特許第6896670号(P6896670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896670放射線量分布表示装置及び放射線量分布表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896670
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】放射線量分布表示装置及び放射線量分布表示方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/16 20060101AFI20210621BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   G01T1/16 A
   G01T1/00 D
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-49270(P2018-49270)
(22)【出願日】2018年3月16日
(65)【公開番号】特開2019-158810(P2019-158810A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴来
(72)【発明者】
【氏名】榎本 光広
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 朋美
(72)【発明者】
【氏名】柏瀬 翔一
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−049148(JP,A)
【文献】 特開2015−175803(JP,A)
【文献】 特開2015−158404(JP,A)
【文献】 特開2015−166708(JP,A)
【文献】 特表2016−539336(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104932001(CN,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1766294(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 −1/16
G01T 1/167−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線量分布を表示する放射線量分布表示装置であって、
周囲の映像を取得する映像取得手段と、
前記映像取得手段により取得された映像を画面に表示する表示手段と、
前記映像取得手段の位置を自己位置として推定する自己位置推定手段と、
前記映像取得手段により取得されて前記表示手段の前記画面に表示された映像中の床面を認識する床面認識手段と、
前記表示手段の前記画面に表示された映像中で前記床面認識手段により認識された床面に、予め取得され且つ前記自己位置に対応した放射線量分布マップを重ね合わせて表示する線量分布マップ重ね合わせ手段と、を有することを特徴とする放射線量分布表示装置。
【請求項2】
前記自己位置推定手段は、基準位置情報を提示する基準位置提示手段からの前記基準位置情報と、周囲の物体との距離を測定する距離測定手段からの前記距離とに基づいて、自己位置を推定するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項3】
前記自己位置推定手段は、位置情報を持って配置された基地局と無線通信することで、自己位置を推定するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項4】
前記床面認識手段は、自己位置推定手段により推定された自己位置と、周囲の物体との距離を測定する距離測定手段からの前記距離と、映像取得手段の撮影方位を検出する方位検出手段からの前記撮影方位と、基準位置提示手段の床面からの高さ情報とに基づいて、前記映像取得手段により取得されて表示手段の画面に表示された映像中の床面を認識するよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項5】
前記基準位置提示手段の床面からの高さ情報は、前記基準位置提示手段が提示する基準位置情報が有するよう構成されたことを特徴とする請求項4に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項6】
前記床面認識手段は、映像取得手段により取得されて表示手段の画面に表示された映像中の床面が前記画面上で選択されたときに、その選択された位置を床面として認識するよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項7】
前記線量分布マップ重ね合わせ手段にて表示された映像に、注意喚起を含む標識を仮想的に表示させる仮想表示手段を、更に有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項8】
前記映像取得手段の周囲の放射線量を計測する放射線計測手段を更に有し、前記放射線計測手段により計測された放射線量が放射線量分布マップに反映されて、この放射線量分布マップが更新されるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至いずれか1項に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項9】
前記仮想表示手段は、映像取得手段の周囲の放射線量を計測する放射線計測手段により計測された前記放射線量を仮想的に表示するよう構成されたことを特徴とする請求項に記載の放射線量分布表示装置。
【請求項10】
放射線量分布を表示する放射線量分布表示方法であって、
周囲の映像を取得する映像取得手段、及び前記映像取得手段により取得された映像を画面に表示する表示手段を備えた表示装置を用意する工程と、
前記映像取得手段の位置を自己位置として推定する工程と、
前記映像取得手段により取得されて前記表示手段の前記画面に表示された映像中の床面を認識する工程と、
前記表示手段の前記画面に表示された映像中で認識された床面に、予め取得され且つ前記自己位置に対応した放射線量分布マップを重ね合わせて表示する工程と、を有することを特徴とする放射線量分布表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、映像取得手段により取得されて表示手段の画面に表示された映像中に、放射線量分布マップを表示する放射線量分布表示装置及び放射線量分布表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等の放射線管理区域においては、被ばく低減の観点から作業エリアの放射線量の計測が行われ、放射線量の高い場所に関する情報が提供されている。決められたポイントでの放射線量の測定のほか、ガンマカメラ等による放射線量分布の計測も採用されている。そのほか、線量計による計測値と位置情報とを組み合わせて、放射線分布を作成する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−49148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術により現場の放射線量の分布状況をマップ化することによって、放射線量の分布、特に放射線量が高い場所を確認できる。しかしながら、作業員は、紙に印刷された放射線量分布マップ、あるいはタブレット等の画面に表示された放射線量分布マップと照らし合わせて、自己の周囲の放射線量分布を把握する必要があり、自分の位置を正しく把握していないと、自己の周囲の放射線量分布を正確に把握することが難しいという課題がある。特許文献1では、複数のマーカーを用いて作業者の位置を推定し、撮影された領域の放射線分布を提供できるようにするものであるが、撮影された領域の放射線量を把握できるのみであり、あるエリアにいる場合の周辺から受ける放射線の強度を把握できるものではない。
【0005】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、作業員の周囲の放射線量分布を正確に把握できる放射線量分布表示装置及び放射線量分布表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態における放射線量分布表示装置は、放射線量分布を表示する放射線量分布表示装置であって、周囲の映像を取得する映像取得手段と、前記映像取得手段により取得された映像を画面に表示する表示手段と、前記映像取得手段の位置を自己位置として推定する自己位置推定手段と、前記映像取得手段により取得されて前記表示手段の前記画面に表示された映像中の床面を認識する床面認識手段と、前記表示手段の前記画面に表示された映像中で前記床面認識手段により認識された床面に、予め取得され且つ前記自己位置に対応した放射線量分布マップを重ね合わせて表示する線量分布マップ重ね合わせ手段と、を有することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の実施形態における放射線量分布表示方法は、放射線量分布を表示する放射線量分布表示方法であって、周囲の映像を取得する映像取得手段、及び前記映像取得手段により取得された映像を画面に表示する表示手段を備えた表示装置を用意する工程と、前記映像取得手段の位置を自己位置として推定する工程と、前記映像取得手段により取得されて前記表示手段の前記画面に表示された映像中の床面を認識する工程と、前記表示手段の前記画面に表示された映像中で認識された床面に、予め取得され且つ前記自己位置に対応した放射線量分布マップを重ね合わせて表示する工程と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、作業員の周囲の放射線量分布を正確に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における放射線量分布表示装置の構成を示すブロック図。
図2図1の端末とDB(データベース)との通信状況を説明する説明図。
図3】建屋の部屋に設置されたマーカーと端末との関係を説明する概略側面図。
図4図1の床面認識手段による床面認識を説明する図であり、(A)は、映像取得手段により取得されて表示手段の画面に表示された映像図、(B)は、端末との距離が測定される、図4(A)の映像の範囲にある物体の各点を明示した映像図、(C)は、図4(A)の映像中で認識された床面をハッチングで表示した映像図。
図5】端末が存在する建屋の部屋の床面に放射線量分布マップを、仮想的に重ね合わせて位置決めする状況を説明する説明図。
図6図5で位置決めした放射線量分布マップを、図4(C)の映像中の床面に拡張現実の手法で重ね合わせて表示させた表示手段の画面上の映像図。
図7図6の映像図にARタグを拡張現実の手法で表示させた映像図。
図8図1の距離測定手段が測定した距離情報に基づいて、マーカーの床面からの高さを求める例を示す概略側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態における放射線量分布表示装置の構成を示すブロック図である。この図1及び図2に示す放射線量分布表示装置10は、作業員が建屋内で所持する端末11と、建屋の部屋1(図3)の例えば壁2に設置された基準位置提示手段としてのマーカー12と、端末11と通信回線(例えば無線通信回線)によりデータ通信するサーバー13と、放射線量分布マップ等を格納しサーバー13に接続されたDB(データベース)14と、を有して構成される。通信回線がない場合は、放射線量分布マップ等は、放射線分布表示装置10の端末11内に格納することもある。そして、この放射線量分布表示装置10は、端末11を所持した作業員の周囲の放射線量分布マップを、端末11の画像取得手段20(後述)が撮影した映像中に仮想的に表示するものである。
【0011】
図1及び図3に示す基準位置提示手段としてのマーカー12は例えばQRコードであり、このマーカー12が端末11の画像取得手段20により撮影されることで、マーカー12が有する基準位置情報が端末11に提示される。具体的には、マーカー12は、このマーカー12が壁2に設置された建屋の部屋1における絶対座標系の3次元空間の起点となる基準位置の情報を提示する。この基準位置情報に基づいて、後述の如く、端末11の自己位置推定手段24が端末11の自己位置を推定することが可能になる。また、本実施形態のマーカー12が提示する基準位置情報は、建屋の部屋1の床面3からの高さHの情報を有する。
【0012】
図1及び図2に示すDB14には、建屋の部屋1の位置及び部屋の床面3などに関する建屋位置情報と、放射線量分布マップ15(図5)が格納されている。この放射線量分布マップ15は、作業員がある位置にいるときに周囲から受ける放射線量の強度分布を2次元表示するものであり、2次元平面座標と各座標における予め計測された放射線量のデータとに基づいて作成されている。図5の放射線量分布マップ15では、放射線量の高い領域Pが濃い色で、放射線量の低い領域Qが薄い色でそれぞれ表示されている。この放射線量分布マップ15の表示態様は、3段階以上の諧調で表示されてもよい。
【0013】
また、放射線量分布マップ15は、建屋における各部屋1の床面3に関するエリア情報を有することで、作業員が存在する部屋1の床面3に応じた放射線量分布マップ15を提供することが可能になる。更に、放射線量分布マップ15には、上述のエリア情報に加えて、建屋の各部屋1の平面視におけるマーカー12の位置に対応して位置情報(例えばマップマーカー16(図5))が付与されている。これにより、建屋の部屋1の平面視におけるマーカー12と放射線量分布マップ15のマップマーカー16のそれぞれの位置を一致させることで、後述の如く、部屋1の床面3の全てまたは一部に放射線量分布マップ15を仮想的に重ね合わせて位置決めすることが可能になる。
【0014】
さて、作業員が建屋内で所持する端末11は、図1に示すように、映像取得手段20、表示手段21、距離測定手段22、方位検出手段23、自己位置推定手段24、床面認識手段25、画像操作手段33、線量分布マップ重ね合わせ手段26、仮想表示手段27及び放射線計測手段28を有して構成される。この端末11は、タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末のほか、スマートグラス等のウェアラブル端末(デバイス)などの機器が好ましい。
【0015】
映像取得手段20は、端末11の周囲の映像をリアルタイムで取得するものであり、例えばビデオカメラ等である。表示手段21は、映像取得手段20により取得された映像30を画面29(共に図4)に表示するものであり、例えば液晶ディスプレイ装置である。
【0016】
距離測定手段22は、端末11の周囲の物体との距離L(図3)を測定するものであり、例えば赤外線やレーザー光を用いた距離センサである。この距離測定手段22は、表示手段21の画面29に表示された映像30の範囲にある物体の各点4(図3図4(B))と端末11との距離を、3次元座標で測定して取得する。方位検出手段23は、映像取得手段20の撮影方位、即ち端末11の傾きθ(図3)を検出するものであり、例えば3軸の加速度計やジャイロセンサ等である。
【0017】
自己位置推定手段24は、図1及び図3に示すように、映像取得手段20を備えた端末11の位置を自己位置として推定するものである。つまり、自己位置推定手段24は、図3に示すように、まず、マーカー12が提示する基準位置情報を、映像取得手段20がマーカー12を撮影した映像から取得して、端末11が存在する建屋の部屋1における3次元空間(絶対座標系)の基準位置を把握する。
【0018】
次に、自己位置推定手段24は、端末11の周囲の物体と端末11との距離Lを、距離測定手段22の測定値から取得する。即ち、自己位置推定手段24は、図4(A)に示すように、映像30中の範囲にあるすべての物体の各点4(図4(B))と端末11との距離Lを、距離測定手段22の測定値から取得する。基準位置を把握した後に端末11が移動あるは方位を変更した場合、自己位置推定主担24は、直前に取得したすべての物体の各点4の距離の変化に基づいて、基準位置からの移動量や方位の変化量を算出する。この処理を繰り返すことで作業者が移動した場合も、上述の如く取得した基準位置情報と周囲の物体との距離Lとに基づいて、自己位置推定手段24は、端末11の位置である自己位置を推定する。
【0019】
この自己位置推定手段24の算出処理は、周囲との3次元的な距離情報に基づく3次元空間作成と自己位置推定を同時に行う推定手法であるSimultaneous Localization and Mapping(SLAM)であり、周囲の構造物の配置や寸法情報を予め把握する必要がない。
【0020】
床面認識手段25は、図1図3及び図4に示すように、映像取得手段20により取得されて表示手段21の画面29に表示された映像30中の床面31を認識するものである。つまり、床面認識手段25は、まず、マーカー12が提示する基準位置情報を、映像取得手段20がマーカー12を撮影することで取得する。これにより、床面認識手段25は、基準位置情報が有する実際の床面3からマーカー12までの高さHの情報を取得する。次に、床面認識手段25は、端末11の現在の自己位置を自己位置推定手段24から取得する。
【0021】
次に、床面認識手段25は、端末11の現在の位置(自己位置)において、表示手段21の画面29に表示された映像30の範囲にある全ての物体の各点4(図3図4(B))と端末11との距離L(図3)を、距離測定手段22の測定値から取得する。更に、床面認識手段25は、距離測定手段22が距離Lを測定したときの端末11の傾きθ(図3)を、方位検出手段23の検出値から取得する。
【0022】
床面認識手段25は、実際の床面3からのマーカー12の高さHを基準とした現在の端末11の位置において、距離測定手段22が測定した端末11から物体の点4までの距離Lと、方位検出手段23が検出した端末11の傾きθとから、距離測定手段22が測定した物体の点4の位置(高さ)を算出する。そして、床面認識手段25は、この点4の位置が実際の床面3の位置と一致していると判断したときに、この点4と同様な点群が表示手段21の画面29上の画像30中に表示された領域を、床面31として認識する。図4(C)では、床面認識手段25が床面31と認識した領域をハッチングで表示している。
【0023】
なお、床面認識手段25は、映像取得手段25により取得されて表示手段21の画面29に表示された映像30中の床面31が、端末11を所持する作業員により画面29上でタッチされて選択されたときに、その選択位置が画像操作手段33(図1)により床面認識手段25へ出力されることで、その選択された位置を画面29上の画像30中で床面31として認識してもよい。ここで、画像操作手段33は、例えばタッチパッド等の位置入力装置である。
【0024】
図1に示す線量分布マップ重ね合わせ手段26は、表示手段21の画面29に表示された映像30中で床面認識手段25により認識された床面31に、予め取得され且つ端末11の自己位置に対応した放射線量分布マップ15を、拡張現実(AR;Augmented Reality)の手法で重ね合わせて表示するものである。
【0025】
つまり、線量分布マップ重ね合わせ手段26は、放射線量分布マップ15が有するエリア情報と、自己位置推定手段24が推定した端末11の自己位置とに基づいて、端末11を所持した作業員が存在する建屋の部屋1の床面3に応じた放射線量分布マップ15を、DB14から選択する。次に、線量分布マップ重ね合わせ手段26は、図5に示すように、建屋の部屋1の平面視におけるマーカー12の位置に対応して放射線量分布マップ15に付与されたマップマーカー16を、端末11を所持した作業員が存在する部屋1の平面視におけるマーカー12に一致させるようにして、上述の如く選択された放射線量分布マップ15を、作業員(端末11)が存在する部屋1の床面3の全てまたは一部に仮想的に重ね合わせて位置決めする。
【0026】
その後、線量分布マップ重ね合わせ手段26は、図6に示すように、上述のようにして部屋1の床面3に位置決めされた放射線量分布マップ15を、表示手段21の画面29に表示された映像30中の床面31に、拡張現実の手法で重ね合わせて表示する。このとき、部屋1の床面3よりも手前(端末11側)に構造物5(図3)が存在する場合には、距離測定手段22から取得した構造物5と端末11との距離情報に基づいて、この構造物5の映像に放射線量分布マップ15を表示しないようにして、作業員による視覚上の違和感を無くすことも可能である。
【0027】
図1に示す仮想表示手段27は、表示手段21の画面29に表示された映像30に放射線量分布マップ15が仮想的に表示された場合、図7に示すように、この放射線量分布マップ15における放射線量に関する標識としてのARタグ34を、拡張現実の手法により仮想的に表示するものである。このARタグ34は、放射線量が高いことを示す注意喚起の表示や、放射線量の数値表示などである。
【0028】
図1に示す放射線計測手段28は、映像取得手段20等を備えた端末11の周囲の放射線量を、リアルタイムまたは所定のタイミングで計測するものである。この放射線計測手段28にて計測された放射線量は、DB14に格納された放射線量分布マップ15に反映される。つまり、放射線計測手段28にて計測された放射線量は、図1及び図2に示すように無線通信回線でサーバー13に送信される。このサーバー13はデータ更新手段35を備え、このデータ更新手段35が、DB14内の放射線量分布マップ15における放射線量のデータを、放射線計測手段28が計測した値に更新する。
【0029】
更に、放射線計測手段28にて計測された放射線量は、仮想表示手段27によってARタグ34に、またはこのARタグ34とは異なる画面29上の位置に拡張現実の手法で表示されてもよい。
【0030】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)図1及び図6に示すように、放射線量分布表示装置10の端末11は、周囲の映像を取得する映像取得手段20と、この映像取得手段20により取得された映像を画面29に表示する表示手段21と、線量分布マップ重ね合わせ手段26とを備える。この線量分布マップ重ね合わせ手段26は、映像取得手段20により取得されて表示手段21の画面29に表示された映像30中の床面31に、端末11の位置(自己位置)に対応した放射線量分布マップ15を、拡張現実の手法で重ね合わせて表示する。この結果、映像取得手段20を用いて映像30を取得した作業員は周囲、特に端末11の映像取得手段20を向けた方向の周囲の放射線量分布を正確に把握することができる。
【0031】
(2)表示手段21の画面29に表示された映像30の床面31に、線量分布マップ重ね合わせ手段26により放射線量分布マップ15が仮想的に表示されることに加え、この放射線量分布マップ15が表示された映像30に、仮想表示手段27は放射線量に関する情報、例えば放射線量が高いため注意を喚起するARタグ34を拡張現実の手法で表示する。このARタグ34の表示によって、作業員の被爆低減に寄与することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0033】
例えば、自己位置推定手段24は、端末11の周囲の物体との距離情報と、マーカー12が提示する基準位置情報とに基づいて、端末11の自己位置を推定する場合に限らず、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)やビーコン等を利用して、端末11の自己位置を推定してもよい。つまり、自己位置推定手段24は、位置情報を持って配置された基地局や衛星と無線通信することで、端末11の位置(自己位置)を推定してもよい。
【0034】
また、床面認識手段25が表示手段21の画面29に表示された映像30中の床面31を認識する際に基準とする、実際の床面3からマーカー12までの高さHは、マーカー12が基準位置情報として有している場合に限らず、距離測定手段22による測定値に基づいて算出されてもよい。
【0035】
つまり、床面認識手段25は、図8に示すように、距離測定手段22により測定された端末11とマーカー12間の距離と、この距離測定時に方位検出手段23により検出された端末11の傾きとから、端末11とマーカー12間の高さH1を求める。次に、床面認識手段25は、距離測定手段22により測定された実際の床面3上の任意の点4と端末11間の距離と、この距離測定時に方位検出手段23により検出された端末11の傾きとから、実際の床面3上の任意の点4と端末11間の高さH2を求める。その後、床面認識手段25は、上述のようにして求めた端末11とマーカー12間の高さH1と、実際の床面3上の任意の点4と端末11間の高さH2とを加算して、実際の床面3からマーカー12までの高さHを算出してもよい。
【符号の説明】
【0036】
3…実際の床面、10…放射線量分布表示装置、11…端末、12…マーカー(基準位置提示手段)、14…DB、15…放射線量分布マップ、20…映像取得手段、21…表示手段、22…距離測定手段、23…方位検出手段、24…自己位置推定手段、25…床面認識手段、26…線量分布マップ重ね合わせ手段、27…仮想表示手段、28…放射線計測手段、29…表示手段の画面、30…映像、31…映像中の床面、33…画像操作手段、34…ARタグ(標識)、35…データ更新手段、H…マーカーの床面からの高さ、L…端末と周囲の物体との距離、θ…傾き(撮影方位)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8