特許第6896896号(P6896896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896896ロボットの構成要素用の可動ハードストップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896896
(24)【登録日】2021年6月11日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ロボットの構成要素用の可動ハードストップ
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20210621BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B25J19/06
   B25J19/00 C
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-4141(P2020-4141)
(22)【出願日】2020年1月15日
(62)【分割の表示】特願2019-500457(P2019-500457)の分割
【原出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2020-73298(P2020-73298A)
(43)【公開日】2020年5月14日
【審査請求日】2020年2月10日
(31)【優先権主張番号】15/204,780
(32)【優先日】2016年7月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511077292
【氏名又は名称】ユニバーサル シティ スタジオズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンス エリック
(72)【発明者】
【氏名】ブラム スティーヴン シー
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−013285(JP,U)
【文献】 特開2013−111718(JP,A)
【文献】 特開昭63−102891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/06
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
ロボットアームと、
前記ロボットアームに近接して配置された可動ハードストップと、
を備え、前記ロボットシステムは、前記ロボットアームの所望の経路に基づいて前記可動ハードストップを移動させて、第1の動作状態の間に前記可動ハードストップの第1の部分と前記ロボットアームの第2の部分との間に間隙を維持するように構成され、前記可動ハードストップは、第2の動作状態の間に前記ロボットアームの移動を阻止するように構成される、ロボットシステム。
【請求項2】
前記第1の動作状態を維持し、前記第2の動作状態が発生した場合に前記可動ハードストップを介して前記ロボットアームの移動を阻止するように、前記ロボットアームの移動及び前記可動ハードストップの移動を制御するように構成された1又は2以上の制御装置を備える、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記第2の動作状態は、前記可動ハードストップの前記第1の部分が前記ロボットアームの前記第2の部分に物理的に接触した状態を示す、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記第1の部分と前記第2の部分との間の動作距離を検出するように構成された近接センサを備える、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記間隙は、前記可動ハードストップの前記第1の部分と前記ロボットアームの前記第2の部分との間の閾値距離よりも大きい間隔を有し、前記第2の動作状態は、前記近接センサによって検出された前記第1の部分と前記第2の部分との間の前記動作距離が前記閾値距離よりも小さい状態に対応する、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記近接センサは、前記可動ハードストップ上に配置される、請求項4に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記間隙は、前記可動ハードストップの前記第1の部分と前記ロボットアームの前記第2の部分との間の所望の無視できない距離範囲を含み、前記第2の動作状態は、前記可動ハードストップの前記第1の部分と前記ロボットアームの前記第2の部分との間の動作距離が前記所望の無視できない距離範囲から外れた状態を示す、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記ロボットシステムはレールを備え、前記レール上に前記可動ハードストップのラックが取り付けられ、前記レールの周りで前記ラックがピニオンによって動かされ、前記ラックは、前記可動ハードストップの前記第1の部分を含む、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ピニオンを駆動するように構成されたモータを備える、請求項8に記載のロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットアームは、中心点の周りに中心を置きかつ前記ロボットアームの前記第2の部分を有するアーム延長部材を備え、前記可動ハードストップは、前記中心点の周りに中心を置きかつ前記可動ハードストップの前記第1の部分を有するラックを備え、前記アーム延長部材及び前記ラックは、前記中心点の周りで周方向に移動し、前記可動ハードストップの前記ラックの前記第1の部分は、前記第1の動作状態の間に前記ロボットアームの前記アーム延長部材の前記第2の部分から前記間隙だけ離間するように構成される、請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項11】
ロボットシステムを動作させる方法であって、
ロボットアームを作動させるステップと、
前記ロボットアームに近接して配置された可動ハードストップを、前記ロボットアームの所望の経路に基づいて、第1の動作状態の間に前記可動ハードストップの第1の部分と前記ロボットアームの第2の部分との間に間隙が維持されるように作動させるステップと、
を含み、前記可動ハードストップは、第2の動作状態の間に前記ロボットアームの移動を阻止するように構成される、方法。
【請求項12】
1又は2以上の制御装置を介して、前記ロボットアームの第1の作動経路及び前記可動ハードストップの第2の作動経路を決定するステップと、
前記1又は2以上の制御装置を介して、前記第1の作動経路及び前記第2の作動経路を実行するステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記可動ハードストップの前記第1の部分を前記ロボットアームの前記第2の部分に接触させるステップと、
前記可動ハードストップを介して、少なくとも1方向における前記ロボットアームの前記移動を阻止するステップと、
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
近接センサを介して、前記第1の部分と前記第2の部分との間の動作距離を検出するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
1又は2以上の制御装置を介して、前記可動ハードストップの前記第1の部分と前記ロボットアームの前記第2の部分との間の最小所望間隔を決定するステップを含み、前記間隙は、前記第1の動作状態の間に前記最小所望間隔以上であり、前記間隙は、前記第2の動作状態の間に前記最小所望間隔以下である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
1又は2以上の制御装置を介して、前記可動ハードストップの前記第1の部分と前記ロボットアームの前記第2の部分との間の所望の無視できない距離範囲を決定するステップを含み、前記第1の動作状態は、前記可動ハードストップの前記第1の部分と前記ロボットアームの前記第2の部分との間の動作距離が前記所望の無視できない距離範囲内に収まる状態を示し、前記第2の動作状態は、前記動作距離が前記所望の無視できない距離範囲から外れた状態を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記可動ハードストップを作動させるステップは、前記可動ハードストップ上に取り付けられたラックと連動するピニオンを回転させるステップを含み、前記ラックはレール上に配置され、前記レールに沿って回転又は並進する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ロボットシステムを動作させる方法であって、
1又は2以上の制御装置を介して、ロボットアームの移動と、前記ロボットアームに近接して配置された可動ハードストップの移動とを、前記ロボットアームの所望のロボットアーム経路に基づいて、第1の動作状態の間に前記可動ハードストップの第1の部分と前記ロボットアームの第2の部分との間に間隙が維持されるように制御するステップと、
前記1又は2以上の制御装置を介して、前記ロボットアームの前記移動と前記可動ハードストップの前記移動とを、第2の動作状態の発生に応答した場合に前記可動ハードストップが前記ロボットアームに物理的に接触して前記ロボットアームの前記移動を阻止するように制御するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記1又は2以上の制御装置を介して、前記ロボットアームのロボットアーム経路を決定するステップと、
前記1又は2以上の制御装置を介して、前記可動ハードストップの可動ハードストップ経路を決定するステップと、
前記1又は2以上の制御装置を介して、前記ロボットアーム経路及び前記可動ハードストップ経路を、前記第1の動作状態の間に前記間隙が維持され、前記第2の動作状態の発生に応答した場合に前記可動ハードストップが前記ロボットアームに物理的に接触して前記ロボットアームの前記移動を阻止するように実行するステップと、
を含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の動作状態は、ソフトウェアの故障を示す、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にロボット工学の分野に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、可動ロボット構成要素(例えば、ロボットのアーム)用の可動ハードストップに関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットシステムは、製造業、医療業及び娯楽業を含む多くの技術分野で採用されている。例えば、ロボットシステムは、製造工場において構成要素又はシステムの組み立てを容易にするように構成された可動ロボット構成要素を採用することができる。また、ロボットシステムは、ロボットシステムの保護を含む様々な理由により可動ロボット構成要素の運動を制限するように構成された制御装置を含むことができる。現在では、制御装置によって引き起こされる又は促進される運動制限が、可動ロボット構成要素の動作又は円滑性を不必要に制限する可能性があることが認識されている。その結果、制御装置は、従来のシステムにおける可動ロボット構成要素の性能又は効率を不必要に制限する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、可動ロボット構成要素の性能及び効率が向上するように改良された制御装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
元のクレームに記載された主題と同等の範囲の特定の実施形態が以下に要約されている。これらの実施形態は、本開示の範囲を限定することを意図しておらず、むしろこれらの実施形態は、開示された特定の実施形態の概要を提示することのみが意図される。実際に、本開示は、以下に記載の実施形態に類似した又はこれとは異なる場合がある様々な形態を含むことができる。
【0005】
1つの実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアームと、ロボットアームに近接して配置された可動ハードストップとを含む。可動ハードストップは、第1の動作状態では、ロボットアームから少なくとも1つの間隙だけ離間する。可動ハードストップは、第2の動作状態では、ロボットアームに物理的に接触する。また、ロボットシステムは、1又は2以上の制御装置を含み、制御装置は、ロボットアームの移動及び可動ハードストップの移動を制御して、第1の動作状態が維持されるように又は第2の動作状態が発生した場合にはハードストップがロボットアームの運動を阻止するように構成される。
【0006】
別の実施形態にとれば、ロボットシステム用の制御システムは、プロセッサ及びメモリを有する制御装置を含み、メモリは、プロセッサによって実行された時に制御装置に動作を実行させる命令を格納するように構成される。動作は、ロボットシステムのロボットアーム用の第1の移動経路をマップすることを含む。また、動作は、ロボットシステムの可動ハードストップ用の第2の移動経路をマップすることを含む。また、動作は、第1の移動経路及び第2の移動経路を実行することを含み、結果として第1の動作状態の間にロボットアームの緩衝部材と可動ハードストップの接触点との間に間隙が維持され、及び第2の動作状態では、ロボットアームの緩衝部材と可動ハードストップの接触点との間に間隙が維持されず、それにより緩衝部材及び接触点が第2の動作状態の間の互いに物理的に接触する。
【0007】
別の実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットシステムの中心点に中心を置くアーム延長部材を有するロボット部材を含む。また、アーム延長部材は、アーム延長部材のリップの第1の側面に配置された第1の緩衝部材と、アーム延長部材のリップの第2の側面に配置された第2の緩衝部材とを含み、リップは、アーム延長部材の中央部分から延びる。また、ロボットシステムは、ロボットシステムの中心点に中心を置いて中心点の周りに環状方向に配置されたラックを有する可動ハードストップを含み、アーム延長部材の中央部分の周りに配置され、アーム延長部材のリップの第1の緩衝部材から第1の間隙だけ、及びアーム延長部材のリップの第2の緩衝部材から第2の間隙だけ離間する。
【0008】
本開示の上記及び他の特徴、態様及び利点は、添付図面を参照して以下の詳細な説明を読むことでより良く理解できるはずであり、添付図面全体にわたって、類似の文字は類似する要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の態様による、製造工場及び可動ハードストップを有するロボットシステムの実施形態の概略側面図である。
図2】本開示の態様による、図1の線2−2に沿った図1のロボットシステムの実施形態の概略断面上面図である。
図3】本開示の態様による、図1の3−3線に沿った図1のロボットシステムの可動ハードストップ及びロボットアームの実施形態の概略側面図である。
図4】本開示の態様による、図1のロボットアーム及び可動ハードストップ、ならびにロボットアーム及び可動ハードストップを制御するための制御システムの実施形態の概略分解組立図である。
図5】本開示の態様による、図4のロボットアーム、可動ハードストップ、及び制御システムを動作させる方法を示すプロセスフロー図である。
図6】本開示の態様による、図1のロボットアーム及び可動ハードストップ用にマップされた、許容誤差範囲を含む位置対時間のグラフの実施形態を示す。
図7】本開示の態様による、ロボットアーム用の可動ハードストップの実施形態の概略側面図である。
図8】本開示の態様による、ロボットアーム用の可動ハードストップの実施形態の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、ロボット工学に関し、より具体的には、ロボットシステムの可動ロボット構成要素(例えば、ロボットのアーム)用の可動ハードストップに関する。例えば、ロボットアームのような可動ロボット構成要素は、制御システムによって制御することができる。制御システムは、可動ロボット構成要素に移動するように命令する前又はその間に、可動ロボット構成要素の経路をマップすることができる。制御システムは、可動ロボット構成要素の移動における意図した結果を考慮して、及び可動ロボット構成要素を取り囲む環境を考慮して、経路をマップすることができる。例えば、制御システムは、可動ロボット構成要素の経路をマップして、ロボットの構成要素が、周囲の環境の他の態様に干渉することなく(例えば、環境の壁に接触することなく)物体と相互作用する(例えば、物体を拾い上げる、落とす、移動させる、押す、引く、又は持ち上げる)ようにマップすることができる。
【0011】
本開示の実施形態によれば、ロボットシステムは、可動ロボット構成要素の少なくとも一部に近接して配置された可動ハードストップを含むことができる。可動ハードストップ(複数可)は、制御システムによってマップされた可動ロボット構成要素の経路を模倣することができる。例えば、制御システムは、可動ハードストップに、可動ロボット構成要素の経路を「たどる」ように命令することができ、又は制御システムは、可動ハードストップ(複数可)がたどる別個の経路を計算及びマップすることができる(例えば、可動ロボット構成要素の経路に基づいて、可動ロボット構成要素の運動の意図した結果に基づいて、及び/又は周囲環境に基づいて)。従って、可動ロボット構成要素が制御装置によって可動ロボット構成要素用にマップされた経路から外れると、可動ハードストップは、可動ロボット構成要素がロボットを取り囲む環境に干渉するのを阻止することができる。従って、可動ハードストップ(例えば、動かない又は「堅い」構成要素とは対照的である)は、様々な位置で、可動ロボット構成要素の望ましくない運動(例えば暴走)を、可変様式で可動ロボット構成要素が進行可能な空間容積を不必要に制限することなく、阻止することができる。換言すると、本開示の実施形態は、可動ハードストップを含み、固定ハードストップを含まず、結果としてロボットアームの運動が(例えば、固定ハードストップによって)不必要に制限されないが、依然としてハードストップによって(例えば、可動ハードストップによって)保護される。
【0012】
図1は、製造工場10及び該製造工場10内に配置されたロボットシステム12の実施形態の概略側面図である。図示した実施形態では、ロボットシステム12は、物体14を1つの位置(例えばコンベヤシステム16)から別の位置(例えばコンベヤシステム18)に移動させるように構成できる。例えば、ロボットシステム12は、物体14を掴んで動かすように構成された把持機構22を有するロボットアーム20を含む。ロボットアーム20は、第1の結合部21によって第1の環状方向19(例えば、第1の軸線23の周りに環状に延びる)に旋回可能とすることができる。また、ロボットアーム20は、第2の結合部24によって第2の環状方向25(例えば、第2の軸線26の周りに環状に延びる)に旋回可能とすることができる。さらに、ロボットアーム20の把持機構22は、第3の結合部27によって第3の環状方向28(例えば、軸線29の周りに環状に延びる)に旋回可能とすることができる。従って、第1の結合部、第2の結合部、及び第3の結合部21、24、27によって、ロボットアーム20は、物体14を第1のコンベヤベルト16から持ち上げて旋回させ、物体14を第2のコンベヤシステム18上に置くことができる。以下では、第2の接合部24及び対応する特徴を詳細に説明するが、第1の結合部及び/又は第3の接合部21、27には、第2の結合部と同一又は類似の特徴及び機能が付加的に又は代替的に適用できることに留意されたい。他の実施形態では、追加の又はより少ない当該結合部を用いることができる。
【0013】
図示した実施形態に示すように、第2の接合部24は、その構成要素を囲むように構成されたカバー30を含むことができる。例えば、カバー30は、ロボットアーム20のアーム延長部材32の上に配置することができ、アーム延長部材32は、ロボットアーム20に剛結合され、アーム延長部材32を(例えば、図示した実施形態では方向26と平行に)貫通する長手方向軸線17の周りで回転することによって、ロボットアーム20に動きを伝えることができる。例えば、アーム延長部材32は、略円筒形とすることができ、長手方向軸線17の周り(例えば、環状方向25)を回転することができる。さらに、ロボットアーム20は、アーム延長部材32に剛結合することができ、アーム延長部材32から外方に延びることができる。従って、アーム延長部材32が環状方向25に長手方向軸線17の周りを回転すると、長手方向軸線17から延びるロボットアーム20も、アーム延長部材32の長手方向軸線17の周り(例えば、環状方向25)を回転することができる。従って、ロボットアーム20の遠位端に配置された把持部材22は、長手方向軸線17の周りを回転することができ、それによって把持部材22が把持した何らかの物体(例えば物体14)の移動を助ける。
【0014】
図示のように、第2の結合部24は、アーム延長部材32又はロボットアーム20に剛結合されていない静止基部33を含むこともできる。換言すると、アーム延長部材32及びこれに剛結合されたロボットアーム20が長手方向軸線17の周りを回転する場合、静止基部33は静止したままである。例えば、静止基部33は方向26に延びる開口部55を含むことができ、アーム延長部材32(又はその一部)は開口部55を貫通する。従って、アーム延長部材32は、静止基部33に不必要に当接することなく静止基部33の開口部55内で回転することができる。換言すると、静止基部33は、アーム延長部材32が環状方向25に回転するのを阻止するような方法で該アーム延長部材32に接触することはない。静止基部33の開口部55は、図示したアーム延長部材32によって隠蔽されている(そのため破線で示されている)が、後の図面を参照して詳細に示されることに留意されたい。アーム延長部材32は、図示の実施形態では、略円筒形であるが、長方形、正方形、三角形、又は他の何らかの適切な形状とし得ることにも留意されたい。静止基部33の対応する開口部55(例えば、アーム延長部材32が貫通する)は、開口部55が貫通する静止基部33に対してアーム延長部材32が移動できるような任意の形状及び/又は大きさとすることができる。
【0015】
本実施形態によれば、ロボットシステム12は、ロボットアーム20の望ましくない運動(例えば、暴走)を阻止するように構成された特徴を含むことができる。例えば、図示のように、アーム延長部材32は、その中央部分37から延びるリップ35を含む。中央部分37は、略円筒形とすることができ、静止基部33の開口部55を貫通することができる。リップ35は、中央部分37から延びる弓形形状とすることができる。さらに、リップ35は、静止基部33から外側(例えば、方向26において)、より具体的には中央部分37が貫通する静止基部33の開口部55から外側でアーム延長部材32上に位置することができる。換言すると、リップ35は、中央部分37の第2の周方向部分43の第2の半径49よりも大きい第1の半径47を有する第1の周方向部分41を含むことができる。アーム延長部材32の中央部分37が貫通する静止基部33の開口部55は、中央部分37の第2の周方向部分43のみを収容する大きさとすることができる(例えば、リップ35の第1の周方向部分41の第1の半径47は、静止基部33の開口部55の半径よりも大きいものとすることができる)。従って、中央部分37の第2の周方向部分43の第2の半径49よりも大きい第1の半径47の第1の周方向部分41を有するリップ35は、方向26に対して静止基部33から(例えば、静止基部33の開口部55から)外側(例えば、静止基部33を貫通する開口部55の外側)でのみアーム延長部材32上に位置することができる。
【0016】
図示すように、中央部分37から延びるリップ35は、リップ35上に配置された第1の緩衝部材34及び第2の緩衝部材36を含むことができる。例えば、第1の緩衝部材及び第2の緩衝部材34、36は、リップ35の第1の周方向部分41と中央部分37の第2の周方向部分43との間に延びている。換言すると、第1の緩衝部材及び第2の緩衝部材34、36は、リップ35の反対側に配置されている。しかしながら、別の実施形態(例えば、アーム延長部材32の形状が異なる)では、アーム延長部材32は、図示した第1の緩衝部材及び第2の緩衝部材34、36とは対照的に、唯一の緩衝部材を含むことができる。
【0017】
また、ロボットシステム12は、ラック40を有する可動ハードストップ38を含み、ラック40は、第2の結合部24の静止基部33に対して長手方向軸線17の周りを回転する(例えば、環状方向25)。例えば、図示した実施形態では、可動ハードストップ38は、ラック40、ピニオン42、及びレール44を含む。レール44は、環状方向25(例えば、アーム延長部材32の長手方向軸線17の周り)に延びており、静止基部33上に(例えば、剛結合されて)位置すること、又は他の方法でロボットに組み込むことができ、結果としてレール44は、ロボットシステム12の動作中に静止したままである。ラック40は、レール44に取り付けられ、レール44に沿って(例えば、環状方向25で長手方向軸線17の周りに)移動するように構成されている。ピニオン42は、例えば、回転するとラック40を回転させる(例えば、ラック40をレール44に沿って長手方向軸線17の周りに環状方向25に移動させる)ねじ部材とすることができる。例えば、ピニオン42が第3の環状方向28に回転すると、ピニオン42の歯又はねじ(例えば、らせんねじ)は、ラック40の歯と噛み合って、ラック40を第2の環状方向25(例えば、アーム延長部材32の長手方向軸線17の周り)でレール44に沿って回転させる。
【0018】
一般的に、以下に詳細に説明するように、可動ハードストップ38は、通常の動作状態時の間に、ラック40がアーム延長部材32の運動をたどる(例えば模倣する)ように制御することができる。従って、通常の動作状態時の間に、ラック40は、アーム延長部材32のリップ35上に配置されたいずれの緩衝部材34、36にも接触しない。しかしながら、ロボットシステム12は、ロボットアーム20を不適当に作動させる可能性があり、これは望ましくない動作状態と呼ぶ場合がある。例えば、ロボットシステム12の制御装置のソフトウェアが動作不良になると、ロボットアーム20が意図しない経路をたどる可能性がある。望ましくない動作状態時の間に、アーム延長部材32のリップ35上に配置された緩衝部材34、36のいずれかは可動ハードストップ38のラック40に接触することができるので、ラック40は、アーム延長部材32の回転を阻止することができる。換言すると、ロボットアーム20及び対応するアーム延長部材32が不適当に回転すると(例えば、運動タイムフレームを含む所望の経路に対して)、アーム延長部材32の緩衝部材34、36の一方は、可動ハードストップ38のラック40に接触することができ(例えば、ラック40の1又は2以上の接触点39に沿って)、アーム延長部材32、従ってアーム延長部材32に剛結合されたロボットアーム20の望ましくない移動を阻止する。しかしながら、緩衝部材34、36(又は単一の緩衝部材)は、図示した実施形態に示した方法とは異なる方法でロボットシステム12上に置くこと、位置決めすること、又は配置するこができ、及び本明細書で用いる用語「緩衝部材」は、可動ハードストップのラック40が接触できるロボットアーム20(又は対応するアーム延長部材32)上の点を指すことに留意されたい。
【0019】
図示した実施形態では、可動ハードストップ38は、緩衝部材34、36のいずれかにに接触すると、ロボットアーム20の動きを強制的に阻止することができる。別の実施形態では、緩衝部材34、36は、内部又は表面に配置されたセンサを含むことができ、センサは、緩衝部材34、36の一方と可動ハードストップ38との間の近接(又は接触)を検出することができる。近接又は接触が検出されると、制御システムは、ロボットアーム20の動きを停止させることができる。また、制御システムは、ロボットアーム20、可動ハードストップ38、又はその両方の動きを決定すること及び実行することに関与できる。
【0020】
例えば、図示した実施形態では、ロボットシステム12は、アーム制御装置48及びハードストップ制御装置50を有する制御システム46を含む。別の実施形態では、アーム制御装置48及びハードストップ制御装置50は、制御システム46の単一の制御装置に組み込むことができる。図示するように、アーム制御装置48はプロセッサ52及びメモリ54を含み、同様にハードストップ制御装置50はプロセッサ56及びメモリ58を含む。各メモリ54、58は、対応するプロセッサ52、56で実行された時に対応する制御装置48、50に特定の動作を実行させる、実行可能な命令を格納するように構成することができる。例えば、アーム制御装置48のメモリ54は命令を含むことができ、命令がプロセッサ52によって実行されると、アーム制御装置48(又はそのプロセッサ52)は、ロボットアーム20の経路をマップすることができる(一部の実施形態において、把持機構22の移動を含む)。プロセッサ52は、複数の要因を考慮してロボットアーム20の経路をマップすることができる。例えば、プロセッサ52は、ロボットアーム20の経路を、経路の意図した結果に基づいてマップすることができる。図示した実施形態において、アーム制御装置48によってマップされた経路の意図した結果は、ロボットアーム20が第1のコンベヤシステム16から物体14を拾い上げ、物体14を第2コンベヤシステム18の上に搬送し、第2コンベヤシステム18に置くのを可能にすることである。
【0021】
さらに、ハードストップを制御する装置50のメモリ58は、プロセッサ56で実行された時に、ハードストップ制御装置50(又はそのプロセッサ56)に可動ハードストップ38の経路をマップさせる命令を含むことができる。例えば、可動ハードストップ38の経路は、可動ハードストップ38がアーム延長部材32の意図した経路と同様に又はそれと一緒に回転するようにマップすることができる。より具体的には、ハードストップ制御装置50(又はそのプロセッサ56)は、可動ハードストップ38の経路をロボットアーム20(及び対応するアーム延長部材32)用にマップされた意図した経路に基づいてマップして、可動ハードストップ38が経路をたどるようにピニオン42を特定の速度及び特定の方向(例えば、第2の環状方向25又はその反対方向)に回転させる。図示した実施形態では、ハードストップ制御装置50及びアーム制御装置48は、矢印51で示すように通信可能に接続される。従って、アーム制御装置48は、ロボットアーム20(ひいては対応するアーム延長部材32)用にマップされた経路又は意図された経路をハードストップ制御装置50に伝えることができる。ハードストップ制御装置50は、ロボットアーム20用にマップされた経路をアーム制御装置48から受け取り、次に、ロボットアーム20用にマップされた経路に基づいて可動ハードストップ38用の経路をマップすることができる。一部の実施形態では、アーム制御装置48及びハードストップ制御装置50は、互いに別々に、各経路の意図した結果及び製造工場10の周囲環境にもっぱら基づいて、ロボットアーム20の経路及び可動ハードストップ38の経路をそれぞれマップすることができる。いずれの実施形態でも、ロボットアーム20(及び対応するアーム延長部材32)がアーム制御装置48によってマップされた経路から(例えば、ソフトウェアの故障、暴走、又は他の原因により)外れると、可動ハードストップ38は、ロボットアーム20のアーム延長部材32の緩衝部材34、36の一方が可動ハードストップ38に接触する際にロボットアーム20の動きを阻止することができる。換言すると、可動ハードストップ38(例えば、可動ハードストップ38のラック40の両接触点39の一方)は、ロボットアーム20のアーム延長部材32の緩衝部材34、36の一方に物理的に接触することができる。
【0022】
ロボットアーム20、アーム延長部材32、及びアーム延長部材32が貫通する開口部55を有する静止基部33をさらに説明するために、図2図1の線2−2に沿ったロボットシステム12の実施形態の概略断面上面図が示されている。図示した実施形態では、前述したように、静止基部33は、アーム延長部材32の中央部分37が貫通する開口部55を含む。例えば、アーム延長部材32の中央部分37に対応する第2の周方向部分43の第2の半径49は、静止基部33を貫通する開口部55の半径と実質的に同じか又はそれよりも小さくすることができる。従って、アーム延長部材32の中央部分37は静止基部33の開口部55内で回転することができ、その際、静止基部33の特徴部は、アーム延長部材32(及びこれに結合されたロボットアーム20)の回転運動(例えば、長手方向軸線17の周り及び環状方向25の周りの)を妨げることはない。静止基部33は、長手方向軸線17の周り及び環状方向25におけるロボットアーム20の回転運動を容易にする空洞57を含むこともできる。静止基部33は、その上に空洞57が配置される下部59を含むことができる。
【0023】
図示のように、静止基部33は、これに結合された可動ハードストップのレール44を含むことができる。レール44は、静止しているにも関わらず、可動ハードストップ38の構成要素とみなし得ることに留意されたい。例えば、前述したように、可動ハードストップ38のラック40は、レール44に回転可能に結合され、結果としてレール44は静止したままであり、ラック40は、環状方向25にレール44の周り及び長手方向軸線17の周りを回転することができる。従って、ラック40は、アーム延長部材32の運動を模倣することができる。斜視図で図示したので、リップ35は、図示した実施形態では見えない(例えば、リップ35は、図示した断面よりも上方に配置されている)。しかしながら、リップ35は、点線で表わして図示したように、静止基部33の開口部55の完全に外側に配置されている。従って、リップ35は、静止基部33に接触してアーム延長部材32の運動を妨げることはなく、むしろ、前述したようにアーム延長部材32及び対応するリップ35が望ましくない経路に沿って回転すると、ラック40は、リップ35に接触してリップ35、対応するアーム延長部材32、及び対応するロボットアーム20の運動を阻止する。
【0024】
次に図3を参照すると、図1の3−3線に沿った、可動ハードストップ38及び図1のロボットアーム20のアーム延長部材32を有する結合部24の実施形態の概略側面図が示されている。前述したように、アーム延長部材32(より具体的にはアーム延長部材32の中央部分37)は、ロボットシステム12の第2の結合部24の静止基部33(例えば、図2に示すように静止基部33の開口部55)を貫通している。さらに、アーム延長部材32は、ロボットアーム20に剛結合するか又は一体に結合することができる。
【0025】
前述したように、可動ハードストップ38は、ピニオン42と、レール44に取り付けられたラック40(例えば、歯62を有する)とを含み、レール44は、例えば、静止して、ロボットシステム12の静止基部33に取り付けることができる。図示した実施形態のピニオン42は、その上に取り付けられた(例えば、ピニオン42のモータ61から延びる)ジャッキねじ60を含み、ジャッキねじ60はラック40の歯62と噛み合っている。別の実施形態では、ピニオン42は、ラック40の歯62と噛み合い、ラック40を駆動して第2の環状方向25(又は反対方向)に回転させるのに適した、異なる種類のねじ、歯、又は他の任意の噛合い機構を含むことができる。制御システム46のハードストップ制御装置50は、アーム制御装置48によってロボットアーム20用にマップされたロボットアーム20(及び対応するアーム延長部材32)の経路に基づいて、可動ハードストップ38の経路をマップすることができる。実際には、一部の実施形態において、アーム制御装置48は、ロボットアーム20用にマップされた経路をハードストップ制御装置50に伝達し、ハードストップ制御装置50は、ロボットアーム20の経路(又はその少なくとも一部)に基づいて可動ハードストップ38の経路をマップする。次に、ハードストップ制御装置50及びアーム制御装置48は、可動ハードストップ38及びロボットアーム20(及び対応するアーム延長部材32)にマップされた経路をそれぞれ実行することができる。
【0026】
図示のように、可動ハードストップ38のラック40は、環状方向25に延びる弓形長さ64を含む。アーム延長部材32のリップ35は、同様に環状方向25に延びる弓形長さ66を含む。さらに、ラック40とアーム延長部材32のリップ35の緩衝部材34、36との間に間隙68、70が存在する(例えば、通常の動作条件の許容範囲内で変化する)。換言すると、通常の動作状態時の間に、ラック40と緩衝部材34との間に第1の間隙68が存在し、ラック40と緩衝部材36との間に第2の間隙70が存在する。しかしながら、前述したように、ロボットアーム20は、特定の動作条件で(例えばソフトウェアの問題又は他の原因により移動して、アーム延長部材32の緩衝部材34、36の一方がラック40に接触することがある。従って、特定の動作条件では、間隙68、70の一方は減少して、対応する緩衝部材34、36がラック40に接触する際にゼロになる場合がある。一部の実施形態では、第1の間隙68及び第2の間隙70は、単一の間隙とすること、又は説明目的で単一の間隙と呼ぶことができることに留意されたい。作動時、間隙68、70の大きさは、ラック40及びアーム延長部材32が動くと変わり得ることにも留意されたい。従って、「間隙」は正確な寸法ではなく、むしろラック40と緩衝部材34、36との間の任意の空間を指す。間隙68、70の大きさは、後の図を参照して以下で詳細に説明するように、ロボットシステム12の物理的制限に対応する許容誤差範囲の結果として変わり得る。例えば、ラック40及びアーム延長部材32は、漸次的ステップで動くことができ、これは非無限小ではないステップサイズを含む。従って、ロボットシステム12の作動時の、間隙68、70の大きさは変化することができる。
【0027】
図示した実施形態をさらに参照すると、間隙68、70は、アーム延長部材32及び可動ハードストップ38のマップされた経路に関連する許容誤差範囲に基づいて、弓形長さ(例えば、環状方向25に延びる)を含む大きさにすることができる。例えば、許容誤差範囲は、ロボットシステム12の機械的制限に対応することができ、それによりラック40及び可動ハードストップ38は、ラック40及び可動ハードストップ38の対応するマップされた経路を、上述した機械的制限(例えば、ラック40及びアーム延長部材32に与えられる動きのステップサイズ制限)に基づいて、ある程度の精度でたどることしかできない。例えば、間隙68、70は、上述した通り、アーム延長部材32、可動ハードストップ38、又はその両方の動きを、アーム延長部材32、可動ハードストップ38、又はその両方の許容誤差範囲内に適応させるのに十分な大きさにすることができる。従って、アーム延長部材32(従って、ロボットアーム20)及び/又は可動ハードストップ38のラック40がアーム延長部材32(従って、ロボットアーム20)の許容誤差範囲内で移動する限り、可動ハードストップ38は、アーム延長部材32(従って、ロボットアーム20)の移動を妨げない。
【0028】
さらに、ラック40及びアーム延長部材32の環状方向の大きさ64、66(例えば、アーム延長部材の緩衝部材34、36間に広がる)は、環状方向25におけるロボットアーム20の所望の運動範囲に適応するように決めることができる。例えば、ピニオン42のジャッキねじ60は、回転するだけで横方向(例えば、方向23、26及び29)に動かないので、ジャッキねじ60は、ラック40の歯62がピニオン42のジャッキねじ60に接触する(従って、物理的に近接する)位置にあるときにのみラック40に回転を付与することができる。換言すると、ラック40の運動範囲は、ラック40がジャッキねじ60の上に位置しなくなると途切れる。従って、可動ハードストップ38のラック40の運動範囲は、ラック40の弧状長さ64によって制限される。しかしながら、ラック40はまた、アーム延長部材32の緩衝部材34、36に接触できることも必要であり、従って、アーム延長部材32には各緩衝部材34、36の間に少なくとも何らかの無視できない距離66が必要である。可動ハードストップ38の運動範囲の改善(従って、ロボットアーム20及び対応するアーム延長部材32の運動範囲の改善)を可能にするために、ラック40の環状方向距離64を長くして、アーム延長部材32のリップ35の環状方向距離66(例えば、アーム延長部材32の緩衝部材34、36の間)を短くすることができる。例えば、ラック40の環状方向距離64は、図示したレール44(例えば軌道)に沿った角度で、100度から355度、200度から350度、又は300度から345度の間にすることができる。もちろん、距離66及び間隙68、70は、レール44(例えば軌道)に沿った360度以外の残りの角度に相当する。
【0029】
図4は、ロボットシステム12及び対応する制御システム46の概略図を示す。図示した実施形態では、制御システム46は、前述したように、ロボットアーム20の動きを制御するように構成されたアーム制御装置48と、可動ハードストップ38の動きを制御するように構成されたハードストップ制御装置50とを含む。
【0030】
アーム制御装置48はメモリ54及びプロセッサ52を含み、メモリ54は、対応するプロセッサ52、56で実行された時に、対応する制御装置48、50に特定の動作又はステップを実行させる命令を格納するように構成されている。例えば、メモリ54に格納された命令がプロセッサ52によって実行されると、アーム制御装置48(又はプロセッサ52)は、ロボットアーム20用の所望の運動経路をマップ(例えば、計算、導出、決定)することができる。経路は、運動の意図した結果、及びロボットシステム12を囲む環境に依存することができる。運動の意図した結果は命令にコード化することができ、又は意図した結果は制御装置48に入力することができる。例えば、オペレータは、制御装置48(又は全体制御システム46)に、運動の意図した結果を(例えば、制御装置48(又は制御システム46)に物体をある場所から別の場所に移動させたいという要求を入力することによって)入力することができる。次に、プロセッサ52は、意図した結果を実現するためにロボットアーム20の経路をマップすることができる。
【0031】
さらに、プロセッサ52は、少なくとも1つのモータ駆動装置100と通信して、アーム制御装置48(又はそのプロセッサ52)によってマップされた経路に基づいて、ロボットアーム20を駆動して回転させて(例えば、介在モータによって)、ロボットアーム20に所望の運動を生じさせることができる。図示した実施形態には、ロボットシステム12の第2の結合部24に結合される(1つのモータ駆動装置100のみが示されている例えば、図示した実施形態には示していない仲介モータによる)。しかしながら、ロボットアーム20用にマップされた経路は、所望の運動及び所望の運動の意図した結果を実現するために、第1の結合部21、第2の結合部24、第3の結合部27の運動又はそれらの任意の組合せ運動を必要とする場合があり、結合部21、24、27は、それ自体の独立したモータ駆動装置(及び/又はそれ自体の独立したモータ)を含むことができる。さらに、前述したように、結合部21、24、27は、さらに、結合部24に関して上述した及び後述する同様の可動ハードストップ38及び関連する制御機能を含むことができる。本明細書で用いる「意図した結果」は、包括的な意図した結果(例えば、物体をある場所から別の場所に移動すること)、又は包括的な意図した結果を構成する複数の個別の意図した結果の1つ(例えば、物体をある場所から別の場所に移動させるためのロボットアーム20の暫時的ステップ)を指すことができる。さらに、アーム制御装置48は、経路をマップした後、又は経路をマップしている間、又は経路の他の部分はマップされていないが特定の部分がマップされた後に、ロボットアーム20を動かすことができることに留意されたい。
【0032】
アーム制御装置48は、矢印51で示すように、ロボットアーム20用にマップされた経路又は経路の一部をハードストップ制御装置50に伝達することができる。ハードストップ制御装置50は、メモリ58及びプロセッサ56を含み、メモリ58は、プロセッサ56で実行された時に、ハードストップ制御装置50に特定の動作又はステップを実行させる命令を格納するように構成されている。例えば、メモリ58に格納された命令がプロセッサ56によって実行された時に、ハードストップ制御装置50(又はプロセッサ56)は、ロボットアーム20用にマップされかつアーム制御装置48から受け取った経路を読み取ることができる。次に、ハードストップ制御装置50は、アーム制御装置48によってロボットアーム20用にマップされかつアーム制御装置48から受け取った経路を読み取ることに完全に又は部分的に基づいて、可動ハードストップ38用の経路をマップすることができる。もしくは、ハードストップ制御装置50(又はそのプロセッサ56)は、アーム制御装置48によってロボットアーム20用にマップされた経路を受け取ることなく又は読み取ることなく、可動ハードストップ38の経路をマップすることができる。例えば、ハードストップ制御装置50は、可動ハードストップ38用の経路をロボットアーム20の所望の運動に完全に基づいてマップすることができる(例えば、ロボットアーム20の経路をマップするためにアーム制御装置48が使用したのと同一の(又は同一の部分集合の)パラメータ(複数可))。
【0033】
次に、ハードストップ制御装置50は、ハードストップ38(例えば、モータ61)に結合したモータ駆動装置102と通信して、可動ハードストップ38のピニオン42のジャッキねじ60を駆動することができる。ジャッキねじ60(又は他の適切な噛合い機構)は、可動ハードストップ38の歯62と噛み合い、可動ハードストップを第2の環状方向26(又は第2の環状方向26の反対方向)に回転させる。
【0034】
図5は、図4のロボットアーム20、可動ハードストップ38及び制御システム46を動作させる方法110を示すプロセスフロー図である。図示した実施形態では、方法110は、ロボットアーム用の所望の運動経路をマップするステップを含む(ブロック112)。例えば、前述したように、アーム制御装置は、特定の動作又は目標を実現するためにロボットアームの運動経路をマップすることができる。動作又は目標は、物体をある場所から別の場所に移動すること、物体を組み立てること、又は物体と別の物体とを結合するなどの、ロボット工学に関連する任意の適切な動作又は目標を含むことができる。また、経路は、ロボットシステム(又はロボットアーム)を囲む環境を考慮してマップすることができる。例えば、経路は、周囲環境との接触又は干渉が所望の動作又は目標の一部でない限り、周囲環境に接触するか又は干渉することなく、ロボットアームが所望の動作又は目標を達成するのを可能にするようにマップすることができる。所望の動作又は目標は、制御装置のソフトウェア構成要素にプログラムすることができ、又は所望の動作は、制御装置を操作するオペレータによって入力する(例えばインプットする)ことができる。実際には、現在、所望の動作又は目標を入力するための何らかの適切な機構が想定されている。
【0035】
前述したように、ロボットシステム(又はそのロボットアーム)は、任意数の結合部(例えば、1つの結合部、2つの結合部、3つの結合部、4つの結合部、5つの結合部、6つの結合部、又はそれ以上の結合部)を含むことができ、各結合部は、アーム制御装置(又はロボットシステムの別の制御装置)に通信可能に接続されている。従って、アーム制御装置は、ロボットシステムの1又は2以上の結合部の運動を制御することができる。従って、アーム制御装置は、制御装置によってマップされた経路に従ってロボットアームを駆動し、ロボットアームの所望の動作又は目標を実現するようになっている。
【0036】
また、方法110は、可動ハードストップ用の所望の運動経路をマップするステップを含む(ブロック114)。前述したように、可動ハードストップは、ロボットシステムの特定の結合部用の可動ハードストップとすることができる。一部の実施形態では、可動ハードストップは、ロボットシステムの2以上の結合部用の可動ハードストップとして作動可能である。例えば、可動ハードストップは、ロボットシステムの第1の結合部からロボットシステムの別の結合部に移動できる。もしくは、ロボットシステムの複数の結合部は、互いに近接して、可動ハードストップに近接して、又はその両方で配置することができ、結果として可動ハードストップは、ある結合部から別の結合部に移動させる必要なしに、ロボットシステムの複数の結合部用の可動ハードストップとして動作可能である。さらに、上述したように、各結合部は、それ自体の可動ハードストップ及び関連する制御機能を有することができる。
【0037】
可動ハードストップの経路をマップするために、ハードストップ制御装置は、ロボットアーム用にマップされた所望の運動経路をアーム制御装置から受け取ることができる。例えば、アーム制御装置とハードストップ制御装置とは、互いに通信可能に接続することができる。一部の実施形態では、アーム制御装置及びハードストップ制御装置は、単一の一体型制御装置にすることができる。図示した実施形態では、ハードストップ制御装置は、アーム制御装置によってロボットアーム用にマップされた所望の運動経路を受け取り、ロボットアーム用の所望の運動経路を考慮して可動ハードストップ用の所望の運動経路をマップする。
【0038】
他の実施形態では、ハードストップ制御装置は、可動ハードストップの所望の運動経路を、ロボットアーム用にマップされた所望の運動経路とは無関係にマップすることができる。例えば、ハードストップ制御装置は、アーム制御装置が受け取るロボットアームの所望の運動目標に関する入力と同じ入力を受け取ることができる。ロボットアームの所望の運動目標に関する入力に基づいて、ハードストップ制御装置は、可動ハードストップの所望の運動経路を上記説明に従ってマップすることができる。前述したように、可動ハードストップは、ロボットシステムの2以上の結合部用のハードストップとして作動することができる。一部の実施形態では、可動ハードストップは、ロボットシステムの2つの結合部間を橋渡しする(例えば横断する)軌道上に配置することができる。ハードストップ制御装置は、どの結合部が可動ハードストップの作動(例えば、可動ハードストップによる保護)を必要とするかに応じて、可動ハードストップに、1つの結合部から別の結合部へ軌道に沿って移動するように命令することができる。可動ハードストップが一方の結合部から他方の結合部へ軌道に沿って移動する前に、その間に、又はその後に、ハードストップ制御装置は、アーム制御装置によって作動させられる結合部の所望のマップされた運動経路、所望の動作又は目標を考慮して、可動ハードストップの所望の運動経路をマップすることができる。
【0039】
図示した実施形態では、方法110は、ロボットアームの所望の運動経路及び可動ハードストップの所望の運動経路を実質的に同時に実行するステップを含む(ブロック116)。例えば、前述したように、アーム制御装置は、ロボットアーム用にマップされた所望の運動経路を実行し、ハードストップ制御装置は、可動ハードストップ用にマップされた所望の運動経路を実行することができる。従って、ロボットアームは、ロボットアーム用の所望の運動経路に対応する実際の運動経路に沿って移動し、可動ハードストップは、可動ハードストップ用の所望の運動経路に対応する実際の運動経路に沿って移動する。一般的に、可動ハードストップのラックは、ロボットアーム(例えば、ロボットアームのアーム延長部材の緩衝部材)に近接して移動する。前述したように、可動ハードストップのラックがロボットアームのアーム延長部材の緩衝部材に近接して移動すると、ロボットアームは、通常の動作時に、ロボットアーム用にマップされた実際の運動経路に沿って完全に自由に運動することができる。しかしながら、可動ハードストップのラックとロボットアームのアーム延長部材の緩衝部材とが近接すると、ロボットアーム(及び対応するアーム延長部材)が、ロボットアーム用にマップされた所望の運動経路の外側に、又は所望の運動経路の許容誤差範囲の外側に動くと、可動ハードストップのラックがロボットアームの運動を妨げる。
【0040】
例えば、図6は、位置122対時間124のグラフ120の実施形態の説明図である。グラフ120のキー126に示すように、グラフ120は、アーム延長部材32及び(例えば、可動ハードストップ38の)ラック40のマップされた所望の運動経路132の表現を含む。アーム延長部材32とラック40とは異なる位置にあることができるが、ラック40のマップされた運動は、アーム延長部材32のマップされた運動に対応する(例えば模倣する)ことを意図することに留意されたい。従って、アーム延長部材32の位置は、ラック40の位置と対応するように位相シフトすることができ、逆も同様である。より具体的には、任意の所与の時間におけるアーム延長部材32の位置は、ベクトル133の位置(例えば、アーム延長部材32の緩衝部材34、36間の中央にある)に対応することができ、任意の所与の時間におけるラック40の位置は、ベクトル135の位置(例えば、ラック40の両接触点39間の中央にある)に対応することができ、アーム延長部材32のベクトル133は、ラック40のベクトル135と整列するために位相シフト(例えば180度)することができる。一般的に、位相シフト後のベクトル133、135用にマップされた所望の運動経路132は、実質的に同じとすることができる。図示したグラフ120において、所望の運動経路132を示すために利用されるベクトル133、135は、対応するアーム延長部材32及びラック40の任意の点とそれぞれ交差することができ、それに応じて位相シフトすることができる。換言すると、緩衝部材34、36の間の中央に置いて示されたベクトル133の位置、及びラック40の中央と交差して示されたベクトル135の位置は、例示的であり非限定的である。
【0041】
図示したグラフ120に示すように、アーム延長部材32の許容誤差範囲128及びラック40の許容誤差範囲130はグラフ120上に含めることができる。許容誤差範囲128、130は、ロボットシステムの機械的制限に対応することができる。例えば、アーム延長部材32及びラック40は、非無限小の個別のステップで回転することができる。従って、アーム延長部材32及びラック40は、通常の動作状態時の間に、対応する許容誤差範囲128、130内で、それぞれマップされた所望の運動経路132をたどることができる。さらに、アーム延長部材32の緩衝部材34、36とラック40の接触点39との間の間隙68、70は、組み合わされた許容誤差範囲131(例えば、アーム延長部材32の許容誤差範囲128及び可動ハードストップ38のラック40の許容誤差範囲130)内でのアーム延長部材32及びラック40の自由な運動に適応する大きさである。しかしながら、間隙68、70は、組み合わされた許容誤差範囲131のみに適合するのにまさに十分な大きさとすることができる。換言すると、アーム延長部材32及び/又はラック40が、組み合わされた許容誤差範囲131の外側の領域140に移動すると、緩衝部材34、36の一方が接触点39の一方に接触して、ハードストップ38は、アーム延長部材32(及び前述したようにアーム延長部材32と剛結合されたロボットアーム(例えば、図1図3のロボットアーム20))の運動を阻止する。
【0042】
次に図7及び図8を参照すると、ロボットシステム12の追加の実施形態が示されている。例えば、図7において、ロボットシステム12は2つの可動ハードストップ38を含み、各可動ハードストップ38は、ロボットアーム20のアーム延長部材32の緩衝部材34、36の一方に近接して配置されている(例えば、結合部24の静止基部33を貫通して延びる)。従って、両方の可動ハードストップ38は、ロボットアーム20のアーム延長部材32が移動する際に移動可能である。例えば、可動ハードストップ38は、可動ハードストップ38と第1の緩衝部材及び第2の緩衝部材34、36との間にそれぞれ実質的に間隙68、70を維持するように移動することができる。制御システム46は、前述したように、可動ハードストップ38、ロボットアーム20、又はそれらを組み合わせたものの運動を制御することができる。
【0043】
図8において、ロボットシステム12は同様に2つの可動ハードストップ38を含む。しかしながら、図8において、可動ハードストップ38の各々は、ロボットアーム20の結合部24の中心点148に中心を置き、中心点148から延びる対応するアーム150を含む。図示した実施形態では、緩衝部材34、36は、ロボットアーム20の構成要素上に配置されるのとは対照的に、可動ハードストップ38自体のアーム150上に配置されている。ロボットアーム20が移動する際に、可動ハードストップ38及び対応する緩衝部材34、36も移動する。例えば、前述したように、ロボットアーム20及び可動ハードストップ38の所望の運動経路は、制御システム46によってマップして実行することができる。可動ハードストップ38の実際の運動経路(制御システム46によって決定されてマップされた所望の運動経路に対応する)により、緩衝部材34、36は、図示した間隙68、70を維持することができる。ロボットアーム20が所望の運動経路の外側(より具体的には、所望の運動経路の許容誤差範囲の外側)に移動すると、ロボットアーム20は、緩衝部材34の一方に接触する可能性がある。追加的に又は代替的に、緩衝部材34、36は、内部又は表面に配置された、ロボットアーム20の接触又は望ましくない近接を検出するセンサを含むことができる。センサは、接触又は望ましくない近接を制御システム46に伝達することができ、制御システムは、ロボットアーム20の運動を停止させる。
【0044】
本開示の実施形態によれば、ロボットシステムは、ロボットアーム、少なくとも1つの可動ハードストップ、及び少なくとも1つの制御装置を含む。制御装置は、ロボットアームの所望の動作、目標、又は所望の運動経路の結果を考慮して、ロボットアームを取り囲む環境を考慮して、又はその両方で、ロボットアーム用の所望の運動経路及び少なくとも1つの可動ハードストップ用の所望の運動経路をマップすることができる。制御装置は、少なくとも1つの可動ハードストップの所望の運動経路を、ロボットアームのマップされた所望の運動経路から完全に独立して、又はロボットアームのマップされた所望の運動経路に少なくとも部分的に基づいてマップすることができる。可動ハードストップは、ロボットアームの所望の運動経路を追従する、模倣する、又はたどるように移動可能なので、可動ハードストップは、ロボットアームがマップされたロボットアームの運動経路から極端に離れた場合に(例えば、許容誤差範囲の外側)保護を可能にするが、ロボットアームの能力又は運動を不必要に制限しない。換言すると、可動ハードストップは、ロボットアームのマップされた経路の外側でのロボットアームの運動を阻止できるが、可動ハードストップは、ロボットアームの経路をマップするために利用可能な、移動可能空間容積を制限しない。従って、ロボットアームの経路は、可動ハードストップによって何ら制限されないようにできる。
【0045】
本明細書では、本開示の特定の特徴のみを図示及び説明したが、当業者であれば多くの修正形態及び変更形態を想定できる。さらに、本明細書に開示した様々な実施形態の構成要素は、互いに組み合わせること又は交換できることを理解されたい。従って、添付した特許請求の範囲は、このような全ての修正形態及び変更形態を本開示の真の精神に含まれるものとしてカバーすることが意図されていることを理解されたい。
【符号の説明】
【0046】
12 ロボットシステム
24 結合部
32 アーム延長部材
38 可動ハードストップ
40 ラック
42 ピニオン
48 アーム制御装置
50 ハードストップ制御装置
60 ジャッキねじ
62 歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8