【文献】
JOURNAL OF TRANSLATIONAL MEDICINE,英国,BIOMED CENTRAL,2014年 2月 7日,VOL:12, NR:1,PAGE(S):36/1-11,URL,http://dx.doi.org/10.1186/1479-5876-12-36
【文献】
Bristol-Myers Squibb and Celgene Enter Clinical Collaboration Agreement to Evaluate Immunotherapy and Chemotherapy Combination Regimen,BRISTOL-MYERS SQUIBB Press Release [online] (2014-08-20) (検索日: 2020-06-24),URL,https://news.bms.com/press-release/rd-news/bristol-myers-squibb-and-celgene-enter-clinical-collaboration-agreement-evalua
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0044】
I.定義
本発明を詳細に記載する前に、本発明が特定の組成物または生物学的系に限定されず、言うまでもなく多様であり得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図されていないことも理解されたい。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「分子」への言及は、2つ以上のかかる分子の組み合わせを任意に含むといった具合である。
【0046】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0047】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0048】
「PD−1軸結合アンタゴニスト」という用語は、PD−1シグナル伝達軸上のシグナル伝達に起因するT細胞機能障害を除去するようにPD−1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上との相互作用を阻害し、結果として、T細胞機能(例えば、増殖、サイトカイン産生、及び/または標的細胞死滅)を復元または増強する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD−1軸結合アンタゴニストには、PD−1結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニスト、及びPD−L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0049】
「PD−1結合アンタゴニスト」という用語は、PD−1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD−L1及び/またはPD−L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1の、その結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1の、PD−L1及び/またはPD−L2への結合を阻害する。例えば、PD−1結合アンタゴニストは、抗PD−1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD−1とPD−L1及び/またはPD−L2との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、抗PD−1抗体である。具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMDX−1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMK−3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるCT−011(ピディリズマブ)である。別の具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるMEDI−0680(AMP−514)である。別の具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるPDR001である。別の具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるREGN2810である。別の具体的な態様では、PD−1結合アンタゴニストは、本明細書に記載されるBGB−108である。
【0050】
「PD−L1結合アンタゴニスト」という用語は、PD−L1とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD−1及び/またはB7−1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、PD−1及び/またはB7−1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、抗PD−L1抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、ならびにPD−L1とその結合パートナーのうちの1つ以上、例えば、PD−1及び/またはB7−1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、抗PD−L1抗体である。具体的な態様では、抗PD−L1抗体は、本明細書に記載されるMPDL3280A(アテゾリズマブ、WHO Drug Information(International Nonproprietary Names for Pharmaceutical Substances),Recommended INN:List 74,Vol.29,No.3,2015(387頁を参照されたい)によりTECENTRIQ(商標)として販売される)である。別の具体的な態様では、抗PD−L1抗体は、本明細書に記載されるMDX−1105である。また別の具体的な態様では、抗PD−L1抗体は、本明細書に記載されるYW243.55.S70である。また別の具体的な態様では、抗PD−L1抗体は、本明細書に記載されるMEDI4736(デュルバルマブ)である。また別の具体的な態様では、抗PD−L1抗体は、本明細書に記載されるMSB0010718C(アベルマブ)である。
【0051】
「PD−L2結合アンタゴニスト」という用語は、PD−L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD−1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する分子を指す。いくつかの実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2の、その結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2の、PD−1への結合を阻害する。いくつかの実施形態では、PD−L2アンタゴニストは、抗PD−L2抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、及びPD−L2とその結合パートナーのうちのいずれか1つ以上、例えば、PD−1との相互作用に起因するシグナル伝達を減少させる、遮断する、阻害する、抑止する、または妨害する他の分子を含む。一実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2を介するシグナル伝達を媒介したTリンパ球で発現された細胞表面タンパク質によってまたはそれを介して媒介される負の共刺激シグナルを低減し、機能障害T細胞の機能障害性をより低くする(例えば、抗原認識へのエフェクター応答を増強する)。いくつかの実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは、イムノアドヘシンである。
【0052】
本明細書で使用される場合、「タキサン」は、微小管アセンブリ及び安定化を促進し、かつ/または微小管脱重合を阻止するチューブリンに結合し得るジテルペンである。本明細書に含まれるタキサンは、タキソイド10−デアセチルバッカチンIII及び/またはその誘導体を含む。例示的なタキサンとしては、パクリタキセル(すなわち、TAXOL(登録商標)、CAS#33069−62−4)、ドセタキセル(すなわち、TAXOTERE(登録商標)、CAS#114977−28−5)、ラロタキセル、カバジタキセル、ミラタキセル、テセタキセル、及び/またはオルタタキセル(orataxel)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、タキサンは、アルブミンコーティングされたナノ粒子(例えば、ナノ−アルブミン結合(nab)−パクリタキセル、すなわち、ABRAXANE(登録商標)及び/またはnab−ドセタキセル、ABI−008)である。いくつかの実施形態では、タキサンは、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。いくつかの実施形態では、タキサンは、CREMAPHOR(登録商標)(例えば、TAXOL(登録商標))及び/またはTween、例えば、ポリソルベート80(例えば、TAXOTERE(登録商標))に製剤化される。いくつかの実施形態では、タキサンは、リポソームに封入されたタキサンである。いくつかの実施形態では、タキサンは、プロドラッグの形態及び/またはタキサンのコンジュゲート形態(例えば、パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、及び/または炭酸リノレイル−パクリタキセルに共有結合的にコンジュゲートしたDHA)である。いくつかの実施形態では、パクリタキセルは、実質的に界面活性剤なしで(例えば、CREMAPHOR及び/またはTweenの不在下で−TOCOSOL(登録商標)パクリタキセルなど)製剤化される。
【0053】
免疫機能障害との関連での「機能障害」という用語は、抗原刺激への免疫応答性が低減した状態を指す。この用語には、抗原認識が生じ得るが、その後の免疫応答が感染または腫瘍成長の制御に無効である、「消耗」及び/または「アネルギー」の両方の共通要素が含まれる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「機能障害性」という用語には、抗原認識に対する不応性または無応答性、具体的には、抗原認識を、増殖、サイトカイン産生(例えば、IL−2)、及び/または標的細胞死滅などの下流T細胞エフェクター機能に翻訳する能力の障害も含まれる。
【0055】
「アネルギー」という用語は、T細胞受容体を介して送達される不完全または不十分なシグナル(例えば、ras活性化の不在下での細胞内Ca
+2の増加)に起因する、抗原刺激に対する無応答の状態を指す。T細胞アネルギーは、共刺激の不在下における抗原での刺激に際しても生じ得、結果的に細胞は、共刺激との関連においても、抗原によるその後の活性化に不応性になる。無応答状態は、多くの場合、インターロイキン−2の存在によって無効化され得る。アネルギーT細胞は、クローン増殖を経ず、かつ/またはエフェクター機能を獲得しない。
【0056】
「消耗」という用語は、多くの慢性感染及び癌発症中に生じる持続的TCRシグナル伝達に起因するT細胞機能障害の状態としてのT細胞消耗を指す。これは、不完全なまたは不十分なシグナル伝達を介してではなく、持続的シグナル伝達に起因するという点で、アネルギーとは区別される。これは、機能的エフェクターまたはメモリーT細胞とは異なるエフェクター機能不良、阻害性受容体の持続的発現、及び転写状態によって定義される。消耗は、感染及び腫瘍の最適な制御を妨げる。消耗は、外因性の負の制御性経路(例えば、免疫制御性サイトカイン)ならびに細胞内因性の負の制御性(共刺激)経路(PD−1、B7−H3、B7−H4等)の両方に起因し得る。
【0057】
「T細胞機能を増強する」とは、持続したもしくは増幅された生物学的機能を有するようにT細胞を誘導するか、引き起こすか、もしくは刺激すること、または消耗されたもしくは不活性のT細胞を再生もしくは再活性化することを意味する。T細胞機能の増強の例としては、介入前のレベルと比較した、CD8+T細胞からのγインターフェロンの分泌の増加、増殖の増加、抗原応答性(例えば、ウイルス、病原体、または腫瘍のクリアランス)の上昇が挙げられる。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも50%、代替として60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、または200%の増強である。この増強を測定する様式は、当業者に既知である。
【0058】
「T細胞機能障害性障害」とは、抗原刺激への応答性の低下を特徴とするT細胞の障害または状態である。具体的な実施形態では、T細胞機能障害性障害は、PD−1を介した不適切なシグナル伝達の増加に特に関連する障害である。別の実施形態では、T細胞機能障害性障害は、T細胞がアネルギーであるか、またはサイトカインを分泌するか、増殖するか、もしくは細胞溶解活性を実行する能力が低下した障害である。具体的な態様では、応答性の低下により、免疫原を発現する病原体または腫瘍の無効な制御がもたらされる。T細胞機能障害を特徴とするT細胞機能障害性障害の例としては、未解明の急性感染、慢性感染、及び腫瘍免疫が挙げられる。
【0059】
「腫瘍免疫」とは、腫瘍が免疫認識及びクリアランスを回避するプロセスを指す。したがって、治療的概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減衰し、腫瘍が免疫系によって認識かつ攻撃されるときに「治療される」。腫瘍認識の例としては、腫瘍結合、腫瘍収縮、及び腫瘍クリアランスが挙げられる。
【0060】
「免疫原性」とは、免疫応答を誘発する特定の物質の能力を指す。腫瘍は、免疫原性であり、腫瘍免疫原性の増強により、免疫応答による腫瘍細胞のクリアランスが支援される。腫瘍免疫原性の増強の例としては、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンでの治療が挙げられる。
【0061】
「持続的応答」とは、治療の中止後の腫瘍成長の低減への持続的効果を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の開始時のサイズと比較して同じままであるか、またはより小さくなり得る。いくつかの実施形態では、持続的応答は、治療期間と少なくとも同じ期間、治療期間の少なくとも1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の期間を有する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「癌再発を低減または阻害すること」とは、腫瘍もしくは癌の再発、または腫瘍もしくは癌の進行を低減または阻害することを意味する。本明細書に開示されるように、癌再発及び/または癌進行には、癌転移が含まれるが、これに限定されない。
【0063】
本明細書で使用される場合、「完全奏功」または「CR」は、全標的病巣の消滅を指す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「部分奏功」または「PR」は、ベースラインSLDを参照として、標的病巣の最長径の合計(SLD)における少なくとも30%の低下を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「安定」または「SD」は、治療開始以来の最小のSLDを参照として、PRと言えるほどの十分な標的病巣の収縮も、PDと言えるほどの十分な増加もないことを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」または「PD」は、治療開始以来記録された最小のSLD、または1つ以上の新たな病変の存在を参照として、標的病変のSLDの少なくとも20%の増加を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「無進行生存期間」(PFS)は、治療されている疾患(例えば、癌)が悪化しない、治療中及び治療後の時間の長さを指す。無進行生存期間は、患者が完全奏功または部分奏功を経験した時間量、ならびに患者が安定を経験した時間量を含んでもよい。
【0068】
本明細書で使用される場合、「奏功率」または「客観的奏功率」(ORR)は、完全奏功(CR)率及び部分奏功(PR)率の合計を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「全生存率」(OS)は、特定期間後に生きている可能性が高い個体の、一群における割合を指す。
【0070】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒なさらなる成分を含有しない調製物を指す。かかる製剤は、滅菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加物)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0071】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、臨床的病理の経過中に治療されている個体または細胞の自然経過を改変するように設計された臨床的介入を指す。治療の望ましい効果には、疾患進行速度の減速、疾患状態の回復または緩和、及び寛解または予後の改善が含まれる。例えば、個体は、癌性細胞の増殖の低減(もしくは破壊)、疾患に起因する症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、及び/または個体の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、癌に関連する1つ以上の症状が軽減または排除された場合、「治療」が成功する。
【0072】
本明細書で使用される場合、疾患の「進行を遅延させる」は、疾患(癌など)の発症を延期し、妨害し、減速し、遅らせ、安定させ、かつ/または延ばすことを意味する。この遅延は、治療されている病歴及び/または個体に応じて異なる期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分なまたは著しい遅延は、個体が疾患を発症しないという点で、予防を事実上包含し得る。例えば、転移の発症などの末期癌を遅延させることができる。
【0073】
「有効量」とは、特定の障害の測定可能な改善または予防をもたらすために必要な少なくとも最小の量である。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体における所望の応答を誘発する薬剤の能力などの要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な効果が治療の任意の毒性効果または有害効果を上回るものでもある。予防的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患の生化学的、組織学的、及び/または挙動的症状、その合併症、ならびに疾患の発症中に現れる中間病理学的表現型を含む、疾患のリスクの排除もしくは低減、疾患の重症度の軽減、または疾患の発生の遅延などの結果が含まれる。治療的使用の場合、有益なまたは所望の結果には、疾患に起因する1つ以上の症状の減少、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬剤の用量の減少、別の薬剤の効果の増強(例えば、標的による)、疾患の進行の遅延、及び/または生存期間の延長などの臨床結果が含まれる。癌または腫瘍の場合、有効量の薬物は、癌細胞の数を低減させ、腫瘍サイズを低減させ、癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、ある程度遅らせるか、または望ましくは停止させ)、腫瘍成長をある程度阻害し、かつ/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減する効果を有し得る。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。本発明の目的に関しては、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、予防的または治療的治療を直接または間接的のいずれかで達成するのに十分な量である。臨床分野において理解されるように、薬物、化合物、または薬学的組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または薬学的組成物と併せて達成されても、されなくてもよい。したがって、「有効量」は、1つ以上の療法剤を投与するという点で考慮され得、単剤は、1つ以上の他の薬剤と併せて、望ましい結果が達成され得るか、または達成される場合、有効量で与えられると見なされ得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「と併せて」とは、1つの治療法に加えた別の治療法の投与を指す。したがって、「と併せて」とは、個体への1つの治療法の施行前、施行中、または施行後の別の治療法の施行を指す。
【0075】
「障害」とは、哺乳動物を問題の障害に罹患しやすくする病理学的状態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療から利益を受けることになる任意の状態である。
【0076】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、癌である。一実施形態では、細胞増殖性障害は、腫瘍である。
【0077】
「腫瘍」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性または良性にかかわらず、全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を指す。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、及び「腫瘍」という用語は、本明細書で言及される場合、相互排他的ではない。
【0078】
「癌」及び「癌性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。「乳癌」という用語は、HER2+乳癌、ならびに癌細胞がエストロゲン受容体(ER−)、プロゲステロン受容体(PR−)、及びHER2(HER2−)に関して陰性である乳癌の形態であり、かつ局所進行性、切除不能、及び/または転移性(例えば転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC))であり得るトリプルネガティブ乳癌(TNBC)を含むが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法は、局所進行性及び/または転移性である癌を含む、様々な段階の癌の治療に適している。癌の病期分類において、局所進行性は一般に、限局領域から付近の組織及び/またはリンパ節に広がった癌として定義される。ローマ数字の病期分類システムでは、局所進行性は通常、II期またはIII期に分類される。転移性である癌は、癌が身体にわたって遠隔組織及び器官に広がる段階(IV期)である。
【0079】
「細胞傷害性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞に有害である(例えば、細胞死を引き起こすか、増殖を阻害するか、またはさもなければ細胞機能を妨害する)任意の薬剤を指す。細胞傷害性剤には、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、成長阻害剤、核酸分解酵素などの酵素及びそれらの断片、ならびに細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素(それらの断片及び/または変異型を含む)などの毒素が含まれるが、これらに限定されない。例示的な細胞傷害性剤は、抗微小管薬、白金配位錯体、アルキル化剤、抗生物質剤、トポイソメラーゼII阻害剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼI阻害剤、ホルモン及びホルモン類似体、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、LDH−A阻害剤、脂肪酸生合成阻害剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ならびに癌代謝阻害剤から選択され得る。一実施形態では、細胞傷害性剤は、白金系化学療法剤である。一実施形態では、細胞傷害性剤は、EGFRのアンタゴニストである。一実施形態では、細胞傷害性剤は、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(例えば、エルロチニブ、TARCEVA(商標))である。一実施形態では、細胞傷害性剤は、RAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、BRAF及び/またはCRAF阻害剤である。一実施形態では、RAF阻害剤は、ベムラフェニブである。一実施形態では、細胞傷害性剤は、PI3K阻害剤である。
【0080】
本明細書で使用される場合、「化学療法剤」という用語は、mTNBCなどの癌の治療に有用な化合物を含む。化学療法剤の例には、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、Genentech/OSI Pharm.)、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標)、Millennium Pharm.)、ジスルフィラム、没食子酸エピガロカテキン、サリノスポラミドA、カーフィルゾミブ、17−AAG(ゲルダナマイシン)、ラディシコール、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDH−A)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、AstraZeneca)、スニチニブ(sunitib)(SUTENT(登録商標)、Pfizer/Sugen)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、Novartis)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Novartis)、フィナスネート(finasunate)(VATALANIB(登録商標)、Novartis)、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、Sanofi)、5−FU(5−フルオロウラシル)、ロイコボリン、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、Wyeth)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファーニブ(lonafamib)(SCH 66336)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、AstraZeneca)、AG1478、アルキル化剤、例えばチオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド、アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン、アジリジン、例えばベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)、エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamine)(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含む)、アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(トポテカン及びイリノテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン(callystatin)、CC−1065(そのアゾゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾン及びプレドニゾロンを含む)、酢酸シプロテロン、5α−還元酵素(フィナステリド及びデュタステリドを含む)、ボリノスタット、ロミデプシン、パノビノスタット、バルプロ酸、モセチノスタットドラスタチン、アルデスロイキン、タルクデュオカルマイシン(合成類似体KW−2189及びCB1−TM1を含む)、エロイテロビン(eleutherobin)、パンクラチスタチン(pancratistatin)、サルコジクチイン、スポンジスタチン(spongistatin)、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩(mechlorethamine oxide hydrochloride)、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード、ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン、抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンω1I(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.33:183−186(1994))、ジネマイシン(ジネマイシンAを含む)、クロドロネートなどのビスホスホネート、エスペラミシン、ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)(ドキソルビシン)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)など)、葉酸類似体(例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど)、プリン類似体(例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど)、アンドロゲン(例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど)、抗副腎剤(anti−adrenals)(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど)、葉酸補充剤(例えば、フロリン酸(frolinic acid))、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキサート(edatraxate)、デフォファミン(defofamine)、デメコルチン、ジアジクオン、エルフォミチン(elfomithine)、酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate)、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダイニン(lonidainine)、マイタンシノイド(例えば、マイタンシン及びアンサミトシンなど)、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダムノール(mopidamnol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg)、ラゾキサン、リゾキシン(rhizoxin)、シゾフラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジクオン、2,2’,2’’トリクロロトリエチルアミン、トリコテシン(特に、T−2毒素、ベルカリン(verracurin)A、ロリジンA、及びアングイジン)、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン(gacytosine)、アラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキサン、クロラムブシル、GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン)、6−チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ビンブラスチン、エトポシド(VP−16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、NAVELBINE(登録商標)(ビノレルビン)、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、カペシタビン(XELODA(登録商標))、イバンドロネート、CPT−11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイン酸などのレチノイド、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体が含まれる。
【0081】
化学療法剤には、分子の不可欠な部分として白金を含有する有機化合物を含む「白金系」化学療法剤も含まれる。典型的には、白金系化学療法剤は、白金の配位錯体である。白金系化学療法剤は、当該技術分野において「プラチン」と呼ばれることもある。白金系化学療法剤の例としては、カルボプラチン、シスプラチン、及びオキサリプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
化学療法剤には、(i)抗エストロゲン剤及び選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)などの、腫瘍に対してホルモン作用を制御または阻害するように作用する抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン(iodoxyfene)、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミファイン(toremifine citrate)を含む)、(ii)副腎におけるエストロゲン産生を制御するアロマターゼ酵素を阻害する、アロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(酢酸メゲストロール)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン、Pfizer)、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール、Novartis)、及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール、AstraZeneca)など、(iii)抗アンドロゲン剤、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなど、ブセレリン、トリプテレリン(tripterelin)、酢酸メドロキシプロゲステロン、ジエチルスチルベストロール、プレマリン、フルオキシメステロン、全てのトランスレチオニン酸(transretionic acid)、フェンレチニド、ならびにトロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、(iv)タンパク質キナーゼ阻害剤、(v)脂質キナーゼ阻害剤、(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC−アルファ、Ralf、及びH−Ras、(vii)リボザイム、例えば、VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤、(viii)遺伝子療法ワクチンなどのワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUVECTIN(登録商標)、及びVAXID(登録商標)、PROLEUKIN(登録商標)、rIL−2、トポイソメラーゼ1阻害剤、例えば、LURTOTECAN(登録商標)など、ABARELIX(登録商標)rmRH、ならびに(ix)上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、及び誘導体も含まれる。
【0083】
化学療法剤には、抗体、例えば、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、Genentech)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Amgen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、Genentech/Biogen Idec)、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4、Genentech)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、Genentech)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、及び抗体−薬物コンジュゲート、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Wyeth)も含まれる。本発明の化合物と組み合わせて薬剤としての治療可能性を有する追加のヒト化モノクローナル抗体には、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、ビバツズマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ(cedelizumab)、セルトリズマブペゴール、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ(motovizumab)、ナタリズマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、パキセリズマブ、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ、レシビズマブ(resyvizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ、トラリズマブ(toralizumab)、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、ビジリズマブ、及びインターロイキン−12 p40タンパク質を認識するように遺伝子修飾された排他的にヒト配列の組換え完全長IgG
1λ抗体である、抗インターロイキン−12(ABT−874/J695、Wyeth Research and Abbott Laboratories)が含まれる。
【0084】
化学療法剤には、EGFRに結合するか、またはさもなければそれと直接相互作用し、そのシグナル伝達活性を阻止または低減する化合物を指す「EGFR阻害剤」も含まれ、「EGFRアンタゴニスト」とも称される。かかる薬剤の例としては、EGFRに結合する抗体及び小分子が挙げられる。EGFRに結合する抗体の例としては、MAb 579(ATCC CRL HB 8506)、MAb 455(ATCC CRL HB8507)、MAb 225(ATCC CRL 8508)、MAb 528(ATCC CRL 8509)(米国特許第4,943,533号を参照されたい)、及びその変異型、例えば、キメラ化225(C225またはセツキシマブ、ERBUTIX(登録商標))及び再形成されたヒト225(H225)(例えば、WO96/40210、Imclone Systems Inc.を参照されたい)など、完全にヒトEGFR標的抗体であるIMC−11F8(Imclone)、II型変異体EGFRと結合する抗体(米国特許第5,212,290号)、米国特許第5,891,996号に記載されるEGFRと結合するヒト化抗体及びキメラ抗体、ならびにEGFRと結合するヒト抗体、例えば、ABX−EGFまたはパニツムマブ(WO98/50433、Abgenix/Amgenを参照されたい)、EMD55900(Stragliotto et al.Eur.J.Cancer 32A:636−640(1996))、EGFR結合においてEGF及びTGF−アルファの両方と競合するEGFRに対して指向されたヒト化EGFR抗体EMD7200(マツズマブ)(EMD/Merck)、ヒトEGFR抗体HuMax−EGFR(GenMab)、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3、及びE7.6.3として知られ、US6,235,883に記載される完全ヒト抗体、MDX−447(Medarex Inc)、ならびにmAb 806またはヒト化 mAb 806(Johns et al.,J.Biol.Chem.279(29):30375−30384(2004))が挙げられる。抗EGFR抗体は、細胞傷害性剤にコンジュゲートされ、それにより免疫コンジュゲートを生成することができる(例えば、EP659439A2,Merck Patent GmbHを参照されたい)。EGFRアンタゴニストには、米国特許第5,616,582号、同第5,457,105号、同第5,475,001号、同第5,654,307号、同第5,679,683号、同第6,084,095号、同第6,265,410号、同第6,455,534号、同第6,521,620号、同第6,596,726号、同第6,713,484号、同第5,770,599号、同第6,140,332号、同第5,866,572号、同第6,399,602号、同第6,344,459号、同第6,602,863号、同第6,391,874号、同第6,344,455号、同第5,760,041号、同第6,002,008号、及び同第5,747,498号、ならびに以下のPCT公報:WO98/14451、WO98/50038、WO99/09016、及びWO99/24037に記載される化合物などの小分子が含まれる。特定の小分子EGFRアンタゴニストには、OSI−774(CP−358774、エルロチニブ、TARCEVA(登録商標)Genentech/OSI Pharmaceuticals))、PD183805(CI 1033、2−プロペンアミド、N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−(4−モルホリニル)プロポキシ]−6−キナゾリニル]−、二塩酸塩、Pfizer Inc.)、ZD1839、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))4−(3’−クロロ−4’−フルオロアニリノ)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン、AstraZeneca)、ZM105180((6−アミノ−4−(3−メチルフェニル−アミノ)−キナゾリン、Zeneca)、BIBX−1382(N8−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−N2−(1−メチル−ピペリジン−4−イル)−ピリミド[5,4−d]ピリミジン−2,8−ジアミン、Boehringer Ingelheim)、PKI−166((R)−4−[4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−1H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−6−イル]−フェノール)、(R)−6−(4−ヒドロキシフェニル)−4−[(1−フェニルエチル)アミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン)、CL−387785(N−[4−[(3−ブロモフェニル)アミノ]−6−キナゾリニル]−2−ブチンアミド)、EKB−569(N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリニル]−4−(ジメチルアミノ)−2−ブテンアミド)(Wyeth)、AG1478(Pfizer)、AG1571(SU 5271、Pfizer)、二重EGFR/HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016またはN−[3−クロロ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]−6[5[[[2メチルスルホニル)エチル]アミノ]メチル]−2−フラニル]−4−キナゾリンアミン)が含まれる。
【0085】
化学療法剤には、「チロシンキナーゼ阻害剤」、例えば、前段落に記載のEGFR標的薬物、小分子HER2チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Takedaから入手可能なTAK165など、CP−724,714(ErbB2受容体チロシンキナーゼの経口選択的阻害剤)(Pfizer及びOSI)、二重HER阻害剤、例えば、EGFRと優先的に結合するが、HER2及びEGFR過剰発現細胞の両方を阻害するEKB−569(Wyethから入手可能)など、ラパチニブ(GSK572016、Glaxo−SmithKlineから入手可能)、経口HER2及びEGFRチロシンキナーゼ阻害剤、PKI−166(Novartisから入手可能)、pan−HER阻害剤、例えば、カネルチニブ(CI−1033、Pharmacia)など、Raf−1阻害剤、例えば、Raf−1シグナル伝達を阻害するISIS Pharmaceuticalsから入手可能なアンチセンス薬剤ISIS−5132など、非HER標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、Glaxo SmithKlineから入手可能)など、多標的チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、Pfizerから入手可能)など、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、バタラニブ(PTK787/ZK222584、Novartis/Schering AGから入手可能)など、MAPK細胞外制御キナーゼI阻害剤CI−1040(Pharmaciaから入手可能)、キナゾリン、例えば、PD 153035,4−(3−クロロアニリノ)キナゾリンなど、ピリドピリミジン、ピリミドピリミジン、ピロロピリミジン、例えば、CGP 59326、CGP 60261、及びCGP 62706など、ピラゾロピリミジン、4−(フェニルアミノ)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン、クルクミン(ジフェルロイルメタン、4,5−ビス(4−フルオロアニリノ)フタルイミド)、ニトロチオフェン部分を含有するチルホスチン、PD−0183805(Warner−Lamber)、アンチセンス分子(例えば、HERコード核酸に結合するもの)、キノキサリン(米国特許第5,804,396号)、トリホスチン(tryphostins)(米国特許第5,804,396号)、ZD6474(Astra Zeneca)、PTK−787(Novartis/Schering AG)、CI−1033(Pfizer)などのpan−HER阻害剤、Affinitac(ISIS 3521、Isis/Lilly)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、PKI 166(Novartis)、GW2016(Glaxo SmithKline)、CI−1033(Pfizer)、EKB−569(Wyeth)、Semaxinib(Pfizer)、ZD6474(AstraZeneca)、PTK−787(Novartis/Schering AG)、INC−1C11(Imclone)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))、または以下の特許公報のいずれか:米国特許第5,804,396号、WO1999/09016(American Cyanamid)、WO1998/43960(American Cyanamid)、WO1997/38983(Warner Lambert)、WO1999/06378(Warner Lambert)、WO1999/06396(Warner Lambert)、WO1996/30347(Pfizer,Inc)、WO1996/33978(Zeneca)、WO1996/3397(Zeneca)、及びWO1996/33980(Zeneca)に記載されるものも含まれる。
【0086】
化学療法剤には、デキサメタゾン、インターフェロン、コルヒチン、メトプリン、シクロスポリン、アンホテリシン、メトロニダゾール、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アミホスチン、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバシズマブ、ベキサロテン、クラドリビン、クロファラビン、ダルベポエチンアルファ、デニロイキン、デクスラゾキサン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、フィルグラスチム、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、レナリドミド、レバミゾール、メスナ、メトキサレン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オプレルベキン、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、キナクリン、ラスブリカーゼ、サルグラモスチム、テモゾロミド、VM−26、6−TG、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ゾレドロネート、及びゾレドロン酸、ならびにそれらの薬学的に許容される塩も含まれる。
【0087】
化学療法剤には、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、ピバリン酸チクソコルトール、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、ジプロピオン酸アクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾ−ル−17−プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン及び酢酸フルプレドニデン、免疫選択的抗炎症ペプチド(ImSAID)(例えばフェニルアラニン−グルタミン−グリシン(FEG)及びそのD異性体形態(feG)(IMULAN BioTherapeutics,LLC)など)、抗リウマチ薬(例えば、アザチオプリン、シクロスポリン(シクロスポリンA)、D−ペニシラミン、金塩、ヒドロキシクロロキン、レフルノミドミノシクリン、スルファサラジンなど)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα)遮断剤(例えば、エタネルセプト(Enbrel)、インフリキシマブ(Remicade)、アダリムマブ(Humira)、セルトリズマブペゴール(Cimzia)、ゴリムマブ(Simponi)など)、インターロイキン1(IL−1)遮断剤(例えば、アナキンラ(Kineret)など)、T細胞共刺激遮断剤(例えば、アバタセプト(Orencia)など)、インターロイキン6(IL−6)遮断剤(例えば、トシリズマブ(ACTEMERA(登録商標))など))、インターロイキン13(IL−13)遮断剤(例えば、レブリキズマブなど)、インターフェロンアルファ(IFN)遮断剤(例えば、ロンタリズマブなど)、ベータ7インテグリン遮断剤(例えば、rhuMAb Beta7など)、IgE経路遮断剤(例えば、抗M1プライムなど)、分泌ホモ三量体LTa3及び膜結合ヘテロ三量体LTa1/β2遮断剤(例えば、抗リンホトキシンアルファ(LTa)など)、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212、及びLuの放射性同位体)、種々の治験薬(例えば、チオプラチン、PS−341、フェニルブチレート、ET−18−OCH
3、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(L−739749、L−744832)など)、ポリフェノール(例えば、ケルセチン、レスベラトロール、ピセアタンノール、没食子酸エピガロカテキン、テアフラビン、フラバノール、プロシアニジン、ベツリン酸及びその誘導体など)、オートファジー阻害剤(例えば、クロロキンなど)、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標))、ベータ−ラパコン、ラパコール、コルヒチン、ベツリン酸、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、及び9−アミノカンプトテシン)、ポドフィロトキシン、テガフール(UFTORAL(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))、ビスホスホネート(例えば、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、エチドロネート(DIDROCAL(登録商標))、NE−58095、ゾレドロン酸/ゾレドロネート(ZOMETA(登録商標))、アレンドロネート(FOSAMAX(登録商標))、パミドロネート(AREDIA(登録商標))、チルドロネート(SKELID(登録商標))、またはリセドロネート(ACTONEL(登録商標))など)、ならびに上皮成長因子受容体(EGF−R)、ワクチン(例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン)、ペリフォシン、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブまたはエトリコキシブ)、プロテオソーム阻害剤(例えば、PS341)、CCI−779、ティピファニブ(R11577)、オラフェニブ、ABT510、Bcl−2阻害剤(例えば、オブリメルセンナトリウム(GENASENSE(登録商標))など)、ピクサントロン、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、ロナファーニブ(SCH 6636、SARASAR(商標))など、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体、ならびに上記のうちの2つ以上の組み合わせ、例えば、CHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略称)、ならびにFOLFOX(5−FU及びロイコボリンと組み合わされたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いた治療レジメンの略称)も含まれる。
【0088】
化学療法剤には、鎮静効果、解熱効果、及び抗炎症効果を有する非ステロイド抗炎症薬も含まれる。NSAIDには、酵素シクロオキシゲナーゼの非選択的阻害剤が含まれる。NSAIDの具体的な例としては、アスピリン、プロピオン酸誘導体、例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、及びナプロキセンなど、酢酸誘導体、例えば、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ジクロフェナクなど、エノール酸誘導体、例えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、及びイソキシカムなど、フェナム酸誘導体、例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸など、ならびにCOX−2阻害剤、例えば、セレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、ロフェコキシブ、及びバルデコキシブが挙げられる。NSAIDの適応は、リウマチ性関節炎、変形性関節炎、炎症性関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、ライター症候群、急性痛風、月経困難症、転移性骨痛、頭痛及び片頭痛、術後疼痛、炎症及び組織損傷に起因する軽度〜中程度の疼痛、発熱、腸閉塞症、ならびに腎疝痛などの病態の症状軽減であり得る。
【0089】
「成長阻害剤」は、本明細書で使用される場合、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を指す。一実施形態では、成長阻害剤は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を予防または低減する成長阻害抗体である。別の実施形態では、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を著しく低減させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、細胞周期進行(S期以外の場所で)を遮断する薬剤、例えば、G1停止及びM期停止を誘導する薬剤が挙げられる。従来のM期遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1で停止させるこれらの薬剤はまた、S期での停止、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、及びara−CなどのDNAアルキル化剤にも及ぶ。さらなる情報は、Murakami et al.による(W.B.Saunders,Philadelphia,1995)による“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs”と題されるMendelsohn and Israel,eds.,The Molecular Basis of Cancer,Chapter 1、例えば13頁に見出すことができる。
【0090】
「放射線療法」とは、正常に機能するか、または細胞を完全に破壊するその能力を制限するように細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。線量及び治療期間を決定するための当該技術分野で既知の方法が多く存在することが理解される。典型的な治療は、1回投与として与えられ、典型的な線量は、1日当たり10〜200単位(グレイ)の範囲である。
【0091】
治療目的のための「個体」または「対象」とは、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園、競技用、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ネコ、ウシ等を含む哺乳動物に分類される任意の動物を指す。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。個体または対象は、患者であり得る。
【0092】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。
【0093】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から識別及び分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の汚染物質成分は、抗体の研究的、診断的、または治療的使用を妨害するであろうで材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、抗体の95重量%超、及びいくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS−PAGEによって均質性が得られるまで、精製される。単離された抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内でインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0094】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合している一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V
H)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(V
L)を有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0095】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである免疫グロブリンの残りの部分と比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖C
H1、C
H2、及びC
H3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖CHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0096】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、「V
H」と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、「V
L」と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0097】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分の配列が抗体間で大きく異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造を接続し、かついくつかの場合では、ベータシート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を主として採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに結び付いており、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0098】
任意の哺乳類種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの一方に割り当てられ得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、IgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特徴によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0100】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)が、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1、及びIgA
2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は周知であり、一般に、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有会合または非共有会合により形成された、より大きな融合分子の一部であり得る。
【0101】
「完全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に定義される抗体断片ではなく、その実質的に無傷な形態にある抗体を指すように、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0102】
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0103】
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)
2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0104】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び残存「Fc」断片を産生し、その名前は、容易に結晶化するその能力を反映している。ペプシン処理は、F(ab′)
2断片を生成し、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0105】
「Fv」とは、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0106】
Fab断片は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加されているという点でFab断片とは異なる。Fab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)
2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0107】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関する概説については、例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer−Verlag,New York,1994),pp.269−315を参照されたい。
【0108】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖上のこれらの2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444−6448(1993)により完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディも、Hudson et al.,Nat.Med.9:129−134(2003)に記載されている。
【0109】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、かかるモノクローナル抗体は、典型的には、標的と結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの特有のクローンの選択であり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するなどのようにさらに改変されてもよく、かつ改変された標的結合配列を含む抗体が本発明のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、それらが典型的には他の免疫グロブリンで汚染されていないという点で有利である。
【0110】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein,Nature,256:495−97(1975)、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照されたい)、及び、ヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部もしくは全てを有するヒト抗体またはヒト様抗体を動物において産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993)、Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、及び同第5,661,016号、Marks et al.,Bio/Technology 10:779−783(1992)、Lonberg et al.,Nature 368:856−859(1994)、Morrison,Nature 368:812−813(1994)、Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845−851(1996)、Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonberg et al.,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を含む様々な技術により作製され得る。
【0111】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、所望の生物学的活性を呈する限り、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種由来の抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種由来の抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにかかる抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体にとしては、PRIMATTZED(登録商標)抗体が挙げられ、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的とする抗原で免疫化することによって産生された抗体に由来する。
【0112】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー体抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾を加えて、抗体の性能をさらに洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。また、例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998)、Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995)、Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)、ならびに米国特許第6,982,321号及び同第7,087,409号も参照されたい。
【0113】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生され、かつ/または本明細書で開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して産生された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を明確に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86−95(1991)に記載される方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に使用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.,5:368−74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してかかる抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウスに抗原を投与することにより調製され得る(XENOMOUSE(商標)技術に関して、例えば、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照されたい)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関して、例えば、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)も参照されたい。
【0114】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性よりも強い第1の哺乳類種由来の抗原に対する結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10
−7M以下、好ましくは約1×10
−8M以下、好ましくは約1×10
−9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い第2の非ヒト哺乳類種由来の抗原の相同体に対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0115】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)にあり、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体において、H3及びL3が6つのHVRの最も高い多様性を呈し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37−45(2000)、Johnson and Wu,in Methods in Molecular Biology 248:1−25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers−Casterman et al.,Nature 363:446−448(1993)、Sheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733−736(1996)を参照されたい。
【0116】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md(1991))。Chothiaは、その代わりに、構造的ループの位置に言及する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901−917(1987))。AbM HVRは、Kabat HVRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々の残基を、以下に記載する。
【0117】
HVRは、次のような「拡張型HVR」を含んでもよい:VL内の24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56(L2)、及び89〜97または89〜96(L3)、ならびにVH内の26〜35(H1)、50〜65または49〜65(H2)、及び93〜102、94〜102、または95〜102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabat et al.(上記参照)に従って番号付けされる。
【0118】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0119】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との抗体の配列の相同領域での整列によって決定され得る。
【0120】
Kabat番号付けシステムは一般に、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1〜107及び重鎖の残基1〜113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0121】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapata et al.(1995 Protein Eng,8(10):1057−1062)に記載の抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
【0122】
本明細書で使用される場合、「結合する」、「に特異的に結合する」、または「に特異的な」という用語は、生物学的分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的と、他の標的に結合するよりも高い親和性、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0123】
II.PD−1軸結合アンタゴニスト
個体に、有効量のPD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを投与することを含む、個体における局所進行性または転移性乳癌(例えば、mTNBC)の治療方法またはその進行の遅延方法が、本明細書において提供される。個体に、有効量のPD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンを投与することを含む、局所進行性または転移性乳癌(例えば、mTNBC)を有する個体における免疫機能の増強方法も、本明細書において提供される。例えば、PD−1軸結合アンタゴニストは、PD−1結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニスト、及びPD−L2結合アンタゴニストを含む。PD−1(プログラム死1)は、当該技術分野で「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも称される。例示的なヒトPD−1は、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号Q15116に示される。PD−L1(プログラム死リガンド1)は、当該技術分野で「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7−H」、及び「PDL1」とも称される。例示的なヒトPD−L1は、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号Q9NZQ7.1に示される。PD−L2(プログラム死リガンド2)は、当該技術分野で「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7−DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも称される。例示的なヒトPD−L2は、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号Q9BQ51に示される。いくつかの実施形態では、PD−1、PD−L1、及びPD−L2は、ヒトPD−1、PD−L1、及びPD−L2である。
【0124】
いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、PD−1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD−1リガンド結合パートナーは、PD−L1及び/またはPD−L2である。別の実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、PD−L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD−L1結合パートナーは、PD−1及び/またはB7−1である。別の実施形態では、PD−L2結合アンタゴニストは、PD−L2の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様では、PD−L2結合パートナーは、PD−1である。アンタゴニストは、抗体、その抗原結合断片、イムノアドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであり得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、抗PD−1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、MDX−1106(ニボルマブ)、MK−3475(ペンブロリズマブ)、CT−011(ピディリズマブ)、MEDI−0680(AMP−514)、PDR001、REGN2810、及びBGB−108からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD−L1またはPD−L2の細胞外またはPD−1結合部分を含むイムノアドヘシン)である。いくつかの実施形態では、PD−1結合アンタゴニストは、AMP−224である。いくつかの実施形態では、PD−L1結合アンタゴニストは、抗PD−L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、MPDL3280A、YW243.55.S70、MDX−1105、MEDI4736(デュルバルマブ)、及びMSB0010718C(アベルマブ)からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634に記載される抗PD−L1である。MDX−1105、別名BMS−936559は、WO2007/005874に記載される抗PD−L1抗体である。MEDI4736は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載される抗PD−L1モノクローナル抗体である。MDX−1106、別名MDX−1106−04、ONO−4538、BMS−936558、またはニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD−1抗体である。MK−3475、別名ランブロリズマブは、WO2009/114335に記載される抗PD−1抗体である。CT−011、別名hBAT、hBAT−1、またはピディリズマブは、WO2009/101611に記載される抗PD−1抗体である。AMP−224、別名B7−DCIgは、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されるPD−L2−Fc融合可溶性受容体である。
【0126】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニストは、抗PD−L1抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、PD−L1とPD−1との間及び/またはPD−L1とB7−1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)
2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、ヒト抗体である。
【0127】
本発明の方法に有用な抗PD−L1抗体の例、及びそれらの作製方法は、PCT特許出願第WO2010/077634号、WO2007/005874、WO2011/066389、及びUS2013/034559に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本発明に有用な抗PD−L1抗体(かかる抗体を含有する組成物を含む)をタキサンと併用して、癌を治療することができる。
【0128】
抗PD−1抗体
いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、MDX−1106である。「MDX−1106」に対する代替的な名称としては、MDX−1106−04、ONO−4538、BMS−936558、またはニボルマブが挙げられる。いくつかの実施形態では、抗PD−1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414−94−4)である。またさらなる実施形態では、配列番号1からの重鎖可変領域アミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び/または配列番号2からの軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された抗PD−1抗体が提供される。またさらなる実施形態では、重鎖及び/または軽鎖配列を含む単離された抗PD−1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:QVQLVESGGGVVQPGRSLRLDCKASGITFSNSGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSKRYYADSVKGRFTISRDNSKNTLFLQMNSLRAEDTAVYYCATNDDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号1)に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQSSNWPRTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号2)に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0129】
抗PD−L1抗体
いくつかの実施形態では、製剤中の抗体は、重鎖及び/または軽鎖配列に少なくとも1つのトリプトファン(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つ)を含む。いくつかの実施形態では、アミノ酸トリプトファンは、抗体のHVR領域、フレームワーク領域、及び/または定常領域内にある。いくつかの実施形態では、抗体は、HVR領域内に2つまたは3つのトリプトファン残基を含む。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体は、抗PD−L1抗体である。PD−L1(プログラム死リガンド1)、別名PDL1、B7−H1、B7−4、CD274、及びB7−Hは膜貫通型タンパク質であり、PD−1とのその相互作用はT細胞活性化及びサイトカイン産生を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗PD−L1抗体は、ヒトPD−L1に結合する。本明細書に記載される方法に使用され得る抗PD−L1抗体の例は、PCT特許出願第WO2010/077634 A1号及び米国特許第8,217,149号に記載されており、これらは参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、PD−L1とPD−1との間及び/またはPD−L1とB7−1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、Fab、Fab’−SH、Fv、scFv、及び(Fab’)
2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、ヒト抗体である。
【0131】
WO2010/077634A1及びUS8,217,149に記載される抗PD−L1抗体は、本明細書に記載される方法に使用され得る。いくつかの実施形態では、抗PD−L1抗体は、配列番号3の重鎖可変領域配列及び/または配列番号4の軽鎖可変領域配列を含む。またさらなる実施形態では、重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号3)に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0132】
一実施形態では、抗PD−L1抗体は、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3配列を含む重鎖可変領域を含み、
(a)HVR−H1配列は、GFTFSX
1SWIH(配列番号5)であり、
(b)HVR−H2配列は、AWIX
2PYGGSX
3YYADSVKG(配列番号6)であり、
(c)HVR−H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
さらに、配列中、X
1は、DまたはGであり、X
2は、SまたはLであり、X
3は、TまたはSである。具体的な一態様では、X
1はDであり、X
2はSであり、X
3はTである。
【0133】
別の態様では、ポリペプチドは、式:(HC−FR1)−(HVR−H1)−(HC−FR2)−(HVR−H2)−(HC−FR3)−(HVR−H3)−(HC−FR4)に従うHVR間に並置された可変領域重鎖フレームワーク配列をさらに含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる態様では、フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
HC−FR1は、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号8)であり、
HC−FR2は、WVRQAPGKGLEWV(配列番号9)であり、
HC−FR3は、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)であり、
HC−FR4は、WGQGTLVTVSA(配列番号11)である。
【0134】
またさらなる態様では、重鎖ポリペプチドは、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3を含む可変領域軽鎖とさらに組み合わせられ、
(a)HVR−L1配列は、RASQX
4X
5X
6TX
7X
8A(配列番号12)であり、
(b)HVR−L2配列は、SASX
9LX
10S、(配列番号13)であり、
(c)HVR−L3配列は、QQX
11X
12X
13X
14PX
15T(配列番号14)であり、
配列中、X
4は、DまたはVであり、X
5は、VまたはIであり、X
6は、SまたはNであり、X
7は、AまたはFであり、X
8は、VまたはLであり、X
9は、FまたはTであり、X
10は、YまたはAであり、X
11は、Y、G、F、またはSであり、X
12は、L、Y、F、またはWであり、X
13は、Y、N、A、T、G、F、またはIであり、X
14は、H、V、P、T、またはIであり、X
15は、A、W、R、P、またはTである。またさらなる態様では、X
4はDであり、X
5はVであり、X
6はSであり、X
7はAであり、X
8はVであり、X
9はFであり、X
10はYであり、X
11はYであり、X
12はLであり、X
13はYであり、X
14はHであり、X
15はAである。
【0135】
またさらなる態様では、軽鎖は、式:(LC−FR1)−(HVR−L1)−(LC−FR2)−(HVR−L2)−(LC−FR3)−(HVR−L3)−(LC−FR4)に従うHVR間に並置された可変領域軽鎖フレームワーク配列をさらに含む。またさらなる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。またさらなる態様では、フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、フレームワーク配列のうちの少なくとも1つは、以下のものである:
LC−FR1は、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)であり、
LC−FR2は、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)であり、
LC−FR3は、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)であり、
LC−FR4は、FGQGTKVEIKR(配列番号18)である。
【0136】
別の実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体または抗原結合断片が提供され、
(a)重鎖は、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3を含み、さらに、
(i)HVR−H1配列は、GFTFSX
1SWIH(配列番号5)であり、
(ii)HVR−H2配列は、AWIX
2PYGGSX
3YYADSVKG(配列番号6)であり、
(iii)HVR−H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号7)であり、
(b)軽鎖は、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3を含み、さらに、
(i)HVR−L1配列は、RASQX
4X
5X
6TX
7X
8A(配列番号12)であり、
(ii)HVR−L2配列は、SASX
9LX
10S(配列番号13)であり、
(iii)HVR−L3配列は、QQX
11X
12X
13X
14PX
15T(配列番号14)であり、
配列中、X
1は、DまたはGであり、X
2は、SまたはLであり、X
3は、TまたはSであり、X
4は、DまたはVであり、X
5は、VまたはIであり、X
6は、SまたはNであり、X
7は、AまたはFであり、X
8は、VまたはLであり、X
9は、FまたはTであり、X
10は、YまたはAであり、X
11は、Y、G、F、またはSであり、X
12は、L、Y、F、またはWであり、X
13は、Y、N、A、T、G、F、またはIであり、X
14は、H、V、P、T、またはIであり、X
15は、A、W、R、P、またはTである。具体的な態様では、X
1はDであり、X
2はSであり、X
3はTである。別の態様では、X
4はDであり、X
5はVであり、X
6はSであり、X
7はAであり、X
8はVであり、X
9はFであり、X
10はYであり、X
11はYであり、X
12はLであり、X
13はYであり、X
14はHであり、X
15はAである。さらに別の態様では、X
1はDであり、X
2はSであり、X
3はTであり、X
4はDであり、X
5はVであり、X
6はSであり、X
7はAであり、X
8はVであり、X
9はFであり、X
10はYであり、X
11はYであり、X
12はLであり、X
13はYであり、X
14はHであり、X
15はAである。
【0137】
さらなる態様では、重鎖可変領域は、(HC−FR1)−(HVR−H1)−(HC−FR2)−(HVR−H2)−(HC−FR3)−(HVR−H3)−(HC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC−FR1)−(HVR−L1)−(LC−FR2)−(HVR−L2)−(LC−FR3)−(HVR−L3)−(LC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。またさらなる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及び11として記載される。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。
【0138】
またさらなる具体的な態様では、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。またさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。またさらなる具体的な態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。またさらなる具体的な態様では、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。またさらなる具体的な態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。またさらなる実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0139】
さらに別の実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD−L1抗体が提供され、
(a)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、及びRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3配列をさらに含むか、または
(b)軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、及びQQYLYHPAT(配列番号24)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3配列をさらに含む。
【0140】
具体的な態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0141】
別の態様では、重鎖可変領域は、(HC−FR1)−(HVR−H1)−(HC−FR2)−(HVR−H2)−(HC−FR3)−(HVR−H3)−(HC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC−FR1)−(HVR−L1)−(LC−FR2)−(HVR−L2)−(LC−FR3)−(HVR−L3)−(LC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及び11として記載される。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。
【0142】
またさらなる具体的な態様では、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。またさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。またさらなる具体的な態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。またさらなる具体的な態様では、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。またさらなる具体的な態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。またさらなる実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0143】
別のさらなる実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSS(配列番号25)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0144】
具体的な態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。別の態様では、重鎖可変領域は、(HC−FR1)−(HVR−H1)−(HC−FR2)−(HVR−H2)−(HC−FR3)−(HVR−H3)−(HC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC−FR1)−(HVR−L1)−(LC−FR2)−(HVR−L2)−(LC−FR3)−(HVR−L3)−(LC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。さらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及びWGQGTLVTVSS(配列番号27)として記載される。
【0145】
またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。
【0146】
またさらなる具体的な態様では、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。またさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。またさらなる具体的な態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。またさらなる具体的な態様では、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。またさらなる具体的な態様では、最小のエフェクター機能は、原核細胞内での産生に起因する。またさらなる具体的な態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。またさらなる実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0147】
さらなる態様では、重鎖可変領域は、(HC−FR1)−(HVR−H1)−(HC−FR2)−(HVR−H2)−(HC−FR3)−(HVR−H3)−(HC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC−FR1)−(HVR−L1)−(LC−FR2)−(HVR−L2)−(LC−FR3)−(HVR−L3)−(LC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。またさらなる態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
HC−FR1 EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFS(配列番号29)
HC−FR2 WVRQAPGKGLEWVA(配列番号30)
HC−FR3 RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号10)
HC−FR4 WGQGTLVTVSS(配列番号27)。
【0148】
またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、以下のものである:
LC−FR1 DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号15)
LC−FR2 WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号16)
LC−FR3 GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号17)
LC−FR4 FGQGTKVEIK(配列番号28)。
【0149】
またさらなる具体的な態様では、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。またさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。またさらなる具体的な態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。またさらなる具体的な態様では、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。またさらなる具体的な態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。またさらなる実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0150】
さらに別の実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む抗PD−L1抗体が提供され、
(c)重鎖は、それぞれ、GFTFSDSWIH(配列番号19)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号20)、及びRHWPGGFDY(配列番号21)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−H1、HVR−H2、及びHVR−H3配列をさらに含み、かつ/または、
(d)軽鎖は、それぞれ、RASQDVSTAVA(配列番号22)、SASFLYS(配列番号23)、及びQQYLYHPAT(配列番号24)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR−L1、HVR−L2、及びHVR−L3配列をさらに含む。
【0151】
具体的な態様では、配列同一性は、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0152】
別の態様では、重鎖可変領域は、(HC−FR1)−(HVR−H1)−(HC−FR2)−(HVR−H2)−(HC−FR3)−(HVR−H3)−(HC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含み、軽鎖可変領域は、(LC−FR1)−(HVR−L1)−(LC−FR2)−(HVR−L2)−(LC−FR3)−(HVR−L3)−(LC−FR4)として、HVR間に並置された1つ以上のフレームワーク配列を含む。さらに別の態様では、フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、Kabat下位群I、II、またはIII配列に由来する。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列は、VH下位群IIIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、重鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号8、9、10、及びWGQGTLVTVSSASTK(配列番号31)として記載される。
【0153】
またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、またはIV下位群配列に由来する。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークである。またさらなる態様では、軽鎖フレームワーク配列のうちの1つ以上は、配列番号15、16、17、及び18として記載される。またさらなる具体的な態様では、抗体は、ヒトまたはマウス定常領域をさらに含む。またさらなる態様では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG2、IgG3、IgG4からなる群から選択される。またさらなる具体的な態様では、ヒト定常領域は、IgG1である。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3からなる群から選択される。またさらなる態様では、マウス定常領域は、IgG2Aである。またさらなる具体的な態様では、抗体は、低減されたまたは最小のエフェクター機能を有する。またさらなる具体的な態様では、最小のエフェクター機能は、「エフェクターなしのFc変異」またはアグリコシル化に起因する。またさらなる実施形態では、エフェクターなしのFc変異は、定常領域内のN297AまたはD265A/N297A置換である。
【0154】
またさらなる実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号26)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有するか、または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号4)に対して、少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0155】
いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、軽鎖可変領域配列は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、重鎖可変領域配列は、配列番号26のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖及び/または軽鎖のN末端の1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基は、欠失、置換、または修飾され得る。
【0156】
またさらなる実施形態では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、
(a)重鎖配列は、重鎖配列:
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYASTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG(配列番号32)に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、かつ/または
(b)軽鎖配列は、軽鎖配列:
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC(配列番号33)に対して少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖配列を含む単離された抗PD−L1抗体が提供され、軽鎖配列は、配列番号33のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、重鎖配列は、配列番号32のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0158】
いくつかの実施形態では、単離された抗PD−L1抗体は、アグリコシル化される。抗体のグリコシル化は、典型的には、N結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在により、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合グリコシル化とは、糖類であるN−アセイルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンも使用され得る。抗体からのグリコシル化部位の除去は、上記のトリペプチド配列(N結合グリコシル化部位について)のうちの1つが除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成される。この改変は、グリコシル化部位内のアスパラギン、セリン、またはスレオニン残基の別のアミノ酸残基(例えば、グリシン、アラニン、または保存的置換)による置換によって行われ得る。
【0159】
本明細書の実施形態のいずれにおいても、単離された抗PD−L1抗体は、ヒトPD−L1、例えば、UniProtKB/Swiss−Prot受託番号Q9NZQ7.1に示されるようなヒトPD−L1、またはその変異型に結合することができる。
【0160】
またさらなる実施形態では、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸が提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、前述の抗PD−L1抗体のいずれかをコードする核酸の発現に好適なベクターをさらに含む。またさらなる具体的な態様では、ベクターは、核酸の発現に好適な宿主細胞内にある。またさらなる具体的な態様では、宿主細胞は、真核細胞または原核細胞である。またさらなる具体的な態様では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0161】
抗体またはその結合断片は、当該技術分野で既知の方法を使用して、例えば、かかる抗体または断片を産生するのに好適な条件下で、発現に好適な形態にある前述の抗PD−L1抗体または抗原結合断片のいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を培養することと、抗体または断片を回収することとを含むプロセスによって作製することができる。
【0162】
III.抗体の調製
本明細書に記載される抗体は、抗体を生成するために当該技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下の節でより詳細に説明される。
【0163】
抗体は、目的とする抗原(例えば、PD−L1(ヒトPD−L1など)、PD1(ヒトPD−L1など)、PD−L2(ヒトPD−L2など)等)に対して指向される。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利点がもたらされ得る。
【0164】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、1μM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10
−8M以下、例えば、10
−8M〜10
−13M、例えば、10
−9M〜10
−13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0165】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイにより説明されるように、目的とする抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われる放射標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、Fabを、未標識抗原の一連の滴定の存在下で、最小濃度の(
125I)標識抗原と平衡化し、次いで抗Fab抗体コーティングプレートと結合した抗原を捕捉することによって、測定される(例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999))を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2〜5時間にわたって室温(およそ23℃)で遮断する。非吸着性プレート(Nunc番号269620)内で、100pMまたは26pMの[
125I]抗原を目的とするFabの連続希釈液と混合する。次いで、目的とするFabを一晩インキュベートするが、平衡が達成されたことを確実にするために、このインキュベーションをより長い時間(例えば、約65時間)にわたって継続してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間にわたる)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、PBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN−20(登録商標))を用いてプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(scintillant)(MICROSCINT−20(商標)、Packard)を添加し、TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)でプレートを10分間計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を競合結合アッセイでの使用に選択する。
【0166】
別の実施形態に従って、Kdは、25℃で、およそ10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore Inc.)は、供給者の指示に従ってN−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。10mMの酢酸ナトリウム(pH4.8)を用いて抗原を5μg/ml(およそ0.2μM)になるまで希釈した後に、5μL/分の流速で注入して、およそ10応答単位(RU)のカップリングしたタンパク質を得る。抗原の注入に続いて、1Mのエタノールアミンを注入して、未反応基を遮断する。動態測定のために、Fab(0.78nM〜500nM)の2倍段階希釈物が、25℃で、およそ25μl/分の流速で、0.05%のポリソルベート20(TWEEN−20(商標))界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入される。会合速度(k
on)及び解離速度(k
off)は、単純な1対1のラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して、会合センサグラムと解離センサグラムとを同時に当てはめることによって計算される。平衡解離定数(Kd)をk
off/k
on比として計算する。例えば、Chen et al.,J.Mol.Biol.293:865−881(1999)を参照されたい。上記表面プラズモン共鳴アッセイによるオン速度が10
6M
−1s
−1を超える場合、on速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM−AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される場合に、増加する抗原濃度の存在下で、25℃で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab型)(pH7.2)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nm帯域通過)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。
【0167】
(i)抗原の調製
任意に他の分子にコンジュゲートされる可溶性抗原またはその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体などの膜貫通分子の場合、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用され得る。代替えとして、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。かかる細胞は、天然源(例えば、癌細胞株)に由来し得るか、または膜貫通分子を発現するように組換え技法により形質転換されている細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には明らかであろう。
【0168】
(ii)ある特定の抗体に基づく方法
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連抗原及びアジュバントの複数の皮下(sc)または腹腔内(ip)注入により、動物において生じる。二機能性または誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲート)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl
2、またはR
1N=C=NR(式中、R及びR
1は異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化する種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤とコンジュゲートすることが有用であり得る。
【0169】
例えば、100μgまたは5μgのタンパク質またはコンジュゲート(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を、3体積のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、複数の部位で溶液を皮内注入することにより、動物は、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物は、複数の部位での皮下注入によりフロイント完全アジュバント中のペプチドまたはコンジュゲートの元の量の1/5〜1/10で追加免疫される。7〜14日後、動物から採血し、血清を抗体力価に関してアッセイする。動物は、力価がプラトーに到達するまで追加免疫される。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質にコンジュゲートしたもの及び/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートしたもので追加免疫する。コンジュゲートは、タンパク質融合物として組換え細胞培養物でも作製され得る。また、ミョウバンなどの凝集剤が、免疫応答を増強するために好適に使用される。
【0170】
例えば、本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法(Kohler et al.,Nature,256:495(1975)により最初に説明され、例えば、Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253−260(1995)、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988)、Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981)、及びヒト−ヒトハイブリドーマに関してNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)においてさらに説明される)を使用して作製され得る。さらなる方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生に関する)に記載の方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)については、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)に記載されている。
【0171】
様々な他のハイブリドーマ法については、例えば、米国特許出願公開第2006/258841号、同第2006/183887号(完全ヒト抗体)、同第2006/059575号、同第2005/287149号、同第2005/100546号、及び同第2005/026229号、ならびに米国特許第7,078,492号及び同第7,153,507号を参照されたい。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を産生するための例示的なプロトコルが以下に記載される。一実施形態では、マウスまたは他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターは、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することになる抗体を産生するか、またはそれを産生することができるリンパ球を誘発するように免疫化される。抗体は、本発明のポリペプチドまたはその断片、及びアジュバント、例えば、モノホスホリル脂質A(MPL)/ジクリノミコール酸トレハロース(TDM)(Ribi Immunochem.Research,Inc.,Hamilton,MT)の複数の皮下(SC)または腹腔内(IP)注入により、動物において生じる。本発明のポリペプチド(例えば、抗原)またはその断片は、組換え方法などの当該技術分野で周知の方法を使用して調製することができ、これらのうちのいくつかは、本明細書にさらに記載される。免疫化動物由来の血清が抗抗原抗体についてアッセイされ、ブースター免疫化が任意に施される。抗抗原抗体を産生する動物由来のリンパ球が単離される。代替として、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。
【0172】
その後、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞を形成する。例えば、Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986)を参照されたい。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地などの培地に感受性を示す骨髄腫細胞が使用され得る。例示的な骨髄腫細胞としては、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍由来のマウス骨髄腫系、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Md.USA.から入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞由来のマウス骨髄腫系が挙げられるが、これらに限定されない。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生についても説明されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York(1987))。
【0173】
そのように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、好適な培養培地、例えば、融合していない親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を含有する培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。好ましくは、例えば、Even et al.,Trends in Biotechnology,24(3),105−108(2006)に記載されるウシ胎仔血清などの動物由来の血清の使用を低減するために、無血清ハイブリドーマ細胞培養法が使用される。
【0174】
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドについては、Franek,Trends in Monoclonal Antibody Research,111−122(2005)に記載されている。具体的には、標準の培養培地がある特定のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、またはタンパク質加水分解画分で富化され、アポトーシスが3〜6つのアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドによって著しく抑制され得る。これらのペプチドは、ミリモル濃度またはそれより高い濃度で存在する。
【0175】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、本発明の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされ得る。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得る。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード分析によって決定され得る。例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)を参照されたい。
【0176】
所望の特異性、親和性、及び/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によってサブクローニングされ得、標準の方法によって成長し得る。例えば、Goding(上記参照)を参照されたい。この目的に好適な培養培地には、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、タンパク質A−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。ハイブリドーマ細胞からのタンパク質の単離の手順の1つがUS2005/176122及び米国特許第6,919,436号に記載されている。この方法は、結合プロセスで離液性塩などの最小限の塩を使用することを含み、好ましくは、溶出プロセスで少量の有機溶媒を使用することも含む。
【0177】
(iii)ライブラリ由来抗体
本発明の抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体に関してコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることにより単離され得る。例えば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特徴を保有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための多様な方法が当該技術分野で既知である。さらなる方法は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)に概説され、例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552−554、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1992)、Marks and Bradbury,in Methods in Molecular Biology 248:161−175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003)、Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004)、Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004)、Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004)、及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)にさらに記載されている。
【0178】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ中で無作為に組み換えられ、それは次いで、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433−455(1994)に記載されるように、抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして抗体断片をディスプレイする。免疫化源由来のライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく、免疫原に高親和性抗体を提供する。代替えとして、Griffiths et al.,EMBO J,12:725−734(1993)によって記載されるように、ナイーブレパートリーは、クローニングされ(例えば、ヒトから)、いかなる免疫化も伴わずに、幅広い非自己抗原また自己抗原に対する抗体の単一の源を提供することができる。最後に、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992)に記載されるように、ナイーブライブラリは、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含有するPCRプライマーを使用して、高度可変CDR3領域をコードし、かつインビトロで再配列を達成することによって、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、及び同第2009/0002360号が含まれる。
【0179】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0180】
(iv)キメラ、ヒト化、及びヒト抗体
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号、及びMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例において、キメラ抗体は、そのクラスまたはサブクラスが、親抗体のクラスまたはサブクラスから変化した「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0181】
特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒト化してヒトに対する免疫原性を低減する一方で、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する。一般に、ヒト化抗体は、1つ以上の可変ドメインを含み、そのHVR、例えば、CDR(またはそれらの部分)は、非ヒト抗体に由来し、そのFR(またはそれらの部分)は、ヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となった抗体)に由来する対応する残基で置換される。
【0182】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)で概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、Kashmiri et al.,Methods 36:25−34(2005)(SDR(a−CDR)移植を記載する)、Padlan,Mol.Immunol.28:489−498(1991)(「リサーフェイシング(resurfacing)」を記載する)、Dall’Acqua et al.,Methods 36:43−60(2005)(「FRシャフリング」を記載する)、ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61−68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252−260(2000)(FRシャフリングへの「誘導選択(guided selection)」アプローチを記載する)にさらに記載されている。
【0183】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照されたい)、軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位集団のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992)、及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619−1633(2008)を参照されたい)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678−10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611−22618(1996))が含まれるが、これらに限定されない。
【0184】
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368−74(2001)及びLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450−459(2008)に記載されている。
【0185】
ヒト抗体は、抗原投与に応答してヒト可変領域を有する無傷ヒト抗体または無傷抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくはその動物の染色体に無作為に組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有する。かかるトランスジェニックマウスにおいて、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117−1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術について記載している米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号、HUMAB(登録商標)技術について記載している米国特許第5,770,429号、K−M MOUSE(登録商標)技術について記載している米国特許第7,041,870号、ならびにUS2007/0061900号(VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する)も参照されたい。かかる動物によって生成される無傷抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾され得る。
【0186】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株について記載されてきた。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)、及びBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されるヒト抗体も、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557−3562(2006)に記載されている。追加の方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株由来のモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載する)、及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265−268(2006)(ヒト−ヒトハイブリドーマを記載する)に記載されるものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)については、Vollmers and Brandlein,Histology and Histopathology,20(3):927−937(2005)及びVollmers and Brandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185−91(2005)にも記載されている。
【0187】
ヒト抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。その後、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法が以下に記載される。
【0188】
(v)抗体断片
抗体断片は、酵素消化などの伝統的な手段または組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さなサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。ある特定の抗体断片の概説については、Hudson et al.(2003)Nat.Med.9:129−134を参照されたい。
【0189】
抗体断片を産生するための様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞により直接産生され得る。Fab、Fv、及びScFv抗体断片は全て、E.coliで発現され、E.coliから分泌され得るため、これらの断片の容易な大量産生が可能になる。抗体断片は、上述の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替えとして、Fab’−SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)
2断片を形成し得る(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別のアプローチによると、F(ab’)
2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)
2断片については、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法が、当業者に明らかであろう。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。例えば、WO93/16185、米国第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。Fv及びscFvは、定常領域を欠く無傷結合部位を有する唯一の種であり、それ故に、それらは、インビボでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでのエフェクタータンパク質の融合をもたらすことができる。Antibody Engineering,ed.Borrebaeck(上記参照)を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載の「直鎖状抗体」でもあり得る。かかる直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0190】
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。かかる分子が通常2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみと結合する一方で、三重特異性抗体などの追加の特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合、この表現により包含される。二重特異性抗体は、完全長抗体または抗体断片として調製され得る(例えば、F(ab’)
2二重特異性抗体)。
【0191】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で知られている。完全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(例えば、Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。ランダムにいろいろな免疫グロブリン重鎖及び軽鎖が集まっているため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常は親和性クロマトグラフィーステップにより行われる正しい分子の精製は、やや煩雑であり、生成物収率は低い。同様の手順が、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991)に記載されている。
【0192】
当該技術分野で既知の二重特異性抗体を作製するための1つのアプローチは、「ノブイントゥホール(knobs−into−holes)」または「プロチュベランスイントゥキャビティ(protuberance−into−cavity)」アプローチである(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)。このアプローチにおいて、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)は各々、界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面は、他方の免疫グロブリンポリペプチドの対応する界面と相互作用し、それにより、2つの免疫グロブリンポリペプチドが会合を可能にする。これらの界面は、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」または「プロチュベランス」(これらの用語は、本明細書で互換的に使用され得る)は、他方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」または「キャビティ」(これらの用語は、本明細書で互換的に使用され得る)に対応するように操作され得る。いくつかの実施形態では、ホールは、ノブと同一または同様のサイズのものであり、2つの界面が相互作用するときに、一方の界面のノブが他方の界面の対応するホール内に位置付け可能になるように好適に位置付けられる。理論に束縛されることを望むものではないが、これは、ヘテロ多量体を安定させ、かつ他の種、例えば、ホモ多量体よりもヘテロ多量体の形成を好むと考えられる。いくつかの実施形態では、このアプローチは、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を有する2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を作製するために使用され得る。
【0193】
いくつかの実施形態では、ノブは、小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖で置き換えることにより構築され得る。いくつかの実施形態では、ホールは、大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖で置き換えることにより構築され得る。ノブまたはホールは、元の界面内に存在し得るか、または合成的に導入され得る。例えば、ノブまたはホールは、界面をコードする核酸配列を改変させて、少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基で置き換えることにより合成的に導入され得る。核酸配列を改変するための方法には、当該技術分野で周知の標準の分子生物学技法が含まれ得る。様々なアミノ酸残基の側鎖体積は、以下の表に示される。いくつかの実施形態では、元の残基は、小さい側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、スレオニン、またはバリン)を有し、ノブを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンを含み得る。いくつかの実施形態では、元の残基は、大きい側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン)を有し、ホールを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アラニン、セリン、スレオニン、及びバリンを含み得る。
表1.アミノ酸残基の特性
aアミノ酸の分子量から水の分子量を差し引いたものである。Handbook of Chemistry and Physics,43
rd ed.Cleveland,Chemical Rubber Publishing Co.,1961からの値である。
bA.A.Zamyatnin,Prog.Biophys.Mol.Biol.24:107−123,1972からの値である。
cC.Chothia,J.Mol.Biol.105:1−14,1975からの値である。利用可能な表面範囲は、この参考文献の
図6〜20に定義されている。
【0194】
いくつかの実施形態では、ノブまたはホールを形成するための元の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造に基づいて識別される。三次元構造を得るための当該技術分野で既知の技法には、X線結晶学及びNMRが含まれ得る。いくつかの実施形態では、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの実施形態では、ヒトIgG
1のCH3/CH3界面は、4つの逆平行βストランド上に位置する各ドメイン上に16個の残基を伴う。理論に束縛されることを望むものではないが、変異残基は好ましくは、ノブがパートナーCH3ドメイン内の補償ホールよりむしろ周囲の溶媒により収容され得る危険性を最小限に抑えるように、2つの中央逆平行βストランド上に位置する。いくつかの実施形態では、2つの免疫グロブリンポリペプチド内の対応するノブ及びホールを形成する変異は、以下の表に提供される1つ以上の対に対応する。
表2.対応するノブ及びホール形成変異の例示的な組
変異は、元の残基、続いて、Kabat番号付けシステムを使用した位置、その後、移入残基により表示されている(全ての残基は、一文字のアミノ酸コードで示されている)。複数の変異は、コロンで区切られている。
【0195】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンポリペプチドは、上の表2に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、表2の左側の欄に列挙される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右側の欄に列挙される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0196】
上記で考察されるようにDNAを変異させた後、1つ以上の対応するノブ形成変異またはホール形成変異を有する修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の標準の組換え技法及び細胞系を使用して発現及び精製され得る。例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、同第7,642,228号、同第7,695,936号、同第8,216,805、米国特許出願公開第2013/0089553号、及びSpiess et al.,Nature Biotechnology 31:753−758,2013を参照されたい。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、E.coliなどの原核宿主細胞、またはCHO細胞などの真核宿主細胞を使用して産生され得る。対応するノブ及びホールを持つ免疫グロブリンポリペプチドは、共培養物中で、宿主細胞で発現され、ヘテロ多量体として一緒に精製され得るか、または単一培養物中で発現され、別個に精製され、インビトロで構築され得る。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞の2つの菌株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)は、当該技術分野で既知の標準の細菌培養技法を使用して共培養される。いくつかの実施形態では、2つの菌株は、例えば、培養物中で等しい発現レベルを達成するように、特定の比率で混合され得る。いくつかの実施形態では、2つの菌株は、50:50、60:40、または70:30の比率で混合され得る。ポリペプチドが発現した後、細胞が一緒に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在量の測定を可能にする当該技術分野で既知の標準の技法には、サイズ排除クロマトグラフィーが含まれ得る。いくつかの実施形態では、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、標準の組換え技法を使用して別個に発現され、それらはインビトロで一緒に構築され得る。構築は、例えば、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドを精製し、それらを等しい質量で一緒に混合及びインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールで処理することにより)、濃縮し、かつポリペプチドを再酸化することにより達成され得る。形成された二重特異性抗体は、カチオン交換クロマトグラフィーを含む標準の技法を使用して精製され得、サイズ排除クロマトグラフィーを含む標準の技法を使用して測定され得る。これらの方法のより詳細な説明については、Speiss et al.,Nat.Biotechnol.31:753−8,2013を参照されたい。いくつかの実施形態では、修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、CHO細胞で別個に発現され、上述の方法を使用してインビトロで構築され得る。
【0197】
異なるアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原の組み合わせ部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。融合は好ましくは、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。融合のうちの少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合物、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖融合物をコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これは、構築時に使用される不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供するとき、実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する上で優れた柔軟性を提供する。しかし、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらすとき、またはそれらの比率が特に重要でないとき、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0198】
このアプローチの一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在が容易な分離方法を提供するため、この非対称構造が、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出された。このアプローチは、WO94/04690で開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細に関しては、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照されたい。
【0199】
WO96/27011に記載される別のアプローチによると、1対の抗体分子間の界面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大にするように操作され得る。1つの界面は、抗体定常ドメインのC
H3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一または同様のサイズの補償「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることにより第2の抗体分子の界面上に作製される。これは、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるための機構を提供する。
【0200】
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の1つはアビジンにカップリングし、他のものはビオチンにカップリングし得る。かかる抗体は、例えば、免疫系細胞の標的を望ましくない細胞に絞るため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療のために提唱されている(WO91/00360、WO92/200373、及びEP03089)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製され得る。好適な架橋剤が、当該技術分野で周知されており、いくつかの架橋技法と併せて米国特許第4,676,980号で開示される。
【0201】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学連結を使用して調製され得る。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、無傷抗体がタンパク質分解的に切断されてF(ab’)
2断片が生成される手順を記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。次いで、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。Fab’−TNB誘導体のうちの1つが、メルカプトエチルアミンでの還元によりFab’−チオールに再変換され、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0202】
近年の進歩により、化学的にカップリングされて二重特異性抗体を形成し得るFab’−SH断片をE.coliから直接回収することが容易になった。Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175 217−225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)
2分子の産生を記載する。各Fab’断片は、E.coliから別個に分泌され、インビトロでの指向性化学的カップリングにかけられて、二重特異性抗体が形成された。
【0203】
組換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体断片を作製及び単離するための様々な技法も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。抗体ホモ二量体がヒンジ領域で還元されて単量体が形成され、次いで、再酸化されて、抗体ヘテロ二量体が形成された。この方法は、抗体ホモ二量体の産生のためにも利用され得る。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替機序を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V
L)に接続した重鎖可変ドメイン(V
H)を含む。したがって、1つの断片のV
Hドメイン及びV
Lドメインは、別の断片の相補的なV
Lドメイン及びV
Hドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製するための別の方策も報告されている。Gruber et al,J.Immunol,152:5368(1994)を参照されたい。
【0204】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技法は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」またはBiTE(登録商標)アプローチである(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261、及びWO2008/119567を参照されたい)。このアプローチは、単一のポリペプチド上に配列された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一のポリペプチド鎖は、可変重鎖(V
H)及び可変軽鎖(V
L)ドメインを各々有する2つの一本鎖Fv(scFv)断片を含み、これらのドメインは、2つのドメイン間の分子内会合を可能にする十分な長さのポリペプチドリンカーにより分離される。この単一のポリペプチドは、2つのscFv断片間のポリペプチドスペーサー配列をさらに含む。各scFvは、異なるエピトープを認識し、2つの異なる細胞の種類の細胞が、各scFvがその同族のエピトープと係合するときに近接近するかまたは係留されるように、これらのエピトープは、異なる細胞の種類に対して特異的であり得る。このアプローチの1つの特定の実施形態は、免疫細胞により発現される細胞表面抗原を認識するscFv、例えば、T細胞上のCD3ポリペプチドを含み、これは、悪性または腫瘍細胞などの標的細胞により発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに連結する。
【0205】
それが単一のポリペプチドであるため、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当該技術分野で既知の任意の原核または真核細胞発現系、例えば、CHO細胞株を使用して発現され得る。しかしながら、特定の精製技法(例えば、EP1691833を参照されたい)が、単量体二重特異性T細胞エンゲージャーを、単量体の意図される活性以外の生物活性を有し得る他の多量体種から分離するために必要であり得る。1つの例示的な精製スキームにおいて、分泌ポリペプチドを含有する溶液はまず、金属親和性クロマトグラフィーにかけられ、ポリペプチドは、イミダゾール濃度の勾配を用いて溶出される。この溶出物は、アニオン交換クロマトグラフィーを使用してさらに精製され、ポリペプチドは、塩化ナトリウム濃度の勾配を用いて使用して溶出される。最後に、この溶出物は、サイズ排除クロマトグラフィーにかけられ、多量体種から単量体が分離される。
【0206】
二価を超える抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。例えば、Tuft et al.J.Immunol.147:60(1991)を参照されたい。
【0207】
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部を含む単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,Mass.、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てまたは一部からなる。
【0208】
(viii)抗体変異型
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異型は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときにアミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
【0209】
(ix)置換、挿入、及び欠失変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異型が提供される。置換変異誘発の目的とする部位には、HVR及びFRが含まれる。保存的置換は、表1において、「保存的置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換が目的とする抗体に導入され、産物が所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングされ得る。
表3.例示的な置換
【0210】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って群分けされ得る。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
c.酸性:Asp、Glu、
d.塩基性:His、Lys、Arg、
e.鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0211】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのあるメンバーと別のクラスとの交換を伴うことになる。
【0212】
置換変異型の種類の1つは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる試験のために選択される、結果として生じる変異型(複数可)は、親抗体と比較したある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有する。例示的な置換型変異型は、例えば、本明細書に記載の技法などのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成され得る親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異され、変異型抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0213】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVR内に行われてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179−196(2008)を参照のこと)、及び/またはSDR(a−CDR)に行われてもよく、結果として生じる変異型VHまたはVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、そこから再選択することによる親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1−37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体変異型を識別する。多様性を導入する別の方法は、数個のHVR残基(例えば、一度に4〜6個の残基)が無作為化されるHVR指向性アプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に識別され得る。とりわけCDR−H3及びCDR−L3が標的とされることが多い。
【0214】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗体の抗原と結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的改変(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR内で行われてもよい。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDR外であり得る。上述の変異型VH及びVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、または3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0215】
変異誘発の標的とされ得る抗体の残基または領域の識別のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と称され、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081−1085に記載されている。この方法において、残基または標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)の群が識別され、中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響されたかどうかを決定する。さらなる置換が最初の置換に対する機能感受性を示すアミノ酸位置に導入され得る。代替えとして、または加えて、抗体と抗原との間の接触点を識別するための抗原−抗体複合体の結晶構造。かかる接触残基及び隣接する残基が置換の候補として標的とされ得るか、または排除され得る。変異型をスクリーニングして、それらが所望の特性を有するかどうかを決定することができる。
【0216】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドの範囲の長さを有するアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型変異型には、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が含まれる。
【0217】
(x)グリコシル化変異型
ある特定の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって好都合に達成され得る。
【0218】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を改変してもよい。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、一般にN結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26−32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」中のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ある特定の特性が改善された抗体変異型を作製するために、本発明の抗体中オリゴ糖の修飾が行われ得る。
【0219】
一実施形態では、Fc領域を含む抗体変異型が提供され、Fc領域に結合した炭水化物構造は、フコースが減少しているか、またはフコースを欠き、これによりADCC機能が改善され得る。具体的には、野生型CHO細胞で産生される同じ抗体のフコースの量と比較してフコースが減少した抗体が本明細書で企図される。すなわち、それらは、それらが天然CHO細胞(例えば、天然FUT8遺伝子を含有するCHO細胞などの天然グリコシル化パターンを産生するCHO細胞)によって産生された場合にさもなければ有するであろう量よりも少ない量のフコースを有することを特徴とする。ある特定の実施形態では、抗体は、そのN結合型グリカンの約50%、40%、30%、20%、10%、または5%未満がフコースを含む抗体である。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%〜80%、1%〜65%、5%〜65%、または20%〜40%であり得る。ある特定の実施形態では、抗体は、そのN結合型グリカンのいずれもフコースを含まない抗体であり、すなわち、本抗体は、フコースを全く有しないか、またはフコースを有しないか、またはアフコシル化されている。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるように、MALDI−TOF質量分析によって測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における小規模な配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸、上流または下流、すなわち、294〜300位の間に位置してもよい。かかるフコシル化変異型は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「脱フコース化」または「フコース欠損」抗体変異型に関する刊行物の例には、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239−1249(2004)、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533−545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号、及びWO2004/056312A1、特に実施例11)、及びアルファ−1,6−フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane−Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680−688(2006)、及びWO2003/085107を参照されたい)が挙げられる。
【0220】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体変異型がさらに提供される。かかる抗体変異型は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。かかる抗体変異型の例は、例えばWO2003/011878、米国特許第6,602,684号、US2005/0123546、及びFerrara et al.,Biotechnology and Bioengineering,93(5):851−861(2006)に記載されている。Fc領域に結合したオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異型もまた提供される。かかる抗体変異型は、改善されたCDC機能を有し得る。かかる抗体変異型は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載されている。
【0221】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を有する抗体変異型は、FcγRIIIに結合することができる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載のFc領域を含む抗体変異型は、ヒトエフェクター細胞の存在下でADCC活性を有するか、またはヒトエフェクター細胞の存在下でヒト野生型IgG1Fc領域を有するという点以外は同じ抗体と比較して増加したADCC活性を有する。
【0222】
(xi)Fc領域変異型
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域変異型が生成され得る。Fc領域変異型は、1つ以上のアミノ酸位にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0223】
ある特定の実施形態では、本発明は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を保有し、それにより抗体のインビボでの半減期が重要であるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異型を企図する。インビトロ及び/またはインビボ細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/またはADCC活性の低減/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(ゆえに、ADCCを欠く可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確認することができる。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457−492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的とする分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059−7063(1986)を参照されたい)、及びHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499−1502(1985)、5,821,337(Bruggemann,et al.,J.Exp.Med.166:1351−1361(1987)を参照されたい)に記載されている。代替えとして、非放射性アッセイ方法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替として、または加えて、目的とする分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652−656(1998)に開示されるような動物モデルにおいて評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qと結合することができず、それによりCDC活性を欠くことを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施されてもよい(例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)、Cragg et al.,Blood 101:1045−1052(2003)、及びCragg et al,Blood 103:2738−2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期決定もまた、当該技術分野で既知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759−1769(2006)を参照されたい)。
【0224】
低減したエフェクター機能を有する抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものを含む(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体は、アラニンへの残基265及び297の置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、及び327位のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0225】
FcRへの結合が改善または低減されたある特定の抗体変異型が記載される。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591−6604(2001)を参照されたい。)
【0226】
ある特定の実施形態では、抗体変異型は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を有するFc領域を含む。例示的な実施形態では、そのFc領域に以下のアミノ酸置換:S298A、E333A、及びK334Aを有する抗体。
【0227】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie et al.J.Immunol.164:4178−4184(2000)に記載されるように、改変された(すなわち、改善または低減された)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)をもたらす改変がFc領域において行われる。
【0228】
母体IgGの胎児への移入に関与する、半減期が増加しかつ新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))が、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する1つ以上の置換をそこに有するFc領域を含む。かかるFc変異型は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号)を有するものを含む。Fc領域変異型の他の例に関して、Duncan & Winter,Nature 322:738−40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、及びWO94/29351も参照されたい。
【0229】
(xii)抗体誘導体
本発明の抗体は、当該技術分野で既知であり、かつ容易に利用可能である追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。ある特定の実施形態では、抗体の誘導体化に好適な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分岐状または非分岐状であり得る。抗体に結合したポリマーの数は異なり得、1つを超えるポリマーが結合している場合、それらは同じかまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体の誘導体が規定の条件下で療法に使用されるかどうかなどを含むがこれらに限定されない、検討事項に基づいて決定され得る。
【0230】
(xiii)ベクター、宿主細胞、及び組換え方法
抗体は、組換え方法を使用しても産生され得る。抗抗原抗体の組換え産生に関して、抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。抗体をコードするDNAは、容易に単離され得、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0231】
(a)シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接のみならず、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換え的に産生され得、この異種ポリペプチドは好ましくは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである。選択される異種シグナル配列は好ましくは、宿主細胞により認識及び処理される(例えば、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識も処理もしない原核宿主細胞に関して、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核シグナル配列により置換される。酵母分泌に関して、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(Saccharomyces及びKluyveromyces α−因子リーダーを含む)、または酸性ホスファターゼリーダー、C.albicansグルコアミラーゼリーダー、またはWO90/13646に記載されるシグナルにより置換され得る。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列、ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
【0232】
(b)複製起点
発現及びクローニングベクターの両方は、1つ以上の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含有する。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAとは無関係にベクターの複製を可能にするものであり、これらには、複製起点または自己複製配列が含まれる。かかる配列は、多様な細菌、酵母、及びウイルスに関して周知されている。プラスミドpBR322由来の複製起点が大半のグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド起点が酵母に好適であり、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、またはBPV)が哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般に、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターに必要とされない(SV40起点は、初期プロモーターを含有するという理由だけで、典型的に使用され得る。
【0233】
(c)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択遺伝子、別名、選択可能なマーカーを含有し得る。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンへの耐性を与えるか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、または(c)複合培地から入手不可能な必須の栄養素、例えば、BacilliのためのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子を供給するタンパク質をコードする。
【0234】
選択スキームの一例は、宿主細胞の成長を停止する薬物を利用する。異種遺伝子を用いた形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与え、したがって選択レジメンで生き残るタンパク質を産生する。かかる優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、及びハイグロマイシンを使用する。
【0235】
哺乳動物細胞に好適な選択可能なマーカーの別の例は、DHFR、グルタミンシンテターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−I及び−II、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどの抗体コード核酸を取り込むための細胞成分の識別を可能にするものである。
【0236】
例えば、DHFR遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することにより識別される。これらの条件下で、DHFR遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸と共に増幅される。内因性DHFR活性が欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL−9096)が使用され得る。
【0237】
代替えとして、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GS阻害剤であるL−メチオニンスルホキシミン(Msx)を含有する培養培地中で形質転換体を培養することにより識別される。これらの条件下で、GS遺伝子は、任意の他の共形質転換された核酸と共に増幅される。GS選択/増幅系が、上述のDHFR選択/増幅系と組み合わせて使用され得る。
【0238】
代替えとして、目的とする抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及び例えば、アミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)などの別の選択可能なマーカーで形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生物質、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418などの選択可能なマーカー用の選択剤を含有する培地中の細胞成長により選択され得る。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
【0239】
酵母での使用に好適な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al.,Nature,282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株に対する選択マーカー、例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1を提供する。Jones,Genetics,85:12(1977)。次いで、酵母宿主細胞ゲノム中でのtrp1病変の存在は、トリプトファンの不在下での成長による形質転換の検出に有効な環境を提供する。同様に、Leu2が欠損した酵母菌株(ATCC20,622または38,626)は、Leu2遺伝子を持つ既知のプラスミドにより補完される。
【0240】
加えて、1.6μmの環状プラスミドpKD1由来のベクターが、Kluyveromyces酵母の形質転換に使用され得る。代替えとして、組換え仔牛キモシンの大規模産生のための発現系としてK.lactisが報告された。Van den Berg,Bio/Technology,8:135(1990)。Kluyveromycesの工業用菌株による成熟組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定した多コピー発現ベクターも開示されている。Fleer et al.,Bio/Technology,9:968−975(1991)。
【0241】
(d)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは一般に、宿主生物により認識され、かつ抗体をコードする核酸に作動可能に連結するプロモーターを含有する。原核宿主との使用に好適なプロモーターには、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。しかし、他の既知の細菌プロモーターも好適である。細菌系で使用するためのプロモーターは、抗体をコードするDNAに作動可能に連結するシャイン・ダルガノ(S.D.)配列も含有するであろう。
【0242】
真核生物のプロモーター配列が既知である。実質的に全ての真核遺伝子が、転写が始まる部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域である。大半の真核遺伝子の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列である。これらの配列の全てが、真核発現ベクターに好適に挿入される。
【0243】
酵母宿主との使用に好適なプロモーター配列の例には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
【0244】
成長条件により制御された転写のさらなる利点を有する誘導可能なプロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素のプロモーター領域である。酵母発現での使用に好適なベクター及びプロモーターは、EP73,657にさらに記載される。酵母エンハンサーも酵母プロモーターと共に有利に使用される。
【0245】
哺乳動物宿主細胞中のベクターからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから、または異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御され得るが、但し、かかるプロモーターが宿主細胞系と適合性であることを条件とする。
【0246】
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ウシ乳頭腫ウイルスをベクターとして使用して哺乳動物宿主におけるDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号に開示されている。この系の変化形は、米国特許第4,601,978号に記載されている。単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現に関して、Reyes et al.,Nature 297:598−601(1982)も参照されたい。代替えとして、ラウス肉腫ウイルス長末端反復がプロモーターとして使用され得る。
【0247】
(e)エンハンサーエレメント成分
より高次の真核生物による本発明の抗体をコードするDNAの転写は、多くの場合、エンハンサー配列をベクターに挿入することにより増加する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、及びインスリン)由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている。しかし、典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーが使用されるであろう。例には、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーが含まれる。真核プロモーターの活性化のための増強エレメントに関しては、Yaniv,Nature 297:17−18(1982)も参照されたい。エンハンサーは、抗体コード配列の5’位または3’位でベクターにスプライスされ得るが、好ましくは、プロモーターから5’部位に位置する。
【0248】
(f)転写終結成分
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現ベクターは、転写終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有するであろう。かかる配列は一般的に、真核またはウイルスDNAまたはcDNAの5’非翻訳領域、時折、3’非翻訳領域から入手可能である。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びそれらで開示される発現ベクターを参照されたい。
【0249】
(g)宿主細胞の選択及び形質転換
本明細書におけるベクター内のDNAのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞は、上述の原核生物、酵母、または高等真核生物の細胞である。この目的に好適な原核生物には、グラム陰性またはグラム陽性の生物などの真正細菌、例えば、EscherichiaなどのEnterobacteriaceae、例えば、E.coli、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、及びShigella、ならびにB.subtilis及びB.licheniformisなどのBacilli(例えば、1989年4月12日に発行されたDD 266,710に開示されるB.licheniformis 41P)P.aeruginosaなどのPseudomonas、ならびにStreptomycesが含まれる。1つの好ましいE.coliクローニング宿主は、E.coli294(ATCC31,446)であるが、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)、及びE.coli W3110(ATCC27,325)などの他の菌株も好適である。これらの例は、限定するものではなく、例示するものである。
【0250】
完全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体断片は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされないとき、例えば、治療抗体が、単独で腫瘍細胞破壊における効果を示す細胞傷害性剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされるとき、細菌内で産生され得る。完全長抗体は、血液循環におけるより優れた半減期を有する。E.coliでの産生がより迅速であり、より費用効率が高い。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現に関しては、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)(これは、発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列を記載する)を参照されたい。また、E.coliにおける抗体断片の発現を記載するCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245−254も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中のE.coli細胞ペーストから単離され得、例えば、アイソタイプに応じてタンパク質AまたはGカラムにより精製され得る。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に実施され得る。
【0251】
原核生物に加えて、糸状真菌または酵母などの真核微生物が、抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主である。Saccharomyces cerevisiae、または一般的なパン酵母が、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用されているものである。しかしながら、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces宿主、例えば、K.lactis、K.fragilis(ATCC 12,424)、K.bulgaricus(ATCC 16,045)、K.wickeramii(ATCC 24,178)、K.waltii(ATCC 56,500)、K.drosophilarum(ATCC 36,906)、K.thermotolerans、及びK.marxianusなど、yarrowia(EP 402,226)、Pichia pastoris(EP 183,070)、Candida、Trichoderma reesia(EP 244,234)、Neurospora crassa、Schwanniomyces occidentalisなどのSchwanniomyces、ならびに糸状真菌、例えば、Neurospora、Penicillium、Tolypocladium、及びAspergillus宿主、例えば、A.nidulans及びA.nigerなどのいくつかの他の属、種、及び菌株が本明細書において一般的に利用可能であり、有用である。治療タンパク質の産生のための酵母及び糸状真菌の使用を考察している概説に関しては、例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409−1414(2004)を参照されたい。
【0252】
グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、ある特定の真菌及び酵母菌株が選択され得る。例えば、Li et al.Nat.Biotech.24:210−215(2006)(Pichia pastorisにおけるグリコシル化経路のヒト化を記載している)、及びGerngross et al.(上記参照)を参照されたい。
【0253】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス菌株及び変異型、ならびにSpodoptera frugiperda(イモムシ)、Aedes aegypti(蚊)、Aedes albopictus(蚊)、Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)、及びBombyx moriなどの宿主由来の対応する許容昆虫宿主細胞が識別されている。トランスフェクションのための多様なウイルス菌株、例えば、Autographa californica NPVのL−1変異型及びBombyx mori NPVのBm−5菌株が公的に利用可能であり、かかるウイルスは、特にSpodoptera frugiperda細胞のトランスフェクションのために、本発明による本明細書におけるウイルスとして使用され得る。
【0254】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、ウキクサ(Leninaceae)、ムラサキウマゴヤシ(M.truncatula)、及びタバコの植物細胞培養物も宿主として利用され得る。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物における抗体の産生のためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。
【0255】
脊椎動物細胞は、宿主として使用され得、培養物中での脊椎動物細胞の繁殖(組織培養物)は、日常的な手順になっている。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40 によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(293、または懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた 293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243−251(1980))、サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44−68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞、及びヒト肝臓癌株(Hep G2)である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFR
− CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、ならびにNS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適なある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255−268(2003)を参照されたい。
【0256】
宿主細胞は、抗体産生のために上述の発現またはクローニングベクターで形質転換され、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードする遺伝子の増幅に適切なものとして修飾された従来の栄養素培地中で培養される。
【0257】
(h)宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために使用される宿主細胞は、多様な培地中で培養され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、及びダルベッコ修飾イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販される培地は、宿主細胞を培養するのに好適である。加えて、Ham et al.,Enz.58:44(1979)、Barnes et al.,Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、もしくは同第5,122,469号、WO90/03430、WO87/00195、または米国再発行特許第30,985号に記載される培地のいずれも、宿主細胞のための培養培地として使用され得る。これらの培地のいずれにも、必要に応じて、ホルモン及び/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量要素(マイクロモルの範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物と定義される)、及びグルコースまたは同等のエネルギー源が補充され得る。任意の他の必要な補充物も、当業者には既知であろう適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と共にこれまでに使用されているものであり、当業者には明らかであろう。
【0258】
(xiv)抗体の精製
組換え技法を使用するとき、抗体は、細胞内、細胞膜周辺腔内で産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。抗体が細胞内で産生される場合、第1のステップとして、微粒子残屑(宿主細胞または溶解断片のいずれか)が、例えば、遠心分離または限外濾過により除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)は、E.coliの細胞膜周辺腔に分泌される抗体を単離するための手順を記載する。簡潔には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分にわたって解凍される。細胞残屑は、遠心分離により除去され得る。抗体が培地に分泌される場合、かかる発現系の上清は一般に、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、まず濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために前述のステップのうちのいずれかに含まれ得、抗生物質は、外来性汚染物質の成長を阻止するために含まれ得る。
【0259】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製され得、親和性クロマトグラフィーが典型的に好ましい精製ステップのうちの1つである。親和性リガンドとしてのタンパク質Aの好適性は、抗体内に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに応じる。タンパク質Aは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用され得る(Lindmark et al.,J.Immunol.Meth.62:1−13(1983))。タンパク質Gは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に対して推奨される(Guss et al.,EMBO J.5:15671575(1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定したマトリックスは、アガロースで達成され得るものよりも速い流速、及び短い処理時間を可能にする。抗体がC
H3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker,Phillipsburg,N.J.)が精製に有用である。イオン交換カラム上での分画、エタノール沈降、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー上でのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈降などのタンパク質精製のための他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
【0260】
一般に、研究、試験、及び臨床で使用するための抗体を調製するための様々な方法論が当該技術分野で十分に確立されており、上述の方法論と一致しており、かつ/または当業者により目的とする特定の抗体に適切であると見なされる。
【0261】
(xv)生物学的に活性な抗体の選択
上述のように産生された抗体は、治療的観点から有益な特性を有する抗体を選択するか、または抗体の生物活性を保持する製剤及び条件を選択するために、1つ以上の「生物学的活性」アッセイにかけられ得る。抗体は、それが産生される対象の抗原と結合するその能力について試験され得る。例えば、当該技術分野で既知の方法(例えば、ELISA、ウエスタンブロットなど)が使用され得る。
【0262】
例えば、抗PD−L1抗体の場合、抗体の抗原結合特性は、PD−L1に結合する能力を検出するアッセイで評価され得る。いくつかの実施形態では、抗体の結合性は、例えば、飽和結合、ELISA、及び/または競合アッセイ(例えばRIA)によって決定され得る。抗体は、例えば、治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイにもかけられ得る。かかるアッセイは、当該技術分野で既知であり、抗体の標的抗原及び意図される使用に応じる。例えば、抗体によるPD−L1遮断の生物学的効果は、CD8+T細胞、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)マウスモデル、及び/または例えば、米国特許第8,217,149号に記載されるような同系腫瘍モデルにおいて評価され得る。
【0263】
目的とする抗原上の特定のエピトープに結合する抗体(例えば、例示的な抗PD−L1抗体の、PD−L1への結合を遮断するもの)に関してスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されるものなどの通常の交差遮断アッセイが行われ得る。代替として、エピトープマッピング、例えば、Champe et al.,J.Biol.Chem.270:1388−1394(1995)に記載されるようなエピトープマッピングが、抗体が目的とするエピトープと結合するかどうかを決定するために行われ得る。
【0264】
IV.薬学的組成物及び製剤
PD−1軸結合アンタゴニスト及び/または本明細書に記載の抗体(抗PD−L1抗体など)と、任意に、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物及び製剤も本明細書に提供される。本発明は、タキサン、例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、またはドセタキセルを含む薬学的組成物及び製剤も提供する。
【0265】
本明細書に記載の薬学的組成物及び製剤は、所望の純度を有する活性成分(例えば、PD−1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサン)を1つ以上の任意の薬学的に許容される担体(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され得る。薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤、アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、もしくはベンジルアルコール、メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、及びm−クレゾールなど)、低分子量(約10残基未満)のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸、単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物、EDTAなどのキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖類、ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体)、ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)、例えば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)などのヒト可溶性PH−20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質などの介在性(insterstitial)薬物分散剤をさらに含む。rHuPH20を含むある特定の例示的なsHASEGP及び使用方法は、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968号に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの1つ以上のさらなるグリコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0266】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されるものを含み、後者の製剤は、ヒスチジン−アセテート緩衝剤を含む。
【0267】
本明細書の組成物及び製剤は、治療されている特定の適応症に対して必要に応じて1つを超える活性成分、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性成分も含有してもよい。かかる活性成分は、好適には、意図される目的に有効な量で、組み合わせで存在する。
【0268】
活性成分は、例えば、コアセルベーション技法または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、またはマクロエマルジョン中に封入され得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0269】
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好適な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。インビボ投与に使用される製剤は、一般に、滅菌のものである。滅菌性は、例えば、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成され得る。
【0270】
IV.治療方法
個体に、有効量のPD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))またはパクリタキセル)を投与することを含む、個体における局所進行性または転移性乳癌(例えば、mTNBC)の治療方法またはその進行の遅延方法が、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、この治療は、治療後に個体における応答をもたらす。いくつかの実施形態では、応答は部分奏功である。いくつかの実施形態では、応答は、完全奏功である。いくつかの実施形態では、治療は、治療の中止後に個体における持続的応答(例えば、持続的部分奏功または完全奏功)をもたらす。本明細書に記載の方法は、癌の治療のための腫瘍免疫原性の増加などの免疫原性の増強が所望される病態の治療における使用を見出し得る。個体に、有効量のPD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))を投与することを含む、局所進行性または転移性乳癌を有する個体における免疫機能の増強方法も、本明細書において提供される。当該技術分野で既知のまたは本明細書に記載のPD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンのうちのいずれかが、本方法において使用され得る。
【0271】
いくつかの例では、本明細書に提供される方法は、PD−1結合アンタゴニスト、PD−L1結合アンタゴニスト、及びPD−L2結合アンタゴニストからなる群から選択される有効量のPD−1軸結合アンタゴニストの投与を含む。いくつかの例では、PD−L1結合アンタゴニストは、抗体、例えば、PD−L1のPD−1及びB7.1への結合を阻害することができるが、PD−1のPD−L2への結合を妨害しない抗体などである。いくつかの例では、PD−L1結合アンタゴニスト抗体は、MPDL3280Aであり、これは、2週間毎に約700mg〜約900mg(例えば、2週間毎に約750mg〜約900mg、例えば、2週間毎に約800mg〜約850mg)の用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、MPDL3280Aは、2週間毎に約840mgの用量で投与される。
【0272】
一般的な提案として、ヒトに投与され得るPD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)の治療有効量は、1回以上の投与によるかどうかにかかわらず、患者の体重の約0.01〜約50mg/kgである。いくつかの実施形態では、例えば、アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、約0.01〜約45mg/kg、約0.01〜約40mg/kg、約0.01〜約35mg/kg、約0.01〜約30mg/kg、約0.01〜約25mg/kg、約0.01〜約20mg/kg、約0.01〜約15mg/kg、約0.01〜約10mg/kg、約0.01〜約5mg/kg、または約0.01〜約1mg/kgの用量で投与され、例えば、毎日投与される。いくつかの実施形態では、アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投与量レジメンも有用であり得る。一実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、または約1500mgの用量でヒトに投与される。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、2週間毎に約800mg〜約850mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)は、2週間毎に約840mgの用量で投与される。用量は、注入物などの、単回用量で、または複数回用量(例えば、2回用量または3回用量)で投与されてもよい。併用治療において投与される抗体の用量は、単剤治療と比較して低減し得る。いくつかの実施形態では、例えば、個体における局所進行性または転移性乳癌の治療方法またはその進行の遅延方法は、治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、この個体は、各サイクルの1及び15日目に約840mgの用量でヒトPD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)を投与され、各サイクルは28日である(すなわち、各サイクルは28日毎に繰り返される)。この療法の進展は、従来の技法によって容易に監視される。
【0273】
いくつかの例では、本明細書に提供される方法は、有効量のタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))、パクリタキセル、またはドセタキセル)を投与することを含む。いくつかの例では、タキサンは、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))である。いくつかの例では、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、約100mg/m
2〜約125mg/m
2の用量で個体に投与される。いくつかの例では、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、約100mg/m
2の用量で個体に投与される。一般的な提案として、ヒトに投与されるタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))の治療有効量は、1回以上の投与によるかどうかにかかわらず、約25〜約300mg/m
2(例えば、約25mg/m
2、約50mg/m
2、約75mg/m
2、約100mg/m
2、約125mg/m
2、約150mg/m
2、約175mg/m
2、約200mg/m
2、約225mg/m
2、約250mg/m
2、約275mg/m
2、または約300mg/m
2)の範囲である。例えば、いくつかの実施形態では、約100mg/m
2 のnab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))が投与される。いくつかの実施形態では、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、週に1回、100mg/m
2で投与される。いくつかの実施形態では、約125mg/m
2のパクリタキセルが投与される。いくつかの実施形態では、パクリタキセルは、3週間毎に200mg/m
2で投与される。いくつかの実施形態では、タキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、毎週、2週間毎、3週間毎、4週間毎、各21日サイクルの1、8、及び15日目、または各28日サイクルの1、8、及び15日目に投与され得る。
【0274】
いくつかの例では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、単回投薬レジメンで投与される。これらの薬剤の投与は、投薬レジメンの関連の中で同時または別個であってもよい。例えば、いくつかの例では、本明細書に提供される方法は、治療サイクルを含む投薬レジメンを含み、この個体は、各サイクルの1及び15日目に約840mgの用量でヒトPD−1軸結合アンタゴニスト、そして各サイクルの1、8、及び15日目に約100mg/m
2の用量でタキサンを投与され、各サイクルが28日毎に繰り返される。
【0275】
いくつかの実施形態では、本方法は、有効量の化学療法剤を投与することをさらに含む。いくつかの例では、化学療法剤は、カルボプラチンなどの白金系化学療法剤である。
【0276】
いくつかの実施形態では、個体はヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、局所進行性または転移性乳癌に罹患している。いくつかの実施形態では、転移性乳癌はmTNBCである。いくつかの実施形態では、個体は、局所進行性または転移性乳癌の細胞傷害性治療レジメンを以前に2回以下受けたことがある。いくつかの実施形態では、個体は、局所進行性または転移性乳癌の標的全身治療を以前に受けたことがない。したがって、ある特定の例では、個体における局所進行性または転移性乳癌(例えば、mTNBC)の治療方法もしくはその進行の遅延方法、または局所進行性もしくは転移性乳癌を有する個体における免疫機能の増強方法が、個体の第1選択治療として機能し得る。
【0277】
いくつかの実施形態では、個体は、PD−1軸結合アンタゴニストとタキサンとの併用治療前に癌療法で治療されている。いくつかの実施形態では、個体は、1つ以上の癌療法に耐性である癌を有する。いくつかの実施形態では、癌療法への耐性は、癌の再発または不応性癌を含む。再発とは、治療後の発症元の部位または新たな部位における癌の再現を指し得る。いくつかの実施形態では、癌療法への耐性は、抗癌療法での治療中の癌の進行を含む。いくつかの実施形態では、癌療法への耐性は、治療に応答しない癌を含む。癌は、治療開始時に耐性を示し得るか、または治療中に耐性を示すようになり得る。いくつかの実施形態では、癌は、早期癌または後期癌である。
【0278】
いくつかの実施形態では、本発明の併用療法は、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンの投与を含む。PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、当該技術分野で既知の任意の好適な様式で投与され得る。例えば、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、連続して(異なる時点で)または同時に(同じ時点で)投与され得る。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニストは、タキサンと別個の組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニストは、タキサンと同じ組成物中に存在する。
【0279】
PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、同じ投与経路によって、または異なる投与経路によって投与され得る。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニストは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内投与される。いくつかの実施形態では、タキサンは、静脈内、筋肉内、皮下、局所、経口、経皮、腹腔内、眼窩内、移植により、吸入により、髄腔内、脳室内、または鼻腔内投与される。有効量のPD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、疾患の予防または治療のために投与され得る。PD−1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンの適切な投薬量は、治療対象の疾患の種類、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンの種類、疾患の重症度及び経過、個体の臨床状態、個体の臨床歴及び治療への応答、ならびに担当医の裁量に基づいて決定され得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、本方法は、追加の療法をさらに含み得る。追加の療法は、放射線療法、手術(例えば、腫瘍摘出手術及び乳房切除)、化学療法、遺伝子療法、DNA療法、ウイルス療法、RNA療法、免疫療法、骨髄移植術、ナノ療法、モノクローナル抗体療法、または前述の組み合わせであり得る。追加の療法は、アジュバント療法またはネオアジュバント療法の形態であり得る。いくつかの実施形態では、追加の療法は、小分子酵素阻害剤または抗転移薬の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/または重症度を軽減するよう意図された薬剤、例えば、制嘔吐剤など)の投与である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、手術である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、放射線療法と手術との組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の療法は、ガンマ照射である。いくつかの実施形態では、追加の療法は、PI3K/AKT/mTOR経路を標的とする療法、HSP90阻害剤、チューブリン阻害剤、アポトーシス阻害剤、及び/または化学予防剤である。追加の療法は、本明細書に記載される化学療法剤のうちの1つ以上であり得る。
【0281】
いくつかの実施形態では、本方法は、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンと共に白金系化学療法剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、白金系化学療法剤はカルボプラチンである。カルボプラチンの投薬量及び投与は、当該技術分野で周知である。カルボプラチンの例示的な投薬量は、6mg/mlの標的曲線下面積(AUC)で投与される。いくつかの実施形態では、カルボプラチンは、3週間毎に静脈内投与される。
【0282】
いくつかの実施形態では、本方法は、臨床的利益、完全奏功、寛解が失われるまで、またはさもなければ担当医の裁量で繰り返され得る4週間(28日)の治療サイクルの関連の中で、3週間、毎週(q1w)125mg/m
2 IVでnab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))と共に、2週間毎(q2w)に800mgでIV投与される抗PD−L1抗体MPDL3280Aを投与することにより、mTNBCに罹患する個体を治療することを含む。
【0283】
V.他の併用療法
別の抗癌剤または癌療法と併せて、個体に、ヒトPD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標)))を投与することを含む、個体における局所進行性または転移性乳癌の治療方法またはその進行の遅延方法も、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、個体に、ヒトPD−1軸結合アンタゴニスト、タキサン、及び追加の療法剤を投与することを含む。
【0284】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、化学療法または化学療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、放射線療法または放射線療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、標的療法または標的療法剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、免疫療法または免疫療法剤、例えば、モノクローナル抗体と併せて投与されてもよい。
【0285】
理論に束縛されることを望むものではないが、活性化共刺激分子を促進することによるか、または陰性共刺激分子を阻害することによるT細胞刺激の増強が、腫瘍細胞死を促進し得、それにより、癌を治療するか、または癌の進行を遅延させると考えられる。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、活性化共刺激分子には、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127が含まれ得る。いくつかの実施形態では、活性化共刺激分子に対して指向されるアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、またはCD127に結合するアゴニスト抗体である。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、阻害性共刺激分子には、CTLA−4(別名、CD152)、PD−1、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3、B7−H3、B7−H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼが含まれ得る。いくつかの実施形態では、阻害性共刺激分子に対して指向されるアンタゴニストは、CTLA−4、PD−1、TIM−3、BTLA、VISTA、LAG−3、B7−H3、B7−H4、IDO、TIGIT、MICA/B、またはアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0286】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、CTLA−4(別名、CD152)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、イピリムマブ(別名、MDX−010、MDX−101、またはYERVOY(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、トレメリムマブ(別名、チシリムマブまたはCP−675,206)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、B7−H3(別名、CD276)に対して指向されるアンタゴニスト、例えば、遮断抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、MGA271と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、TGFベータに対して指向されるアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(別名、CAT−192)、フレソリムマブ(別名、GC1008)、またはLY2157299と併せて投与されてもよい。
【0287】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはCTL)の養子移入を含む治療と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えばドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞の養子移入を含む治療と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、HERCREEMプロトコル(例えば、ClinicalTrials.gov Identifier NCT00889954を参照されたい)を含む治療と併せて投与されてもよい。
【0288】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD137(別名、TNFRSF9、4−1BB、またはILA)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ウレルマブ(別名、BMS−663513)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD40に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CP−870893と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、OX40(別名、CD134)に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗OX40抗体(例えば、AgonOX)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD27に対して指向されるアゴニスト、例えば、活性化抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CDX−1127と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、インドールアミン−2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)に対して指向されるアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、IDOアンタゴニストと共にあるのは、1−メチル−D−トリプトファン(別名、1−D−MT)である。
【0289】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗体−薬物コンジュゲートと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、抗体−薬物コンジュゲートは、メルタンシンまたはモノメチルオーリスタチンE(MMAE)を含む。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗NaPi2b抗体−MMAEコンジュゲート(別名、DNIB0600AまたはRG7599)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、トラスツズマブエムタンシン(別名、T−DM1、アド−トラスツズマブエムタンシン、またはKADCYLA(登録商標)、Genentech)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、DMUC5754Aと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体−薬物コンジュゲート、例えば、MMAEとコンジュゲートされたEDNBRに対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。
【0290】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、血管新生阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、VEGF、例えば、VEGF−Aに対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及びタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))は、ベバシズマブ(別名、AVASTIN(登録商標)、Genentech)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、アンジオポエチン2(別名、Ang2)に対して指向される抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、MEDI3617と併せて投与されてもよい。
【0291】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗腫瘍剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CSF−1R(別名、M−CSFRまたはCD115)を標的とする薬剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、抗CSF−1R(別名、IMC−CS4)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、インターフェロン、例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンガンマと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、Roferon−A(別名、組換えインターフェロンアルファ−2a)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GM−CSF(別名、組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM−CSF、サルグラモスチム、またはLEUKINE(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL−2(別名、アルデスロイキンまたはPROLEUKIN(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL−12と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CD20を標的とする抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、CD20を標的とする抗体は、オビヌツズマブ(別名、GA101もしくはGAZYVA(登録商標))またはリツキシマブである。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GITRを標的とする抗体と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、GITRを標的とする抗体は、TRX518である。
【0292】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、癌ワクチンと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、癌ワクチンは、ペプチド癌ワクチンであり、これは、いくつかの実施形態では、個別化ペプチドワクチンである。いくつかの実施形態では、ペプチド癌ワクチンは、多価長ペプチド、マルチペプチド、ペプチドカクテル、ハイブリッドペプチド、またはペプチドパルス樹状細胞ワクチン(例えば、Yamada et al.,Cancer Sci,104:14−21,2013を参照されたい)である。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、アジュバントと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、TLRアゴニスト、例えば、Poly−ICLC(別名、HILTONOL(登録商標))、LPS、MPL、またはCpG ODNを含む治療と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、腫瘍壊死因子(TNF)アルファと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL−1と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、HMGB1と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL−10アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL−4アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、IL−13アンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、HVEMアンタゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、例えば、ICOS−L、またはICOSに対して指向されるアゴニスト抗体の投与により、ICOSアゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CX3CL1を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CXCL9を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CXCL10を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、CCL5を標的とする治療剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、LFA−1またはICAM1アゴニストと併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、セレクチンアゴニストと併せて投与されてもよい。
【0293】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、標的療法と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、B−Rafの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ベムラフェニブ(別名、ZELBORAF(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ダブラフェニブ(別名、TAFINLAR(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、エルロチニブ(別名、TARCEVA(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、MEK1(別名、MAP2K1)またはMEK2(別名、MAP2K2)などのMEKの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、コビメチニブ(別名、GDC−0973またはXL−518)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、トラメチニブ(別名、MEKINIST(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、K−Rasの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、c−Metの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、オナルツズマブ(別名、MetMAb)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、Alkの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、AF802(別名、CH5424802またはアレクチニブ)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)の阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、BKM120と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、イデラリシブ(別名、GS−1101またはCAL−101)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、ペリホシン(別名、KRX−0401)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、Aktの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニストは、MK2206と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GSK690693と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GDC−0941と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、mTORの阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、シロリムス(別名、ラパマイシン)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、テムシロリムス(別名、CCI−779またはTORISEL(登録商標))と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、エベロリムス(別名、RAD001)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、リダフォロリムス(別名、AP−23573、MK−8669、またはデフォロリムス)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、OSI−027と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、AZD8055と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、INK128と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、二重PI3K/mTOR阻害剤と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、XL765と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GDC−0980と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、BEZ235(別名、NVP−BEZ235)と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、BGT226と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、GSK2126458と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、PF−04691502と併せて投与されてもよい。いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、PF−05212384(別名、PKI−587)と併せて投与されてもよい。
【0294】
VI.製品またはキット
本発明の別の実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗PD−L1抗体、例えば、MPDL3280A)及び/またはタキサン(例えば、nab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))を含む製品またはキットが提供される。いくつかの実施形態では、製品またはキットは、PD−1軸結合アンタゴニストをタキサンと併せて使用して、個体における局所進行性または転移性乳癌を治療するか、もしくはその進行を遅延するか、または局所進行性または転移性乳癌を有する個体の免疫機能を増強する指示を含む添付文書をさらに含む。本明細書に記載のPD−1軸結合アンタゴニスト及び/またはタキサンのうちのいずれかが製品またはキットに含まれ得る。
【0295】
いくつかの実施形態では、PD−1軸結合アンタゴニスト及びタキサンは、同じ容器内または別々の容器内にある。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニルもしくはポリオレフィンなど)、または金属合金(ステンレス鋼もしくはハステロイなど)などの様々な材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、容器は、製剤を保持し、容器上のラベルまたは容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製品またはキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用上の指示を有する添付文書を含む商業的視点及び使用者の視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、製品は、別の薬剤(例えば、化学療法剤及び抗腫瘍剤)のうちの1つ以上をさらに含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。
【0296】
本明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分なものであると見なされる。本明細書に示されて説明される修正に加えて、本発明の様々な修正は、前述の説明から当業者に明らかになり、それらは添付の特許請求の範囲内のものである。
【実施例】
【0297】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより十分に理解される。しかしながら、それらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態が例証のみを目的とするものであり、それを考慮に入れた様々な修正または変更が当業者に提案されるであろうし、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。
【0298】
実施例1:抗PD−L1抗体及びnab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))による併用治療では、転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)を有する患者の第Ib相臨床試験において応答が得られた
転移性トリプルネガティブ乳癌(mTNBC)は予後不良に関連し、高変異率、増加したレベルの腫瘍浸潤リンパ球、及び高PD−L1発現レベルを特徴とする。MPDL3280Aは、PD−L1の、PD−1への結合を阻害することにより、腫瘍特異的T細胞免疫を復元し、mTNBCにおいて単剤療法として立証された持続的応答を有し得るヒト化モノクローナル抗体である。この試験は、mTNBCを有する患者におけるチェックポイント阻害剤と化学療法との最初の併用試験である。
【0299】
方法
この多施設多群第Ib相試験の群は、mTNBCを有する患者における毎週のnab−パクリタキセルと併せてMPDL3280Aを評価した。主要エンドポイントは、安全性及び忍容性であり、第2のエンドポイントは、PK及び臨床活性であった。重要な適格性基準には、測定可能な疾患:Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)パフォーマンスステータスである、0または1、及び2つ以下の以前の細胞傷害性レジメンが含まれた。患者は、4週間のサイクル中3週間の間、毎週(1、8、及び15日目)、125mg/m
2のnab−パクリタキセルと共に、2週間に1回(1及び15日目)、800mgのアテゾリズマブを受け、臨床的利益を失うまで継続した。nab−パクリタキセルが傷害性により中止された場合、MPDL3280Aが単剤療法として継続され得た。ORRは、固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(Response Evaluation Criteria In Solid Tumors)(RECIST)v1.1により評価された。PD−L1発現は、免疫組織化学(IHC)アッセイにおいて、腫瘍細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞上のPD−L1染色に基づいて4つの診断レベルでスコア化された。
【0300】
結果
11人の患者が安全性評価可能であった。全患者は女性であり、年齢中央値は58歳(年齢範囲:32〜75)であった。予想外のまたは用量制限毒性は観察されなかった。安全性フォローアップの期間中央値は、88日(範囲:27〜182日)であった。有効性評価可能な集団は、1回以上の走査及び3ヶ月以上のフォローアップを有した5人の患者からなった。5人の患者のうち4人の患者が部分奏功(PR)を示し、1人の患者が安定(SD)を示した。観察結果は、MPDL3280A及びnab−パクリタキセルの併用がmTNBCを有する患者において安全かつ効果的の両方であることを示す。
【0301】
実施例2:mTNBCを有する患者の第1選択治療としての抗PD−L1抗体及びnab−パクリタキセル(ABRAXANE(登録商標))の併用治療レジメン
代替えとして、MPDL3280A及びnab−パクリタキセルの併用治療レジメンがmTNBCを有する患者の第1選択治療として機能し得る。
【0302】
組織学的に立証された局所進行性または転移性TNBCを有する、進行性TNBCの全身治療を以前に受けたことがない、ECOGパフォーマンスステータスが0または1である、及びRECIST v1.1により測定可能な疾患を有する患者が、1及び15日目にMPDL3280A(840mg)、そして1、8、及び15日目にnab−パクリタキセル(100mg/m
2)を投薬され得る。全ての治療剤は28日サイクルで与えられる。患者は、肝臓転移、以前のタキサン療法、及び主としてIHCにより評価され得る、腫瘍浸潤免疫細胞のPD−L1ステータス(IC0対IC1/2/3)の存在により層別化され得る。MPDL3280Aに対する偽進行及び遅延応答を捉えるために、X線像上の進行を有する患者は、毒性が容認できなくなる、または臨床的利益を失うまで、非盲検MPDL3280Aのみ、またはnab−パクリタキセルを一緒に受け続けてもよい。
【0303】
他の実施形態
前述の発明が明確な理解のために例証及び例によって多少詳しく説明されているが、これらの説明及び例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照によりそれらの全体が明示的に組み込まれる。