特許第6896763号(P6896763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896763
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/10 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   F15B1/10
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-553745(P2018-553745)
(86)(22)【出願日】2017年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2017040545
(87)【国際公開番号】WO2018101007
(87)【国際公開日】20180607
【審査請求日】2020年5月19日
(31)【優先権主張番号】特願2016-235343(P2016-235343)
(32)【優先日】2016年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】有川 達浩
(72)【発明者】
【氏名】山下 松喜
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−092782(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/194607(WO,A1)
【文献】 実開平02−101102(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00− 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側環状山部と内側環状山部を有し伸縮可能なベローズの少なくとも一端が固定端として流体供給口を有するハウジングに固定されることにより、該ハウジングの内部を前記ベローズの内外で密閉状態に仕切るアキュムレータであって、
前記ベローズには、前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域が伸縮方向に分布しており、
前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域が前記ベローズの伸縮方向の中央部に分布していることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項2】
外側環状山部と内側環状山部を有し伸縮可能なベローズの少なくとも一端が固定端として流体供給口を有するハウジングに固定されることにより、該ハウジングの内部を前記ベローズの内外で密閉状態に仕切るアキュムレータであって、
前記ベローズには、前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域が伸縮方向に分布しており、
前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域の前記外環状山部は、前記ベローズの伸縮方向の中央部に向けて径が漸次小さくなるように分布していることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項3】
外側環状山部と内側環状山部を有し伸縮可能なベローズの少なくとも一端が固定端として流体供給口を有するハウジングに固定されることにより、該ハウジングの内部を前記ベローズの内外で密閉状態に仕切るアキュムレータであって、
前記ベローズには、前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域が伸縮方向に分布しており、
前記ハウジング内には、前記ベローズ内において前記流体供給口と連通するように前記ハウジングに固定されるステーが配置され、前記ベローズには、前記固定端よりも前記内側環状山部の内径が大きい領域が分布していることを特徴とするアキュムレータ。
【請求項4】
外側環状山部と内側環状山部を有し伸縮可能なベローズの少なくとも一端が固定端として流体供給口を有するハウジングに固定されることにより、該ハウジングの内部を前記ベローズの内外で密閉状態に仕切るアキュムレータであって、
前記ハウジング内には、前記ベローズ内において前記流体供給口と連通するように前記ハウジングに固定されるステーが配置され、前記ベローズには、前記固定端側の前記内側環状山部の内径よりも大きい内径の前記内側環状山部を有する領域が分布していることを特徴とするアキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用油圧システムまたは産業機器用油圧システム等において、蓄圧装置または脈動減衰装置等として用いられるアキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や産業機器等の油圧制御装置の油圧回路には、蓄圧や脈動の減衰(緩衝)等を行うためのアキュムレータが設けられている。このようなアキュムレータは、ハウジング内にベローズが配置され、ベローズは、固定端がハウジングに溶接固定されたベローズ本体と、該ベローズ本体の他端に取付けられたベローズキャップと、から構成され、ベローズ本体及びベローズキャップにより、ハウジングの内部空間はガスを封入するガス室と、油圧回路に接続されるオイルポートに通じる液室とに密閉状態に仕切られている。ベローズ本体は、金属製の膜または板材を上下方向に山折りと谷折りを連続形成することにより外側環状山部と内側環状山部の繰り返し構造を有しており、ガス室内のガス圧と液室内の液体圧とが均衡するようにベローズキャップが移動した際にベローズ本体が伸縮することにより、蓄圧作動や脈動減衰作動等を行っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−167748号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、ベローズ本体は、外側環状山部と内側環状山部の繰り返し構造を有し、外側環状山部及び内側環状山部を屈曲変形させることにより伸縮可能となっているため、外部振動に対してもベローズが振動しやすくなっており、固定端から伸縮方向に離れた振動の振幅が大きくなる部分がハウジングの内壁に当接する虞があり、ベローズの耐久性を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、ベローズの使用寿命の長いアキュムレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のアキュムレータは、
外側環状山部と内側環状山部を有し伸縮可能なベローズの少なくとも一端が固定端として流体供給口を有するハウジングに固定されることにより、該ハウジングの内部を前記ベローズの内外で密閉状態に仕切るアキュムレータであって、
前記ベローズには、前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域が伸縮方向に分布していることを特徴としている。
この特徴によれば、外部振動を受けたベローズにおいて局所的に径方向への振動の振幅が大きくなる部分に合わせてベローズの外側環状山部の外径が小さい領域を分布させることで、ハウジングの内壁面に当接しないようにすることができるため、ベローズの使用寿命を長くすることができる。
【0007】
前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域が前記ベローズの伸縮方向の中央部に分布していることを特徴としている。
この特徴によれば、外部振動を受けたベローズにおいて局所的に径方向への振動の振幅が大きくなる伸縮方向の中央部に合わせてベローズの外側環状山部の外径が小さい領域を分布させることで、ハウジングの内壁面に当接しないようにすることができるため、ベローズの使用寿命を長くすることができる。
【0008】
前記固定端側の前記外側環状山部の外径よりも小さい外径の前記外側環状山部を有する領域の前記外径環状山部は、前記ベローズの伸縮方向の中央部に向けて径が漸次小さくなるように分布していることを特徴としている。
この特徴によれば、外部振動を受けたベローズにおいて局所的に径方向への振動の振幅が大きくなる伸縮方向の中央部に合わせてベローズの外側環状山部の外径が最も小さい領域を分布させることで、ハウジングの内壁面に当接しないようにすることができる。
【0009】
前記ハウジング内には、前記ベローズ内において前記流体供給口と連通するように前記ハウジングに固定されるステーが配置され、前記ベローズには、前記固定端よりも前記内側環状山部の内径が大きい領域が分布していることを特徴としている。
この特徴によれば、ベローズの内側環状山部の内径が大きい領域を分布させることで、外部振動を受けたベローズ内に配置されるステーに当接しないようにすることができるため、ベローズの使用寿命を長くすることができる。
【0010】
前記課題を解決するために、本発明のアキュムレータは、
外側環状山部と内側環状山部を有し伸縮可能なベローズの少なくとも一端が固定端として流体供給口を有するハウジングに固定されることにより、該ハウジングの内部を前記ベローズの内外で密閉状態に仕切るアキュムレータであって、
前記ハウジング内には、前記ベローズ内において前記流体供給口と連通するように前記ハウジングに固定されるステーが配置され、前記ベローズには、前記固定端側の前記内側環状山部の内径よりも大きい内径の前記内側環状山部を有する領域が分布していることを特徴としている。
この特徴によれば、ベローズの内側環状山部の内径が大きい領域を分布させることで、外部振動を受けたベローズ内に配置されるステーに当接しないようにすることができるため、ベローズの使用寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1におけるアキュムレータの構造を示す断面図である。
図2図1のアキュムレータのベローズが伸縮作動した状態を示す断面図である。
図3図1のアキュムレータのベローズが径方向へ振動した状態を示す断面図である。
図4】実施例2におけるアキュムレータの構造を示す断面図である。
図5図4のアキュムレータのベローズが径方向へ振動した状態を示す断面図である。
図6】実施例3におけるアキュムレータの構造を示す断面図である。
図7図6のアキュムレータのベローズが径方向へ振動した状態を示す断面図である。
図8】実施例4におけるアキュムレータの構造を示す断面図である。
図9図8のアキュムレータのベローズが径方向へ振動した状態を示す断面図である。
図10】実施例5におけるアキュムレータの構造を示す断面図である。
図11図10のアキュムレータのベローズが径方向へ振動した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るアキュムレータを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
実施例1に係るアキュムレータにつき、図1から図3を参照して説明する。以下、図1の紙面手前側をアキュムレータの正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。
【0014】
アキュムレータ1は、例えば自動車用油圧システムまたは産業機器用油圧システム等において、蓄圧装置または脈動減衰装置等として用いられるものであり、ベローズ本体31として金属ベローズを用いた金属ベローズ型アキュムレータである。
【0015】
図1に示されるように、アキュムレータ1は、ハウジング2と、ハウジング2内に設けられるベローズ3と、から主に構成されている。尚、図1は、蓄液等により後述するベローズ本体31が伸長した状態を示している。
【0016】
ハウジング2は、下端が開放する有底円筒状のシェル21と、シェル21の下端を閉塞するように溶接固定されるオイルポート部材22と、から構成されている。
【0017】
シェル21の上端には、ハウジング2内に形成される後述するガス室4に高圧ガス(例えば窒素ガス)を注入するためのガス封入口21aが設けられている。ガス封入口21aは、高圧ガスの注入後にガスプラグ23により閉塞される。
【0018】
オイルポート部材22には、ハウジング2内に図示しない圧力配管から液体(例えば作動油)の流出入を行うためのオイルポート22aが設けられている。
【0019】
ベローズ3は、上下両端が開放する略円筒状を成す金属製のベローズ本体31と、円盤状を成す金属製のベローズキャップ32と、から主に構成されている。尚、ベローズ3の内部には、下端が開放する有底円筒状を成す金属製のステー37が設けられている。
【0020】
ベローズ本体31は、下端を構成する固定端31aを閉塞するようにオイルポート部材22の内面22bに溶接固定されるとともに、上端を構成する遊動端31bを閉塞するように環状の保護リング33を挟着した状態でベローズキャップ32が溶接固定されている。
【0021】
ベローズキャップ32の外周部32cには、シェル21の内壁面21bに対して直接ベローズ本体31及びベローズキャップ32が接触しないように環状の制振リング34が取付けられている。尚、制振リング34の外周面34aとシェル21の内壁面21bとは、径方向に僅かに離間しており、ベローズ3の伸縮作動を妨げることなく滑らかに摺動できるようになっている。
【0022】
また、ベローズキャップ32の下面32bには、断面視クランク形状の環状を成すガスケットホルダ35が嵌合されており、該ガスケットホルダ35に対して円盤状を成すガスケット36が取付けられている。ガスケット36は、円盤状を成す金属板36aの表面の一部または全部にゴム状弾性体36bを被着させることにより構成されている。
【0023】
ステー37は、ベローズ本体31の内側に設けられ、下端を構成する固定端37aを閉塞するようにオイルポート部材22の内面22bに溶接固定されている。また、ステー37の上端を構成し円盤状を成す端面部37bには、径方向中央にステー37の内部に形成される空洞部37dと連通する液体出入口37cが設けられている。
【0024】
ハウジング2の内部空間は、ベローズ3(ベローズ本体31及びベローズキャップ32)によりシェル21に設けられるガス封入口21aと連通するガス室4と、オイルポート部材22に設けられるオイルポート22aとステー37の空洞部37d及び液体出入口37cを介して連通する液室5とに密閉状態に仕切られた構造となっている。
【0025】
ガス室4は、シェル21の内壁面21b、オイルポート部材22の内面22b、ベローズ本体31の外周面31c及びベローズキャップ32の上面32aから構成され、ガス封入口21aから注入される高圧ガスが封入されている。
【0026】
液室5は、オイルポート部材22の内面22b、ベローズ本体31の内周面31d、ベローズキャップ32の下面32b(ガスケット36)、ステー37の端面部37b及び外周面37eから構成され、オイルポート22a、ステー37の空洞部37d及び液体出入口37cを介して圧力配管から液体が流出入するようになっている。
【0027】
アキュムレータ1は、ハウジング2内に設けられるベローズ3の伸縮作動により、ベローズキャップ32を所定位置に移動させてガス室4のガス圧と液室5の液体圧とを均衡させて圧力調整を行っている。
【0028】
例えば、図2に示されるように、圧力配管の圧力低下に伴って液室5の液体圧が著しく低下した場合、ベローズキャップ32がガス室4のガス圧(液室5の液体圧よりも圧力が大きい)を受けて下方に移動しベローズ本体31が収縮することにより、ベローズキャップ32の下面32bに取付けられたガスケット36とステー37の端面部37bとが密接して液体出入口37cが閉塞される。これにより、液室5内に一部の液体が閉じ込められ、この閉じ込められた液体の圧力とガス室4のガス圧とが均衡するため、ベローズ本体31に過大な応力が作用することがなくなり、ベローズ本体31の破損を抑制できるようになっている。
【0029】
次いで、ベローズ本体31の構造について詳細に説明する。図1に示されるように、ベローズ本体31は、上下両端が開放する略円筒状を成す金属製の板材が山折りと谷折りの繰り返し構造を構成することにより、径方向外側に突出し上下方向(伸縮方向)に連続形成される外側環状山部38,38,…と、径方向内側に突出し上下方向に連続形成される内側環状山部39,39,…とを有している。この外側環状山部38,38,…及び内側環状山部39,39,…の繰り返し構造により、ベローズ本体31は、上下方向に伸縮可能となっている。尚、ベローズ本体31は、成形ベローズであり、外側環状山部38,38,…及び内側環状山部39,39,…は、それぞれ周方向に亘って略均一に突出している。
【0030】
また、図1に示されるように、ベローズ本体31は、固定端31a側よりも外側環状山部38,38,…の径が小さい領域が伸縮方向の中央部に分布している。言い換えれば、ベローズ本体31は、固定端31a側の領域A1に分布する外側環状山部38,38,…の径よりも伸縮方向の中央部を含む領域B1に分布する外側環状山部38,38,…の径が小さく、すなわちベローズ本体31の外径OD1よりも外径OD2が小さくなるように構成されている。尚、ベローズ本体31の遊動端31b側の領域A1は、固定端31a側と同じく外径OD1となるように構成されている。また、以下、ベローズ本体31の外径OD1の領域A1を構成する外側環状山部38,38,…を外側環状山部38A,38A,…、ベローズ本体31の外径OD2を構成する領域B1の外側環状山部38,38,…を外側環状山部38B,38B,…として説明する。
【0031】
次いで、アキュムレータ1が外部振動を受けた際のハウジング2内におけるベローズ3の振動について詳細に説明する。
【0032】
アキュムレータ1が外部振動を受けた際、ハウジング2を構成するシェル21及びオイルポート部材22と、オイルポート部材22の内面22bに固定端37aを溶接固定されるステー37は、同じ周期で一体に振動する。
【0033】
また、アキュムレータ1が外部振動を受けた際、ハウジング2内におけるベローズ本体31の固定端31aは、オイルポート部材22の内面22bに溶接固定されているため、上述したようにシェル21、オイルポート部材22及びステー37と同じ周期で一体に振動する。
【0034】
一方、ハウジング2内におけるベローズ本体31の遊動端31bは、ベローズキャップ32に取付けられる制振リング34により、径方向への振動が抑えられているが、前述したように、制振リング34の外周面34aとシェル21の内壁面21bとは、径方向に僅かに離間しているため、振動するシェル21内において径方向に僅かに振動しながら当接を繰り返している。すなわち、ベローズ本体31の遊動端31b側は、シェル21、オイルポート部材22及びステー37、さらに、ベローズ本体31の固定端31aとは、異なる周期で振動している状態となる。
【0035】
そのため、ベローズ本体31において、伸縮方向に張り渡される外側環状山部38,38,…及び内側環状山部39,39,…には、固定端31aと遊動端31bをそれぞれ基点とする径方向の異なる振動が生じることとなる。このとき、固定端31aと遊動端31bをそれぞれ基点とする径方向の各振動の周期が近くなるため、共振によりベローズ本体31の伸縮方向の中央部において局所的に径方向の振動の振幅が大きくなる(図3参照)。
【0036】
本実施例のアキュムレータ1のベローズ本体31においては、固定端31a側及び遊動端31b側の領域A1,A1に分布する外側環状山部38A,38A,…の径よりも伸縮方向の中央部を含む領域B1に分布する外側環状山部38B,38B,…の径が小さく、すなわちベローズ本体31の外径OD1よりも外径OD2が小さくなるように構成されているため、図3に示されるように、局所的に径方向の振動の振幅が大きくなるベローズ本体31の伸縮方向の中央部を含む領域B1に分布する外側環状山部38B,38B,…の突端がシェル21の内壁面21bに当接しないようになっている。これによれば、局所的に径方向の振動の振幅が大きく、従来シェル21の内壁面21bに繰り返し当接するベローズ本体31の伸縮方向の中央部を含む領域B1の当接を避けることができるため、ベローズ本体31の使用寿命を長くすることができる。
【0037】
尚、外部振動を受けるベローズ本体31において、局所的に振動の振幅が大きくなる箇所やその振幅量は、ベローズの形状、長さ、振動条件等により予測することが可能であるため、各条件に合わせて、当接を回避する必要がある箇所の外側環状山部38,38,…の径のみを小さく設計することにより、外側環状山部38,38,…の径を小さくする領域の割合を最低限に抑えることができる。本実施例のベローズ本体31は、外側環状山部38A,38A,…が分布する領域A1と比べて外側環状山部38B,38B,…が分布する領域B1の割合が小さくなるように構成されており、ハウジング2内においてベローズ本体31の外周面31c、あるいはベローズ本体31の内周面31dにより一部を構成されるガス室4及び液室5における容積の増減が抑えられるため、圧力調整時におけるベローズ3の伸縮作動への影響が小さくなっている。
【0038】
また、ベローズ本体31の当接を回避するために、シェル21の内径等の変更や別途部材を設ける必要がないため、シンプルな構造となり、アキュムレータ1の製造を行いやすい。さらに、ハウジング2内に当接回避部材等を別途設置する必要がないため、アキュムレータ1の質量増加がない。尚、本実施例におけるベローズ3は、片持ち梁の共振における2次モードの場合に有効である。
【実施例2】
【0039】
次に、実施例2に係るアキュムレータにつき、図4及び図5を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0040】
図4に示されるように、実施例2におけるアキュムレータ101のベローズ本体131は、固定端131a側及び遊動端131b側の領域A1,A1に分布する外側環状山部138A,138A,…の径よりも伸縮方向の中央部に向けて領域B1,B1及び領域C1に分布する外側環状山部138B,138B,…及び外側環状山部138C,138C,…の径が漸次小さく、すなわちベローズ本体131の外径OD1よりも外径OD2、OD3が漸次小さくなるように構成されている。
【0041】
これによれば、図5に示されるように、径方向の振動の振幅が最も大きくなるベローズ本体131の伸縮方向の中央部を含む領域C1に分布する外側環状山部138C,138C,…の突端がシェル21の内壁面21bに当接しないようになっている。これによれば、局所的に径方向の振動の振幅が大きく、従来シェル21の内壁面21bに繰り返し当接するベローズ本体131の伸縮方向の中央部を含む領域C1の当接を避けることができるため、ベローズ本体131の使用寿命を長くすることができる。尚、本実施例におけるベローズ3は、片持ち梁の共振における2次モードの場合に有効である。
【実施例3】
【0042】
次に、実施例3に係るアキュムレータにつき、図6及び図7を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図6に示されるように、実施例3におけるアキュムレータ201のベローズ本体231は、固定端231a側及び遊動端231b側の領域A1,A1に分布する外側環状山部238A,238A,…の径よりも伸縮方向の中央部を含む領域A1を挟んで上下に分割して外側環状山部238B,238B,…の径が小さい、すなわちベローズ本体231の外径OD1よりも外径OD2が小さい領域B1,B1が構成されている。尚、実施例3のベローズ本体231は、外部振動によるベローズ本体231の径方向への振動条件に合わせて、局所的に振動の振幅量が大きくなる箇所を予測してベローズ本体231の外径OD2が小さい領域B1,B1を設定したものである。
【0044】
これによれば、図7に示されるように、径方向の振動の振幅が大きくなるベローズ本体231の領域B1,B1に分布する外側環状山部238B,238B,…の突端がシェル21の内壁面21bに当接しないようになっている。これによれば、ベローズ本体231において、局所的に径方向の振動の振幅が大きくなり、シェル21の内壁面21bに当接すると予想される領域B1,B1の当接を避けることができるため、ベローズ本体231の使用寿命を長くすることができる。
【0045】
また、本実施例のベローズ本体231は、外側環状山部238A,238A,…が分布する領域A1と比べて外側環状山部238B,238B,…が分布する領域B1の割合が小さくなるように構成されており、ハウジング2内のガス室4及び液室5における容積の増減が抑えられるため、圧力調整時におけるベローズ3の伸縮作動への影響が小さくなっている。尚、本実施例におけるベローズ3は、片持ち梁の共振における3次モードの場合に有効である。
【実施例4】
【0046】
次に、実施例4に係るアキュムレータにつき、図8及び図9を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
図8に示されるように、実施例4におけるアキュムレータ301のベローズ本体331は、固定端331a側及び遊動端331b側の領域A2,A2に分布する内側環状山部339A,339A,…の径よりも伸縮方向の中央部を含む領域B2に分布する内側環状山部339B,339B,…の径が小さく、すなわちベローズ本体331の内径ID1よりも内径ID2が大きくなるように構成されている。尚、アキュムレータ301は、ベローズ本体331の内側に設けられるステー337の径方向の寸法が大きく設計され、ステー337の外周面337eがベローズ本体331の内周面331dに対して径方向に近接した状態となっている。また、シェル321の内壁面321bとベローズ本体331の外周面331cとを径方向に離間させて当接を避けるために、シェル321及び制振リング334の径方向の寸法が大きく設計されている。
【0048】
これによれば、図9に示されるように、局所的に径方向の振動の振幅が大きくなるベローズ本体331の伸縮方向の中央部を含む領域B2に分布する内側環状山部339B,339B,…の突端がステー337の先端近傍に当接しないようになっている。これによれば、局所的に径方向の振動の振幅が大きく、ステー337の先端近傍に繰り返し当接するベローズ本体331の伸縮方向の中央部を含む領域B2の当接を避けることができるため、ベローズ本体331の使用寿命を長くすることができる。
【0049】
また、本実施例のベローズ本体331は、内側環状山部339A,339A,…が分布する領域A2と比べて内側環状山部339B,339B,…が分布する領域B2の割合が小さくなるように構成されており、ハウジング2内のガス室4及び液室5における容積の増減が抑えられるため、圧力調整時におけるベローズ3の伸縮作動への影響が小さくなっている。尚、本実施例におけるベローズ3は、片持ち梁の共振における2次モードの場合に有効である。
【実施例5】
【0050】
次に、実施例5に係るアキュムレータにつき、図10及び図11を参照して説明する。尚、前記実施例に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0051】
図10に示されるように、実施例5におけるアキュムレータ401におけるベローズ本体431は、固定端431a側及び遊動端431b側の領域A1,A1に分布する外側環状山部438A,438A,…の径よりも伸縮方向の中央部を含む領域B1に分布する外側環状山部438B,438B,…の径が小さく、すなわちベローズ本体431の外径OD1よりも外径OD2が小さくなるように構成されている。また、ベローズ本体431は、固定端431a側及び遊動端431b側の領域A2,A2に分布する内側環状山部439A,439A,…の径よりも伸縮方向の中央部を含む領域B2に分布する内側環状山部439B,439B,…の径が小さく、すなわちベローズ本体431の内径ID1よりも内径ID2が大きくなるように構成されている。尚、アキュムレータ401は、ベローズ本体431の内側に設けられるステー437の径方向の寸法が大きく設計され、ステー437の外周面437eがベローズ本体431の内周面431dに対して径方向に近接した状態となっている。
【0052】
これによれば、図11に示されるように、局所的に径方向の振動の振幅が大きくなるベローズ本体431の伸縮方向の中央部を含む領域B1に分布する外側環状山部438B,438B,…の突端がシェル21の内壁面21bに当接しないようになっている。また、同様に、ベローズ本体431の伸縮方向の中央部を含む領域B2に分布する内側環状山部439B,439B,…の突端がステー437の先端近傍に当接しないようになっている。これによれば、局所的に径方向の振動の振幅が大きく、シェル21の内壁面21b及びステー437の先端近傍に繰り返し当接するベローズ本体431の伸縮方向の中央部を含む領域B1,B2の当接を避けることができるため、ベローズ本体431の使用寿命を長くすることができる。
【0053】
また、本実施例のベローズ本体431は、外側環状山部438A,438A,…及び内側環状山部439A,439A,…が分布する領域A1,A2と比べて外側環状山部438B,438B,…及び内側環状山部439B,439B,…が分布する領域B1,B2の割合が小さくなるように構成されており、ハウジング2内のガス室4及び液室5における容積の増減が抑えられるため、圧力調整時におけるベローズ3の伸縮作動への影響が小さくなっている。尚、本実施例におけるベローズ3は、片持ち梁の共振における2次モードの場合に有効である。
【0054】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0055】
例えば、前記実施例では、アキュムレータ1,101,201,301,401は、ベローズ3の外側にガス室4を設定するとともに、ベローズ3の内側に液室5が設定されるいわゆる外ガスタイプのアキュムレータとして説明したが、これに限らず、例えば、ベローズ本体の固定端をシェルの上端側に溶接固定することにより、ベローズの内側にガス室を設定するとともに、ベローズの外側に液室を設定する内ガスタイプのアキュムレータとしてもよい。
【0056】
また、前記実施例では、ハウジング2は、有底円筒状のシェル21と、シェル21の下端を閉塞するように溶接固定されるオイルポート部材22と、から構成されるものとして説明したが、これに限らず、ハウジングにガス封入口とオイルポートが形成されていれば、シェルとオイルポート部材とが一体に構成されるものであってもよい。
【0057】
また、前記実施例では、ベローズキャップ32の下面32bにガスケット36が取付けられ、ベローズ3の伸縮作動の際にステー37,337,437の端面部37b,337b,437bに密接させる態様として説明したが、これに限らず、ステーの端面部にガスケットが取付けられていてもよい。
【0058】
尚、ベローズ本体31,231,331,431は、金属製のものに限らず、例えば樹脂等から構成されるものであってもよい。
【0059】
また、前記実施例では、ベローズ本体31,231,331,431は、1枚の板材が山折り谷折りされた繰り返し構造を有するものとして説明したが、これに限らず、複数のリング状の円板の内径端及び外径端を溶接固定することにより構成されるものであってもよい。また、山折り谷折りの部分は、曲面状のものに限らず、鋭角に構成されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 アキュムレータ
2 ハウジング
3 ベローズ
4 ガス室
5 液室
21 シェル(ハウジング)
21a ガス封入口
21b 内壁面
22 オイルポート部材(ハウジング)
22a オイルポート
31 ベローズ本体(ベローズ)
31a 固定端
31b 遊動端
32 ベローズキャップ(ベローズ)
34 制振リング
37 ステー
37c 液体出入口
38,38A,38B 外側環状山部
39 内側環状山部
A1,B1 領域
ID1,ID2 内径
OD1,OD2 外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11