(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HAIの著しい経済的な結果が、1970年代中頃に行われた研究であるSENIC(Study on the Efficacy of Nosocomial Infection Control)に基づいて1992年に公開された。公開時点においては、医療におけるHAIの直接的なコストは、66.5億ドル(インフレーションに対して調整された)と推定された。しかしながら、最近公開された証拠は、今日におけるHAIの直接のコストを、284億ドル乃至338億ドルとしている。このコストの多くは、長い患者の入院、病院の隔離部分、並びに感染源の発見及び根絶に関連する。
【0006】
本概要は、詳細な説明の部分において以下に更に説明される簡略化された形態で概念の選択を導入するため提供される。本概要は、請求される主題の重要な特徴又は基本的な特徴を特定又は除外することを意図したものではなく、請求される主題の範囲を決定する支援として用いられることを意図したものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特に臨床環境において、改善された感染の管理及び予防を可能とする方法及びシステムのニーズがある。安価なゲノム解読技術の増加は、医療関連感染を管理及び予防するタスクにおいて医療従事者を支援する増大する機会をもたらしている。種々の実施例は、感染防止部署及びその他の病院従業員が、医療関連感染を管理及び抑制することを支援するための、実用的な情報を生成するため、感染部位からのゲノム解読データを利用する。
【0008】
特に、種々の実施例は、例えば別の患者が不注意に病気を伝染させてしまった場合、感染の経路を決定するために、同時のもの及び履歴のものの両方の、病院における患者からとられた他のサンプルからの配列と、或る分離株からの配列を比較する。種々の実施例はまた、伝染の潜在的な原因(例えば共有される医療機器等)を医療従事者が決定することを支援するため、ゲノム情報及び臨床情報を用いて、患者間の共通性を追跡し得る。
【0009】
一態様においては、種々の実施例は、ゲノムデータ及び臨床データの組み合わせた表示を生成するためのコンピュータ実装される方法に関する。該方法は、少なくとも1人の患者から分離された少なくとも1つのゲノムを記述するゲノムデータを受信し、電子患者データを受信し、前記ゲノムデータを用いて選択された前記電子患者データの少なくともサブセットのグラフィカルな表示を提供するよう構成された、コンピュータプロセッサを備えることを含む。
【0010】
一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、選択されたときに、感染防止に関連する動作を実装する、ユーザインタフェース要素を有する。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、共通性のプロットである。前記共通性は例えば、感染様式共通性であっても良い。
【0011】
一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータと関連する生物により感染させられた患者のリストであり、リストに挙げられた少なくとも1人の患者がリストに挙げられた他の患者と少なくとも1つの感染様式共通性を共有し、斯かる患者は前記患者のリストにおいて強調される。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータと関連する生物により感染させられた患者のツリー表示であり、前記ツリーにおける各ノードが、感染した患者を表し、前記ツリーにおける各リンクが、類似するゲノムを持つ生物の株により感染した患者についての2つのノードを接続する。
【0012】
一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、マトリクス表示であり、各行が、病棟の病室であり、各列が、病室に関連する病床であり、各患者が、該患者が占有する少なくとも1つの病床に関連付けられて表示され、各患者の表示が、当該患者から分離されたゲノムデータにより区別される。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、類似する分離されたゲノムデータを持つ患者を並べて表示する。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータに関連する複数の目標生物、及び複数の抗菌剤についての耐性記録である。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータに関連する生物に感染した患者についての電子患者データのタイムライン表示である。
【0013】
別の態様においては、種々の実施例は、ゲノムデータ及び臨床データの組み合わせた表示を生成するための方法を実行するためのコンピュータ実行可能な命令を含むコンピュータ読み取り可能な媒体に関する。前記媒体は、少なくとも1人の患者から分離された少なくとも1つのゲノムを記述するゲノムデータを受信するためのコンピュータ実行可能な命令と、電子患者データを受信するためのコンピュータ実行可能な命令と、前記ゲノムデータを用いて選択された前記電子患者データの少なくともサブセットのグラフィカルな表示を提供するためのコンピュータ実行可能な命令と、を含む。
【0014】
一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、選択されたときに、感染防止に関連する動作を実装する、ユーザインタフェース要素を有する。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、共通性のプロットである。前記共通性は例えば、感染様式共通性であっても良い。
【0015】
一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータと関連する生物により感染させられた患者のリストであり、リストに挙げられた少なくとも1人の患者がリストに挙げられた他の患者と1つの感染様式共通性を共有し、斯かる患者は前記患者のリストにおいて強調される。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータと関連する生物により感染させられた患者のツリー表示であり、前記ツリーにおける各節が、感染した患者を表し、前記ツリーにおける各リンクが、類似するゲノムを持つ生物の株により感染した患者についての2つの節を接続する。
【0016】
一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、マトリクス表示であり、各行が、病棟の病室であり、各列が、病室に関連する病床であり、各患者が、該患者が占有する少なくとも1つの病床に関連付けられて表示され、各患者の表示が、当該患者から分離されたゲノムデータにより区別される。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、類似する分離されたゲノムデータを持つ患者を並べて表示する。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータに関連する複数の目標生物、及び複数の抗菌剤についての耐性記録である。一実施例においては、前記グラフィカルな表示は、前記ゲノムデータに関連する生物に感染した患者についての電子患者データのタイムライン表示である。
【0017】
限定するものではない実施例を特徴付けるこれらの及びその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより、及び関連する図面を参照することにより、明らかとなるであろう。以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも単に例であり、請求される限定するものではない実施例を制約するものではないことは、理解されるべきである。
【0018】
限定するものではなく包括的なものではない実施例が、図を参照しながら説明される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで提示される種々の図に示される実施例の幾つかは特定の特徴に焦点を当てたものであるが、他の実施例はこれら特徴の種々のセット及び態様を組み合わせて含む。従って、これら例の図は限定するものではなく、特にこれら特徴の斯かる組み合わせが本発明の範囲を超えることを示唆することを意図するものではない。
【0021】
図面において、異なる図を通して同様の参照文字は、一般的に対応する部分を示す。図面は必ずしも定縮尺ではなく、動作の原理及び概念に対して強調が為されている。
【0022】
以下に、特定の実施例の一部を形成し該実施例を示す添付図面を参照しながら、種々の実施例がより完全に説明される。しかしながら、実施例は多くの異なる形態で実装されることができ、ここで開示された実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、これら実施例は、本開示が完全なものとなり、当業者に実施例の範囲を完全に伝えるよう提供されるものである。実施例は、方法、システム又は装置として実施され得る。従って、実施例は、ハードウェア実装、完全にソフトウェアの実装(それでもプロセッサのような支持ハードウェア上で動作するものと理解されるであろう)、又はソフトウェア及びハードウェアの態様を組み合わせた実装の形をとり得る。それ故、以下の詳細な説明は、限定する意味で解釈されるべきではない。
【0023】
本明細書における「一実施例」又は「実施例」への参照は、実施例に関連して記載された特定の特徴、構造又は特性が、少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。本明細書の各所における「一実施例において」なる語句の出現は、必ずしも全てが、同一の実施例を参照しているわけではない。
【0024】
以下の説明における幾つかの部分は、コンピュータメモリ内に保存された持続性信号における動作の象徴的な動作の表現に関して示される。これらの記述及び表現は、データ処理分野における当業者によって、他の当業者に動作の実態を最も効果的に伝えるために用いられる手段である。斯かる動作は典型的には、物理量の物理的な操作を必要とする。通常、必須ではないが、これらの量は、保存、転送、結合、比較又は操作されることが可能な電気、磁気又は光学信号の形をとる。時に原則として一般的な使用の理由のため、これら信号をビット、値、要素、記号、キャラクタ、用語、数等として示すことが便利である。更に時には、物理量の物理的な操作を必要とするステップの特定の構成を、一般性を損なうことなく、モジュール又はコード装置として示すことが便利である。
【0025】
しかしながら、これら及び同様の語はいずれも、適切な物理量に関連すべきであり、これら量に適用される単なる便利なラベルである。以下の議論から明らかなように、他の具体的に言及されていない限りは、本明細書を通して、「処理」、「計算」、「算出」、「決定」又は「表示」等のような語を用いた議論は、コンピュータシステムメモリ、レジスタ又はその他の情報記憶、伝送又は表示装置内で物理(電子的な)量として表現されたデータを操作及び変換する、コンピュータシステム又は同様の電子計算装置の動作及び処理を示す。
【0026】
ここで説明される実施例の特定の態様は、ソフトウェア、ファームウェア又はハードウェアで実施化され得る処理ステップ及び命令を含み、ソフトウェアで実施化される場合には、種々のオペレーティングシステムにより用いられる種々のプラットフォーム上にダウンロードされても良く、斯かるプラットフォームから動作させられても良い。
【0027】
ここで記載される種々の実施例は、ここでの動作を実行するための装置に関する。当該装置は、必要な目的のために特に構成されたものであっても良いし、又はコンピュータに保存されたコンピュータプログラムにより選択的に起動又は再構成される汎用コンピュータを有していても良い。斯かるコンピュータプログラムは、限定するものではないが、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク、CD−ROM、光磁気ディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気又は光カード、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は電子命令を保存するのに適しコンピュータシステムバスにそれぞれが結合されるいずれかのタイプの媒体のような、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に保存されても良い。更に、本明細において言及されるコンピュータは、単一のプロセッサを含むものであっても良いし、向上した計算能力のため複数プロセッサ設計を利用するアーキテクチャのものであっても良い。ここで用いられる「プロセッサ」なる語は、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ASIC及びその他の、ここで説明される処理機能を実行することが可能ないずれかの同様の装置を含むことは理解されよう。更に、ここで用いられる持続性機械読み取り可能な媒体は、揮発性メモリ装置(例えばSRAM及びDRAM)及び不揮発性メモリ装置(例えばフラッシュ、磁気、光メモリ)の両方を含むが、一時的な信号は除外するものであることは理解されよう。
【0028】
ここで示される処理及び表示は、本質的にいずれの特定のコンピュータ又はその他の装置に関連するものではない。種々の汎用システムがここでの教示に従うプログラムと共に用いられることができ、又は、必要な方法ステップを実行するようにより特殊化された装置を構築することも便利であり得る。これらの種々のシステムのために必要とされる構造は、以下の説明から明らかであろう。更に、種々の実施例は、ここではいずれの特定のプログラミング言語も参照して説明されない。ここで記載される教示を実装するためには、種々のプログラミング言語が用いられることができ、特定の言語に対する以下のいずれの参照も、実施化及び最良の形態の開示のために示されるものである。
【0029】
更に、本明細において用いられる言語は、原則として可読性及び教示的な目的のために選択されたものであり、本発明の主題を表現又は制限するために選択されたものではない。従って、本開示は、請求項に開示された本発明の範囲を説明する意図のものであって、限定する意図のものではない。
【0030】
種々の実施例は、臨床環境内での感染症の伝染を効果的に抑制するための、疫学及び感染管理のための方法及びシステムを提供する。種々の実施例は、特定の生物の分離株と、当該生物の過去の分離株からのゲノムデータのデータベースと、の間のゲノム関係を識別し、共通性及びリンクを識別する目的のため当該分離株に関連する患者及び病院データを自動的に収集し、斯かるデータへの容易なアクセスを提供し、感染発生に至る前に病院における伝染経路を識別することを支援する。
【0031】
従来の病院管理ダッシュボードは、患者により、又は患者が入院した原因である疾病により、組織化されている。それとは異なり、種々の実施例は、斯かるデータを感染の生物により組織化し、更に感染の各タイプについてゲノム及び臨床情報の可視化及び解析を可能とする。例えば、或る臨床環境において同じ生物により感染された2人の患者を考える。従来のダッシュボードは、これら患者を名前によりリスト化し得るが、種々の実施例におけるダッシュボードは、これら患者を共にクラスタにし、ゲノム距離並びに(限定するものではないが)装置、手順及び環境的な因子といったその他の種々の共通性により、これら2人の間の関係を識別し得る。
【0032】
これらの実施例は、病院管理者、感染防止専門家、疫学者及び感染症専門家のような、臨床環境における感染抑制及び管理に含まれる個人にとって有用である。
【0033】
図1は、ゲノムデータ及び臨床データの組み合わせた表示を生成するための方法の実施例を示す。本実施例においては、計算装置が少なくとも1人の患者から少なくとも1つの分離されたゲノムを記述するゲノムデータを受信することから、処理が開始する(ステップ100)。該計算装置はまた、電子医療記録(EMR)、臨床データ(例えば医師の識別子)、病院データ(場所、手順等)のような、種々の電子患者データを受信する(ステップ104)。当業者は勿論、該電子患者データは、ゲノムデータの受信(ステップ100)の前に受信されても良いし、後に受信されても良いし、又は同時に受信されても良いことを認識するであろう。
【0034】
対象の生物は、微生物培養のような従来の方法によって分離されても良い。例えばQiagen社のキットを用いてHAI分離株からDNAが抽出されても良く、種々の次世代シーケンシング(NGS)技術(例えばIllumina社のシーケンサ)のいずれかを用いて配列決定されても良い。シーケンシング動作の結果は、全ゲノムシーケンシングであっても、選択的なシーケンシングであっても、典型的には例えばFestaファイルである。シーケンシングの出力は典型的には、BWA又はSamtoolのような公的に利用可能なツールを用いて基準配列に対して整合され、又は幾つかの実施例においては、VELVETのようなアルゴリズムを用いてデノボ(de novo)アセンブリに適用されて、より長い連続したシーケンスを生成しても良い。Varscanのようなバリアントコーラー(variant caller)を用いて、各塩基においてコンセンサスコール(consensus call)が決定されても良い。
【0035】
シーケンスデータが整合され及び/又は集合させられると、その結果はゲノム情報の公的な又は私的なデータベースと比較され、分離株の特定のサブタイプが識別される。斯かるデータベースのひとつは、http://pubmlst.org/において利用可能な分子分類及び微生物ゲノム多様性についてのオープンソースの公的データベースである、PubMLSTデータセットである。PubMLSTは、定義されたハウスキーピング遺伝子及びそのサブタイプを持つ細菌の宿主を含む。
【0036】
整合/集合ステップの結果は、当該種についてのPubMLST基準に基づいて選択されたハウスキーピング遺伝子のセットに対してブラストされる。照合アルゴリズムは、100%合致(即ち識別子及び長さの両方)の場合にのみ照合遺伝子を識別し、当該遺伝子に対して対立遺伝子を割り当て、当該種のハウスキーピング遺伝子の全てについて対立遺伝子番号を計算する。対立遺伝子番号の組み合わせは、配列決定された分離株にサブタイプを割り当てるために用いられる。分離株に割り当てられたサブタイプは、薬物耐性及び病原性を引き起こす関連遺伝子の識別子とともに、ここで議論されるような後の取得及び表示のため、ゲノムデータ保存部に保存される。
【0037】
同一の生物の分離株間の類似性は、最大尤度又は最近傍アルゴリズムのような既知の方法を用いて、対象の分離株のゲノムを当該生物の過去の分離株のゲノムと比較することによって、識別されても良い。
【0038】
電子患者データは、必要に応じて、相互運用性を用いてHL7メッセージのような既知の方法を用いて、又は、Koninklijke Philips N.V.社(オランダ、Eindhoven)によるIntellibridge(登録商標)Enterpriseのようなデータブローカソフトウェアを用いて、病床追跡、患者情報、医師データ、位置データ等のような患者情報を保存する、種々の病院及び臨床データ源から取得されても良い。幾つかの実施例においては、電子患者データは、ここで議論される後の取得及び表示のため、患者データ保存部において統合されても良い。統合処理は、定期的、不定期的、継続的、計画的等であっても良い。
【0039】
電子患者データのレコードは、例えば当該電子患者データのレコードにおける患者の分離株についてのコードを保存することにより、個々の分離株のサンプルについてゲノムデータと関連付けられても良い。逆に、患者についての電子的な識別子がゲノムデータ保存部に保存され、分離株についてのレコードと関連付けられても良い。
【0040】
保存部におけるこれらの異質なデータセットを用いて、該計算装置は、ゲノムデータを用いて選択された又はコンテキスト化された電子患者データの少なくともサブセットのグラフィカルな表示を提供する(又はその逆;ステップ108)。例えば、ゲノムデータが分離株に含まれる病原体に関連する場合、電子患者データの関連するサブセットは、該病原体を担持する患者に関連し得、以下に更に詳細に議論されるように、該グラフィカルな表示は、当該サブセットを利用しても良い。幾つかの実施例においては、当該データのサブセットは、現在感染している、及び/又は過去の或る時点において当該病原体に感染していた患者を含み、伝染源、疾病の拡散、HAI、依存性、共通性等を識別するため、漸進的な態様でサンプルの比較を可能とする。
【0041】
図2は、耐性記録生成のためのシステムの例のフロー図である。本実施例においては、計算ユニット200は、電子患者データ源204及び少なくとも1つの分離株についてのゲノムデータ源208と通信する。
【0042】
計算ユニット200は、種々の実施例において、種々の形をとり得る。種々の実施例による使用に適した計算ユニットの例は、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、仮想コンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット、ファブレット等を含む。データ源204、208もまた、限定するものではないが、構造化されたデータベース(例えばSQLデータベース)、非構造化データベース(例えばHadoopクラスタ、NoSQLデータベース)、又はその他の種々の計算ユニット(例えばデスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、仮想コンピュータ、サーバコンピュータ、スマートフォン、タブレット、ファブレット等)上で動作するデータ源を含む、種々の形をとり得る。該計算ユニットは、種々の実施例において異種のものであっても良いし、同種のものであっても良い。幾つかの実施例においては、データ源204は、電子医療記録(EMR)システムであっても良い。幾つかの実施例においては、データ源208は、少なくとも1つの分離株のゲノムデータを決定及び保存する検査機器であっても良い。
【0043】
該システムの構成要素は、種々の実施例において、異種のものであっても良いし同種のものであっても良い種々のネットワーク技術を用いて、相互接続されても良い。適切なネットワーク技術は、限定するものではないが、有線ネットワーク接続(例えばEthernet(登録商標)、gigabit Ethernet(登録商標)、トークンリング等)及び無線ネットワーク接続(例えばBluetooth(登録商標)、802.11x、3G/4G無線技術等)を含む。
【0044】
動作時には、計算ユニット200は、例えば過去に特定の生物に感染した又は斯かる感染症を現在担持している1人以上の患者に関する情報を探すため、電子患者データ源204にクエリ送信する。電子患者データ源204は、局所的に保存された斯かる情報を持っていても良いし、又は他の計算ユニット若しくはデータベースに接触して適宜関連するサブタイプ情報を取得しても良い。
【0045】
動作時には、計算ユニット200は、しばしば(必須ではないが)電子患者データ源204に対するクエリの主題でもある分離株である、少なくとも1つの分離株のゲノムに関する情報を探すため、ゲノムデータ源208にクエリ送信する。ゲノムデータ源208は、斯かる試験を該分離株に実行したことがあるか、又は斯かる試験を実行した機器から直接に又は間接的に(即ちデータ入力若しくは伝送を通して)斯かる情報を受信しているため、斯かる情報を持ち得る。
【0046】
電子患者データ及び1つ以上の分離株についてのゲノムデータを受信すると、計算ユニット200は続いて、以下により詳細に議論されるように、該ゲノムデータと組み合わせて患者データのグラフィカルな表現を生成する。
【0047】
以上に議論されたように、計算ユニット200は、データ源204か208のいずれかに最初にアクセスしても良いし、又はこれらデータ源に同時にアクセスしても良い。幾つかの実施例においては、計算ユニット200は、操作者に対してローカルであり、即ち該操作者によってアクセスされるローカルエリアネットワークに位置している。他の実施例においては、計算ユニット200は、ワイドエリアネットワーク又はインターネットのような更に他のネットワーク接続(図示されていない)によってアクセスされ、該グラフィカルな表現は、斯かるネットワーク接続を通して操作者に供給される。これらの実施例においては、計算ユニット200は、斯かるリモートにアクセスされる装置に慣例となっているセキュリティ機能及びウェブサーバ機能を含む。
【0048】
種々の実施例により提示される組み合わせられた表示は、種々の形態をとり得、その幾つかがここで議論される。種々の形態の該組み合わせられた表示は、ゲノムデータにより選択された又は影響を受けた電子患者データのサブセットを提示する。
【0049】
種々の実施例は、対象となる期間についての分離株からのデータの要約を可能とする。
図3は、分離株についてのシーケンスデータ及び当該生物の他の分離株の履歴レコードのタイムライン
図300を示す。該タイムライン図は、
図3におけるように離散的な図として見えても良いし、又は
図5、6及び8乃至11において以下に示される表示のような他の合成図における要素として見えても良い。
【0050】
該タイムラインの一部は、表示された分離株のレコードの時系列のサブセットを選択するためにグラフィカルに選択され得るという点で、該タイムラインはインタラクティブである。ユーザが斯かるサブセットを選択すると、表示の残り部分が典型的に更新されて、該選択されたレコードのサブセットに関連する統計及び図を提示する。
【0051】
該タイムライン図はまた、時間経過に対してプロットされた事象の数のグラフィカルな表示を提示する流行曲線304を含む。ケースの分布の形状は、疾病の性質及び該疾病の伝染の様式についての仮説を提案するために用いられることができる。
【0052】
概観ページ
考慮されている各生物について、ユーザは、該生物の観察された感染の全体的な統計を示す概観ページ(図示されていない)を見ることができる。典型的な概観ページは、タイムライン(以上に議論されたようなもの)、系統発生樹、耐性記録及び共通性プロットを含む。
【0053】
図4は、耐性記録400及び共通性プロット404の例を示す。耐性記録400は、種々の抗菌剤に対する生物の種々のサブタイプの感受性を記述し、健康管理専門医がゲノム情報に基づいて患者に対してどの抗生物質を利用するべきかを決定するのを支援する。共通性プロット404は、関連する生物に感染した患者間で最も共通する装置、処置又はその他の環境因子を示し、健康管理専門医が感染の媒介物を認識し抑制及び除去するよう作業することを支援する。
【0054】
リスト表示
ユーザは、
図5に例が示されている、生物についてのリスト表示を閲覧することもできる。該リスト表示は、分離された生物により感染した患者500、及び、限定するものではないが、健康管理担当者、性別、抗生物質、現在の入院状態等を含む、患者の臨床情報504のリストを提示する。該リスト表示の当該実施例は更に、以上に議論された任意のタイムライン要素300を含む。
【0055】
該表示はまた、以下により詳細に議論される、分離株のゲノム解析に基づく全ての患者の関係ツリー508のサムネイル表示を示す。当該情報はまた、或る患者が他の患者に非常に近く関連していること、及びこれら2人の患者間で感染症の伝染が起こっている可能性が高いことを示す、HAIフラグを割り当てるために用いられる。
【0056】
本実施例においては、関係ツリー508において特定の患者及び該患者の最近傍患者(即ちHAIフラグパートナー)を選択し、この2人の選択された患者のみについての臨床情報を閲覧することもできる。当該処理は、これら2人の患者の最近傍患者が閲覧できるように等拡張されることができる。
【0057】
ツリー表示
種々の実施例はまた、
図6に例が示されている、特定の生物に感染した患者の群のツリー表示の表示を可能とする。当該ツリー表示508'は、種々の患者からの分離株のゲノムデータに基づいて構築され、臨床情報も重畳されている。ツリー表示508'はまた、ユーザが各分離株の遺伝的な最近傍を見ることを可能とする。
【0058】
図7に示されるように、ツリー表示508'は、特定の生物に感染した全ての患者間の関係を表す。ツリー508'における各ノードは、特定の患者からの分離株を表し、2つのノードに関連するゲノムのシーケンス間にかなりの類似性がある場合に該2つのノード間に端が生成される。かなりの類似性は、当業者には良く知られた手法を用いて、系統発生樹を生成するための遺伝子型データを用いて決定されても良い。
【0059】
図示されるように、ノードに関連する分離株に関連する患者に関する臨床情報(患者の健康状態、性別、入院状態等)、及び分離株に関連するゲノム情報(生物のサブタイプ)が、ツリー表示508'と並べて表示されても良い。
【0060】
病棟図
幾つかの種々の実施例は、各患者の病床に関する病院内における感染の広がりの可視化を可能とするグラフィカルな表示を提示する。当該病棟図の例が
図8に示されており、本図における各行800が特定の病室を表し、各列804が特定の病床を表す。
【0061】
該画像は、当該病棟のレイアウトにおける患者間の感染の連続を示しており、患者3と患者6との重なりは、これら2人の患者が同一の病床を占有したことを表している。
【0062】
実施例
図9乃至11は、臨床環境におけるE.faeciumの検査に適用される実施例を示す。該生物に感染したことが知られている患者から複数のサンプルが分離され、これらサンプルがシーケンシングされる。シーケンシングの後、限定するものではないが、MLST発見、SNP差分、ツリー生成、HAI検出等を含む更なる処理が、各分離株に対して実行される。
【0063】
図9は、以上に議論された分離株のリスト表示である。特に、解析によって幾つかのサンプルが病院で得られた感染症であると決定され、フラグ900の使用によってそのことが示されている。
【0064】
名前の隣にあるチェックボックスをチェックすることによって2人の感染患者を選択し、その後に「Compare(比較)」ボタン904を選択すると、選択された患者間の共通性の新たな表示が起動される。共通性表示は、
図10に示されている。
【0065】
「View the branch(分岐を見る)」ボタン1000を選択すると、選択された2人の患者のそれぞれについて次の再近傍患者の表示が起動され、リスト表示又は分岐表示におけるこれら患者の比較を可能とする。当該再近傍表示は、
図11に示されている。
【0066】
これらの表示を閲覧することにより、操作者は、生物の最も伝染力の強い源を決定し、感染症の更なる拡散を防止するため該源を封じ込めることができる。当該情報はまた、感染した患者について適切な抗生物質による処置を決定することを支援し得る。
【0067】
本発明の実施例は例えば、本発明の実施例による方法、システム及びコンピュータプログラム製品のブロック図及び/又は動作説明を参照しながら以上に説明されている。ブロックに示される機能/動作は、いずれのフロー図に示される順序とは異なる順序で実行されても良い。例えば、連続して示された2つのブロックは実際には、含まれる機能/動作に依存して、略同時に実行されても良く、又はこれらブロックは時々逆の順序で実行されても良い。更に、フロー図に示されたブロックの必ずしも全てが実行される及び/又は動作させられる必要はない。例えば、或るフロー図が機能/動作を含む5個のブロックを持つ場合、これら5個のブロックのうち3個のみが実行され及び/又は動作させられても良い。本例においては、これら5個のブロックののうち3個のいずれかが実行され及び/又は動作させられても良い。
【0068】
本明細に示された1つ以上の実施例の説明及び図示は、請求される本発明の範囲をいずれの態様においても限定又は制約することを意図したものではない。本明細に示された実施例、例、及び詳細は、所有権を譲渡し、請求される実施例の最も好適な例を他者が利用することを可能とするのに十分であると考えられる。請求される実施例は、本明細に示された実施例、例、及び詳細に限定されるものと解釈されるべきではない。合わせて図示及び記載されているか、別個に図示及び記載されているかにかかわらず、種々の特徴(構造的なもの及び方法的なもののいずれも)は、特徴の特定のセットを備えた実施例を実施するために選択的に包含又は省略されることを意図されている。本明細の記載及び説明により示されたことにより、当業者は、請求される実施例のより広い範囲から逸脱しない本明細において実施化される一般的な本発明の概念のより広い態様の精神内である変形、変更及び代替実施例を想到し得る。