(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
作業領域に1層分の金属粉末を供給し、供給された金属粉末の所定領域をレーザ光で走査することにより金属粉末を溶融および結合させる動作を繰り返すことで金属配管を得る製造方法であって、
前記金属配管の造形に際して全体的に同じ前記金属粉末を用い、かつ前記レーザ光の強度および前記レーザ光の走査速度の少なくとも一方を変えることより、一体的に形成され、かつ同じ化学組成を有するとともに機械的性質および物理的性質の少なくとも1つが異なる、第1部分と、第2部分とを含む複数の部分を前記金属配管に形成し、
前記第1部分と前記第2部分の金属表面の色合いが互いに異なり、
前記第1部分と前記第2部分のロックウェル硬さが互いに異なる、
製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のいくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
各実施形態にて開示する金属配管は一例にすぎない。各実施形態にて開示する金属配管の構成および製造方法は、その他の種々の金属配管にも適用し得る。また、各実施形態においては、金属配管との用語を金属材料により形作られた配管との意味で用いる。配管は、部材、物品、造形物、3次元造形物、製品などと言い換えることもできる。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る金属配管構造S1の概略的な構成を示す平面図である。
【0021】
金属配管構造S1は、例えば航空機・宇宙機に設置される配管類の一部である。金属配管構造S1は、その他の装置・設備等に使用される配管類であってもよい。
【0022】
金属配管構造S1は、第1金属配管1と、第2金属配管2と、第1伸縮管100aを備えている。第1伸縮管100aは、第1金属配管1と第2金属配管2の間に位置している。第1伸縮管100aは、例えばベローズなどの伸縮継手である。第1伸縮管100aは、蛇腹状に形成された波形部と、配管と接続するための接続部とを備えている。例えば、第1伸縮管100aは、チタン合金やステンレス鋼によって製作される。
【0023】
第1金属配管1および第2金属配管2と第1伸縮管100aは、例えば溶接によって一体的に連結されている。図示した例にはないが、第1金属配管1と第1伸縮管100aの間に他の配管(直管等)を配置し連結することで、金属配管構造を構成してもよい。また、第2金属配管2と第1伸縮管100aの間においても、同様に他の配管を配置してもよい。
【0024】
第1金属配管1は、第1部分11と、第2部分12と、第3部分13を有している。第2金属配管2は、第1部分21と、第2部分22と、第3部分23を有している。各第1部分11,21は、管軸AXが曲線状の部分である。各第2部分12,22と第3部分13,23は、管軸AXが直線状の部分である。
【0025】
第1部分11では、管軸AXに沿う断面において第1金属配管1の内面および外面の少なくとも1つが曲率を有している。第2部分12および第3部分13では、管軸AXに沿う断面において第1金属配管1の内面および外面が直線状である。同様に、第1部分21では、管軸AXに沿う断面において第2金属配管2の内面および外面の少なくとも1つが曲率を有している。第2部分22および第3部分23では、管軸AXに沿う断面において第2金属配管2の内面および外面が直線状である。
【0026】
第1金属配管1の第2部分12は、第1伸縮管100aと第1金属配管1の第1部分11の間に位置している。第2金属配管2の第2部分22は、第1伸縮管100aと第2金属配管2の第1部分21の間に位置している。第1金属配管1の第1部分11は、第2部分12と第3部分13の間に位置している。第2金属配管2の第1部分21は、第2部分22と第3部分23の間に位置している。
【0027】
図示した例では、各第1部分11,21は90°に湾曲した形状であるが、それ以外の角度であってもよい。各第1部分11,21は、装置内における配管レイアウトに応じて、所定の角度に曲げることができる。第1金属配管1および第2金属配管2は、管軸AXが直線状である第2部分12,22と第3部分13,23をそれぞれ有しているが、第1部分11,21のみで構成されてもよい。
【0028】
本実施形態においては、第1金属配管1および第2金属配管2が、同一構造および同一の性質を有する場合を想定する。しかし、第1金属配管1と第2金属配管2は、構造および性質が両方とも異なってもよいし、構造および性質のどちらか一方のみが異なってもよい。
【0029】
ここで第1金属配管1を例に金属配管について説明する。
【0030】
第1金属配管1の第1部分11、第2部分12、および第3部分13は、一体的に形成され、かつ同じ化学組成を有している。ここで、第1部分11、第2部分12、および第3部分13が「一体的に形成」されているとは、第1部分11、第2部分12、および第3部分13が溶接、接着、または他の部材を介した接続等の方法により互いに連結されているのではなく、1つの継ぎ目のない物として形成されていることを意味する。また、第1部分11、第2部分12、および第3部分13が「同じ化学組成を有する」とは、第1部分11、第2部分12、および第3部分13を構成する元素の種類および比率が完全に同じである場合だけでなく、当該比率が誤差程度に異なる場合も含む。例えば、後述する3Dプリンタを用いた造形において同じ金属粉末を用いて第1部分11、第2部分12、および第3部分13を形成した場合、第1部分11、第2部分12、および第3部分13の結晶組織や析出の状態が異なったとしても、第1部分11、第2部分12、および第3部分13は同じ化学組成を有するとみなすことができる。
【0031】
第1部分11、第2部分12、および第3部分13において、機械的性質および物理的性質の少なくとも1つが異なる。機械的性質としては、例えば硬さ、強度(引張り強さ、圧縮強さ、せん断強さ)、靱性、疲労特性、クリープ特性、耐摩耗性などが挙げられる。また、物理的性質としては、例えば密度、熱伝導率、線膨張率、電気抵抗率、結晶構造、光学的特性などが挙げられる。
【0032】
また、第1金属配管1は、第1部分11、第2部分12、および第3部分13と機械的性質および物理的性質が異なる他の部分をさらに含んでもよい。また、第1部分11、第2部分12、および第3部分13内において、機械的性質および物理的性質の性質を段階的に変化させてもよい。同様に、第2金属配管2は、第1部分21、第2部分22、および第3部分23と機械的性質および物理的性質が異なる他の部分をさらに含んでもよい。また、第1部分21、第2部分22、および第3部分23内において、機械的性質および物理的性質の性質を段階的に変化させてもよい。
【0033】
本実施形態において一例として、第1部分11,21の硬さが第2部分12,22と第3部分13,23の硬さよりも小さい場合を想定する。この場合、第1部分11,21は、第2部分12,22と第3部分13,23に比べて軟らかい。したがって、金属配管構造S1に加わる振動や応力を第1伸縮管100aのみならず、各第1部分11,21にて緩和することができる。そのため、金属配管構造S1に過度な負荷が加わった場合に、第1伸縮管100aのみを設置した場合と比較して、金属配管構造S1の破損等をより抑制することができる。また、第2部分12,22と第3部分13,23の硬さは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0034】
特に航空・宇宙分野では、激しい振動が長時間継続するような過酷な環境で製品が使用される。そのため、使用する部品に対して高い信頼性が要求される。曲管を有する金属配管構造が振動した際には、その曲管部に振動による応力が発生する。応力が集中する曲管部に他の部分と比較して硬さが小さい部分を予め設けておくことで、配管にかかる応力を緩和することができ、金属配管構造の破損を防止することができる。
【0035】
さらに、本実施形態においては、一様な光を照射して第1金属配管1および第2金属配管2を観察したときに、第1部分11,21よりも第2部分12,22と第3部分13,23の方が暗い色合いを有する場合を想定する。なお、ここでの色合いは、第1部分11,21、第2部分12,22、第3部分13,23を構成する金属材料の表面の光学的特性であって、金属材料の表面に塗布され得る塗料等の色を意味するものではない。
【0036】
このように、第1部分11,21、第2部分12,22、および第3部分13,23で機械的性質を異ならせることで、用途に応じた特性を第1部分11,21、第2部分12,22、および第3部分13,23に与えることができる。また、第1部分11,21、第2部分12,22、および第3部分13,23の色合いを異ならせることで、第1部分11,21、第2部分12,22、および第3部分13,23の特性や境界を視覚的に把握できる。これは、使用環境下で作業者が金属配管構造の特性を把握する際の負担軽減につながり、メンテナンス時の時間短縮にも貢献できる。
【0037】
図2は、
図1で示した金属配管構造S1の管軸AXに沿う部分断面図である。ここでは第1金属配管1の断面形状を主に示しているが、第2金属配管2の断面形状も第1金属配管1と同様である。第1金属配管1の壁部は、第1部分11、第2部分12、および第3部分13にわたり、一定の厚さT1を有している。ただし、第1部分11の壁部を第2部分12と第3部分13の壁部よりも厚くすることも可能であるし、また第2部分12と第3部分13から第1部分11にかけて壁部を漸次厚くすることも可能である。例えば、規格品と同一寸法の曲管であったとしても、壁部の厚さT1を規格品よりも薄くすることで壁部の薄い曲管を得ることができ、第1金属配管1の質量を軽減し、第1金属配管構造全体の質量を軽減することも可能である。また、強度を強くしたい部分の壁部の厚さを意図的に厚くすることも可能である。
【0038】
ここで、第1金属配管1を直管から曲げ加工にて製作する場合を想定する。直管を曲げる際に、パイプベンダーと呼ばれる装置を用いて曲げ加工を行う場合がある。この場合、直管をパイプベンダーに装着し、曲げ加工を行う。直管の曲げ半径R1は、使用するパイプベンダーや使用する直管の外径D1によって決まる。そのため、使用する直管の外径D1に対して曲げ半径R1が小さい曲管が必要であったとしても、曲げ加工での製作が不可能な場合がある。例えば、曲げ半径R1が、外径D1の2倍より小さい場合(R1<2×D1)には、曲げ加工は困難である。言い換えると、曲げ加工を行うためには、曲げ半径R1は、外径D1の2倍より大きい(R1>2×D1)必要があるといえる。
【0039】
また、直管の端部をパイプベンダーに固定しながら曲げ加工を行うため、直管は一定以上の長さが必要である。曲げ加工にて製作される曲管は、管軸が曲線状である曲管部分と曲管部分の両端に管軸が直線状である直管部分を含むことになる。言い換えると、直管部分のない曲管を曲げ加工で製作することはできない。例えば、直管部分の長さL1が、外径D1より短い場合(L1<D1)には、曲げ加工が困難である。言い換えると、直管部分の長さL1は、外径D1よりも長く(L1>D1)必要であるといえる。
【0040】
まとめると、曲げ加工において曲管の寸法は、曲げ半径と直管部分の長さの制約を受ける。仮に直管部分の長さが短い場合、曲げ加工を行うと直管部分の端部の開口部が、扁平な形状に変形してしまう。このような曲管と他の配管を溶接等で接合する場合、溶接前に変形を修正しなければならない。また、この修正作業にはかなりの作業工数が必要となる。
【0041】
他にも曲げ加工により配管の壁部の厚さに偏りが生じたり、壁部にシワが発生することもある。曲げ加工には、熟練した技術を要するため、作業者が限定されるといった問題もある。
【0042】
後述する3Dプリンタを用いた成形であれば、曲管が曲げ半径や直管部分の長さによる制約を受けることがないため、必要な形状の曲管を得ることができる。配管の内径および外径が一定である、安定した配管を製造することが可能となる。3Dプリンタによる成形品であれば変形もないため、変形を修正するための作業工数分を短縮することができ、コスト削減にも貢献する。また、3Dプリンタによる成形であれば、曲管に限定されず、必要な形状の配管を得ることができる。
【0043】
一例として、第2部分12および第3部分13の管軸AXに沿う長さ(L1)は、第1金属配管1の外径(D1)より小さくてもよい(L1<D1)。また、第1部分11の曲げ半径(R1:管軸AXの曲率半径)は、外径(D1)の2倍より小さくてもよい(R1<2×D1)。第2金属配管2についても同様の条件を適用し得る。
【0044】
続いて、第1金属配管1および第2金属配管2の製造方法について説明する。第1金属配管1および第2金属配管2は、3Dプリンタを用いて製造することができる。金属製の造形物を製造する3Dプリンタには種々の方式が存在するが、ここでは一例としてレーザを用いたパウダーベッド方式の3Dプリンタを用いて、第1金属配管1を製作する工程を想定する。
【0045】
図3は、3Dプリンタ200により第1金属配管1を造形する様子を概略的に示す斜視図である。3Dプリンタ200は、ステージ210と、壁部220と、コータ230と、レーザ240とを備えている。
【0046】
ステージ210は、昇降機構により駆動されて上下方向に昇降する。壁部220は、ステージ210の周囲を囲っている。コータ230は、供給源から供給される金属粉末Mをステージ210の上に均等な厚さで敷き詰める。金属粉末Mとしては、例えばニッケル基合金を用いることができるが、この例に限られない。
【0047】
レーザ240は、コータ230により敷き詰められた金属粉末Mにレーザ光Lを照射する。レーザ光Lとしては、例えばイッテルビウム(YB)ファイバレーザを用いることができるが、この例に限られない。
【0048】
造形にあたっては、先ず第1金属配管1およびそのサポート材SMの3Dデータが3Dプリンタ200に入力される。当初はステージ210が壁部220の上端よりやや下方に位置している。この状態において、コータ230により1層分の金属粉末Mがステージ210の上に供給され、パウダーベッドPBが形成される。レーザ240は、3Dデータに基づいて当該1層分の第1金属配管1またはサポート材SMの断面に対応するパウダーベッドPB上の領域にレーザ光Lを照射する。レーザ光Lが照射された部分においては、金属粉末Mが溶融および結合する。
【0049】
1層分の造形が終わると、ステージ210が所定距離だけ降下する。さらに、コータ230によって次の1層分のパウダーベッドPBが形成され、当該1層分の第1金属配管1またはサポート材SMの断面に対応するパウダーベッドPB上の領域にレーザ光Lが照射される。このような動作を繰り返すことで、金属粉末Mの焼結体である第1金属配管1およびサポート材SMが形成される。
【0050】
各層の造形において、レーザ240は、第1走査方向SD1にレーザ光Lを走査する動作を第2走査方向SD2に向けて繰り返し実行する。例えば、第1走査方向SD1はの管軸AXに沿う平面と垂直な方向と一致し、第2走査方向SD2は管軸AXに沿う平面と平行な方向と一致する。レーザ光Lは、第1走査方向SD1への1回の走査ごとに所定角度だけ回転されてもよい。
【0051】
第1走査方向SD1におけるレーザ光Lの走査速度や、レーザ光Lの出力を変更することにより、機械的性質または物理的性質が異なる複数の部分を第1金属配管1に設けることができる。例えば、第2部分12のような硬い部分については、他の部分よりもレーザ光Lの出力を高めてもよいし、第1走査方向SD1への走査速度を遅くしてもよい。
【0052】
全ての層の造形が終わると、第1金属配管1がサポート材SMから切り離される。このように、全体的に同じ金属粉末Mを用いて第1金属配管1を造形すれば、第1部分11および第2部分12の化学組成が実質的に同じになる。造形の後、第1金属配管1に対して熱処理が施されてもよい。
【0053】
[実施例]
ここで、第1金属配管1の実施例について説明する。
本実施例においては、以下の化学組成(質量%)を有するニッケル基合金の金属粉末Mを用いて
図3に示した方法により第1金属配管1を造形した。
【0054】
ニッケル(Ni) 53.29%
クロム(Cr) 17.71%
ニオブ(Nb)+タンタル(Ta) 5.27%
モリブデン(Mo) 2.96%
チタン(Ti) 0.96%
アルミニウム(Al) 0.48%
コバルト(Co) 0.44%
マンガン(Mn) 0.05%
銅(Cu) 0.02%
炭素(C) 0.026%
ケイ素(Si) 0.05%
ホウ素(B) 0.0026%
鉄(Fe) 極少量
第1部分11、第2部分12、および第3部分13の造形におけるレーザ光Lの出力(W)と第1走査方向SD1への走査速度(mm/s)は以下の通りである。
(1)第1部分11 100W,900mm/s
(2)第2部分12および第3部分13 285W,960mm/s
なお、サポート材SMの造形にも上記(1)の条件を用いた。さらに、造形後の第1金属配管1に対して750℃の熱処理を24時間にわたり施した。
【0055】
このようにして得られた第1金属配管1において、第1部分11、第2部分12、および第3部分13のロックウェル硬さ(HRC)を測定した。その結果、第1部分11においては6.29、第2部分12および第3部分13においては18.48という結果が得られた。すなわち、本実施例においては、第1部分11の硬さが第2部分12および第3部分13の硬さよりも小さい第1金属配管1を製造することができた。
【0056】
他の観点から言うと、第1金属配管1においては、第1部分11よりも第2部分12および第3部分13の方が大きい密度を有している。これにより、第1金属配管1を全体的に第2部分12および第3部分13と同じ密度で形成する場合に比べ、第1金属配管1を軽量化できる。また、第1部分11と第2部分12および第3部分13とは、それぞれ異なる色合いとなった。これらは、造形時の条件により各部分の金属組織が異なること等に起因する。
【0057】
上記のような化学組成の金属材料の機械的強度、特に高温特性は、熱処理において析出するNi3AlおよびNi3Nbに依存する。したがって、Ni3AlおよびNi3Nbの析出を熱処理において好適に制御することが重要である。この点に関し、本実施例の熱処理を行った場合には、第1金属配管1が良好な高温特性を有することが分かった。
【0058】
なお、金属粉末Mの化学組成は上述のものに限られず、例えば下記の範囲で適宜に定めてもよい。また、金属粉末Mは、硫黄(S)やリン(P)を含んでもよい。
ニッケル(Ni) 50.00−55.00%
クロム(Cr) 17.00−21.00%
ニオブ(Nb)+タンタル(Ta) 4.75−5.50%
モリブデン(Mo) 2.80−3.30%
チタン(Ti) 0.65−1.15%
アルミニウム(Al) 0.20−0.80%
コバルト(Co) 1.00%以下
マンガン(Mn) 0.35%以下
銅(Cu) 0.30%以下
炭素(C) 0.08%以下
ケイ素(Si) 0.35%以下
ホウ素(B) 0.006%以下
鉄(Fe) 極少量
さらに、熱処理の温度は750℃に限らず、730℃以上かつ850℃以下の範囲の他の温度で行ってもよい。また、熱処理の時間も24時間に限られず、例えば18時間以上かつ30時間以下の範囲の他の時間にわたって熱処理を行ってもよい。このような化学組成や熱処理を採用した場合であっても、本実施例と同様の効果を得ることができる。
なお、第2金属配管2も本実施例と同様の材料および方法で造形することができる。
【0059】
以上の製造方法によれば、一体的に形成されかつ同じ化学組成を有する複数の部分を含み、これら複数の部分において機械的生成および物理的性質の少なくとも1つが異なる金属配管を得ることができる。このような金属配管と他の継手等を組み合わすことで、さまざまな機能を付加した金属配管構造を得ることができる。
【0060】
上記実施例にて開示したニッケル基合金は、広い温度範囲において優れた機械的特性や耐食性を発揮する。このようなニッケル基合金で製造された金属成形品は、例えば航空機・宇宙機への使用に適している。
【0061】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態に係る金属配管構造S2の概略的な構成を示す平面図である。金属配管構造S2は、第1金属配管1と、第1伸縮管100aと、第2伸縮管100bを備えている。第1金属配管1の両端に第1伸縮管100aと第2伸縮管100bがそれぞれ位置している。第1金属配管1と第1伸縮管100a、および、第1金属配管1と第2伸縮管100bは、それぞれ例えば溶接によって一体的に連結されている。
【0062】
第1金属配管1は、第1部分11と、第2部分12と、第3部分13を有している。第1部分11は、管軸AXが曲線状の部分である。第2部分12と第3部分13は、管軸AXが直線状の部分である。第2部分12は、第1伸縮管100aと第1部分11の間に位置している。第3部分13は、第2伸縮管100bと第1部分11の間に位置している。
【0063】
第1部分11、第2部分12、および第3部分13は、一体的に形成され、かつ同じ化学組成を有している。第1部分11、第2部分12、および第3部分13においては、機械的性質および物理的性質の少なくとも1つが異なる。
【0064】
本実施形態において一例として、第1部分11の硬さが第2部分12と第3部分13の硬さよりも小さい場合を想定する。この場合、第1部分11は、第2部分12と第3部分13に比べて軟らかい。第2部分12と第3部分13の硬さは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0065】
さらに、本実施形態においては、一様な光を照射して第1金属配管1を観察したときに、第1部分11よりも第2部分12と第3部分13の方が暗い色合いを有する場合を想定する。
【0066】
このような第1金属配管1は、第1実施形態と同様に3Dプリンタによる造形と熱処理を含む製造方法にて製造することができる。
【0067】
第1部分11、第2部分12、および第3部分13の強度は、例えばレーザ光の出力と走査速度を変更することで調整できる。例えば、強度が高い第2部分12と第3部分13においてはレーザ光の出力を高め、強度が低い第1部分11においてはレーザ光の出力を第2部分12と第3部分13より低くしてもよい。
【0068】
本実施形態に係る金属配管構造S2においては、第1伸縮管100aと第2伸縮管100bの間に第1金属配管1の第1部分11が位置することで、両端部の各伸縮管からの振動や応力を緩和することができる。そのため、長時間の繰り返し振動に対する金属配管構造S2の耐久性が向上する。
【0069】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。
図5は、第3実施形態に係る第3金属配管3の管軸に沿う概略的な断面図である。第3金属配管3は、管軸AXに沿う1つの開口と、管軸AYに沿う2つの開口とを有している。
図5の例においては、管軸AX,AYが直交している。ただし、管軸AX,AYは、他の角度で交わってもよい。
【0070】
第3金属配管3は、第1部分31と、第2部分32と、第3部分33と、第4部分34を有している。第1部分31は、3つの開口部を有している。各開口部は、それぞれ第2部分32、第3部分33、および第4部分34に接続されている。第1部分31は、管軸に沿う断面において曲率を有する部分を有している。第2部分32は、直線状の管軸AXに対して平行な直管である。第3部分33と第4部分34は、直線状の管軸AYに対して平行な直管である。
【0071】
第1部分31、第2部分32、第3部分33、および第4部分34は、一体的に形成され、かつ同じ化学組成を有している。第1部分31、第2部分32、第3部分33、および第4部分34においては、機械的性質および物理的性質の少なくとも1つが異なる。
【0072】
本実施形態において一例として、第1部分31の硬さが第2部分32、第3部分33、および第4部分34の硬さよりも小さい場合を想定する。この場合、第1部分31は、第2部分32、第3部分33、および第4部分34に比べて軟らかい。
【0073】
さらに、本実施形態においては、一様な光を照射して第3金属配管3を観察したときに、第1部分31よりも第2部分32、第3部分33、および第4部分34の方が暗い色合いを有する場合を想定する。
【0074】
このような第3金属配管3は、第1実施形態と同様に3Dプリンタによる造形と熱処理を含む製造方法にて製造することができる。
【0075】
第1部分31、第2部分32、第3部分33、および第4部分34の強度は、例えばレーザ光の出力と走査速度を変更することで調整できる。例えば、強度が高い第2部分32、第3部分33および第4部分34においてはレーザ光の出力を高め、強度が低い第1部分31においてはレーザ光の出力を第2部分32、第3部分33および第4部分34より低くしてもよい。
【0076】
第2部分32、第3部分33、および第4部分34には、それぞれ他の配管を例えば溶接により接続することができる。この場合において、他の配管には上述した第1伸縮管100aと同様の伸縮管が含まれてもよい。
【0077】
第3金属配管3を含む金属配管構造においても、上述の各実施形態と同様に、第1部分31によって振動および応力を吸収することができる。
【0078】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。
図6は、第4実施形態に係る第4金属配管4の管軸に沿う概略的な断面図である。第4金属配管4は、第1部分41と、第2部分42と、第3部分43を有している。第1部分41、第2部分42、および第3部分43は、管軸AXに対して直線状に並んでいる。第1部分41は、管軸AXに沿う断面において壁部が曲率を有する部分を有している。第1部分41は、第2部分42と第3部分43の間に位置している。また、
図6の例においては、第2部分42の外径が第3部分43の外径よりも小さい。
【0079】
第1部分41、第2部分42、および第3部分43は、一体的に形成され、かつ同じ化学組成を有している。第1部分41、第2部分42、および第3部分43においては、機械的性質および物理的性質の少なくとも1つが異なる。
【0080】
本実施形態において一例として、第1部分41の硬さが第2部分42と第3部分43の硬さよりも小さい場合を想定する。この場合、第1部分41は、第2部分42と第3部分43に比べて軟らかい。
【0081】
さらに、本実施形態においては、一様な光を照射して第4金属配管4を観察したときに、第1部分41よりも第2部分42と第3部分43の方が暗い色合いを有する場合を想定する。
【0082】
このような第4金属配管4は、第1実施形態と同様に3Dプリンタによる造形と熱処理を含む製造方法にて製造することができる。
【0083】
第1部分41、第2部分42、および第3部分43の強度は、例えばレーザ光の出力と走査速度を変更することで調整できる。例えば、強度が高い第2部分42と第3部分43においてはレーザ光の出力を高め、強度が低い第1部分41においてはレーザ光の出力を第2部分42と第3部分43より低くしてもよい。
【0084】
第2部分42と第3部分43には、それぞれ他の配管を例えば溶接により接続することができる。この場合において、他の配管には上述した第1伸縮管100aと同様の伸縮管が含まれてもよい。
【0085】
第4金属配管4を含む金属配管構造においても、上述の各実施形態と同様に、第1部分41によって振動および応力を吸収することができる。 以上の第1ないし第4実施形態は、本発明の範囲を各実施形態にて開示した構成に限定するものではない。その他にも、用途に応じた種々の構造を金属配管および金属配管構造に適用できる。
【0086】
例えば、第1実施形態においては第1部分11ならびに第2部分12、および第3部分13において硬さや色合い等の性質が変化する場合を例示した。しかしながら、造形時のレーザ光の出力や走査速度を調整することにより、性質が連続的に変化する金属成形品を得ることもできる。第2実施形態ないし第4実施形態においても同様である。