特許第6896864号(P6896864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896864グリセロールアルキルエーテルを含む化粧料および医薬組成物用の新規酸化防止剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896864
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】グリセロールアルキルエーテルを含む化粧料および医薬組成物用の新規酸化防止剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/33 20060101AFI20210621BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20210621BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210621BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210621BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   A61K8/33
   A61K8/49
   A61Q19/00
   A61K47/10
   A61K47/22
【請求項の数】11
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2019-535920(P2019-535920)
(86)(22)【出願日】2017年12月21日
(65)【公表番号】特表2020-514287(P2020-514287A)
(43)【公表日】2020年5月21日
(86)【国際出願番号】US2017067780
(87)【国際公開番号】WO2018125734
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2019年8月14日
(31)【優先権主張番号】62/439,954
(32)【優先日】2016年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/475,977
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512110499
【氏名又は名称】セイケム インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,ティム
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06956062(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第105997754(CN,A)
【文献】 Charcoal Rescue Masque (ID: 4110545),Mintel GNPD [online],2016年 7月,URL,https://www.gnpd.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/KOSMET/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、組成物:
a.一般式(Ia)もしくは(Ib)のグリセロールアルキルエーテル:
【化1】
[一般式(Ia)もしくは(Ib)において、Rは、C−C18アルキルもしくはアルケニル基であり、当該アルキルもしくはアルケニル基は、分岐もしくは非分岐であり、非置換であるか、または1つ以上のヒドロキシル、1つ以上のC−Cアルコキシ基、もしくは1つ以上のヒドロキシルおよび1つ以上のC−Cアルコキシ基の両方で置換され、かつ、当該C−C18アルキル基は、分岐もしくは非分岐であっても、非置換であってももしくは置換されていても、4個までの酸素原子で任意に中断され、または、Rは、非置換の、または1つ以上のヒドロキシル、1つ以上のC−Cアルコキシ基もしくは1つ以上のヒドロキシルおよび1つ以上のC−Cアルコキシ基の両方で置換されたC−C10芳香族炭化水素である;および
b.ナリンゲニンおよびエリオジクチオールから選択される、1つ以上の化合物
ここで、一般式(Ia)もしくは(Ib)の前記グリセロールアルキルエーテルは、前記組成物の重量に基づいて、0.05〜5重量%の範囲の濃度で存在し、ナリンゲニンおよびエリオジクチオールから選択される、前記1つ以上の化合物は、一般式(Ia)もしくは(Ib)の前記グリセロールアルキルエーテルの重量に基づいて、50〜50000ppmの範囲の濃度で存在する
【請求項2】
一般式(Ia)もしくは(Ib)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
一般式(Ia)もしくは(Ib)において、Rが、2−エチルヘキシルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
一般式(Ia)もしくは(Ib)において、Rが、n−オクチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
一般式(Ia)もしくは(Ib)において、Rが、2−オクチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
一般式(Ia)もしくは(Ib)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基であり、かつ、ナリンゲニンおよびエリオジクチオールから選択される1つ以上の化合物が、ナリンゲニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくは、Rが、n−オクチルであるか、もしくは、Rが、2−オクチルであるかのいずれかであり、かつ、ナリンゲニンおよびエリオジクチオールから選択される1つ以上の化合物が、ナリンゲニンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ナリンゲニンおよびエリオジクチオールから選択される1つ以上の化合物が添加される前に、一般式(Ia)もしくは(Ib)の化合物が、少なくとも95%の純度で組成物に提供される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料もしくは医薬組成物。
【請求項10】
化粧料もしくは医薬組成物が、一般式(Ia)もしくは(Ib)の化合物の含有量に基づいて、0.1〜1重量%の一般式(Ia)もしくは(Ib)の化合物、および50〜50000ppmのナリンゲニンおよびエリオジクチオールから選択される1つ以上の化合物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料もしくは医薬組成物。
【請求項11】
水、エタノール、プロピレングリコールから選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国特許仮出願第62/475,977号(2017年3月24日出願)および米国特許仮出願第62/439,954号(2016年12月29日出願)の両方に基づき、かつ、それらの出願の米国特許法第119条による優先権を享受する。それらの出願のそれぞれは、その全体が参照により本明細書中で援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、化粧料および医薬製剤に、ならびに工業製品に用いるための、グリセロールモノアルキルエーテルを含み、さらに酸化防止剤を含む、組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
グリセロールモノアルキルエーテルは、化粧料および医薬製剤の添加剤として用いられる。グリセロールモノアルキルエーテルは、生理学的に相溶性の有機溶剤として用いられる。例えば、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールは、化粧料および医薬製剤において消臭剤活性成分およびスキンケア添加剤として数年間用いられてきた。このような製品では、グリセロールモノアルキルエーテルは、濃縮物の形態で製品に添加されるか、もしくは純粋なグリセロールモノアルキルエーテルとして添加される場合もある。
【0004】
製造、保存および使用の間に、グリセロールモノアルキルエーテル、その濃縮物および希釈溶液(これらは希釈標準溶液と呼ばれ得る)、は、化粧料および医薬製剤などのパーソナルケア製品に用いられる際の安定性のための厳密な要件に供される。グリセロールモノアルキルエーテルは天然に存在するので、当該物質の等級の天然のおよび合成で調製されたメンバーは、両方とも、化粧料および医薬製剤などのパーソナルケア製品に使用することが望ましくなっており、化粧料および医薬の製造者および末端利用者に広く受け入れられている。グリセロールモノアルキルエーテルが酸化分解に供されることは公知であるので、そのような分解を阻害するために、製造者から酸化防止剤添加剤が提供され得る。グリセロールモノアルキルエーテルが適切に保存されない場合、時間の経過とともに、過酸化物およびホルムアルデヒドの形成を含む不安定性の兆候が観察されるようになる。
【0005】
化粧料および医薬製剤中での過酸化物およびホルムアルデヒドの形成は、多くの問題を引き起こし得る。ホルムアルデヒドは、それ自体が、ヒトもしくは動物に曝露することは非常に望ましくない。スキンケア製品では、過酸化物の存在が、皮膚病などの皮膚の問題を引き起こし得る。過酸化物は、そのような処方物中に存在する天然油脂の酸化により、保存された製品の臭いに変化を起こし得る。過酸化物は、特に、グリセロールモノアルキルエーテルを含む水中油エマルジョンにおいて色の変化をもたらし得る。過酸化物は、化学的分析、およびいくつかの場合には臭いにより検出され得る低分子量分解生成物の形成をもたらし得る。グリセロールモノアルキルエーテルを含む組成物中での過酸化物の形成から生じるこれらの問題は、品質管理、もしくはさらに悪いことには、顧客および末端利用者による製品の拒絶をもたらし得る。
【0006】
米国特許第6,956,062号(特許文献1)は、グリセロールモノアルキルエーテルと共に使用するための多くの酸化防止剤(ビタミンEを含む)を開示する。
【0007】
特許文献1に開示される酸化防止剤を使用することの欠点は、そのような酸化防止剤は、天然産物であるので、精製するのが難しい可能性があるということである。ビタミンEの不利な点には、供給源および同一性が必ずしも明らかでないという事実が挙げられ得、例えば、ビタミンEの材料が合成であっても天然であっても、不純物(不要な色を含む)が導入され得る可能性、およびビタミンEの使用により、ビタミンEを含む化粧料もしくは医薬組成物により使用者の身体に曝露された過多のビタミンEがビタミンE過剰症をもたらし得る可能性が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,956,062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、グリセロールモノアルキルエーテルと共に使用するための、特に化粧料および医薬製剤などのパーソナルケア製品に使用するための、新規でかつ改善された酸化防止剤が必要とされ続けている。
【0010】
概要
本発明者らは、新規な分類の酸化防止剤化合物が、化粧料および医薬などの製品においてグリセロールモノアルキルエーテルを使用することにより直面し得る上記問題の発生を防止するか少なくとも低減することにおいて、特に優れた結果を提供することを発見した。グリセロールモノアルキルエーテルと共に使用するための新規な分類の酸化防止剤化合物には、フラバノン由来の化合物、特に、4H−1−ベンゾピラン−4−オン、2,3−ジヒドロ−2−フェニル−に基づくかフラボン由来であり、4H−1−ベンゾピラン−4−オン−2−フェニル骨格に基づき、基本分子上の種々の位置に幅広い置換基を有する化合物が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、1つの実施態様では、本願発明は、以下を含む、組成物に関する:
a.一般式(I)のグリセロールアルキルエーテル:
【0012】
【化1】
[一般式(I)において、Rは、C−C18アルキル基であり、当該アルキル基は、分岐もしくは非分岐であり、非置換であるか、または1つ以上のヒドロキシル、1つ以上のC−Cアルコキシ基、もしくは1つ以上のヒドロキシルおよび1つ以上のC−Cアルコキシ基の両方で置換され、かつ、当該C−C18アルキル基は、分岐もしくは非分岐であっても、非置換であってももしくは置換されていても、4個までの酸素原子で任意に中断される;および
b.一般式(II)から選択される、1つ以上の化合物:
【0013】
【化2】
[一般式(II)において、R〜R10のそれぞれは、水素、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルキルエステルおよびО−グリコシドから独立して選択され、当該アルキル、当該アルコキシおよび当該アルキルエステルのアルキル部分は、独立して、1〜4個の炭素原子を含み、分岐もしくは非分岐であり、かつ、当該アルキルエステルのエステルは、1〜5個の炭素原子を含み、分岐もしくは非分岐であり;当該О−グリコシドは、単糖、二糖もしくは三糖を含み、そのそれぞれにおいて、糖は、酸素原子を介して環に結合した天然のもしくは修飾された糖部分(すなわち、О−グリコシド)であり;点線は、任意の炭素−炭素二重結合を示す。いくつかの実施態様では、任意の炭素−炭素二重結合が存在する場合、得られる化合物は、フラボンである。同様に、いくつかの実施態様では、任意の炭素−炭素二重結合が存在せず、かつ、代わりに炭素−炭素単結合が存在する場合、得られる化合物は、フラバノンである。
【0014】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、フラボンもしくはフラバノン化合物である。1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、天然の供給源(例えば、柑橘系もしくは他の果実、または野菜)から単離されるかもしくはそれから公知のフラボンもしくはフラバノン化合物である。1つの実施態様では、式(II)の化合物が、以下の一般式(IIa)を有するフラバノンもしくは一般式(IIb)を有するフラボンであるか、または一般式(IIa)および一般式(IIb)の2つ以上の混合物である:
【0015】
【化3】
[式中、R、R、RおよびR基は、一般式(II)の化合物について上記で定義したとおりである]。
【0016】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、フラバノール化合物である。1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、天然の供給源(例えば、柑橘系もしくは他の果実、または野菜)から単離されるかもしくはそれから公知のフラバノール化合物である。1つの実施態様では、式(II)の化合物が、以下の一般式(IIc)を有する:
【0017】
【化4】
[一般式(IIc)のフラバノールにおいて、R基は、一般式(II)の化合物について上記に記載した定義を有する]。
【0018】
一般式(I)および(II)の化合物を含む上記組成物、ならびに化粧料もしくは医薬製剤に使用するための一般式(I)の化合物を保存する方法は、一般式(I)のグリセロールモノアルキルエーテルを含む安定な製品を提供するための新規でかつ予想外に優れた方法を提供する。従って、本発明は、そのような汎用の安定な組成物を提供する際の長年にわたる問題の解決、および特に安定な組成物の長年にわたる要求の解決を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、比較例および本発明の試験サンプルの両方からの過酸化物の形成を比較した安定性試験の結果を示すグラフである。
図2図2は、比較例および本発明の試験サンプルの両方からのホルムアルデヒドの形成を比較した安定性試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、本願発明による化合物と共に高温で保存した際の3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールの損失を示すグラフである。
図4図4は、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールを本願発明による化合物と共に高温で保存した際に生じた揮発性分解生成物の増加を示すグラフである。
図5A図5Aは、3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールと本願発明による一般式(II)を有する化合物とのブレンドの安定性試験の結果を示す。図5Aは、活性アッセイを示す。
図5B図5Bは、3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールと本願発明による一般式(II)を有する化合物とのブレンドの安定性試験の結果を示す。図5Bは、分解生成物を示す。
図6A図6Aは、SASKINE50(商標)のサンプルを本願発明による一般式(II)を有する化合物と組み合わせたときに得られる結果を示す。図6Aは、活性アッセイを示す。
図6B図6Bは、SASKINE50(商標)のサンプルを本願発明による一般式(II)を有する化合物と組み合わせたときに得られる結果を示す。図6Bは、分解生成物を示す。
図7図7は、本願発明による一般式(II)を有する化合物を有するおよび有しないグリセリルエーテルの2つについての最小阻害濃度を示す。
図8図8は、本願発明による一般式(II)を有する化合物を有するおよび有しない3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール(SASKINE50(商標))についての皮膚刺激試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
上記概要に開示されるように、本願発明は、一般式(I)を有するグリセロールモノアルキルエーテルと一般式(II)を有する酸化防止剤とを組み合わせて含む組成物に関する。
【0021】
1つの実施態様では、本願発明は、以下を含む、組成物に関する:
a.一般式(I)のグリセロールアルキルエーテル:
【0022】
【化5】
[一般式(I)において、Rは、C−C18アルキル基であり、当該アルキル基は、分岐もしくは非分岐であり、非置換であるか、もしくは1つ以上のヒドロキシル、1つ以上のC−Cアルコキシ基、もしくは1つ以上のヒドロキシルおよび1つ以上のC−Cアルコキシ基の両方で置換され、かつ、当該C−C18アルキル基は、分岐もしくは非分岐であっても、非置換であってももしくは置換されていても、4個までの酸素原子で任意に中断される;および
b.一般式(II)から選択される、1つ以上の化合物:
【0023】
【化6】
[一般式(II)において、R〜R10は、それぞれ、水素、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルキルエステルおよびO−グリコシドから独立して選択され、当該アルキル、当該アルコキシおよび当該アルキルエステルのアルキル部分は、独立して、1〜4個の炭素原子を含み、分岐もしくは非分岐であり、かつ、当該アルキルエステルのエステルは、1〜5個の炭素原子を含み、分岐もしくは非分岐であり、当該O−グリコシドは、単糖、二糖もしくは三糖を含み、そのそれぞれにおいて、当該糖は、当該環(すなわち、O−グリコシド)に酸素原子を介して結合した天然のもしくは修飾された糖部分であり;かつ、点線は、任意の炭素−炭素二重結合を示す。いくつかの実施態様では、一般式(II)の化合物は、フラボノイドである。いくつかの実施態様では、任意の炭素−炭素二重結合が存在する場合、得られるフラボノイドは、フラボンもしくはフラバノールである。同様に、いくつかの実施態様では、任意の炭素−炭素二重結合が存在せず代わりに炭素−炭素単結合が存在する場合、得られるフラボノイドは、フラバノンである。
【0024】
1つの実施態様では、一般式(II)の化合物は、一般式(IIa)、(IIb)もしくは(IIc)を有する化合物の1つ、または2つ以上の混合物を含む:
【0025】
【化7】
[一般式(IIa)、(IIb)および(IIc)中、各R〜R10は、一般式(II)の化合物について上記で定義したとおりである]。
【0026】
本願発明の実施態様における一般式(I)の化合物は、通常、グリセロールモノアルキルエーテル、すなわち、2−置換グリセロールモノアルキルエーテルおよび3−置換グリセロールモノアルキルエーテルの両方に関するが、本願発明は、特に、3−置換グリセロールモノアルキルエーテル化合物に関する。
【0027】
一般式(I)による化合物において、グリセロール部分の2位の炭素原子は非対称炭素原子であることに注意する。従って、本発明によるグリセロールモノアルキルエーテルは、ラセミ体混合物(D,L)、またはD−体もしくはL−体のエナンチオマーが豊富な混合物の形態、または純粋なD−エナンチオマーもしくは純粋なL−エナンチオマーの形態として存在し得る。本明細書で使用されるように、一方のもしくは他方のエナンチオマーに特に指向しない限り、D−もしくはL−エナンチオマーに違いはない。
【0028】
1つの実施態様では、グリセロールモノアルキルエーテル中のアルキル基が、分岐もしくは非分岐であり得るC−C12炭化水素基である。1つの実施態様では、グリセロールモノアルキルエーテル基中のアルキルが、分岐もしくは非分岐のC−C12炭化水素基である。1つの実施態様では、グリセロールモノアルキルエーテル中のアルキル基が、分岐もしくは非分岐のC−C10炭化水素基である。1つの実施態様では、グリセロールモノアルキルエーテル中のアルキル基が、分岐もしくは非分岐のC炭化水素基である。1つの実施態様では、C炭化水素基が、n−オクチルであり;1つの実施態様では、C炭化水素基が、2−オクチル;および1つの実施態様では、C炭化水素基が、2−エチルヘキシルである。
【0029】
1つの実施態様では、グリセロールモノアルキルエーテル中のアルキル鎖が、分岐であるか非分岐であるかにかかわらず、4個までの酸素原子で中断されている。従って、グリセロールモノアルキルエーテルのアルキル基Rにおける当該アルキル鎖は、例えば、エチレンオキシ基および/もしくはプロピレンオキシ基などのアルキレンオキシ基を含むことができる。本実施態様では、エーテル含有部分は、適宜、エーテル含有部分の長さおよび中断している酸素原子の数に応じて、例えば、アルコールもしくはジオールとエチレンオキシドおよび/もしくはプロピレンオキシドとの反応により得られ得る。別の実施態様では、エーテル含有部分は、アルキルグリシジルエーテルの加水分解により得られ得、当該アルキル基は、分岐もしくは非分岐であり得る。R基に適したエーテル含有部分には、例えば、CHCH(OCHCH−(式中、n=1−5である)、CHCH(OCH(CH)CH−(式中、n=1−3である)が挙げられる。
【0030】
1つの実施態様では、Rアルキル部分が、4〜12個の炭素原子を含み、1つの実施態様では、Rアルキル部分が、6〜10個の炭素原子を含み、そして、1つの実施態様では、Rアルキル部分が、8炭素原子を含む。1つの実施態様では、8炭素原子のアルキル基が、2−エチルヘキシル基であり、そして、別の実施態様では、8炭素原子のアルキル基が、n−オクチルである。1つの実施態様では、グリセロールモノアルキルエーテルが、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールであり、これはセイケム社(SACHEM,Inc.、テキサス州オースティン)により商品名SASKINE50(商標)で市販されている。
【0031】
1つの実施態様では、分岐もしくは非分岐アルキル基が、当該アルキル基の長さに沿ったヒドロキシルもしくはアルコキシル置換基を有する。置換基がアルコキシである場合、当該アルコキシ基のアルキル部分は、C−Cアルキル部分である。置換基がアルコキシである場合、そのような置換基のそれぞれは、独立して、−OCH、−OCHCH、−OCHCHCH、−OCH(CH、−OCHCHCHCH、−OCHCH(CH、−OCH(CH)CHCHもしくは−OC(CHであり得る。複数のアルコキシ基が存在し得る。
【0032】
1つの実施態様では、分岐もしくは非分岐アルキル基が、アルキルヒドロキシル置換を含み、当該アルキルヒドロキシルが、C−Cアルキル部分を含む。置換がアルキルヒドロキシルである場合、そのような置換基のそれぞれは、独立して、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、−CH(CH)CHOH、−CHCHCHCHOH、−CH(CH)CHCHOH、−CHCH(CH)CHOHもしくは−CHC(CHOHであり得る。複数のアルキルヒドロキシル基が存在し得る。
【0033】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基である。1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C10アルキル基である。1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐Cアルキル基である。
【0034】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、2−エチルヘキシルである。
【0035】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、n−オクチルである。
【0036】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、2−オクチルである。
【0037】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、フラボンもしくはフラバノン化合物である。1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、柑橘系果実から単離されたもしくは公知であるフラボンもしくはフラバノン化合物である。1つの実施態様では、式(II)の化合物が、以下の一般式(IIa)のフラバノンもしくは一般式(IIb)のフラボン:
【0038】
【化8】
または2つ以上の一般式(IIa)および一般式(IIb)の化合物の混合物である。
【0039】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(IIa)の化合物は、以下のフラバノンのうちの1つを含む[上記一般式(II)において、2,3炭素−炭素二重結合は存在せず、かつ、R、R、R、RおよびR10=Hである]:
【0040】
【表1】
【0041】
上記一般式(IIa)による化合物において、ピラン環中、フェニル環に結合している炭素原子は非対称であり、かつ、Rに結合している炭素原子は、R=OHの場合に非対称である点に注意する。例えば、タキシフォリンおよびエピカテキンはジアステレオマーであるが、この理由は、それぞれがRにOH基を有するが、タキシフォリンではRのOH基がフェニル基に対してトランスである一方、エピカテキンではRのOH基がフェニル基に対してシスであるからである。このことはアロマデンドリンおよびアロマデドリンでもそれぞれ同様であり、これらもまたジアステレオマーである。
【0042】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(IIb)の化合物が、以下のフラボンのうちの1つである[上記一般式(II)において、2,3炭素−炭素二重結合が存在し、かつ、R、R、RおよびR10=Hである]:
【表2】
【0043】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)を有する化合物が、ヘスペレチン、ナリンゲニン、タキシフォリン、エピカテキン、イソクラネチン、エリオジクチオール、アロマデンドリン、アロマデドリン、アカセチン、イソクテラレイン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ジオスメチン、クリソエリオール、クリシンおよびガランギンから選択される1つの化合物もしくは2つ以上の化合物の混合物である。本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)を有する化合物が、ヘスペレチン、ナリンゲニン、タキシフォリン、エピカテキン、イソクラネチン、エリオジクチオール、アロマデンドリン、アロマデドリン、アカセチン、イソクテラレイン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ジオスメチン、クリソエリオール、クリシンおよびガランギンから本質的になる群から選択される1つの化合物もしくは2つ以上の化合物の混合物である。ここで、「から本質的になる」とは、他のフラボノイドが組成物中に存在しないであろうことを意味する。本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)を有する化合物が、ヘスペレチン、ナリンゲニン、タキシフォリン、エピカテキン、イソクラネチン、エリオジクチオール、アロマデンドリン、アロマデドリン、アカセチン、イソクテラレイン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ジオスメチン、クリソエリオール、クリシンおよびガランギンからなる群から選択される1つの化合物もしくは2つ以上の化合物の混合物である。
【0044】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、フラバノール化合物である。1つの実施態様では、一般式(II)の化合物が、天然の供給源、例えば、柑橘系もしくは他の果実もしくは野菜から単離されたまたはそれらから公知のフラバノール化合物である。1つの実施態様では、式(II)の化合物が、以下の一般式(IIc)を有する:
【0045】
【化9】
[一般式(IIc)のフラバノールにおいて、R基は、一般式(II)の化合物について上記した定義を有する。本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(IIc)の化合物が、以下のフラバノールのうちの1つである[上記一般式(II)において、2,3炭素−炭素二重結合は存在せず、かつ、R=OH、R=Hであり、かつ、他のR基は、以下に示すとおりである:
【0046】
【表3】
【0047】
1つの実施態様では、一般式(IIc)における1つ以上のR基が、フラバノールからグリコシドを形成する糖部分である。フラバノールグリコシドの例には、以下のものが挙げられる:
【0048】
【表4】
【0049】
一般式(IIa)による上記に示す化合物において、R=OHである場合、得られる化合物がフラバノールであることに注意する。フラバノンもしくはフラバノールとしての上記分類は、単に参照を容易にするためのものであり、上記一般式(II)の定義の範囲内の他の化合物に限定するもしくは当該化合物を除外することを意図するものではない。
【0050】
一般式(IIa)、(IIb)および(IIc)の多くの化合物の多くは、果実および野菜の両方を含む種々の天然の供給源から得ることができる。そのような供給源の1つは、柑橘系であり、例えば、オレンジの皮もしくはグレープフルーツの皮、または果実それ自身である。柑橘系は通常、および柑橘系果実および皮は特に、多くの健康に良い利益を提供することが周知である。一般式(II)による化合物のさらなる天然の供給源には、以下の例が挙げられるが、これらに限定されない:紅茶、ビール、リンゴ、バナナ、ブルーベリー、モモ、ナシ、イチゴ、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、トマト、ミカン、タンジェロ、パセリ、ペッパー、セロリ、スイカ、レタス、サクランボ、キャベツ、クランベリー、プラム、ラズベリー、黒豆およびタマネギ。そのような供給源から得られる一般式(II)による化合物は、化粧料もしくは医薬製品に配合することができる天然産物である。般式(II)の範囲内にある同様の合成的におよび化学的に修飾された化合物もまた、本願発明の範囲内にある。
【0051】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R〜R10のそれぞれが、水素、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシルおよびアルコキシから独立して選択される。
【0052】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基であり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R〜R10のそれぞれが、水素、ヒドロキシル、C−CアルキルヒドロキシルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される。
【0053】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R基の1つ以上が、O−グリコシドである;いくつかの実施態様では、O−グリコシドが、一般式(IIa)もしくは(IIb)の化合物におけるRでOH基を置換する。1つの実施態様では、グリコシドが、ルチノースであり、また、別の実施態様では、グリコシドが、ネオヘスペリドースである。別の実施態様では、グリコシドが、ラムノースである。別の実施態様では、グリコシドが、グルコースである。別の実施態様では、グリコシドが、キシロースである。
【0054】
1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラバノンがエリオシトリンであり、これはエリオジクチオールのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラバノンがナリルチンであり、これはアピゲニンのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラバノンがヘスペリデンであり、これはヘスペリチンのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラバノンがネオポンチリンであり、これはイソサクラネチンのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。
【0055】
1つの実施態様では、O−グリコシドがネオヘスペリドースである場合、フラバノンがネオエリオシトリンであり、これはエリオジクチオールのRヒドロキシル基がO−ネオヘスペリドースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがネオヘスペリドースである場合、フラバノンがナリンギンであり、これはアピゲニンのRヒドロキシル基がO−ネオヘスペリドースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがネオヘスペリドースである場合、フラバノンがネオヘスペリデンであり、これは、ヘスペリチンのRヒドロキシル基がO−ネオヘスペリドースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがネオヘスペリドースである場合、フラバノンがポンチリンであり、これは、イソサクラネチンのRヒドロキシル基がO−ネオヘスペリドースで置換される場合に得られる。
【0056】
1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラボンがルチンであり、これは、ケルセチンのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラボンがイソロイフォリンであり、これは、アピゲニンのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがルチノースである場合、フラボンがデオスミンであり、これは、ジオスメチンのRヒドロキシル基がO−ルチノースで置換される場合に得られる。
【0057】
1つの実施態様では、O−グリコシドがネオヘスペリドースである場合、フラボンがロイフォリンであり、これは、アピゲニンのRヒドロキシル基がO−ネオヘスペリドースで置換される場合に得られる。1つの実施態様では、O−グリコシドがネオヘスペリドースである場合、フラボンがネオデオスミンであり、これは、ジオスメチンのRヒドロキシル基がO−ネオヘスペリドースで置換される場合に得られる。
【0058】
1つの実施態様では、上記グリコシドのフラバノンおよびフラボンは、独立して、柑橘系から公知であるか、得られるか、もしくは公知であってかつ得られる。1つの実施態様では、上記グリコシドのフラバノンおよびフラボンは、独立して、以下のものから公知であるか、得られるか、もしくは公知であってかつ得られる:紅茶、ビール、リンゴ、バナナ、ブルーベリー、モモ、ナシ、イチゴ、オレンジ、グレープフルーツ、レモン、トマト、ミカン、タンジェロ、パセリ、ペッパー、セロリ、スイカ、レタス、サクランボ、キャベツ、クランベリー、プラム、ラズベリー、黒豆およびタマネギ。
【0059】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R、R、R、RおよびR10が、Hであり、RおよびRが、OHであり、RおよびRが、HもしくはOHであり、かつ、Rが、OHもしくはC−Cアルコキシである。従って、例えば、そして本実施態様の特定の1つによれば、一般式(II)から選択される化合物は、以下の構造(IIe)、(IIf)、(IIg)もしくは(IIh)のうちの1つを有する:
【0060】
【化10】
【0061】
一般式(II)と同様に、(IIe−IIh)においても、ピラン環中の二重結合は任意である。
【0062】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物は、ここに示すナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペレチンおよびエリオジクチオールのうちの1つもしくは2つ以上の組み合わせである:
【0063】
【化11】
【0064】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I) から選択される化合物において、Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくはRが、n−オクチルであり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物が、上記に示すナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペレチンおよびエリオジクチオールのうちの1つもしくは2つ以上の組み合わせである。
【0065】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくは、Rが、n−オクチルであり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物が、ヘスペレチン、ナリンゲニン、タキシフォリン、エピカテキン、イソクラネチン、エリオジクチオール、アロマデンドリン、アロマデドリン、アカセチン、イソクテラレイン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ジオスメチン、クリソエリオール、クリシンおよびガランギンのうちの1つもしくは2つ以上の組み合わせである。
【0066】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(II)を有する化合物が、ポリメトキシレート化フラボン、すなわち、一般式(IIb)を有するポリメトキシレート化化合物である。1つの実施態様では、一般式(II)を有する化合物が、上記で定義したように、R、RおよびRのそれぞれにメトキシ基を含み、R、RおよびR10にH原子を含み、かつ、R、R、RおよびRの1つ以上にさらなるメトキシ基を含んで、以下の化合物を形成する:
【0067】
【表5】
【0068】
他の公知のポリメトキシレート化フラボンには、テトラ−O−メチルスクテラレイン、テトラ−O−メチルイソスクテラレイン、ヘキサ−O−メチルケルセタゲチン、ヘキサ−O−メチルゴッシペチンおよび5−ヒドロキシ−3,7,8,3’,4’−ペンタメトキシフラボンが挙げられる。
【0069】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)から選択される化合物において、Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくは、Rが、n−オクチルであり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物が、上記に示すナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペレチンおよびエリオジクチオールのうちの1つもしくは2つ以上の組み合わせである。
【0070】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rは、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基および一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R、R、R、RおよびR10が、Hであり、RおよびRが、OHであり、RおよびRが、HもしくはOHであり、かつ、Rが、OHもしくはC−Cアルコキシである。
【0071】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基であり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R〜R10のそれぞれが、水素、ヒドロキシル、C−CアルキルヒドロキシルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される。
【0072】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基であり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R、R、R、RおよびR10が、Hであり、RおよびRが、OHであり、RおよびRが、HもしくはOHであり、かつ、Rが、OHもしくはC−Cアルコキシである。
【0073】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくは、Rが、n−オクチルであり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R〜R10のそれぞれが、水素、ヒドロキシル、C−CアルキルヒドロキシルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される。
【0074】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)において、Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくは、Rが、n−オクチルであり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R、R、R、RおよびR10が、Hであり、RおよびRが、OHであり、RおよびRが、HもしくはOHであり、かつ、Rが、OHもしくはC−Cアルコキシである。
【0075】
本願発明の選択された実施態様による特定の組み合わせには、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:
3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびナリンゲニン;
3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールケルセチン;
3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびヘスペレチン;
3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびエリオジクチオール;
3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびナリンゲニン;
3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールケルセチン;
3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびヘスペレチン;
3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびエリオジクチオール;
3−[(2−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびナリンゲニン;
3−[(2−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールケルセチン;
3−[(2−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびヘスペレチン;
3−[(2−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよびエリオジクチオール。
【0076】
1つの実施態様では、一般式(II)を有する化合物は、以下のうちの1つ以上から選択される:アカセチン、アムレンシン、アピゲニン、アピゲトリン、アザレイン、アザレアチン、バイカレイン、ブチン、クリシン、クリソエリオール、ジオスミン、ジオスメチン、エリオシトリン、エリオジクチオール、ユーパフォリン、ユーパチリン、フィセチン、フラボキサート、ガランギン、ゲンクワニン、ゴッシペチン、ヘスペレチン、ヒスピズリン、ホモエリオジクチオール、ヒペロシド、イカリイン、イソサクラネチン、イソケルシチン、イソラムネチン、ケンペリド、ケンペリトリン、ケンフェロール、ルテオリン、リクビルチン(Likvirtin)、リクイリチン、リクイリチゲニン、モリン、ミリセチン、ミリシトリン、ナリンゲニン、ナリンギン、ナツダイダイン、ネオヘスペリジン、ノビレチン、パキポドール、ピノセムブリン、ポンチリン、ケルセチン、ケルシトリン、ラムネチン、ラムナジン、ロイフォリン、ロビニン、ロビノース、ルチノース、サクラネチン、サクラニン、スクテラレイン、スピレオシド、スピレノシド、ステルビン、タンゲレチン、タンゲリチン、テクトクリシン、トロキセルチン、ウォゴニンおよびキサントラムニン。
【0077】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、組成物が、グリセロールモノアルキルエーテルの含有量(重量)に基づいて、約50ppm〜約50000ppm(当量〜0.005重量%〜5重量%)の一般式(II)の化合物を含む。従って、実質的に純粋な他のグリセロールモノアルキルエーテルを含む濃縮物に本実施態様を例として用いる場合、約50ppm〜約50000ppmの一般式(II)の酸化防止剤が添加されるであろう。1つの実施態様では、組成物が、グリセロールモノアルキルエーテルの含有量に基づいて、約100ppm〜約10000ppmの一般式(II)の化合物を含む。1つの実施態様では、組成物が、グリセロールモノアルキルエーテルの含有量に基づいて、約200ppm〜約5000ppmの一般式(II)の化合物を含む。1つの実施態様では、組成物が、グリセロールモノアルキルエーテルの含有量に基づいて、約500ppm〜約1000ppmの一般式(II)の化合物を含む。1つの実施態様では、組成物が、グリセロールモノアルキルエーテルの含有量に基づいて、約300ppm〜約900ppmの一般式(II)の化合物を含む。
【0078】
本願発明の実施態様による組成物を化粧料もしくは医薬製剤に使用する場合、当該組成物が添加され、かつ、一般式(I)の化合物と一般式(II)の化合物との間で、上記比率が維持されるであろう。必要に応じて、追加量の一般式(II)の化合物を、化粧料もしくは医薬組成物のさらなる酸化防止剤として、化粧料もしくは医薬製剤に添加することが望ましくあり得る。
【0079】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、組成物が、組成物の総重量に基づいて、0.01重量%〜5重量%の一般式(II)の化合物を含む濃縮物であって、濃縮物の残りが、1つ以上の一般式(I)の化合物である。1つの実施態様では、濃縮物はまた他の成分を含み得、かつ、濃縮物は、濃縮物中に存在する一般式(I)の化合物の総重量に基づいて、0.01重量%〜5重量%の一般式(II)の化合物をなお含むであろう。
【0080】
本願発明の組成物の1つの実施態様では、一般式(I)の化合物が、一般式(II)の化合物を添加する前に、少なくとも99.99%の純度で組成物に提供される。1つの実施態様では、一般式(I)の化合物が、一般式(II)の化合物を添加する前に、少なくとも99%の純度で組成物に提供される。1つの実施態様では、一般式(I)の化合物が、一般式(II)の化合物を添加する前に、少なくとも98%の純度で組成物に提供される。1つの実施態様では、一般式(I)の化合物が、一般式(II)の化合物を添加する前に、少なくとも94%の純度で組成物に提供される。一般式(I)の化合物の純度のこれらのレベルは、生成物が、本願発明の組成物を用いて作製した化粧料もしくは医薬組成物を使用する人の皮膚を通って吸収されるかもしれないいずれかの不純物をほとんど含まないことを確実にする。
【0081】
1つの実施態様では、本発明による組成物は、希釈標準溶液の形態で提供することができる。希釈標準溶液は、本明細書中で定義される一般式(I)による1つ以上の化合物および一般式(II)による1つ以上の化合物の両方を含む組成物を10重量%〜約60重量%含み得る。そのような希釈標準溶液を得るため、本発明による成分(a)および(b)を含む濃縮物は、適量の添加剤(例えば、水、アルコール(単数もしくは複数)もしくはポリオール(単数もしくは複数)、または水、アルコール(単数もしくは複数)および/もしくはポリオール(単数もしくは複数)の混合物など)に溶解、すなわち、希釈することができる。そのような希釈標準溶液では、希釈標準溶液が希釈により濃縮物から調製される点に変更がない場合、一般式(I)による1つ以上の化合物および一般式(II)による1つ以上の化合物の相対量は、本発明による濃縮物について上記で開示されたとおりであると考えられる。上記したように、追加量の一般式(II)による1つ以上の化合物が任意に追加され得る。
【0082】
本発明の実施態様による組成物は、例えば、グリセロールモノアルキルエーテルの使用から公知であるように、濃縮物の形態で、もしくは希釈標準溶液として、化粧料および/もしくは医薬製剤に添加することができる。他の実施態様では、本発明の実施態様による組成物は、グリセロールモノアルキルエーテルと共に提供することが意図され、かつ、過酸化物が望ましくない技術的製品(例えば、染料もしくは香料を含む化合物を含むか、または不飽和であるかもしくは酸化に敏感な製剤)に使用され得る。このような製剤もしくは技術的製品には、例えば、消臭剤、スキンケア製品、サンスクリーン、ベビー用製品、化粧料、アフターシェーブ、消毒剤、殺菌剤、洗浄用ローション、ヘアトリートメント組成物が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施態様では、本発明による組成物は、濃縮物として添加される場合でも希釈標準溶液として添加される場合でも、対応する化粧料、医薬もしくは工業的製剤が、本明細書中で定義した一般式(I)のグリセロールモノアルキルエーテルを、約0.05〜約5重量%含むように、または別の実施態様では、約0.1〜約1重量%含むように、または別の実施態様では、約0.2〜約0.6重量%含むように、または他の実施態様では、0.3重量%もしくは0.5%含むように、上記した例のような製剤に使用される。式(I)の化合物の純度が増加する(例えば、純度94%から純度98%まで)につれて、留出の前に、幾分より高いレベルの一般式(II)による酸化防止剤化合物が必要とされ得ることに注意する。この理由は、純度がより高い一般式(I)による化合物は、より高い安定化を必要としているように思われるからである。
【0084】
上記に例示した製品は、本願発明の組成物を、製品の他の成分と単純に混合することにより調製され得る。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
本願発明の酸化防止能を示すため、3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール、本願明細書中で定義する一般式(I)の化合物(セイケム社(SACHEM,Inc.)(テキサス州オースティン)により商品名SASKINE50(商標)で市販されている)のナリンゲニン(本願明細書中で定義する一般式(II)の化合物の1つである)との混合物を調製する。このように調製された組成物を、安定性試験に供する。この試験では、ホルムアルデヒドおよび過酸化物の形成が安定性の指標として定義され、ホルムアルデヒドおよび/もしくは過酸化物の量が多いほど、混合物の安定性がより低いことが示されると考えられる。第一の比較例として、本願明細書中で定義する一般式(I)の化合物である3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールのサンプルを、酸化防止剤を添加せずに試験する。第二の比較例として、本願明細書中で定義する一般式(I)の化合物である市販の3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールのサンプルであるが、米国特許第6,956,062号に開示および特許請求される酸化防止剤である合成α−トコフェロールで安定化されたサンプルを試験する。このサンプルは、シュルケ社(Shulke GmbH)から市販されている。全てのサンプルについての試験は、0、2、4、6、8、10および12ヶ月の期間にわたって室温(RT)で保存されたときの試験サンプルのホルムアルデヒドおよび過酸化物の含有量を決定する。0ヶ月のサンプルは、新たに調製した組成物である。
【0086】
以下の表は、混合物の成分を示し、図1および2中のグラフは、ホルムアルデヒドおよび過酸化物の形成のそれぞれについての試験の結果を示す。
【0087】
【表6】
【0088】
図1および2から明らかなように、本願発明によるナリンゲニン含有EHOPDは、酸化防止剤なし、および先行技術の合成α−トコフェロール酸化防止剤の両方と比較して、優れた酸化防止性能を提供する。本出願人は、ナリンゲニンは、本出願で開示されかつ特許請求されるフラボノイドの全クラスの代表であると考える。
【0089】
(実施例2)
さらなる一連の実施例は、本願明細書中で定義した一般式(I)の化合物であり、セイケム社(SACHEM,Inc.、テキサス州オースティン)からSASKINE50(商標)の商品名で市販されている3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールについて、酸化防止剤活性を提供する際の本願発明の有効性をさらに示す。本実施例では、セイケム社のSASKINE50(商標)は、本願発明の範囲内のグリセロールアルキルエーテルの安定性試験の基準として用いられる。本願発明に従って予め決定した、SASKINE50(商標)および多くの酸化防止化合物を含むブレンドを調製するが、各ブレンドは、725ppmの酸化防止剤化合物を、99.6%の純粋なSASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)中に含む。安定性試験の前に、ブレンドを、ガスクロマトグラフィ(GC)により分析する。分析結果に従って、サンプリングの間の試験条件を妨げないように、ブレンドを大気圧下および不活性ガス下で個別のサンプルボトルに入れる。試験条件は、50℃および1ヶ月である。当該1ヶ月間、調製したサンプルを、SASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)アッセイ(化合物の減少)および揮発性副生成物の形成について、2週間の間隔でガスクロマトグラフィにより再分析する。これらの試験条件は、室温で約1年の保存可能期間を想定すると考えられる。
【0090】
SASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)および揮発性の分解生成物の両方を、GCにより分析する。測定される分解生成物は、SASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)の前に流出するものである。GC分析のために、サンプルを、10%の濃度でイソプロピルアルコールに溶解させる。以下のGC条件を使用する:
カラム:
材料:溶融シリカWCOT
長さ:30m
内径:0.32mm
固定相:DB1701
フィルム厚み:1μm
ガス制御: キャリアガス:水素
補給ガス:ヘリウム
温度: 検出器:300℃
注入器:275℃
開始温度:115℃
ウォームアップ速度1:8℃/分
終了温度:210℃
ウォームアップ速度2:15℃/分
終了温度:275℃
検出:タイプ検出器:FID
【0091】
図3は、SASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)を本願発明による以下の化合物と共に50℃の高温で保存した際の損失を示すグラフである:ナリンゲニン、ナリンギン、ヘスペリチン、エリオジクチオール、ケルセチン、ジオスメチン、ラムネチン、ノリン水和物およびナリンギン水和物。図3中のグラフに示すように、酸化防止剤がSASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)と共に含まれない場合、試験期間の間に有意な損失が示されるが、本願発明による酸化防止剤化合物が添加される場合、2つを除く全ての酸化防止剤化合物ではほとんど損失がない。酸化防止剤化合物であるナリンギンおよびナリンギン水和物は、他の酸化防止剤化合物よりも作用が小さかったので、本願発明ではあまり好ましくない場合があり得ることに注意する。
【0092】
図4は、SASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)を、本願発明による同じ酸化防止剤化合物と共に、50℃の高温で、図3に示す試験と同様に保存した際に生成した揮発性分解生成物の増加を示すグラフである。低沸点化合物は、より低沸点を有する(すなわち、SASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)よりも前にGCカラムから流出する)検出可能な化合物の全ての和として報告されることに注意する。図4に示すように、酸化防止剤をSASKINE50(商標)(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)に加えない場合、2週間および4週間後の両方で、50℃にて有意な量の分解生成物が観察される。反対に、本願発明による酸化防止剤を使用する場合、有意により少ない量の分解生成物が見出される。本願発明による酸化防止剤化合物を添加する場合、2つを除く全ての酸化防止剤化合物についてほとんど分解生成物が形成されない。酸化防止剤化合物であるナリンギンおよびナリンギン水和物は、他の酸化防止剤化合物よりも作用が小さかったので、本願発明ではあまり好ましくない場合があり得ることに注意する。
【0093】
(実施例3)
さらなる一連の実施例は、本願明細書中で定義した一般式(I)の化合物(セイケム社、テキサス州オースティン)により商品名SASKINE80(商標)で販売されている)である3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオールに酸化防止剤活性を提供する際の本願発明の有効性をさらに示す。本実施例では、セイケム社のSASKINE80(商標)を、本願発明の範囲内の1つのグリセロールアルキルエーテル(すなわち、ナリンゲニン)の安定性試験の基礎として用いる。SASKINE80(商標)および本願発明によるこの酸化防止剤化合物を含む予め決定したブレンド物を調製し、当該ブレンドは、725ppmのナリンゲニンを、99.6%の純粋なSASKINE80(商標)(3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)中に含む。ブレンドを、安定性試験の前に、ガスクロマトグラフィ(GC)で分析する。分析結果に従い、ブレンドを、サンプリングの間に試験条件を妨げないように、大気圧および不活性ガス下で個別のサンプルボトルに入れる。試験条件は、50℃で2週間および4週間である。このとき、調製サンプルを、SASKINE80(商標)(3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)アッセイ(化合物の損失)および揮発性の副生成物の形成について、2週間の間隔でガスクロマトグラフィにより再分析した。これらの試験条件は、室温においてほぼ1年の保存可能期間を想定すると考えられる。
【0094】
SASKINE80(商標)(3−[(n−オクチル)オキシ]−1,2−プロパンジオール)および揮発性の分解生成物の両方を、実施例2について上記したように、GCで分析する。図5は、このブレンドの安定性試験の結果を示す。図5Aは、SASKINE80(商標)単独およびSASKINE80(商標)のナリンゲニンとのブレンドについての2週間および4週間にわたる50℃でのSASKINE80(商標)アッセイの減少を示す。図5Aに図示するように、酸化防止剤なしでは、SASKINE80(商標)アッセイの減少は約0.40%であるが、ナリンゲニンを用いた場合、SASKINE80(商標)についてのアッセイ損失は少ないかもしくはない。図5Bは、SASKINE80(商標)単独およびSASKINE80(商標)のナリンゲニンとのブレンドについて、低沸点化合物の50℃における経時的増加を示す。図5Bに図示するように、酸化防止剤を用いない場合、2週間および4週間後の両方において低沸点化合物の形成の顕著な増加が観察されるが、酸化防止剤が存在する場合、50℃において同じ期間にわたって、低沸点化合物の増加は少ないかもしくはない。
【0095】
(実施例4)
図1および2に示すように、実施例1の試験では、0時間でも、測定可能なゼロではない量の過酸化物およびホルムアルデヒドの両方がSASKINE50(商標)中に存在する。実施例1において、酸化防止剤は、SASKINE50(商標)の製造に続いて添加したが、SASKINE50(商標)の製造後すぐに酸化防止剤を添加することにより少量の過酸化物およびホルムアルデヒドの形成を避けることができたのか否かという疑問が生じた。従って、本実施例4については、SASKINE50(商標)のサンプルを、製造後すぐに酸化防止剤ナリンゲニンと組み合わせ、その時(0時間)および3ヶ月後に試験した。結果を図6に示す。図6Aに示すように、酸化防止剤を製造後直ちに添加する場合、過酸化物の形成は、室温で保存する場合、0時間および3ヶ月の両方において阻害される。図6Bに示すように、図2の0時間に示したのと同様に、同量のホルムアルデヒドが0時間で存在する。しかしながら、図6Bに示すように、室温で3ヶ月の時間においては、本実施例4ではホルムアルデヒド含有量は増加していない一方、図2に示す例では、ナリンゲニンをSASKINE50(商標)の製造に続いて添加した場合、SASKINE50(商標)およびナリンゲニンの同様の混合物ではホルムアルデヒドが増加した。従って、SASKINE50(商標)の製造時に酸化防止剤を添加することは著しく有益であることが示される。
【0096】
(実施例5)
発明の背景で議論したように、SASKINE50(商標)およびSASKINE80(商標)などのグリセリルエーテル化合物の目的は、特に化粧料および医薬製剤における保存料および抗菌剤である。SASKINE50(商標)およびSASKINE80(商標)を試験するため、SASKINE50(商標)単独、ナリンゲニン含有SASKINE50(商標)、SASKINE80(商標)単独、およびナリンゲニン含有SASKINE80(商標)、ならびに、比較のため、SENSIVA(登録商標)SC 50(3−[(2−エチルヘキシル)オキシ]−1,2−プロパンジオールおよび合成α−トコフェロールを含み、シュルケ・アンド・マイヤー ベネルクス B.V.社(Schuelke & Mayr Benelux B.V.)、オランダ国、HAハールレム2032)から市販されている)について、最小阻害濃度を定義する。最小阻害濃度(MIC)の決定は、以下に記載の標準的な手順に従って行う。
【0097】
MIC研究の目的は、微生物株の増殖をインビトロで阻害することを可能にするであろう試験物品の最小濃度を見出すことである。MICは、製品の静菌または静真菌効果を特徴付ける。
【0098】
MIC試験において、製品を、顧客により特定される、試験する予定の最大濃度から出発して少なくとも5倍希釈の範囲にわたって、理由2の等比数列に従って希釈する。希釈範囲の各管において、2倍濃縮培地に、試験する予定の菌株を含ませる。試験する菌株の密度は、細菌については106CFU/ML付近であり、酵母については105CFU/MLであり、カビについては104CFU/MLである。培地は、細菌についてはミューラー・ヒントン(Mueller Hinton)培地であり、酵母およびカビについてはサブロー(Sabouraud)培地である。接種した管のインキュベーションは、細菌については32.5℃±2.5℃で18〜24時間、酵母およびカビについては30℃±2.5℃で48時間である。微生物の培養に関する濁りを示す管が認められる。次いで、濁りのない管を、残存する微生物を数えるために移動させる。播種したプレートを、細菌および酵母およびカビのそれぞれについて既述した条件で3〜5日間インキュベートする。プレート上のコロニー数を、製品1グラムもしくは1ML当たりのCFU数(コロニー形成単位)を算出するのに用いる。MICは、微生物の濁りを示さない第一の管の濃度に対応する。CMBは、細菌について99.99%の減少(4Logの減少)が得られ、かつ、酵母およびカビについて99.90%の減少(3Logの減少)が得られる第一の管の濃度に対応する。
【0099】
結果を図7の表に示す。図7に示すように、無添加の材料およびSensiva(登録商標)の両方と比較して、エチルヘキシルグリセリルエーテル(SASKINE50(商標))に安定剤を添加することが微生物培養を抑制するのにより効果的である場合がいくつかある。図7に示すように、n−オクチルグリセリルエーテル(SASKINE80(商標))は、一層良い性能を示す。
【0100】
(実施例6)
本明細書中に示すように、本発明の組成物は、化粧料および医薬組成物に使用することが意図される。このような生成物の1つの重要な基準は、化粧料および医薬組成物を使用している人の皮膚に組成物を塗布した場合に、皮膚への刺激がないことである。本願発明の組成物を試験するため、非動物試験を行うが、これは、SkinEthicモデルであるOECD439として公知のヒト再構築表皮における組成物のインビトロでの皮膚刺激の研究である。この研究の目的は、インビトロでのヒト再構築表皮上でのインターロイキン1−α(IL1−α)濃度の測定と組み合わせた細胞傷害性試験により、製品が皮膚刺激を起こす能力を評価することである。純粋な生成物を表皮に42分塗布し、処理後に42時間インキュベートした後、細胞生存率を、ミトコンドリアの生細胞中でのコハク酸デヒドロゲナーゼ活性を測定することにより定義する。この酵素は、MTT(3(4,5−ジメチルチアゾール−2イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を、ホルマザンの青色結晶に転化する。分光光度計を用いて、結晶を溶解させた後の結果物を読み取る。測定された吸光度は、生存細胞の数に比例する。さらに、細胞生存率が50%を超える場合、炎症(IL1−α)仲介物質の放出を比色計により測定する。この検定を、ECVAMにより2007年4月27日に、およびOECD439により提案されたプロトコルに従って行う。細胞毒性:吸光度を、540nmで3回測定する。結果を、ネガティブコントロールに対する生存率として表す:
%生存率=サンプルの吸光度×100/ネガティブコントロールの吸光度
【0101】
IL1−α滴定:培地中のIL1−α濃度を、滴定キットの説明書を用いて評価し、pg/mlで表す。
【0102】
以下の場合、試験製品は、皮膚刺激性と考えられる:
・42分の処理および42時間のインキュベーション後の生存率が50%未満の場合、
・42分の処理および42時間のインキュベーション後の生存率が50%超であって、かつ、IL1−αの濃度が50pg/ml超である場合。
【0103】
以下の場合、試験製品は、皮膚刺激性ではないと考えられる:
・42分の処理および42時間のインキュベーション後の生存率が50%超であって、かつ、放出されたIL1−αの濃度が50pg/ml以下である場合。
【0104】
皮膚刺激試験の結果を、図8に示す。図8に示すように、皮膚刺激試験は、本願発明に従ってナリンゲニンをSASKINE50(商標)に添加することにより、本試験における分類が、カテゴリー1もしくは2の刺激物から非刺激物の分類へと変えられることを示す。これは、本願発明が、本明細書中に記載のように用いられかつ本プロトコルに従って試験された場合に予期せぬ効果を提供することを示す重要なファクターである。
【0105】
ナリンゲニンが柑橘系供給源(例えば、オレンジおよびグレープフルーツの皮)から単離されるという事実から得られる本願発明の利点は、その起源をたどることを容易にする。本願発明の実施態様による組成物は、1つ以上の以下の利益を提供し得る:毒性学的に許容される;局所的に塗布された場合、皮膚が容易に耐性になる;安定である;大部分は、および好ましくは完全に無臭である;安価に調製される;配合が容易であり、かつ最終製品に無害である。
【0106】
1つの実施態様では、本願発明は、1つ以上のグリセロールモノアルキルエーテル(一般式(I)の化合物)および1つ以上の一般式(II)の化合物を含む組成物を提供し、これらは実用条件下(例えば、室温で保存したとき)で長期にわたって保存に安定である。1つの実施態様では、組成物は、60ヶ月まで保存に安定であり、別の実施態様では、12〜36ヶ月の範囲の期間にわたって保存に安定である。本願発明による組成物は、分解から保護されるべきであり、特に、組成物が化粧品および/もしくは医薬産業において標準的な試験手段に従って試験される場合、高い過酸化物数の進行から保護されるべきである。
【0107】
まとめると、本発明は、1つ以上の以下の番号付けされた特徴を提供する。
【0108】
特徴1.以下を含む、組成物:
a.一般式(I)のグリセロールアルキルエーテル:
【0109】
【化12】
[一般式(I)において、Rは、C−C18アルキルもしくはアルケニル基であり、当該アルキルもしくはアルケニル基は、分岐もしくは非分岐であり、非置換であるか、または1つ以上のヒドロキシル、1つ以上のC−Cアルコキシ基、もしくは1つ以上のヒドロキシルおよび1つ以上のC−Cアルコキシ基の両方で置換され、かつ、当該C−C18アルキル基は、分岐もしくは非分岐であっても、非置換であってももしくは置換されていても、4個までの酸素原子で任意に中断され、または、Rは、非置換の、または1つ以上のヒドロキシル、1つ以上のC−Cアルコキシ基もしくは1つ以上のヒドロキシルおよび1つ以上のC−Cアルコキシ基の両方で置換されたC−C10芳香族炭化水素である;および
b.一般式(II)から選択される、1つ以上の化合物:
【0110】
【化13】
[一般式(II)において、R〜R10のそれぞれは、水素、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシル、アルコキシ、アルキルエーテル、アルキルエステルおよびグリコシドから独立して選択され、当該アルキル、当該アルコキシおよび当該アルキルエステルのアルキル部分は、1〜4個の炭素原子を含み、分岐もしくは非分岐であり、かつ、当該アルキルエステルのエステルは、1〜5個の炭素原子を含み、分岐もしくは非分岐である]。
【0111】
特徴2.一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基である、特徴1に記載の組成物。
【0112】
特徴3.一般式(I)において、Rが、2−エチルヘキシルである、特徴1に記載の組成物。
【0113】
特徴4.一般式(I)において、Rが、n−オクチルである、特徴1に記載の組成物。
【0114】
特徴5.一般式(I)において、Rが、2−オクチルである、特徴1に記載の組成物。
【0115】
特徴6.一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R〜R10のそれぞれが、水素、ヒドロキシル、アルキルヒドロキシルおよびアルコキシから独立して選択される、上記特徴1〜5のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0116】
特徴7.一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基であり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R〜R10のそれぞれが、水素、ヒドロキシル、C−CアルキルヒドロキシルおよびC−Cアルコキシから独立して選択される、上記特徴1〜5のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0117】
特徴8.一般式(II)から選択される1つ以上の化合物が、ヘスペレチン、ナリンゲニン、タキシフォリン、エピカテキン、イソクラネチン、エリオジクチオール、アロマデンドリン、アロマデドリン、アカセチン、イソクテラレイン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ジオスメチン、クリソエリオール、クリシンおよびガランギンのうちの1つもしくは2つ以上の組み合わせである、上記特徴1〜7のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0118】
特徴9.Rが、2−エチルヘキシルであるか、もしくは、Rが、n−オクチルであるか、もしくは、Rが、2−オクチルであるかのいずれかであり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物が、ヘスペレチン、ナリンゲニン、タキシフォリン、エピカテキン、イソクラネチン、エリオジクチオール、アロマデンドリン、アロマデドリン、アカセチン、イソクテラレイン、ルテオリン、ケンフェロール、ケルセチン、アピゲニン、ジオスメチン、クリソエリオール、クリシンおよびガランギンのうちの1つもしくは2つ以上の組み合わせである、特徴1に記載の組成物。
【0119】
特徴10.一般式(I)において、Rが、分岐もしくは非分岐C−C12アルキル基であり、かつ、一般式(II)から選択される1つ以上の化合物において、R、R、R、RおよびR10が、Hであり、RおよびRが、OHであり、RおよびRが、HもしくはOHであり、かつ、Rが、OHもしくはC−Cアルコキシである、特徴1に記載の組成物。
【0120】
特徴11.一般式(II)の化合物が、フラバノン、フラバノール、フラボン、ポリメトキシレート化フラバノン、ポリメトキシレート化フラバノール、ポリメトキシレート化フラボン、フラバノンのグリコシド、フラバノールのグリコシド、フラボンのグリコシド、もしくは上記の任意の2つ以上の混合物を含む、上記特徴1〜10のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0121】
特徴12.一般式(II)の化合物が、一般式(IIa)、(IIb)もしくは(IIc)を有する化合物を1つもしくは2つ以上の混合物として含む、上記特徴1〜10のいずれか1つ以上に記載の組成物:
【0122】
【化14】
[一般式(IIa)、(IIb)および(IIc)において、R〜R10のそれぞれは、一般式(II)の化合物について上記で定義したとおりである]。
【0123】
特徴13.組成物が、一般式(I)の化合物の含有量に基づいて、約50ppm〜約50000ppmの一般式(II)の化合物を含む、上記特徴1〜12のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0124】
特徴14.組成物が、組成物の総重量に基づいて0.005重量%〜5重量%の一般式(II)の化合物を含む濃縮物である、上記特徴1〜13のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0125】
特徴15.一般式(II)の化合物が添加される前に、一般式(I)の化合物が、少なくとも95%の純度で組成物に提供される、上記特徴1〜14のいずれか1つ以上に記載の組成物。
【0126】
特徴16.上記特徴1〜15のいずれかのいずれかに記載の組成物を含む化粧料もしくは医薬組成物。
【0127】
特徴17.化粧料もしくは医薬組成物が、一般式(I)の化合物の含有量に基づいて、約0.05重量%〜約0.5重量%の一般式(I)の化合物、および約50ppm〜約50000ppmの一般式(II)の化合物を含む、上記特徴1〜15のいずれかのいずれかに記載の組成物を含む化粧料もしくは医薬組成物。
【0128】
特徴18.
(a)60重量%以下の一般式(I)の化合物;および
(b)約0.05重量%〜約0.5重量%の一般式(II)の化合物
を含む、上記特徴のいずれかに記載の組成物。
【0129】
特徴19.水、エタノール、プロピレングリコールから選択される1つ以上の添加剤をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【0130】
本明細書に記載のプロセス工程および組成物は、上記に開示された化合物を含む化粧料もしくは医薬処方物を処方するための完全なシステムもしくはプロセスフロー(例えば、実務で用いられるであろうような)を形成しなくてもよいことを理解すべきである。本発明は、当該技術分野で現在用いられている合成有機物、処方物および配合技術および装置と組み合わせて実施することができ、限られた量の通常実用される材料、装置およびプロセス工程のみが、本願発明を理解するのに必要であるとして含まれる。
【0131】
本発明の原理を、ある特定の実施態様に関連して説明し、かつ、図示の目的で提供してきたが、それらの種々の改変が、本明細書を読めば当業者に明らかになるであろうことを理解すべきである。従って、本明細書に開示された本発明は、そのような改変を添付の特許請求の範囲内にあるとして包含することが意図されることを理解すべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8