特許第6897024号(P6897024)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897024
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   B23K20/12 330
   B23K20/12 310
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-154179(P2016-154179)
(22)【出願日】2016年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-140649(P2017-140649A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2019年2月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-22580(P2016-22580)
(32)【優先日】2016年2月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 久司
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−213928(JP,A)
【文献】 特開2012−228731(JP,A)
【文献】 特開2015−24418(JP,A)
【文献】 特開2016−78081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第一金属部材又は前記第二金属部材に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、
回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、を含む、ことを特徴とする接合方法。
【請求項2】
バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材又は前記第二金属部材から除去する除去工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記補助部材に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、
回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と
バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材及び前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、
前記配置工程では、前記補助部材を第一金属部材及び前記第二金属部材の一方に配置しつつ、前記摩擦攪拌工程後に他方側に補助部材が残存しない程度に前記突合せ部を挟んで他方側にわずかに突出するように配置し、
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが、前記補助部材のうち第一金属部材及び前記第二金属部材の一方側に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする接合方法。
【請求項5】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第一金属部材又は前記第二金属部材に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、
回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、を含み、前記突合せ工程において、前記突合せ部を形成す
る際に前記突合せ部に隙間が生じていることを特徴とする接合方法。
【請求項6】
バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材又は前記第二金属部材から除去する除去工程を含むことを特徴とする請求項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記補助部材に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする請求項に記載の接合方法。
【請求項8】
攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、
前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、
前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、
回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、
バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材及び前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、前記突合せ工程において、前記突合せ部を形成する際に前記突合せ部に隙間が生じており、
前記配置工程では、前記補助部材を第一金属部材及び前記第二金属部材の一方に配置しつつ、前記突合せ部を挟んで他方側にわずかに突出するように配置し、
前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが、前記補助部材のうち第一金属部材及び前記第二金属部材の一方側に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部材同士を摩擦攪拌で接合する接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第一金属部材と第二金属部材とを摩擦攪拌で接合する接合方法が開示されている。当該接合方法では、第一金属部材と第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成した後、回転ツールの攪拌ピンのみを第一金属部材及び第二金属部材に接触させた状態で突合せ部に対して摩擦攪拌を行うというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−39613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の接合方法であると、塑性流動化した金属を回転ツールのショルダ部で押さえないため、塑性流動化した金属が外部に溢れ出し接合部が金属不足になるという問題がある。さらに、長尺の金属部材同士を突合せると、突合せ部に隙間が生じる場合があり、接合部が金属不足になるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、接合部の金属不足を防ぐことができる接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第一金属部材又は前記第二金属部材に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、を含む、ことを特徴とする。
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材及び前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、前記配置工程では、前記補助部材を第一金属部材及び前記第二金属部材の一方に配置しつつ、前記摩擦攪拌工程後に他方側に補助部材が残存しない程度に前記突合せ部を挟んで他方側にわずかに突出するように配置し、 前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが、前記補助部材のうち第一金属部材及び前記第二金属部材の一方側に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする。
【0007】
かかる接合方法によれば、第一金属部材と第二金属部材とが接合されるとともに、第一金属部材及び第二金属部材に加え、補助部材も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属不足を防ぐことができる。
【0008】
また、バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材又は前記第二金属部材から除去する除去工程を含むことが好ましい。かかる接合方法によれば、バリを補助部材ごと除去できるので除去工程が容易となる。
【0009】
また、前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが前記補助部材に形成されるように接合条件を設定することが好ましい。かかる接合方法によれば、バリを除去する作業をより容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第一金属部材又は前記第二金属部材に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、を含み、前記突合せ工
程において、前記突合せ部を形成する際に前記突合せ部に隙間が生じていることを特徴とする。
また、本発明は、攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて第一金属部材と第二金属部材とを接合する接合方法であって、前記第一金属部材と前記第二金属部材とを突き合わせて突合せ部を形成する突合せ工程と、前記第一金属部材及び前記第二金属部材の両方に面接触するように補助部材を配置する配置工程と、回転する前記攪拌ピンを前記補助部材の表面側から挿入し、前記攪拌ピンのみを前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材に接触させた状態で前記突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材を接合する摩擦攪拌工程と、バリが形成された前記補助部材を前記第一金属部材及び前記第二金属部材から除去する除去工程と、を含み、前記突合せ工程において、前記突合せ部を形成する際に前記突合せ部に隙間が生じており、前記配置工程では、前記補助部材を第一金属部材及び前記第二金属部材の一方に配置しつつ、前記突合せ部を挟んで他方側にわずかに突出するように配置し、前記摩擦攪拌工程では、摩擦攪拌接合で発生するバリが、前記補助部材のうち第一金属部材及び前記第二金属部材の一方側に形成されるように接合条件を設定することを特徴とする。
【0013】
かかる接合方法によれば、第一金属部材と第二金属部材とが接合されるとともに、第一金属部材及び第二金属部材に加え、補助部材も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属不足を防ぐことができる。また、前記突合せ工程において、前記突合せ部を形成する際に突合せ部に隙間が生じている場合であっても、塑性流動化した金属が当該隙間を埋めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る接合方法によれば、接合部の金属不足を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1本発明の第一実施形態の突合せ工程及び配置工程を示す断面図である。
図2第一実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図3第一実施形態に係る摩擦攪拌工程後を示す断面図である。
図4第一実施形態に係る除去工程を示す断面図である。
図5第一実施形態に係る除去工程後を示す断面図である。
図6第二実施形態に係る突合せ工程及び配置工程を示す断面図である。
図7第二実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図8第二実施形態に係る除去工程を示す断面図である。
図9第三実施形態に係る突合せ工程及び配置工程を示す断面図である。
図10第三実施形態に係る摩擦攪拌工程を示す断面図である。
図11第三実施形態に係る除去工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態に係る接合方法では、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程と、を行う。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
【0017】
突合せ工程は、図1に示すように第一金属部材1と第二金属部材2とを突き合わせる工程である。第一金属部材1及び第二金属部材2は、金属製の板状部材である。第一金属部材1及び第二金属部材2の材料は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等から適宜選択すればよい。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚は同等になっている。第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚は適宜設定すればよい。
【0018】
突合せ工程では、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材2の端面2aとを突き合わせて突合せ部J1を形成する。突合せ部J1を形成する際に、第一金属部材1の端面1aと第二金属部材2の端面2aとの間に隙間が生じている場合がある。隙間は1mm程度である。第一金属部材1の表面1bと、第二金属部材2の表面2bとは面一になる。
【0019】
配置工程は、第一金属部材1又は第二金属部材2に補助部材10を配置する工程である。補助部材10は金属製の板状部材である。補助部材10は摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態では第一金属部材1及び第二金属部材2と同じ材料になっている。補助部材10の板厚は、後記する摩擦攪拌工程後の塑性化領域Wが金属不足にならないように適宜設定する。本実施形態では、補助部材10の板厚は第一金属部材1よりも薄く設定している。
【0020】
配置工程では、補助部材10の裏面10cと第二金属部材2の表面2bとを面接触させる。補助部材10は、第二金属部材2(又は第一金属部材1)のみと面接触するように配置する。本実施形態では、補助部材10の端面10aと第二金属部材2の端面2aとが面一となるように配置する。また、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10を治具(図示省略)を用いて架台Tに移動不能に拘束する。なお、補助部材10は本実施形態では板状としているが、他の形状であってもよい。
【0021】
摩擦攪拌工程は、図2に示すように、接合用回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材2との突合せ部J1を摩擦攪拌によって接合する工程である。接合用回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。接合用回転ツールFは、特許請求の範囲の「回転ツール」に相当する。接合用回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸(図示省略)に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈している。
【0022】
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、接合用回転ツールFを左回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて右回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。
【0023】
なお、接合用回転ツールFを右回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて左回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。螺旋溝は省略してもよい。
【0024】
接合用回転ツールFは、マシニングセンタ等の摩擦攪拌装置に取り付けてもよいが、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転手段を備えたアームロボットに取り付けてもよい。アームロボットに接合用回転ツールFを取り付けることにより接合用回転ツールFの回転中心軸を容易に変更することができる。
【0025】
摩擦攪拌工程では、突合せ部J1に左回転させた攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ相対移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。そして、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10と攪拌ピンF2とを接触させた状態で突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。本実施形態では、接合用回転ツールFの進行方向左側に補助部材10が位置するように接合用回転ツールFの進行方向を設定する。接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向は前記したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。例えば、接合用回転ツールFの進行方向左側に補助部材10を配置しつつ、接合用回転ツールFを右回転させてもよい。もしくは、接合用回転ツールFの進行方向右側に補助部材10を配置しつつ、接合用回転ツールFを左右いずれかに回転させてもよい。接合用回転ツールFの回転方向等の条件と補助部材10の好ましい位置関係については後記する。
【0026】
攪拌ピンF2の挿入深さは、攪拌ピンF2と突合せ部J1とを接触させつつ、第一金属部材1及び第二金属部材2の板厚等に応じて適宜設定すればよい。これにより突合せ部J1が摩擦攪拌接合される。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。摩擦攪拌工程後は、図3に示すように、補助部材10の端部にバリVが形成される。
【0027】
除去工程は、図4に示すように、補助部材10を第二金属部材2から除去する工程である。除去工程では、例えば手作業により、補助部材10を第二金属部材2から離間する方向に折り曲げて第二金属部材2から除去する。これにより、図5に示すように第一金属部材1と第二金属部材2とが平面状に接合される。
【0028】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、第一金属部材1と第二金属部材2とが接合されるとともに、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。また、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合することにより、突合せ部J1に隙間が生じている場合であっても、塑性流動化した金属が当該隙間を埋めることができるとともに、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。また、本実施形態によれば、第一金属部材1及び第二金属部材2の両方ではなく、片側のみに補助部材10を配置するだけで金属不足を防ぐことができる。
【0029】
また、本実施形態によれば、摩擦攪拌工程によって補助部材10にバリVが形成されるが、除去工程において補助部材10ごと取り除くことができる。これにより、バリを除去する作業を容易に行うことができる。図3に示すように、摩擦攪拌工程後は補助部材10の端面が突合せ部J1に向かうにつれて板厚が薄くなるように傾斜している。補助部材10は除去装置等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で容易に補助部材10を取り除くことができる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る接合方法では、補助部材10を第一金属部材1及び第二金属部材2よりも薄く設定しているため、従来のようにショルダ部を金属部材に押し込みながら摩擦攪拌を行うと、ショルダ部と補助部材10との接触により補助部材10が外部に飛ばされてしまい接合部の金属不足を補うことができない。しかし、本実施形態では、接合用回転ツールFの攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10に接触させつつ摩擦攪拌を行うため、補助部材10が外部に飛ばされることなく接合部の金属不足を補うことができる。また、ショルダ部を接触させる場合に比べて摩擦攪拌装置に作用する負荷を低減することができる。
【0031】
また、図2に示すように、本実施形態に係る摩擦攪拌工程では進行方向左側に補助部材10を配置するとともに接合用回転ツールFを左回転させるため、補助部材10側がRe側となる。Re側とは、接合用回転ツールFの外周における接線速度の大きさから送り速度の大きさが減算される側である。一方、Re側の反対側がAd側となる。Ad側とは、接合用回転ツールFの外周における接線速度の大きさから送り速度の大きさが加算される側である。
【0032】
例えば、接合用回転ツールFの回転速度が遅い場合では、塑性化領域WのRe側に比べてAd側の方が塑性流動材の温度が上昇しやすくなるため、Ad側にバリVが多く発生する傾向にある。一方、例えば、接合用回転ツールFの回転速度が速い場合、Ad側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、Re側にバリVが発生する傾向にある。
【0033】
本実施形態では、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、Re側即ち補助部材10側にバリVが発生する。つまり、本実施形態ではバリVが補助部材10側に多く形成されるように接合用回転ツールFの回転速度、回転方向及び進行方向等を設定している。これにより、補助部材10に形成されたバリVは、補助部材10ごと除去されるため、バリ除去工程をより容易に行うことができる。また、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、接合用回転ツールFの移動速度(送り速度)を高めることができる。これにより、接合サイクルを短くすることができる。
【0034】
上記したように、摩擦攪拌工程の際に、接合用回転ツールFの進行方向のどちら側にバリVが発生するかは接合条件によって異なる。当該接合条件とは、接合用回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10の材料、各部材の厚さ等の各要素とこれらの要素の組み合わせで決定される。接合条件に応じて、バリVが発生する側又はバリVが多く発生する側に補助部材10を配置するようにすれば、バリ除去工程を容易に行うことができるため好ましい。
【0035】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態に係る接合方法について説明する。第二実施形態に係る接合方法は、図6に示すように、第一金属部材1及び第二金属部材2の両方と接触するように補助部材10を配置する点で第一実施形態と相違する。第二実施形態に係る接合方法では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0036】
本実施形態に係る接合方法は、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。突合せ工程は、第一実施形態と同じであるため説明を省略する。配置工程は、補助部材10を第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に配置する工程である。
【0037】
配置工程は、図6に示すように、第一金属部材1の表面1b及び第二金属部材2の表面2bと補助部材10の裏面10cとを面接触させる工程である。補助部材10の板厚は、後記する摩擦攪拌工程後の塑性化領域Wが金属不足にならないように適宜設定する。配置工程では、補助部材10の中央が概ね突合せ部J1に位置するように配置する。また、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10を治具(図示省略)を用いて移動不能に拘束する。
【0038】
摩擦攪拌工程は、図7に示すように、接合用回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材2との突合せ部J1を摩擦攪拌によって接合する工程である。摩擦攪拌工程では、右回転させた攪拌ピンF2を補助部材10の表面10bから挿入し、突合せ部J1に達するように攪拌ピンF2の挿入深さを設定する。摩擦攪拌工程では、突合せ部J1に右回転させた攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。そして、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10と攪拌ピンF2とを接触させた状態で突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。これにより突合せ部J1が摩擦攪拌接合される。接合用回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。なお、本実施形態では、接合用回転ツールFを高速回転しているため、バリはAd側に比べてRe側の方に多く発生する傾向にある。
【0039】
除去工程は、図8に示すように、摩擦攪拌工程によって分断された補助部材10を第一金属部材1及び第二金属部材2から除去する工程である。除去工程では、補助部材10,10を第一金属部材1及び第二金属部材2から離間する方向にそれぞれ折り曲げて除去する。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、第一金属部材1と第二金属部材2とが平面状に接合されるとともに、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。また、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合することにより、突合せ部J1に隙間が生じている場合であっても、塑性流動化した金属が当該隙間を埋めることができるとともに、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。また、第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に跨るように補助部材10を配置するため、接合部の金属不足をより確実に防ぐことができるとともに、金属をバランスよく補充することができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、摩擦攪拌工程によって分断された補助部材10,10にそれぞれバリV,Vが形成されるが、除去工程において補助部材10ごと取り除くことができる。これにより、バリを除去する作業を容易に行うことができる。補助部材10は除去装置等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で補助部材10を容易に取り除くことができる。
【0042】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る接合方法について説明する。図9に示すように、第三実施形態に係る接合方法では、配置工程において補助部材10を第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に配置しつつ、補助部材10に対する第一金属部材1と第二金属部材2との接触割合を変更する点で第一実施形態と相違する。また、接合用回転ツールFの回転方向も第一実施形態と相違する。第三実施形態に係る接合方法では、第一実施形態と相違する点を中心に説明する。第三実施形態に係る接合方法は、突合せ工程と、配置工程と、摩擦攪拌工程と、除去工程とを行う。
【0043】
突合せ工程は、第一実施形態と同じであるため説明を省略する。配置工程は、図9に示すように、第一金属部材1の表面1b及び第二金属部材2の表面2bと補助部材10の裏面10cとを面接触させる工程である。配置工程では、補助部材10の9割程度を第一金属部材1に配置し、残りの1割程度を第二金属部材2に配置する。つまり、突合せ部J1に対して補助部材10がわずかに第二金属部材2側に突出するように配置する。補助部材10の配置位置は、補助部材10が第一金属部材1及び第二金属部材2の両方に面接触するように配置するとともに、後記する摩擦攪拌工程を行った後に第二金属部材2側(補助部材10との接触割合が少ない側)に補助部材10が残存しないように調節する。
【0044】
摩擦攪拌工程は、図10に示すように、接合用回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材2との突合せ部J1を摩擦攪拌によって接合する工程である。本実施形態では、接合用回転ツールFを右回転させるため、攪拌ピンF2の螺旋溝は基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。
【0045】
摩擦攪拌工程では、突合せ部J1に右回転させた攪拌ピンF2のみを挿入し、被接合金属部材と連結部F1とは離間させつつ相対移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。そして、第一金属部材1、第二金属部材2及び補助部材10と攪拌ピンF2とを接触させた状態で突合せ部J1に沿って接合用回転ツールFを相対移動させる。本実施形態では、接合用回転ツールFの進行方向右側に補助部材10が位置するように接合用回転ツールFの進行方向を設定する。これにより、本実施形態では第一金属部材1側がRe側となるため、補助部材10に多くのバリVが発生する。
【0046】
除去工程は、図11に示すように、補助部材10を第一金属部材1から除去する工程である。除去工程では、例えば手作業により、補助部材10を第一金属部材1から離間する方向に折り曲げて第一金属部材1から除去する。
【0047】
以上説明した本実施形態に係る接合方法によれば、第一金属部材1と第二金属部材2とが平面状に接合されるとともに、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。また、第一金属部材1及び第二金属部材2に加え、補助部材10も同時に摩擦攪拌接合することにより、突合せ部J1に隙間が生じている場合であっても、塑性流動化した金属が当該隙間を埋めることができるとともに、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。
【0048】
また、本実施形態の接合条件によれば、接合用回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、Re側にバリVが多く発生する傾向にある。つまり、本実施形態ではバリVが補助部材10のうち第一金属部材1側に多く形成されるように接合用回転ツールFの回転方向及び進行方向等(接合条件)を設定している。これにより、補助部材10に形成されたバリVは、補助部材10ごと除去されるため、バリ除去工程をより容易に行うことができる。また、図11に示すように、摩擦攪拌工程後は補助部材10の端面が突合せ部J1に向かうにつれて板厚が薄くなるように傾斜している。補助部材10は除去装置等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で容易に補助部材10を取り除くことができる。
【0049】
ここで、前記した第二実施形態の除去工程では、突合せ部J1を挟んで両側にある補助部材10,10を除去する必要がある。しかし、本実施形態では摩擦攪拌工程後に第二金属部材2側(補助部材10との接触割合が少ない側)に補助部材10が残存しないように補助部材10の配置位置を調節しているため、除去工程では片側の補助部材10を除去するだけでよい。これにより除去工程の作業手間を少なくすることができる。また、配置工程では、突合せ部J1を挟んで第二金属部材2側(他方側)にわずかに補助部材10を突出させる分、接合部の金属不足をバランス良く、かつ、より確実に防ぐことができる。
【0050】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では除去工程を行ったが、補助部材10を除去せずに、第一金属部材1又は第二金属部材2にそのまま存置してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 第一金属部材
2 第二金属部材
10 補助部材
F 接合用回転ツール(回転ツール)
F1 連結部
F2 攪拌ピン
J1 突合せ部
V バリ
W 塑性化領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11