(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896856
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ゲル状脱臭剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20210621BHJP
A61L 9/012 20060101ALI20210621BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20210621BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20210621BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20210621BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/01 J
A61L9/01 K
A61L9/012
A61L9/014
B01J20/10 D
B01J20/18 E
B01J20/20 E
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-526091(P2019-526091)
(86)(22)【出願日】2017年6月30日
(86)【国際出願番号】JP2017024138
(87)【国際公開番号】WO2019003413
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2020年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 永▲徳▼
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−024424(JP,A)
【文献】
特開2002−119589(JP,A)
【文献】
特開2003−047648(JP,A)
【文献】
特開2004−358027(JP,A)
【文献】
特開平09−187493(JP,A)
【文献】
特開2005−082528(JP,A)
【文献】
特開2012−056854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01
A61L 9/012
A61L 9/014
B01J 20/10
B01J 20/18
B01J 20/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(
D);
(A)吸着剤
(B)ゲル化剤
(C)抗菌・抗かび剤
(D)溶媒
を含有し、成分(C)が、
(C1)下記一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルコキシ基、R
2は水素原子または水酸基を示す)
で表される1種または2種以上の化合物及び
(C2)下記一般式(II)
【化2】
(式中、R
3は炭素数10〜14のアルキル基を示す)
で表される1種または2種以上の化合物を
、質量配合比20:1〜1:5で含有することを特徴とするゲル状脱臭剤。
【請求項2】
(C1)が、次の成分(c1);
(c1)o−メトキシシンナムアルデヒド
である請求項1記載のゲル状脱臭剤。
【請求項3】
(C2)が、次の成分(c2);
(c2)3−ドデシルアミノ−1,2−プロパンジオール
である請求項1記載のゲル状脱臭剤。
【請求項4】
成分(C)が、さらに次の成分(c3);
(c3)EDTA
を含有する請求項1〜3のいずれかの項記載のゲル状脱臭剤。
【請求項5】
成分(A)吸着剤が、活性炭、木炭、ゼオライト、シリカゲル及び層状アルミノケイ酸亜鉛からなる群より選ばれた1種または2種以上である請求項1〜4の何れかの項記載のゲル状脱臭剤。
【請求項6】
成分(A)が、次の成分(a1)及び(a2);
(a1)活性炭
(a2)備長炭
を含有する請求項5記載のゲル状脱臭剤。
【請求項7】
成分(a1)と(a2)を質量配合比3:2〜1:1で含有する請求項6記載のゲル状脱臭剤。
【請求項8】
成分(B)ゲル化剤が、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸ソーダ及びセルロース誘導体よりなる群から選ばれた1種または2種以上である請求項1〜7の何れかの項記載のゲル状脱臭剤。
【請求項9】
成分(B)が、次の成分(b1);
(b1)カラギーナン
を含有する請求項8記載のゲル状脱臭剤。
【請求項10】
成分(B)が、さらに次の成分(b2);
(b2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース
を含有する請求項9記載のゲル状脱臭剤。
【請求項11】
成分(b1)と(b2)を質量配合比10:1〜1:1で含有する請求項10記載のゲル状脱臭剤。
【請求項12】
成分(D)が、次の成分(d1)及び(d2);
(d1)水
(d2)エタノール
を含有する請求項1〜11のいずれかの項記載のゲル状脱臭剤。
【請求項13】
成分(d1)と(d2)を質量配合比90:1〜10:1で含有する請求項12記載のゲル状脱臭剤。
【請求項14】
成分(d1)の含有量が85〜95質量%である請求項12または13に記載のゲル状脱臭剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゲル状脱臭剤に関し、さらに詳細には菌やかびの発生や増殖を抑制することができるゲル状脱臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、トイレ、部屋、冷蔵庫、車の中などで発生する悪臭を除去するための消臭剤や脱臭剤は数多く提案されている。これらのうち、脱臭剤としては、活性炭やゼオライトのような物理的ないし化学的吸着性能を有する粒状物を、通気性を有する袋に収納して、粒状物に悪臭を吸着させて除去するタイプのものが一般的に知られている。
【0003】
しかしながら、このような脱臭剤は、脱臭効果において優れているものの、脱臭剤の寿命、すなわち脱臭剤の終了時期がわからず、脱臭剤の取り替え時期を判別し難いという問題があった。
【0004】
この問題を解決するものとして、本出願人は、先に吸着剤をゲル中に分散してなる脱臭剤(以下「ゲル状脱臭剤という」)を開発し特許出願している(特許文献1参照)。このゲル状脱臭剤は、高い脱臭効力と終了時期のわかりやすさから非常に使い勝手のよいものであったが、使用環境によってはゲル状脱臭剤自身に菌が繁殖し、かびが生えるという問題点があった。
【0005】
一方、これまでにも、ゲル状の芳香剤、消臭剤等のゲル製剤が数多く提案されているが、これらも菌やかびが発生・増殖するという問題が知られていた。それを解決する手段として、通常パラベンや安息香酸ナトリウムなどの抗菌・抗かび剤をゲル状脱臭剤中に配合することが行われている。
【0006】
しかしながら、従来のゲル状の芳香剤や消臭剤に用いられていたこれらの抗菌・抗かび剤をゲル状脱臭剤に配合しても、まったく効果が認められないか、一般的なゲル製剤に対する配合量よりも大幅に増加させなければその効果が発揮されなかった。また、ゲル状脱臭剤の製造直後には抗菌・抗かび効果を確認できても、ゲル状脱臭剤の使用期間後期において抗菌・抗かび効果が低下する場合もあった。これらの理由は、パラベンや安息香酸ナトリウムなどの抗菌・抗かび剤が、ゲル状脱臭剤中に分散されている吸着剤に吸着されてしまうためと推測されていた。
【0007】
さらに近年、人体や環境に対する安全性の面から、抗菌・抗かび剤として使用可能な化合物についてポジティブリスト制による規制を厳格化している国もある。そのため、従来使用可能であった有効な抗菌・抗かび剤が使用できなくなり、他方、ポジティブリストに記載された化合物では、前述の理由からゲル状脱臭剤にて抗菌・抗かび効果が得られないといった問題が発生している。
【0008】
このように、ゲル状脱臭剤では、他のゲル製剤で採用されている抗菌・抗かび方法を使用することができず、別の方法で菌の繁殖や、かびの増殖を抑えることが必要であり、ゲル状脱臭剤の菌やかびの発生や繁殖等を抑えるための技術開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−157706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の実状に鑑みなされたものであり、吸着剤をゲル中に分散せしめてなる脱臭剤において、吸着剤の影響を受けることなく、使用開始から終期まで菌の繁殖やカビの増殖を抑えるための技術の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ゲル状脱臭剤において、ゲル中に分散された吸着剤の影響をほとんど受けずに抗菌、抗かび作用を奏する成分について鋭意検索を行っていたところ、特定のシンナムアルデヒド誘導体および/またはシンナムカルボン酸誘導体並びに3−アルキルアミノ−1,2−プロパンジオールがそのような性質を有し、これをゲル状脱臭剤に配合することによって、有効にゲル中の菌やかびの発生・増殖を抑制しうることを見いだし、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(D);
(A)吸着剤
(B)ゲル化剤
(C)抗菌・抗かび剤
(D)溶媒
を含有し、成分(C)が、
(C1)下記一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルコキシ基、R
2は水素原子または水酸基を示す)
及び/または
(C2)下記一般式(II)
【化2】
(式中、R
3は炭素数10〜14のアルキル基を示す)
で表される化合物の1種または2種以上を含有することを特徴とするゲル状脱臭剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゲル状脱臭剤は、使用開始から終期まで菌やカビの発生・増殖を防止するとともに、吸着剤の機能低下を抑制し、脱臭効果を維持することできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゲル状脱臭剤は、成分(A)吸着剤、(B)ゲル化剤、(C)抗菌・抗かび剤及び(D)溶媒を含有する。
【0015】
成分(A)吸着剤としては、従来公知のヤシ殻活性炭等の活性炭、備長炭等の木炭などの炭素系吸着剤;ゼオライト、シリカゲル、層状アルミノケイ酸亜鉛等のシリカ系吸着剤などが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。このうち、脱臭効果維持やゲルの安定性等の観点から炭素系吸着剤が好適であり、特に(a1)活性炭及び(a2)備長炭を組み合わせて用いることがより好ましい。また吸着剤はゲルの形成性や吸着能力の点から粒度が100メッシュ以上のものを用いることが望ましい。
【0016】
本発明のゲル状脱臭剤中の(A)吸着剤の含有量は特に制限されるものではないが、通常0.1〜10質量%(以下、単に「%」で示す)、好ましくは0.5〜5%である。(A)吸着剤として、(a1)活性炭及び(a2)備長炭を組み合わせて使用する場合は、配合質量比((a1):(a2))を2:1〜1:1とすることが好ましく、3:2〜1:1とすることがより好ましい。
【0017】
成分(B)ゲル化剤としては、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸ソーダ、セルロース誘導体等従来公知のものが使用でき、これらの1種または2種以上を用いることができる。セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、中でもヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。これらのうち、ゲルの安定性等の観点から、(b1)カラギーナン、(b2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましく、さらにこれらを組み合わせて用いることが好ましい。
【0018】
成分(B)ゲル化剤のゲル状脱臭剤中の含有量は特に制限されるものでないが、通常0.1〜10%であり、好ましくは0.5〜5%である。成分(B)として、(b1)カラギーナンと(b2)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを併用する場合は、配合質量比((b1):(b2))10:1〜1:1、さらに7:1〜2:1で組み合わせることが好ましい。
【0019】
成分(C)抗菌・抗かび剤として、(C1)下記一般式(I)で表されるシンナムアルデヒド誘導体及び/またはシンナムカルボン酸誘導体、及び/または、(C2)下記一般式(II)で表される3−アルキルアミノ−1,2−プロパンジオールの1種または2種以上を含有する。
【0020】
【化3】
(式中、R
1は炭素数1〜3のアルコキシ基、R
2は水素原子または水酸基を示す)
【0021】
【化4】
(式中、R
3は炭素数10〜14のアルキル基を示す)
【0022】
上記式(I)で表されるシンナムアルデヒド誘導体として、具体的には、o−メトキシシンナムアルデヒド、m−メトキシシンナムアルデヒド、p−メトキシシンナムアルデヒド、o−エトキシシンナムアルデヒド、m−エトキシシンナムアルデヒド、p−エトキシシンナムアルデヒド、o−プロポキシシンナムアルデヒド、m−プロポキシシンナムアルデヒド、p−プロポキシシンナムアルデヒドが例示される。これらの中でも、抗菌・抗かび効果及び脱臭効果等の観点から、メトキシシンナムアルデヒド(o−メトキシシンナムアルデヒド、m−メトキシシンナムアルデヒド、p−メトキシシンナムアルデヒド)が好ましく、特に(c1)o−メトキシシンナムアルデヒドが好ましい。o−メトキシシンナムアルデヒドは和光純薬工業株式会社から市販されたものを使用することができる。また、o−メトキシシンナムアルデヒドは桂皮中にも多く含まれており、ケイヒ精油または抽出物を用いることができる。
【0023】
一方、式(I)で表されるシンナムカルボン酸誘導体として、具体的には、o−メトキシケイヒ酸、m−メトキシケイヒ酸、p−メトキシケイヒ酸、o−エトキシケイヒ酸、m−エトキシケイヒ酸、p−エトキシケイヒ酸、o−プロポキシケイヒ酸、m−プロポキシケイヒ酸、p−プロポキシケイヒ酸が例示される。
【0024】
成分(C1)のゲル状脱臭剤中の含有量は特に制限されないが、通常0.01〜10%であり、好ましくは0.025〜2%である。
【0025】
また、式(II)で表される3−アルキルアミノ−1,2−プロパンジオールとして、具体的には、3−デシルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ウンデシルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−ドデシルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−トリデシルアミノ−1,2−プロパンジオール、3−テトラデシルアミノ−1,2−プロパンジオールが例示される。これらの中でも、抗菌・抗かび効果及び脱臭効果等の観点から、(c2)3−ドデシルアミノ−1,2−プロパンジオールが好ましい。
【0026】
成分(C2)のゲル状脱臭剤中の含有量は特に制限されないが、通常0.01〜2%であり、好ましくは0.01〜0.5%である。また(c1)と(c2)を併用することが菌及びかびの増殖抑制、脱臭効果の維持等の観点から好ましく、その場合の配合質量比((c1):(c2))は、20:1〜1:5が好ましく、さらに10:1〜1:3の範囲とすることが好適である。
【0027】
なお、成分(C1)及び/または成分(C2)をあらかじめ界面活性剤に乳化分散させておくことにより、本発明のゲル状脱臭剤の調製を容易に行うことができる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム(N−ココイル−N−メチルタウリンナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルβ−アラニンナトリウム液、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等を挙げることができる。また、(c2)3−ドデシルアミノ−1,2−プロパンジオールは界面活性剤としても使用可能であるため、(c1)と(c2)を併用して乳化分散状態にしておくことも可能である。BJ BIOCHEM社製の「GL−200」など、界面活性剤にo−メトキシシンナムアルデヒド及び3−ドデシルアミノ−1,2−プロパンジオールが配合された製剤も市販されているため、これを用いてもよい。
【0028】
本発明では、成分(C)として、さらに(c3)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)を併用することが、菌及びかびの増殖抑制、脱臭効果の長期間維持等の観点から好ましい。EDTAの含有量は特に制限されるものではないが、通常0.001〜1%であり、好ましくは0.01〜0.1%である。成分(C)抗菌・抗かび剤のゲル状脱臭剤中の含有量は特に制限されないが、通常0.02〜10%、好ましくは0.04〜3%である。本発明では、成分(C)として、(c1)、(c2)及び(c3)以外の成分を用いることもできるが、(c1)、(c2)及び(c3)のみを用いることが好ましい。
【0029】
成分(D)溶媒としては、水、エタノール、プロパノール類のアルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。その他、3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート等の抗菌・抗かび効果を有する溶媒を用いることもできる。これらのうち、ゲル調整の容易性、ゲルの安定性、使用終点の明確性等の観点から、(d1)水、(d2)エタノールが好ましく用いられ、特にこれらを組み合わせて用いることが好ましい。
【0030】
成分(D)のゲル状脱臭剤中の含有量は特に制限されないが、通常80〜98%であり、好ましくは85〜95%である。一般に、ゲル状脱臭剤においては、水の含有量が多くなると、菌やかびが発生しやすくなるが、本発明では(d1)水の含有量を、例えば85%以上、さらに87%以上としても、菌やかびの発生・増殖を抑制することができる。上限は、例えば95%以下、好ましくは90%以下である。また(d2)エタノールを併用する場合の含有量は、0.1〜15%が好ましく、1〜10%がより好ましい。これらの配合質量比((d1):(d2))は、90:1〜10:1とすることが好ましく、80:1〜10:1がより好ましい。本発明では、上記抗菌・抗かび効果を有する溶媒を使用しなくても、使用期間中菌やかびの発生・増殖を抑制することができる。
【0031】
さらに本発明のゲル状脱臭剤には、ゲル形成に影響を与えない程度に各種添加剤を加えることができる。添加剤としては例えばゲル強化剤としての塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩や、塩化カルシウム等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。また、界面活性剤、防腐剤、紫外線吸収剤、有機酸、色素、香料、硫酸銅や植物抽出物等の消臭成分を添加することもできる。
【0032】
本発明のゲル状脱臭剤は、上記成分(A)〜(D)及び必要に応じて添加される任意の添加剤を公知の方法に従い混合して製造することができる。例えば(B)ゲル化剤、(C)抗菌・抗かび剤及び界面活性剤を(D)水などの溶媒に加え、加熱、攪拌してから、(A)粉状物である吸着剤を少量の水に分散させたものを加え、さらに攪拌して均一な溶液とし、最後にこの溶液を容器に注ぎ、冷却してゲル化することにより製造することができる。
【0033】
本発明のゲル状脱臭剤の好ましい態様として以下の組成を例示することができる。
(A)吸着剤
(a1)活性炭 0.3〜3%
(a2)備長炭 0.2〜2%
(a1):(a2)=3:2〜1:1
(B)ゲル化剤
(b1)カラギーナン 0.4〜5%
(b2)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1〜2%
(b1):(b2)=10:1〜1:1
(C)抗菌・抗かび剤
(c1)o−メトキシシンナムアルデヒド 0.025〜2%
(c2)3−ドデシルアミノ−1,2−プロパンジオール 0.001〜1
%
(c3)EDTA 0.01〜0.1%
(c1):(c2)= 20:1〜1:5
(D)溶媒
(d1)水 87〜90%
(d2)エタノール 1〜10%
(d1):(d2)=90:1〜10:1
【実施例】
【0034】
次に実施例および試験例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0035】
実 施 例 1
表1に示す組成に従い、下記方法でゲル状脱臭剤を調製した。
【0036】
【表1】
※1:o−メトキシシンナムアルデヒド含有量15〜40%、3−ドデシルアミノ−
1,2−プロパンジオール含有量5〜30%、BJ BIOCHEM社製
※2:GT-C12WBB097、
Ewoo chem社製
【0037】
[ 製 法 ]
成分1〜11を成分12〜13に分散させ、70℃に加熱、攪拌した後ガラス製ビーカーに注ぎ、室温にて静置することによってゲル化させ、ゲル状脱臭剤を得た。
【0038】
試 験 例 1
実施例1で調製した各ゲル状脱臭剤を再度80℃に加熱して溶解させた後、滅菌したシャーレにそれぞれ30gずつ注ぎ、冷却固化させた。滅菌した直径10mmの円形紙片に、下記の3種類の菌またはかびの懸濁液を50μlずつ接種した後、この紙片をシャーレ中のゲル上に接触させ、静置した。静置から1、2、3日後に各紙片を回収し、滅菌された生理食塩水10mlに懸濁させた。この生理食塩水を100μlずつ、菌はTSA培地に、かびはSDA培地に接種した後、菌は48時間、かびは72時間インキュベーターで培養し、菌およびかびの発育状況を肉眼で観察し、下記基準に従って評価した。この結果を表2に示す。
【0039】
[試験細菌・かび]
菌:下記3種の細菌を1:1:1の割合で混合した細菌菌液
緑膿菌(Pseudomonas Aeruginosa、KCTC2513)
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus、KCTC3
881)
大腸菌(Escherich
ia Coli、KCTC 2571)
かび1:カンジダアルビカンス(Candida Albicans、KCTC 7
965)
かび2:黒カビ(Aspergillus Niger、KCTC 6317)
【0040】
[評価基準]
+:菌・かびの発育が認められる。
±:ごくわずかに菌・かびの発育が認められる。
−:菌・かびの発育が認められない。
【0041】
【表2】
【0042】
比較品1〜3では、菌、かびとも発育が認められたのに対し、本発明品1では菌およびかびの発生を完全に防ぐことができた。
【0043】
試 験 例 2
実施例1で調製した各ゲル状脱臭剤を、重量が2分の1になるまで乾燥させ、使用期間後期の状態のゲル状脱臭剤を作成した。このゲルを滅菌した刃で切断し、滅菌したシャーレ上に置いた。滅菌した直径10mmの円形紙片に、試験例1と同じ3種類の菌またはかびの懸濁液を50μlずつ接種した後、この紙片をシャーレ中のゲル上に接触させ、静置した。静置から1、2、3日後に各紙片を回収し、滅菌された生理食塩水10mlに懸濁させた。この生理食塩水を100μlずつ、菌はTSA培地に、かびはSDA培地に接種した後、菌は48時間、かびは72時間インキュベーターで培養し、菌およびかびの発育状況を肉眼で観察し、試験例1と同様にして評価した。この結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
比較品はいずれも抗菌・抗かび効果が認められなかったのに対し、本発明品1では菌およびかび2については1日後の時点では菌・かびが生存しているが、2日後以降には死滅しており、使用終期においても抗菌・抗かび効果を維持していることが確認された。
【0046】
実 施 例 2
実施例1で得た本発明品1について、下記に示す試験方法により脱臭試験を実施した。結果を表4に示す。
【0047】
[試験方法]
実施例1で作成した本発明品1をそれぞれ2cm角の立方体にカットし、これを試料とした。この試料1個を2リットルのデシケーターに入れ、悪臭ガスとしてアンモニアと硫化水素を注入した。悪臭ガス注入後の濃度(初期濃度;A(ppm))と180分後の濃度(B(ppm))を検知管により測定し、下記の式を用いて消臭率を算出した。デシケーターに試料を入れないブランクについても同様に消臭率を求めた。
【0048】
【数1】
【0049】
【表4】
【0050】
本発明品1について、使用期間中の脱臭効果の低下は認められなかった。
【0051】
実 施 例 3
製 剤 例:
表5の組成により、ゲル状脱臭剤をポリプロピレン製の容器内に調製した。この脱臭剤は、良好な脱臭効力を示すとともに、調製直後から使用終期に至るまで、ゲルの表面に菌やかびが繁殖することなく、利用価値の高い製剤を得ることができた。
【0052】
【表5】
※1:和光純薬工業株式会社製
※2:GT-C12WBB097、
Ewoo chem社製
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のゲル状脱臭剤は、使用期間中、菌の増殖やかびの発生がなく、脱臭効果を維持することができるため、広範な条件で適用可能なゲル状脱臭剤として有用である。