【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、既存のエスカレータまたは既存の動く歩道を最新化する方法によって達成される。前記方法は、
既存のエスカレータまたは既存の動く歩道の既存の骨組みから、全ての電気および機械部品を取り除く工程であって、既存の骨組みが、2つの骨組み側部、および前記骨組み側部を接続するベース構造を有し、骨組み側部が、ベース構造から距離を隔てて配置された横材によって互いに接続されている工程と、
既存の骨組みの全ての既存の横材を取り除き、取り除かれた既存の横材の少なくとも一部を、エスカレータまたは動く歩道の設置される新しい構成要素が一致する、新しい横材に交換する工程であって、横材の交換中に、既存の骨組みの2つの骨組み側部が、骨組みのベース構造から距離を隔てた少なくとも一箇所で、相互に安定化するように互いに接続されている工程と
を含む。
【0009】
上述の方法は、新たに挿入される構成要素に関する必要な大規模な適合作業の主要因をなくす。この作業は特に、典型的には循環コンベヤベルト(エスカレータのステップベルト、動く歩道のパレットベルト)の前進運動と後退運動との間に配置された、既存の横材に起因する。既存の横材は、製造業者に応じて非常に異なる寸法を有することがあり、したがって、前進運動および後退運動のレール間の距離に影響を及ぼす。しかし、挿入される新しい横材は、理想的には新たに挿入される構成要素に一致しており、それにより、レール、レール支持体またはフレーム、転向モジュール、クランプスライドなど、新しい構成要素が、既存の骨組みにおける既存の横材の寸法および位置に適合される必要がなくなる。
【0010】
大部分の既存の骨組みの骨組み側部は、横材、および支持ブラケットによる端面を除いて、ベース構造のみによって互いに接続されており、したがって、エスカレータまたは動く歩道の追加の構成要素用の、U字形断面を有し上向きに開く収容構造を形成している。
【0011】
既存の横材を取り除く上での特定の障害は、既存の横材が既存の骨組みから容易に切断されることができないことである。というのは、前記横材が、建物に取り付けられた既存の骨組みの2つの骨組み側部を支持し、したがって、既存の骨組みに高い剛性および安定性を与えているからである。既存の骨組みは、橋と同様に、その2つの端面のみで建物に取り付けられているので、最新化方法が実施されているときでも、危険な状況が防がれなければならない。2つの端面は、建物への骨組みの接触面としての支持ブラケットが配置されている領域である。利用者がエスカレータまたは動く歩道に出入りすることができるアクセス領域もそこに配置されている。特に長いエスカレータおよび動く歩道の場合、骨組みはまた、中間軸受によって2つの端面の間でも支持されることができる。しかし、これは、足りない横材がある場合、骨組みを剛性かつ安定に保つには十分ではない。
【0012】
骨組みの構造は、その垂直な骨組み側部の剛性および持続可能性を求めて設計されている。骨組みの正味重量、および点荷重、揺れ、振動など骨組みに働く力のため、骨組み側部が横材の欠如によって横に傾き、次いで骨組みが崩壊する、または少なくとも塑性変形する危険がある。崩壊または変形された骨組みは、完全に使用不能であり、修理またはまっすぐにされることさえできない。
【0013】
寸法の安定性および剛性のある骨組みもまた、最新化方法が実施されるときに過小評価されるべきではない利点である。空にされた骨組みは、組立人員の安全性が確保されるときのみ組立足場として使用され得る。その寸法の安定性が確保されるとき、既存の骨組みの資材が、その設置場所に安全に輸送されることができる。
【0014】
本方法の一変形形態では、横材は、2つの骨組み側部を安定化させるために順次交換される。作業が進行するにつれて、骨組み側部は、順次交換のため、漸減的に既存の横材によって、また漸増的に新しい横材によって、相互に安定化するように互いに接続され、新しい横材は、ベース構造から距離を隔てており、2つの骨組み側部を接続するように骨組みに配置されている。
【0015】
好ましくは、順次交換の場合、各場合に1つの横材が他の横材の後に交換される。骨組み側部の固有安定性に応じて、2つ以上の横材が同時に交換されてもよい。別の可能性としては、まず各第2の既存の横材が取り除かれ、それが取り除かれた後、空いた箇所にそれぞれ新しい横材が設けられる。続いて、残りの既存の横材が取り除かれ、次いで、空いた箇所に新しい横材が設けられる。
【0016】
本方法の別の変形形態では、2つの骨組み側部を安定化させるための少なくとも1つの安定化装置が、既存の横材が取り除かれる前に既存の骨組みに固定される。既存の骨組みのベース構造から距離を隔てた一箇所で相互に安定化するように、この装置は骨組み側部を接続する。少なくとも1つの安定化装置が固定された後、既存の横材が取り除かれることができ、次いで、新しい横材が挿入されることができる。新しい横材が挿入された後、少なくとも1つの安定化装置が取り外される。
【0017】
たとえば単純な安定化部材が、安定化装置として骨組み側部に固定されてもよい。この安定化部材は、好ましくはクランプジョー、ねじ、ソケットピン、コッタボルトなど取外し可能な連結要素によって、骨組み側部に固定されることができる。この場合、前記部材が、骨組み側部を互いに対して支持すれば十分であり、安定化部材は大きな力を伝達できなくてもよい。しかし、安定化部材は、引張応力と圧力の両方に強くなければならず、すなわち、引裂または座屈なしに、その固定箇所で発生する最大引張力および圧縮力に耐えることができる。
【0018】
好ましくは、既存の骨組みにおける新しい横材の位置は、新たに挿入される最新化構成要素に必要な設置空間から、また骨組み側部の高さに関係して決定される。これは、挿入される新しい構成要素のために、特にステップベルトまたはパレットベルトの後退運動のために、新しい横材とベース構造との間に十分な通路空間があることを確実にすることができる。しかし、骨組みにおけるステップベルトまたはパレットベルトの位置にやはりその位置が依存する新しい欄干ベースにあまりに多くの適合を行う必要がないように、ベース構造からあまりに大きな距離を隔てて骨組み側部の間に、新しい横材は配置されるべきではない。
【0019】
最新化担当の組立人員の作業をより容易にするために、新しい横材の位置は、位置決め指示として、既存の骨組み側部の上弦材から既存の骨組み側部の下弦材に向かう距離として確定されることが好ましい。横材が挿入されるときに、単純に距離を測定して、たとえば既存の骨組み側部の骨組みウェブに印をつければ十分である。これらの骨組みウェブは、その上弦材をその下弦材に接続している。続いて、新しい横材が、ねじクランプによって骨組みウェブにしっかりと固定されることができ、次いで、前記ウェブに溶接、リベット締め、またはねじ締めされることができる。横材は、可能な限り水平に位置合わせされなければならない。しかしながら、フレームが挿入されたときにのみ精密な位置合わせが行われるので、たとえばアルコール水準器による横材の非常に精密な位置合わせは、必ずしも必要とされない。
【0020】
典型的には、既存の横材は、骨組み側部の骨組みウェブの第1の側面に溶接されている。既存の横材は、単純に両側を、また骨組みウェブ付近で切断されることにより、迅速かつ容易に取り除かれることができる。その結果、既存の横材の小さな断片が、各骨組み側部または骨組みウェブに残る。この断片が面倒な方法で取り除かれなくてもよいために、新しい横材は、骨組みウェブの第2の側面に固定されることができる。
【0021】
さらなる工程では、レール接触面を有する第1の転向モジュールが、新しい横材が設けられた骨組みに、骨組みの第1の端部で設置されることができ、レール接触面を有する第2の転向モジュールが、骨組みに、骨組みの第2の端部で設置されることができる。「骨組みの端部」という用語は、骨組みの2つの端面を指し、これらは、典型的にはそれぞれが、骨組みを建物内で支持する支持ブラケットを有する。2つの転向モジュールの正しい位置は、骨組みに隣接する水平面、たとえば建物の階の床に応じて、また既存の骨組みにおける新しい横材の位置で確定される。
【0022】
しばしばレールブロックと呼ばれる転向モジュールは、ステップベルトまたはパレットベルトをその前進運動からその後退運動に転向させるための全ての関連構成要素を含む。これらは、たとえば、レール接触面を有する転向ガイドレールである。第1の転向モジュールは、転向スプロケットが設けられた転向シャフトを有するクランプスライドをさらに備える。第2の転向モジュールは、レール接触面だけでなく、駆動スプロケットを有する駆動シャフト、および任意に、駆動シャフトを駆動するための歯車機構を有する駆動モータをさらに備える。
【0023】
フレームは、転向モジュールの間で骨組みに固定され、レールまたはトラック用の固定箇所を有する。ステップベルトまたはパレットベルトの滑らかな直線運動を確保するために、レールはレール接触面と正確に位置合わせされなければならない。これは、位置合わせ装置が第1の転向モジュールのレール接触面に配置され、ターゲット装置が第2の転向モジュールのレール接触面に配置されるときに、特に精密に行われる。位置合わせ装置は、位置合わせ手段、好ましくはレーザビームを備える。当然、別の位置合わせ手段、たとえば、張設されたケーブル、張設されたコード、または張設されたワイヤが使用されてもよく、前記手段が使用されるときは、その正味重量のため、たるみを考慮することが必要である。位置合わせ手段は、ターゲット装置に合わせて調整される。挿入されるフレームなどの、転向モジュールの間で骨組みに挿入される追加の構成要素は、この位置合わせ手段に位置合わせされることができる。
【0024】
フレームを組み立てる場合、フレーム組立装置またはフレーム組立治具が利用可能であることが好ましい。このフレーム組立装置にはまず、設けられたレセプタクルに、右側フレームおよび左側フレームが設けられる。次いで、フレーム組立装置が新しい横材上に配置され、次いで、フレーム組立装置が、別個の調整装置によって、位置合わせ装置の位置合わせ手段に位置合わせされる。次いで、フレーム組立装置によって整列保持されたフレームが、新しい横材に固定される。最後に、フレーム組立装置が、フレームが設けられた新しい横材から取り外される。
【0025】
新しい横材は、それらに特に安定効果があるように設計され得る。この場合、フレームは、たとえば骨組みウェブとフレームとの間に溶接された連結リンクによって、骨組み側部に付加的にまたは単独で固定されることができる。この種の横材、特に安定横材は、それらの断面に関して非常に小さな寸法を有し、いかなる既存の骨組みにも収まる非常に細い構造を可能にすることができる。
【0026】
次いで、新しい横材、フレーム、および転向モジュールが設けられた骨組みが、新しいレール、駆動構成要素、制御構成要素で、新しいステップベルトまたはパレットベルトで、外装部品、欄干、および手すりで完成されて、最新化されたエスカレータまたは最新化された動く歩道を形成することができる。
【0027】
上述の既存のエスカレータまたは既存の動く歩道の最新化方法を実施する装置セットが設けられることが好ましい。このセットは、
転向モジュールのレール接触面と位置合わせされることができる支持点を備える、少なくとも1つの位置合わせ装置と、
転向モジュールのレール接触面と位置合わせされることができる支持点を備える、少なくとも1つのターゲット装置であって、設置時に位置合わせ装置がターゲット装置に合わせて調整可能である少なくとも1つのターゲット装置と、
新しい横材に一致し、調整装置、および少なくとも1つのフレーム用の少なくとも1つのレセプタクルを備える、少なくとも1つのフレーム組立装置と
を含む。
【0028】
フレーム組立装置の調整装置は、組立装置を調整する目的で新しい横材に支持された、2つの相互に末端に配置された設定装置を備えてもよい。調整装置は、穴を有する位置合わせ開口部、または溝を有するノッチをさらに含む。穴または溝の断面の直径は、位置合わせ手段に一致している。たとえば、位置合わせ装置のレーザビームが位置合わせ手段として使用される場合、レーザビームのビーム断面を有する穴を有する位置合わせ開口部が使用されることが好ましい。ワイヤが位置合わせ手段として使用される場合、その断面がワイヤ断面に一致している溝を有するノッチが代わりに設けられる。
【0029】
まず新しい横材が、次いでフレームが組み立てられることが上述で説明された。当然、横材およびフレームは、本発明による方法を用いて共に挿入されてもよい。この場合、既存の横材の交換品として既存の骨組みに設置される新しい横材には、既にフレームが設けられている。好ましくは、フレーム状の構造が、新しい横材に形成されている。特に好ましくは、新しい横材は金属シートから1枚に切断され、新しい横材は、折り曲げ縁部によって形成されたC字形中央部、および中央部に一体的に形成された少なくとも2つのフレーム部を備える。これらのフレーム部には、エスカレータまたは動く歩道のレール用の少なくとも固定箇所が形成されている。
【0030】
しかし、この場合、この新しい横材を簡単かつ大まかな位置合わせで骨組みウェブに溶接することは十分ではない。というのは、フレームが既に新しい横材に一体的に形成されており、したがって、フレームをレール接触面と位置合わせする可能性がなくなるからである。この種の新しい横材が利用されるときは、したがって、まず転向モジュールが骨組みに設置される。既に説明されたように、位置合わせ装置およびターゲット装置がレール接触面上に配置される。次いで、上述のタイプの新しい横材が、位置合わせ手段に位置合わせされる。この目的のために、新しい横材には、位置合わせ開口部、または溝を有するノッチが、一時的に固定され得る。
【0031】
上述の新しい横材に、少なくとも1つの、穴を有する位置合わせ開口部、または溝を有するノッチが形成されている場合、特に有利である。これは、前記横材が、好ましくはレーザ切断法またはCNCパンチング法によって金属シートから製作され、位置合わせ開口部またはノッチが、同時に切り取られることができるので、何の問題もなく可能である。穴または溝の断面の直径は、位置合わせ装置の位置合わせ手段に一致している。
【0032】
既存のエスカレータまたは既存の動く歩道を最新化する方法は、例および図面を参照して以下に説明され、全ての図面において同じ構成要素には同じ参照符号が使用される。