特許第6896858号(P6896858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896858触媒の製造方法及び不飽和ニトリルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896858
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】触媒の製造方法及び不飽和ニトリルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/08 20060101AFI20210621BHJP
   B01J 23/883 20060101ALI20210621BHJP
   C07C 255/08 20060101ALI20210621BHJP
   C07C 253/26 20060101ALI20210621BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210621BHJP
【FI】
   B01J37/08
   B01J23/883 Z
   C07C255/08
   C07C253/26
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-529011(P2019-529011)
(86)(22)【出願日】2018年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2018023101
(87)【国際公開番号】WO2019012920
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-138362(P2017-138362)
(32)【優先日】2017年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森井 一成
(72)【発明者】
【氏名】福澤 章喜
(72)【発明者】
【氏名】金田 正敏
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−157243(JP,A)
【文献】 特開昭58−040149(JP,A)
【文献】 特表2014−531311(JP,A)
【文献】 特開2015−188801(JP,A)
【文献】 特開2013−017917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 38/74
C07C 253/26
C07C 255/08
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mo化合物、Fe化合物、及びBi化合物、並びに、500℃以下の分解温度を有する添加剤を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、該乾燥体を焼成し焼成体を得る焼成工程とを含み、
前記焼成工程が、焼成雰囲気を所定温度まで昇温させる工程を含み、その際の昇温速度が2℃/min以上であり、少なくとも前記添加剤の分解温度以下においては10℃/min以下であり、
前記焼成工程において、焼成雰囲気がガス置換時間180秒以下で他のガスと置換される、
触媒の製造方法。
【請求項2】
前記スラリー中のMo、Fe及びBiのモル比が、12:1.3以上:0.5以下である、請求項に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
前記添加剤の分解温度が100℃〜400℃の範囲である、請求項1又は2に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記添加剤がカルボン酸である、請求項1〜のいずれか1項に記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法で触媒を得る工程と、
得られた触媒を用い、オレフィンをアンモニア及び分子状酸素と接触させて不飽和ニトリルを生成させる工程と、
を含む不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法、並びに、触媒を用いた不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレンやイソブテン等のオレフィンをアンモニアの存在下に分子状酸素によって気相接触酸化してアクリロニトリルやメタクリロニトリル等の不飽和ニトリルを得る方法は、「アンモ酸化プロセス」として広く知られており、現在広く工業的規模で実施されている。
工業的規模で一層効率的にアンモ酸化プロセスを実施するにあたり、本プロセスに用いる触媒について種々の検討が進められており、Mo−Bi−Fe系、Fe−Sb系等の複合酸化物からなる触媒が知られている。例えば、特許文献1及び2には、モリブデン、ビスマス及び鉄に加え、その他の成分を添加した触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−157241号公報
【特許文献2】特開2015−188802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法で得られた触媒は、触媒効率(反応生成物収率)の点で、さらなる改良の余地があると考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い触媒効率を有する(例えば、高い不飽和ニトリル収率を与える)Mo−Bi−Fe系触媒を製造する方法、及びその触媒を用いた不飽和ニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属酸化物触媒を製造する方法としては、金属源となる金属化合物を含むスラリーを調製し、これを乾燥、焼成する方法が知られているが、スラリーには金属化合物の分散状態を改良するために有機酸等の焼成温度より低温で分解する添加剤が添加されることがある。Mo化合物、Bi化合物、及びFe化合物を含むスラリーにおいても、金属の分散状態をよくするために添加剤を加えることがあり、特許文献1、2においても酒石酸やシュウ酸を添加する例が開示されている。
本発明者は、高い触媒効率を有するMo−Bi−Fe系触媒を製造すべく鋭意検討した結果、このような低分解温度を有する添加剤とMo、Bi、Fe化合物を含有するスラリーを用いて上記方法で触媒を製造する場合には、添加剤の分解温度までの(昇温速度が大きすぎると触媒の性能に大きな影響を与えることを見出した。
さらに、Mo−Bi−Fe系触媒においては、焼成工程における焼成温度までの昇温速度がある程度大きい方が、高い触媒性能を有する触媒が得られる傾向にあることも判明した。
【0006】
以上のような知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]Mo化合物、Fe化合物、及びBi化合物、並びに、500℃以下の分解温度を有する添加剤を含むスラリーを調製するスラリー調製工程と、該スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、該乾燥体を焼成し焼成体を得る焼成工程とを含み、
前記焼成工程が、焼成雰囲気を所定温度まで昇温させる工程を含み、その際の昇温速度が2℃/min以上であり、少なくとも前記添加剤の分解温度以下においては10℃/min以下であり、
前記焼成工程において、焼成雰囲気がガス置換時間180秒以下で他のガスと置換される、触媒の製造方法。
[2]前記スラリー中のMo、Fe及びBiのモル比が、12:1.3以上:0.5以下である、[1]に記載の触媒の製造方法。
[3]前記添加剤の分解温度が100℃〜400℃の範囲である、[1]又は[2]に記載の触媒の製造方法。
[4]前記添加剤がカルボン酸である、[1]〜[3]のいずれかに記載の触媒の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法で触媒を得る工程と、
得られた触媒を用い、オレフィンをアンモニア及び分子状酸素と接触させて不飽和ニトリルを生成させる工程と、を含む不飽和ニトリルの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の触媒の製造方法によれば、高い不飽和ニトリル収率を与える触媒を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明するが、本発明は下記の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0009】
<触媒の製造方法>
本実施態様の触媒の製造方法は、Mo化合物、Fe化合物、及びBi化合物、並びに、500℃以下の分解温度を有する添加剤を含有するスラリー調製工程、スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程、乾燥体を焼成し焼成体を得る焼成工程を含み、該焼成工程における前記添加剤の分解温度近傍の昇温速度を特定範囲に調整することを特徴とする。
【0010】
[1]触媒
本実施形態の製造方法で得られる触媒は、Mo元素と、Bi元素と、Fe元素とを含み、好ましくは、Mo12原子に対しFeが1.3原子以上、Biが0.5原子以下となる組成を有するものであり、特に、オレフィンをアンモニアの存在下で気相接触酸化させる反応に用いるのに適している。
以下にその組成、形状及び形態について、より詳しく説明する。
【0011】
(1)組成
本実施形態の製造方法で得られる触媒は、Mo、Bi、及びFeを必須成分として含み、これらの複合酸化物であることが好ましい。
一般に、Mo−Bi−Fe系触媒では、各金属元素は下記の機能を有するとされている。すなわち、Moはプロピレン等のオレフィンの吸着サイト及びアンモニアの活性化サイトとしての機能を担ってNH種を生成する。Biは、プロピレン等のオレフィンの活性化サイトとして作用し、α位水素を引き抜いてπアリル種を生成させる。鉄は、Fe3+/Fe2+のレドックスにより気相から活性サイトへの酸素の授受に寄与する。これらの触媒中の各金属元素の機能は、例えば、Grasselli,R.K.,「Handbook of Heterogeneous Catalysis 5」,Wiley VCH,1997,p2302に記載されている。
触媒における、Mo、Bi、及びFeの各金属元素の含有比は、Mo12原子に対しFeが1.3原子以上、Biが0.5原子以下となることが好ましい。例えば、触媒機能の発現に適正な結晶相の構成比とする観点から、Mo12原子に対して、Biが0.1〜0.5原子、Feが1.4〜2.5原子の含有比であると好ましい。
Mo、Bi、及びFeの他に、必要に応じて触媒中に含まれていてもよい金属成分としては、(a)クロム及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、(b)ニッケル、コバルト及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、(c)ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素、(d)希土類元素から選ばれる少なくとも1種の金属元素が挙げられる。これらのうち、(a)の金属元素は、鉄と同様に酸化物触媒におけるレドックス機能を担うと共に、主触媒の結晶相の高温安定性を増すものと推察される。また、(b)の金属元素は、M(II)MoO構造にFe2+を固溶させ安定化させたりするものと推察される。(c)の金属元素は、触媒表面の酸点を被覆し、副反応を抑制するものと推察される。(d)の金属元素は主触媒の結晶相の高温安定性を向上させると考えられている。これらの機能により、触媒性能が更に向上すると考えられる。
各金属元素の機能をより有効かつ確実に発揮させて、触媒性能の更なる向上を図る観点から、触媒において、Mo12原子に対して、(a)の金属元素は、0〜3原子含まれることが好ましく、(b)の金属元素は、4〜12原子含まれることが好ましく、(c)の金属元素は、0.01〜2原子含まれることが好ましく、(d)の金属元素は0.1〜2原子含まれることが好ましい。上記以外の元素を含んでいてもよい。
【0012】
(2)形状
本実施形態の製造方法で得られる触媒の粒子形状に限定はないが、反応器内での流動性を好ましい状態にする等の観点から、球状であることが好ましく、その表面は滑らかであることが好ましい。
【0013】
(3)担体
不飽和ニトリルの製造等を工業的に実施する場合、流動床反応器での実施が好ましい。流動床反応器で使用する触媒は十分な強度を有していることが望ましいので、そのような観点から、担体に担持されていることが好ましい。
担体の例としては、特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、シリカ/アルミナ及びシリカ/チタニアが挙げられる。これらのうち不飽和ニトリルの収率を高める観点から、シリカが好ましい。シリカを担体として用いると、流動床触媒として用いる場合において、一層優れた流動性を有することになり、好ましい。
耐摩耗性の観点から、触媒と担体との合計量に対して、担体の含有量が35質量%以上であることが好ましい。また、より十分な触媒活性及びより良好な選択率を得る観点から、担体の含有量は60質量%以下であることが好ましい。
【0014】
[2]触媒の製造方法における各工程
本実施態様の触媒の製造方法は、スラリーを調製するスラリー調製工程(工程(i))と、スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程(工程(ii))と、乾燥体を焼成し焼成体を得る焼成工程(工程(iii))とを有するものである。
【0015】
(1)工程(i)
工程(i)は、触媒の前駆体となるスラリーを調製する工程であり、その分解温度が500℃以下である添加剤と、Mo化合物、Fe化合物、及びBi化合物を含むスラリーを調製する工程である。スラリー中のMo、Fe及びBiのモル比は、12:1.3以上:0.5以下であることが好ましい。また、触媒が担体に担持される場合は、担体の供給源となる成分をこの工程(i)において混合してもよい。
工程(i)においては、例えば、モリブデンの供給源となるMo化合物を含む溶液を調製した後、この溶液とFe化合物、Bi化合物、その他の金属元素及び必要に応じて担体の供給源となる成分とを混合し、スラリーを得ることができる。ただし、各化合物の添加順序に限定はない。
以下、触媒がシリカ担体を備える場合を例にして、スラリーを調製する方法を説明するが、本実施形態の触媒の製造方法はこれに限定されない。
スラリーに含まれるMo化合物、Fe化合物、Bi化合物等の各金属元素の供給源(原料)は、水又は硝酸に可溶な塩であることが好ましい。モリブデン、ビスマス、及び鉄の各金属元素、並びに必要に応じて更に触媒に添加されるその他の金属元素の供給源としては、例えば、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、有機酸塩及び無機酸が挙げられる。特にモリブデンの供給源としてはアンモニウム塩が、ビスマス、鉄、及びその他の金属元素の供給源としては、それぞれの硝酸塩が好ましい。硝酸塩は、取扱いが容易であることに加え、塩酸塩を使用した場合に生じる塩素の残留や、硫酸塩を使用した場合に生じる硫黄の残留を生じない点でも好ましい。Mo化合物、Bi化合物、及び、Fe化合物の具体例としては、各々、パラモリブデン酸アンモニウム、硝酸ビスマス、及び硝酸第二鉄が挙げられる。また、担体としてのシリカの供給源としては、本発明による効果をより有効且つ確実に奏する観点から、シリカゾルが好適である。さらに、同様の観点から、シリカゾルにおけるシリカの好ましい濃度は10〜50質量%である。後述するスラリーの噴霧乾燥に適した濃度になるように、添加する水溶液等の濃度を適宜調整することもできる。シリカゾルに含まれるシリカの平均一次粒子径は特に限定されない。また、シリカ担体としては、異なる平均一次粒子径を有するシリカゾルを混合して使用してもよい。
【0016】
本実施形態において、スラリーは、触媒原料及び担体原料の他に、500℃以下の分解温度を有する添加剤を含む。添加剤としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマー;フェナントロリン、エタノールアミン、ヒドラジン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸、イミダゾール、ピリジン、アニリン、ピラゾール等のアミン類;グリシン、グルタミン酸等のアミノ酸;フェノール、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;グルコール酸、リンゴ酸、シュウ酸、酒石酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、サリチル酸、没食子酸、グルコン酸、マレイン酸、安息香酸等の有機酸;その他、リン酸、アセチルアセトン、尿素、チオ尿素、ホウ酸、アセトン、ジメチルスルホキシド、イミノジ酢酸、ニトリロトリ酢酸、ジエチレントラミンペンタ酢酸、トリエチレンテロラミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラ酢酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸等が挙げられる。好ましくは分解温度が100℃〜400℃の範囲である添加剤である。さらに好ましくは有機酸である。よりさらに好ましくはカルボン酸である。また、これらの添加剤は、1種単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0017】
上記添加剤の含有量(2種類以上含む場合は、その合計)の上限は特に限定されないが、焼成後の触媒の質量(担体を用いる場合は、触媒と担体の合計質量)に対して15質量%以下になるように含有させるのが好ましい。添加剤の含有量を15質量%以下とすることにより、触媒製造の段階における有機物の分解、放散による発熱や触媒粒子のひび割れが生じるのを抑制することができる。添加剤の含有量の下限は特に限定されないが、添加剤の効果を発現させる観点から、焼成後の触媒の質量(担体を用いる場合は、触媒と担体の合計質量)に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは1〜5質量%である。
【0018】
添加剤は、溶媒に溶解させてスラリー中に添加することができる。この時、溶媒の種類については特に限定されないが、例えば酸や水等が挙げられる。又は、他の原料とあらかじめ混合させておいても良い。
スラリーの調製において、各供給源を混合する順序は特に限定されない。一例を挙げると、シリカゾルを撹拌しながら、そこに添加剤を添加し、次いでMo化合物を含む水溶液を添加し、次いで、モリブデン以外の金属元素の供給源、例えばFe化合物、Bi化合物(好ましくは硝酸塩)、を水性溶媒(好ましくは硝酸水溶液)に溶解した液を添加する。
【0019】
(2)工程(ii)
本実施形態の触媒の製造方法における工程(ii)は、上述したスラリーを乾燥して乾燥体を得る工程である。
本工程における乾燥方法に限定はなく、例えば、スラリーを噴霧乾燥することによって流動床反応に適した球形微粒子である乾燥粒子を得ることができる。噴霧乾燥装置としては、回転円盤式、ノズル式等の一般的なものを使用することができ、運転条件を調節することで、所望の粒径を有する触媒を得ることができる。流動床触媒として好適な粒径は、平均粒子径で25〜180μmである。好適な粒径を有する触媒粒子を得るための噴霧乾燥の一例としては、乾燥器上部の中央に設置された、皿型回転子を備えた遠心式噴霧化装置(例えば、大川原化工機社製、OC−16型スプレードライヤ)を用い、乾燥器の入口空気温度を180℃〜250℃、出口温度を100℃〜150℃に保持して行う噴霧乾燥が挙げられる。
【0020】
(3)工程(iii)
本実施形態の触媒の製造方法における工程(iii)は、工程(ii)で得られた乾燥体(例えば、噴霧乾燥により得られた乾燥粒子)を焼成して焼成体を得る工程である。工程(iii)は、少なくとも、焼成雰囲気を所定温度まで昇温させる工程(以下、「第1焼成工程」という。)を含み、その際の昇温速度は、少なくとも前記添加剤の分解温度以下においては10℃/min以下である。昇温速度は、前記添加剤の分解温度+30℃までは10℃/min以下であることがより好ましい。
【0021】
また、この工程(iii)は、上述した触媒をより容易に得る観点から第1焼成工程に加えて、下記の第2の焼成工程を含む、少なくとも2段階からなることが好ましい。
以下に、各々の工程について、詳細に説明する。
【0022】
[A] 第1焼成工程
第1焼成工程は、焼成雰囲気を室温や工程(ii)における乾燥温度(乾燥から引き続いて焼成が行われる場合等)から好ましくは500℃〜700℃の範囲内で設定した所定温度(焼成温度)まで昇温する工程である。昇温時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは1〜10時間、更に好ましくは3〜7時間である。この際、昇温速度は一定である必要はないが、好ましくは2℃/min以上であり、より好ましくは4℃/min以上であり、さらに好ましくは5℃/min以上であり、さらにより好ましくは5.5℃/min以上である。一方、昇温速度は、少なくとも前記添加剤の分解温度以下においては、10℃/min以下である。ここで、前記添加剤(500℃以下の分解温度を有する添加剤)の分解温度とは、スラリーにそのような添加剤が2種類以上含まれる場合には、各々の分解温度のうち一番高いものとする。
前記添加剤の分解温度以下における昇温速度は、好ましくは9℃/min以下、より好ましくは7.5℃/min以下、さらに好ましくは6℃/min以下である。
本発明者らの研究によれば、昇温速度をこのように制御することによって、触媒効率の高い触媒(例えば、高い不飽和ニトリル収率を与える触媒)が製造できることが分かった。前記添加剤の分解温度以下における昇温速度を10℃/min以下とすることで、添加剤の急激な分解による焼成体(触媒)の割れを抑制し、焼成の際の焼成体の混合が不均一となることを防ぐ結果、焼成ムラ等を低減でき、触媒効率の高い触媒が得られると考えられる。ただし、機序はこれによらない。
さらに、第1焼成工程における、すなわち、所定温度まで昇温する際の昇温速度を2℃/min以上とすると、触媒効率の高い触媒が得られる傾向があることも分かった。これは、焼成時に十分な速度で昇温された場合には、原料硝酸や添加剤の分解ガスに長時間曝されることがなくなるため、Mo、Fe及びBiが溶解して金属組成(殊にFeとMo)に偏りが生じるといったことを防げるためと考えられる。ただし、機序はこれによらない。
第1焼成工程は、上述した乾燥体(例えば、乾燥粒子)中に残存している各金属元素の供給源に含まれる成分、例えば、硝酸アンモニウムや金属硝酸塩由来の硝酸を徐々に燃焼させることも目的としており、上記分解温度領域以外の温度範囲における昇温速度の上限値については特に限定はない。
【0023】
[B]第2焼成工程
本実施形態の焼成工程においては、第1焼成工程に加え、第1焼成工程において得られた第1焼成粒子を、例えば、500℃〜700℃の焼成温度で保持する第2焼成工程を含むことが好ましいい。第2焼成工程は結晶を成長させることを目的とする。かかる観点から、第2焼成工程における上記焼成温度での保持時間は、好ましくは0.5〜15時間、より好ましくは2〜10時間、更に好ましくは2〜6時間である。保持時間は、触媒の比表面積が小さくなって活性が低下するのを防ぐ観点から、調整することが好ましい。
本実施形態においては、焼成工程は、上記第1及び第2焼成工程の他に、さらなる工程を適宜含んでもよい。
【0024】
本実施形態の焼成工程においては、焼成時に原料の硝酸塩や添加剤が分解して発生したガスを除去する観点から、焼成雰囲気中のガスを空気や不活性ガス等の他のガスで置換することが望ましい。焼成雰囲気中のガスが速やかに置換されることで、金属成分が焼成中に再溶解することを抑制できる。焼成雰囲気中のガスの置換の方法に限定はなく、例えば、置換ガス(空気や不活性ガス)を供給することによって行うことができ、その際、併せて被置換ガスの吸気を行うことも好ましい。あるいは、焼成キルン中のガスを吸気(排気)することで、焼成キルン内を負圧とし、これにより外気を取り込ませることによって焼成雰囲気中のガスを外気と置換してもよい。
焼成雰囲気中のガスは180秒以下で置換される(焼成雰囲気中のガス置換時間が180秒以下である)ことが好ましく、より好ましくは90秒以下、更に好ましくは60秒以下で置換されることが好ましい。
ここで、焼成雰囲気中のガス置換時間とは、焼成キルン内の容積が置換ガスで満たされるまでの時間をいい、例えば、置換ガスの供給によってガスの置換が行われる場合であれば、焼成キルン容積をVcm、供給ガス流速をQcm/秒としたときに、V/Q(秒)で表される。例えば、キルン容積が400cmであり、供給空気量400cm/分である場合、ガス置換時間は60秒(1分)となる。
焼成雰囲気中のガス置換は、焼成工程中のいずれのタイミングで行ってもよいし、その回数にも限定はなく、例えば、焼成工程に上述の第2焼成工程が含まれる場合には、第1焼成工程及び第2焼成工程のいずれで行ってもよいし、両方で行ってもよく、少なくとも第1焼成工程では常時行うことが好ましく、焼成工程を通じて常時行うことがより好ましい。
【0025】
本実施形態においては、以上の工程を経ることで、Mo、Bi及びFeを含有する触媒を得ることができる。
次に、この触媒を用いた不飽和ニトリルの製造方法について説明する。
<不飽和ニトリルの製造方法>
本実施形態の不飽和ニトリルの製造方法は、上述の触媒の製造方法で触媒を得る工程と、得られた触媒を用い、オレフィンをアンモニア及び酸素と接触させて(気相接触アンモ酸化反応させて)不飽和ニトリルを生成させる工程と、を含む。
具体的には、上記触媒を用いて、例えば、プロピレン、イソブテン等のオレフィンをアンモニア及び分子状酸素と反応(すなわち、気相接触アンモ酸化反応)させて、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリルを製造するものである。反応器としては流動床反応器を用いることが好ましい。
アンモ酸化反応の原料であるプロピレン等のオレフィン及びアンモニアは、必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのものを使用することもできる。分子状酸素の酸素源としては通常空気を用いる。プロピレン等のオレフィンに対するアンモニア及び空気の容積比は、オレフィン:アンモニア:空気として、好ましくは1:0.9〜1.7:7〜11、より好ましくは1:1.0〜1.5:8〜10の範囲である。
また、反応温度は好ましくは400〜460℃、より好ましくは410〜440℃の範囲である。反応圧力は好ましくは常圧〜3気圧の範囲である。オレフィン、アンモニア及び分子状酸素を含む原料混合ガスと触媒との接触時間は、好ましくは1〜8秒、より好ましくは2〜6秒である。
本実施形態によると、高い不飽和ニトリル収率を与えることができる(高い収率で不飽和ニトリルを製造することができる)。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。また、各種物性の評価方法は下記に示すとおりである。
【0027】
(添加剤分解温度の測定方法)
添加剤分解温度の測定には差動型示差熱天秤 (TG−DTA)を使用した。
分析条件は下記の通りである。
[装置]
Rigaku製、製品名「Thermo plus EVO2」
[測定条件]
サンプルパン:白金パン、基準試料:Al、Air雰囲気
【0028】
(ガス置換時間の測定方法)
焼成雰囲気中のガスが置換される時間は、空気又は不活性ガスを供給又は排気、もしくはその両方についておこない、焼成キルン内の容積が満たされるまでの時間として計算する。
【0029】
(プロピレンのアンモ酸化反応による不飽和ニトリルの製造条件及び収率)
実施例及び比較例で得られた触媒を用いて、プロピレンのアンモ酸化反応によりアクリロニトリルを製造した。その際に使用する反応管としては、10メッシュの金網を1cm間隔で16枚内蔵した内径25mmのパイレックス(登録商標)ガラス管を使用した。
触媒量50cc、反応温度430℃、反応圧力0.17MPaに設定し、プロピレン/アンモニア/酸素の混合ガスを前記ガラス管に供給して反応を実施した。その際、混合ガス中のプロピレンの含有量は9容積%とし、プロピレンに対するアンモニアの容積比は、下記式で定義される硫酸原単位が20±2kg/T−ANとなるように設定した。プロピレンに対する酸素の容積比は、反応器出口ガスの酸素濃度が0.2±0.02容積%になるように設定した。
また混合ガスの流速を変更することで、下記式で定義される接触時間を変更し、これによって下記式で定義されるプロピレン転化率が99.3±0.2%となるように設定した。
反応によって生成するアクリロニトリル収率は下記式のように定義される値とした。
【0030】
【数1】
【0031】
[実施例1]
Mo12.00Bi0.38Ce0.80Co4.30Fe1.55Ni3.20Rb0.12で表される組成を有する酸化物を、酸化物とシリカの総量に対して40質量%のシリカに担持した酸化物触媒を下記のようにして調製した。
30質量%のSiOを含むシリカゾル1333.3gに、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0g(純度99.5%、分解温度:190℃)を加えた。前記シリカ−シュウ酸混合液を40℃で10分間、0.2kW/mで混合した。次いで、858.4gの水に溶解させた480.9gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NHMo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸392.4gに溶解させた42.4gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、142.9gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、287.0gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、211.2gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、78.9gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、4.02gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、スラリーを調製した。
次いで、スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させて乾燥粒子を得た。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。
こうして得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して、酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
【0032】
[実施例2]
実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで5℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
[実施例3]
実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで5.7℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
[実施例4]
実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで10℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
[実施例5]
シュウ酸二水和物の量を50.0gにした以外は実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで5℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるように空気をキルンに供給した。
[実施例6]
添加剤の種類を酒石酸(分解温度:170℃)に変更した以外は実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から140℃まで2℃/min、140℃から200℃まで5℃/min、200℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が180秒となるように空気をキルンに供給した。
[実施例7]
実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで1℃/min、160℃から220℃まで5℃/min、220℃から480℃まで1℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるように空気を供給した。
【0033】
[実施例8]
Mo12.00Bi0.40Ce0.60Co3.80Fe1.60Ni3.10Mg0.80Rb0.12で表される組成を有する酸化物を、酸化物とシリカの総量に対して40質量%のシリカに担持した酸化物触媒を下記のようにして調製した。
一次粒子の平均粒子径が12nmのSiOを30質量%含む水性シリカゾル666.7gと一次粒子の平均粒子径が41nmのSiOを30質量%含む水性シリカゾル666.7gとの混合物に、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0g(純度99.5%)を加えた。前記シリカ−シュウ酸混合液を40℃で10分間、0.2kW/mで混合した。次いで、870.6gの水に溶解させた487.7gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NH)6Mo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸395.1gに溶解させた45.3gの硝酸ビスマス[Bi(NO・5HO]、149.6gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、257.2gの硝酸コバルト[Co(NO・6HO]、207.5gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、60.0gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、47.2gの硝酸マグネシウム[Mg(NO・6HO]、4.08gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、スラリーを調製した。
次いで、スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させて乾燥粒子を得た。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。
こうして得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
【0034】
[実施例9]
Mo12.00Bi0.48Ce0.92Fe1.75Ni5.00Mg2.00Rb0.12で表される組成を有する酸化物を、触媒の総量に対して40質量%のシリカに担持した酸化物触媒を下記のようにして調製した。
一次粒子の平均粒子径が12nmのSiOを30質量%含む水性シリカゾル666.7gと一次粒子の平均粒子径が41nmのSiOを30質量%含む水性シリカゾル666.7gとの混合物に、水200gに溶解させたシュウ酸二水和物25.0g(純度99.5%)を加えた。前記シリカ−シュウ酸混合液を40℃で10分間、0.2kW/m3で混合した。次いで、874.4gの水に溶解させた489.8gのパラモリブデン酸アンモニウム[(NH)6Mo24・4HO]を撹拌下で加え、さらに、16.6質量%の硝酸395.5gに溶解させた53.8gの硝酸ビスマス[Bi(NO)3・5H2O]、163.5gの硝酸鉄[Fe(NO・9HO]、336.2gの硝酸ニッケル[Ni(NO・6HO]、92.4gの硝酸セリウム[Ce(NO・6HO]、118.5gの硝酸マグネシウム[Mg(NO・6HO]、4.09gの硝酸ルビジウム[RbNO]を加え、スラリーを調製した。
次いで、スラリーを回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥させて乾燥粒子を得た。このとき、乾燥機入口の空気温度は230℃とし、出口の空気温度は110℃とした。また、円盤の回転数は12500回転/分に設定した。
こうして得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、535℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が90秒となるようにキルンに窒素を供給した。
【0035】
[実施例10]
焼成雰囲気中のガス置換時間を30秒とした以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。
【0036】
[実施例11]
焼成雰囲気中のガス置換時間を210秒とした以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。
[実施例12]
焼成雰囲気中のガス置換時間を240秒とした以外は実施例1と同様にして酸化物触媒を得た。
【0037】
[実施例13]
実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで1.5℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
[実施例14]
添加剤を酒石酸に変更した以外は実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から140℃まで2℃/min、140℃から200℃まで1.5℃/min、200℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が180秒となるようにキルンに空気を供給した。
[実施例15]
実施例9と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで1.5℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から535℃まで1.5℃/minで昇温し、535℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が90秒となるようにキルンに窒素を供給した。
【0038】
[比較例1]
実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで12℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が60秒となるようにキルンに空気を供給した。
[比較例2]
添加剤を酒石酸に変更した以外は実施例1と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から140℃まで2℃/min、140℃から200℃まで12℃/min、200℃から480℃まで2℃/min、480℃から540℃まで1.5℃/minで昇温し、540℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が180秒となるように空気をキルンに供給した。
[比較例3]
実施例9と同様にして乾燥粒子を得た。得られた乾燥粒子をキルンに移し、空気雰囲気下で焼成した。具体的には、まず、室温から160℃まで2℃/min、160℃から220℃まで12℃/min、220℃から480℃まで2℃/min、480℃から535℃まで1.5℃/minで昇温し、535℃で4時間保持して酸化物触媒を得た。また、焼成中は、焼成雰囲気中のガス置換時間が90秒となるようにキルンに窒素を供給した。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示された結果から、本実施形態の製造方法で得られた酸化物触媒は、オレフィンの気相接触アンモ酸化反応により、高い収率で不飽和ニトリルを製造できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、Mo、Bi及びFeを含む触媒の製造に利用することができ、特に、オレフィンと、分子状酸素及びアンモニアとを反応させて不飽和ニトリルを製造する際、あるいは、オレフィンと分子状酸素とを反応させて不飽和アルデヒド又は共役ジオレフィンを製造する際に用いられる酸化物触媒を製造する際に好適に利用することができる。
【0042】
本願は、2017年7月14日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2017−138362)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。