、64…ヒータ回路、65…クロメル線、66…アルメル線、67,67a1〜67a2,67b1〜67b3,67c1,67d1〜67d2,67e1〜67e2,67f1〜67f2,67g1,67h1〜67h2,67i1〜67i3…熱電対、68…絶縁体、69…金属シース、70a〜70b…水位センサ、71…温度計回路、72,72a1〜72a5,72b1…ヒータ、73…ヒータリード、74…ヒータ回路、75,75a〜75c,75d…断熱体、77,77a1〜77a3,77b1…差動式熱電対。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10