特許第6896687号(P6896687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896687
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】接続部の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 51/16 20060101AFI20210621BHJP
   F16L 23/08 20060101ALI20210621BHJP
   F16L 23/032 20060101ALI20210621BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20210621BHJP
   B21D 19/12 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B21D51/16 A
   F16L23/08
   F16L23/032
   B21D19/08 D
   B21D19/08 C
   B21D19/08 F
   B21D19/12 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-182047(P2018-182047)
(22)【出願日】2018年9月27日
(65)【公開番号】特開2020-49520(P2020-49520A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100805
【氏名又は名称】アイシン高丘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】小島 徹
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−147987(JP,A)
【文献】 特開平10−094846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0067950(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0191465(US,A1)
【文献】 米国特許第03455582(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0367394(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201359140(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 51/16
B21D 19/08
B21D 19/12
F16L 23/032
F16L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筒部と第2筒部とが内部で連通して流通路が形成されるように配置され、前記第1筒部側に設けられた第1フランジ部と前記第2筒部側に設けられた第2フランジ部とがクランプによって挟み込まれることにより、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とが接続される接続構造に適用され、前記第1フランジ部又は前記第2フランジ部の少なくとも一方を含む接続部の製造方法であって、
平板状の板材を環状に打ち抜いて、継ぎ目のない環状板材を形成するブランク工程と、
前記ブランク工程において打ち抜かれた環状板材を、バーリングにより、環状板部とその内周から立ち上がる立ち上がり筒部とからなるように成形するバーリング工程と、
前記環状板部の内周側を残して当該環状板部の外周側を前記内周側へ向けて折り畳むことにより、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との接続時に前記クランプが当接する折り返し部が環状に形成されたフランジを形成するフランジ形成工程と、
を備え
前記フランジ形成工程では、前記環状板部の前記外周側を前記立ち上がり筒部の突出側へ折り畳むことを特徴とする接続部の製造方法。
【請求項2】
前記フランジ形成工程では、前記環状板部の前記外周側を前記内周側へ向けて複数回折り畳む、請求項1に記載の接続部の製造方法。
【請求項3】
前記第1筒部又は前記第2筒部の外周径よりも、前記立ち上がり筒部の内周径が大きくなるように形成され、
前記第1筒部又は前記第2筒部を前記立ち上がり筒部に挿入した状態で、前記第1筒部又は前記第2筒部と前記立ち上がり筒部とが固定される、請求項1又は請求項2に記載の接続部の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フランジ部を有する接続部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両等の内燃機関に適用されるターボチャージャと触媒コンバータとの接続構造において、ターボチャージャのタービンハウジングと、触媒コンバータの上流側に配置される上流管部とをクランプにより接続するものが知られている。かかる接続構造では、タービンハウジングの接続端側に形成されたフランジ部と、上流管部の接続端側に形成されたフランジ部とを重ね合わせ、これらをクランプにより挟み込むことで、両者を接続するように構成されている。
【0003】
上記接続構造では、ターボチャージャから排出される高温の排気が上流管部を通じて触媒コンバータに導入されるため、その排気がタービンハウジングと上流管部との境界部から漏れ出すことを回避すべく、フランジ部同士の重ね合わせ面(接続面)において高いシール性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−63820号公報
【特許文献2】特開2017−74614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、触媒コンバータの上流管部は鋳造により形成されることが一般的であったところ、本発明者は、その軽量化を図るべく、金属製パイプの端部を折り曲げてフランジ部を形成することで、上流管部を作成することを考えた。なお、クランプ締結による接続構造ではないが、金属製パイプの端部を折り曲げてフランジ部を形成するものとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されたものがある。
【0006】
しかしながら、金属製パイプを用いて接続用のフランジ部を形成した場合、次のような問題がある。先ず、金属製パイプとして一般的な溶接造管のパイプでは、金属平板の両端面を当接させるように上記平板を筒状に丸めたり、半筒状を有する一対の金属材を対向状態で突き合わせたりした後、その合わせ目を溶接により接合することで、パイプが作成される。このようなパイプにおいてその長さ方向の端部を折り曲げてフランジ部を形成すると、溶接による段差や膨らみがフランジ表面に生じるため、接続面の平面度が低下し、シール性が悪化するおそれがある。
【0007】
その対応策としては、引き抜き鋼等のシームレスパイプ(継ぎ目がないパイプ)を用いることが考えられる。ところが、このようなパイプは高価であり、製造コストの増大を招く懸念がある。
【0008】
以上の問題は、タービンハウジングと上流管部とを接続する接続構造に限らず、内部で連通して流通路を形成する2つの部材を、フランジ部のクランプ締結により接続する構成であれば、同様に生じ得る。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造コストの増大を抑制しつつ、高いシール性を確保することが可能な接続部の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、第1の発明では、第1筒部と第2筒部とが内部で連通して流通路が形成されるように配置され、前記第1筒部側に設けられた第1フランジ部と前記第2筒部側に設けられた第2フランジ部とがクランプによって挟み込まれることにより、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とが接続される接続構造に適用され、前記第1フランジ部又は前記第2フランジ部の少なくとも一方を含む接続部の製造方法であって、平板状の板材を環状に打ち抜いて、継ぎ目のない環状板材を形成するブランク工程と、前記ブランク工程において打ち抜かれた環状板材を、バーリングにより、環状板部とその内周から立ち上がる立ち上がり筒部とからなるように成形するバーリング工程と、前記環状板部を外周側から内周側へ向けて折り畳むことにより、少なくとも1つの折り返し部が環状に形成されたフランジを形成するフランジ形成工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
第1の発明によれば、溶接造管のパイプの端部を折り曲げてフランジ部を形成した場合のように、接続面に段差が生じることがないため、第1フランジ部と第2フランジ部との接続境界において高いシール性を確保することが可能になる。また、一般的な平板を用いて接続部を作成できるため、シームレスパイプのような高価な母材を使用することがなく、製造コストの増大を抑制することも可能になる。
【0012】
第2の発明では、上記第1の発明において、前記フランジ形成工程では、前記環状板材を前記立ち上がり筒部の突出側へ折り畳むことを特徴とする。
【0013】
第2の発明によれば、接続面とは反対側に折り返し部が形成されるため、接続面の平面度を確保しやすく、シール性を高めることが可能になる。また、折り返し部の曲げ角度を調整することで、クランプ形状に適合した折り返し部を形成することができ、クランプ締結を良好に行うことが可能なフランジ部を簡単に作成することが可能になる。すなわち、本発明によれば、高いシール性と良好な締結とを両立できる接続部を簡単に作成することが可能になる。
【0014】
第3の発明では、上記第1の発明又は第2の発明において、前記フランジ形成工程では、前記折り返し部が複数形成されるように折り畳むことを特徴とする。
【0015】
第3の発明によれば、クランプによる挟み込み時において、クランプからの押圧力によりフランジ部が容易又は過度に変形することを抑制できる。これにより、第1フランジ部と第2フランジ部とを良好に接続することが可能な接続部を作成可能となる。
【0016】
第4の発明では、上記第1の発明〜第3の発明のいずれかにおいて、前記第1筒部又は前記第2筒部の外周径よりも、前記立ち上がり筒部の内周径が大きくなるように形成され、前記第1筒部又は前記第2筒部を前記立ち上がり筒部に挿入した状態で、前記第1筒部又は前記第2筒部と前記立ち上がり筒部とが固定されることを特徴とする。
【0017】
第4の発明によれば、接続部が第1筒部又は第2筒部と別体で形成されるため、それらを一体形成した場合に比べ、接続部における立ち上がり筒部の長さを短く抑えることができる。このため、バーリング工程にて立ち上がり筒部を作成する際、バーリング深さを浅く抑えることができ、環状板材に亀裂等の損傷が発生する可能性を低減することが可能になる。これにより、歩留まりの向上を期待することができ、さらには、成形条件の設定や板材材料の選定が容易となることから、製造の容易化を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る接続部を適用した接続構造の断面図。
図2】接続部の斜視断面図。
図3】Vクランプの平面図。
図4】接続部の製造方法を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る接続部13を適用した接続構造10の断面図、図2は接続部13の斜視断面図である。
【0020】
図1に示すように、接続構造10は、ターボチャージャのタービンハウジング11と、触媒コンバータの上流側に接続された上流管部12とが、接続部13を介して接続された構成となっている。接続部13は、溶接14によって上流管部12に固定され、上流管部12と一体化されている。
【0021】
タービンハウジング11は、エンジンからの排気ガスが供給されることで回転するタービンホイールを収容するものであり、鋳造によって形成されている。タービンハウジング11には、当該ハウジング11を上流管部12(接続部13)と連結するための連結部15(第1筒部)が設けられている。
【0022】
連結部15は略円筒状をなしており、その内部には、タービンホイールを回転させた後の排気ガスが流通するガス通路16が設けられている。ガス通路16内の排気ガスは、当該通路16の下流端に設けられた出口部17を通じてタービンハウジング11の外部に排出され、上流管部12側に導出されるようになっている。
【0023】
連結部15の出口部17側においてその外周部には、第1フランジ部18が設けられている。第1フランジ部18は、連結部15の全周に亘って形成されている。第1フランジ部18の底面部18aは、連結部15の径方向外側に延びる平坦面となっており、上面部18bは、外側に向けて下る傾斜面となっている。
【0024】
上流管部12(第2筒部)は、円筒状をなしており、その上流部には、タービンハウジング11から排出された排気ガスが流入する入口部19が設けられている。本実施の形態において上流管部12は、その軽量化を図るべく、プレス成形によって形成されている。
【0025】
接続部13は、上流管部12をタービンハウジング11と接続するための継手として機能するものである。図2に示すように、接続部13には、両端が開口する円筒状の筒部21が設けられており、その内周径は、上流管部12の外周径よりも僅かに大きくなっている。接続部13を上流管部12に固定するにあたっては、上流管部12の一部が筒部21における下流端側の開口部から筒部21の内側に挿入され、その状態で上流管部12の外周面と筒部21とが溶接される。
【0026】
筒部21の上流端部21aには、当該筒部21の全周に亘って第2フランジ部22が設けられている。第2フランジ部22の張り出し寸法は、タービンハウジング11の第1フランジ部18に対応しており、詳しくは、タービンハウジング11との組付け時において、第2フランジ部22における外周縁部の張り出し位置が第1フランジ部18のそれと略一致するように設定されている(図1参照)。
【0027】
第2フランジ部22は、筒部21の上流端部21aから筒部21の径方向外側に延出する延出部23と、延出部23の外周端部23aから内側に折り曲げるようにして形成された折り返し部24とを備えている。延出部23の表面部23bは、第1フランジ部18の底面部18aと平行な平坦面となっており、折り返し部24には、内側に向けて下る傾斜部24aが形成されている。また、折り返し部24は、第1折り返し部45と第2折り返し部49とからなる2回の折り返しによって形成されている。
【0028】
接続部13は、金属の板材をプレス成形することによって形成されており、上記筒部21及び折り返し部24は一体形成されている。なお、接続部13の製造方法については後に詳細に説明する。
【0029】
タービンハウジング11と上流管部12(接続部13)との接続にあたっては先ず、タービンハウジング11に対し、第1フランジ部18の底面部18aに第2フランジ部22の延出部23(表面部23b)が当接するようにして、接続部13を配置する。この場合、タービンハウジング11内のガス通路16と、接続部13における筒部21内の空間部25と、上流管部12内のガス通路26とが連通し、流通路27が形成される。
【0030】
その状態で、タービンハウジング11の第1フランジ部18と接続部13の第2フランジ部22とを挟み込むようにして、外周側からVクランプ28を装着する。図3に示すように、Vクランプ28は、半円状を有する一対のクランプ部材29,30が対向配置され、各クランプ部材29,30の両端部がボルト31及びナット32により連結された構成となっている。各クランプ部材29,30は略V字状断面を有しており、各傾斜部33,34(図1)の傾斜角度は、それぞれ第1フランジ部18の上面部18b及び第2フランジ部22の折り返し部24の傾斜角度と略一致している。
【0031】
そして、Vクランプ28を装着した状態でナット32を締め込むことで、Vクランプ28の内径が縮小される。これにより、Vクランプ28の各傾斜部33,34を通じて、第1フランジ部18及び第2フランジ部22のそれぞれに両者が接近する方向の押圧力が付与され、両フランジ部18,22が接続される。
【0032】
ここで、第2フランジ部22において第1折り返し部45の長さ寸法L(図1)は、Vクランプ28の両傾斜部33,34により挟まれる領域において、延出部23と第2折り返し部49との間に第1折り返し部45の一部が位置し得る大きさとなっている。つまり、上記領域において第2折り返し部49は、延出部23との間に第1折り返し部45を介在させた状態で、Vクランプ28からの押圧力を受けるものとなっている。
【0033】
これにより、クランプ締結時における第2フランジ部22の剛性が高められ、第2フランジ部22の変形を抑制することが可能になる。その結果、良好な締結力が発揮されるほか、例えば、ターボチャージャの交換や修理等でクランプ締結を解除した後、再締結する場合に、接続部13を交換することなく繰り返し使用することが可能になる。
【0034】
また、タービンハウジング11における連結部15の底部には、出口部17を周方向に囲むようにして環状凹部35が形成され、当該凹部35には、シール材としてのガスケット36が装着されている。これにより、タービンハウジング11と接続部13との境界部におけるシール性が強化され、排気ガスの流出を好適に抑制可能となる。なお、上記環状凹部35及びガスケット36は必須の構成ではなく、第1フランジ部18及び第2フランジ部22の接続によって十分なシール性を確保し得る場合は、省略することが可能である。
【0035】
次に、接続部13の製造方法について図4を参照しながら説明する。
【0036】
先ず、継ぎ目や段差(凹凸)がない金属製の平板を準備する。平板の材料は、上記接続構造10の使用環境等に応じて適宜設定することができるが、例えば、ステンレス等の耐熱性、耐腐食性及び成形加工性に優れた金属材料とすることが好ましい。
【0037】
続いて、上記平板を打ち抜き用の成形型にセットし、図4(a)に示すように、抜き加工によって環状板材41を形成する(ブランク工程)。本工程では、円環状の環状板材41が形成されるように上記平板の打ち抜きを行う。その際、環状板材41の内周径Dは、接続部13における筒部21(図2参照)の内周径よりも小さくなるようにする。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、バーリング加工により、環状板材41の中央部に立ち上がり筒部42を形成する(バーリング工程)。この工程では、環状板材41の下方から、上記内周径Dよりも大径のパンチを環状板材41の中央部に押し込み、環状板材41の内周部41aを上方に立ち上げることで、立ち上がり筒部42を形成する。これにより、環状板部(鍔状部)43を有するハット状の中間体44を形成する。立ち上がり筒部42は、接続部13の完成状態において筒部21となるものであり、その高さ寸法H1(バーリング深さ)は、筒部21において求められる長さ寸法に合わせて設定される。
【0039】
次いで、図4(c)に示すように、上記バーリング工程により形成された中間体44をヘミング加工し、第1折り返し部45を形成する(第1フランジ形成工程)。この工程では、環状板部43における外周側の一部を立ち上がり筒部42の突出側へ折り畳むことで、第1折り返し部45を形成する。
【0040】
その後、図4(d)に示すように、第1折り返し部45が形成された環状板部43の外周部を上方に立ち上げ、起立部47を形成する(第2フランジ形成工程)。この工程では、環状板部43において、立ち上がり筒部42の外周面42a(図4(c)参照)と第1折り返し部45の先端部45aとの中間部を折り曲げ箇所とし、第1折り返し部45を含む部分を立ち上げる。これにより、高さ寸法H2が第1折り返し部45の長さ寸法Lよりも大きい起立部47を形成し、また、立ち上がり筒部42と起立部47との間に平面部48を形成する。平面部48は、接続部13の完成状態において延出部23となるものである。
【0041】
次に、図4(e)に示すように、起立部47を立ち上がり筒部42側にさらに折り曲げ、第2折り返し部49を形成する(第3フランジ形成工程)。この際、傾斜部24a(図2参照)が形成されるように、第2折り返し部49の曲げ角度を設定する。これにより、第2フランジ部22が形成され、接続部13が完成する。
【0042】
以上、詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0043】
・平板を打ち抜いて環状板材41を形成した後、バーリングにより環状板材41に立ち上がり筒部42を形成し、その後、その環状板材41の外周部を内周側に向けて折り畳むこと等により、第2フランジ部22が形成された接続部13を作成するようにした。
【0044】
この構成によれば、第2フランジ部22における第1フランジ部18(タービンハウジング11)との接続面に段差が生じることがなく、両フランジ部18,22の接続境界において高いシール性を確保することが可能になる。また、一般的な金属製の平板を用いて接続部13を作成できるため、高価な母材を使用することがなく、製造コストの増大を抑制することも可能になる。
【0045】
・各フランジ形成工程において、環状板材41の外周端部を立ち上がり筒部42の突出側へ折り畳むようにして、折り返し部24を形成した。
【0046】
例えば、上記外周端部を立ち上がり筒部42の突出側とは反対側へ折り畳む構成であると、第1フランジ部18との接続面が折り返し部により構築されるものとなり、接続面の平面度や、第1フランジ部18側の接続面(底面部18a)との平行度が低下して、シール性の悪化を招くおそれがある。また、タービンハウジング11との接続時において、環状板部43における折り返し部とは反対側の部分にVクランプ28が当接するため、当該部分を傾斜状に加工する必要もある。
【0047】
この点、本実施の形態では、接続面とは反対側に折り返し部24が形成されるため、接続面の平面度を確保しやすく、シール性を高めることが可能になる。また、折り返し部24の曲げ角度を調整することで傾斜部24aを形成できるため、Vクランプ28に適合する形状の第2フランジ部22を簡単に作成できる。すなわち、本構成によれば、高いシール性と良好な締結とを両立できる接続部13を簡単に作成することが可能になる。
【0048】
・各フランジ形成工程において、環状板部43を2回折り返して折り返し部24を形成し、平面部48と第2折り返し部49との間に第1折り返し部45が介在するように構成した。
【0049】
この場合、Vクランプ28による挟み込み時において、Vクランプ28からの押圧力により第2フランジ部22が容易又は過度に変形することを抑制できる。これにより、第1フランジ部18と第2フランジ部22とを良好に接続することが可能になる。
【0050】
なお、上記実施の形態では、折り返し回数を2回としたが、これに限定されるものではなく、平板の厚み等に応じて3回以上としてもよい。
【0051】
<その他の実施の形態>
本発明は上記実施の形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0052】
(1)上記実施の形態では、本発明に係る接続部13をタービンハウジング11と上流管部12との接続に適用する構成としたが、これに限定されるものではなく、第1筒部と第2筒部とが内部で連通して流通路が形成されるように配置され、第1筒部側に設けられた第1フランジ部と第2筒部側に設けられた第2フランジ部とがクランプ締結される接続構造であれば、本発明を適用することが可能である。
【0053】
(2)上記実施の形態では、継ぎ目がない平板を用いたが、これに限定されるものではく、少なくとも、ブランク工程により形成される環状板材41が継ぎ目のない状態であればよい。
【0054】
(3)上記実施の形態では、接続部13と上流管部12とを別体で形成したが、一体形成してもよい。このような構成は、バーリング工程において、図4(b)の場合よりも立ち上げ量を増大させ、立ち上がり筒部42の高さ寸法H1を大きくすることで実現できる。但し、そのようなバーリング(深絞り)を行おうとすると、環状板材41への負荷が増大し、環状板材11に亀裂等が発生する可能性が高まる。その結果、歩留まりの低下を招いたり、成形条件の設定や材料の選定が困難となったりするおそれがある。このような観点からすると、上記実施の形態のように、接続部13を上流管部12と別体で形成することが好ましい。
【0055】
(4)上記実施の形態では、第1フランジ部18を鋳造で形成したが、第1フランジ部18についても金属平板の成形により形成してもよい。すなわち、同様の構成を有する一対の接続部13を対向配置させ、各接続部13のフランジ部をVクランプ28により挟み込むことで、両フランジ部を接続する構成としてもよい。
【0056】
(5)上記実施の形態では、接続部13の筒部21(立ち上がり筒部42)の内周径を上流管部12の外周径よりも大きくし、上流管部12の一部を筒部21内に挿入して両者を溶接したが、筒部21の外周径を上流管部12の内周径よりも小さくし、筒部21の一部を上流管部12内に挿入して両者を溶接するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…接続構造、12…上流管部(第2筒部)、13…接続部、15…連結部(第1筒部)、18…第1フランジ部、22…第2フランジ部、24…折り返し部、27…流通路、41…環状板材、42…立ち上がり筒部、43…環状板部。
図1
図2
図3
図4