(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係るオリゴマーの製造方法は、触媒の存在下、オレフィンを含む重合性モノマーをオリゴマー化させる工程を備える。オリゴマー化のための触媒は、鉄錯体とトリアルキルアルミニウムとを含む。
【0024】
本実施形態において、鉄錯体は、下記一般式(1)で表される。
【0026】
式(1)中、Rは炭素数1〜6のヒドロカルビル基または炭素数6〜12の芳香族基を示し、同一分子中の複数のRは同一でも異なっていてもよい。R’は酸素原子および/または窒素原子を有する有機基を示し、同一分子中の複数のR’は同一でも異なっていてもよい。Yは塩素原子または臭素原子を示す。
【0027】
炭素数1〜6のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基等が挙げられる。ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよい。さらに、ヒドロカルビル基は、直鎖状または分岐鎖状のヒドロカルビル基と環状のヒドロカルビル基とが結合した一価の基であってもよい。
【0028】
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、分岐鎖状ペンチル基(全ての構造異性体を含む)、分岐鎖状ヘキシル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数3〜6の分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6の環状アルキル基などが挙げられる。
【0029】
炭素数2〜6のアルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基等の炭素数2〜6の直鎖アルケニル基;iso−プロペニル基、iso−ブテニル基、sec−ブテニル基、tert−ブテニル基、分岐鎖ペンテニル基(全ての構造異性体を含む)、分岐鎖ヘキセニル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数2〜6の分岐鎖アルケニル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基等の炭素数2〜6の環状アルケニル基などが挙げられる。
【0030】
炭素数6〜12の芳香族基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
式(1)において、同一分子中の複数のRは同一または異なっていてもよいが、化合物の合成を単純化する観点から同一であってもよい。
【0032】
酸素原子および/または窒素原子を有する有機基は、酸素原子および/又は窒素原子を有する炭素数0〜6の
有機基であってもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0033】
このような鉄錯体として具体的には、下記式(1a)〜(1h)で表される化合物が挙げられる。これら鉄錯体は、1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0042】
一般式(1)で表される鉄錯体において、配位子を構成する化合物(以下、ジイミン化合物ということもある)は、例えば、ジベンゾイルピリジンおよびアニリン化合物を、酸の存在下、脱水縮合することで合成することができる。
【0043】
上記ジイミン化合物の製造方法の好ましい態様は、2,6−ジベンゾイルピリジン、アニリン化合物、および酸を溶媒に溶解し、溶媒加熱還流下で脱水縮合させる第1工程と、第1工程後の反応混合物について分離・精製処理を行い、ジイミン化合物を得る第2工程と、を備える。
【0044】
第1工程で用いられる酸としては、例えば有機アルミニウム化合物を用いることができる。有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、メチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0045】
第1工程で用いられる酸としては、上記有機アルミニウム化合物のほかに、プロトン酸を用いることもできる。プロトン酸は、プロトンを供与する酸触媒として用いられる。用いるプロトン酸は、特に制限されないが、好ましくは有機酸である。このようなプロトン酸としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等が挙げられる。これらのプロトン酸を使用する場合、ディーンスタークウォーターセパレーター等で副成する水を除去することが好ましい。また、モレキュラーシーブス等の吸着剤の存在下で反応を行うことも可能である。プロトン酸の添加量は特に制限されず、触媒量であればよい。
【0046】
また、第1工程で用いられる溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒等が挙げられる。炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0047】
第1工程における反応条件は、原料化合物、酸および溶媒の種類ならびに量に応じて、適宜選択することができる。
【0048】
また、第2工程における分離・精製処理としては、特に制限されず、例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、再結晶法等が挙げられる。特に、酸として上述した有機アルミニウム化合物を使用する場合は、反応溶液を塩基性水溶液と混合し、アルミニウムを分解・除去したのち、精製することが好ましい。
【0049】
本実施形態における鉄錯体は、中心金属として鉄を含有する。上記ジイミン化合物と、鉄との混合方法は特に限定されず、例えば、
(i)ジイミン化合物を溶解させた溶液に鉄の塩(以下、単に「塩」ということもある)を添加、混合する方法、
(ii)ジイミン化合物と塩とを、溶媒を用いずに物理的に混合する方法、
などが挙げられる。
【0050】
また、ジイミン化合物と鉄との混合物から錯体を取り出す方法としては、特に制限されず、例えば、
(a)混合物に溶媒を使用した場合には溶媒を留去し、固形物をろ別する方法、
(b)混合物から生じた沈殿をろ別する方法、
(c)混合物に貧溶媒を加えて沈殿を精製させ、ろ別する方法、
(d)無溶媒混合物をそのまま取り出す方法、
などが挙げられる。この後、未反応のジイミン化合物を溶解可能な溶媒による洗浄処理、未反応の鉄の塩を溶解可能な溶剤による洗浄処理、適当な溶媒を用いた再結晶処理等を施してもよい。ジイミン化合物を溶解可能な溶媒としては、例えば、無水エーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。鉄の塩を溶解可能な溶剤としては、アルコール系の溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるほか、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0051】
鉄の塩としては、例えば、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、鉄(II)アセチルアセトナート、鉄(III)アセチルアセトナート、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)等が挙げられる。これらの塩に溶媒、水等の配位子を有するものを用いてもよい。これらの中でも、鉄(II)の塩が好ましく、塩化鉄(II)がより好ましい。
【0052】
また、ジイミン化合物と鉄とを接触させる溶媒としては、特に制限されず、無極性溶媒および極性溶媒のいずれも使用できる。無極性溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。極性溶媒としては、アルコール溶媒等の極性プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン等の極性非プロトン性溶媒などが挙げられる。アルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。特に混合物をそのまま触媒として使用する場合には、オレフィン重合に実質的に影響がない炭化水素系溶媒を使用することが好ましい。
【0053】
また、ジイミン化合物と鉄とを接触させる際の両者の混合比は、特に制限されない。ジイミン化合物/鉄の比は、モル比で、0.2/1〜5/1としてもよく、0.3/1〜3/1としてもよく、0.5/1〜2/1としてもよく、1/1としてもよい。
【0054】
ジイミン化合物における二つのイミン部位は、いずれもE体であることが好ましいが、いずれもE体であるジイミン化合物が含まれていれば、Z体を含むジイミン化合物を含んでいてもよい。Z体を含むジイミン化合物は、金属と錯体を形成しにくいことから、系内で錯体を形成させた後、溶媒洗浄等の精製工程で容易に除去することが可能である。
【0055】
本実施形態において、オリゴマー化のための触媒は、上記一般式(1)で表される鉄錯体のほか、トリアルキルアルミニウムを含む。
【0056】
トリアルキルアルミニウムは、炭素数10以下のアルキル基を有するトリアルキルアルミニウムであってもよく、炭素数8以下のアルキル基を有するトリアルキルアルミニウムであってもよい。このようなトリアルキルアルミニウムとしては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等が挙げられる。触媒効率をより効果的に向上させる観点から、トリアルキルアルミニウムは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、トリメチルアルミニウムを含むことがより好ましい。
【0057】
一般式(1)で表される鉄錯体とトリアルキルアルミニウムとの含有割合は、当該鉄錯体のモル数をG、トリアルキルアルミニウムのモル数をHとした場合、モル比でG:H=1:10〜1:1000であってもよく、1:10〜1:800であってもよく、1:20〜1:600であってもよい。上記範囲内であれば、より十分な触媒効率を発現させることができる。
【0058】
本実施形態において、オリゴマー化のための触媒は、任意の成分を更に含むことができる。任意の成分としては、ホウ素化合物、メチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0059】
ホウ素化合物は、オレフィン重合反応において、上記式(1)で表される鉄錯体の触媒活性を更に向上させる助触媒としての機能を有する。
【0060】
ホウ素化合物としては、例えば、トリスペンタフルオロフェニルボラン等のアリールホウ素化合物が挙げられる。また、ホウ素化合物は、アニオン種を有するホウ素化合物を用いることができる。例えば、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート、テトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等のアリールボレートなどが挙げられる。アリールボレートの具体例としては、リチウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ナトリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、リチウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ナトリウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレート等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートまたはトリチルテトラキス(3,5−トリフルオロメチルフェニル)ボレートが好ましい。これらホウ素化合物は1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0061】
ホウ素化合物を更に含む触媒において、トリアルキルアルミニウムとホウ素化合物との含有割合は、トリアルキルアルミニウムのモル数をH、ホウ素化合物のモル数をJとした場合、モル比でH:J=1000:1〜1:1であってもよく、800:1〜2:1であってもよく、600:1〜10:1であってもよい。上記範囲内であれば、より十分な触媒効率を発現しつつ、コストアップの要因を抑制することができる。
【0062】
メチルアルミノキサンは、溶媒で希釈された市販品を使用することができる。また、メチルアルミノキサンをフェノールやその誘導体等の活性プロトン化合物で変性させた変性メチルアルミノキサンを用いてもよい。
【0063】
メチルアルミノキサンを更に含む触媒において、トリアルキルアルミニウムとメチルアルミノキサンとの含有割合は、トリアルキルアルミニウムのモル数をH、メチルアルミノキサンにおけるアルミニウム原子のモル数をYとした場合、モル比でH:Y=100:1〜1:100であってもよく、であってもよく、50:1〜1:50であってもよく、10:1〜1:10であってもよい。上記範囲内であれば、より十分な触媒効率を発現しつつ、コストアップの要因を抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態に係る触媒の製造方法は、特に制限されず、例えば、上述した一般式(1)で表される鉄錯体を含む溶液にトリアルキルアルミニウムを含む溶液を添加、混合する方法、および、トリアルキルアルミニウムを含む溶液に一般式(1)で表される鉄錯体を含む溶液を添加、混合する方法等が挙げられる。また、上述した任意の成分を含む場合には、一般式(1)で表される鉄錯体、トリアルキルアルミニウムおよび任意の成分を一括して接触させてもよいし、任意の順序で接触させてもよい。任意の成分を含む場合の触媒の製造方法としては、例えば、一般式(1)で表される鉄錯体を含む溶液にトリアルキルアルミニウムを含む溶液を添加、混合した後、メチルアルミノキサンを接触させる方法、一般式(1)で表される鉄錯体を含む溶液にホウ素化合物を接触させた後、トリアルキルアルミニウムを含む溶液を添加、混合する方法、一般式(1)で表される鉄錯体を含む溶液にホウ素化合物を接触させた後、トリアルキルアルミニウムを含む溶液を添加、混合し、メチルアルミノキサンを接触させる方法等が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係る触媒は、必要に応じて、下記一般式(2)で表される化合物(以下、リガンドということもある)を更に含んでいてもよい。
【0067】
式(2)中、R’’は炭素数1〜6のヒドロカルビル基または炭素数6〜12の芳香族基を示し、同一分子中の複数のR’’は同一でも異なっていてもよく、R’’’は酸素原子および/または窒素原子を有する
有機基を示し、同一分子中の複数のR’’’は同一でも異なっていてもよい。
【0068】
このようなリガンドを更に含むことにより、触媒効率をより一層向上させることができるとともに、重合活性を長時間維持することができる。リガンドを更に含むことによりこのような効果が得られる理由として、本発明者等は以下のように推察する。
【0069】
重合性モノマーをオリゴマー化させる工程において、オリゴマー化反応を長時間にわたり進行させると、得られる重合物の数平均分子量(Mn)が上昇する(高分子量化する)とともに分子量分布(Mw/Mn)が広くなる傾向が見られる場合があることを本発明者等は確認している。これは、オリゴマー化反応の進行に伴い、一般式(1)で表される鉄錯体におけるジイミン化合物と鉄との結合が外れることを含め、鉄錯体に何らかの構造的な変化が生じた結果、当該鉄錯体の有する本来の機能が低下したことによるものと考えられる。
【0070】
これに対し、触媒にあらかじめリガンドを添加しておくと、オリゴマー化反応中に、当該リガンドと上記鉄錯体における鉄とが再度結合することによって、構造的な変化が生じる前の鉄錯体が再生されると考えられる。そのため、反応が長時間にわたり進行したとしても、得られる重合物の高分子量化が抑えられるものと考えられる。なお、トルエン等の重合溶媒中では、塩化鉄などの鉄塩は溶解せず、錯体を形成しないことから、単にリガンドと鉄を別々に添加しただけでは同様の効果が得られないことを本発明者等は確認している。
【0071】
炭素数1〜6のヒドロカルビル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基等が挙げられる。ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれであってもよい。さらに、ヒドロカルビル基は、直鎖状または分岐鎖状のヒドロカルビル基と環状のヒドロカルビル基とが結合した一価の基であってもよい。
【0072】
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、分岐鎖状ペンチル基(全ての構造異性体を含む)、分岐鎖状ヘキシル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数3〜6の分岐鎖アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6の環状アルキル基などが挙げられる。
【0073】
炭素数2〜6のアルケニル基としては、エテニル基(ビニル基)、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基等の炭素数2〜6の直鎖アルケニル基;iso−プロペニル基、iso−ブテニル基、sec−ブテニル基、tert−ブテニル基、分岐鎖ペンテニル基(全ての構造異性体を含む)、分岐鎖ヘキセニル基(全ての構造異性体を含む)等の炭素数2〜6の分岐鎖アルケニル基;シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基等の炭素数2〜6の環状アルケニル基などが挙げられる。
【0074】
炭素数6〜12の芳香族基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0075】
式(2)において、同一分子中の複数のR’’は同一または異なっていてもよいが、化合物の合成を単純化する観点から同一であってもよい。
【0076】
酸素原子および/または窒素原子を有する
有機基としては、酸素原子および/または窒素原子を有する炭素数0〜6の
有機基であってもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0077】
このようなリガンドとして具体的には、下記式(2a)〜(2d)で表される化合物が挙げられる。これらリガンドは、1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0082】
また、本実施形態に係る触媒に含まれる上記一般式(1)で表される鉄錯体および上記一般式(2)で表される化合物において、一般式(1)のRと一般式(2)のR’’、および一般式(1)のR’と一般式(2)のR’’’とは、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、一般式(1)で表される鉄錯体と同様の性能を維持させる観点から、同一であることが好ましい。
【0083】
上記一般式(2)で表される化合物は、上述したジイミン化合物と同様の方法により合成することができ、ここでは重複する記載を省略する。
【0084】
本実施形態に係る触媒において、上記一般式(1)で表される鉄錯体とリガンドとの含有割合は特に制限されない。例えば、リガンド/鉄錯体の比の下限は、モル比で、好ましくは1/100であり、より好ましくは1/20であり、更に好ましくは1/10であり、特に好ましくは1/5である。一方、リガンド/鉄錯体の比の上限は、モル比で、好ましくは100/1であり、より好ましくは50/1であり、更に好ましくは10/1であり、特に好ましくは5/1であり、極めて好ましく3/1であり、更に極めて好ましくは1/1である。リガンド/鉄錯体の比が1/100以上であれば、リガンドの添加効果を十分に発揮させることができ、100/1以下であれば、リガンドの添加効果を発揮しつつコストを抑えることができる。このような観点から、リガンド/鉄錯体の比は、例えば、1/100〜100/1であり、1/20〜50/1であり、1/10〜10/1であり、1/5〜5/1であり、1/5〜1/1である。
【0085】
本実施形態における触媒において、上記一般式(2)で表される化合物を更に含む場合の当該化合物の添加順序は特に制限されず、例えば、上述した鉄錯体およびリガンドを含む溶液にトリアルキルアルミニウムを含む溶液を添加、混合する方法、ならびに、鉄錯体およびトリアルキルアルミニウムを含む溶液にリガンドを含む溶液を添加、混合する方法等が挙げられる。
【0086】
なお、本実施形態における触媒においてリガンドを更に含む場合、上述したように、一般式(1)で表される鉄錯体の合成に際して得られるジイミン化合物と鉄の塩との反応混合物から、当該鉄錯体を精製したうえで、リガンドを添加してもよいが、当該反応混合物から鉄錯体を精製せず、すなわち未反応のジイミン化合物および鉄の塩を取り除かずに、ジイミン化合物をリガンドとして触媒中に存在させてもよい。リガンドを更に含むことによる効果をより発揮する観点からは、上記反応混合物から、未反応の鉄の塩のみを取り除いたうえで、未反応のジイミン化合物をリガンドとして触媒中に存在させることが好ましく、反応混合物から一般式(1)で表される鉄錯体を精製したうえで、リガンドを添加することがより好ましい。
【0087】
本実施形態におけるオリゴマーの製造方法は、上述した本実施形態に係る触媒の存在下、オレフィンを含む重合性モノマーをオリゴマー化させる工程を備える。
【0088】
オレフィンとしては、エチレン、α−オレフィン等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンのほか、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの2位以外にメチル基等の分岐をもつものなどが挙げられる。これらのα−オレフィンの中でも、反応性の観点からプロピレンを使用してもよい。
【0089】
本実施形態に係る製造方法により得られるオリゴマーは、上記オレフィンのうちの1種の単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。このようなオリゴマーは、例えば、エチレンの単独重合体であってもよく、プロピレンの単独重合体であってもよく、エチレンおよびプロピレンの共重合体であってもよい。さらに、オリゴマーは、オレフィン以外のモノマーに由来する構造単位を更に含有してもよい。
【0090】
エチレンおよびα−オレフィンを含む重合性モノマーをオリゴマー化させる場合、触媒に接触させるエチレンおよびα−オレフィンの供給割合は、特に制限されるものではないが、モル比で、エチレン:α−オレフィン=1000:1〜1:1000であってもよく、100:1〜1:100であってもよい。エチレンおよびα−オレフィンの反応性には違いがあるためFineman−Ross法等を用いて反応性比を算出し、希望する生成物中の組成比から供給するエチレンおよびα−オレフィンの供給割合を適宜決定することができる。
【0091】
本実施形態で用いる重合性モノマーは、エチレンまたはα−オレフィンからなるものであってもよく、エチレンおよびα−オレフィンからなるものであってもよく、あるいは、エチレンおよびα−オレフィン以外のモノマーを更に含有してもよい。また、本実施形態に係る製造方法の一態様として、触媒が充填された反応装置に、重合性モノマーを導入する方法が挙げられる。重合性モノマーの反応装置への導入方法は特に制限されず、重合性モノマーが2種以上のオレフィンを含有するモノマー混合物である場合には、モノマー混合物を反応装置に導入してもよく、あるいは、各重合性モノマーを別個に導入してもよい。
【0092】
また、オリゴマー化の際に、溶媒を用いてもよい。溶媒としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;テトラリン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒が挙げられる。これらの溶媒に触媒を溶解して、溶液重合、スラリー重合等を行うことができる。また、オレフィンを含む重合性モノマーを溶媒としてバルク重合することも可能である。
【0093】
オリゴマー化の反応温度は、特に制限されないが、触媒効率をより一層向上させる観点から、例えば、−50℃〜100℃であってもよく、−30℃〜80℃であってもよく、−20℃〜70℃であってもよく、0℃〜50℃であってもよく、5℃〜30℃であってもよく、5℃〜15℃であってもよい。反応温度が−50℃以上であれば、より十分に触媒活性を維持したまま生成したオリゴマーの析出を抑制することができ、100℃以下であれば、触媒の分解を抑制することができる。また、反応圧力についても特に限定されないが、例えば、100kPa〜5MPaであってもよい。反応時間についても特に限定されないが、例えば、1分〜24時間であってもよく、5分〜60分であってもよく、10分〜45分であってもよく、20分〜40分であってもよい。
【0094】
本実施形態において、「オリゴマー」とは、数平均分子量(Mn)が10000以下の重合体を意味する。上記本実施形態に係るオリゴマーの製造方法によって得られるオリゴマーのMnは、その用途に応じて適宜調整することができる。例えば、オリゴマーをワックス、潤滑油等として使用する場合、オリゴマーのMnは、200〜5000が好ましく、300〜4000がより好ましく、350〜3000が更に好ましい。また、分散度は、重量平均分子量(Mw)とMnとの比であり、Mw/Mnとして表されるが、例えば、1.0〜5.0であってもよく、1.1〜3.0であってもよい。オリゴマーのMnおよびMwは、例えば、GPC装置を用い、標準ポリスチレンから作成した検量線に基づき、ポリスチレン換算量として求めることができる。
【0095】
本実施形態に係る製造方法は、オレフィンオリゴマーワックス、ポリα−オレフィン(PAO)等の潤滑油用基材の製造方法として有用である。また、本実施形態に係る製造方法により得られるオリゴマーは、例えば、潤滑油組成物の成分として好適に使用することができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例にて本発明を例証するが、以下の実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0097】
[材料の準備]
鉄錯体は、後述する合成例に示した方法で合成を行った。その際用いた試薬類は購入品をそのまま用いた。トリメチルアルミニウムは、東京化成製のトリメチルアルミニウムトルエン溶液をそのまま用いた。トリイソブチルアルミニウムは、日本アルキルアルミ製のものをトルエンで希釈して用いた。トリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレートは、東京化成製のものをそのまま用いた。ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドは、東京化成製のものをそのまま用いた。
【0098】
エチレンは、住友精化製の高純度液化エチレンを、モレキュラーシーブ4Aを通して乾燥して使用した。
【0099】
溶媒のトルエンは、アルドリッチ製の脱水トルエンをそのまま使用した。
【0100】
[数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)の測定]
高温GPC装置(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名:PL−20)にカラム(ポリマーラボラトリーズ社製、商品名:PL gel 10μm MIXED−B LS)を2本連結し、示差屈折率検出器とした。試料5mgにオルトジクロロベンゼン溶媒5mlを加え、140℃で約1時間加熱撹拌した。このように溶解した試料を流速1ml/分、カラムオーブンの温度を140℃に設定して、測定を行った。分子量の換算は、標準ポリスチレンから作成した検量線に基づいて行い、ポリスチレン換算分子量を求めた。
【0101】
[触媒効率の算出]
得られたオリゴマーの重量を、仕込んだ触媒のモル数で割ることにより、触媒効率を算出した。
【0102】
[製造例1:ジイミン化合物(I)の合成]
2−メチル−4−メトキシアニリン(2.0893g、15.3mmol、東京化成製)と2,6−ジアセチルピリジン(1.2429g、7.6mmol、東京化成製)、モレキュラーシーブ4A(5.0g)、触媒量のパラトルエンスルホン酸を乾燥トルエン(60ml)に分散し、ディーンスタークウォーターセパセーターを利用して、水を除去しながら24時間加熱還流しながら撹拌した。
【0103】
反応液からモレキュラーシーブをろ過で除き、トルエンでモレキュラーシーブを洗浄した。洗浄液とろ過した反応液を混合して濃縮乾固し、粗固体(2.8241g)を得た。ここで得られた粗固体(2g)を量りとり、無水エタノール(30ml)で洗浄した。エタノール不溶固体をろ別して、その不溶固体をさらにエタノールで洗浄した。残存固体を十分に乾燥して下記ジイミン化合物(I)を収率50%で得た。
【0104】
1H−NMR(600MHz,CDCl
3):2.1(s,6H),2.4(s,6H),3.8(s,6H),6.6(m,2H),6.7(m,2H),6.8(m,2H),7.9(m,1H),8.4(m,2H)
13C−NMR(600MHz,CDCl
3):16、18,56,116,119,122,125,129,137,138,143,156,167
【0105】
【化19】
【0106】
[製造例2:鉄錯体(1a)の合成]
FeCl
2・4H
2O(0.2401g、1.2mmol、関東化学製)を脱水テトラヒドロフラン(30ml、アルドリッチ製)に溶解し、先に合成したジイミン化合物(I)(0.4843g、1.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10ml)を加えた。黄色のジイミン化合物を加えることで、瞬時に暗緑色のテトラヒドロフラン溶液となった。さらに、室温にて2時間撹拌した。反応液から溶媒を蒸発乾固させ、析出した固体を脱水エタノールでろ液に色がなくなるまで洗浄を続けた。さらに洗浄した固体を脱水ジエチルエーテルで洗浄し、溶媒を除去して鉄錯体を得た。得られた鉄錯体は、FD−MASSにて527.0820(計算値:527.0831)が得られたことから、下記鉄錯体(1a)の構造を示唆している。
【0107】
【化20】
【0108】
<実施例1>
電磁誘導撹拌機付きの660mlのオートクレーブをあらかじめ減圧下、110℃で充分に乾燥した。次に、窒素気流下で、乾燥トルエン(80ml)をオートクレーブに導入し、温度を10℃に調整した。
【0109】
50mlナスフラスコ中で窒素気流下、製造例2で得られた鉄錯体(1μmol)を乾燥トルエン20mlに溶解し、溶液(A)とした。溶液(A)に、鉄錯体に対して500当量分のトリメチルアルミニウム(TMA)溶液を加え、5分間撹拌して触媒を含む溶液(B)を得た。溶液(B)を、乾燥トルエンが導入されたオートクレーブに加え、10℃で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。30分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は1479 Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは550であり、Mw/Mnは1.6であった。
【0110】
<実施例2>
エチレンを連続的に導入する際のオートクレーブの温度を室温(25℃)としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。触媒効率(C.E.)は1398kg Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは370であり、Mw/Mnは1.3であった。
【0111】
<実施例3>
50mlナスフラスコ中で窒素気流下、製造例2で得られた鉄錯体(1μmol)とトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(1μmol)を乾燥トルエン20mlに溶解し、溶液(A)とした。溶液(A)に、鉄錯体に対して500当量分のTMA溶液を加え、5分間撹拌して触媒を含む溶液(B)を得た。溶液(B)を、乾燥トルエンが導入されたオートクレーブに加え、10℃で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。30分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は3276kg Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは500であり、Mw/Mnは1.6であった。
【0112】
<実施例4>
溶液(B)の調製工程において、TMA溶液を、鉄錯体に対して100当量分加えたこと、以外は、実施例3と同様の操作を行った。触媒効率(C.E.)は6455kg Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは460であり、Mw/Mnは1.6であった。
【0113】
<実施例5>
50mlナスフラスコ中で窒素気流下、製造例2で得られた鉄錯体(1μmol)を乾燥トルエン20mlに溶解し、溶液(A)とした。溶液(A)に、鉄錯体に対して500当量分のTMA溶液を加え、更に鉄錯体に対してアルミニウム原子として500当量分のメチルアルミノキサン(MAO)を加え、5分間撹拌して触媒を含む溶液(B)を得た。溶液(B)を、乾燥トルエンが導入されたオートクレーブに加え、40℃で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。30分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は4908kg Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは420であり、Mw/Mnは1.5であった。
【0114】
<実施例6>
溶液(B)の調製工程において、TMA溶液に代えて、鉄錯体に対して100当量分のトリイソブチルアルミニウム(TIBA)溶液を加えたこと、さらに、エチレンを連続的に導入する際のオートクレーブの温度を室温(25℃)としたこと以外は、実施例4と同様の操作を行った。触媒効率(C.E.)は482kg Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは540であり、Mw/Mnは1.4であった。
【0115】
<実施例7>
電磁誘導撹拌機付きの20Lのオートクレーブをあらかじめ減圧下、110℃で充分に乾燥した。次に、窒素気流下で、乾燥トルエン(7.6L)をオートクレーブに導入し、温度を0℃に調整した。
【0116】
500mlナスフラスコ中で窒素気流下、製造例2で得られた鉄錯体(42.2mg)と鉄錯体に対して1当量のトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(73.8mg)を乾燥トルエン200mlに溶解し、溶液(A)とした。溶液(A)に、鉄錯体に対して100当量分のトリメチルアルミニウム(TMA)溶液を加え、5分間撹拌して触媒を含む溶液(B)を得た。溶液(B)に更にリガンド(化合物2(a))として、製造例1で得られたジイミン化合物(I)を鉄錯体に対して0.33当量分加えて溶液(C)を得た。この溶液(C)を乾燥トルエンが導入された上記オートクレーブに加え、0℃で0.2MPaのエチレンを連続的に導入した。970分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を順次20Lのエバポレータ―に移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は68875 Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは550であり、Mw/Mnは1.7であった。
【0117】
<実施例8>
溶液(B)に更にリガンドを添加しないこと、反応時間を920分としたこと以外は、実施例7と同様の操作を行った。触媒効率(C.E.)は57838kg Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは530であり、Mw/Mnは1.6であった。
【0118】
<実施例9>
電磁誘導撹拌機付きの660mlのオートクレーブをあらかじめ減圧下、110℃で充分に乾燥した。次に、窒素気流下で、乾燥トルエン(80ml)をオートクレーブに導入し、温度を10℃に調整した。
【0119】
50mlナスフラスコ中で窒素気流下、製造例2で得られた鉄錯体(1μmol)とトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(1μmol)、リガンド(化合物2(a))として、製造例1で得られたジイミン化合物(I)を鉄錯体に対して0.5当量分を乾燥トルエン20mlに溶解し、溶液(A)とした。溶液(A)に、鉄錯体に対して100当量分のトリメチルアルミニウム(TMA)溶液を加え、5分間撹拌して触媒を含む溶液(B)を得た。溶液(B)を、乾燥トルエンが導入されたオートクレーブに加え、10℃で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。60分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は8215 Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは340であり、Mw/Mnは2.2であった。
【0120】
<実施例10>
電磁誘導撹拌機付きの660mlのオートクレーブをあらかじめ減圧下、110℃で充分に乾燥した。次に、窒素気流下で、乾燥トルエン(80ml)をオートクレーブに導入し、温度を10℃に調整した。
【0121】
50mlナスフラスコ中で窒素気流下、製造例2で得られた鉄錯体(1μmol)とトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート(1μmol)、を乾燥トルエン20mlに溶解し、溶液(A)とした。溶液(A)に、鉄錯体に対して100当量分のトリメチルアルミニウム(TMA)溶液を加え、5分間撹拌して触媒を含む溶液(B)を得た。溶液(B)にリガンド(化合物2(a))として、製造例1で得られたジイミン化合物(I)を鉄錯体に対して0.5当量分加えて触媒を含む溶液(C)を得た。溶液(C)を乾燥トルエンが導入されたオートクレーブに加え、10℃で0.19MPaのエチレンを連続的に導入した。60分後にエチレンの導入を止め、未反応のエチレンを除去し、窒素でオートクレーブ内のエチレンをパージし、ごく少量のエタノールを加えた。オートクレーブを開放し、内容物を200mlナスフラスコに移して、溶媒を減圧留去することで、半固形物のオリゴマーを得た。触媒効率(C.E.)は10524 Poly/Fe molであった。また、得られたオリゴマーのMnは300であり、Mw/Mnは2.2であった。
【0122】
<比較例1>
溶液(A)の調製工程において、製造例2で得られた鉄錯体に代えて、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(5.1μmol、Cp
2ZrCl
2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。触媒効率(C.E.)は0kg Poly/Fe molであり、重合物を得ることができなかった。
【0123】
上記実施例1〜10および比較例1について、触媒の組成ならびに触媒効率、MnおよびMw/Mnの結果を表1に示す。なお、表1において、触媒の組成についての各数値は当量数を示す。
【0124】
【表1】