(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結合器層、前記給電層、および、前記スロット層は、前記パッチアンテナ素子について一対の直交電場ベクトルを生成するように、前記パッチアンテナ素子に対して配置されている、
請求項17に記載のアンテナ。
前記内側アンテナ素子および前記外側アンテナ素子それぞれは、対称な積層パッチアンテナ素子を提供するように配置されており、前記パッチアンテナ素子それぞれが、前記複数のキャビティのうちそれぞれ1つの中に対称に配置されている、
請求項20に記載のアクティブ電子走査アレイ。
前記対称なスロット層における前記スロットは、スロット付き開口結合器に対応しており、前記スロット付き開口結合器それぞれは、直交する円偏波、および、水平および垂直偏波について全ての電力伝達を提供する配向を有している、
請求項21に記載のアクティブ電子走査アレイ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここにおいて説明されるのは、偏波分散アンテナ素子(またはラジエータ)に向けられ、および、そうした偏波分散ラジエータから提供されるアレイアンテナに向けられた概念、システム、回路、および関連する技術である。
【0015】
偏波分散ラジエータの様々な実施形態を説明する前に、ここにおいては、特定のアレイ形状及び/又はサイズ(例えば、特定の数のアンテナ素子)を有するアレイアンテナ(例えば、偏波分散アレイアンテナ)、または、特定の数のアンテナ素子から成るアレイアンテナについて、ときどき参照がなされることに留意すべきである。当業者であれば、しかしながら、ここにおいて説明される概念、回路、および技術が、アレイアンテナに係る種々のサイズ、形状、およびタイプに対して適用可能であることを理解するだろう。
【0016】
同様に、ここにおいては、特定の幾何学的形状(例えば、正方形、長方形、円形)及び/又はサイズ(例えば、特定の数のアンテナ素子)を有する、いわゆるアンテナ「パネル(”panels”)」へのアンテナ素子のグループ化について、ときどき参照がなされる。そうしたパネルは、他の、より大きなアンテナを形成するように結合され得る。当業者であれば、ここにおいて記載の技術が、アレイアンテナに係る種々のサイズおよび形状、並びにパネルに係る種々のサイズおよび形状に適用可能であることを理解するだろう。
【0017】
従って、ここにおいて提供される記載は、以下に、実質的に正方形または長方形の形状を有し、かつ、各々が実質的に正方形または長方形の形状を有する、複数のパネルから成る偏波分散アレイアンテナのコンテクスト(context)において保護されるべき概念、システム、および回路を説明するが、当業者であれば、本概念が、アレイアンテナおよびパネルに係る他のサイズおよび形状、および、種々の異なるサイズ、形状を有すアンテナ素子について同様に適用されることを理解するだろう。
【0018】
ここにおいては、また、特定のタイプ、サイズ、及び/又は形状のアンテナ素子を含むアレイアンテナについて、ときどき参照がなされる。例えば、放射素子(radiating element)の1つのタイプは、いわゆるパッチアンテナ素子であり、特定の周波数(例えば、10GHz)または周波数範囲(例えば、X帯(X-band)周波数範囲)における動作に適合する正方形形状およびサイズを有している。ここにおいては、また、いわゆる「積層パッチ(”stacked-patch”)」アンテナ素子についても、ときどき参照がなされる。当業者であれば、もちろん、アンテナ素子の他の形状およびタイプ(例えば、積層パッチアンテナ素子以外のアンテナ素子)も、また使用され得ること、および、1つまたはそれ以上のアンテナ素子のサイズが、RF周波数範囲内の任意の周波数(例えば、約1GHzから約100GHzまで範囲内で任意の周波数)において動作するように選択され得ることを認識するだろう。ここにおいて説明されるアンテナにおいて使用され得る放射素子のタイプは、これらに限定されるわけではないが、スロット素子、ノッチ素子、ダイポール、または、当業者に知られた任意の他のアンテナ素子を(素子がプリント回路素子であるか否かにかかわらず)含む。従って、当業者であれば、ここにおいて説明される概念が他のタイプのアンテナ素子について同様に適用されることを理解するだろう。
【0019】
アンテナ素子またはパネルは、また、長方形、円形正方形(circular square)、三角形(例えば、正三角形または二等辺三角形)、および、らせん形コンフィグレーションといった周期的な格子配置(またはコンフィグレーション)、並びに、任意の形状の格子配置を含む非周期的または他の幾何学的配置、を含む、複数の異なるアンテナ素子格子配置のうちいずれか1つを有して提供され得ることも理解されるべきである。
【0020】
ここにおいて説明される概念、システム、回路、および技術に係る少なくともいくつかの実施形態のアプリケーションは、限定されるわけではないが、軍事および非軍事(すなわち、商業的)アプリケーションを含む。レーダーに限定されるわけではないが、電子戦(electronic warfare、EW)、および、船舶ベース、航空(例えば、飛行機、ミサイル、または無人航空機(unmanned aerial vehicle、UAV))、および、宇宙と衛星アプリケーションを含む広範なアプリケーションのための通信システムを含んでいる。従って、ここにおいて説明される回路は、レーダーシステムまたは通信システムの一部として使用され得ることが理解されるべきである。
【0021】
ここにおいて以下に説明される回路は、また、埋め込みサーキュレータ(embedded circulators)、スロット結合偏波エッグクレート(slot-coupled,polarized egg-crate)ラジエータ、単一集積モノリシックマイクロ波集積回路(monolithic microwave integrated circuit、MMIC)、および、受動無線周波数(RF)回路アーキテクチャを利用することもできる。例えば、ここにおいてさらに説明されるように、以下の共通にアサインされた(assigned)米国特許において説明される技術は、全体または部分的に使用することができ、かつ/あるいは、ここにおいて説明される回路およびシステムの少なくともいくつかの実施形態と共に使用されるように適合され得る。タイトル”Embedded Planar Circulator(埋め込み平面サーキュレータ)”の米国特許第6,611,180号、タイトル”Slot Coupled、Polarized、Egg-Crate Radiator(スロット結合偏波エッグクレートラジエータ)”の米国特許第6,624,787号、および/または、タイトル”Multilayer stripline radio frequency circuits and interconnection methods(多層ストリップライン無線周波数回路および相互接続方法)”の米国特許第6,731,189号である。上記の特許それぞれは、その全体が参照によりここにおいて組み込まれている。
【0022】
図1をこれから参照すると、偏波分散アレイアンテナ10(または、より単にアレイ10)の一部は、示されているように、単一の偏波分散ラジエータ12を有する複数の偏波分散ラジエータを含んでいる。ラジエータ12は、パッチアンテナ(patch antenna)で構成されており、ここで、積層パッチアンテナ(stacked-patch antenna)は、フォームスペーサ(foam spacer)16および誘電体基板17、18、19によって離間された内側導体14および外側導体15を含んでいる。
【0023】
導電性フレーム20は、複数の開口部またはキャビティ24を画定する壁22を含み、そして、このフレーム20は、ときどき「エッグクレートフレーム、または、金属フレーム」として、もしくは、より簡単に「エッグクレート」として参照される。アレイ10における複数のラジエータ12それぞれは、導電性フレーム20内に備えられたキャビティ24のそれぞれ1つの中に配置されている。ラジエータ12およびフレーム/キャビティ20/24は、一緒にラジエータサブアセンブリ25を形成する。フレーム20の格子パターンと一致するように備えられた開口部を有する基板26が、フレーム20の表面と集積化された拡張および給電回路30の表面との間に配置されている。好ましい実施形態において、基板26は、給電(feed)サブアセンブリと金属フレームとの間で熱を伝導するために使用される、熱基板(thermal substrate)として提供されてよい。
【0024】
ここにおいて以下に提供される説明から明らかになるように、集積化された拡張および給電回路30は、多層(multilayer)プリント回路基板(printed circuit board、PCB)として提供されてよい。無線周波数(RF)コネクタ32は、拡張および給電回路30に結合され、そして、集積化された拡張および給電回路30を通じて、ラジエータアセンブリ25に/から(to/from)結合されるべきRF信号のための手段(means)を提供する。RFコネクタ32は、支持板36の開口部34を通して配置されている。支持板36は、フレーム20に対向する拡張および給電回路30の表面上に配置されており、動作条件に応じて、アンテナ10、並びに熱源又はシンクに対して機械的支持を提供する。1つまたはそれ以上のアライメント構造38(ここにおいてアライメントピン38として示されている)が、支持板と集積された拡張および給電回路30との両方における開口部のうち適当なものを通して配置されており、少なくとも2つの構造36、30の整合を助ける。
【0025】
図2−
図3に関連して以下でさらに詳細に説明されるように、各ラジエータアセンブリ25は、集積化された拡張および給電回路30に含まれる拡張および給電回路のうち特定のセットに対して結合されている。集積化された拡張および給電回路と関連するラジエータアセンブリとの組み合わせは、ユニットセルを形成する。従って、複数の個々の偏波分散ユニットセルからアレイ10が提供されている。
【0026】
ラジエータ12と拡張および給電回路30との組み合わせによって提供されるユニットセルアーキテクチャは、一致したユニットセル挿入フェイズ(insertion phases)を有し、そして、また、物理的対称性(physical symmetry)並びに対称な場の対称性(すなわち、電磁場対称性)も有するアンテナを結果として生じる。そうした対称性を有することは、また、複数の異なる偏波(すなわち、偏波分散システム)に応答するアンテナにおいて重要である、高度な偏波分離(high degree of polarization isolation)を達成することが可能なアレイアンテナも結果として生じる。
【0027】
ラジエータアセンブリの対称性と、集積化された拡張および給電回路の対称性との組み合わせは、また、トータルおよびオームのフロントエンド損失(total and ohmic front-end loss)が低いラジエータアセンブリも結果として生じる。低いオーミック損失は、少なくとも以下の結果である。RFコネクタインターフェイスとスロット開口結合器(coupler)との間の経路長を最小化すること、高次モード相互作用(high-order mode interaction)を回避しながら、拡張および給電ネットワークを最大の密度でパッケージすること、全てのコンポーネントおよびそれらのインターフェイスにおけるインピーダンス不整合を低減すること(かつ、理想的には、最小化すること)、抵抗性ではなく、反応性(reactive)結合器(combiners)を使用すること、および、関連する伝送ラインの形態においてベストプラクティス(best practices)を利用すること、例えば、導体表面粗さ、低減された(かつ、理想的には、最小化された)ライン幅許容値、そして、反応性フィールド結合(field coupling)を回避すること、である。
【0028】
図2−
図2Bをこれから参照すると、
図1と同様な素子が同様な参照番号を有して提供されており、集積化された拡張および給電回路層30は、一対のグラウンド面層42、46(または、より簡単にグラウンド面(ground planes)42、46)の間に配置された拡張回路層44を含んでいる。拡張回路層44は、拡張回路信号経路49、50から成る拡張回路48を含む。拡張回路の目的は、アレイの中の2つの偏波および全てのユニットセルのそれぞれに対して等しい電気経路挿入フェイズを提供することである。提供される拡張経路は、パネルエッジ条件および他のユニットセル差別化(differentiations)によって、種々のユニットセルに対して異なることを考慮することに注目すべきである。
図2においては、明確化のために、内側パッチ要素および基板、外側パッチ要素および基板、キャビティおよび集積化されたレドーム(radome)が示されていないことが理解されるべきである。
【0029】
図2Aにおいて最も明確に示されるように、一対の誘電体基板52、54がグラウンド面42、46の間に配置されており、そして、拡張回路信号経路49、50が基板の少なくとも1つの上(好ましくは、少なくとも製造を容易にするために、同じ基板の同じ表面上)に配置されている。この例示的な実施形態において、拡張回路信号経路49、50は、基板52の表面に配置されている。基板52、54は、結合されており、または、そうでなければ一緒に固定されている。一つの実施形態において、基板52、54は、一般的に知られているように、接着フィルム(bond film)55(例えば、熱硬化性ベースの薄膜)を介して接合されている。従って、この例示的な実施形態において、層42、44、46、および基板52、54は、ストリップラインプリント回路基板回路として拡張回路を提供している。
【0030】
RFコネクタ56、58(
図2A)のそれぞれのものは、拡張回路信号経路49、50の第1端部49a、50aに結合されている。信号経路49、50の第2端部49a、50aは、グラウンド面46、60を通過する電気信号経路を介して、一対のグラウンド面層60、64(または、より簡単にグラウンド面60、64)の間に配置された結合器回路層(combiner circuit layer)62に接続されている。結合器回路層62は、一対の反応性結合器回路66、68を含んでいる。特に、信号経路49、50の第2端部49b、50bは、結合器回路66、68の第1ポート66a、68aに結合されている。層間における電気的接続は、一般に知られているように、導電性ビアホール(または、より簡単に「導電性ビア(”conductive vias”)」)を使用することであり得ることが理解されるべきである。層間(layer-to-layer)の電気的条件を作るための他の技術も、また、使用され得る。実施形態において、相互接続49a、50a、49b、50bは、全て、ケージを介した周囲のグラウンドを伴う中央導電性ビアを使用してよく、同軸横方向電磁界(Transverse ElectroMagnetic、TEM)インターフェイスを形成している。
【0031】
図2Aにおいて最も明確に示されるように、一対の誘電体基板72、74がグラウンド面60、64の間に配置されており、そして、結合器回路66、68が基板の少なくとも1つの上に(好ましくは、製造を容易にするために、同じ基板の同じ表面上に、および、ストリップライン伝送ラインを形成する目的のために)配置されている。この例示的な実施形態において、結合器回路66、68は、基板72の表面に配置されている。基板72、74は、結合されており、または、そうでなければ一緒に固定されている。一つの実施形態において、基板72、74は、一般的に知られているように、接着フィルム75(例えば、熱硬化性ベースの薄膜)を介して接合されている。従って、この例示的な実施形態において、層60、62、64、および基板72、74は、拡張PCBに結合されるか、または、そうでなければ固定されているストリップラインPCBとして結合器回路を提供する。一つの実施形態において、拡張および結合器PCBは、一般に知られているように、接着フィルム77(例えば、熱硬化性ベースの薄膜)を介して接合されている。
【0032】
結合器回路66、68の第2および第3ポート66b、68b、66c、68cは、グラウンド面64を通過するTEM電気信号経路を介して、給電回路層78上の給電回路80−86のうちそれぞれのものに接続されている。特に、結合器回路66、68の第2および第3ポート66b、68b、66c、68cは、給電回路ポート80a−86aのうちそれぞれのものに結合されている。この例示的な実施形態において、結合器回路66、68は、反応性結合器回路として提供されている。これらの回路は、物理的および電気的な対称性を使用して、偏波性能について著しいインパクトを有しており、そして、示されるように、様々なストリップライン導体幅の形態において伝送ラインのインピーダンス整合(impedance matching)の詳細を導入している。
【0033】
1給電回路層は、スロット層88の上に配置されており、そこに備えられたスロット90−96を有している。この実施例において、スロット層88は、導体として提供されており、そして、スロット90-96は、導体88の一部をエッチングすることによって形成されてよい。しかしながら、スロットを形成するために(例えば、スロット層が誘電体として提供される場合に)あらゆる追加され又は削減されたプロセスを使用することができることが、もちろん、理解されるべきである。給電回路80−86は、各給電回路80−86がスロット層88上に対称的に配置されているスロット90−96、広く97と示されている、のうちそれぞれ1つと交差するように、給電層78において対称的に配置されている。この例示的な実施形態において、給電層78は、4つの給電回路80-86を含む。他の実施形態においては、4つより少ない又は多い給電回路が使用されてよく、そして、偏波性能の劣化を生じ得る。給電回路は、基板上に配置され、そして、スロット層の第1表面が給電層の第1表面の上に配置される場合に、給電回路がスロット開口部を交差する(ここでは、直交する)ように配置されている。この配置により、スロット層内のスロットと給電層における給電回路との間にRFエネルギを結合することができる。これらの回路は、4つの給電ポイント(feed points)が使用される形態において物理的および電気的な対称性を使用し、偏波性能について著しいインパクトを有しており、そして、電気的な対称性を強制するように中心グラウンド導体(central ground conductors)を導入している。
【0034】
上述のように、各給電回路のRFポートは、結合器層上に備えられた反応性結合器/分割器(combiner/divider)回路の第2および第3ポートに対して結合されている。結合器回路の出力ポートは、グラウンド層を通過する電気信号経路を介し、そして、拡張層上の信号経路の第1端部に対して接続されている。信号経路の第2端部は、RFコネクタに結合されるように構成されている。
【0035】
オペレーションの送信モードにおいて、給電回路は、開口結合(aperture coupling)によってスロットを励起する。オペレーションの受信モードにおいて、給電回路は、スロットからのRFエネルギを結合する。スロットは、ここにおいては正方形パッチアンテナ素子14、15(
図1)として提供される放射素子へ/から(システムが送信モードまたは受信モードのいずれで動作しているかに依存して)RFエネルギを結合する。
【0036】
図2Aにおいて最も明確に示されるように、誘電体基板98は、グラウンド面64と給電回路80−86との間に配置されている。誘電体基板100は、また、グラウンド面64と給電層78上の給電回路80−86との間に配置されている。給電回路80−86は、基板98、100の少なくとも1つの表面上(好ましくは、製造を容易にするために、同じ基板の同じ表面上)に配置されている。この例示的な実施形態において、給電回路80−86は、基板100の表面上に配置されている。給電層78は、自身とスロット結合器88との間の好ましく、そして理想的には、最適な開口結合を促進するために、非対称ストリップライン回路として構成されている。
【0037】
基板98は、グラウンド面64に対して接合され、または、そうでなければ固定されており、そして、基板100は、基板98に対して接合され、または、そうでなければ固定されている。一つの実施形態において、基板98、100は、一般に知られているように、接着フィルム102、104(例えば、熱硬化性ベースの薄膜)を介して接合されている。従って、この例示的な実施形態において、層60、62、64、および基板72、74は、拡張PCBに対して結合され、または、そうでなければ固定されているストリップラインPCB回路として、結合器回路を提供する。一つの実施形態において、拡張および結合器PCBは、一般に知られているように、接着フィルム77(例えば、いわゆる「熱硬化性(”thermoset”)」ベースの薄膜)を介して結合されている。
【0038】
集積化された拡張および給電回路30は、双方向性(bi-directional)であり、RF信号が回路を通じていずれの方向においても伝搬し得ることを意味している。例えば、スロット層88を介して回路に対して導入される信号は、RFコネクタ56、58のうち一方または両方において現れ得る(スロット層に提供されるRF信号の偏波状態と偏波位相関係、および振幅に依存し、そして、スロット90−96のうちどれが信号を受信するかに依存している)。同様に、RFコネクタ56、58を通じて回路に導入される信号は、スロット90−96のうち1つまたは全てにおいて現れ得る(RFコネクタ56、58に供給されるRF信号の位相関係および振幅に依存している)。
【0039】
集積化された拡張および給電回路30のオペレーションが、次に、説明される。RFコネクタ56、58を通じてRF信号が回路の中へと導入されると仮定している(例えば、集積化された拡張および給電回路30が配置されているレーダーシステムの送信モードに対応し得るものである。)。RF信号は、コネクタ56、58を通じて拡張信号経路の第1端部(またはポート)49a、50aへと伝搬し、そして、信号経路49、50に沿ってポート49b、50bへ伝搬する。信号は、次いで、ポート49b、50bから反応性結合器66、68の入力66a、68aへ伝搬する。
【0040】
反応性結合器は、信号を分割し、そして、そのように分割された信号(so-divided signals)は、結合器ポート66b、66c、68b、68cに係るそれぞれのポートから、給電回路ポート80a、82a、84a、86aに係るそれぞれのポートへ伝搬する。給電回路80−86は、各給電回路がスロット90−96のそれぞれ1つと実質的に直交して交差し、かつ、RFエネルギが給電回路80−86のそれぞれの1つからスロット90−96のそれぞれ1つへ結合されるように、配置されている。
【0041】
明細書および図面における明確性を促進するために、望ましい回路性能および製造プロセスのために望まれ、または、必要とされる、ビアホール(via holes)およびアライメント構造といった、所定の回路構造は、
図2−
図2Aに示される回路から省略されていることが理解されるべきである。ビアホール構造は、
図2Bと関連して説明される。
【0042】
図2Bをこれから参照すると、上述のように、集積された拡張および給電回路は、複数のビアホールを含んでいる。ビアホール110は、各層42、44、46、60、62、64、78、88の周囲に備えられている。ビアホール110は、RF信号(すなわち、電磁場)の数および振幅を、ユニットセルに入ること又は出ることから、減少させる(そして、理想的には防止する)(すなわち、ビア110は、ユニットセル間を伝播する漏れ信号を減少させ、そして、理想的には除去する)。ビア110は、従って、ときどき、各ユニットセルの周囲にRFケージを形成すると言われている。
【0043】
複数のビアホール120(
図2Cにおいて最も明確に示されているもの)は、層42、44、46、60、62、64、78、および88に備えられたRFポートそれぞれを実質的に囲むこと、が理解されるべきである。そうしたビアは、例えば、ポート間におけるTEM遷移(TEM transitions)の結果として生成される迷走RF信号(stray RF signals)を生成し、そして、理想的には最小化し、または、排除する。
【0044】
拡張層44は、非対称であり、そして、従って、非対称性の結果として生成され得る、あらゆる望ましくない電磁場(例えば、RF漏れ信号)を抑制するために、多数のビア122を含んでいることが理解されるべきである。拡張層44におけるビア122は、結合器回路層、給電回路層、またはスロット層まで貫通しておらず、そして、拡張ストリップライン回路までに制限されていることが理解されるべきである。従って、ビア122は、集積された拡張および供給PCBのいずれの目に見える層(visible layer)までも伸びていないので、いわゆる「ブラインドビア(”blind vias”)」である。
【0045】
結合器層62上の反応性結合器回路66、68も、また、非対称である。従って、複数の導電性ビアホール112(または、より簡単にビア112)は、結合器回路66、68の信号経路領域114、115と、116、117との間の結合器層に備えられている。結合器の少なくともいくつかの信号経路間において配置されているビア112は、結合器を構成する信号経路間における意図しない、そして、望ましくない信号(例えば、電磁場)を低減し、そして、理想的には最小化し、もしくは、さらに完全に防止する。そうした望ましくない場(field)は、例えば、結合器回路構成及び/又は製造における非対称性の結果として、または、このように、高密度に充填された層の近接効果から生成され得る。
【0046】
図2Cをこれから参照すると、パッチアンテナ素子130の上に重ね合わせられた、
図2−
図2Bと関連して説明された結合器層、給電層、およびスロット層62、78、88のオーバーレイ(overlay)が示されている。
図2Cに示されるように、この配置は、一対の直交電場ベクトル132、134を生成するために使用することができ、ここにおいては、パッチ要素130に対して±45°の角度で示されている。そうした直交電場ベクトル132、134は、RF信号が、ポート56、58へ、そして、その後に結合器回路66、68のポート66a、68aへ供給されるときに生成され得る。45°のベクトル配向(orientation)は、また、2つの励起ベクトル間の0°または180°の位相関係から生じる、直交する水平および垂直な直線偏波積(linear polarization products)も提供している。
【0047】
図1−
図2Bに関連して説明された集積化された拡張および給電回路30が与えられると、当業者であれば、ここで、任意の直交する円偏波(circular polarization)(例えば、左または右円偏波を有するRF信号、RHCP、LHCP)、及び/又は、任意の直交する直線偏波(例えば、水平および垂直偏波を有するRF信号)を有するRF信号を生成または受信する方法を容易に理解するだろう。
【0048】
レーダーの使用において、偏波に係るこれら2つの直交するセット(例えば、RHCP、LHCP、垂直および水平)は、任意の偏波を有している信号(例えば、レーダーリターン信号または通信信号)を検出するために必要とされる全てである(すなわち、レーダーは偏波ダイバーシティを有する)。この背後にある重要な点は、レーダーまたは他のRFシステムが、偏波に係る2つの直交するセットを通して、放射されたパワー(radiated power)の全量を受信できるようにすることである。従って、ここにおいて説明された回路および技術を介して生成される場(field)に係る対角線の偏波セットにより、システムは、RHCP、LHCP、並びに、直交する対角線の偏波の他に、全部の放射されたパワーを伴う水平および垂直偏波を生成することができ、これらは、レーダーのオペレーションのために、後に不必要であると考えられること、に留意することが重要である。
【0049】
図3をこれから参照すると、
図1−
図2Cに係る同様の素子が、同様の参照記号を有して提供されており、
図1に関連して上述したアレイアンテナ10と同一または類似であり得るアレイアンテナ10'のユニットセル部分62は、そこを通じて配置された一対のコネクタ56、58を有する支持板36を含んでいる。ギャップパッド132が、支持板36の表面と集積化された拡張および給電回路30の表面との間に配置されている。ギャップパッド132は、支持板36の表面と集積化された拡張および給電回路30の表面との間のギャップ(例えば、製造公差及び/又は制限のため、または、支持板36および集積化された拡張および給電回路30の表面における他の欠陥のために、生じ得るギャップ)を埋めるのに十分な厚さおよび柔軟特性(pliability characteristics)を有している。RFコネクタ56、58の中心導体(center conductors)(または、ピン)134、136は、集積化された拡張および給電回路30の中へ延び、そして、拡張信号経路ポート49a、50a(
図2)へのRF接続を提供する。RFコネクタの中心導体は、拡張層および結合器層44、62を通じて延在するが、給電回路層78までは延在しない。
【0050】
集積化された拡張および給電回路30は、フレーム20の第1表面上、そして、より詳細には、フレーム壁22の表面上に配置されている。基板17は、拡張および給電回路の表面上に配置されており、そして、内部パッチ14は、基板17上に配置されている。基板18は、パッチ14の上に配置されている。基板17、18は、一般に知られているように、例えば、接着フィルム137(例えば、熱硬化性ベースの薄膜)を介して、互いに結合されるか、または、そうでなければ一緒にネジ止めされている。フォームスペーサ16は、外側パッチ15と誘電体基板18との間に配置されている。レドーム138が、外側パッチ15の上に配置されている。接着フィルム139は、レドーム138をフォームスペーサ16に固定し、従って、統合されたレドームとしてレドーム138を提供する。
【0051】
送信モードにおいては、RFエネルギが、RFコネクタ56、58を介して、そして、拡張および給電回路30へと結合される。RFエネルギは、拡張および給電回路30を通じてスロット(または開口)90−96に、そして、ラジエータキャビティ24(
図1)の中へデュアル偏波積層パッチ(dual-polarized,stacked-patch)アンテナ素子14、15へ伝搬する。
【0052】
受信モードにおいては、デュアル積層パッチアンテナ素子14、15によってインターセプトされたRFエネルギが、導電性壁22によって画定されたキャビティ24へと結合され、そして、続いて、スロット層88(
図2)における開口90−96を通じて、給電回路、結合器回路、および拡張回路に結合され、それを通じて信号がRFコネクタ56、58に結合される。受信モードでは、2つの直交偏波を有するRF信号が、RFコネクタ56、58のそれぞれにおいて供給される。
【0053】
上述のように、2つのパッチ14、15、並びにスロット層および給電層88、78は、できる限り完全に近い物理的対称性を有して提供されている。そうした対称性は、給電回路の電気的対称性を所与として、比較的高い交差偏波特性(cross-polarization characteristics)を有するラジエータアセンブリを提供する。
【0054】
図4をこれから参照すると、偏波分散アクティブ電子走査アレイ(AESA)140が、複数の偏波分散ラジエータから提供されており、これは、
図1−
図3に関連して上述されたラジエータと同一または類似であってよい。この例示的な実施形態において、
図4に示された各「ブロック(”block”)」142は、
図1−
図3に関連して上述されたユニットセルと同一または類似であってよいユニットセルを表している。従って、ラジエータ、そして、特には、AESA 140を構成するユニットセル142は、三角格子構成(triangular lattice configuration)に配置されている。
【0055】
偏波分散ラジエータは、
図1−
図3に関連して上述されたラジエータと同一または類似であってよく、そして、直交する円偏波および直交する直線偏波(orthogonal circular and orthogonal linear polarizations)の両方を有するRF信号に応答することができる。いくつかの実施形態において、AESAは、直交する円偏波および直線偏波を有するRF信号に対して順次に反応する。他の実施形態において、AESAは、直交する円形および直線偏波のRF信号に対して同時に反応する。
【0056】
AESA 140は、複数のパネル、ここにおいては4つのパネル142−148、から構成されており、パネルそれぞれは、ユニットセル142に含まれる複数の偏波分散素子(polarization diverse elements)から提供されている。この例示的な実施形態において、ユニットセル142の総数は、アレイアンテナ140全体を含むことが理解されるべきである。一つの実施形態において、ユニットセルの総数は16個である。完全なAESAアンテナを提供するために使用されるユニットセルの特定の数は、これらに限定されるわけではないが、動作周波数、アレイ利得、アレイアンテナに利用可能な空間、およびアレイアンテナ140が使用されるように意図された特定のアプリケーション、を含む種々の要因に従って選択することができる。
【0057】
当業者であれば、また、ユニットセル142はサブアレイへとグループ化され得ることも理解するだろう。当業者であれば、また、各サブアレイに含まれるユニットセルの数、並びに完全なAESAアンテナを構成する各パネルに含まれるサブアレイの数を選択する方法を理解するだろう。
【0058】
図示された実施形態において、各パネルは、アンテナ素子の12個の列(rows)153a−153lを含み、各列は、12個のユニットセル(そして、従って、12個のラジエータアセンブリ)を含んでいる。各パネルは、従って、12掛ける12(または12×12)パネルと呼ばれている。他のパネルサイズおよび構成も、また、可能である(例えば、8掛ける8パネル、もしくは、長方形または三角形のパネル)。従って、この例示的な実施形態において、各パネルは、144個のユニットセルを含んでいる。アレイ10が4個のそうしたパネル144−150を含む場合に、アレイ140は、全体で576個のユニットセルを含んでいる。
【0059】
上記の例示的な実施形態を考慮すると、従って、各パネルが任意の所望の数の要素を含むことができることが理解されるべきである。パネルそれぞれに含める素子の特定の数は、これらに限定されるわけではないが、所望の動作周波数、アレイ利得、アレイアンテナに利用可能な空間、およびアレイアンテナ140が使用されるように意図された特定のアプリケーション、並びに各パネルのサイズを含む、種々の要因に従って選択することができる。任意の所与のアプリケーションについて、当業者であれば、各パネル及び/又はアレイ140に含まれる放射素子の適切な数を選択する方法を理解するだろう。アンテナアレイ140といったアンテナアレイに含まれるユニットセル142の総数は、アンテナアレイに含まれるパネルの数および各パネルに含まれるアンテナ素子の数に依存している。
【0060】
ここにおける上記の説明から今や明らかなように、各ユニットセル(そして従って、各パネル)は、電気的に自律的(autonomous)であってよい(もちろん、パネル内の素子と異なるパネル上における素子との間で生じる相互結合は除く)。従って、パネル上の各ラジエータへ、そして、各ラジエータからRFエネルギを結合するRF給電回路は、そのラジエータのユニットセルの中に完全に組み込まれている(すなわち、アンテナ素子へ、そして、アンテナ素子からRF信号を結合する全てのRF給電回路は、その素子の中に含まれている)。上述のように、各ユニットセルは、1つまたはそれ以上ののRFコネクタを含み、そして、RF信号は、各ユニットセル上に備えられたRFコネクタを通じてアンテナ素子へ/から供給されている。
【0061】
また、送信/受信(T/R)回路へ、そして、回路から信号を結合するロジック信号のための信号経路および電力信号のための信号経路も、TRIMMモジュールが存在するパネルの中に含まれている。
【0062】
アレイ140全体のRFビームは、ユニットセルそれぞれからのRF出力を結合する内部または外部ビーム形成器(すなわち、ユニットセルそれぞれ又はそれらのパネルアセンブリに対して外部)によって形成される。当業者にとって知られているように、ビーム形成器は、従来、N個の素子を1つのRF信号ポートへと結合するプリント配線板(例えば、ストリップライン回路)として実装され得る(そして、従って、ビーム形成器は、1対N(1:N)ビーム形成器として呼ばれてよい)。
【0063】
素子は、アレイの格子パターンがアレイアンテナを含む各パネルにわたって連続するように、従来の技術を用いて、取り付け構造(mounting structure)(例えば、
図1における支持板36)に対して機械的に留められ、または、そうでなければ固定されている。一つの実施形態において、取り付け構造は、それに対して素子がファスナ(fasteners)を使用して固定される「ピクチャーフレーム(”picture frame”)」として提供され得る。パネルのインターロックセクション間のトレランスは、これらに限定されるわけではないが、動作周波数およびアンテナ性能におけるトレランスの影響、を含む種々の要因に基づいて選択される。従って、Kバンド周波数範囲において動作するアンテナは、例えば、Sバンド周波数範囲において動作するアンテナよりもきつい(すなわち、より小さい)トレランスを必要とし得る。好ましくは、アレイ格子パターン(
図4の例示的な実施形態において三角格子パターンとして示されているもの)がアレイ140の表面全体(または「フェイス(”face”)」)にわたり電気的に連続して現れるように、素子が機械的に取り付けられている。
【0064】
ここにおいて説明された回路、システム、および技術の様々な実施形態は、
図1−
図4と共に上述された特徴及び/又は構造のうち1つまたはそれ以上を含んでよく、かつ、特徴及び/又は構造は、独立して又は1つまたはそれ以上の他の特徴及び/又は構造と組み合わせて使用されてよく、そして、ここにおいて具体的に明らかにされていない他の実施形態を形成するために、ここにおいて説明された異なる実施形態特徴及び/又は構造が組み合わされてもよいことが、理解されるべきである。
【0065】
概念、システム、回路、および技術の特定の実施形態が示され、そして、説明されてきたが、当業者にとっては、ここにおいて説明された概念の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更および修正が、その中でなされ得ることが明らかだろう。例えば、提示された実施例のいくつかは、ストリップライン構造を使用して実施されるシステムを参照する。説明された概念は、マイクロストリップまたは共平面導波路伝送ライン(co-planar waveguide transmission lines)を使用して、全体的または部分的に実施されるシステムに対して適用されることが理解されるだろう。他の組み合わせ又は修正も、また、可能であり、それら全ては、ここにおいて提供される開示を読んだ後で、当業者にとって直ちに明らかだろう。
【0066】
本特許の主題である、種々の概念、システム、回路、および技術を例示するために役立つ好ましい実施形態を説明してきたが、当業者にとっては、今や、これらの概念、システム、回路、および技術を組み込んだ他の実施形態が使用され得ることが明らかだろう。例えば、ここにおいて説明された異なる実施形態に係る個々の概念、技術、特徴、及び/又は構造は、上記で具体的に明らかにされていない他の実施形態を形成するように組み合わされ得ることが留意されるべきである。さらに、単一の実施形態のコンテクストにおいて説明されている、種々の概念、技術、特徴、及び/又は構造は、また、別々に、もしくは、任意の適切なサブコンビネーションにおいても提供され得るものである。従って、ここにおいて具体的に説明されていない他の実施形態も、また、以下の請求項の範囲内にあることが期待されている。
【0067】
従って、本請求項の範囲は、ここにおいて、かつ、図面の図を参照して説明されるような特徴および構造に対する他の全ての予測可能な均等物を含むことが意図されている。従って、ここにおいて保護を求める技術的事項は、請求項およびそれらの均等物の範囲によってのみ限定されるものである。
【0068】
ここにおいて説明された概念、システム、回路、および技術は、従って、上記の説明によって限定されるべきではなく、全てのそうした変更および修正を、それらの範囲内に包含する、以下の請求項の精神および範囲だけによって定義されるものとして考えられる。
【0069】
ここにおいて引用される全ての刊行物および参考文献は、それらの全体が参照によりここにおいて明示的に包含されている。