特許第6896826号(P6896826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896826
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】鉄道車両用ロングシート
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20210621BHJP
   B61D 1/04 20060101ALI20210621BHJP
   B60N 2/015 20060101ALI20210621BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20210621BHJP
【FI】
   B61D33/00 A
   B61D1/04
   B60N2/015
   B60N2/90
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-200518(P2019-200518)
(22)【出願日】2019年11月5日
(65)【公開番号】特開2021-75070(P2021-75070A)
(43)【公開日】2021年5月20日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 英謙
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】辻 和樹
(72)【発明者】
【氏名】森 優智
(72)【発明者】
【氏名】蒔山 敦史
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−053277(JP,U)
【文献】 特開平05−139303(JP,A)
【文献】 特開2002−355143(JP,A)
【文献】 特開2019−171951(JP,A)
【文献】 特開昭56−008013(JP,A)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0349470(KR,Y1)
【文献】 韓国実用新案第20−2012−0004101(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B61D 1/04
B60N 2/015
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両における側構体内壁に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる鉄道車両用ロングシートであって、
前記側構体内壁から室内側へ一定量突出して構体に固定されたパイプ状のシートフレームと、当該シートフレームの前後方向へ直線状に延設された着座部の外周面に装着された円筒状の座クッションと、当該座クッションの上方で前記側構体内壁に固定された背ずりクッションとを備え、
前記着座部は、ヒップレスト用に複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されていること、
前記背ずりクッションは、一人ずつの座席単位ごとに形成され、前記座クッションとも離間して前記側構体内壁に固定されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて
前記座クッションは、複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項3】
請求項2に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記座クッションには、前記着座部に着脱可能に形成された筒状クッション部材と、当該筒状クッション部材を覆う座表皮とを備え、
前記筒状クッション部材には、当該筒状クッション部材の内壁面の一端から対向する外壁面の他端まで長手方向に沿って分割された一対の分割面が着座側と異なる位置に形成され、前記座表皮には、前記分割面同士の境界線に沿って係脱する線状ファスナが装着されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項4】
請求項3に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記着座部には、長手方向に沿って外方へ起立する廻り止め突起が着座側と異なる位置に形成され、前記筒状クッション部材の内壁面には、前記廻り止め突起に係合する係合溝が形成されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記背ずりクッションには、背ずり表皮と、当該背ずり表皮に被覆された背ずりクッション部材と、当該背ずりクッション部材の裏面に固定された背ずり裏当板とを備え、
前記背ずり裏当板には、前記側構体内壁へ固定する固定手段とは別に、係合手段が形成され、前記側構体内壁には、前記係合手段と係合する被係合手段が形成されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項6】
請求項5に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記係合手段は、前記背ずり裏当板の左右側端部に形成された突起部又は凹ボタンからなり、前記被係合手段は、前記側構体内壁に形成され前記突起部が嵌装される嵌装孔又は前記凹ボタンに嵌装される凸ボタンからなることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記座クッションは、2人用の座席長さに形成され、前記シートフレームは、前記着座部の前端又は後端で前記側構体内壁へ向けて略L字状又は略T字状に延設された連結部を備え、当該連結部にて側構体と連結されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記側構体内壁には、前記座クッションの下方で板状のヒータ装置が装着されていることを特徴とする鉄道車両用ロングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用ロングシートに関し、詳しくは、主に通勤電車等の鉄道車両における側構体内壁(車体内壁)に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる鉄道車両用ロングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、通勤電車等の鉄道車両における側構体内壁に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる鉄道車両用ロングシートでは、車内が乗客で混雑しているにもかかわらず、座席の定員に満たない人数しか腰掛けられていないことが多かった。そのため、着座者に一人ずつの各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるような鉄道車両用ロングシートが求められていた。
【0003】
上記課題を解決するため、例えば、特許文献1には、図10図11に示すように、車体内壁101に取付け固定される所要長さのシートフレーム102上に、表皮103aとパッド103bを一体モールド成形することで一人ずつの座席単位で各々着座者をホールドする凹凸付き立体形状を呈する状態に製作したシートクッション(座クッション)103を列設してなる車両用ロングシート100が、開示されている。
【0004】
このシートクッション103は、一人ずつの座席単位ごとに個々に独立して一体モールド成形により製作され、各シートクッション103は着座者の尻部を包み込むように上面中央部104が丸く凹んで、その左右両側部105が該尻部を左右からホールドすべく滑らかに盛り上がって前後方向に亘る土手のような凸状形とされている。
【0005】
また、シートフレーム102は、略L字形状をなすプレス鋼板製の複数個のブラケット102aと、これらブラケット102aの前方張り出し部前端と後側立上がり部上端とに溶接固定してそれぞれ水平に横架した角鋼管製の横長な前側貫材102b及び後部上側貫材102cと、この前側貫材102b上面とブラケット102aの上面に溶接固定して載架されたシェル106とを主体として構成されている。
【0006】
また、シートクッション103と別体に製作したシートバッククッション(背ずりクッション)107が、シートフレーム102の後部立上がり部102d前面に取付けられている。また、シートバッククッション107の裏当板108には、上下一対ずつのフックスプリング(板ばね)108a、108bが取付けられている。これら上下一対ずつのフックスプリング108a、108bをシートフレーム102の後部上側貫材102cの掛止部に弾性的に押込んで上下から挟圧する状態に掛止することで、該シートバッククッション107の上端部107aが窓枠101sの下側の車体内壁101に接合し、下端部107bがシェル106の上端折曲縁部106a及びシートクッション103の上端縁部103cに前側から覆い隠す状態に接合して取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−154061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された上記車両用ロングシート100では、シートクッション103は、着座者の尻部を包み込むように、一人ずつの座席単位ごとに個々に独立して一体モールド成形により製作されているので、製作上の手間が多くかかりコスト増につながりやすいという問題があった。また、一人ずつの着座スペースを確保するために、乗客人数が減少するという問題もあった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、乗客人数を増加でき、着座者に各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるようになると共に、軽量化が容易となり、組付け・製作等にかかる手間を低減できる鉄道車両用ロングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両用ロングシートは、以下の構成を備えている。
(1)鉄道車両における側構体内壁に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる鉄道車両用ロングシートであって、
前記側構体内壁から室内側へ一定量突出して構体に固定されたシートフレームと、当該シートフレームの着座部の上方で前記側構体内壁に固定された背ずりクッションとを備え、
前記着座部は、ヒップレスト用に複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されていること、
前記背ずりクッションは、一人ずつの座席単位ごとに形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、側構体内壁から室内側へ一定量突出して構体に固定されたシートフレームと、当該シートフレームの着座部の上方で側構体内壁に固定された背ずりクッションとを備え、着座部は、ヒップレスト用に複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されているので、着座スペースを減少して乗客人数を増加できると共に、シートフレームの製作及び組付けを簡素化でき、軽量化にも寄与できる。また、シートフレームの着座部の上方で側構体内壁に固定された背ずりクッションを備え、背ずりクッションは、一人ずつの座席単位ごとに形成されているので、背ずりクッションを小型化、軽量化できると共に、背ずりクッションを目印として、着座者に各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるようになる。
【0012】
よって、本発明によれば、乗客人数を増加でき、着座者に各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるようになると共に、軽量化が容易となり、組付け・製作等にかかる手間を低減できる鉄道車両用ロングシートを提供することができる。
【0013】
(2)(1)に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記着座部には、座クッションを備え、
前記座クッションは、複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、着座部には、座クッションを備え、座クッションは、複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されているので、座クッションを複数に分割する必要がなく、座クッションの製作及び組付けを簡素化でき、コスト低減にも寄与できる。
【0015】
(3)(2)に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記座クッションには、前記着座部に着脱可能に形成された筒状クッション部材と、当該筒状クッション部材を覆う座表皮とを備え、
前記筒状クッション部材には、当該筒状クッション部材の内壁面の一端から対向する外壁面の他端まで長手方向に沿って分割された一対の分割面が着座側と異なる位置に形成され、前記座表皮には、前記分割面同士の境界線に沿って係脱する線状ファスナが装着されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、座クッションには、着座部に着脱可能に形成された筒状クッション部材と、当該筒状クッション部材を覆う座表皮とを備え、筒状クッション部材には、当該筒状クッション部材の内壁面の一端から対向する外壁面の他端まで長手方向に沿って分割された一対の分割面が着座側と異なる位置に形成され、座表皮には、分割面同士の境界線に沿って係脱する線状ファスナが装着されているので、線状ファスナを開放し、筒状クッション部材の分割面同士を離間させることによって、座クッションをシートフレームの着座部に簡単に着脱させることができる。そのため、シートフレームに対する座クッションの組付け及び交換等にかかる手間を低減でき、コスト低減につなげることができる。
【0017】
(4)(3)に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記着座部には、長手方向に沿って外方へ起立する廻り止め突起が着座側と異なる位置に形成され、前記筒状クッション部材の内壁面には、前記廻り止め突起に係合する係合溝が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、着座部には、長手方向に沿って外方へ起立する廻り止め突起が着座側と異なる位置に形成され、筒状クッション部材の内壁面には、廻り止め突起に係合する係合溝が形成されているので、着座部の廻り止め突起に筒状クッション部材の係合溝を係合させることによって、シートフレームに対する座クッションの周方向への回転を簡単に阻止させることができる。そのため、シートフレームに対する座クッションの組付け等にかかる手間を低減しつつ、座クッションに着座者がより安定して腰掛けることができる。
【0019】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記背ずりクッションには、背ずり表皮と、当該背ずり表皮に被覆された背ずりクッション部材と、当該背ずりクッション部材の裏面に固定された背ずり裏当板とを備え、
前記背ずり裏当板には、前記側構体内壁へ固定する固定手段とは別に、係合手段が形成され、前記側構体内壁には、前記係合手段と係合する被係合手段が形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、背ずりクッションには、背ずり表皮と、当該背ずり表皮に被覆された背ずりクッション部材と、当該背ずりクッション部材の裏面に固定された背ずり裏当板とを備え、背ずり裏当板には、側構体内壁へ固定する固定手段とは別に、係合手段が形成され、また、側構体内壁には、係合手段と係合する被係合手段が形成されているので、背ずりクッションを側構体内壁に固定する際、予め係合手段を被係合手段に係合させることによって、側構体内壁に対する背ずりクッションの固定位置のバラツキを低減できる。そのため、側構体内壁に配置されている背ずりクッションの、配置上の精度及び外観上の見栄えを向上させることができると共に、側構体内壁に対する背ずりクッションの組付け又は交換等にかかる手間を低減でき、コスト低減につなげることができる。
【0021】
(6)(5)に記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記係合手段は、前記背ずり裏当板の左右側端部に形成された突起部又は凹ボタンからなり、前記被係合手段は、前記側構体内壁に形成され前記突起部が嵌装される嵌装孔又は前記凹ボタンに嵌装される凸ボタンからなることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、係合手段は、背ずり裏当板の左右側端部に形成された突起部又は凹ボタンからなり、被係合手段は、側構体内壁に形成され突起部が嵌装される嵌装孔又は凹ボタンに嵌装される凸ボタンからなるので、背ずり裏当板の左右側端部に突起部又は凹ボタンを設け、側構体内壁に突起部が嵌装される嵌装孔、又は凹ボタンに嵌装される凸ボタンを設けるという簡単な構造で、側構体内壁に対する背ずりクッションの位置精度をより一層向上させることができる。そのため、側構体内壁に対する背ずりクッションの組付け又は交換等にかかる手間を簡単な構造で低減でき、より一層コスト低減につなげることができる。
【0023】
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記着座部は、2人用の座席長さに形成され、前記シートフレームは、前記着座部の前端又は後端で前記側構体内壁へ向けて略L字状又は略T字状に延設された連結部を備え、当該連結部にて側構体と連結されていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、着座部は、2人用の座席長さに形成され、シートフレームは、着座部の前端又は後端で側構体内壁へ向けて略L字状又は略T字状に延設された連結部を備え、当該連結部にて側構体と連結されているので、着座者が着座部に着座したとき、着座部の前端又は後端で略L字状又は略T字状に延設されたシートフレームの連結部を把持することができる。そのため、側構体に対するシートフレームの支持構造を簡素化しつつ、車両が走行時に前後左右へ多少揺れたときにおいても、着座者の着座姿勢を安定して保持することができる。
【0025】
(8)(1)乃至(7)のいずれか1つに記載された鉄道車両用ロングシートにおいて、
前記側構体内壁には、前記着座部の下方で板状のヒータ装置が装着されていることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、側構体内壁には、着座部の下方で板状のヒータ装置が装着されているので、着座部の下方のスペースを有効に活用しつつ、着座者が着座部に着座したとき、着座者の足元を効率的に暖房することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、乗客人数を増加でき、着座者に各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるようになると共に、軽量化が容易となり、組付け・製作等にかかる手間を低減できる鉄道車両用ロングシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用ロングシートの概略斜視図である。
図2図1に示すA−A断面図である。
図3図2に示すB部詳細断面図である。
図4図2に示すB部詳細断面図の変形例である。
図5図2に示すC矢視図(正面図)である。
図6図5に示すD−D断面図である。
図7図5に示すD−D断面図の変形例である。
図8図1に示す鉄道車両用ロングシートにおける変形例の概略斜視図である。
図9図2に示すC矢視図(正面図)の変形例である。
図10】特許文献1に開示された車両用ロングシートの主断面図である。
図11図10に示すシートクッションの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本実施形態に係る鉄道車両用ロングシートについて、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両用ロングシートの構成を詳細に説明した上で、本鉄道車両用ロングシートを製作し鉄道車両の側構体に組み付ける組付け方法を簡単に説明する。また、本鉄道車両用ロングシートの各種変形例を説明する。
【0030】
<本鉄道車両用ロングシートの構成>
まず、本鉄道車両用ロングシートの構成について、図1図3図5図6を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用ロングシートの概略斜視図を示す。図2に、図1に示すA−A断面図を示す。図3に、図2に示すB部詳細断面図を示す。図5に、図2に示すC矢視図(正面図)を示す。図6に、図5に示すD−D断面図を示す。
【0031】
図1図3図5図6に示すように、本実施形態に係る鉄道車両用ロングシート10は、鉄道車両における側構体内壁11に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる鉄道車両用ロングシートであって、側構体内壁11から室内側へ一定量突出して構体1A(例えば、側構体1)に固定されたシートフレーム2と、当該シートフレーム2の着座部21の上方で側構体内壁(「車体内壁」とも云う。以下同じ)11に固定された背ずりクッション4とを備えている。着座部21は、ヒップレスト用に複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設され、また、背ずりクッション4は、一人ずつの座席単位ごとに形成されている。また、着座部21には、座クッション3を備え、座クッション3は、複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されている。
【0032】
具体的には、側構体内壁11から室内側へ水平状に一定量突出して側構体1に固定されたパイプ状のシートフレーム2と、当該シートフレーム2の直線状に延設された着座部21の外周面に装着された円筒状の座クッション3と、当該座クッション3の上方で側構体内壁11に固定された板状の背ずりクッション4とを備えている。ここでは、側構体1に窓部8が形成されているので、背ずりクッション4は、窓部8を輪郭する窓枠81の下方で側構体内壁11に固定されている。側構体内壁11は、床板71から天井まで延設され、客室を区画する化粧板(側板)を構成している。また、側構体内壁11には、上下方向に延設された手すり棒9が、鉄道車両用ロングシート10の前後方向の端縁近傍に設置されている。
【0033】
そして、シートフレーム2及び座クッション3は、ヒップレスト用に複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設され、前後方向で其々一定断面に形成されている。シートフレーム2は、例えば、アルミ系パイプ部材からなり、前後方向へ直線状に形成された着座部21と、着座部21の前端又は後端で側構体内壁11へ向けて略L字状に延設された連結部22とを備え、当該連結部22に接続された連結板221を介して側構体1とボルト締結されている。なお、シートフレーム2は、例えば、アルミ又は樹脂等の中実部材でもよく、斜め上方へ傾斜したものでもよい。
【0034】
ここでは、シートフレーム2及び座クッション3は、大人2人が横に並んで腰掛けられる2人用の座席長さに形成されている。そして、複数のシートフレーム2及び座クッション3が、前後方向に一列状に配置されている。そのため、着座者Mが座クッション3に着座したとき、着座部21の前端又は後端で略L字状に延設されたシートフレーム2の連結部22を把持することができ、車両が走行時に前後左右へ多少揺れたときにおいても、着座者Mの着座姿勢を安定して保持することができる。
【0035】
なお、シートフレーム2及び座クッション3は、腰掛ける人数を適宜設定することができ、その人数に応じて所要の長さに延設すればよい。また、シートフレーム2及び座クッション3の側構体内壁11に対する室内側への突出量、及び床板71に対する高さは、大人が中腰の状態で腰掛けられる程度の突出量及び高さが好ましいが、子どもや高齢者が腰掛けやすい突出量及び高さに設定しても良い。
【0036】
さらに、座クッション3には、シートフレーム2の着座部21に着脱可能に形成された筒状クッション部材31と、当該筒状クッション部材31を覆う座表皮32とを備えている。ここでは、筒状クッション部材31は、円筒状に形成されているが、角筒状に形成されていてもよい。また、筒状クッション部材31には、当該筒状クッション部材31の内壁面311の一端311aから対向する外壁面312の他端312aまで長手方向に沿って分割された一対の分割面313、313が、着座側と異なる位置に形成されている。また、座表皮32には、分割面313、313同士の境界線に沿って係脱する線状ファスナ32Fが装着されている。また、筒状クッション部材31と座表皮32とは、帯状に形成された一対の面状ファスナ33、34を介して着脱可能に固定され、また、シートフレーム2の着座部21と筒状クッション部材31とは、帯状に形成された一対の面状ファスナ35、36を介して着脱可能に固定されている。
【0037】
また、本鉄道車両用ロングシート10は、座クッション3の上方で側構体内壁11に固定された背ずりクッション4を備え、背ずりクッション4は、一人ずつの座席単位ごとに製作されている。ここでは、背ずりクッション4は、隣同士互いに離間して配置されているが、隣同士当接していても、隣同士区切られていればよい。また、背ずりクッション4は、座クッション3とも離間して配置されている。ここでは、背ずりクッション4は、正面視(図2のC矢視)で横長の長方形状に形成されているが、必ずしも長方形状に限る必要はなく、例えば、円形状又は楕円形状に形成されていてもよい。また、背ずりクッション4の厚さは、略一定に形成されているが、必ずしも厚さ一定に限る必要もない。なお、背ずりクッション4の横幅寸法の大きさは、着座者Mの背中を支持できる程度の大きさであれば良く、座クッション3において一人ずつの座席単位に必要な横幅寸法より小さく形成することができる。
【0038】
そして、背ずりクッション4には、背ずり表皮41と、当該背ずり表皮41に被覆された背ずりクッション部材42と、当該背ずりクッション部材42の裏面に固定された背ずり裏当板43とを備えている。また、背ずりクッション4には、背ずり裏当板43の上端部及び下端部等に装着され側構体内壁11へ固定する固定手段6(61)とは別に、背ずり裏当板43に係合手段51が形成され、また、側構体内壁11には、係合手段51と係合する被係合手段52が形成されている。係合手段51と被係合手段52とは、背ずりクッション4を側構体内壁11へ固定する以前に、係合するように形成されており、側構体内壁11に対する背ずりクッション4の位置決め手段5(51、52)を構成する。なお、背ずりクッション4の固定手段6には、例えば、帯状に形成された一対の面状ファスナ61、62等を用いることができる。面状ファスナ61、62は、背ずりクッション4の上端縁と下端縁の近傍に配置されている。
【0039】
ここでは、係合手段51は、背ずり裏当板43の上下方向中間部で左右両側端部に形成された突起部51aからなり、被係合手段52は、側構体内壁11に形成され突起部51aが嵌装される嵌装孔52aからなるが、必ずしもこれらに限る必要はない。例えば、突起部51aは、鍔付きの円筒ピン又は角筒ピン等として形成され、鍔部が背ずり裏当板43に固着されている。また、嵌装孔52aは、円筒ピンが嵌る円形孔又は角筒ピンが嵌る角孔等に形成されている。そして、円筒ピン又は角筒ピンは、面状ファスナ61、62のフック部とループ部とが係合するより以前に、円形孔又は角孔に係合する長さに形成されている。
【0040】
また、側構体1には、車体外板12を補強する補強骨13に連結された複数のフレーム受け部材14を備え、各フレーム受け部材14は、側構体内壁11とスペーサ部材15を挟んで、シートフレーム2の連結部22に接続された連結板221と連結されている。また、フレーム受け部材14は、例えば、ハット断面形状に形成され、上下方向に延設されている。フレーム受け部材14は、側構体内壁11の背ずりクッション4を固定する位置まで延設されていることが好ましい。また、側構体内壁11には、座クッション3の下方で板状のヒータ装置72が装着されていることが好ましい。ヒータ装置72は、座クッション3の下方で側構体内壁11に沿って板状に形成することによって、着座者Mの足元スペースを犠牲にせず、暖房効果を高めることができる。ここでは、ヒータ装置72は、一人ずつの座席単位ごとに形成されたものであるが、長手方向に一体で形成されたものでもよい。
【0041】
<本鉄道車両用ロングシートの製作・組付け方法>
次に、本鉄道車両用ロングシートを製作し鉄道車両の側構体に組み付ける組付け方法を簡単に説明する。
【0042】
まず、図1図3図5図6に示すように、フレーム受け部材14を複数製作する。フレーム受け部材14は、鋼板をプレス成形して、ハット断面形状に形成する。フレーム受け部材14のハット断面天頂部の裏面には、シートフレーム2を固定するナット部16を接続する。また、フレーム受け部材14を、シートフレーム2の連結部22に対応して前後方向に所定の間隔で配置し、側構体1の車体外板12を補強する補強骨13に、其々溶接等によって固定する。また、側構体内壁11には、背ずりクッション4の突起部51aが嵌装される嵌装孔52aを形成する。また、側構体内壁11には、背ずりクッション4を固定する面状ファスナ62を装着する。側構体内壁11は、フレーム受け部材14、窓枠81、及び床枠73等にネジ締結して、側構体1に固定する。
【0043】
次に、シートフレーム2を製作する。シートフレーム2は、例えば、アルミ系パイプ管を用い、前後方向へ直線状に延設された着座部21と、着座部21の前端又は後端で側構体内壁11へ向けて略L字状に延設された連結部22とを形成し、連結部22にボルト孔が形成された連結板221を接続する。また、着座部21には、座クッション3を固定する固定手段35(例えば、面状ファスナ)を装着する。シートフレーム2は、連結板221を側構体内壁11に当接し、連結板221のボルト孔から挿入したボルトを、フレーム受け部材14のナット部16に締結して、側構体1に固定する。
【0044】
そして、座クッション3と背ずりクッション4とを製作する。座クッション3は、例えば、合成繊維からなる座表皮32と、発泡ウレタンからなる筒状クッション部材31とを別々に製作した上で、複数の面状ファスナ33、34を介して両者を連結して製作する。その際、予め、筒状クッション部材31には、当該筒状クッション部材31の内壁面311の一端311aから対向する外壁面312の他端312aまで軸方向(前後方向)に沿って分割された一対の分割面313、313を、着座側と異なる位置に形成する。また、座表皮32には、分割面313、313同士の境界線に沿って係脱する線状ファスナ32Fを装着しておく。また、筒状クッション部材31の内壁面311には、着座部21に固定する面状ファスナ36を装着する。
【0045】
また、背ずりクッション4は、例えば、合成繊維からなる背ずり表皮41と、発泡ウレタンからなる背ずりクッション部材42と、樹脂板又は金属板からなる背ずり裏当板43とを一体モールド成形法によって製作する。また、背ずりクッション4の背ずり裏当板43には、側構体内壁11に固定する面状ファスナ61と、側構体内壁11に形成された嵌装孔52aと嵌装させる突起部51aを固着する。
【0046】
さらに、座クッション3をシートフレーム2の着座部21に固定する。すなわち、座表皮32の線状ファスナ32Fを開放し、筒状クッション部材31の分割面313、313同士を離間させ、筒状クッション部材31を略C字状断面に変形させて、着座部21の外壁面211に筒状クッション部材31の内壁面311を嵌装させる。そして、筒状クッション部材31の面状ファスナ36と、着座部21の面状ファスナ35とを係合させて、座クッション3をシートフレーム2の着座部21に固定する。
【0047】
また、背ずりクッション4の突起部51aを側構体内壁11に形成された嵌装孔52aと嵌装させた状態で、固定手段6(面状ファスナ61、62)同士を係合させて、背ずりクッション4を側構体内壁11に固定する。すなわち、背ずりクッション4を側構体内壁11に固定する際、予め突起部51aを嵌装孔52aに嵌装させることによって、側構体内壁11に対する背ずりクッション4の固定位置のバラツキを低減でき、背ずりクッション4を、一人ずつの座席単位ごとに隣同士互いに位置精度よく離間して配置することができる。
【0048】
<本鉄道車両用ロングシートの各種変形例>
次に、本鉄道車両用ロングシートの各種変形例について、図4図7図9を用いて説明する。図4に、図2に示すB部詳細断面図の変形例を示す。図7に、図5に示すD−D断面図の変形例を示す。図8に、図1に示す鉄道車両用ロングシートにおける変形例の概略斜視図を示す。図9に、図2に示すC矢視図(正面図)の変形例を示す。なお、前述した本鉄道車両用ロングシート10と共通の構成については、共通の符号を付して、その説明は割愛する。
【0049】
(シートフレームと座クッションの変形例)
前述したように、シートフレーム2の着座部21と筒状クッション部材31とは、帯状に形成された一対の面状ファスナ35、36を介して固定されている(図3を参照)。しかしながら、この着座部21に対する筒状クッション部材31の固定手段は、必ずしも、図3に示す構成に限らない。例えば、図4に示すように、シートフレーム2Bにおける着座部21の外壁面211には、長手方向に沿って外方へ起立する廻り止め突起21bが形成され、筒状クッション部材31Bの内壁面311には、廻り止め突起21bに係合する係合溝311bが形成されてもよい。この場合、シートフレーム2Bの廻り止め突起21bに筒状クッション部材31Bの係合溝311bを係合させることによって、シートフレーム2Bに対する座クッション3Bの周方向への回転を簡単に阻止させることができる。この場合、着座部21の面状ファスナ35と筒状クッション部材31の面状ファスナ36とを省略できる。なお、廻り止め突起21bは、分割面313、313と同様に、着座側と異なる位置に形成されていることが好ましい。
【0050】
(背ずりクッションの位置決め手段の変形例)
また、前述したように、背ずりクッション4と側構体内壁11との位置決め手段5(51、52)として、背ずりクッション4の背ずり裏当板43には、側構体内壁11に形成された嵌装孔52a(被係合手段52)と嵌装させる突起部51a(係合手段51)を固着されている(図6を参照)。しかしながら、この背ずりクッション4の位置決め手段5(51、52)は、必ずしも、図6に示す構成に限らない。例えば、図7に示すように、背ずりクッション4と側構体内壁11との位置決め手段5Bとして、係合手段51は、背ずり裏当板43の左右側端部に形成された凹ボタン51bからなり、被係合手段52は、側構体内壁11に形成され凹ボタン51bに嵌装される凸ボタン52bからなるものでも良い。
【0051】
(背ずりクッションの変形例)
また、前述したように、背ずりクッション4は、窓部材8を輪郭する窓枠81の下方で側構体内壁11に固定されている。また、背ずりクッション4は、正面視(図2のC矢視)で横長の長方形状に形成されている(図1を参照)。しかしながら、この背ずりクッション4の配置及び形状は、必ずしも、図1に示す構成に限らない。例えば、図8に示すように、窓枠81の下方に固定された背ずりクッション4より上方に配置された背ずりクッション4B1、又は窓枠81の下方から窓枠途中まで延設された縦長の長方形に形成された背ずりクッション4B2でも良い。背の高い着座者にとっては、背もたれし易いからである。また、図9に示すように、窓枠81の下方に配置された背ずりクッション4C1と、窓枠81の途中に配置された背ずりクッション4C2とを、上下2段に配置しても良い。背の低い着座者と背の高い着座者との、いずれに対しても、背もたれし易いからである。
【0052】
(シートフレームの変形例)
また、前述したように、シートフレーム2は、例えば、アルミ系パイプ部材からなり、前後方向へ直線状に形成された着座部21と、着座部21の前端又は後端で側構体内壁11へ向けて略L字状に延設された連結部22とを備え、当該連結部22に接続された連結板221を介して側構体1と連結されている(図1図5を参照)。しかしながら、シートフレーム2の連結部22の形状は、必ずしも、図1図5に示す形状に限らない。シートフレーム2Cは、例えば、図9に示すように、1つのアルミ系パイプ部材からなり、前後方向へ直線状に形成された複数の着座部21が連続状に形成され、前後方向の途中に位置する着座部21の前端又は後端で側構体内壁11へ向けて略T字状に延設された連結部22Cを備え、当該連結部22Cに接続された連結板221Cを介して側構体1と連結されても良い。この場合、シートフレーム2の構造を簡素化できると共に、隣接する座クッション3同士の間隔を狭くすることができ、より多くの乗客を着座させることも可能となる。
以上、本鉄道車両用ロングシートの各種変形例について説明したが、本願発明の要旨を変更しない限り、上記変形例以外にも様々な変形が可能なことは言うまでもない。
【0053】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両用ロングシート10によれば、側構体内壁11から室内側へ一定量突出して側構体1に固定されたシートフレーム2、2B、2Cと、当該シートフレーム2、2B、2Cの着座部21の上方で側構体内壁11に固定された背ずりクッション4とを備え、着座部21は、ヒップレスト用に複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されているので、着座スペースを減少して乗客人数を増加できると共に、シートフレーム2、2B、2Cの製作及び組付けを簡素化でき、軽量化にも寄与できる。また、シートフレーム2、2B、2Cの着座部21の上方で側構体内壁11に固定された背ずりクッション4を備え、背ずりクッション4は、一人ずつの座席単位ごとに形成されているので、背ずりクッション4を小型化、軽量化できると共に、背ずりクッション4を目印として、着座者Mに各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるようになる。
【0054】
よって、本実施形態によれば、乗客人数を増加でき、着座者Mに各座席単位の位置を明確に認識させることができて、定員人数が確実に腰掛けられるようになると共に、軽量化が容易となり、組付け・製作等にかかる手間を低減できる鉄道車両用ロングシート10、10B、10Cを提供することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、着座部21には、座クッション3、3Bを備え、座クッション3、3Bは、複数人が並んで腰掛けられる所要の長さに延設されているので、座クッション3、3Bを複数に分割する必要がなく、座クッション3、3Bの製作及び組付けを簡素化でき、コスト低減にも寄与できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、座クッション3、3Bには、着座部21に着脱可能に形成された筒状クッション部材31、31Bと、当該筒状クッション部材31、31Bを覆う座表皮32とを備え、筒状クッション部材31、31Bには、当該筒状クッション部材31、31Bの内壁面311の一端311aから対向する外壁面312の他端312aまで軸方向に沿って分割された一対の分割面313、313が着座側と異なる位置に形成され、座表皮32には、分割面313、313同士の境界線に沿って係脱する線状ファスナ32Fが装着されているので、線状ファスナ32Fを開放し、筒状クッション部材31、31Bの分割面313、313同士を離間させることによって、座クッション3、3Bをシートフレーム2、2B、2Cの着座部21に簡単に着脱させることができる。そのため、シートフレーム2、2B、2Cに対する座クッション3、3Bの組付け及び交換等にかかる手間を低減でき、コスト低減につなげることができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、着座部21には、長手方向に沿って外方へ起立する廻り止め突起21bが着座側と異なる位置に形成され、筒状クッション部材31Bの内壁面311には、廻り止め突起21bに係合する係合溝311bが形成されているので、着座部21の廻り止め突起21bに筒状クッション部材31Bの係合溝311bを係合させることによって、シートフレーム2Bに対する座クッション3Bの周方向への回転を簡単に阻止させることができる。そのため、シートフレーム2Bに対する座クッション3Bの組付け等にかかる手間を低減しつつ、着座者Mが座クッション3Bにより安定して腰掛けることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、背ずりクッション4には、背ずり表皮41と、当該背ずり表皮41に被覆された背ずりクッション部材42と、当該背ずりクッション部材42の裏面に固定された背ずり裏当板43とを備え、側構体内壁11へ固定する固定手段6(61)とは別に、背ずり裏当板43に係合手段51が形成され、また、側構体内壁11には、係合手段51と係合する被係合手段52が形成されているので、背ずりクッション4を側構体内壁11に固定する際、予め係合手段51を被係合手段52に係合させることによって、側構体内壁11に対する背ずりクッション4の固定位置のバラツキを低減できる。そのため、側構体内壁11に配置されている背ずりクッション4の、配置上の精度及び外観上の見栄えを向上させることができると共に、側構体内壁11に対する背ずりクッション4の組付け又は交換等にかかる手間を低減でき、コスト低減につなげることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、係合手段51は、背ずり裏当板43の左右側端部に形成された突起部51a又は凹ボタン51bからなり、被係合手段52は、側構体内壁11に形成され突起部51aが嵌装される嵌装孔52a又は凹ボタン51bに嵌装される凸ボタン52bからなるので、背ずり裏当板43の左右側端部に突起部51a又は凹ボタン51bを設け、側構体内壁11に突起部51aが嵌装される嵌装孔52a、又は凹ボタン51bに嵌装される凸ボタン52bを設けるという簡単な構造で、側構体内壁11に対する背ずりクッション4の位置精度をより一層向上させることができる。そのため、側構体内壁11に対する背ずりクッション4の組付け又は交換等にかかる手間を簡単な構造で低減でき、より一層コスト低減につなげることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、座クッション3、3Bは、2人用の座席長さに形成され、シートフレーム2、2B、2Cは、着座部21の前端又は後端で側構体内壁11へ向けて略L字状又は略T字状に延設された連結部22、22Cを備え、当該連結部22、22Cにて側構体1と連結されているので、着座者Mが座クッション3、3Bに着座したとき、着座部21の前端又は後端で略L字状又は略T字状に延設されたシートフレーム2、2B、2Cの連結部22、22Cを把持することができる。そのため、側構体1に対するシートフレーム2、2B、2Cの支持構造を簡素化しつつ、車両が走行時に前後左右へ多少揺れたときにおいても、着座者Mの着座姿勢を安定して保持することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、側構体内壁11には、座クッション3、3Bの下方で板状のヒータ装置72が装着されているので、座クッション3、3Bの下方のスペースを有効に活用しつつ、着座者Mが座クッション3、3Bに着座したとき、着座者Mの足元を効率的に暖房することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、主に通勤電車等の鉄道車両における側構体内壁に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる鉄道車両用ロングシートとして、又はバスその他の車両における車体内壁に沿って横長に設置されて、複数人が並んで腰掛けられる車両用ロングシートとして利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 側構体
1A 構体
2、2B、2C シートフレーム
3、3B 座クッション
4 背ずりクッション
5 位置決め手段
6 固定手段
10、10B、10C 鉄道車両用ロングシート
11 側構体内壁
12 車体外板
13 補強骨
14 フレーム受け部材
15 スペーサ部材
20 鉄道車両
21 着座部
21b 廻り止め突起
22、22C 連結部
31 筒状クッション部材
32 座表皮
32F 線状ファスナ
41 背ずり表皮
42 背ずりクッション部材
43 背ずり裏当板
51 係合手段
51a 突起部
51b 凹ボタン
52 被係合手段
52a 嵌装孔
52b 凸ボタン
211 外壁面
72 ヒータ装置
311 内壁面
311a 一端
311b 係合溝
312 外壁面
312a 他端
313 分割面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11