(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896883
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】車両用アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20210621BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20210621BHJP
H01Q 15/14 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q1/22 B
H01Q15/14 Z
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-554513(P2019-554513)
(86)(22)【出願日】2018年4月26日
(65)【公表番号】特表2020-513181(P2020-513181A)
(43)【公表日】2020年4月30日
(86)【国際出願番号】KR2018004859
(87)【国際公開番号】WO2018199651
(87)【国際公開日】20181101
【審査請求日】2019年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0055432
(32)【優先日】2017年4月28日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0046168
(32)【優先日】2018年4月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509023012
【氏名又は名称】エル エス エムトロン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LS Mtron Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スン−ホ
【審査官】
鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−114816(JP,A)
【文献】
特開2005−175557(JP,A)
【文献】
特開平11−289218(JP,A)
【文献】
特開2015−159354(JP,A)
【文献】
特開2009−135741(JP,A)
【文献】
特開2011−015203(JP,A)
【文献】
特開2000−353914(JP,A)
【文献】
米国特許第06219004(US,B1)
【文献】
米国特許第4672387(US,A)
【文献】
特開昭63−131602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00− 3/46
H01Q 13/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用アンテナ装置であって、
一定の方向へ電波を放射する指向性アンテナと、
前記指向性アンテナの垂直上空に設けられ、前記指向性アンテナから上方へ放射される放射電波を側方へ反射して全方位的に拡散させる電波拡散構造体と、を含み、
前記電波拡散構造体は、底面が上方に向けて頂点が前記指向性アンテナに向ける逆円錐形状を有し、
前記電波拡散構造体の側面は、垂直断面視で一定の曲率半径Rを有して内側へ湾曲され、
前記曲率半径Rの大きさは、前記放射電波の波長の大きさがλであるとき、下記の数式1を満すことを特徴とする車両用アンテナ装置。
[数1]
πλ<R<20λ
【請求項2】
前記指向性アンテナは、複数の単位アンテナ素子が上方に向けて配列されて上方指向性を有するアレイアンテナであることを特徴とする請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項3】
前記電波拡散構造体は、垂直断面視で内側へ湾曲された側面を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項4】
前記電波拡散構造体の頂点と前記指向性アンテナとの垂直方向距離hの大きさは、前記放射電波の波長の大きさがλであるとき、下記の数式2を満たすことを特徴とする請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
[数2]
0<h≦2λ
【請求項5】
前記装置は、
前記指向性アンテナの上部空間を覆い、内部面に前記電波拡散構造体が設けられるドーム構造体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項6】
前記装置が、前記指向性アンテナの下部面に結合して前記指向性アンテナを支持するベースプレートをさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項7】
前記ベースプレートが、前記ドーム構造体の下縁部と結合して前記ドーム構造体を支持することを特徴とする請求項6に記載の車両用アンテナ装置。
【請求項8】
前記ベースプレートが、車両のルーフ外装パネルと結合する結合部を含むことを特徴とする請求項6に記載の車両用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナ装置に関し、より詳しくは、5G移動通信に適用可能な無指向性車両用アンテナ装置に関する。
【0002】
本出願は、2017年4月28日出願の韓国特許出願第10−2017−0055432号及び2018年4月20日出願の韓国特許出願第10−2018−0046168号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
通常、車両用アンテナとは、車両で使用される無線通信器機の通信のために車両の内・外部に装着される多様な種類のアンテナを指す。最近、既存の移動通信インフラのトラフィックが限界に達することによって、5G(5th generation mobile communications)技術が提案されており、このような5G移動通信に適用できる車両用アンテナ技術に対する関心と研究が急増している。
【0004】
しかし、韓国公開特許公報第10−2012−0107664号に開示されたように、所謂ヘリカルアンテナ(helical antenna)を使う既存の技術は、送受信面積が狭小で供給電力に対する放射電波電力の割合である放射効率が劣り、特に、28GHz以上の超高周波帯域信号を送受信する5G移動通信に適用しにくいという問題がある。
【0005】
また、既存の指向性アンテナ(array antenna)は、高周波帯域信号の送受信及び所定範囲のビームトラッキング(beam tracking)が可能ではあるが、基本的に高指向性を有することから車両用アンテナに要求される無指向性(omnidirectional)を確保できないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、5G移動通信に適用可能であり、車両用アンテナに要求される無指向性を有しながらもアンテナ構造を小型化及び単純化する車両用アンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例による車両用アンテナ装置は、一定の方向へ電波を放射する指向性アンテナと、前記指向性アンテナの垂直上空に設けられ、前記指向性アンテナから上方へ放射される放射電波を側方へ反射して全方位的に拡散させる電波拡散構造体と、を含む。
【0008】
一実施例において、前記指向性アンテナは、複数の単位アンテナ素子が上方に向けて配列されて上方指向性を有するアレイアンテナであり得る。
【0009】
一実施例において、前記電波拡散構造体は、底面が上方に向けて頂点が前記指向性アンテナに向ける逆円錐形状を有し得る。
【0010】
一実施例において、前記電波拡散構造体は、垂直断面視で内側へ湾曲された側面を有し得る。
【0011】
一実施例において、前記電波拡散構造体の側面は、垂直断面視で一定の曲率半径Rを有して内側へ湾曲され、前記曲率半径Rの大きさは、前記放射電波の波長の大きさがλであるとき、下記の数式1を満す。
【0012】
[数1]
一実施例において、前記電波拡散構造体の頂点と前記指向性アンテナとの垂直方向距離hの大きさは、前記放射電波の波長の大きさがλであるとき、下記の数式2を満たす。
【0013】
[数2]
一実施例において、前記装置は、前記指向性アンテナの上部空間を覆い、内部面に前記電波拡散構造体が設けられるドーム構造体をさらに含み得る。
【0014】
一実施例において、前記装置は、前記指向性アンテナの下部面に結合して前記指向性アンテナを支持するベースプレートをさらに含み得る。
【0015】
一実施例において、前記ベースプレートは、前記ドーム構造体の下縁部と結合して前記ドーム構造体を支持するように構成され得る。
【0016】
一実施例において、前記ベースプレートは、車両のルーフ外装パネルと結合する結合部を含み得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、28GHz以上の超高周波帯域信号を送受信できる指向性アンテナを用いて無指向性の車両用アンテナを具現することで、5G移動通信技術を車両通信に適用することができ、車両通信の速度と品質を改善することができる。
【0018】
また、ビームトラッキングのための構成を用いず、高指向性を有する指向性アンテナの垂直上空に電波拡散構造体を設け、垂直上方へ進む指向性アンテナの放射電波を全方位的に拡散させることで、車両用アンテナに要求される無指向性を確保しながらも車両用アンテナを小型化し、車両通信システムの全体構成を単純化することができる。
【0019】
また、車両用アンテナ装置をドーム形態で構成して車両のルーフ外装パネルに設けることで、指向性アンテナの損傷を防止してアンテナ性能を保障することができる。
【0020】
ひいては、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者であれば、本発明による実施例が、以上で言及されないさらに他の技術的課題を解決できることは、以下の説明から自明に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例による車両用アンテナ装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示した車両用アンテナ装置の分解斜視図である。
【
図3】
図1に示した車両用アンテナ装置の垂直断面図である。
【
図4】本発明に適用される電波拡散構造体の一例を示した斜視図である。
【
図5】垂直断面視でフラットな側面を有した電波拡散構造体による電波反射方向を示した図である。
【
図6】垂直断面視で外側へ湾曲された側面を有した電波拡散構造体による電波反射方向を示した図である。
【
図7】垂直断面視で内側へ湾曲された側面を有した電波拡散構造体による電波反射方向を示した図である。
【
図8】本発明による車両用アンテナ装置の動作原理を示した図である。
【
図9】本発明による車両用アンテナ装置の28GHz周波数帯域における電界分布を示したグラフである。
【
図10】本発明による車両用アンテナ装置の放射パターンを示したグラフである。
【
図11】本発明による車両用アンテナ装置の適用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付された図面を参照して本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者が本発明を容易に実施できるよう望ましい実施例を詳しく説明する。但し、本発明の説明にあたり、本発明に関連する公知技術ついての具体的な説明が、不要に本発明の要旨をぼやかすと判断される場合、その詳細な説明を略する。また、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、設計者、製造者などの意図または慣例などによって変わり得る。したがって、その定義は、本明細書全般に亘る内容に基づきなされるべきものであろう。
【0023】
図1は、本発明の一実施例による車両用アンテナ装置100の斜視図である。
【0024】
図2は、
図1に示した車両用アンテナ装置100の分解斜視図である。
【0025】
図1及び
図2に示したように、本発明の一実施例による車両用アンテナ装置100は、指向性アンテナ110及び電波拡散構造体120を含み得、実施例によってドーム構造体130、ベースプレート140などをさらに含み得る。
前記指向性アンテナ110は、一定の方向へ電波を放射するアンテナである。
図1に示した指向性アンテナ110は、垂直上方へ電波を放射する上方指向性を有するアンテナである。一実施例において、指向性アンテナ110は、複数の単位アンテナ素子112が上方に向けて配列され、上方指向性を有するアレイアンテナから構成され得る。この場合、複数の単位アンテナ素子112は、各々28GHz以上の超高周波帯域信号を送受信できるように小型のアンテナパッチから構成され、誘電体ブロックの上にマトリクス構造で配列され得る。また、複数の単位アンテナ素子112は、各々導電性パターンを介して給電回路などと電気的に接続し得る。このような指向性アンテナ110は、各々の単位アンテナ素子112の配列方向と励振電流の位相調節によって垂直上方の指向性を有するように設計され得る。実施例によって、指向性アンテナ110は、上述したアレイアンテナの外にも放射電波の指向性を有する多様な形態のアンテナから構成され得る。
【0026】
前記電波拡散構造体120は、指向性アンテナ110の垂直上空に設けられ、前記指向性アンテナ110から上方へ放射される放射電波を側方へ反射して全方位的(omnidirectional)に拡散させることができる。
【0027】
図3は、
図1に示した車両用アンテナ装置100の垂直断面図である。
【0028】
図3に示したように、電波拡散構造体120は、指向性アンテナ110の上部空間を覆うドーム構造体130の内部面に結合して指向性アンテナ110の垂直上空に設けられ得る。また、電波拡散構造体120は、底面が上方に向けて頂点が指向性アンテナ110に向ける逆円錐(reciprocal cone)形状を有し得る。
【0029】
図4は、電波拡散構造体120の一例を示した斜視図である。
【0030】
図4に示されたように、前記電波拡散構造体120は、底面122が上方に向けて頂点126が指向性アンテナ110に向ける逆円錐形状を有するように構成され、指向性アンテナ110から垂直上方へ放射される放射電波を、側方へ反射して全方位的に拡散させることができる。
【0031】
この場合、電波拡散構造体120は、垂直断面視で内側へ湾曲された側面124を有するように構成され得る。指向性アンテナ110の各アンテナ素子112から放射される放射電波は、粒子性を有する光線(ray)とは異なり波動性が強く、各アンテナ素子112の位置や隣接するアンテナ素子112との距離、位相差、電波間の干渉、パッチ形状などのような多様な要因によって進行方向が決められ得る。その結果、電波拡散構造体が垂直断面視で完全な逆三角形状を有する場合よりも、電波拡散構造体120の側面124が一定な曲率または位置によって相違する曲率を有して内側へ湾曲された形状を有する場合において、車両用アンテナ装置100に要求される無指向性をさらに容易に具現することができる。
【0032】
図5は、垂直断面視でフラットな側面124aを有する電波拡散構造体120aによる電波反射方向を示している。
【0033】
図5に示したように、垂直断面視でフラットな側面124aを有する電波拡散構造体120aが本発明に適用される場合、指向性アンテナ110から垂直上方へ放射された放射電波(入射波)は、電波拡散構造体120aによって反射されるが、その反射波は全体的に地面と水平に進むことではなく地面と一定な傾斜をなして下方へ進む。その理由は、前述したように、指向性アンテナ110の各アンテナ素子112から放射される放射電波は、粒子性を有する光線とは異なり、波動性が強いことから、各アンテナ素子112の位置や隣接するアンテナ素子112との距離、位相差、電波間の干渉などのような多様な要因によって進行方向が決められるためである。即ち、垂直断面視でフラットな側面124aを有する電波拡散構造体120aが本発明に適用される場合、車両用アンテナに要求される放射パターンの無指向性を具現しにくい。
【0034】
図6には、垂直断面視で外側へ湾曲された側面124bを有する電波拡散構造体120bによる電波反射方向が示されている。
【0035】
図6に示したように、垂直断面視で外側へ膨らむように湾曲された側面124bを有する電波拡散構造体120bが本発明に適用される場合、指向性アンテナ110から垂直上方へ放射された放射電波(入射波)は、電波拡散構造体120bによって反射されるが、その反射波は、全体的に地面と水平に進むことではなく、
図5の場合よりも地面と急激な傾斜をなして下方へ進む。即ち、垂直断面視で外側へ湾曲された側面124bを有する電波拡散構造体120bが本発明に適用される場合、車両用アンテナに要求される放射パターンの無指向性を具現することができない。
【0036】
図7には、垂直断面視で内側へ湾曲された側面124cを有する電波拡散構造体120cによる電波反射方向が示されている。
【0037】
図7に示されたように、垂直断面視で内側へ凹むように湾曲された側面124cを有する電波拡散構造体120bが本発明に適用される場合、指向性アンテナ110から垂直上方へ放射された放射電波(入射波)は、電波拡散構造体120cによって反射され、その反射波は全体的に地面と水平に進む。即ち、垂直断面視で内側へ湾曲された側面124cを有する電波拡散構造体120cが本発明に適用される場合、車両用アンテナに要求される放射パターンの無指向性を容易に具現することができる。
【0038】
一方、電波拡散構造体120の製造に際し、電波拡散構造体120の側面角度、側面曲率などを調整すれば、所望する放射電波の反射角度を具現することができる。この場合、電波拡散構造体120は、少なくとも反射面となる側面124がメタル素材から構成され得る。
【0039】
また、
図3を参照すれば、上述したように、電波拡散構造体120の側面は、垂直断面視で一定な曲率半径Rを有して内側へ湾曲されるように構成され得る。 また、このような電波拡散構造体120は、指向性アンテナ110と一定な距離hを置いて指向性アンテナ110の中心部の垂直上方に設けられ得る。
【0040】
この場合、前記曲率半径Rの大きさは、指向性アンテナ110から放射される放射電波の波長の大きさがλであるとき、下記の数式1を満すように構成される。
【数1】
【0042】
電波拡散構造体120の側面曲率半径Rが、πλ以下であるか、または20λ以上であれば、上方へ放射された指向性アンテナ110の放射電波が側方へ円滑に拡散しないため、車両用アンテナに要求される無指向性を確保できなくなり、アンテナ性能が急激に低下する。即ち、電波拡散構造体120の側面曲率半径Rがπλ以下になれば、電波拡散構造体120の側面は、実質的に膨らんでいる面となり、電波拡散構造体120の側面曲率半径Rが20λ以上になれば、
図5の場合と類似に電波拡散構造体120の側面は実質的にフラットな平面になってしまい、指向性アンテナ110の放射電波を地面と水平した側方へ反射できなくなる。その結果、車両用アンテナに要求される放射パターンの無指向性を具現することができない。
【0043】
また、電波拡散構造体120と指向性アンテナ110との最短距離、即ち、電波拡散構造体120の頂点と指向性アンテナ110との垂直方向距離hの大きさは、指向性アンテナ110から放射される放射電波の波長の大きさがλであるとき、下記の数式2を満たすように構成される。
【数2】
【0044】
電波拡散構造体120の頂点と指向性アンテナ110との垂直方向距離hが2λよりも大きければ、ソースとの間隔が重要なアンテナの特性上、電波拡散構造体120は、リフレクタ(Reflector)として動作することではなく、返ってディレクタ(Director)として動作するようになってしまい、指向性アンテナ110の電波が側面方向ではなく垂直方向のみへ放射される結果をもたらす。即ち、電波拡散構造体120は、指向性アンテナ110の放射電波を、
図7のように地面と水平な側方へ反射できなくなり、車両用アンテナに要求される放射パターンの無指向性を具現できなくなる。
【0045】
一方、指向性アンテナ110が正方形のパネル形態で構成される場合、電波拡散構造体120の頂点と指向性アンテナ110との垂直方向距離hは、下記の数式3のように定めることができる。
【数3】
【0046】
ここで、dは指向性アンテナ110の一辺の長さ、λは指向性アンテナ110から放射される放射電波の波長の大きさ、Rは電波拡散構造体120の側面曲率半径、πは円周率を示す。
【0047】
一方、前述したように、車両用アンテナ装置100は、ドーム構造体130及びベースプレート140をさらに含み得る。
【0048】
前記ドーム構造体130は、指向性アンテナ110の上部空間を覆い、その内部面に電波拡散構造体120が設けられ得る。このようなドーム構造体130は、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリアミド(PA:Polyamide)、ポリアセタール(POM:Polyacetal, ポリオキシメチレン(POM:Poly Oxy Methylene)、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS:Acrylonitrile−Butadiene−Styrene)などのように特定の誘電率を示す素材または特定の誘電率を示す素材を二つ以上組み合わせた素材から構成され得る。この場合、望ましいドーム構造体130の誘電率は、 1〜10[F/m]である。また、ドーム構造体130は、構成素材の誘電率によってその大きさや厚さが変わり得る。
【0049】
前記ベースプレート140は、指向性アンテナ110の下部面に結合して前記指向性アンテナ110を支持し得る。この場合、ベースプレート140は、ドーム構造体130の下縁部と結合して前記ドーム構造体130を支持し得る。
【0050】
図8には、本発明による車両用アンテナ装置100の動作原理が示されている。
【0051】
図8に示されたように、上方への高指向性を有する指向性アンテナ110に給電が開始されれば、指向性アンテナ110は、垂直上方へ電波を放射する。放射電波は、垂直上空に設けられた電波拡散構造体120によって側方へ反射されて全方位的に拡散する。このように、前記車両用アンテナ装置100の指向性アンテナ110は、電波を垂直上方のみへ放射すればよいので、既存の指向性アンテナとは異なり、ビームトラッキングを行わなくてもよい。その結果、本発明による車両用アンテナ装置100は、ビームトラッキングのための位相調整器(phase shifter)などの構成を備えることなく車両用アンテナに要求される無指向性を確保しながらも、車両用アンテナを小型化して車両通信システムの全体構成を単純化することができる。
【0052】
図9は、本発明による車両用アンテナ装置100の28GHz周波数帯域における電界分布を示したグラフである。
【0053】
図9に示したように、指向性アンテナ110から垂直上方へ放射された放射電波は、指向性アンテナ110の上部に設けられた電波拡散構造体120によって側方へ反射され、全方位的に拡散することが分かる。
【0054】
図10は、本発明による車両用アンテナ装置100の放射パターンを示したグラフである。
【0055】
図10に示したように、本発明による車両用アンテナ装置100は、全方位的に均一な放射パターンを示すという点で、本発明の実際具現時、車両用アンテナに要求される無指向性を確保することができることが分かる。
【0056】
図11は、本発明による車両用アンテナ装置100の適用例を示している。
【0057】
図11に示したように、前記車両用アンテナ装置100は、車両10のルーフ(roof)に設けられ得る。この場合、車両用アンテナ装置100のベースプレート140は、車両10のルーフ外装パネルに設けられて固定され得る。このために、ベースプレート140は、車両10のルーフ外装パネル及び結合部(図示せず)を含み得る。この場合、ベースプレート140の結合部は、車両10のルーフ外装パネルに設けられた設置溝に挿入されて固定される結合突起として構成されるか、または、接着部材を介して車両10のルーフ外装パネルに接着される接着面として構成されるか、または、ねじなどの結合部材が挿入されて前記結合部材を介して車両10のルーフ外装パネルに結合する結合溝などとして構成され得る。
【0058】
このように、放射パターンの無指向性(omnidirectional)を有する車両用アンテナ装置100が車両10のルーフに設けられて電波を放射して信号を送受信することで、車両10の走行方向と関係なく車両通信を安定的に行うことができる。
【0059】
上述したように、本発明によれば、28GHz以上の超高周波帯域信号を送受信できる指向性アンテナを用いて無指向性の車両用アンテナを具現することで、5G移動通信技術を車両通信に適用することができ、車両通信の速度と品質を改善することができる。
【0060】
また、ビームトラッキングのための構成を用いることなく、高指向性を有する指向性アンテナの垂直上空に電波拡散構造体を設けて垂直上方へ進む指向性アンテナの放射電波を全方位的に拡散させることで、車両用アンテナに要求される無指向性を確保しながらも車両用アンテナを小型化し、車両通信システムの全体構成を単純化することができる。
【0061】
また、車両用アンテナ装置をドーム形態で構成して車両のルーフ外装パネルに設けることで、指向性アンテナの損傷を防止してアンテナ性能を保障することができる。
【0062】
ひいては、本発明による実施例は、当該技術分野は勿論、関連技術分野において本明細書に言及された内容以外の他の多様な技術的課題を解決できることは勿論である。
【0063】
以上、本発明について具体的な実施例を挙げて説明した。しかし、当業者であれば、本発明の技術的範囲において多様な変形実施例を具現できることを明確に理解できるだろう。したがって、上述の実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮されるべきである。即ち、本発明の真正な技術的思想は請求範囲に示されており、その均等範囲内における全ての相違点は本発明に含まれるものと解釈されるべきである。