特許第6896866号(P6896866)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896866
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】赤外線加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20210621BHJP
   B05C 9/14 20060101ALN20210621BHJP
【FI】
   H05B3/00 345
   !B05C9/14
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-537493(P2019-537493)
(86)(22)【出願日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2017030235
(87)【国際公開番号】WO2019038870
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野原 敏勝
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 高
(72)【発明者】
【氏名】堀江 茂斉
(72)【発明者】
【氏名】田村 真登
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−6438(JP,A)
【文献】 特開平6−111922(JP,A)
【文献】 特開2005−294243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
B05C 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象物に赤外線を照射して加熱する赤外線照射手段と、
前記赤外線照射手段を保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記加熱対象物の表面の温度を計測する非接触温度計測手段と、
前記保持部材に取り付けられ、各々異なる位置から前記加熱対象物の表面へレーザ光を照射する少なくとも1対のレーザ光照射手段と、
各々の前記レーザ光照射手段を支持する支持板と、
を有し、
少なくとも1対の前記レーザ光照射手段が、前記非接触温度計測手段を中心にして、前記支持板を介して、前記保持部材の両端に取り付けられ、
少なくとも1対の前記レーザ光照射手段は、前記加熱対象物の表面と前記赤外線照射手段との距離が所定距離のとき、前記加熱対象物の表面の一点で互いの前記レーザ光が一致するように配置されていることを特徴とする赤外線加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線加熱装置において
前記支持板の支持角度が変更されることで、前記加熱対象物の表面と前記赤外線照射手段との前記所定距離が変更されることを特徴とする赤外線加熱装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の赤外線加熱装置において、
前記非接触温度計測手段は、当該非接触温度計測手段の計測方向が前記赤外線の主照射方向と平行になるように前記保持部材に取り付けられ、
前記レーザ光照射手段は、前記距離が前記所定距離のとき、前記加熱対象物の表面と前記計測方向が交わる一点で全ての前記レーザ光が一致するように配置されていることを特徴とする赤外線加熱装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の赤外線加熱装置において、
複数対の前記レーザ光照射手段を有し、
複数対の前記レーザ光照射手段は、前記距離が前記所定距離のとき、対毎に異なる前記加熱対象物の表面の一点で、該当する対の前記レーザ光が一致するように配置されていることを特徴とする赤外線加熱装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の赤外線加熱装置において、
前記赤外線照射手段は、赤外線を放出する赤外線ランプと、前記赤外線ランプからの前記赤外線を反射するリフレクタからなり、
少なくとも1対の前記レーザ光照射手段を前記リフレクタに取り付けることを特徴とする赤外線加熱装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の赤外線加熱装置において、
前記保持部材がアームまたはリンク機構によって移動可能に支持され、
前記赤外線照射手段の高さ位置が前記アームまたはリンク機構によって調整されることで、前記加熱対象物の表面と前記赤外線照射手段との距離が調整され、前記加熱対象物の表面の一点で互いの前記レーザ光が一致されることを特徴とする赤外線加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線照射による加熱により乾燥や硬化を促進する赤外線加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱対象物の温度を非接触型温度センサ(放射温度計)で計測して、赤外線照射式ヒ−タを制御する赤外線加熱装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−178964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
航空機の製造及び運用では、機体各所の部分的な補修塗装やアンテナ部品の交換等によるシーラント施工が必要となる。施工では、流動状態の塗料及びシーラントを適用後、固体化するために乾燥及び硬化が必要であり、自然乾燥では長時間を要す。塗装及びシーラントの硬化及び乾燥時間の短縮手法として、熱風や赤外線を用いた方法が知られている。乾燥時間は加熱温度が高いほど短縮するが、航空機では加熱対象物の性能を保証するために加熱温度の上限が決められている。従って、乾燥時間を最小にするためには、加熱上限温度を超えない範囲で可能な限り高温に保持する高精度な温度制御が必要となる。
【0005】
高精度な温度制御を行う手法として、加熱対象物を接触式温度計で直接計測することが一般的であるが、塗装面やシーラント硬化物には外観要求があり、接触痕が残る上記手法は適用不可である。そこで、非接触で温度計測する手法として、放射温度計の適用が考えられる。しかしながら、赤外線加熱では、赤外線ランプの波長と放射温度計の計測波長が近く、赤外線ランプの出力が高いほど誤差が大きくなる傾向がある等の問題がある。このような問題点を図10及び図11A図11Cを参照して説明する。
【0006】
放射温度計を用いた従来の赤外線加熱装置は、例えば、図10に示すように、赤外線ランプ31が各々内側に配置された2組のリフレクタ32と、2組の赤外線ランプ31及びリフレクタ32同士の間に設けられた放射温度計33とを有している。この放射温度計33は、加熱対象物Tの最高到達温度を計測するため、2組の赤外線ランプ31及びリフレクタ32からの赤外線IRが重なる領域R1を望む位置に配置されている。
【0007】
図10に示す構成において、赤外線ランプ31と加熱対象物Tとの距離DIが遠いと、加熱対象物Tが温まり難く、赤外線ランプ31の出力が高くなるため、放射温度計33の誤差が大きくなり、また、定常偏差も発生する(図11A参照)。一方、距離DIが近すぎると、加熱対象物Tが温まり易く、温度制御が過敏に反応するハンチングが生じる(図11B参照)。
【0008】
従って、放射温度計を用いた赤外線加熱装置において、図11Cに示すように、高精度かつ安定した温度制御を行うためには、加熱対象物に対する赤外線ランプ及び放射温度計の相対的な位置を適切に設定する必要がある。
【0009】
特に、航空機の場合、機体上部の塗装補修やシーラント施工は高所作業となるため、赤外線加熱装置は、機体に直接設置でき、位置合わせが容易に実施できることが望ましい。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、加熱対象物に対する赤外線ランプ及び放射温度計の相対的な位置を適切に設定すると共に、位置合わせが容易な赤外線加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する第1の発明に係る赤外線加熱装置は、
加熱対象物に赤外線を照射して加熱する赤外線照射手段と、
前記赤外線照射手段を保持する保持部材と、
前記保持部材に取り付けられ、前記加熱対象物の表面の温度を計測する非接触温度計測手段と、
前記保持部材に取り付けられ、各々異なる位置から前記加熱対象物の表面へレーザ光を照射する少なくとも1対のレーザ光照射手段と、
各々の前記レーザ光照射手段を支持する支持板と、
を有し、
少なくとも1対の前記レーザ光照射手段が、前記非接触温度計測手段を中心にして、前記支持板を介して、前記保持部材の両端に取り付けられ、
少なくとも1対の前記レーザ光照射手段は、前記加熱対象物の表面と前記赤外線照射手段との距離が所定距離のとき、前記加熱対象物の表面の一点で互いの前記レーザ光が一致するように配置されている
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第2の発明に係る赤外線加熱装置は、
上記第1の発明に記載の赤外線加熱装置において
前記支持板の支持角度が変更されることで、前記加熱対象物の表面と前記赤外線照射手段との前記所定距離が変更される
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第3の発明に係る赤外線加熱装置は、
上記第1又は第2の発明に記載の赤外線加熱装置において、
前記非接触温度計測手段は、当該非接触温度計測手段の計測方向が前記赤外線の主照射方向と平行になるように前記保持部材に取り付けられ、
前記レーザ光照射手段は、前記距離が前記所定距離のとき、前記加熱対象物の表面と前記計測方向が交わる一点で全ての前記レーザ光が一致するように配置されている
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第4の発明に係る赤外線加熱装置は、
上記第1又は第2の発明に記載の赤外線加熱装置において、
複数対の前記レーザ光照射手段を有し、
複数対の前記レーザ光照射手段は、前記距離が前記所定距離のとき、対毎に異なる前記加熱対象物の表面の一点で、該当する対の前記レーザ光が一致するように配置されている
ことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第5の発明に係る赤外線加熱装置は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の赤外線加熱装置において、
前記赤外線照射手段は、赤外線を放出する赤外線ランプと、前記赤外線ランプからの前記赤外線を反射するリフレクタからなり、
少なくとも1対の前記レーザ光照射手段を前記リフレクタに取り付ける
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、対となるレーザ光照射手段を用いて、加熱対象物に対する赤外線照射手段及び非接触温度計測手段の相対的な位置を適切に設定できると共に、位置合わせが容易となる。このため、高精度かつ安定した温度制御を行うことができ、その結果、赤外線加熱による乾燥や硬化の作業時間の低減が可能となり、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る赤外線加熱装置の実施形態の一例(実施例1)を示す斜視図である。
図2A図1に示した赤外線加熱装置の上面図である。
図2B図2Aに示した赤外線加熱装置のA−A線矢視図である。
図2C図2Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。
図3A】適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図3B】不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図4A】本発明に係る赤外線加熱装置の実施形態の他の一例(実施例2)を示す上面図である。
図4B図4Aに示した赤外線加熱装置のB−B線矢視図である。
図4C図4Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。
図5A】適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図5B】不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図6A】本発明に係る赤外線加熱装置の実施形態の他の一例(実施例3)を示す上面図である。
図6B図6Aに示した赤外線加熱装置のC−C線矢視図である。
図6C図6Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。
図7A】適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図7B】不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図8A】本発明に係る赤外線加熱装置の実施形態の他の一例(実施例4)を示す上面図である。
図8B図8Aに示した赤外線加熱装置のD−D線矢視図である。
図8C図8Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。
図9A】適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図9B】不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
図10】放射温度計を用いた従来の赤外線加熱装置を説明する概略図である。
図11A】赤外線ランプと加熱対象物との距離が遠い場合の温度制御特性を説明するグラフである。
図11B】赤外線ランプと加熱対象物との距離が近すぎる場合の温度制御特性を説明するグラフである。
図11C】赤外線ランプと加熱対象物との距離が適切な場合の温度制御特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る赤外線加熱装置の実施形態を説明する。なお、ここでは、赤外線加熱装置の赤外線ランプとして、平行に配置した2本の直管のランプを例示するが、本発明において、赤外線ランプの配置、数、形状は、これに限ることはなく、どのような配置、数、形状でも適用可能である。また、赤外線ランプの配置、数、形状に応じて、リフレクタも適宜変更可能である。
【0019】
[実施例1]
図1は、本実施例の赤外線加熱装置を示す斜視図であり、図2Aは、図1に示した赤外線加熱装置の上面図であり、図2Bは、図2Aに示した赤外線加熱装置のA−A線矢視図であり、図2Cは、図2Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。また、図3Aは、適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図であり、図3Bは、不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
【0020】
本実施例の赤外線加熱装置は、図1及び図2A図2Cに示すように、平行に配置した2本の直管形の赤外線ランプ11(赤外線照射手段)と、赤外線ランプ11が各々内側に配置された2つのリフレクタ12(赤外線照射手段)と、2つのリフレクタ12同士の間において、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の長手方向LDの中央に設けられ、2つのリフレクタ12を保持する保持部材13と、保持部材13の中央に設けられた放射温度計14(非接触温度計測手段)とを有している。
【0021】
赤外線ランプ11は、赤外線を放出して、加熱対象物Tに赤外線を照射し、リフレクタ12は、赤外線ランプ11からの赤外線を反射して、加熱対象物Tに赤外線を照射しており、これらの赤外線により加熱対象物Tを加熱している。本実施例では、リフレクタ12が赤外線ランプ11を保持し、保持部材13は赤外線ランプを間接的に保持する構成であるが、リフレクタ12が無い場合には、保持部材13が赤外線ランプ11を直接保持しても良い。
【0022】
赤外線の照射方向は、光源が単独の点光源や線光源であれば、一意には定まらないが、リフレクタなどを有する場合には、主となる照射方向、例えば、照射範囲の中心となる方向が定まるので、以降、その方向を主照射方向と呼ぶ。
【0023】
放射温度計14は、加熱対象物Tの表面の最高到達温度を計測するため、2組の赤外線ランプ11及びリフレクタ12からの赤外線により、加熱対象物Tの表面上で最も温度が高くなる位置となる点P0を望む位置に配置されている。例えば、本実施例では、2組の赤外線ランプ11及びリフレクタ12からの赤外線が重なる領域の点P0を望む位置に配置されている。放射温度計14が計測する方向を計測方向20とすると、計測方向20上に点P0があり、この計測方向20は、放射温度計14から加熱対象物Tの表面への垂線でもあり、また、上記の主照射方向と平行になっている。
【0024】
なお、図示は省略しているが、保持部材13は、例えば、加熱対象物Tの表面に設置されたアームやリンク機構等に移動可能に支持されており、本実施例の赤外線加熱装置は、加熱対象物T上の任意の位置へ移動可能となっている。
【0025】
このように、ここまでの構成は、図10に示した従来の赤外線加熱装置と略同じである。しかしながら、本実施例の赤外線加熱装置は、加熱対象物Tに対する赤外線ランプ11及び放射温度計14の相対的な位置を適切に設定するため、1対のレーザポインタ15a、15b(レーザ光照射手段)を有している。
【0026】
レーザポインタ15a、15bは、放射温度計14を中心にして、保持部材13における、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の長手方向LDに平行な方向の両端に、各々、支持板16a、16bを介して取り付けられ、上記の計測方向20に対して線対称となるように配置されている。また、支持板16a、16bは、各々、レーザポインタ15a、15bの支持角度を調整可能に支持している。このような構成により、レーザポインタ15a、15bは、各々異なる位置から加熱対象物Tの表面へレーザ光21a、21bを照射している。
【0027】
そして、加熱対象物Tに対する赤外線ランプ11の距離DIが適切な所定距離(適切な位置関係となる距離)のときに、レーザポインタ15aからのレーザ光21aとレーザポインタ15bからのレーザ光21bが加熱対象物Tの表面の一点で一致する(交わる)ように、レーザポインタ15a、15bの支持角度を調整して、各々、支持板16a、16bで支持している。作業内容に応じて、適切な所定距離を変更する必要がある場合には、レーザポインタ15a、15bの支持角度を調整することで、適切な所定距離を変更すれば良い。
【0028】
このように、本実施例においては、レーザ光21aとレーザ光21bを加熱対象物Tの表面の一点で一致させているが、ここでは、点P0の一点で一致させており、この点P0の直上には放射温度計14が配置されている。つまり、放射温度計14の直下である、加熱対象物Tの表面の点P0の一点において、距離DIが適切な所定距離となるようにしている。
【0029】
従って、保持部材13を支持するアームやリンク機構等により、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の高さ位置を調整したとき、距離DIが適切な所定距離のときは、図3Aに示すように、加熱対象物Tの表面でレーザ光21aとレーザ光21bが一点(点P0)で一致する。一方、距離DIが適切な所定距離でないとき(距離が近い又は遠いとき)は、図3Bに示すように、レーザ光21aとレーザ光21bは一致しない。
【0030】
つまり、加熱対象物Tの表面でレーザ光21aとレーザ光21bが一点で一致するように、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の高さ位置を調整すれば、距離を計測する計測器を用いて距離DIを実測しなくても、距離DIを適切な所定距離に簡単に調整することができる。このようにして、距離DIを適切な所定距離に設定できるので、加熱時の赤外線ランプ11の出力を適正な出力に抑えて、放射温度計14の誤差を少なくすると共に、高精度に温度制御することができる。
【0031】
その結果、本実施例の赤外線加熱装置を航空機の塗装補修やシーラント施工に用いる場合には、塗装乾燥やシーラント硬化の待ち時間を低減することができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0032】
[実施例2]
図4Aは、本実施例の赤外線加熱装置を示す上面図であり、図4Bは、図4Aに示した赤外線加熱装置のB−B線矢視図であり、図4Cは、図4Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。また、図5Aは、適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図であり、図5Bは、不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
【0033】
本実施例の赤外線加熱装置は、基本的には、上記の実施例1で説明した赤外線加熱装置と同等の構成を有している。従って、本実施例において、実施例1で説明した赤外線加熱装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0034】
本実施例の赤外線加熱装置は、加熱対象物Tに対する赤外線ランプ11及び放射温度計14の相対的な位置を適切に設定するため、1対のレーザポインタ15a、15bに加えて、もう1対のレーザポインタ15c、15d(レーザ光照射手段)を有している。
【0035】
1対のレーザポインタ15a、15bについては、実施例1と同様に取り付けられている。もう1対のレーザポインタ15c、15dは、放射温度計14を中心にして、2つのリフレクタ12の幅方向WDの両端に、各々、支持板16c、16dを介して取り付けられ、上記の計測方向20に対して線対称となるように配置されている。また、支持板16c、16dは、各々、レーザポインタ15c、15dの支持角度を調整可能に支持している。このような構成により、レーザポインタ15a、15bに加えて、レーザポインタ15c、15dも、各々異なる位置から加熱対象物Tの表面へレーザ光21c、21dを照射している。なお、レーザポインタ15c、15dは、同等の位置であれば、例えば、保持部材13の大きさや形状を変更する等して、保持部材13の方へ取り付けるようにしても良い。
【0036】
そして、距離DIが適切な所定距離のときに、レーザ光21aとレーザ光21bが加熱対象物Tの表面の一点で一致することに加えて、もう1対のレーザポインタ15c、15dについても、レーザポインタ15cからのレーザ光21cとレーザポインタ15dからのレーザ光21dが上記の一点で一致する(交わる)ように、つまり、レーザ光21a、21b、21c、21dが一点で一致するように、レーザポインタ15c、15dの支持角度を調整して、各々、支持板16c、16dで支持している。作業内容に応じて、適切な所定距離を変更する必要がある場合には、レーザポインタ15a、15bと共に、レーザポインタ15c、15dの支持角度を調整することで、適切な所定距離を変更すれば良い。
【0037】
このように、本実施例においては、レーザ光21a、21b、21c、21dを加熱対象物Tの表面の一点で一致させているが、ここでは、点P0の一点で一致させており、この点P0の直上には放射温度計14が配置されている。つまり、放射温度計14の直下である、加熱対象物Tの表面の点P0の一点において、距離DIが適切な所定距離となるようにしている。
【0038】
従って、保持部材13を支持するアームやリンク機構等により、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の高さ位置を調整したとき、距離DIが適切な所定距離であるときは、図5Aに示すように、加熱対象物Tの表面でレーザ光21a、21b、21c、21dが一点(点P0)で一致する。一方、距離DIが適切な所定距離でないとき(距離が近い又は遠いとき)は、図5Bに示すように、レーザ光21a、21b、21c、21dは一致しない。
【0039】
つまり、加熱対象物Tの表面でレーザ光21a、21b、21c、21dが一点で一致するように、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の高さ位置を調整すれば、距離を計測する計測器を用いて距離DIを実測しなくても、距離DIを適切な所定距離に簡単に調整することができる。このようにして、距離DIを適切な所定距離に設定できるので、加熱時の赤外線ランプ11の出力を適正な出力に抑えて、放射温度計14の誤差を少なくすると共に、高精度に温度制御することができる。その結果、実施例1と同様に、塗装乾燥やシーラント硬化の作業効率の向上を図ることができる。
【0040】
[実施例3]
図6Aは、本実施例の赤外線加熱装置を示す上面図であり、図6Bは、図6Aに示した赤外線加熱装置のC−C線矢視図であり、図6Cは、図6Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。また、図7Aは、適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図であり、図7Bは、不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
【0041】
本実施例の赤外線加熱装置も、基本的には、上記の実施例1、2で説明した赤外線加熱装置と同等の構成を有している。従って、本実施例において、実施例1、2で説明した赤外線加熱装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
本実施例の赤外線加熱装置は、加熱対象物Tに対する赤外線ランプ11及び放射温度計14の相対的な位置を適切に設定するため、2対のレーザポインタ15e、15f、15g、15h(レーザ光照射手段)を有している。
【0043】
1対のレーザポインタ15e、15fは、保持部材13における、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の長手方向LDに平行な方向の両端であって、一方のリフレクタ12側寄りの方に、各々、支持板16e、16fを介して取り付けられ、上記の計測方向20を通る面に対して面対称となるように配置されている。もう1対のレーザポインタ15g、15hは、保持部材13における、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の長手方向LDに平行な方向の両端であって、他方のリフレクタ12側寄りの方に、各々、支持板16g、16hを介して取り付けられ、上記の計測方向20を通る面に対して面対称となるように配置されている。また、支持板16e、16f、16g、16hは、各々、レーザポインタ15e、15f、15g、15hの支持角度を調整可能に支持している。このような構成により、レーザポインタ15e、15f、15g、15hは、各々異なる位置から加熱対象物Tの表面へレーザ光21e、21f、21g、21hを照射している。
【0044】
そして、距離DIが適切な所定距離のときに、レーザポインタ15eからのレーザ光21eとレーザポインタ15fからのレーザ光21fが加熱対象物Tの表面の点P1の一点で一致する(交わる)ように、レーザポインタ15e、15fの支持角度を調整して、各々、支持板16e、16fで支持している。同様に、距離DIが適切な所定距離のときに、レーザポインタ15gからのレーザ光21gとレーザポインタ15hからのレーザ光21hが加熱対象物Tの表面の点P2の一点で一致する(交わる)ように、レーザポインタ15g、15hの支持角度を調整して、各々、支持板16g、16hで支持している。作業内容に応じて、適切な所定距離を変更する必要がある場合には、レーザポインタ15e、15f、15g、15hの支持角度を調整することで、適切な所定距離を変更すれば良い。
【0045】
このように、本実施例においては、レーザ光21eとレーザ光21fを加熱対象物Tの表面の点P1の一点で一致させており、レーザ光21gとレーザ光21hを加熱対象物Tの表面の他の点P2の一点で一致させている。つまり、対毎に異なる点P1、P2の二点において、各々、距離DIが適切な所定距離となるようにしている。
【0046】
従って、保持部材13を支持するアームやリンク機構等により、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の位置を調整したとき、距離DIが適切な所定距離であるときは、図7Aに示すように、加熱対象物Tの表面でレーザ光21eとレーザ光21fが点P1の一点で一致し、レーザ光21gとレーザ光21hが点P2の一点で一致する。一方、距離DIが適切な所定距離でないとき(距離が近い又は遠いとき)は、図7Bに示すように、加熱対象物Tの表面でレーザ光21eとレーザ光21fが一致せず、レーザ光21gとレーザ光21hが一致しない。
【0047】
つまり、加熱対象物Tの表面において、レーザ光21eとレーザ光21fが点P1の一点で一致すると共に、レーザ光21gとレーザ光21hが点P2の一点で一致するように、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の位置を調整すれば、距離を計測する計測器を用いて距離DIを実測しなくても、距離DIを適切な所定距離に簡単に調整することができる。
【0048】
加えて、加熱対象物Tの表面の点P1、P2の二点において、距離DIを適切な所定距離としているので、加熱対象物Tの表面の点P1及び点P2を通る一軸に対し、赤外線ランプ11及びリフレクタ12が平行に配置されることになる。つまり、加熱対象物Tの表面に対し、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の所定の軸方向(例えば、長手方向LD、幅方向WDなど)を平行に配置することができる。
【0049】
このようにして、距離DIを適切な所定距離に設定できると共に、加熱対象物Tの表面に対し、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の所定の軸方向を平行に配置するので、加熱時の赤外線ランプ11の出力を適正な出力に抑えて、放射温度計14の誤差を少なくすると共に、高精度に温度制御することができる。その結果、実施例1、2と同様に、塗装乾燥やシーラント硬化の作業効率の向上を図ることができる。
【0050】
[実施例4]
図8Aは、本実施例の赤外線加熱装置を示す上面図であり、図8Bは、図8Aに示した赤外線加熱装置のD−D線矢視図であり、図8Cは、図8Aに示した赤外線加熱装置の側面図である。また、図9Aは、適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図であり、図9Bは、不適切な位置の場合のレーザポインタからのレーザ光を示す図である。
【0051】
本実施例の赤外線加熱装置も、基本的には、上記の実施例1〜3で説明した赤外線加熱装置と同等の構成を有している。従って、本実施例において、実施例1〜3で説明した赤外線加熱装置と同等の構成には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0052】
本実施例の赤外線加熱装置は、加熱対象物Tに対する赤外線ランプ11及び放射温度計14の相対的な位置を適切に設定するため、2対のレーザポインタ15e、15f、15g、15hに加えて、もう1対のレーザポインタ15i、15j(レーザ光照射手段)を有している。
【0053】
2対のレーザポインタ15e、15f、15g、15hについては、実施例3と同様に取り付けられている。もう1対のレーザポインタ15i、15jは、2つのリフレクタ12の一方の端部であって、2つのリフレクタ12の内側に、各々、支持板16i、16jを介して取り付けられ、上記の計測方向20を通る面に対して面対称となるように配置されている。また、支持板16i、16jは、各々、レーザポインタ15i、15jの支持角度を調整可能に支持している。このような構成により、レーザポインタ15e、15f、15g、15hに加えて、レーザポインタ15i、15jも、各々異なる位置から加熱対象物Tの表面へレーザ光21i、21jを照射している。なお、レーザポインタ15i、15jは、同等の位置であれば、例えば、保持部材13の大きさや形状を変更する等して、保持部材13の方へ取り付けるようにしても良い。
【0054】
そして、距離DIが適切な所定距離のときに、レーザ光21eとレーザ光21fが加熱対象物Tの表面の点P1の一点で一致し、レーザ光21gとレーザ光21hが加熱対象物Tの表面の点P2の一点で一致することに加えて、もう1対のレーザポインタ15i、15jについても、レーザポインタ15iからのレーザ光21iとレーザポインタ15jからのレーザ光21jが加熱対象物Tの表面の点P3の一点で一致する(交わる)ように、レーザポインタ15i、15jの支持角度を調整して、各々、支持板16i、16jで支持している。作業内容に応じて、適切な所定距離を変更する必要がある場合には、レーザポインタ15e、15f、15g、15h、15i、15jの支持角度を調整することで、適切な所定距離を変更すれば良い。
【0055】
このように、本実施例においては、レーザ光21eとレーザ光21fを加熱対象物Tの表面の点P1の一点で一致させており、レーザ光21gとレーザ光21hを加熱対象物Tの表面の他の点P2の一点で一致させており、レーザ光21iとレーザ光21jを加熱対象物Tの表面の他の点P3の一点で一致させている。つまり、対毎に異なる点P1、P2、P3の三点において、各々、距離DIが適切な所定距離となるようにしている。
【0056】
従って、保持部材13を支持するアームやリンク機構等により、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の位置を調整したとき、距離DIが適切な所定距離であるときは、図9Aに示すように、加熱対象物Tの表面でレーザ光21eとレーザ光21fが点P1の一点で一致し、レーザ光21gとレーザ光21hが点P2の一点で一致し、レーザ光21iとレーザ光21jが点P3の一点で一致する。一方、距離DIが適切な所定距離でないとき(距離が近い又は遠いとき)は、図9Bに示すように、加熱対象物Tの表面でレーザ光21eとレーザ光21fが一致せず、レーザ光21gとレーザ光21hが一致せず、レーザ光21gとレーザ光21hが一致しない。
【0057】
つまり、加熱対象物Tの表面において、レーザ光21eとレーザ光21fが点P1の一点で一致し、レーザ光21gとレーザ光21hが点P2の一点で一致すると共に、レーザ光21iとレーザ光21jが点P3の一点で一致するように、赤外線ランプ11及びリフレクタ12の位置を調整すれば、距離を計測する計測器を用いて距離DIを実測しなくても、距離DIを適切な所定距離に簡単に調整することができる。
【0058】
加えて、加熱対象物Tの表面の点P1、P2、P3の三点において、距離DIを適切な所定距離としているので、加熱対象物Tの表面の点P1、点P2及び点P3で形成する平面に対し、赤外線ランプ11及びリフレクタ12が平行に配置されることになる。つまり、加熱対象物Tの表面に対し、赤外線ランプ11及びリフレクタ12を平行に(上記の主照射方向を垂直に)配置することができる。
【0059】
このようにして、距離DIを適切な所定距離に設定できると共に、加熱対象物Tの表面上の平面に対し、赤外線ランプ11及びリフレクタ12を平行に配置するので、加熱時の赤外線ランプ11の出力を適正な出力に抑えて、放射温度計14の誤差を少なくすると共に、高精度に温度制御することができる。その結果、実施例1〜3と同様に、塗装乾燥やシーラント硬化の作業効率の向上を図ることができる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施例1、2の構成に実施例3、4の構成を組み合わせた構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、特に、航空機の塗装乾燥やシーラント硬化に好適である。
【符号の説明】
【0062】
11 赤外線ランプ
12 リフレクタ
13 保持部材
14 放射温度計
15a〜15j レーザポインタ
16a〜16j 支持板
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C