【文献】
Francesco Parasiliti, 外2名,A Novel Solution for Phase Current Sensing in PWM-VSI Based AC Drives,online,2001年 8月27日,URL,http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.517.5339&rep=rep1&type=pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
三相ブラシレスモータの各相に対応するハイサイドの第1スイッチング素子と、前記各相に対応するローサイドの第2スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と接地ラインとの間に接続状態で配置されたシャント抵抗と、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する電力制御部と、を備え、
前記各相の何れかの相における前記第1スイッチング素子のデューティが閾値以上である場合に、前記電力制御部によって、当該相の前記第1スイッチング素子のデューティを最小値のデューティに設定することにより、所定時間だけ当該相の前記第1スイッチング素子をOFF状態にし、且つ、当該相の前記第2スイッチング素子を前記所定時間だけON状態に制御することにより、当該相の前記シャント抵抗に流れる電流値を取得すると同時に、他の二相の前記シャント抵抗に流れる電流値を取得し、これらの電流値の総和に基づいて、前記三相ブラシレスモータと、前記第1スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と、前記シャント抵抗との内の、前記三相ブラシレスモータと、前記第1スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と、前記シャント抵抗と、のうち少なくとも一つの異常判定を行う判定部を備えているモータ制御装置。
前記判定部は、前記第1スイッチング素子のデューティが前記閾値未満である場合に、三相全ての前記シャント抵抗に流れる電流値を取得し、これら電流値の総和に基づいて異常判定を行う請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
三相ブラシレスモータの制御装置において、三相の電流ラインの各々に流れる電流値を検知する電流センサを備えたものでは、検知した電流値からスイッチング素子やモータ等の異常判定を可能にするだけでなく、電流センサそのものの異常判定も可能にする。
【0008】
特許文献1のように、インバータ装置から交流電動機に電力を供給する配線に電流センサを備えたものでは、ハイサイドのスイッチング素子に流れる電流を直接検知するため、ハイサイドのスイッチング素子の異常判定だけでなくローサイドのスイッチング素子の異常判定も可能となる。しかしながら、特許文献1の電流センサは、高価なホール素子を用いるため、コスト上昇を招き易い。
【0009】
尚、特許文献1の電流センサを用いる構成において、各相に流れる電流を高精度で検知するためには、各相に電流センサを備えることが理想であるが、各相に電流センサを備える構成では一層のコスト上昇を招くことになる。
【0010】
特許文献2のように、ローサイドのスイッチング素子とグランドとの間にシャント抵抗を備える構成は各相に流れる電流値を精度良く検知でき、しかも、低廉化の可能にするものである。しかしながら、このシャント抵抗がローサイドのスイッチング素子からの電流を検知するため、ローサイドのスイッチング素子の異常判定が可能となるものの、ハイサイドのスイッチング素子のデューティ比が大きいほどシャント抵抗に電流が流れる時間が短くなり、電流値の計測精度を低下させるものであった。
【0011】
このような理由から、シャント抵抗を用いる有効性を損なうことなくスイッチング素子等の異常判定を可能にする制御装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴は、三相ブラシレスモータの各相に対応するハイサイドの第1スイッチング素子と、前記各相に対応するローサイドの第2スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と接地ラインとの間に接続状態で配置されたシャント抵抗と、前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子を制御する電力制御部と、を備え、
前記各相の何れかの相における前記第1スイッチング素子のデューティが閾値以上である場合に、前記電力制御部によって、当該相の前記第1スイッチング素子のデューティを最小値のデューティに設定することにより、所定時間だけ当該相の前記第1スイッチング素子をOFF状態にし、且つ、当該相の前記第2スイッチング素子を前記所定時間だけON状態に制御することにより、当該相の前記シャント抵抗に流れる電流値を取得すると同時に、他の二相の前記シャント抵抗に流れる電流値を取得し、これらの電流値の総和に基づいて、
前記三相ブラシレスモータと、前記第1スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と、前記シャント抵抗との内の、前記三相ブラシレスモータと、前記第1スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と、前記シャント抵抗と、のうち少なくとも一つの異常判定を行う判定部を備えている点にある。
【0013】
この特徴構成によると、三相の何れかの相の第1スイッチング素子のデューティが閾値以上である場合には、電力制御部が、所定時間だけ、当該相の第1スイッチング素子をOFF状態にし、且つ、当該相の第2スイッチング素子を、所定時間に対応した時間だけON状態に制御することにより、当該相のシャント抵抗に流れる電流値を取得すると同時に、他の二相のシャント抵抗に流れる電流値を取得する。そして、判定部が、これらの電流値の総和に基づいて異常判定を行う。つまり、三相ブラシレスモータでは、各相に流れる電流値の総和は常に「0」であるため、3つのシャント抵抗に流れる電流値の総和を求め、「0」値と比較することにより異常の判定が実現する。
【0014】
この構成では、第1スイッチング素子のデューティが閾値以上にある状況において、短時間だけ電流の供給を停止するため、モータのトルク低下を招くことがない。また、例えば、二相のシャント抵抗に流れる電流値から、残りの一相の電流値を推定するものと比較して判定の精度が向上し、高いスイッチング出力実効値を得ると同時に、高速な異常判定も可能となる。
従って、シャント抵抗を用いる有効性を損なうことなく、シャント抵抗が直接的に導通しないスイッチング素子等の異常判定も可能にする制御装置が構成された。
【0015】
他の構成として、前記シャント抵抗に流れる電流を検出する電流値取得部をさらに備え、前記閾値が、前記電流値取得部によって当該相のシャント抵抗に流れる電流が検出できない値であり、前記所定時間が前記電流値取得部によって当該シャント抵抗に流れる電流を検出できる時間であっても良い。
【0016】
他の構成として、前記判定部は、前記第1スイッチング素子のデューティが前記閾値未満である場合に、三相全ての前記シャント抵抗に流れる電流値を取得し、これら電流値の総和に基づいて異常判定を行っても良い。
【0017】
これによると、第1スイッチング素子のデューティが閾値未満である場合には、スイッチング素子を特別に制御することなく、全ての第1スイッチング素子と、全ての第2スイッチング素子と、モータとに流れる電流値の総和から異常判定を行える。
【0018】
他の構成として、前記判定部は、異常検出サイクル毎に前記異常判定を行っても良い。
【0019】
これによると、例えば、異常判定を連続的に行うものと比較して、判定の頻度を低くして制御系のウェイトを小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1に示すように、直流電源1の電力を三相交流電力に変換して三相ブラシレスモータ2(以下、モータ2と略称する)に供給するインバータ回路10と、インバータ回路10を制御する電力制御ユニット20を備えてモータ制御装置100が構成されている。
【0022】
インバータ回路10は、モータ2の各相に対応するハイサイドの3つの第1スイッチング素子11と、モータ2の各相に対応するローサイドの3つの第2スイッチング素子12と、各相に流れる電流を個別に電圧信号に変換する3つのシャント抵抗13とを備えて構成されている。
【0023】
電力制御ユニット20は、制御信号に基づきインバータ回路10を制御すると共に、3つのシャント抵抗13の電圧信号から電流値を取得し、この電流値に基づいて各相の異常判定を行い、判定情報を出力するように構成されている。
【0024】
〔インバータ回路〕
図1に示すように、インバータ回路10は、直流電源1の正極に接続する電源ライン15と、直流電源1の負極(グランド側)に接地ライン16と、モータ2の各相に導通する3つの電流ライン17とを備えている。電流ライン17はU相、V相、W相に対応しており、これらの電流ライン17がモータ2において、U相、V相、W相に対応する3つの界磁コイル2aに導通している。
【0025】
同図には、ハイサイドの3つの第1スイッチング素子11と、ローサイドの3つの第2スイッチング素子12と、3つのシャント抵抗13とをU相、V相、W相に対応させて示しており、U相、V相、W相に対応する第1スイッチング素子11の各々のエミッタ端子がU相、V相、W相の電流ライン17が接続している。これと同様に、U相、V相、W相に対応する第2スイッチング素子12のコレクタ端子がU相、V相、W相の電流ライン17に接続している。
【0026】
更に、U相、V相、W相に対応する第2スイッチング素子12の各々のエミッタ端子がシャント抵抗13の一方の端子に接続し、各々のシャント抵抗13の他方の端子は接地ライン16に接続している。
【0027】
尚、
図1には3つの第2スイッチング素子12と、3つのシャント抵抗13とはU相、V相、W相に対応して示しているが、第1スイッチング素子11の駆動時において、同じ相として示した第2スイッチング素子12およびシャント抵抗13には同時に電流は流れない。
【0028】
また、同図に示すインバータ回路10では、スイッチング素子としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を示しているが、パワーMOSFETやパワートランジスタの使用が可能である。
【0029】
〔電力制御ユニット〕
電力制御ユニット20は、電力制御部21と、電流値取得部23と、判定部24とを備えている。
【0030】
この構成では電力制御部21と、電流値取得部23とは、半導体で成るハードウエアを備える構成であるが、判定部24はソフトウエアのみで構成される、あるいは、ソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより構成される。
【0031】
電力制御部21は、
図4、
図5に示すようにキャリア三角波30を生成する発信回路と、PWM信号32,33(32u,32v,32wと33u,33v,33wとの上位概念)を生成するPWM信号生成回路とを備えており、キャリア三角波30と指令信号31u,31v,31wとの比較によりPWM信号32u,32v,32w及び33u,33v,33wを生成し、駆動信号としてPWM信号32u,32v,32wを3つの第1スイッチング素子11に出力し、PWM信号33u,33v,33wを3つの第2スイッチング素子12に出力する。この電力制御部21は制御信号に基づいてPWM信号32,33のデューティを設定し、この設定の結果、モータ2のモータトルクの設定を実現している。
【0032】
電流値取得部23は、シャント抵抗13で変換された電圧信号をA/D変換で符号化し、この符号化された信号を電流値(符号化された電流値)として出力する。また、電力制御部21から取得したタイミング信号に基づき電流値の取得タイミングを設定する。
【0033】
判定部24は、
図4に示すように、異常検出サイクルA毎に設定される判定タイミングE(判定タイミングE1〜E3の上位概念)において異常判定を行うように異常判定制御の制御形態が設定されている。また、この異常判定制御では、3つのシャント抵抗13で取得される電流値の総和の絶対値に基づいて異常判定を行う。
【0034】
この異常判定は、全ての第1スイッチング素子11と、全ての第2スイッチング素子12とを含むインバータ回路10の異常だけでなく、モータ2の異常を判定する。
【0035】
〔制御形態〕
判定部24の異常判定制御の概要を
図2、
図3のフローチャートに示している。これらのフローチャートでは、第1スイッチング素子11に出力されるPWM信号32u,32v,32wのデューティをDutyとして記載している。また、
図4、
図5のタイミングチャートには、判定部24での異常判定制御の前と後との波形を示している。尚、デューティは信号の1周期に対するON時間の割合であり、例えば、
図4のPWM信号32u,32v,32wのように、横軸(時間軸)に沿ってON時間とOFF時間とを表すことが可能である。
【0036】
図4のタイミングチャートでは、キャリア三角波30と、電圧指令の正弦波とを上段に示し、中段にU相,V相,W相の各相の第1スイッチング素子11を駆動するPWM信号32(32u,32v,32wの上位概念:駆動信号)を示し、下段にU相,V相,W相の各相の第2スイッチング素子12を駆動するPWM信号33(33u,33v,33wとの上位概念:駆動信号)を示している。
【0037】
中段では、U相の第1スイッチング素子11の駆動信号をUHで示し、V相の第1スイッチング素子11の駆動信号をVHで示し、W相の第1スイッチング素子11の駆動信号をWHで示している。これと同様に、下段では、U相の第2スイッチング素子12の駆動信号をULで示し、V相の第2スイッチング素子12の駆動信号をVLで示し、W相の第2スイッチング素子12の駆動信号をWLで示している。
【0038】
図5のタイミングチャートでは、
図4のタイミングチャートの中段と下段とに相当するものを示している。
【0039】
また、判定部24は、
図4に示すように、異常検出サイクルAとして、例えば、1msec程度のインターバルが設定されている。電力制御ユニット20では、キャリア三角波30の周期を固定しており、異常判定サイクルは、キャリア三角波30のピーク、あるいは、ピークの近傍に判定タイミングE(判定タイミングE1〜E3の上位概念)が設定される。
【0040】
特に、電力制御部21では、キャリア三角波30と正弦波となる指令信号31u,31v,31wとの比較により、駆動信号の第1スイッチング素子11と第2スイッチング素子12との駆動信号としてのPWM信号が決まる。つまり、本実施形態では、キャリア三角波30の電圧値が、指令信号31u,31v,31wの正弦波の電圧値より大きい場合に第2スイッチング素子12がON状態となるように電力制御部21が構成されている。
【0041】
この異常判定制御では、第2スイッチング素子12がON状態にある状況において、シャント抵抗13に流れる電流値を取得するため、判定タイミングEにおいて第2スイッチング素子12がON状態にあることが望ましい。このような理由から、第2スイッチング素子12がON状態にある可能性を高めるように、判定タイミングEをキャリア三角波30がピーク(上側に凸となるピーク)、あるいは、ピークの近傍に設定している。
【0042】
図2に判定タイミングEに達した際に実行される異常判定制御を示している。この制御では、初期設定として、PWM信号の制限をなくす(すなわちDuty(Max)=100%)を設定する(#101ステップ)。
【0043】
次に、ハイサイドの第1スイッチング素子11に流れる電流値を取得するために、U相、V相、W相に対応するDuty(U,V,W)を取得し、これらのDutyとDuty(Hi)とを比較する(#102ステップ)。
【0044】
#101ステップでは、デューティの上限(Duty(Max))を100%に設定することにより、各相の第1スイッチング素子11に流れる電流の制限をなくしている。また、#102ステップでは、各相のデューティ(Duty(U,V,W))と、閾値としてのDuty(Hi)との比較が行われる。尚、このDuty(Hi)は90%等の大きい値が設定される。
【0045】
次に、U相、V相、W相に対応するDuty(U,V,W)の何れかの相のDutyがDuty(Hi)より大きいことが判定された場合には、Hi相のDuty(Max)を、最小値のDuty(Limit)に設定してHi相の第1スイッチング素子11をOFF状態に設定し、これと同期して、同じ相の第2スイッチング素子12をON状態にする。これにより、U相、V相、W相のシャント抵抗13に流れる電流値(Iu,Iv,Iw)を同時に取得できるので、判定ルーチンに移行する。この後に、Hi相の第1スイッチング素子11をON状態に戻し、第2スイッチング素子12をOFF状態に戻す(#103〜#105、#200ステップ)。
【0046】
異常判定制御が判定タイミングE1で実行される場合には
図4に示すように、判定タイミングE1において、駆動信号VL、WLからV相とW相の第2スイッチング素子12がON状態にあることが判定される。しかしながら、領域PLの駆動信号ULからU相の第2スイッチング素子12がOFF状態にあり、これに対応する領域PHの駆動信号UHから、U相の第1スイッチング素子11は、ON状態の中に極めて短時間だけOFF状態が存在することを判定できる。
【0047】
このような状態では、U相のシャント抵抗13に流れる電流値Iuを取得できないため、#103ステップでは、
図5に示すように、領域PLにおいて電流値の取得が可能となる所定時間Ta(例えば、数μ秒程度)だけ駆動信号ULをON制御し、これに同期して領域PHの駆動信号UHを所定時間TaだけOFF制御する。この制御により、所定時間TaだけU相の第2スイッチング素子12からシャント抵抗13に電流が流れ、これと同期して、第1スイッチング素子11の通電を遮断することになり、三相の電流値の同時取得を実現する。
【0048】
これと同様に、異常判定制御が判定タイミングE2で実行される場合には
図4に示すように、判定タイミングE2では、駆動信号UL、UWからU相とW相の第2スイッチング素子12がON状態にあることが判定される。しかしながら、領域QLの駆動信号VLからV相の第1スイッチング素子11はOFFの中に極めて短時間だけON状態が存在し、これに対応する領域QHの駆動信号VHから、V相の第1スイッチング素子11は、ON状態の中に極めて短時間だけOFF状態が存在することを判定できる。
【0049】
このような状態では、V相のシャント抵抗13に流れる電流値Ivを取得できないため、#103ステップでは、
図5に示すように、領域QLにおいて電流値の計測が可能となる所定時間Ta(例えば、数μ秒程度)だけ駆動信号VLをON制御し、これに同期して領域QHの駆動信号VHを所定時間TaだけOFF制御する。この制御により、所定時間TaだけV相の第2スイッチング素子12からシャント抵抗13に電流が流れ、これと同期して、第1スイッチング素子11の通電を遮断することになり、三相の電流値の同時取得を実現する。
【0050】
特に、判定タイミングE2では、領域QHの駆動信号VHのOFF信号と、領域QLの駆動信号VLのON信号が極めて短時間であるため、電流値の取得が困難である。この理由から、駆動信号VHのOFF信号と、領域QLの駆動信号VLのON信号を所定時間Taに延長することにより電流値Ivの取得を可能にしている。
【0051】
また、#105ステップで上限のDuty(Max)を100%に設定することにより、OFF状態に制御された第1スイッチング素子11は、OFF状態に制御される以前の制御状態に戻る。
【0052】
例えば、異常判定制御が判定タイミングE1で実行される場合には、U相の第1スイッチング素子11からモータ2に供給される電流は所定時間Taだけ遮断されるが、この遮断の直前にはU相の第1スイッチング素子11からモータ2に電流が供給され、モータ2の界磁コイル2aに磁界が作り出されている。
【0053】
このため、U相の第1スイッチング素子11がOFF状態に達した場合には、U相の電流ライン17に対してモータ2の界磁コイル2aに磁界として蓄えられたエネルギーが電圧として誘起されると共に、このU相の電流ライン17からの電流を、ON状態の第2スイッチング素子12からU相のシャント抵抗13に流し電流値の取得が実現する。
【0054】
また、#102ステップで全ての相のDutyがDuty(Hi)以下であることが判定された場合には、U相、V相、W相のシャント抵抗13に流れる電流値(Iu,Iv,Iw)を取得し、判定ルーチンに移行する(#106、#200ステップ)。
【0055】
また、#106ステップでは、判定タイミングE3のように、駆動信号VL、WLからV相とW相の第2スイッチング素子12が同時にON状態にあるものでは、これらの電流値を同時に取得する。
【0056】
図3に示すように、判定ルーチン(#200ステップ)は、判定部24が実現するものである。この判定ルーチンでは、Flag(NG)がOFFに設定され(Flag(NG)=OFF)、U相,V相,W相の各相に流れる電流値(Iu,Iv,Iw)の総和の絶対値(Is=|Iu+Iv+Iw|)を演算し、設定値Ieと比較する(#201〜#203ステップ)。
【0057】
また、平衡状態にある三相交流は、U相,V相,W相に流れる電流値(瞬時値)の総和は「0」となる。従って、設定値Ieは「0」に近い値が設定され、この設定値Ieと、電流値(Iu,Iv,Iw)の総和の絶対値Isとを比較することにより、異常判定が行われる。尚、設定値Ieを「0」に設定することが理想であるが、各相の電流ライン17に流れる電流が平衡状態にあっても誤差を含むこともあるため設定値Ieは「0」より僅かに大きい値が設定されている。
【0058】
次に、三相の各相に流れる電流値(Iu,Iv,Iw)の総和の絶対値Isが設定値Ieより大きい場合に積算値QNをインクリメントし(QN=QN+1)、タイム値QN(Time)と比較する(#203〜#205ステップ)。
【0059】
この制御では、三相のシャント抵抗13に流れる電流値(Iu,Iv,Iw)の総和の絶対値Isが設定値Ieより大きい状態の継続時間を判定するために、積算値QNと、設定時間としてのタイム値QN(Time)とを比較する。
【0060】
この比較により、積算値QNがタイム値QN(Time)を超える場合には、Flag(NG)をONに設定する(#206ステップ)。
【0061】
これとは、逆に三相の各相に流れる電流値(Iu,Iv,Iw)の総和の絶対値Isが設定値Ie以下である場合は、積算値QNを「0」にする(#207ステップ)。また、積算値QNがタイム値QN(Time)より小さい場合には、Flag(NG)をOFFの状態に維持する。
【0062】
この異常情報がセットされる場合には、U相,V相,W相の何れかに異常があることを示す異常情報が電力制御ユニット20のメモリ等に記憶され、モータ2を制御する機器等に出力される。
【0063】
この出力に基づいて、前述した判定情報を出力する処理が実行され、判定情報に異常情報がセットされている場合には、異常を報知するメッセージをモニタに表示する処理や、アラーム音として出力する処理、あるいは、モータ2を所定のプロセスに従って停止させる処理が行われる。
【0064】
〔実施形態の作用・効果〕
このように、異常判定制御は、異常検出サイクルA毎に設定される判定タイミングEで実行され、この判定タイミングEにおいて三相のシャント抵抗13に同時に電流が流れる状況である場合には、三相全ての電流値を取得し、これらの総和に基づいて異常判定を実現する。
【0065】
また、判定タイミングEに達した際に、三相の何れかの相の第2スイッチング素子12に電流が流れない状況では、当該相に閾値(Duty(Hi))より高いDutyが設定される場合に、第2スイッチング素子12に電流を流す状態を作り出すことにより、三相全ての電流値を取得し、これらの総和に基づいて異常判定が実現する。
【0066】
このように、モータ2に大電流が供給され高トルクで回転する状況では、判定部24が、第1スイッチング素子11を所定時間TaだけOFF状態に設定するものの、この所定時間Taが短時間であるため、モータ2のトルク低下を招かない状況で電流値の取得を実現している。
【0067】
更に、全ての相のDutyがDuty(Hi)以下である状況で、判定部24で判定を行う場合には、各相の電流ライン17に流れる電流値を取得し、これらの総和に基づいて判定を行うことにより、全ての第1スイッチング素子11と、全ての第2スイッチング素子12と、モータ2とを含めた総合的な異常判定をトルクの低下を招くことなく行える。
【0068】
また、判定を行う際には、必ず三相全てのシャント抵抗13に流れる電流値の総和に基づいて判定を行うため、例えば、二相のシャント抵抗13に流れる電流値から、残りの一相の電流値を推定するものと比較して判定の精度が向上し、高いスイッチング出力実効値を得ると同時に、高速な異常判定も可能となる。
【0069】
そして、判定部24において、判定情報に異常情報をセットすることにより、異常を報知するメッセージをモニタに表示する処理や、アラームランプの点灯や、アラーム音を出力する処理、あるいは、モータ2を所定のプロセスに従って停止させる処理を行うことにより、異常な状態でモータ2を稼動させる不都合を抑制できる。
【0070】
この構成では、シャント抵抗13を用いるため、例えば、ホール素子を用いて電流ライン17の電流値を非接触状態で取得する構成と比較して低廉に構成でき、コスト上昇を抑制できる。
【0071】
〔別実施形態〕
実施形態では、#102ステップでU相、V相、W相に対応するDuty(U,V,W)の何れかの相のDutyがDuty(Hi)より大きいことが判定された場合に、#103ステップに移行する制御形態であったが、ノイズ等の影響を排除する制御を行うように制御形態を設定しても良い。
【0072】
つまり、U相、V相、W相に対応するDuty(U,V,W)の何れかの相のDutyがDuty(Hi)より大きいことが判定された場合には、当該相(Hi相)カウント値CNをインクリメントし(CN=CN+1)、タイム値CN(Time)と比較し、カウント値CNがタイム値CN(Time)より大きい場合に次の制御に移行するように制御形態を設定する。
【0073】
このような制御を行うことにより、例えば、ノイズ等の影響によってDuty(U,V,W)の何れかの相のDutyがDuty(Hi)より大きいことが誤って判定される不都合を回避して適正な制御を行える。特に、タイム値CN(Time)を充分に大きい値に設定しておくことにより適正な制御を実現する。
【0074】
これと関連するものであるが、#102ステップでU相、V相、W相に対応するDuty(U,V,W)の何れかの相のDutyがDuty(Hi)より小さいことが判定された場合に、#106ステップに移行する制御形態であったが、この制御においてもノイズ等の影響を排除する制御を行うように制御形態を設定しても良い。
【0075】
つまり、全ての相のDutyがDuty(Hi)以下であることが判定された場合には、カウント値CNをデクリメントし(CN=CN−1)し、カウント値CNが「0」に達した場合に次の制御に移行するように制御形態を設定する。
【0076】
このような制御を行うことにより、例えば、ノイズ等の影響によって全ての相のDutyがDuty(Hi)より小さいことが誤って判定される不都合を回避して適正な制御を行える。この制御では、カウント値CNをデクリメントするものであったが、例えば、カウント値CNと異なる変数を設定し、インクリメントする形態で変数を増大させるように制御形態を設定しても良い。