(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896894
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ベアリング減衰器要素、そのようなベアリング減衰器要素が設けられたベアリング及び圧縮器要素、及びそのようなベアリング減衰器要素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F16C 27/06 20060101AFI20210621BHJP
F16F 15/04 20060101ALN20210621BHJP
【FI】
F16C27/06 B
!F16F15/04 A
【請求項の数】25
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-571354(P2019-571354)
(86)(22)【出願日】2018年5月17日
(65)【公表番号】特表2020-525728(P2020-525728A)
(43)【公表日】2020年8月27日
(86)【国際出願番号】IB2018053464
(87)【国際公開番号】WO2019002959
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2020年1月16日
(31)【優先権主張番号】2017/5449
(32)【優先日】2017年6月26日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレルスト ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】メーウス ハンス
(72)【発明者】
【氏名】バル グイド ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ペーテルス コーエン レア エフ
【審査官】
古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特表平07−505945(JP,A)
【文献】
特開2006−266437(JP,A)
【文献】
特開平10−054208(JP,A)
【文献】
特開2010−112486(JP,A)
【文献】
特表2010−516972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 21/00−27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する物体とリング(7)を支持する支持物体との間に装着されたリング(7)を含み、それによって該リング(7)が、軸線方向(X−X’)に該リング(7)の厚み(A)を通ってかつ該リングの半径方向内面及び外面(9a,9b)から距離を置いて少なくとも3つのスリット(8)を含むベアリング減衰器要素であって、
前記スリット(8)の少なくとも半分が、0.5ミリメートルの最大幅を有する1又は2以上の減衰部分(8a)を有し、それによって該減衰部分(8a)は、同心であり、かつ重ならず、
少なくとも1つのスリット(8)が、前記減衰部分(8a)の前記幅よりも大きい最小幅を有する1又は2以上のバネ部分(8b)を有する、
ことを特徴とするベアリング減衰器要素。
【請求項2】
前記リング(7)は、前記軸線方向(Χ−Χ’)に該リング(7)の前記厚み(A)を通して少なくとも4つのスリット(8)を含む、
請求項1に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項3】
前記スリット(8)の少なくとも一部に、前記軸線方向(Χ−Χ’)に前記リング(7)の前記厚み(A)を通して両端上に孔(11)が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項4】
前記スリット(8)の前記端部での前記孔(11)を通して、該スリット(8)の前記幅の2倍よりも大きい直径を有する円筒が嵌合することを特徴とする請求項3に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項5】
前記孔(11)は、液滴又は涙形状であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項6】
前記減衰部分(8a)は、前記リング(7)の中心(10)を80%よりも多く取り囲むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項7】
前記スリット(8)の少なくとも半分が、1又は2以上のバネ部分(8b)を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項8】
前記バネ部分(8b)は、前記減衰部分(8a)の前記幅よりも少なくとも2倍広いことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項9】
前記スリット(8)の前記バネ部分(8b)は、前記減衰部分(8a)と少なくとも部分的に重なることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項10】
前記バネ部分(8b)は、少なくとも50%にわたって前記減衰部分(8a)と重なることを特徴とする請求項9に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項11】
前記減衰部分(8a)は、前記バネ部分(8b)よりも前記リング(7)の中心(10)又は中間点(10)から遠くに位置付けられることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項12】
前記減衰部分(8a)と該減衰部分(8a)に最も近く位置付けられた前記リング(7)の前記半径方向面(9a、9b)との間の距離が、該半径方向面(9a、9b)の半径の15%よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項13】
前記スリット(8)の前記減衰部分(8a)は、最大0.20ミリメートルの幅を有することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項14】
前記軸線方向(X−X’)に前記リング(7)の前記厚み(A)を通る前記スリット(8)は、該リング(7)の軸線(10)又は中間点(10)又は中心(10)に関して点対称及び/又は回転対称であることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項15】
1又は2以上のスリット(8)の前記減衰部分(8a)の少なくとも一部が、粘性液体で満たされることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項16】
前記リング(7)には、1又は2以上のスリット(8)の1又は2以上の減衰部分(8a)にそれを通して粘性液体を供給することができる液体入口(12)が設けられることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項17】
前記リング(7)には、1又は2以上のスリット(8)の1又は2以上の減衰部分(8a)に1又は2以上の液体入口(12)を通じて粘性液体を誘導するために該リング(7)の前記半径方向面(9a、9b)のうちの一方にリング形状溝(13)が設けられることを特徴とする請求項16に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項18】
前記リング(7)は、スリット(8)の開口端(11)の隣に位置付けられて該スリット(8)からの前記粘性液体の流出を回避する密封要素を含むことを特徴とする請求項15から請求項17のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項19】
減衰部分(8a)に交差しない分割平面(16)を備えた分断設計を有することを特徴とする請求項1から請求項18のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項20】
前記リング(7)は、金属で作られることを特徴とする請求項1から請求項19のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項21】
スリット(8)の数が偶数である場合に、少なくとも半分の該スリット(8)は、1又は2以上の減衰部分(8a)を有し、スリット(8)の数が奇数である場合に、全てのスリット(8)が、1又は2以上の減衰部分(8a)を有することを特徴とする請求項1から請求項20のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素。
【請求項22】
ローラーベアリング又は液体ベアリングであって、
ローラーベアリング(3)又は液体ベアリングの内側リング(4a)又は外側リング(4b)が、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素(6)を含む、
ことを特徴とするローラーベアリング又は液体ベアリング。
【請求項23】
圧縮器要素であって、
気体を圧縮するように設定された圧縮器要素(2)の回転子のシャフト(1)に装着された請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の少なくとも1つのベアリング減衰器要素(6)を含有する、
ことを特徴とする圧縮器要素。
【請求項24】
圧縮器要素(2)が、スクリュー圧縮器要素(2)又はターボ圧縮器要素(2)であることを特徴とする請求項23に記載の圧縮器要素。
【請求項25】
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載のベアリング減衰器要素を製造する方法であって、
穿孔、レーザ穿孔、及び/又はダイ−シンク放電機械加工による軸線方向(X−X’)にリング(7)の厚み(A)を通る孔(11)の生成と、
ワイヤ放電機械加工又は研磨ワイヤ切断による前記孔(11)の間のスリット(8)の生成と、
の段階を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリング減衰器要素に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、本発明は、回転子のシャフトがいくつかのベアリングによって機械のハウジング内で回転可能に設定される例えばターボ機械又はスクリュータイプ圧縮器のような回転する機械での用途を意味している。
【0003】
高速で回転する機械は、1又はいくつかの特定の速度範囲内で、主にこれらの範囲に共振が存在する時に振動問題に対処することが多いことは公知である。
【0004】
そのような範囲では、振動レベルは、機械の内側に損傷が発生するほど高くなる可能性がある。
【0005】
一部の場合では、これらの速度範囲を避けることによってこの問題を回避することが可能である。
【0006】
それは、そのような速度を避けることを試みることになり、加速又は減速する時にこれらの速度範囲を通して切り換えることが必要である瞬間に、それは迅速に行われ、従って、損傷を回避するか又はもしあるとしてもそれを少なくとも制限することになることを意味する。
【0007】
言うまでもなく、これらの振動問題が存在しないか又は非常に限られた範囲だけに存在するように機械を設計することがより望ましい。
【0008】
これは、機械の(回転する)シャフトの剛性及び/又はシャフトのベアリングの剛性によってほとんど決定される回転子動力学の調節を必要とする。
【0009】
機械の構成及び組立ては厳しい寸法を課すので、機械のシャフトの剛性を調節することは極度に制限され、そのためにベアリングの剛性を調節することは、ベアリング寸法決めがそれを許す限り、より良い選択肢であることが多い。
【0010】
振動問題を完全に排除することは決してできないので、発生している振動が許容レベルまで低減されることを保証することになる何らかの減衰特性をベアリングに同じく設けることが優先される。
【0011】
既に減衰特性を有し、同じく非常に高速で回転することができ、従って、ターボ機械に使用するのに特に適する液体ベアリングが公知である。
【0012】
しかし、液体ベアリングは、ローラーベアリングよりも大きいベアリング損失を発生する。更に、液体ベアリングは、非常に破壊的とすることができる不安定な挙動の傾向がある可能性がある。不安定な挙動のそのようなリスクは、液膜内のシャフトの回転に固有である。
【0013】
これが、ローラーベアリングも頻繁に使用される理由である。そのようなローラーベアリングの欠点、より具体的には、それらが全く又は実質的に全く減衰特性を持たないという事実を解決するために、それらは、多くの場合に、いわゆるベアリング減衰器要素と組み合わせて高速用途に使用される。
【0014】
ローラーベアリングは、少なくとも2つのリングから構成され、それらの間でローラー要素がこれらのリング内のランナーの上を転がる全てのベアリングを指すことに注意されたい。ローラー要素は、ボール形状、円筒、円錐、又はバレル形状とすることができる。
【0015】
第1の可能なベアリング減衰器要素は、剛性に対処してリングをこのリングとベアリングの間に正確な間隙、すなわち、減衰器間隙が存在するようにベアリングの周りに(又は内に)位置決めすることになる突出要素、すなわち、「かご」から構成されるいわゆる「かご形減衰器」である。この減衰器間隙には、薄膜、すなわち、減衰を担う「スクイーズ膜」が付加される。この薄膜に対して、程度の差はあっても、通常はオイル又は別のものである粘性液体が使用される。
【0016】
そのような「かご形減衰器」の例は、Foud Y.Zeidanによる論文「回転する機械内のスクイーズ膜減衰器の設計及び応用」、第25回ターボ機械シンポジウムの議事録、ターボ機械研究所、テキサスA&M大学、169〜188頁、1996年に説明されている。
【0017】
剛性及び減衰特性の両方を調節することができるが、そのような「かご形減衰器要素」の欠点は、それが高価であるのみならず、特に軸線方向又は向きに多くの空間も占めることである。
【0018】
追加の欠点は、薄膜の厚みを決定する減衰器間隙の厚みは、望ましい減衰特性を得るために正確に決定されることが必要であるので、「かご形減衰器」の全ての構成要素を非常に正確な仕様に対して製造して仕上げることが必要であることである。
【0019】
US 2009263057には、代替ベアリング減衰器要素が説明されており、それによってワイヤEDM又はワイヤ放電機械加工を用いてローラーベアリングの1つのリング内にスリットが作られる。
【0020】
例えばオイルのような粘性液体でスリットを満たすことにより、薄膜減衰器(「スクイーズ膜減衰器」)が生成される。
【0021】
更に、スリットの形態は、減衰器の剛性及び従ってベアリング減衰器要素内のシャフトの支持の剛性を決定することになる一種の板バネを生成する。
【0022】
これは、これらのスリットが薄膜減衰器及び板バネを同時に生成することを意味する。
【0023】
バネ及び減衰器を1つの構成要素、すなわち、ローラーベアリングの内側リング又は外側リングに生成することは、コンパクトな設計をもたらすだけでなく、減衰器間隙が非常に正確に決定されることを可能にする。
【0024】
US 2009263057でのベアリング減衰器要素は、いくつかの欠点を有する。
【0025】
第1に、スリットは比較的長く、そのためにベアリング減衰器要素の効率的作動に必要であるスリットが常にオイルで完全に満たされることを保証することが可能ではない。
【0026】
第2に、複合減衰器及びバネシステムは、両者が非常に強く接続されるので、特定の減衰能力と組み合わされたある一定の剛性を達成するのが困難であることを意味する。
【0027】
ある一定の設計の複合バネ及び減衰器挙動は、予測することが非常に困難であり、多くの複雑なシミュレーションが必要であることが多い。
【0028】
更に、剛性及び減衰の特定の組合せを実現することができることは確かではない。
【0029】
複合減衰器及びバネシステムはまた、いくつかの同心薄膜減衰器を有する設計をもたらす。その結果、半径方向の力は、直列のいくつかの薄膜減衰器によって受け入れられることになり、そのためにどの薄膜減衰器も効果が落ちることになり、かつ減衰能力が低下する。
【0030】
更に、薄膜減衰器は交差させることができないので、分断設計を行うことも可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】US 2009263057
【非特許文献】
【0032】
【非特許文献1】Foud Y.Zeidanによる論文「回転する機械内のスクイーズ膜減衰器の設計及び応用」、第25回ターボ機械シンポジウムの議事録、ターボ機械研究所、テキサスA&M大学、169〜188頁、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明の目的は、上述の及び他の欠点のうちの少なくとも一方に対するソリューションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明の目的は、回転する物体とリングを支持する支持物体との間に装着されたリングを含み、それによってリングが、軸線方向にリングの厚みを通してかつリングの半径方向内面及び外面から距離を置いて少なくとも3つのスリットを含むベアリング減衰器要素であって、スリットの少なくとも半分が、最大幅0.5ミリメートルを有する1又は2以上の減衰部分を有し、それによって減衰部分が同心であり、かつ重ならないことを特徴とする上記ベアリング減衰器要素である。
【0035】
本明細書での「スリット」は、溝、裂け目、又は切れ目などを指し、それによってこれらのスリットが軸線方向にリングの厚み全体を通って延びることが重要である。
【0036】
第1に、そのようなベアリング減衰器要素の利点は、それが非常にコンパクトであり、より具体的には、軸線方向に公知の「かご形減衰器」と比べて確かにコンパクトであることである。
【0037】
これは、いくつかの(一部の)スリットをより薄くすることにより、それらが減衰特性を有することになり、それによってそれらが他の(一部の)スリットのバネ特性から少なくとも部分的に切り離されるという利点を提供する。
【0038】
言い換えると、各々が主として別の特性、すなわち、主として減衰特性又は主としてバネ特性を有することになる異なるタイプの(一部の)スリットが存在する。
【0039】
それは、特定の剛性を減衰能力に影響することなく実現することができるようにベアリング減衰器要素の減衰特性がバネ特性にあまり結合されない設計をもたらす。
【0040】
更に、いくつかのスリットを使用することにより、それらは、それらを粘性液体で完全に満たすことができることを保証することができるように、より短く作ることができる。
【0041】
別の利点は、これらの減衰部分が重ならないことを避けることにより、同心緩衝膜減衰器が生成されず、そのためにこうして生成されたどの緩衝膜減衰器も最大の減衰能力を有することになる。
【0042】
好ましくは、スリットの少なくとも半分は、スリットの数が偶数である場合に1又は2以上の減衰部分を有し、スリットの数が奇数である場合に、全てのスリットが1又は2以上の減衰部分を有する。
【0043】
その利点は、ベアリング減衰器要素の設計を常に対称にすることができることである。
【0044】
好ましくは、スリットの少なくとも一部、好ましくは、どのスリットにも、軸線方向にリングの厚みを通る孔が両端に設けられる。
【0045】
この孔又はキャビティ又は穿孔などは、ベアリング減衰器要素の使用中にスリットの端部で生じる場合がある応力集中を緩和することになる。
【0046】
更に、そのような孔は、リングにスリットを生成するのに必要であることも多く、それによって第1にこれらの孔は、スリットをワイヤ放電機械加工によって切り取ることができるように、ワイヤをその後に通すために穿孔される。孔は、穿孔以外の技術、例えば、ダイ−シンク放電機械加工、レーザ穿孔などによって作ることができる。
【0047】
本発明の好ましい特徴により、少なくとも1つのスリットは、減衰部分の幅よりも大きい最小幅を有する1又は2以上のバネ部分を有する。
【0048】
スリットのバネ部分に対する最小幅を与えることにより、ある一定の可撓性又はバネ機能を有することになる、言い換えれば、ある一定の剛性を有することになる構造をリングに設けることができる。
【0049】
実際に、スリットは、狭すぎるか又は細すぎるスリットが振動によって過度に急速に閉じられ、従って、可撓性がほとんどないように、それらが振動によって閉じられるまで可撓性を有する。バネ部分に対する最小幅を保証することにより、これは回避することができる。
【0050】
実際的な実施形態では、1又は2以上のスリットの減衰部分の少なくとも一部は、粘性液体で満たされる。
【0051】
全てのスリットの全ての減衰部分が粘性液体で満たされることは勿論除外されない。
【0052】
これは、これらのスリット内に薄膜減衰器を生成することになる。そのような薄膜減衰器の支援により、例えばゴムの支援による他のタイプの減衰ではいつも可能とは限らない限られた空間内での比較的高い減衰を達成することができる。
【0053】
好ましい実施形態では、減衰部分の合計長さを可能な限り長くすることができることを保証する方策が講じられる。
【0054】
これは、例えば、スリットのバネ部分が減衰部分と少なくとも部分的に重なることを確実にすることにより、又は減衰部分がバネ部分よりもリングの中心又は中間点から遠く離れているので可能である。
【0055】
本発明はまた、ローラーベアリング又は液体ベアリングに関連し、それによってローラーベアリング又は液体ベアリングの内側リング又は外側リングは、本発明によるベアリング減衰器要素を含む。
【0056】
本発明はまた、圧縮器要素に関連し、それによってそれは、気体を圧縮するように設定された圧縮器要素の回転子のシャフト上に装着される本発明による少なくとも1つのベアリング減衰器要素を含有する。
【0057】
本発明はまた、本発明によるベアリング減衰器要素を製造する方法に関連し、それによって本方法は、以下の段階:穿孔、レーザ穿孔、及び/又はダイ−シンク放電機械加工による軸線方向にリングの厚みを通る孔の生成と、ワイヤ放電機械加工又は研磨ワイヤ切断による孔の間のスリットの生成との段階を含む。
【0058】
本発明の特徴をより良く示すことを意図して、本発明によるベアリング減衰器要素、そのようなベアリング減衰器要素を備えたベアリング及び圧縮器要素、及びそのようなベアリング減衰器要素を製造する方法の少数の好ましい変形を添付図面を参照していずれの制限する性質もなく一例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】回転子のシャフトの周りで圧縮器要素に装着された本発明によるベアリングの概略図である。
【
図2】
図1のベアリング減衰器要素の概略斜視図である。
【
図3】
図2の線III−IIIに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、本発明によるローラーベアリング3によって圧縮器要素2内に支持された回転子シャフト1の一部を概略的に示している。提示のローラーベアリング3の代わりに、液体ベアリングを適用することができる。
【0061】
圧縮器要素2は、例えば、スクリュー圧縮器要素又はターボ圧縮器要素とすることができる。
【0062】
ローラーベアリング3は、ローラー要素5がその間にある内側リング4a及び外側リング4bを含み、それによってこの場合の外側リング4bは、本発明によるベアリング減衰器要素6として作られる。
【0063】
ローラーベアリング3の内側リング4aは、本発明によるベアリング減衰器要素6として作ることも勿論可能である。
【0064】
ベアリング減衰器要素6を有するベアリング3は、気体を圧縮するように設定された圧縮器要素2の回転子のシャフト1上に装着される。
【0065】
ベアリング減衰器要素6は、概要が
図2にかつ断面が
図3に示されている。
【0066】
これらの図から明らかなように、ベアリング減衰器要素6はリング7を含む。
【0067】
本発明にとって必ずしも必須ではないが、好ましくは、このリング7は金属で作られる。ローラーベアリング3を製造することができる材料は、ベアリング減衰器要素6をそこから製造するのに適している。
【0068】
いくつかのスリット8は、リング7に既に作られたものである。
【0069】
本発明により、少なくとも3つのスリット8があり、
図2及び
図3の例では、8つのスリット8がある。
【0070】
これらのスリット8は、軸線方向X−X’にリング7の厚みA全体を通して作られる。
【0071】
本発明により、スリット8は、リング7の半径方向内面及び外面9a、9bから距離を置いており、そのためにスリットは、これらの面9a、9bのうちの1つで終わらず又は始まらない。
【0072】
これらのスリット8のうちの半分は、ベアリング減衰器要素6の特定の減衰能力を生成する減衰部分8aを有し、それによってこれらの減衰部分8aは、幅が最大0.5ミリメートル、この場合は例えば0.15ミリメートルである。
【0073】
この場合に、これらのスリット8のうちの4つは、その全長にわたって幅が0.15ミリメートルであり、それは、減衰部分8aがスリット8全体を構成することを意味する。他の4つのスリット8bは、より幅広である。
【0074】
勿論、これら4つのスリット8のうちの1又はいくつかの部分のみが最大0.5ミリメートル幅であること、及びこれらのスリット8の他の1又は複数の部分がより幅広であることも可能である。
【0075】
一部のスリット8は、幅がそれらの全長にわたって最大0.5ミリメートルであり、いくつかの他のスリット8は、幅が部分的に最大0.5ミリメートルであり、他のスリット8は、幅がそれらの全長にわたって0.5ミリメートルよりも広い。減衰部分8は、幅が例えば最大0.25ミリメートルとすることができる。
【0076】
スリットの減衰部分8a、すなわち、スリット8の狭い部分は、同心であり、かつ重ならない。
【0077】
この場合の「同心」は、リング7’の軸線10の中間点10又は中心10に関して同心であることを意味するが、それは本発明にとって必須ではない。減衰部分8aも、別の点に関して同心である可能性がある。
【0078】
このようにして、圧縮器要素2に装着する前では、ベアリング減衰器要素6の減衰部分8aは、例えば、幾何学的に決定された中間点に対していくらかシフトされた点に関して同心とすることができ、それによってシャフトとシャフトに取り付けられた全てのものの重さによって撓んだ後の装着条件では、減衰部分8aは、リング7の幾何学的な中間点10に関して同心であることが保証される。
【0079】
必須ではないがこの場合に、減衰部分8aは、リング7の軸線10の80%よりも多くを取り囲み、一例では90%よりも多く、より具体的には約95%を囲んでいる。減衰部分8aによって囲まれたリング7の軸線10の部分が大きいほど、ベアリング減衰器要素6の減衰能力が大きくなる。この構成により、コンパクト設計で減衰能力が十分に大きいベアリング減衰器要素8を実現することが可能であり、それは、ベアリング減衰器要素6自体及びベアリング3又はそれが適用される圧縮器要素1の両方のコストを低く抑制することを支援することになる。それらは重ならないので、直列のいくつかの緩衝薄膜減衰器による問題は回避することができる。
【0080】
本発明の好ましい実施形態により、少なくとも1つのスリット8は、この場合は例えば0.5ミリメートルである減衰部分8aの幅よりも大きい最小幅を有する1又は2以上のバネ部分8bを有する。
【0081】
バネ部分8bは、幅が少なくとも0.3ミリメートルであることが好ましい。
【0082】
これらのバネ部分8bは、ベアリング減衰器要素8の剛性を決定することになる言わば一種の板バネを生成することになる。
【0083】
スリット8の少なくとも半分は、1又は2以上のそのようなバネ部分8b又は幅広部分を含むことが好ましい。
【0084】
この場合に、スリット8のうちの半分、すなわち、4つのスリット8は、この場合は0.5ミリメートルである減衰部分8aの幅よりも大きい幅を有するバネ部分8bから完全に構成される。
【0085】
ここではまた、例えば、スリット8は、それらの長さの一部にわたって幅が僅か0.5ミリメートルであること、及び例えばそれらの長さの他の部分にわたってより狭いことが可能である。スリット8は、それらの長さの一部にわたって幅が0.5ミリメートルである代わりに、幅が(少なくとも)0.3ミリメートルであることも可能である。
【0086】
図2と
図3の断面図とに示すように、バネ部分8b、すなわち、幅広部分は、減衰部分8aと少なくとも部分的に重なる。
【0087】
「重なるスリット」は、リング7の中間点10又は中心10を通って延びる線が、問題となっているスリット8と交差することを意味する。
【0088】
好ましくは、バネ部分8bは、減衰部分8aと少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%重なっている。図示の例では、これは更に95%よりも多い。この利点は、減衰部分8aを可能な限り長くすることができることである。
【0089】
リング7の厚みAを通って軸線方向X−X’に延びるスリット8は点対称であり、かつリング7の軸線10又は中間点10又は中心10に関して回転対称であることも
図2及び
図3から推測することができる。
【0090】
そのような設計により、ベアリング減衰器要素6の製造が簡素化される。
【0091】
スリット8は、両端11にリング7の厚みAを通って軸線方向X−X’に孔11が設けられる。
【0092】
既に指摘したように、これらの孔11は、ベアリング減衰器要素6の使用中にスリット8の端部11に生じる応力を軽減する応力低減機能を有する。
【0093】
これらの孔11の寸法は、スリット8の幅の2倍よりも大きい、好ましくは3倍の直径を有するこれらの孔11を通って円筒が嵌合するようなものである。この場合に、例えば、孔11を通って嵌合する円筒の直径は、2ミリメートルである。
【0094】
この場合に、孔11は液滴又は涙形状である。それは本発明にとって必須ではなく、孔11は円形であることも可能であるが、孔11を液滴又は涙形状にすることにより、そこでの応力集中を低減することができる。
【0095】
本発明の好ましい特徴により、1又は2以上のスリット8の減衰部分8aの少なくとも一部は、例えば合成オイルなどのような粘性液体で満たされる。
【0096】
その結果、薄膜減衰器が生成されることになり、これは、ベアリング減衰器要素6、特にスリット8の減衰部分8aが減衰能力を有することになることを保証することになる。
【0097】
この目的のために、リング7には、1又は2以上の液体入口12が設けられ、粘性液体は、これを通って1又は2以上のスリット8の1又は2以上の減衰部分8aに供給することができる。
【0098】
この場合に、リング7には8つのそのような液体入口12が設けられるが、それは本発明にとって必須ではない。
【0099】
液体入口12は、半径方向外面9bでスリット8に続く半径方向の穿孔の形態である。穿孔は、半径方向内面9に続いていない。
【0100】
これらの液体入口12を通って、スリット8の全ての減衰部分8aにこれらの部分が液体で満たされるように液体を供給することができる。本発明にとって必ずしも必須ではないが、この場合に、減衰部分8aから構成されるスリット8毎に2つのそのような液体入口12が存在する。この利点は、スリット8全体が確実に液体で満たされることである。
【0101】
いくつかのスリット8があるので、スリット8はそれほど長くなく、あらゆるスリット8が粘性液体で完全に満たされることを保証することができる。
【0102】
リング7にはまた、リング7の半径方向外面9bにリング形状溝13が設けられ、粘性液体を例えば圧縮器要素1に設けられた液体サプライ14を通じて液体入口12及び従ってスリット8の問題となっている減衰部分8に誘導する。
【0103】
穿孔が半径方向内面9aに位置付けられることは排除されず、それによってリング形状溝13は、半径方向内面9aに設けられる。
【0104】
粘性液体がスリット8から迅速に流出することを避けるために、ベアリング減衰器要素6には、スリット8の開口端の隣に位置付けられる1又は2以上のシールが設けられる。これらのシールは図示していない。
【0105】
ベアリング減衰器要素6の作動は、以下の通りに非常に単純である。
【0106】
圧縮器要素2の作動中に、回転子が回転する結果として振動があることになる。
【0107】
これらの振動は、薄膜減衰器の作動により、オイルで満たされたスリット8の減衰部分8aによって少なくとも部分的に減衰されることになる。
【0108】
仮に振動を十分に減衰することができないことが明らかである場合に、板バネとして作用するスリット8のバネ部分8bは、振動を受け入れ、かつそれらが機械1内で継続し、このようにして損傷を引き起こす可能性があることを回避することになる。
【0109】
上述の例では、スリット8の減衰部分8aは幅が0.15ミリメートルであるが、スリット8の減衰部分8aを他の幅にすることは排除されない。計算モデルを用いて、減衰部分8aの幅及びリング7の軸線方向の厚みは、ある一定の望ましい減衰を実現するように決定することができる。この場合に、リング7の軸線方向の厚みは、例えば32ミリメートルである。リング7の内径は55ミリメートルであり、リング7の外径は100ミリメートルである。この場合に、ベアリング減衰器要素6は、内側に装着されたタイプNU211の単列円筒ローラーベアリングを減衰させるのに使用される。
【0110】
この利点は、供給する必要がある粘性液体がより少なくなるように、減衰部分8aから漏れる可能性がある粘性液体がより少なくなり、減衰能力をより良く保証することができることである。
【0111】
上述の例では、スリット8のバネ部分8bは幅が0.5ミリメートルであるが、バネ部分8bを別の幅にすること、好ましくは減衰部分8aの幅よりも少なくとも2倍広く、より好ましくは少なくとも3倍広くすることは除外されない。
【0112】
この利点は、より優れたバネ特性を達成することができることである。実際には、スリット8のバネ部分8bは、スリット8が「閉じる」まで振動を受け入れることができるに過ぎず、これは、より広いスリット8はより大きい振動を受け入れることができることを意味する。
【0113】
図2及び
図3に示すような本発明によるベアリング減衰器要素8の製造の方法は、以下の段階:穿孔、レーザ穿孔、及び/又はダイ−シンク放電機械加工による軸線方向X−X’にリングの厚みAを通る孔11の生成と、ワイヤ放電機械加工又は研磨ワイヤ切断による孔11の間のスリット8の生成との段階を含む。
【0114】
スリット8の生成のために、機械のワイヤは、第1の段階で設けられた孔11を通って誘導されることになる。
【0115】
スリット8毎に、機械のワイヤは、延伸されるか又は再度装着される必要があることになる。従って、構成−技術的には、スリット8ができるだけ少ないベアリング減衰器要素6を製造することが好ましく、その理由は、それによって製造時間が大幅に短縮するからである。
【0116】
図4は、
図3の変形を示しており、それによって相違点は、液体入口12の形態にある。穿孔は、それらがスリット8を交差する場所で狭くなる。この実施形態の残りは、
図3の実施形態と同一である。
【0117】
図5は、更に別の変形を示しており、それによってこの場合に、幅広スリット8bは適応形態を有し、この場合はS字形部分15が設けられる。この形態は、応力を徐々に受け入れるように最適化される。それは、スリット8bが減衰能力を持たず、そのためにその形態をベアリング減衰器要素6の減衰能力に悪影響を与えることなく適応させることができるので可能である。
【0118】
この実施形態では液体入口12を示していないが、液体入口12は、例えば、
図3又は
図4の形態で存在することができることは言うまでもない。
【0119】
図6は、
図3の更に別の実施形態を示し、それによって相違点は、スリット8の端部11にある孔11の形態にあり、孔は、ここでは液滴又は涙形状ではなく円形である。
【0120】
更に、スリット8の端部11は、リング7の半径方向内面又は外面9a、9bに向けて曲がっており、その目的は、減衰効果に影響を与えないことである。
【0121】
図7の変形は、4つのスリット8のみを有するベアリング減衰器要素6に関連し、それによって全てのスリット8に3つの孔11a、11が設けられ、1つが全ての端部に、1つの孔11aがスリット8の中間にある。
【0122】
どのスリット8も、幅広のバネ部分8b及び幅狭の減衰部分8aの両方を有し、それによってスリット8の中間にある孔11aが、分割又は移行をマーク付けする。
【0123】
スリット8の中間にある孔11aは除外することができる。全ての孔11、11aを除外することも可能である。スリット8がワイヤ放電機械加工によって実現される場合に、全てのスリットに少なくとも1つの孔11が設けられ、ワイヤを延伸可能にする必要があることは明らかである。
【0124】
1つのスリット8内でバネ部分8bを減衰部分8と組み合わせることにより、ベアリング減衰器要素6には、先行する実施形態よりも少ないスリット8を生成することができる。
【0125】
スリット8が少ないので、ワイヤ放電機械加工又は研磨ワイヤ切断によるベアリング減衰器要素6の製造は時間があまりかからず、その理由は、ワイヤには延伸又は再装着があまり必要でないためである。
【0126】
更に、この組合せは、1つの減衰部分8aの長さが直前の実施形態よりも長くならないことを意味し、結果として依然として減衰部分8a全体を確実にオイルで満たすことができる。
【0127】
図7では、減衰部分8aは内側に、すなわち、中心10により近く位置付けられ、バネ部分8bは外側に位置付けられるが、逆も同様とすることができる。減衰部分8aが外側に位置付けられる場合に、合計減衰能力を僅かに大きくすることが可能である。
【0128】
図8は、
図7の変形であり、それによってこの場合にスリット8の端部の孔44は、ここでも液滴又は涙形状である。これは、
図8による変形が
図7による実施形態よりもコンパクトに作ることができるという利点を有する。
【0129】
図7及び
図8の変形では、減衰部分8aは、バネ部分8bよりもリング10の中心10又は中間点10から更に離れ、これらの減衰部分8aの長さが長くなっている。
【0130】
図7及び
図8の変形が4よりも多いスリット8、すなわち、6つのスリット又は更にそれよりも多いスリットを有することが除外されないことは明らかである。
【0132】
このベアリング減衰器要素6のスリット8の設計はあまりコンパクトではないが、この場合に、減衰特性とバネ特性の完全な分離が実際に可能である。
【0133】
6つのスリット8があり、それによってあらゆるスリット8は、湾曲した又は曲がったバネ部分8b、円形セグメントの形状を有する減衰部分8a、及び湾曲した又は曲がったバネ部分8bに順番に有する。スリット8の端部には孔11が設けられる。
図10とは異なり、
図9には孔11aは設けない。
【0134】
連続するスリット8のバネ部分8bは、言わば互いに入れ子になっている。
【0135】
湾曲した又は曲がったバネ部分8bは、発生する応力を最大に低減するように設計される。
【0136】
図9に示すように、減衰部分8aは、バネ部分よりもリング7の中心10又は中間点10の近くに位置付けられる。
【0137】
図10は、非常に類似した設計を示し、それによって減衰部分8aは、リング7の中心10又は中間点10から僅かに遠くに位置付けられる。これに加えて、どのスリット8にも、4つの孔11、11a、すなわち、スリット8の両端の2つの孔11と、バネ部分8bと減衰部分8aの間にある移行部ごとの孔11aとが設けられる。
【0138】
図9の実施形態ではスリット8の端部に孔11を設け、バネ部分8bと減衰部分8aの間にある移行部毎に孔11aを設けることができるのと類似の方法で、孔11、11aが設けられないことも可能である。
【0139】
図9及び
図10の設計は、
図3から
図8の設計ほどコンパクトではないが、これら2つの実施形態の利点は、バネ特性と減衰特性が完全に切り離されることであり、これは、適切なバネ部分8bがある一定の剛性を達成するように設計され、これとは無関係に、減衰部分8aが、望ましい減衰能力を達成するように設計することができることを意味する。
【0140】
本発明にとって必須ではないが、先行する全ての実施形態では、減衰部分8aと、減衰部分8aの最も近くに位置付けられたリングの半径方向面9a、9bとの間の距離は、この半径方向面9a、9bの半径の15%よりも大きく、好ましくは20%よりも大きい。
【0141】
これは、スリット8がこれらの半径方向面9a、9bに近すぎるように位置付けられないという利点を有する。
【0142】
図3から
図8の実施形態では、分断設計が可能である。
【0143】
これは、スリット8の減衰部分8が交差されてはならず、そうでなければ減衰部分が相殺されるので、ベアリング減衰器要素6が、減衰部分8aと交差しない分割平面16を有する2つの部分ら構成されることを意味する。
【0144】
そのような分割平面16は、
図3から
図8に示されている。対称性により、全ての実施形態では複数の分割平面16が可能なことは明らかである。
【0145】
そのような分断設計の利点は、ベアリング減衰器要素6の装着又は設置を圧縮器全体を分解することなく行うことができることであり、その理由は、回転子シャフト1の端部に沿って摺動させる必要があるベアリング減衰器要素6の代わりにベアリング減衰器要素6の両方の構成要素を回転子シャフト1の周りに配置することができるからである。
【0146】
本発明は、例として説明して図面に示した実施形態に決して限定されず、むしろ本発明によるベアリング減衰器要素、そのようなベアリング減衰器要素を備えたベアリング及び圧縮器要素、及びそのようなベアリング減衰器要素を製造する方法は、本発明の範囲から逸脱することなく全ての種類の形態、寸法、及び変形に実現することができる。