特許第6896587号(P6896587)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896587
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】燃料貯蔵ラック
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/07 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   G21C19/07 500
   G21C19/07 600
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-211965(P2017-211965)
(22)【出願日】2017年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-86298(P2019-86298A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 和
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亮
(72)【発明者】
【氏名】長坂 直
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−243456(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0082285(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/116977(WO,A1)
【文献】 特表2011−526685(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0142189(US,A1)
【文献】 特開2014−109470(JP,A)
【文献】 特開2013−174623(JP,A)
【文献】 特開昭61−082197(JP,A)
【文献】 米国特許第05196161(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/07
G21C 19/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体で満たされた燃料プール内に設置され、燃料集合体を一体ずつ収納可能なセルが隣接して複数配置された燃料貯蔵ラックにおいて、
前記セルを構成する枠材に前記セルに連通する貫通孔が設けられ
前記枠材の内側には、前記セル内の前記燃料集合体へ向かって突出し且つ前記燃料貯蔵ラックの鉛直方向に延びる突起部が、前記貫通孔の水平方向両側に設けられたことを特徴とする燃料貯蔵ラック。
【請求項2】
前記貫通孔は、燃料貯蔵ラックの全てのセルに連通して、これらのセルを構成する枠材に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の燃料貯蔵ラック。
【請求項3】
前記貫通孔は、燃料貯蔵ラックの鉛直方向中央位置よりも上方に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料貯蔵ラック。
【請求項4】
前記貫通孔は、燃料貯蔵ラックの鉛直方向に長手方向を有する形状、または、前記燃料貯蔵ラックの鉛直方向に複数配列されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料貯蔵ラック。
【請求項5】
前記燃料貯蔵ラックの外周には、貫通孔が設けられた範囲に、水平方向に延びる補強板が固着されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料貯蔵ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料プール内に設置されて、燃料集合体を収納し保管する燃料貯蔵ラックに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電施設において、燃料集合体は、使用済燃料貯蔵プール内に設置された使用済燃料貯蔵ラックに収納されて保管される。使用済燃料貯蔵ラックは、使用済燃料が臨界に達しないように燃料集合体を冷却するほか、地震時に健全に保管する機能を担っている。このため、使用済燃料貯蔵ラックは、燃料集合体に対して地震荷重による破損や転倒を防止する必要があり、安全上重要な機器として地震時の健全性の維持が求められる。
【0003】
使用済燃料貯蔵ラックの耐震性を向上させる対策として、使用済燃料貯蔵ラックを剛に設計しあるいは補強して、共振振動数を高く設定する構造や、使用済燃料貯蔵ラックに減衰を付加する装置を設置する制振構造が提案されている。
【0004】
例えば、使用済燃料貯蔵ラックに使用済燃料貯蔵プールの壁面から延びる梁を渡し、この梁と使用済燃料貯蔵ラックの上部側面とを連結して使用済燃料貯蔵ラックの上部を支持することで、使用済燃料貯蔵ラックの共振振動数を上昇させて地震応答を低下させるよう構成している。また、連結部にダンパーを設置することで、使用済燃料貯蔵ラックに減衰を付加するよう構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−138693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原子力発電施設における使用済燃料貯蔵プール内において、使用済燃料貯蔵ラックの耐震性を向上させることを目的とした上述の従来技術では、使用済燃料貯蔵ラックの外部に補強部材や減衰装置が設置されるため、スペースに制約のある使用済燃料貯蔵プール内で、燃料集合体を高い密度で収納することが困難になる。
【0007】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、燃料貯蔵ラックの燃料プール内への配置設計に大きな影響を与えることなく、燃料貯蔵ラックに対する制振効果を向上できる燃料貯蔵ラックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による燃料貯蔵ラックは、液体で満たされた燃料プール内に設置され、燃料集合体を一体ずつ収納可能なセルが隣接して複数配置された燃料貯蔵ラックにおいて、前記セルを構成する枠材に前記セルに連通する貫通孔が設けられ、前記枠材の内側には、前記セル内の前記燃料集合体へ向かって突出し且つ前記燃料貯蔵ラックの鉛直方向に延びる突起部が、前記貫通孔の水平方向両側に設けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、燃料貯蔵ラックの燃料プール内への配置設計に大きな影響を与えることなく、燃料貯蔵ラックに対する制振効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の使用済燃料貯蔵ラックを示す側面図。
図2図1のII−II線に沿う断面図。
図3図2の一部を拡大し、セル内の水の流動状況を説明する説明図。
図4図1の使用済燃料貯蔵ラックの第1変形形態を示す側面図。
図5図1の使用済燃料貯蔵ラックの第2変形形態を示す側面図。
図6】第2実施形態の使用済燃料貯蔵ラックを示す側面図。
図7図6のVII−VII線に沿う断面図。
図8図7の一部を拡大し、セル内の水の流動状況を説明する説明図。
図9図6の使用済燃料貯蔵ラックの第1変形形態を示す図8に対応した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1図5
図1は、第1実施形態の使用済燃料貯蔵ラックを示す側面図である。また、図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。これらの図1及び図2に示す燃料貯蔵ラックとしての使用済燃料貯蔵ラック10は、液体としての水Wで満たされた燃料プールとしての使用済燃料貯蔵プール11内に設置される。
【0012】
原子力発電施設の原子炉で所定期間使用された燃料集合体は原子炉から取り出され、使用済燃料集合体12として、使用済燃料貯蔵プール11内の使用済燃料貯蔵ラック10における複数の各セル13に1体ずつ収納される。使用済燃料集合体12は、使用済燃料貯蔵ラック10のセル13内に収納された状態で、使用済燃料貯蔵プール中の水Wにより冷却されて未臨界状態に維持されると共に、地震荷重に対してその健全性が確保されるよう支持されて保管される。
【0013】
使用済燃料貯蔵ラック10は、セル13の側面を構成する枠材14と、セル13の底面を構成する燃料支持板15と、燃料支持板15に固定される脚部16と、を有してなる。枠材14は、格子状に組み付けられた角筒材や板材であり、複数のセル13を水平方向に、例えば10列×10列に隣接配置して構成する。各図では5列×5列で図示している。
【0014】
燃料支持板15は、枠材14の下端に固着され、1つのセル13に対応して1つの嵌合孔17が形成されている。セル13に収納される使用済燃料集合体12の下端が燃料支持板15の嵌合孔17に差し込まれて嵌合されることで、使用済燃料集合体12はセル13内で、下端支持の片持ち梁状態で収納される。また、脚部16は、燃料支持板15の少なくとも4隅部に固定され、側面に流通孔18を備える。この脚部16が使用済燃料貯蔵プール11のプール底面19に設置される。使用済燃料貯蔵プール11内の水Wは、複数の脚部16間や各脚部16の流通孔18を通って、使用済燃料集合体12の下部から内部に流入して、この使用済燃料集合体12を冷却する。
【0015】
本第1実施形態では、セル13を構成する枠材14に、全てのセル13に連通して貫通孔20が形成される。つまり、枠材14には、隣接した全てのセル13同士を連通する貫通孔20、更に、最外周位置のセル13と使用済燃料貯蔵ラック10の外部とを連数する貫通孔20がそれぞれ形成される。この貫通孔20は、各セル13の互いに対向する4面のそれぞれを構成する枠材14に、1個または複数個(本第1実施形態では、貫通孔20は後述のスリット形状で1個、円形状で複数個)が形成される。使用済燃料貯蔵ラック10及び使用済燃料集合体12の振動時に、セル13内の水Wが貫通孔20を通って流出入する。この貫通孔20は、図1に示すように、使用済燃料貯蔵ラック10の鉛直方向に延びるスリット形状に形成される。あるいは、図4に示すように、貫通孔20は、使用済燃料貯蔵ラック10の鉛直方向に1列または複数列配列された複数の円形状に形成される。
【0016】
また、使用済燃料集合体12が、その下端を燃料支持板15に片持ち梁状態で支持されて振動するため、貫通孔20は、燃料集合体12の振れが大きい上部に設けることが効果的である。図1または図4に示す例では、使用済燃料貯蔵ラック10の鉛直方向中央位置よりも上方に貫通孔20が設けられる。
【0017】
また、例えば鉛直方向の貫通孔20を設ける範囲において、下方よりも上方では貫通孔20を増やすか大きくする等してもよい。例えば、図1に示す例において貫通孔20の上端近傍で貫通孔20の幅を大きくする、または貫通孔20の数を増やす(すなわち、図示した貫通孔20の上端付近に、鉛直方向が短尺な貫通孔20をさらに設ける)といった構成でもよい。また、図4に示す例においては、貫通孔20を設ける範囲において下方から上方にかけて漸次または段階的に貫通孔20の数および/または大きさが増大する構成であってもよい。更に、貫通項20を設ける範囲のうち下方は図4のように多数の貫通孔20を設け、上方は図1のようにスリット状の貫通孔20にした構成であってもよい。貫通孔20の断面積を、燃料集合体12の上端近傍では大きく、その下方では小さくとることで、燃料貯蔵ラック10の剛性を確保しつつ本実施形態による効果を高めることができる。
【0018】
上述のように構成された使用済燃料貯蔵ラック10と、この使用済燃料貯蔵ラック10に収納された使用済燃料集合体12は、使用済燃料貯蔵プール11の水W中に存在するため、地震動の作用で振動するときに水Wによる反力を受ける。この反力は、水Wの速度に依存する流動抵抗と、水Wの加速度に依存する流体付加質量として、使用済燃料貯蔵ラック10及び使用済燃料集合体12に作用する。
【0019】
まず、流動抵抗について述べる。使用済燃料集合体12は、下端が燃料支持板15に支持された片持ち梁とみなせるため、固有振動数が低い。一方、使用済燃料貯蔵ラック10は、使用済燃料集合体12に比べて剛性が高く且つ重量が軽く構成されているので、固有振動数が高い。このように、使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12とは固有振動数が離れていることから、水平方向に地震動が作用した場合に相対運動しながら振動する。
【0020】
このとき、図3に示すように、使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12との振動方向(水平方向)の距離は、片側が狭くなり、反対側が広くなる。このため、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14と使用済燃料集合体12とのセル13内における隙間Tにおいて、使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12の振動方向の距離が狭くなる側から広くなる側へ、矢印Aに示すように水Wが流動して、この使用済燃料集合体12と使用燃料貯蔵ラック10の枠材14との隙間Tにおいて、振動を減衰する流動抵抗が発生する。
【0021】
次に、流体付加質量について述べる。使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12との固有振動数は離れているが、これらの使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12には、水W(流体)内の圧力伝播により連成して振動しようとする力が作用する。更に、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14に貫通孔20が形成されていないと仮定した場合、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14と使用済燃料集合体12とのセル13における隙間Tが小さいほど、この隙間Tにおいて水Wが加速されて流体付加質量が増大し、使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12は一体となって振動し、相対運動が生じ難くなる。これに対し、本第1実施形態のように、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14に貫通孔20が形成されている場合には、この貫通孔20を通って隣接するセル13間で、矢印Bに示すように水Wが流出入するため、水Wが加速され難くなり、流体付加質量が減少する。
【0022】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
(1)図1図3に示すように、使用済燃料貯蔵ラック10のセル13を構成する枠材14に、セル13に連通する貫通孔20が設けられたので、地震動によって使用済燃料貯蔵ラック10及び使用済燃料集合体12が振動すると、セル13内の水W(流体)が貫通孔20を通って流出入する。これにより、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14と使用済燃料集合体12との間の隙間Tを流れる水Wが加速され難くなって流体付加質量が減少し、使用済燃料貯蔵ラック10と使用済燃料集合体12とは相対運動する。この結果、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14と使用済燃料集合体12との間の隙間Tを流れる水Wに流動抵抗が生じ、この流動抵抗により振動応答が抑制されて、使用済燃料貯蔵ラック10に対して制振効果を向上できる。
【0023】
(2)使用済燃料貯蔵ラック10に対して制振効果を発揮させる構成(セル13を構成する枠材14の貫通孔20)が使用済燃料貯蔵ラック10の内部に存在し、外部には存在しないので、使用済燃料貯蔵プール11内における使用済燃料貯蔵ラック10の配置設計に影響を与えることがない。
【0024】
(3)使用済燃料集合体12は、使用済燃料貯蔵ラック10のセル13に収納されたときに、その下端部が燃料支持板15の嵌合孔17に嵌合されて片持ち梁の状態で支持される。このため、水平方向に地震動が作用したとき、使用済燃料集合体12は、使用済燃料貯蔵ラック10に対して水平方向に振動し、使用済燃料集合体12の上方の領域の方が振幅は大きい。従って、使用済燃料貯蔵ラック10の枠材14には、使用済燃料貯蔵ラック10の鉛直方向中央位置よりも上方の領域(つまり、使用済燃料集合体12の振幅が大きくなる領域)のみに貫通孔20が設けられている。この結果、貫通孔20の形成によっても使用済燃料貯蔵ラック10の剛性を確保できる。
【0025】
なお、図5に示すように、使用済燃料貯蔵ラック10の外周の貫通孔20が設けられた範囲に、水平方向に延びる帯状の補強板22を固着して、使用済燃料貯蔵ラック10の剛性を高めてもよい。
【0026】
[B]第2実施形態(図6図9
図6は、第2実施形態の使用済燃料貯蔵ラックを示す側面図である。また、図7は、図6のVII−VII線に沿う断面図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0027】
この第2実施形態の燃料貯蔵ラックとしての使用済燃料貯蔵ラック30が第1実施形態と異なる点は、セル13を構成する枠材14の内側に、セル13内の使用済燃料集合体12へ向かって突出し且つ使用済燃料貯蔵ラック10の鉛直方向に延びる突起部31が、貫通孔20の水平方向両側に設けられた点である。
【0028】
つまり、突起部31は、図8に示すように断面矩形状、または図9に示すように断面三角形状に形成され、貫通孔20と同様に、各セル13の互いに対向する4面のそれぞれを構成する枠材14に一体成形、または例えば溶接等により固着される。更に、突起部31は、図6に示すように、貫通孔20に対応して、使用済燃料貯蔵ラック10の鉛直方向中央位置よりも上方に設けられる。なお、図8図9では、突起部31のうち拡大したセル13内に設けられたもののみを図示している。
【0029】
突起部31の突出量Lは、この突起部31と使用済燃料集合体12との隙間Uを水Wが矢印Cのように流れる際の圧力損失によって、枠材14と使用済燃料集合体12との隙間Tを水Wが矢印Aのように流れる際の流動抵抗よりも大きな流動抵抗が生ずるように設定される。従って、この突起部31は流動抵抗体として機能する。更に、突起部31の突出量Lは、セル13内への使用済燃料集合体12の挿脱時に、この使用済燃料集合体12が干渉しない値に設定される。また、突起部31の幅Mは、この突起部31と使用済燃料集合体12との隙間Uを水Wが流れる際に、幅Mが広いほど流体付加質量が増加するため、突起部31が水Wから受ける反力に対して強度が確保できる範囲で、できるだけ幅Mが狭くなるように設定される。
【0030】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、第1実施形態と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0031】
(4)図6図9に示すように、使用済燃料貯蔵ラック30のセル13を構成する枠材14に、セル13に連通する貫通孔20が設けられ、更に、枠材14の内側には、セル13内の使用済燃料集合体12へ向かって突出し且つ使用済燃料貯蔵ラック30の鉛直方向に延びる突起部31が、貫通孔20の水平方向両側に設けられている。このため、地震動によって使用済燃料貯蔵ラック30及び使用燃料集合体12が水平方向に振動すると、セル13内の水Wが突起部31と使用済燃料集合体12との隙間Uを通って貫通孔20から流出入する。このように、セル13内の水Wが貫通孔20を通って流出入することで、使用済燃料貯蔵ラック30の枠材14と使用済燃料集合体12との隙間Tを流れる水Wが加速され難くなり、更に、使用済燃料貯蔵ラック30の突起部31と使用済燃料集合体12との隙間Uを流れる水Wも加速され難いことで、流体付加質量が減少する。
【0032】
上述のように流体付加質量が減少することで、使用済燃料貯蔵ラック30と使用済燃料集合体12は相対運動する。これにより、使用済燃料貯蔵ラック30の枠材14と使用済燃料集合体12との隙間Tを流れる水Wによって、振動を減衰する流動抵抗が生じ、また、使用済燃料貯蔵ラック30の突起部31と使用済燃料集合体12との隙間Uを流れる水Wによって、上記流動抵抗よりも大きな流動抵抗が生ずる。この結果、これらの流動抵抗により振動応答が、第1実施形態の場合よりも一層抑制されて、使用済燃料貯蔵ラック30に対して高い制振効果を発揮できる。
【0033】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、燃料貯蔵ラックは、未使用の燃料集合体を収納する燃料貯蔵ラックであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10…使用済燃料貯蔵ラック(燃料貯蔵ラック)、11…使用済燃料貯蔵プール(燃料プール)、12…使用済燃料集合体(燃料集合体)、13…セル、14…枠材、20…貫通孔、22…補強板、30…使用済燃料貯蔵ラック(燃料貯蔵ラック)、31…突起部、T…隙間、W…水(液体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9