(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0018】
(プリプレグ)
本実施形態に係るプリプレグは、炭素繊維と、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂、硬化剤及びメラミンシアヌレートを含有する樹脂組成物と、を含む。このようなプリプレグによれば、ハロゲン系難燃剤及びリン系難燃剤を使用することなく、薄さと難燃性とを両立した繊維強化複合材料を形成することができる。
【0019】
炭素繊維は特に限定されず、繊維強化複合材料に用いられる炭素繊維を特に制限なく使用できる。炭素繊維には、原料の違いによって、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維がある。ピッチ系炭素繊維は、弾性が高いという特性を有する一方、PAN系炭素繊維は、引張弾性率が高いという特性を有する。本実施形態における炭素繊維は、PAN系炭素繊維でもピッチ系炭素繊維でもよいが、耐変形性に一層優れる炭素繊維強化複合材料が得られる観点からは、ピッチ系炭素繊維がより好ましい。
【0020】
本実施形態に係るプリプレグは、引張弾性率が150GPa以上の炭素繊維を含むことが好ましい。また、炭素繊維の引張弾性率は、200GPa以上がより好ましく、450GPa以上が更に好ましく、600GPa以上が一層好ましい。プリプレグを複数種類使用する場合は、プリプレグに含まれる炭素繊維の大部分(例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上)が、上述の好適な引張弾性率を有することが好ましい。なお、本明細書中、炭素繊維の引張弾性率は、JIS R7601(1986)に従って測定されるストランド引張弾性率を意味する。
【0021】
本実施形態に係るプリプレグにおいて、単位面積当たりの炭素繊維量は、例えば30g/m
2以上であってよく、好ましくは50g/m
2以上、より好ましくは70g/m
2以上である。このような炭素繊維量とすることで、繊維強化複合材料を成形する際に所定の厚みを得るために積層枚数を少なくすることができ、作業を簡便にできる。また、単位面積当たりの炭素繊維量は、例えば3000g/m
2以下であってよく、好ましくは2000g/m
2以下、より好ましくは1000g/m
2以下である。これにより、ボイドの発生が抑えられ、均一な繊維強化複合材料が得られやすくなる。
【0022】
プリプレグ中の炭素繊維の含有量は、プリプレグの全量基準で、例えば20質量%以上であってよく、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。これにより、繊維強化複合材料の強度が一層向上する。また、プリプレグ中の炭素繊維の含有量は、プリプレグの全量基準で、例えば90質量%以下であってよく、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。これにより、ボイドの発生が抑えられ、均一な繊維強化複合材料が得られやすくなる。
【0023】
樹脂組成物は、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂と、硬化剤と、メラミンシアヌレートとを含有する。樹脂組成物の硬化によって、繊維強化複合材料中のマトリックス樹脂が形成される。
【0024】
ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(以下、場合により「エポキシ樹脂(A)」と称する。)は、ビフェニル構造と2以上のエポキシ基とを有する化合物である。
【0025】
ビフェニル構造は、2つのベンゼン環が単結合で共有結合した構造を示す。エポキシ樹脂(A)中のビフェニル構造は、ベンゼン環上に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は特に限定されないが、例えば150以上であってよく、好ましくは200以上、より好ましくは250以上である。また、エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、例えば1000以下であってよく、好ましくは700以下、より好ましくは400以下である。
【0027】
エポキシ樹脂(A)としては、例えば下記式(A−1)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0029】
式中、nは1以上の整数を示し、好ましくは1〜30、より好ましくは1〜10である。
【0030】
エポキシ樹脂(A)としては市販品を用いてもよく、例えば、NC−3000、NC−3000H、NC−3100(以上、日本化薬製、商品名)等を好適に用いることができる。
【0031】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば15質量%以上であってよく、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。これにより、繊維強化複合材料の耐熱性や靱性が一層向上する。また、エポキシ樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば45質量%以下であってよく、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。これにより、樹脂組成物を適切な粘度に保つことでき、作業を簡便にできる。
【0032】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)以外の他のエポキシ樹脂(以下、場合により「エポキシ樹脂(B)」と称する。)を更に含有していてよい。エポキシ樹脂(B)は、2以上のエポキシ基を有し、ビフェニル構造を有しない化合物ということができる。
【0033】
エポキシ樹脂(B)としては、エポキシ樹脂(A)とともに硬化可能なエポキシ樹脂であればよく、特に限定されない。エポキシ樹脂(B)は、樹脂組成物の粘度調整、組成分の硬化性の向上等の目的で配合されてよい。
【0034】
エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0035】
エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量に対するエポキシ樹脂(A)の含有量は、例えば20質量%以上であってよく、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。これにより、繊維強化複合材料の耐熱性が一層向上する。
【0036】
エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量に対するエポキシ樹脂(A)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば40質量%以下であってよく、35質量%以下であってもよい。
【0037】
エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば50質量%以上であってよく、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。これにより、繊維強化複合材料としてより好適な機械物性が得られやすくなる。また、エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば80質量%以下であってよく、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。これにより、他の樹脂、硬化剤、硬化促進剤等の添加物を樹脂組成物の構成材料として十分加えられることになり、様々な物性の向上を実現できる。
【0038】
硬化剤は、エポキシ樹脂(A)(場合により、エポキシ樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B))を硬化可能な硬化剤であればよい。硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられ、これらのうちアミン系硬化剤が好ましく、その中でもジシアンジアミド及びジアミノジフェニルスルホンがより好ましい。
【0039】
硬化剤の含有量は特に限定されず、樹脂組成物の全量基準で、例えば0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、硬化剤の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば10質量%以下であってよく、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0040】
メラミンシアヌレートの含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば15質量%以上であってよく、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。これにより、繊維強化複合材料の耐熱性が一層向上する。また、メラミンシアヌレートの含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば50質量%以下であってよく、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。これにより、樹脂組成物を適切な粘度に保つことでき、作業性が向上する。
【0041】
エポキシ樹脂(A)の含有量C
1に対するメラミンシアヌレートの含有量C
2の比(C
2/C
1)(質量比)は、例えば0.5以上であってよく、好ましくは1.0以上である。また、上記比(C
2/C
1)は、例えば3.0以下であってよく、好ましくは2.0以下である。このような比(C
2/C
1)であると、繊維強化複合材料の厚さが薄い場合の難燃性が、より向上する傾向がある。
【0042】
エポキシ樹脂(A)の含有量C
1とメラミンシアヌレートの含有量C
2の合計量(C
1+C
2)は、樹脂組成物の全量基準で、例えば30質量%以上であってよく、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。また、上記合計量(C
1+C
2)は、樹脂組成物の全量基準で、例えば80質量%以下であってよく、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。このような合計量(C
1+C
2)であると、繊維強化複合材料の厚さが薄い場合の難燃性が、より向上する傾向がある。
【0043】
樹脂組成物は、硬化促進剤を更に含有していてよい。ジシアンジアミドと組み合わせて使用する硬化促進剤としては、例えば、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(4−クロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)等が挙げられ、これらのうち3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)が好ましい。
【0044】
硬化促進剤の含有量は特に限定されず、樹脂組成物の全量基準で、例えば0.1質量%以上であってよく、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、硬化促進剤の含有量は、樹脂組成物の全量基準で、例えば10質量%以下であってよく、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
【0045】
樹脂組成物は、上記以外の他の成分を更に含有していてもよい。他の成分としては、例えば、無機微粒子、有機微粒子等が挙げられる。このような他の成分の含有量は、それぞれ、樹脂組成物の全量基準で、例えば50質量%以下であってよく、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。また、上記他の成分の含有量は、例えば0質量%以上であってよく、10質量%以上であってもよい。
【0046】
樹脂組成物は、50℃における粘度が10Pa・s以上であることが好ましく、50Pa・s以上であることがより好ましい。これにより、樹脂組成物の液だれ等が十分に抑制され、プリプレグの製造が一層容易となる傾向がある。また、樹脂組成物の50℃における粘度は、20000Pa・s以下であることが好ましく、10000Pa・s以下であることがより好ましい。これにより、樹脂組成物のタック及びドレープ性がより好適となる。
【0047】
樹脂組成物中の塩素原子の含有量は、例えば1質量%以下であってよく、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下であり、検出限界以下であってもよい。このような樹脂組成物によれば、上述の構成によって十分な難燃性を確保しつつ、燃焼時の塩素含有ガスの発生を抑制できる。
【0048】
樹脂組成物中のリン原子の含有量は、例えば0.1質量%以下であってよく、好ましくは0.01%質量以下、より好ましくは0.001質量%以下であり、検出限界以下であってもよい。リン系化合物は樹脂との相溶性が低い場合が多く、均質なプリプレグの作製が難しい場合がある。これに対して、本実施形態では、上述の構成によって十分な難燃性を確保しつつ、均質なプリプレグを容易に得ることができる。また、リン原子の含有量を少なくすることで、環境安全性を十分に担保することもできる。
【0049】
樹脂組成物は、硬化後のガラス転移温度(Tg)が120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。このような樹脂組成物によれば、耐熱性に一層優れた繊維強化複合材料が得られる。
【0050】
本実施形態に係るプリプレグの製造方法は特に限定されない。例えば、プリプレグは、炭素繊維を一方向に引き揃えた炭素繊維束を用意し、この炭素繊維束に樹脂組成物を含浸させることで製造することができる。樹脂組成物を含浸させる方法としては、例えば、樹脂組成物を溶媒に溶解して低粘度化して含浸させるウェット法、加熱により低粘度化した樹脂組成物を直接含浸させるホットメルト法(ドライ法)等が挙げられる。
【0051】
本実施形態に係るプリプレグを積層し、硬化することで繊維強化複合材料を得ることができる。このようにして得られた繊維強化複合材料は、薄さと難燃性とを両立することができる。
【0052】
(繊維強化複合材料)
本実施形態に係る繊維強化複合材料は、複数のプリプレグの積層及び硬化してなるものであり、複数のプリプレグのうち少なくとも一つは、上記実施形態に係るプリプレグである。本実施形態では、複数のプリプレグのうち、半数以上が上記実施形態に係るプリプレグであってよく、全てが上記実施形態に係るプリプレグであってよい。積層及び硬化される複数のプリプレグはそれぞれ、その構成が同じものであってよく、異なるものであってもよい。
【0053】
繊維強化複合材料の形状は特に限定されないが、例えば板状であってよい。
【0054】
繊維強化複合材料の厚さ(積層方向の厚さ)は特に限定されないが、薄さと難燃性とを両立する観点からは、1.5mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。また、繊維強化複合材料の厚さの下限は特に限定されないが、例えば0.2mm以上であってよく、0.4mm以上であってもよい。
【0055】
プリプレグの積層枚数は特に限定されず、例えば2〜16枚であってよく、好ましくは4〜8枚である。
【0056】
繊維強化複合材料は、UL94燃焼試験による難燃性評価がV−0又はV−1であることが好ましく、V−0であることがより好ましい。このような繊維強化複合材料は難燃性に特に優れているといえる。
【0057】
繊維強化複合材料の製造方法は特に限定されない。例えば、複数のプリプレグを積層し、熱硬化することで製造することができる。熱硬化の条件は特に限定されず、プリプレグの樹脂組成物が硬化する条件であればよい。この製造方法では、例えば、熱硬化時にプリプレグの積層体を所定の形状に変形させることで、所定の形状に成形された繊維強化複合材料を得ることもできる。
【0058】
熱硬化時の加熱温度は、例えば100〜150℃であってよく、110〜140℃であってもよい。また、熱硬化時の加熱時間は、例えば10分〜3時間であってよく、20分〜2時間であってもよい。
【0059】
熱硬化時に圧力を付与してもよく、加圧条件は、例えば0.1〜0.9MPaであってよい。
【0060】
本実施形態に係る繊維強化複合材料は、例えば、電子・電気機器の筐体などの薄さ及び難燃性の両特性が要求される用途に好適に用いることができる。また、本実施形態に係る繊維強化複合材料は、航空機や自動車等の構造材料、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用品、土木材料等の用途にも好適に用いることができる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例A−1)
ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬社製)40質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−128、新日鉄住金化学社製)14質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(YDPN−638、新日鉄住金化学社製)20質量部、メラミンシアヌレート(MC−6000、日産化学社製)40質量部、ジシアンジアミド(DICY)4質量部及び3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)3質量部を混合して、樹脂組成物A−1を得た。得られた樹脂組成物A−1の30℃における粘度は60100Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後の樹脂硬化物のガラス転移温度は155℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0064】
次いで、炭素繊維としてXN−80(日本グラファイトファイバー社製、引張弾性率780GPa)を準備し、この炭素繊維に樹脂組成物A−1を含浸させた。これにより、単位面積当たりの炭素繊維の量が125g/m
2、樹脂含有率が32%のプリプレグ(プリプレグA−1)を得た。
【0065】
(実施例A−2)
ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の配合量を、それぞれ35質量部、19質量部及び13質量部に変更したこと以外は実施例A−1と同様にして、樹脂組成物A−2を得た。得られた樹脂組成物A−2の30℃における粘度は、22100Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後の樹脂組成物のガラス転移温度は151℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0066】
次いで、樹脂組成物A−1に代えて樹脂組成物A−2を用いたこと以外は実施例A−1と同様にしてプリプレグの作製を行い、単位面積当たりの炭素繊維の量が125g/m
2、樹脂含有率が32%のプリプレグ(プリプレグA−2)を得た。
【0067】
(実施例A−3)
ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の配合量を、それぞれ30質量部、14質量部及び23質量部に変更し、フェノキシ樹脂(YP−70、新日鉄住金化学社製)5質量部を更に混合したこと以外は実施例A−1と同様にして、樹脂組成物A−3を得た。得られた樹脂組成物A−3の30℃における粘度は、113000Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後のガラス転移温度は153℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0068】
次いで、樹脂組成物A−1に代えて樹脂組成物A−3を用いたこと以外は実施例A−1と同様にしてプリプレグの作製を行い、単位面積当たりの炭素繊維の量が125g/m
2、樹脂含有率が32%のプリプレグ(プリプレグA−3)を得た。
【0069】
(実施例A−4)
ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂の配合量を、それぞれ30質量部、32質量部及び0質量部に変更し、フェノキシ樹脂(YP−70、新日鉄住金化学社製)10質量部を更に混合したこと以外は実施例A−1と同様にして、樹脂組成物A−4を得た。得られた樹脂組成物A−4の30℃における粘度は、35000Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後の樹脂組成物のガラス転移温度は128℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0070】
次いで、樹脂組成物A−1に代えて樹脂組成物A−4を用いたこと以外は実施例A−1と同様にしてプリプレグの作製を行い、単位面積当たりの炭素繊維の量が125g/m
2、樹脂含有率が32%のプリプレグ(プリプレグA−4)を得た。
【0071】
(実施例A−5)
炭素繊維としてT700S(東レ社製、引張弾性率230GPa)を用いたこと以外は、実施例A−2と同様にしてプリプレグの作製を行い、単位面積当たりの炭素繊維の量が200g/m
2、樹脂含有率が32%のプリプレグ(プリプレグA−5)を得た。
【0072】
(比較例X−1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−128、新日鉄住金化学社製)37質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−11、新日鉄住金化学社製)33質量部、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(YDPN−638、新日鉄住金化学社製)30質量部、フェノキシ樹脂(YP−70、新日鉄住金化学社製)15質量部、ジシアンジアミド(DICY)4質量部及び3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)3質量部を混合して、樹脂組成物X−1を得た。得られた樹脂組成物X−1の30℃における粘度は24100Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後の樹脂硬化物のガラス転移温度は131℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−not相当であった。
【0073】
次いで、炭素繊維としてXN−80(日本グラファイトファイバー社製、引張弾性率780GPa)を準備し、この炭素繊維に樹脂組成物X−1を含浸させた。これにより、単位面積当たりの炭素繊維の量が125g/m
2、樹脂含有率が32%のプリプレグ(プリプレグX−1)を得た。
【0074】
(比較例X−2)
YD−11の配合量を13質量部に変更し、メラミンシアヌレート(MC−6000、日産化学社製)20質量部を更に混合したこと以外は、比較例X−1と同様にして樹脂組成物X−2を得た。得られた樹脂組成物X−2の30℃における粘度は10600Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後の樹脂硬化物のガラス転移温度は128℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−2相当であった。
【0075】
(比較例X−3)
YP−70及びMC−6000の配合量をそれぞれ5質量部及び0質量部に変更し、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(NC−3000、日本化薬社製)30質量部を更に混合したこと以外は、比較例X−2と同様にして樹脂組成物X−3を得た。得られた樹脂組成物X−3の30℃における粘度は16600Pa・sであった。また、140℃で2時間硬化した後の樹脂硬化物のガラス転移温度は134℃であり、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−not相当であった。
【0076】
(実施例B−1)
プリプレグA−1を4枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.57mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0077】
(実施例B−2)
プリプレグA−2を4枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.43mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0078】
(実施例B−3)
プリプレグA−3を4枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.57mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0079】
(実施例B−4)
プリプレグA−4を4枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.57mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−1相当であった。
【0080】
(実施例B−5)
プリプレグA−5を4枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.85mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0081】
(実施例B−6)
プリプレグA−2を10枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み1.1mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0082】
(実施例B−7)
プリプレグA−5を3枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.67mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−1相当であった。
【0083】
(実施例B−8)
プリプレグA−2及びプリプレグA−5を、A−2/A−2/A−5/A−2/A−2の順で5枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み0.65mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−0相当であった。
【0084】
(比較例Y−1)
プリプレグX−1を16枚積層し、オートクレーブ中で圧力0.6MPa、140℃×2時間の条件で硬化して、厚み2.4mmの繊維強化複合材料板を得た。得られた繊維強化複合材料板について、UL94燃焼試験と同等の難燃性評価を行ったところ、結果はV−not相当であった。