(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態1>
1.部品搭載装置の説明
図1は部品搭載装置の平面図、
図2は部品搭載装置の正面図、
図3は部品搭載装置の側面図である。部品搭載装置1は、立体形状をした基板Pに部品5を搭載する装置である。尚、以下の説明において、
図1の左右方向(基板Pの搬送方向)をX方向、
図1の上下方向(基板の搬送方向に対して直交する方向)をY方向とする。また、
図2、3の上下方向(部品搭載装置の上下方向)をZ方向とする。
【0025】
また本明細書において、基板Pとは、「電子部品5が搭載される対象物」を指し、特に形状が板状であることを限定するものではない。
【0026】
部品搭載装置1は、基台10と、ロボット20と、ロボット20に保持された基板Pに対して部品5を搭載するヘッドユニット70と、ヘッドユニット70を基台10上において平面方向(XY方向)に移動させる移動装置80と、コントローラ100と、を含む。尚、コントローラ100は、本発明の「制御部」、「決定装置」に相当する。
【0027】
ロボット20は、基板Pを保持してハンドリングする装置である。ハンドリングとは、保持した基板Pを移動することである。
図1に示すように、ロボット20は、基台10上に配置されている。ロボット20は、ロボット本体30と、ロボット本体30に取り付けられ、基板Pを保持する保持部50とを含む。
【0028】
以下、ロボット本体30の構成を説明する。ロボット本体30は、
図4〜
図6に示すように、支柱31と、支柱31に沿ってZ方向にスライドするスライド部33と、モータM1を有している。支柱31には、Z方向に沿って、ボールねじ軸Lzが取り付けられている。ボールねじ軸Lzは、スライド部33に取り付けられたナット34と共に、ボールねじ機構を構成している。モータM1は、ボールねじ機構の動力源であり、ベルト35を介してボールねじ軸Lzに連結されている。そのため、モータM1を駆動してボールねじ軸Lzを回転させると、ボールねじ機構の作用により、スライド部33が支柱31に沿ってZ方向にスライドすることが出来る。
【0029】
また、ロボット本体30は、第1回転軸Ls1と、第1回転軸Ls1の先端に取り付けられた回転板41と、モータM2を有している。第1回転軸Ls1は、軸線が水平方向に沿った水平軸であり、スライド部33に固定されたプレート40に対して、軸受け37を介して回転可能に支持されている。モータM2のモータ軸は、ベルト38を介して第1回転軸Ls1に連結されている。そのため、モータM2を駆動させると、第1回転軸Ls1が回転し、回転板41が第1回転軸Ls1を中心に、S1方向に回転する。尚、S1方向への回転を以下、チルトと呼ぶ。S1方向が本発明の「第1回転方向」に相当する。
【0030】
また、ロボット本体30は、第2回転軸Ls2と、第2回転軸Ls2の先端に取り付けられた保持部50と、モータM3を有している。第2回転軸Ls2は、チルト角がゼロ度の状態で、軸線が鉛直方向(Z方向)に沿った鉛直軸であり、回転板41に対して軸受け43を介して回転可能に支持されている。モータM3のモータ軸はベルト45を介して第2回転軸Ls2に連結されている。そのため、モータM3を駆動させると、第2回転軸Ls2が回転し、保持部50が第2回転軸L2を中心に、S2方向に回転する。S2方向が本発明の「第2回転方向」に相当する。
【0031】
上記のように、ロボット本体30は3つの駆動軸Lz、Ls1、Ls2を備えており、Z方向(上下方向)への移動と、S1方向及びS2方向への回転の3つの自由度を有している。そして、各モータM1〜3を駆動させることで、保持部50に対して、以下(1)〜(3)の動きを独立又は複合的に行わせることが出来る。尚、自由度とは、ロボット1の運動の融通性を表す尺度であり、独立して行うことが出来る運動の数を意味する。一般に、駆動軸の数が、自由度の数となる。
【0032】
(1)Z方向への直線移動
(2)S1方向への回転(チルト)
(3)S2方向への回転
【0033】
保持部50は、
図5に示すように、筒状をした本体部51と、本体部51上に周方向に等間隔で配置された3つのツメ部55から構成されている。3つのツメ部55は、本体部51に対して径方向に移動自在である。3つのツメ部55を、径方向の中心側に移動させて基板下面に取り付けられた冶具Uを挟持することで、基板Pを保持することが出来る。また、径方向の外側に移動させることで、保持を解くことが出来る。
【0034】
ロボット20は、保持部50により挟持された基板Pに対して部品5を搭載する際(搭載前)に、モータM2やモータM3を駆動して回転軸Ls1や回転軸Ls2を中心に保持部50を回転することにより、部品装着面Paが水平になるように、基板Pの向きや角度を調整する。また、モータM1を駆動してZ方向(上下方向)に保持部50を移動することにより、部品装着面PaのZ方向(上下方向)の高さが所定高さとなるように調整する。
【0035】
また、部品搭載装置1は、ヘッドユニット70と、ヘッドユニット70を基台10上において平面方向(XY方向)に移動させる移動装置80と、を含む。
【0036】
ヘッドユニット70は、
図2に示すように、ユニット本体71と、吸着ヘッド73と、ディスペンサヘッド75とを備えている。吸着ヘッド73は、先端に負圧を生じさせることで部品5を保持することが出来る。ディスペンサヘッド75は、先端に吐出孔を有しており、接着剤等を吐出する。
【0037】
吸着ヘッド73とディスペンサヘッド75は、ユニット本体71に対してX方向に並んで取り付けられている。これら吸着ヘッド73とディスペンサヘッド75は、モータM6を駆動させることで、ユニット本体71に対して、Z方向に移動することが出来る。また、ヘッドユニット70には、基板認識カメラ77や変位センサ78が搭載されている。
【0038】
移動装置80は、ヘッドユニット70を基台10上にて、X方向及びY方向に移動させる装置である。移動装置80は、Y方向に沿った一対のYビーム81と、Xビーム85と、第1直線軸83、第2直線軸87、モータM4、モータM5を備えている。
【0039】
Xビーム85は、X方向に長い形状であり、Yビーム81に対して、X方向の両端をスライド可能に支持されている。第1直線軸83は、Yビーム81に取り付けられ、Y方向に沿っている。第1直線軸83は、例えば、ボールねじ軸である。第1直線軸83は、Xビーム85に取り付けられたボールナットと共にボールねじ機構を構成している。そのため、モータM4を駆動して、第1直線軸83を回転させると、ボールねじ機構の作用により、Yビーム81に対して、Xビーム85及びヘッドユニット70をY方向に移動させることが出来る。
【0040】
ヘッドユニット70は、Xビーム85に対して、スライド可能に取り付けられている。第2直線軸87は、Xビーム85に取り付けられ、X方向に沿っている。第2直線軸87は、例えば、ボールねじである。第2直線軸87は、ヘッドユニット70に取り付けられたボールナットと共にボールねじ機構を構成している。そのため、モータM5を駆動して、第2直線軸87を回転させると、ボールねじ機構の作用により、Xビーム81に対して、ヘッドユニット70をX方向に移動させることが出来る。
【0041】
このように移動装置80は、駆動源としてモータM4、モータM5を備えており、モータM4の駆動により、ヘッドユニット70及びXビーム85を基台10上においてY方向に移動することが出来、モータM5の駆動により、ヘッドユニット70を基台10上においてX方向に移動することが出来る。
【0042】
以上のことから、基台10上に設置された部品供給部11の上方にヘッドユニット70を移動した後、吸着ヘッド73を所定高さまで下降させつつ、部品を吸着することで、部品供給部11から部品5を取り出すことができる。
【0043】
また、部品の取り出し後、ヘッドユニット70をロボット20に保持された基板Pの上方に移動した後、吸着ヘッド73を所定高さまで下降させつつ、部品5が基板Pの高さに至るタイミングに合わせて負圧による部品の保持を解くことで、ロボット20に保持された基板P上に、部品5を搭載することができる。
【0044】
尚、基台10上には、部品認識カメラ90が設置されおり、吸着ヘッド73により保持された部品5を画像認識できるようになっている。
【0045】
次に
図7を参照して、部品搭載装置1の電気的構成を説明する。
図7は部品搭載装置1の電気的構成を示すブロック図であり、特に、ロボット20とヘッドユニット70の制御に関係する構成部分を示している。
【0046】
図7に示すように、部品搭載装置1は、コントローラ100と、モータドライバ130、140を備えている。モータドライバ130には、ロボット20の駆動源である3つのモータM1〜M3がそれぞれ接続されている。また、モータドライバ140には、ヘッドユニット70や吸着ヘッド73の駆動源である3つのモータM4〜M6がそれぞれ接続されている。
【0047】
コントローラ100は、CPU110と記憶部120を有しており、部品搭載装置1を制御する装置である。具体的には、搭載プログラムに従って、ロボット20やヘッドユニット70を制御する。記憶部120には、生産する基板Pの情報や、部品の搭載プログラムなど、基板Pの生産に必要なデータが記憶されている。
【0048】
また、上記以外にも、ハンドリング条件を決定するための各データ(後述する、部品ライブラリやハンドリング条件の決定テーブルのデータ)が記憶されている。コントローラ100は、生産開始前に、ロボット20のハンドリング条件を決定し、生産中は決定したハンドリング条件に従って、ロボット20を制御する。
【0049】
尚、生産とは、ランドに対してソルダペーストが印刷された部品未搭載の基板Pに対して部品5を搭載することにより、部品搭載済み基板Pを製造することを意味する。また、基板Pに対してソルダペーストを印刷する印刷装置(図略)は、例えば、部品搭載装置1の上流側に配置されており、部品供給装置1には、印刷装置によりソルダペーストを印刷済みの基板Pがコンベア等を用いて搬入される。
【0050】
2.ロボット20によるハンドリング条件の決定
基板Pは立体形状であり、同一面ではない複数の部品装着面Paを有している。部品装着面Paが傾斜している場合がある。そのため、部品5を搭載する際(搭載前)に、部品装着面Paが水平になるように、基板Pの向きや角度を調整する必要がある。具体的には、水平軸回りや鉛直軸回りに基板Pを回転して、両軸を中心とする、部品搭載面Paの角度を調整する必要がある。また、部品装着面Paが所定高さとなるように、基板PのZ方向(上下方向)の高さを調整する必要がある。
【0051】
ロボット20で、基板Pをハンドリングして上記の調整を行った際に、基板Pに搭載済みの部品5が搭載位置からずれたり、基板Pから脱落する等の搭載不良を起こす可能性がある。そのため、搭載済みの部品5が、ロボット20のハンドリングにより、前記した搭載不良を生じないように、ロボット20のハンドリング条件を決定することが好ましい。
【0052】
そこで、本明細書にて開示する部品搭載装置1では、基板Pに搭載済みの部品5が、ロボット20のハンドリングにより、位置ズレや脱落等の搭載不良を生じないように、ロボット20のハンドリング条件を決定する。具体的には、部品情報などのハンドリング条件決定情報に基づいて、ハンドリング条件を決定する。
【0053】
尚、ハンドリングとは、ロボット20を用いて、基板Pを動かすことを意味する。例えば、基板Pを、第1回転軸Ls1を中心とするS1方向や、第2回転軸Ls2を中心とするS2方向に回転移動したり、Z方向(上下方向)に直線移動(平行移動)することを意味する。また、ハンドリング条件とは、ロボット20を用いて基板Pを動かす時の角速度や加速度、減速度である。本例では、ハンドリング条件として、基板PをZ方向(上下方向)に移動する際の加速度A及び減速度Aと、基板PをS1方向に回転する時の角速度ω1及びS2方向に回転する時の角速度ω2を決定する。
【0054】
以下、ハンドリング条件を、計算で算出する方法について、説明を行う。
(基板PをZ方向に直線移動する場合に、部品5に搭載不良が生じない加速度A及び減速度Aの算出方法)
【0055】
図8に示すように、基板PをZ方向の下向きに直線移動する場合において、移動開始時など基板Pを加速する場合、基板Pに搭載された部品5には、上向きの慣性力Fzと、下向きの部品保持力Ftとが作用する。慣性力Fzは、下記の(1)式にて示すように、部品重量Wと、加速度Aから求めることが出来る。
【0056】
また、部品保持力Ftは基板Pと部品5との密着力である。具体的には、基板Pのランドに印刷されたソルダペースト7の持つ粘着力である。ソルダペースト7の粘着力は、部品形状、部品の質量、ソルダペースト量、ソルダペースト特性、部品の装着条件などにより変化することが知られている。
【0057】
本例では、部品保持力Ftの算出方法の一例として、以下の(2)式で示すように、ソルダペースト7の表面張力Tと、部品5の電極6の全周長Qとから算出する。尚、電極6の全周長Qは、部品5に設けられた各電極6の周長6aの和である(
図15参照)。
【0058】
そして、(1)式と(2)式による力のつり合いから、加速度Aは、下記の(3)式により算出することが出来る。
【0059】
Fz=W×A・・・・(1)式
Ft=T×Q・・・・(2)式
A=Ft/W・・・・(3)式
【0060】
基板PをZ方向の下向きに移動する場合の加速度Aを、(3)式の値よりも小さくすると、部品5に対して上向きに働く慣性力Fzが部品保持力Ftより小さくなる。そのため、加速度Aを、(3)式より算出される計算値以下にすることで、基板PをZ方向の下向きに移動する際に、搭載済みの部品5が搭載位置からずれたり、基板Pから脱落することを抑制することが出来る。
【0061】
このように、「部品重量W」と「部品保持力Ft」の2つのハンドリング条件決定情報から、(3)式に基づいて基板Pのハンドリング条件、すなわち、基板Pを下方に移動する時の加速度Aを決定することが出来る。
【0062】
言い換えれば、基板PをZ方向に移動する際は、慣性力Fzにより、部品5が搭載不良を生じない範囲の加速度Aに決定する。すなわち、部品保持力Ftを、部品重量Wで徐した値(Ft/W)以下の角速度Aに決定する。
【0063】
一方、移動停止時、基板Pは減速し、部品5に作用する慣性力Fzは、加速時と反対方向となる。すなわち、慣性力Fzは、下向きであり、基板Pに接近する方向であることから、加速時に比べて、基板Pに対する部品5の脱落や位置ズレが発生し難いことが想定できる。そのため、下方に移動する時の減速度Aとして、(3)式で求めた加速度を用いることで、基板Pをハンドリングする際に、搭載済みの部品5が搭載位置からずれたり、基板Pから脱落することを抑制することが出来る。
【0064】
また基板Pを上方向に直線移動する場合において、移動停止時などの減速時には、部品5に対して上向きの慣性力Fzが働く。そのため、基板Pを上方向に直線移動する場合の減速度Aは、下方向に直線移動する場合の加速度Aと同様に、(3)式に基づいて、算出することが出来る。
【0065】
即ち、基板Pを上方向に直線移動する場合と下方向に直線移動する場合は、加速時と減速時で力の方向が上下逆になることから、結局、基板Pを上方向に直線移動する場合の減速度Aは、下方向に直線移動する場合の加速度Aと同じ値を用いることで、ハンドリングする際に、搭載済みの部品5が搭載位置からずれたり、基板Pから脱落することを抑制することが出来る。
【0066】
また基板Pを上方向に直線移動する場合、移動開始時などの加速度時には、部品5には下向きの慣性力Fzが作用することから、減速時に比べて、基板Pに対する部品5の脱落や位置ズレが発生し難いことが想定できる。そのため、上方に移動する時の加速度Aとして、(3)式で求めた減速度Aを用いることで、ハンドリングする際に、搭載済みの部品5が搭載位置からずれたり、基板Pから脱落することを抑制することが出来る。
【0067】
以下の説明において、加減速度AはZ方向の加速度、減速度の双方の総称であり、また、上方向、下方向の向きは特に区別しないものとする。
【0068】
本例では、基板Pに対して搭載する各部品5を対象に、搭載不良を生じない加減速度Aを、上記した(3)式に基づいて、計算で求めている。
【0069】
そして、計算結果から、
図9に示すハンドリング条件の決定テーブル(直線移動)を作成し、そのデータをコントローラ100の記憶部120に予め記憶している。尚、ハンドリング条件の決定テーブルが本発明の「データテーブル」の一例である。
【0070】
ハンドリング条件の決定テーブルは、下記の「部品情報」に対応させて、基板PをZ方向にハンドリングする際に、搭載不良を生じない加減速度Aを定めたものである。
【0071】
また、「部品情報」は、「部品種」と「部品の分類情報」を含んでいる。本例では、部品種を、
図9に示すように、コンデンサや抵抗等のチップ部品と、SOP(Small Outline Package)と、QFP(Quad Flat Package)とに分類している。
【0072】
図9に示すように、「部品の分類情報」は、同一部品種について、部品の概略サイズを分類するための情報であり、部品種により異なっている。チップ部品は短辺の長さを、部品の分類情報としている。そして、チップ部品を、短辺が0.5mm未満、短辺が0.5mm〜2.0mm未満、短辺が2.0mm以上の3つに分類している。短辺が0.5mm未満は「部品サイズ小」、短辺が0.5mm〜2.0mm未満は「部品サイズ中」、短辺が2.0mm以上は「部品サイズ大」であり、各分類について、それぞれ加減速度Aが定められている。
【0073】
SOP(Small Outline Package)の場合、SOPに設けられたピン数を、部品の分類情報としている。そして、SOPを、ピン数が10ピン未満、10〜40ピン未満、40ピン以上の3つに分類している。ピン数が10ピン未満は「部品サイズ小」、ピン数が10〜40ピン未満は「部品サイズ中」、ピン数が40ピン以上は「部品サイズ大」であり、各分類について、それぞれ加減速度Aが定められている。尚、ピン数とは、SOPやQFPなどのIC部品5に設けられた接続端子7の数である(
図16参照)。
【0074】
また、QFP(Quad Flat Package)の場合、QFPに設けられたピン数を、部品の分類情報としている。そして、QFPを、ピン数が32ピン未満、32〜128ピン未満、128ピン以上の3つに分類している。ピン数が32ピン未満は「部品サイズ小」、ピン数が32〜128ピン未満は「部品サイズ中」、ピン数が128ピン以上は「部品サイズ大」であり、各分類について、それぞれ加減速度Aを定めている。
【0075】
以上のことから、部品情報、具体的には、「部品種」と「部品の分類情報」を、
図9に示す決定テーブルに参照することで、その部品5を搭載した基板Pを、Z方向(上下方向)にハンドリングする際の加減速度Aを決定することが出来る。
【0076】
(ハンドリングにより基板Pを回転する場合の角速度ωの算出方法)
基板Pを角速度ωで回転方向にハンドリングする場合、
図10に示すように、基板Pに搭載された部品5には、外向きの遠心力Fsと、遠心力Fsとは逆向きに部品保持力Ftが作用する。遠心力Fsは、下記の(4)式にて示すように、部品重量Wと、回転中心Oから部品5までの半径Rと、加速度ωとから求めることが出来る。尚、
図10は、基板PをS1方向に回転する場合(第1回転軸Ls1を中心に回転する場合)を例にして、部品保持力Ftと遠心力Fsの関係を示した図である。
【0077】
Ft=T×Q・・・・・・・・・・(2)式
Fs=W×R×ω
2・・・・・・・(4)式
ω
2=Ft/(W×R)・・・・・・(5)式
【0078】
そして、(2)式と(4)式による力のつり合いから、角速度ωは、下記の(5)式により算出することが出来る。尚、上記した3つの関係式は、基板PをS1方向に回転する場合だけでなく、S2方向に回転する場合(第2回転軸Ls2を中心に回転する場合)についても、適用することが出来る。
【0079】
基板Pを回転方向にハンドリング時の角速度ωの二乗ω
2を、(5)式の値よりも小さくすると、部品5に対して働く遠心力Fsが、部品保持力Ftよりも小さくなる。そのため、回転方向の角速度ωを、(5)式より算出される計算値にすることで、搭載済みの部品5が搭載位置からずれたり、基板Pから脱落することを抑制することが出来る。
【0080】
このように、「部品重量W」と「部品保持力Ft」と「回転中心Oから部品5までの半径(距離)R」の3つのハンドリング条件決定情報から、(5)式に基づいて、基板Pのハンドリング条件、すなわち、基板Pを回転方向に移動する時の角速度ωを決定することが出来る。
【0081】
言い換えれば、基板Pを回転方向に移動する際は、部品5に対して働く遠心力Fsにより、部品5が搭載不良を生じない範囲の角速度ωに決定する。すなわち、ω
2が、部品保持力Ftを部品重量Wと半径Rの積で徐した値(Ft/(W×R))以下となるように角速度ωを決定する。
【0082】
また、ロボット20は回転方向について2つの自由度を有しており、第1回転軸Ls1を中心とするS1方向への回転と、第2回転軸Ls2を中心とするS2方向への回転が可能である。基板PをS1方向にハンドリングする場合、
図11に示すように、第1回転軸Ls1の中心O1から部品5までの半径R1から角度度ω1を求めることが出来る。また、基板PをS2方向へハンドリングする場合、
図12に示すように、第2回転軸Ls2の中心O2から部品5までの半径R2から角度度ω2を求めることが出来る。尚、
図11では、中心O1から部品5aまでの半径をR1aとし、部品5bまでの半径をR1bとしている。
図12では、中心O2から部品5aまでの半径をR2aとし、部品5bまでの半径をR2bとしている。
【0083】
本例では、S1方向の回転とS2方向の回転のぞれぞれについて、基板Pに対して搭載する各部品5を対象として、搭載済みの部品5が搭載不良を生じない角速度ωを、上記した(5)式に基づいて、計算で求めている。
【0084】
そして、計算結果を用いて、
図13、14に示すハンドリング条件の決定テーブルを作成し、そのデータをコントローラ100の記憶部120に予め記憶している。尚、ハンドリング条件の決定テーブルが本発明の「データテーブル」の一例である。
【0085】
ハンドリング条件の決定テーブル(回転)は、「部品情報」と、「半径(回転中心Oから部品5までの距離)R」に対応して、角速度ωを定めたものである。
【0086】
また、「部品情報」は、「部品種」と「部品の分類情報」を含んでいる。本例では、部品種を、
図13、14に示すように、チップ部品と、SOP(Small Outline Package)と、QFP(Quad Flat Package)と、LEDとに分類している。
【0087】
図13、14に示すように、「部品の分類情報」は、部品の概略サイズを分類するための情報であり、部品種により異なっている。チップ部品の場合、短辺の長さを、部品の分類情報としており、短辺が0.5mm、短辺が0.5mm〜2.0mm未満、短辺が2.0mm以上の3パターンに分類している。短辺が0.5mm未満は「部品サイズ小」、短辺が0.5mm〜2.0mm未満は「部品サイズ中」、短辺が2.0mm以上は「部品サイズ大」に分類される。
【0088】
半径Rは、0.02m未満、0.02〜0.3m未満、0.3m以上の3パターンに分類している。そして、チップ部品の場合、短辺の長さと、半径Rに対応して、角速度ωを定めている。また、LEDの場合も、同様であり、短辺の長さと、半径Rに対応して、角速度ωを定めている。
【0089】
また、SOP(Small Outline Package)は、ピン数を、「部品の分類情報」としており、10ピン未満の場合、10〜40ピン未満、40ピン以上の3パターンに分類している。ピン数が10ピン未満は「部品サイズ小」、ピン数が10〜40ピン未満は「部品サイズ中」、ピン数が40ピン以上は「部品サイズ大」に分類される。
【0090】
半径Rは、0.02m未満、0.02〜0.3m未満、0.3m以上の3パターンに分類している。そして、SOPの場合、ピン数と半径に応じて、角速度ωを定めている。また、QFP(Quad Flat Package)の場合も同様であり、ピン数と半径Rに対応して、角度速ωを定めている。
【0091】
以上のことから、「部品種」と、「部品の分類情報(短辺の長さ又はピン数)」と、「半径R」を、
図13、
図14に示す決定テーブルに参照することで、その部品5を搭載した基板Pを、S1方向やS2方向にハンドリングする際に、搭載不良を生じない角速度ωを決定することが出来る。
【0092】
図17は、基板Pに搭載する部品5の部品ライブラリである。部品ライブラリは、部品5の種類に対応して、画像コード、部品サイズ、電極周長、ソルダペーストの粘着力、部品重量Wのデータをまとめたものである。
【0093】
例えば、
図15に示すチップ部品の場合、部品サイズに関する情報として、X方向の部品サイズDx、Y方向の部品サイズDy、部品の厚さDzがそれぞれ記憶されている。また、電極周長Qは、部品5に設けられた全電極6の周長6aの和である。
図15の場合、チップ部品の両側に電極6を2つ有しているため、電極周長は、2つの電極6の周長の和である。また、ソルダペーストの粘着力は基板Pに印刷されるソルダペーストの粘着力である。部品重量Wは、各部品の重量であり、例えば、予め計測したデータを記憶している。
【0094】
上記の部品ライブラリは、基板Pの生産開始前に作成され、コントローラ100の記憶部120に予め記憶されている。尚、
図17に示す部品ライブラリでは、部品種として、チップ部品とLEDを例示している。例えば、SOPやQFPの場合は、ピン数のデータも、部品ライブラリに加えるとよい。
【0095】
次に
図18を参照して、コントローラ100により実行されるハンドリング条件の決定フローについて説明する。ハンドリング条件の決定フローは、
図19に示す搭載プログラムデータのうち太枠線で囲んだデータ、すなわち、基板Pをハンドリングする際のZ方向の加減速度Aと、S1方向、S2方向の角速度ω1、ω2を決定するものである。
【0096】
尚、搭載プログラムデータのうち、部品の搭載順、部品コード(部品の識別番号)、部品の搭載座標(基板Pに対する部品の搭載位置のX方向の座標、Y方向の座標、Z方向の座標)、搭載角度(基板Pに部品5を搭載する角度)のデータは予め作成されているものとする。また、各部品5を搭載する際に、基板Pをハンドリングする時のZ方向の座標、S1方向の座標(角度)、S2方向の座標(角度)のデータも予め作成されているものとする。
【0097】
ハンドリング条件の決定フローは、
図18に示すように、S10〜S80の8つのステップから構成されている。そして、S10では、コントローラ100により、部品の搭載順nが1番目に設定される。続く、S20では、n番目に搭載される部品5について、ハンドリングにより搭載不良を起こさない、ハンドリング条件を決定する処理がコントローラ20により実行される。尚、決定されるハンドリング条件は、基板Pをハンドリングする際のZ方向の加減速度A、S1方向に回転する時の角速度ω1、S2方向に回転する時の角速度ω2である。
【0098】
具体的に説明すると、
図19に示すように、搭載順が1番目の部品は、チップ部品であり、部品コードは「CHIP−1005R」である。コントローラ100は、部品コードを、
図17に示す部品ライブラリのデータを参照して、1番目に搭載する部品のX方向の部品サイズDxとY方向の部品サイズDyを読み出す。そして、短辺方向の部品サイズを特定する。「CHIP−1005R」の場合、Y方向が短辺であり、短辺方向の部品サイズは0.5mmである。
【0099】
その後、
図9に示すハンドリング条件の決定テーブル(Z方向の直線移動)に対して、部品種の情報と、短辺方向の部品サイズ(長さ)の情報を参照することで、1番目に搭載する部品について、ハンドリングにより搭載不良を生じないZ方向の加減速Aを決定できる。すなわち、1番目に搭載する部品種は、「チップ部品」であり、短辺は0.5mmであることから、ハンドリングにより搭載不良を生じないZ方向の加減速度A_1は0.8[m/sec
2]となる。尚、Aに付した添え字_nは、部品の搭載順を示している。
【0100】
また、コントローラ100は、
図19に示す搭載プログラムデータに含まれている部品のX方向、Y方向、Z方向の搭載座標のデータから、基板PをS1方向に回転する際の半径R1(回転中心O1から部品5までの距離:
図11参照)と、基板PをS2方向に回転する際の半径R2(回転中心O2から部品5までの距離:
図12参照)をそれぞれ算出する。
【0101】
そして、
図13、14に示すハンドリング条件の決定テーブル(回転)に対して、部品種の情報と、短辺方向の部品サイズ(長さ)の情報と、半径R1、R2の情報を参照することで、1番目に搭載する部品5が、ハンドリングにより搭載不良を起こさないS1方向の角速度ω1と、S2方向の角速度ω2を決定できる。
【0102】
1番目に搭載する部品の部品種はチップ部品、短辺の長さは0.5mmである。従って、例えば、半径R1を0.2m、半径R2を0.01mとすると、
図13に示すハンドリング条件の決定テーブルから角速度ω1_1は4[rad/sec]、角速度ω2_1は8[rad/sec]となる。尚、ω1、ω2に付した添え字_nは、部品の搭載順を示している。
【0103】
以上により、1番目に搭載する部品5について、ハンドリングにより搭載不良を生じさせない、ハンドリング条件を決定できる。決定したハンドリング条件は、
図19に示す搭載プログラムデータに対して記憶される。
【0104】
その後、処理はS30に移行し、コントローラ100により、部品の搭載順nが、最終番か判定する処理が行われる。部品の搭載順nが最終番でない場合、S40に移行して、部品の搭載順nを更新する処理が行われる。これにより、部品の搭載順nが1番目から2番目に更新される。その後、S20に移行して、2番目に搭載する部品5について、搭載不良を生じさせない、ハンドリング条件を決定する処理が、コントローラ100により、実行される。
【0105】
このような処理が繰り返されることで、基板Pに対して搭載される各部品について、ハンドリングにより搭載不良を生じさせない、ハンドリング条件を決定することが出来る。尚、2番目以降のハンドリング条件は、1番目に搭載する部品についてハンドリング条件を決定したのと同様の方法で、決定することが出来る。
【0106】
そして、最終番の部品5について、搭載不良を生じさせないハンドリング条件を決定すると、S30の判定処理にてYES判定される。これにより、その後、S50以降の処理が実行されることになる。
【0107】
S50では、部品5の搭載順nが1番目に設定される。続くS60では、搭載順nについて、搭載済みの部品5が搭載不良を生じないように、ハンドリング条件が決定される。
【0108】
具体的には、n番目の部品5を搭載するため基板Pをハンドリングする時には、1番目から(n−1)番目までの部品5が搭載済みであり、これら部品5が搭載不良を生じないようにする必要がある。そのため、n番目の部品5を搭載するため基板Pをハンドリングする時のハンドリング条件を、S20にて算出した1番目から(n−1)番目の部品5のうち、最も搭載不良が発生し易い部品5に対する加減速度Aや角速度ω1、ω2に決定する。
【0109】
尚、搭載不良が発生し易い部品5とは、基板Pを上下方向に移動した時や基板Pを回転方向に移動した時に、他部品に比べて、慣性力Fzや遠心力Fsが大きい部品である。
【0110】
例えば、1番目の部品5を搭載するため基板Pをハンドリングする時は、搭載済みの部品は存在していない。そのため、1番目の部品5を搭載するため基板Pをハンドリングする時のハンドリング条件は、S20にて決定した1番目の部品5に対するハンドリング条件に決定される。具体的には、1番目の部品を搭載するため基板PをZ方向にハンドリングする時の加減速A
H_1は、S20にて決定した1番目の部品5に対応する加減速度A_1に決定される。
【0111】
角速度ω1、角速度ω2も同様であり、1番目の部品5を搭載するため基板PをS1方向、S2方向にハンドリングする際の角速度ω1
H_1、角速度ω2
H_1は、S20にて決定した1番目の部品5に対する角速度ω1_1と、角速度ω2_1に決定される。
【0112】
S60の処理が終了すると、S70に移行して、部品の搭載順nが、最終番か判定する処理が行われる。部品の搭載順nが最終番でない場合、S80に移行して、部品5の搭載順nを更新する処理が行われる。
【0113】
これにより、部品の搭載順nが1番目から2番目に更新される。その後、S60に移行して、2番目の部品を搭載するため基板Pをハンドリングする時のハンドリング条件が決定される。
【0114】
具体的には、2番目の部品5を搭載するため基板PをZ方向にハンドリングする時の加減速A
H_2は、S20にて決定した1番目の部品5に対応する加減速度A_1に決定される。
【0115】
角速度ω1、角速度ω2も同様であり、2番目の部品を搭載するため基板PをS1方向、S2方向にハンドリングする際の角速度ω1
H_2、角速度ω2
H_2は、S20にて決定した1番目の部品に対する角速度ω1_1と、角速度ω2_1に決定される。
【0116】
このような処理が繰り返され、2番目以降についても、基板Pのハンドリング条件が決定される。
【0117】
具体的には、3番目の部品5を搭載するため基板Pをハンドリングする時のZ方向の加減速A
H_3は、S20にて算出した1番目〜2番目の部品の加減速度A_1〜A_2のうち、最も搭載不良が発生し易い部品に対する加減速度A、すなわち、最も遅い加減速度Aに決定される。
【0118】
また、S1方向の角速度ω1、S2方向の角速度ω2も同様であり、3番目の部品5を搭載するため、基板Pをハンドリングする時のS1方向の角速度ω1
H_3は、S20にて決定した1番目〜2番目の部品の角速度ω1_1〜ω1_2のうち、最も搭載不良が発生し易い部品に対する角速度ω1、すなわち最も遅い角速度ω1に決定される。また、S2方向の角速度ω2_3は、S20にて算出した1番目〜2番目の部品の角速度ω2_1〜ω2_2のうち、最も搭載不良が発生し易い部品に対する角速度ω2、最も遅い角速度ω2に決定される。
【0119】
4番目の部品5を搭載するため基板Pをハンドリングする時のZ方向の加減速A
H_4は、S20にて算出した1番目〜3番目の部品の加減速度A_1〜A_3のうち、最も搭載不良が発生し易い部品に対する加減速度A、すなわち最も遅い加減速度Aに決定される。
【0120】
また、S1方向の角速度ω1、S2方向の角速度ω2も同様であり、4番目の部品を搭載するため、基板Pをハンドリングする時のS1方向の角速度ω1
H_4は、S20にて決定した1番目〜3番目の部品の角速度ω1_1〜ω1_3のうち、最も搭載不良が発生し易い部品に対する角速度ω1、すなわち、最も遅い角速度ω1に決定される。また、S2方向の角速度ω2
H_4は、S20にて算出した1番目〜3番目の部品の角速度ω2_1〜ω2_3のうち、最も搭載不良が発生し易い部品に対する角速度ω2、すなわち最も遅い角速度ω2に決定される。
【0121】
そして、最終番の部品5を搭載する際の基板Pのハンドリング条件が決定すると、S70の判定処理を行った時に、YES判定され、一連の処理は終了する。
【0122】
以上により、搭載順nに従って各部品5を搭載するため、基板Pをハンドリングする時のハンドリング条件を決定できる。具体的には、
図19にて示すように、Z方向の加減速度A
H、S1方向の角速度ω1
H、S2方向の角速度ω2
Hを決定することが出来る。
【0123】
そして、基板Pの生産中、コントローラ100は決定したハンドリング条件、すなわち
Z方向の加減速度A
H、S1方向の角速度ω1
H、S2方向の角速度ω2
Hに従って、ロボット20を制御して、基板Pをハンドリングする。
【0124】
このようにすることで、部品5の搭載不良が発生することを抑制出来る。例えば、4番目の部品5を基板Pに搭載するため、ロボット20によるハンドリングによって、基板PのZ方向の位置やS1方向、S2方向の角度を調整した時に、基板Pに搭載済みの1番目〜3番目の部品が、基板Pから脱落したり、搭載位置がずれることを抑制できる。
【0125】
尚、ロボット本体30は3つの駆動軸Lz、Ls1、Ls2を有しており、基板Pに対してZ方向への直線移動とS1方向やS2方向への回転を同時に行うことが出来、その場合、基板Pに搭載された部品5対して、Z方向の慣性力Fzや遠心力Fs1、Fs2が同時に加わる。
【0126】
これら複数の力Fz、Fs1、Fs2の合力が、部品保持力Ftを超えると、基板Pに搭載した部品5が搭載不良を起こす場合がある。そのため、基板Pを向きや位置の調整に、複数の駆動軸Lz、Ls1、Ls2を駆動する必要がある場合でも、各駆動軸Lz、Ls1、Ls2を順番に駆動して、Z方向への直線移動や、S1方向、S2方向の回転の各動作を個々に行うようにすることが好ましい。すなわち、ロボット20の各駆動軸Lz、Ls1、Ls2を、動作タイミングが重ならいように、動作するタイミングをずらして制御するとよい。
【0127】
<実施形態2>
実施形態1では、部品情報として、「部品種」、「部品の分類情報」を例示した。
図20に示すように、部品情報に、「部品重量W」を含め、「部品種」、「部品の分類情報(短辺長さ又はピン数)」、「部品重量W」の3つのデータから、加減速度Aを決定するようにしてもよい。尚、S1方向やS2方向に、基板Pを回転する場合の角速度ω1や角速度ω2についても同様であり、部品情報に「部品重量W」を加え、「部品種」、「部品の分類情報(短辺長さ又はピン数)」、「部品重量W」、「半径R」の4つのデータから、角速度ω1や角速度ω2を決定してもよい。
【0128】
また、実施形態1では、部品ライブラリに、部品重量W(計測値のデータ)を含めるようにしているが、部品重量Wは、部品のX方向の部品サイズDx、Y方向の部品サイズDy、厚さDzのデータから推測するようにしてもよい。すなわち、部品5の体積から部品重量Wについて概算値を推測するようにしてもよい。例えば、上記データから推測される部品の体積に、部品の密度(想定値)を乗算するなどして推測してもよい。
【0129】
<実施形態3>
実施形態2では、部品情報に部品重量Wを含め、基板PをZ方向に移動する際の加減速度Aを、「部品種」と、「部品の分類情報」と、「部品重量W」と、に基づいて決定するようにした。これ以外にも、ハンドリング条件の決定テーブルに、ソルダペースト7による部品保持力Ftのデータを加え、「部品情報(部品種と部品の分類情報と部品重量)」と、「部品保持力Ft」のデータに基づいて、基板PをZ方向に移動する際の加減速度Aを決定するようにしてもよい。また、S1方向やS2方向に基板を回転する場合の角速度ω1や角速度ω2についても同様であり、ハンドリング条件の決定テーブルに、ソルダペースト7による部品保持力Ftを含めるようにしてもよい。
【0130】
<実施形態4>
実施形態1では、
図9、
図13、
図14に示すハンドリング条件の決定テーブルを利用して、ハンドリング条件を決定した例を示したが、ハンドリング条件は、上記した決定テーブルを利用せずに、計算で求めてもよい。具体的には、Z方向(上下方向)に基板Pを移動する際の加減速度Aは、部品重量Wと、ソルダペースト7による部品保持力Ftとから、実施形態1にて説明した(3)式より、算出してもよい。
【0131】
また、S1方向やS2方向に基板Pを回転する時の角速度ω1や角速度ω2は、部品重量Wと、半径Rと、ソルダペースト7による部品保持力Ftとから、実施形態1にて説明した(5)式より、算出してもよい。
【0132】
<実施形態5>
図21に示すように、
図6の状態から回転中心O1を軸として基板PをS1方向に約180°回転(チルト回転)した場合、部品搭載面Paは下を向く。この場合、部品搭載面Paに搭載された部品5は、基板Pから抗力を受けることなく、下向きの重力が働く。そのため、部品搭載面Paが上を向いている場合よりも、小さな加減速度Aや角速度ωでも、ハンドリング時に搭載不良が生じる可能性がある。
【0133】
そこで、
図22に示すように、部品搭載面Paが下を向く範囲E2では、部品5に働く重力の影響を考慮して、基板PをZ方向に移動する際の加減速度Aや、S1方向、S2方向に回転する際の角速度ω1、角速度ω2を求めることが好ましい。
【0134】
例えば、下記の(6)式にて示すように、ソルダペースト7による部品保持力Ftから、重力Nの大きさ分を差し引いた値を、基板の部品保持力Ft1とする。そして、部品保持力Ft1を用いて、実施形態1の(3)式や(5)式から加減速度Aや、角速度ω1、角速度ω2を算出することで、部品5に働く重力の影響を考慮したハンドリング条件を決定することが出来る。
【0136】
尚、
図22に示す範囲E1は、部品搭載面Paが上を向く範囲を示している。部品搭載面Paが上を向く範囲E1でも、部品搭載面Paが水平でなく傾いている場合には、安全率を考え、部品搭載面Paが下を向いている場合の、ハンドリング条件を適用するようにしてもよい。
【0137】
<実施形態6>
実施形態1では、予め決められた部品5の搭載順nを変更せずに、基板Pのハンドリング条件を決定した例を示した。具体的には、n番目の部品5を搭載する際のハンドリング条件は、S20にて算出した1番目から(n−1)番目までの部品5のうち、搭載不良が発生し易い部品5に対する加減速度Aや角速度ω1、ω2に決定した。
【0138】
部品の搭載順nの変更が可能な場合、加速度Aや角速度ωが大きくても、搭載不良が発生し難い部品5から先に搭載するように搭載順nを決定するようにしてもよい。例えば、S20で算出した1番目〜n番目までのハンドリング条件のうち、S1方向、S2方向の角速度ω1、ω2が速い順に、部品5の搭載順nを決定してもよい。また、Z方向の加減速度Aが大きい順に、部品5の搭載順nを決定してもよい。このようにすることで、全部品の搭載に必要な搭載時間が短くなるように、部品5の搭載順nを最適化することが出来る。
【0139】
尚、搭載不良が発生し難い部品5とは、基板PをZ方向(上下方向)に移動した時や基板Pを回転方向に移動した時に、他部品に比べて、慣性力Fzや遠心力Fsが小さい部品である。
【0140】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0141】
(1)実施形態1では、ロボット20の一例として、3つの駆動軸Lz、Ls1、Ls2を備え、3つの自由度を持つ装置を例示した。ロボット20の構成は、実施形態1の構成に限定されるものではなく、他の構成、例えば多関節ロボットでもよい。また、自由度も3に限定されるものではない。1や2でもいいし、4以上でもよい。従って、ロボットは上下方向にのみ自由度を有する形態や、回転方向にのみ自由度を有する形態であってもよい。
【0142】
(2)実施形態1では、ハンドリング条件の決定テーブルを用いて、基板Pのハンドリング条件を決定した。そして、決定したハンドリング条件に従って、ロボット20を制御する例を示した。これ以外にも、決定テーブルを用いて、決定したハンドリング条件に対して、更に安全率を考慮したハンドリング条件を適用して、ロボット20を制御するようにしてもよい。すなわち、決定した加減速度Aよりも小さな加減速度Aや、決定した角度速ωよりも遅い角速度ωでロボット20を制御してもよい。また、ハンドリング条件を計算で算出する場合も同様である。
【0143】
(3)実施形態1では、基板Pの角度や位置等の調整に、複数の駆動軸Lz、Ls1、Ls2を駆動する必要がある場合でも、各駆動軸Lz、Ls1、Ls2を順番に駆動して、Z方向への移動や、S1方向、S2方向の回転の各動作を個々に行うようにした。3つの駆動軸Lz、Ls1、Ls2を同時に駆動する場合、基板Pに搭載された部品5に対してZ方向の慣性力Fzや遠心力Fs1、Fs2が同時に加わる。従って、3つの駆動軸Lz、Ls1、Ls2を同時に駆動する場合には、これら複数の力Fz、Fs1、Fs2の合力が、ソルダペーストによる部品保持力Ftを超えないように、ハンドリング条件を決定するとよい。言い換えると、これら複数の力Fz、Fs1、Fs2の合力により、部品が搭載不良を生じないように、Z方向の加減速度A、S1方向の角速度ω1、S2方向の角速度ω2を決定するとよい。
【0144】
(4)実施形態1では、部品搭載装置1を制御するコントローラ100によって、基板のハンドリング条件を決定した例を示した。この他にも、例えば、
図23に示すように、コントローラ100とは別に設けた専用の決定装置300により、基板Pのハンドリング条件を決定するようにしてもよい。そして、決定したハンドリング条件に従って、コントローラ100でロボット20を制御するようにしてもよい。
【0145】
(5)実施形態1では、計算式で求めたハンドリング条件から、ハンドリング条件の決定テーブルを作成した例を示した。これ以外にも、基板Pをハンドリングした時に部品5が、脱落や位置ずれ等の搭載不良を生じるか否かを確認する実験を、各部品5について、ハンドリング条件を変えてそれぞれ行い、得られた実験値からハンドリング条件を決定してもよい。すなわち、各部品5について、基板PをZ方向に移動する時に、搭載不良が生じない、加速度A及び減速度Aを実験で求めてもよい。また、基板PをS1方向、S2方向に回転する時の角速度ω1、ω2を実験で求めてもよい。そして、実験で得られた結果(加速度、減速度、角速度)から、ハンドリング条件の決定テーブルを作成してもよい。
【0146】
(6)実施形態1では、ハンドリング条件を決定するために用いる部品情報として、「部品種」及び「部品の分類情報」を例示した。
【0147】
ハンドリング条件を決定するために用いる部品情報は、少なくとも、「部品種」と「部品重量」のうち、少なくともいずれか1つを含んでいればよく、「部品の分類情報」は無くてもよい。例えば、基板Pを上下方向に移動する場合であれば、各部品種に対応付けて加減速度Aの情報を記憶しておき、「部品種のみ」に基づいて、ハンドリング条件を決定するようにしてもよい。また、それ以外にも、「部品重量」に対応付けて、加減速度Aの情報を記憶しておき、「部品重量」に基づいて、ハンドリング条件を決定するようにしてもよい。
【0148】
(7)実施形態1では、立体形状をした基板Pの一例として、階段状の基板Pを例示した。基板Pは立体形状であればよく、部品搭載面Paが球面を含むような曲面により構成されていてもよい。
【0149】
(8)実施形態1では、基板PをS1方向やS2方向に回転する時のハンドリング条件として、部品が搭載不良を生じない角速度ω1、ω2を算出した例を示した。角速度ω1、ω2に変えて、角速度ω1に対する速度、角速度ω2に対する速度を求めるようにしてもよい。