特許第6897051号(P6897051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897051
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20210621BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20210621BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H02M7/48 M
   H02M7/493
   H02M7/12 W
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-198987(P2016-198987)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2018-61394(P2018-61394A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥
(72)【発明者】
【氏名】藤本 久
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−005329(JP,A)
【文献】 特開2013−240252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0308357(US,A1)
【文献】 特開平07−007981(JP,A)
【文献】 特開2002−325461(JP,A)
【文献】 特開平09−224377(JP,A)
【文献】 特開2013−230027(JP,A)
【文献】 特開平06−233543(JP,A)
【文献】 特開2015−070654(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0092462(US,A1)
【文献】 特開平07−337030(JP,A)
【文献】 特開2006−271024(JP,A)
【文献】 特開平08−223927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00〜 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から供給される交流電力を直流電力に変換する第1電力変換部と、前記第1電力変換部により変換された直流電力を負荷に供給される交流電力に変換する第2電力変換部とを備える電力変換装置が複数台並列接続された電力変換システムであって、
前記電源から供給される交流電力は、複数台並列接続された前記電力変換装置それぞれの前記第1電力変換部に入力され、
複数台並列接続された前記電力変換装置の前記第2電力変換部は、それぞれ変換された交流電力を前記負荷に出力し、
複数台並列接続された前記電力変換装置はそれぞれ前記第1電力変換部と第2電力変換部との間の直流電力の電流値を検出する電流検出部と
並列接続された前記電力変換装置のうちの自装置以外の装置である他の電力変換装置の前記第1電力変換部により変換された電流値を示す他機直流電力情報を取得する他機直流電力情報取得部と、
前記電流検出部が検出する電流値と、前記他機直流電力情報取得部が取得する前記他機直流電力情報とに基づいて、前記直流電力の電流の目標値を算出する直流電力電流値目標値算出部と、
前記電流検出部が検出する電流値と、前記直流電力電流値目標値算出部が算出する前記目標値とに基づいて、前記第2電力変換部が出力する交流電力の周波数を制御する制御演算部と
を備える電力変換システム。
【請求項2】
前記第1電力変換部と前記第2電力変換部との間に平滑容量を備え
記電流検出部は、前記平滑容量と、前記第2電力変換部との間の直流電力の電流値を検出す
請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記直流電力電流値目標値算出部は、前記電力変換装置がそれぞれ備える第1電力変換部により変換された前記直流電力の電流値の平均値を、前記目標値として算出する
請求項1又は請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記電流検出部が検出する電流値を示す自機直流電力情報を、前記他の電力変換装置に供給する自機直流電力情報供給部
を更に備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記第2電力変換部は、前記負荷から供給される交流電力を直流電力に変換し、前記第1電力変換部は、前記第2電力変換部により変換された直流電力を前記電源に回生される交流電力に変換することにより、双方向電力変換を行う
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流−直流変換回路及び直流−交流変換回路を備える電力変換装置を複数台並列接続する場合に、これら複数の電力変換装置間に生じる横流による出力電力の特性低下を低減させるための技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−223927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような従来技術では、電力変換装置の交流出力の各相の電流値に基づいて横流を検出している。このため、上述のような従来技術による電力変換装置は、交流出力の相数に応じた数の電流検出器を備えている。しかしながら、電力変換装置が備える電流検出器の数が多い場合には、装置が大型化されるとともに、装置のコストが上昇するという問題があった。すなわち、上述のような従来技術によると、横流検出を行う電力変換装置の小型化及び低コスト化を図ることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、横流検出を行う電力変換システムの小型化及び低コスト化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、電源から供給される交流電力を直流電力に変換する第1電力変換部と、前記第1電力変換部により変換された直流電力を負荷に供給される交流電力に変換する第2電力変換部とを備える電力変換装置が複数台並列接続された電力変換システムであって、前記電源から供給される交流電力は、複数台並列接続された前記電力変換装置それぞれの前記第1電力変換部に入力され、複数台並列接続された前記電力変換装置の前記第2電力変換部は、それぞれ変換された交流電力を前記負荷に出力し、複数台並列接続された前記電力変換装置はそれぞれ前記第1電力変換部と第2電力変換部との間の直流電力の電流値を検出する電流検出部と、並列接続された前記電力変換装置のうちの自装置以外の装置である他の電力変換装置の前記第1電力変換部により変換された電流値を示す他機直流電力情報を取得する他機直流電力情報取得部と、前記電流検出部が検出する電流値と、前記他機直流電力情報取得部が取得する前記他機直流電力情報とに基づいて、前記直流電力の電流の目標値を算出する直流電力電流値目標値算出部と、前記電流検出部が検出する電流値と、前記直流電力電流値目標値算出部が算出する前記目標値とに基づいて、前記第2電力変換部が出力する交流電力の周波数を制御する制御演算部とを備える電力変換システムである。
【0007】
また、本発明の一実施形態の電力変換システムは、前記第1電力変換部と前記第2電力変換部との間に平滑容量を備え、前記電流検出部は、前記平滑容量と、前記第2電力変換部との間の直流電力の電流値を検出する。
【0008】
また、本発明の一実施形態の電力変換システムは、前記直流電力電流値目標値算出部は、前記電力変換装置がそれぞれ備える第1電力変換部により変換された前記直流電力の電流値の平均値を、前記目標値として算出する。
【0009】
また、本発明の一実施形態の電力変換システムは、前記電流検出部が検出する電流値を示す自機直流電力情報を、前記他の電力変換装置に供給する自機直流電力情報供給部を更に備える。
【0010】
また、本発明の一実施形態の電力変換システムは、前記第2電力変換部は、前記負荷から供給される交流電力を直流電力に変換し、前記第1電力変換部は、前記第2電力変換部により変換された直流電力を前記電源に回生される交流電力に変換することにより、双方向電力変換を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、横流検出を行う電力変換装置及び電力変換システムの小型化及び低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の電力変換システムの構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の電源制御部の機能構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態の演算部の動作の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
以下、図を参照して電力変換装置の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の電力変換システム1の構成の一例を示す図である。電力変換システム1は、電力変換装置10が複数台並列接続される。この一例では、電力変換システム1は、電力変換装置10−1と、電力変換装置10−2との2台が並列接続される。電力変換装置10−1と、電力変換装置10−2とは、通信線CLによって接続されており、情報の送受信が可能である。
電力変換装置10−1と電力変換装置10−2とを区別しない場合には、これら電力変換装置10−1と電力変換装置10−2とを総称して、電力変換装置10と記載する。
【0015】
電力変換装置10は、電源PSから供給される電力を変換し、変換した電力を負荷LDに供給する。電源PSは、交流電源であり、電力変換装置10に対して交流電力を供給する。電源PSから供給される交流電流I1は、交流電流I11と交流電流I12とに分流され、交流電流I11が電力変換装置10−1に、交流電流I12が電力変換装置10−2にそれぞれ供給される。
【0016】
この電力変換装置10は、電源PSから負荷LDへの順方向に電力を供給する単一方向電力変換装置であってもよい。また、電力変換装置10は、順方向の電力供給に加え、負荷LDから電源PSへの逆方向に電力を供給する双方向電力変換装置であってもよい。ここでは、電力変換装置10が単一方向電力変換装置である場合について説明する。
【0017】
電力変換装置10−1は、電源制御部100−1と、第1電力変換部200−1と、第2電力変換部300−1と、電流検出部400−1と、母線電圧検出部500−1と、平滑容量C−1とを備える。
電力変換装置10−2は、電源制御部100−2と、第1電力変換部200−2と、第2電力変換部300−2と、電流検出部400−2と、母線電圧検出部500−2と、平滑容量C−2とを備える。
なお、これら電力変換装置10−1の各部と、電力変換装置10−2の各部とを区別しない場合には、例えば、電源制御部100−1と電源制御部100−2とを総称して電源制御部100とも記載する。同様にこれら各部をそれぞれ総称して、第1電力変換部200、第2電力変換部300、電流検出部400、母線電圧検出部500、及び平滑容量Cとも記載する。
【0018】
ここでは、複数台ある電力変換装置10のうち、一例として電力変換装置10−1について説明する。電力変換装置10−2については、電力変換装置10−1と同一の構成であるため、その説明を省略する。また、以下において、電力変換装置10−1を「自機」として説明する場合、電力変換装置10−2を「他機」とも記載する。なお、「自機」と「他機」との関係は相対的なものであり、例えば、電力変換装置10−2を「自機」とする場合には、電力変換装置10−1が「他機」である。
【0019】
第1電力変換部200−1は、ダイオードブリッジなどの整流器(不図示)を備えており、電源PSから供給される交流電流I11を直流電流I31に変換する。
第2電力変換部300−1は、半導体スイッチ(不図示)を備えており、第1電力変換部200−1から供給される直流電流I31を、交流電流I21に変換する。この交流電流I21は、電力変換装置10−2が出力する交流電流I22とともに交流電流I2として負荷LDに供給される。
【0020】
平滑容量C−1は、第1電力変換部200−1と、第2電力変換部300−1との間の直流電流区間に備えられる。平滑容量C−1は、直流電流I31を平滑化する。
具体的には、第1電力変換部200−1は、直流電流I31aを出力する。この直流電流I31aとは、平滑化されていない脈流である。平滑容量C−1は、直流電流I31aを平滑化して平滑化電流I31bを生成する。第2電力変換部300−1には、平滑化電流I31bが供給される。
ここで、第1電力変換部200−1と、第2電力変換部300−1との間の直流電流区間のうち、脈流である直流電流I31aが流れる区間を脈流区間SPともいう。また、第1電力変換部200−1と、第2電力変換部300−1との間の直流電流区間のうち、平滑化電流I31bが流れる区間を平滑電流区間SSともいう。
【0021】
電流検出部400−1は、第1電力変換部200−1と第2電力変換部300−1との間の直流電力の状態を検出する。この一例では「直流電力の状態」とは、直流電流I31の電流値である。この一例の場合、電流検出部400−1は、電流検出器(不図示)を備えており、直流電流I31の電流値CV31を検出する。電流検出部400−1は、検出した電流値CV31を電源制御部100−1に出力する。
【0022】
電流検出部400−1は、第1電力変換部200−1と第2電力変換部300−1との間の直流電流区間のうち、特に平滑電流区間SSの直流電力の状態を検出してもよい。この平滑電流区間SSとは、直流電力の脈流成分が脈流区間SPに比べて少ない区間である。この一例の場合、電流検出部400−1は、平滑容量C−1と、第2電力変換部300−1との間の電流値CV31を検出する。
【0023】
母線電圧検出部500−1は、電圧検出器(不図示)を備えており、第2電力変換部300−1が出力する交流電力の電圧値、すなわち母線電圧値BV21を検出する。母線電圧検出部500−1は、検出した母線電圧値BV21を示す母線電圧値信号BVSを電源制御部100−1に出力する。
【0024】
図1に示す一例の場合、電力変換装置10−1は、負荷LDに対して交流電流I21を供給する。電力変換装置10−2は、負荷LDに対して交流電流I22を供給する。負荷LDには、交流電流I21と交流電流I22との合成電流である交流電流I2が供給される。
ここで、交流電流I21と交流電流I22との位相が一致していない場合には、電力変換装置10−1と電力変換装置10−2との間に交流電流Icfが流れる場合がある。この交流電流Icfを横流ともいう。
電源制御部100−1は、この横流を生じさせる交流電流I21と交流電流I22との位相差を低減する制御を行う。この電源制御部100−1の機能構成について説明する。
【0025】
[電源制御部100の機能構成]
電源制御部100−1は、電力変換装置10−1の各部を制御する。この電源制御部100−1の機能構成の一例について、図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態の電源制御部100−1の機能構成の一例を示す図である。電源制御部100−1は、演算部110と、自機直流電流信号取得回路120と、他機直流電流情報受信部130と、母線電圧信号取得回路140と、自機直流電流情報送信部150と、出力周波数指令出力回路160とを備える。
【0026】
自機直流電流信号取得回路120は、電流検出部400−1が出力する電流値信号CVSを取得する。この電流値信号CVSとは、電流検出部400−1が検出した電流値CV31を示す信号である。自機直流電流信号取得回路120は、取得した電流値信号CVSが示す電流値(すなわち、電流値CV31)を自機直流電流値DCとして演算部110に出力する。
【0027】
他機直流電流情報受信部130は、他の電力変換装置10から通信線CLを介して送信される平均自機直流電流値DCAを受信する。この一例では、他の電力変換装置10とは、電力変換装置10−2である。電力変換装置10−2は、通信線CLを介して平均自機直流電流値DCA2を送信する。この場合、他機直流電流情報受信部130は、電力変換装置10−2から送信される平均自機直流電流値DCA2を受信する。
なお、この一例では、他の電力変換装置10が、電力変換装置10−2のみである場合について説明するが、これに限られない。電力変換システム1が3台以上の並列接続された電力変換装置10を備える場合には、他機直流電流情報受信部130は、それぞれの電力変換装置10から、平均自機直流電流値DCAを受信する。例えば、電力変換システム1が、n台(nは自然数。以下の説明において同じ。)の電力変換装置10を備える場合、電力変換装置10−1の他機直流電流情報受信部130は、2台目の電力変換装置10−2から平均自機直流電流値DCA2を受信し、n台目の電力変換装置10−nから平均自機直流電流値DCAnを受信する。
すなわち、他機直流電流情報受信部130は、並列接続される複数台の電力変換装置10のうちの、他機の直流電力の状態(この一例では、直流電流I32の電流値)を示す平均自機直流電流値DCA2を受信する。
【0028】
母線電圧信号取得回路140は、母線電圧検出部500−1が出力する母線電圧値信号BVSを取得する。この母線電圧値信号BVSとは、母線電圧検出部500−1が検出した母線電圧値BV21を示す信号である。母線電圧信号取得回路140は、取得した母線電圧値信号BVSが示す電圧値(すなわち、母線電圧値BV21)を母線電圧値BVとして演算部110に出力する。
【0029】
演算部110は、CPU(Central Processing Unit)を備えており、電流値平均化処理部111と、均等電流目標値算出部112と、自他電流偏差演算部113と、周波数補正処理部114と、PLL処理部115と、加算部116とをその機能部として備える。
【0030】
電流値平均化処理部111は、自機直流電流信号取得回路120が出力する自機直流電流値DCを平均化する。ここで、自機直流電流信号取得回路120は、電流値信号CVSを所定のサンプリング周期によって取得し、取得した電流値信号CVSが示す電流値を、自機直流電流値DCとして順次出力する。電流値平均化処理部111は、自機直流電流信号取得回路120から順次出力される複数の自機直流電流値DCを平均化する。電流値平均化処理部111は、平均化した自機直流電流値DCを、平均自機直流電流値DCAとして均等電流目標値算出部112と、自他電流偏差演算部113と、自機直流電流情報送信部150とに出力する。
【0031】
自機直流電流情報送信部150は、電流値平均化処理部111が出力する平均自機直流電流値DCAを平均自機直流電流値DCA1として、他の電力変換装置10に対し通信線CLを介して送信する。ここで、平均自機直流電流値DCAnとは、電力変換装置10−nの平均自機直流電流値DCAである。例えば、平均自機直流電流値DCA1とは、電力変換装置10−1の平均自機直流電流値DCAである。
【0032】
なお、他の電力変換装置10−nが備える自機直流電流情報送信部150−n(不図示)も、電力変換装置10−1の自機直流電流情報送信部150と同様にして、平均自機直流電流値DCAnを送信する。この一例では、電力変換装置10−2が備える自機直流電流情報送信部150−2は、自機の平均自機直流電流値DCAを平均自機直流電流値DCA2として、電力変換装置10−1に対し通信線CLを介して送信する。
【0033】
つまり、電力変換装置10−nは、他の電力変換装置10の平均自機直流電流値DCAを、当該他の電力変換装置10から受信する。また、電力変換装置10−nは、自機の平均自機直流電流値DCAを他の電力変換装置10に対して送信する。すなわち、電力変換装置10は、他の電力変換装置10との間において、自機の平均自機直流電流値DCAを相互に送受信する。
【0034】
上述したように、他機直流電流情報受信部130は、電力変換装置10−2から送信される平均自機直流電流値DCA2を受信する。他機直流電流情報受信部130は、他の電力変換装置10から受信した平均自機直流電流値DCAを、平均他機直流電流値DCOとして均等電流目標値算出部112に出力する。
【0035】
均等電流目標値算出部112は、他機直流電流情報受信部130から平均他機直流電流値DCOを取得する。また、均等電流目標値算出部112は、電流値平均化処理部111から平均自機直流電流値DCAを取得する。
均等電流目標値算出部112は、取得した平均自機直流電流値DCAと平均他機直流電流値DCOとに基づいて、均等電流目標値ECを算出する。ここで、他機直流電流情報受信部130は、電力変換システム1が備える複数の電力変換装置10のうち、自機以外、つまり電力変換装置10−1以外の電力変換装置10のそれぞれから平均自機直流電流値DCAを受信している。また、他機直流電流情報受信部130は、電流値平均化処理部111から自機、つまり電力変換装置10−1の平均自機直流電流値DCAを取得している。つまり、均等電流目標値算出部112は、電力変換システム1が備えるすべての電力変換装置10についての平均自機直流電流値DCAを取得している。均等電流目標値算出部112は、すべての電力変換装置10のそれぞれのついての平均自機直流電流値DCAに基づいて、均等電流目標値ECを算出する。
【0036】
自他電流偏差演算部113は、電流値平均化処理部111が出力する平均自機直流電流値DCAと、均等電流目標値算出部112が出力する均等電流目標値ECとに基づいて、自他電流偏差CDを算出する。
ここで、自他電流偏差CDとは、均等電流目標値ECに対する自機の平均自機直流電流値DCAの偏差である。つまり、自他電流偏差CDは、自機の平均自機直流電流値DCAの目標値に対するずれの程度を示す。
【0037】
周波数補正処理部114は、自他電流偏差演算部113が算出する自他電流偏差CDに基づいて、周波数補正量CRを算出する処理を行う。具体的には、周波数補正処理部114は、自他電流偏差CDについての比例積分動作(PI制御)又は比例積分微分動作(PID制御)によって、自他電流偏差CDに対するゲイン、すなわち周波数補正量CRの調整を行う。
【0038】
PLL処理部115は、母線電圧信号取得回路140が出力する母線電圧値BVに基づいて周波数変換処理を行う。具体的には、PLL処理部115は、PLL(phase locked loop)回路を備えており、母線電圧値BVに基づいて出力周波数指令ベース値FCBを生成する。PLL処理部115は、生成した出力周波数指令ベース値FCBを加算部116に出力する。
【0039】
加算部116は、PLL処理部115が出力する出力周波数指令ベース値FCBと、周波数補正処理部114が出力する周波数補正量CRとを加算処理する。加算部116は、加算処理の結果得られた出力周波数指令FCを出力周波数指令出力回路160に出力する。
【0040】
出力周波数指令出力回路160は、加算部116が出力する出力周波数指令FCを第2電力変換部300−1に対して出力する。この結果、第2電力変換部300−1は、負荷LDに対して供給する交流電力の周波数を出力周波数指令FCが示す周波数にして、電力変換を行う。
【0041】
[演算部110の動作について]
次に、演算部110の動作の一例について図3を参照して説明する。
図3は、本実施形態の演算部110の動作の一例を示す図である。
【0042】
(ステップS10)電流値平均化処理部111は、自機直流電流信号取得回路120から自機直流電流値DCを取得する。ここで、電流値平均化処理部111は、所定のサンプリング周波数によって、自機直流電流値DCを取得する。
(ステップS20)電流値平均化処理部111は、ステップS10において順次取得した自機直流電流値DCを平均化して、平均自機直流電流値DCAを算出する。
(ステップS30)電流値平均化処理部111は、ステップS20において算出した平均自機直流電流値DCAを、自機直流電流情報送信部150を介して他の電力変換装置10に対して送信する。
【0043】
(ステップS40)均等電流目標値算出部112は、他機直流電流情報受信部130から平均他機直流電流値DCOを取得する。均等電流目標値算出部112は、電流値平均化処理部111がステップS20において算出した平均自機直流電流値DCAを取得する。
(ステップS50)均等電流目標値算出部112は、ステップS40において取得した平均自機直流電流値DCA及び平均他機直流電流値DCOに基づいて、均等電流目標値ECを算出する。
【0044】
(ステップS60)自他電流偏差演算部113は、ステップS20において算出された平均自機直流電流値DCAと、ステップS50において算出された均等電流目標値ECとに基づいて、自他電流偏差CDを算出する。
【0045】
(ステップS70)周波数補正処理部114は、ステップS60において算出された自他電流偏差CDに基づいて、周波数補正量CRを算出する。
【0046】
(ステップS80)PLL処理部115は、母線電圧信号取得回路140から母線電圧値BVを取得する。ここで、PLL処理部115は、所定のサンプリング周波数によって、母線電圧値BVを取得する。
(ステップS90)PLL処理部115は、取得した母線電圧値BVに対して位相同期処理を行い、出力周波数指令ベース値FCBを算出する。
【0047】
(ステップS100)加算部116は、ステップS90において算出された出力周波数指令ベース値FCBと、ステップS70において算出された周波数補正量CRとを加算して、出力周波数指令FCを算出する。加算部116は、算出した出力周波数指令FCを出力周波数指令出力回路160に対して出力して、一連の処理を終了する。
演算部110は、ステップS10からステップS100までの処理を繰り返し実行することにより、自機の第2電力変換部300−1が出力する電力の周波数を制御する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置10−1は、横流の発生状態を、第1電力変換部200−1と第2電力変換部300−1との間の直流電力の状態(上述の一例では、直流電流I31の電流値CV31)によって検出する。
【0049】
従来の電力変換装置には、横流の発生状態を交流出力の各相の電流値によって検出しているものがある。この従来の電力変換装置の場合、交流出力の各相について電流検出器を備える必要がある。例えば、従来の電力変換装置が三相交流を出力する場合、3つの電流検出器を備える。
【0050】
一方、本実施形態の電力変換装置10−1は、第1電力変換部200−1と第2電力変換部300−1との間の直流電力の状態を検出すればよく、1つの検出器を備えれば足りる。上述の一例では、電力変換装置10−1は、直流電流I31の電流値CV31を検出すればよく、1つの電流検出器を備えれば足りる。
つまり、本実施形態の電力変換装置10−1は、交流出力の各相の電流値によって横流の発生状態を検出する場合に比べて、電流検出器の数を低減することができる。すなわち、本実施形態の電力変換装置10−1によれば、電力変換装置10の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態の電力変換装置10−1は、横流検出のための検出器が、交流電力の状態ではなく、直流電力の状態を検出する。上述の一例では、電力変換装置10−1は、電流検出部400−1は、例えば交流電流I21などの交流電流値ではなく、直流電流I31の電流値、すなわち直流電流値を検出する。この直流電流I31は、電力変換装置10−1の交流出力の有効成分と無効成分とのうち、有効成分を示す。つまり、本実施形態の電力変換装置10−1は、交流出力の有効成分と無効成分とのうち、有効成分に基づいて横流検出を行う。
すなわち、本実施形態の電力変換装置10−1は、交流出力を有効成分と無効成分とに分離する手順を経ることなく、交流出力の有効成分に基づいて横流検出を行うことができる。つまり、本実施形態の電力変換装置10−1は、交流出力の有効成分に基づいて横流検出を行う場合の構成を簡素化することができる。
【0052】
また、本実施形態の電力変換装置10−1は、電流検出部400が、平滑容量C−1と、第2電力変換部300との間の直流電力の状態(電流値CV31)を検出する。すなわち、本実施形態の電力変換装置10−1は、脈流区間SPを流れる脈流ではなく平滑電流区間SSを流れる平滑化電流I31bを検出する。このように構成することにより、本実施形態の電力変換装置10−1は、安定化された電流値に基づいて出力電力の周波数制御を行うことができる。したがって、本実施形態の電力変換装置10−1は、不安定な脈流成分を有する電流値に基づいて制御を行う場合に比べて、出力電力の周波数の制御精度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の電力変換装置10−1は、複数台の電力変換装置10のそれぞれの直流電力の電流値の平均値を、均等電流目標値EC(制御目標値)として算出する。つまり、本実施形態の電力変換装置10−1は、並列接続される電力変換装置の出力電力を均等化する。このように構成することにより、本実施形態の電力変換装置10−1は、電力変換装置の並列数が変化したとしても、電力変換装置10−1の制御アルゴリズムを変更することなく出力電力の周波数制御を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態の電力変換装置10−1は、自機直流電流情報送信部150を備えている。本実施形態の電力変換装置10−1は、この自機直流電流情報送信部150により自機に並列接続される他の電力変換装置10に対して平均自機直流電流値DCAを供給する。このように構成することにより、電力変換装置10−1に並列接続される他の電力変換装置10においても、自機と同様にして出力周波数の制御を行うことができる。
【0055】
[変形例:電圧検出の場合]
なお、電力変換装置10−1は、電流検出部400−1に代えて、又は電流検出部400−1に加えて、電圧検出部(不図示)を備えていてもよい。この電圧検出部は、平滑容量C−1の両端電圧を検出する。
つまり、電力変換装置10−1は、第1電力変換部200と第2電力変換部300との間の直流電力の状態を、電流又は電圧のいずれかによって検出する。
【0056】
[変形例:双方向電力変換]
電力変換装置10−1は、双方向電力変換装置であってもよい。この場合、第2電力変換部300−1は、負荷LDから供給される交流電力を直流電力に変換し、第1電力変換部200−1は、第2電力変換部300−1が変換する直流電力を電源PSに回生される交流電力に変換することにより、双方向電力変換を行う。
【0057】
この変形例の場合、電源制御部100−1は、電流検出部400−1が検出する直流電流I31に基づいて出力電力の周波数制御を行う。この直流電流I31は、第1電力変換部200−1と、第2電力変換部300−1との間の電流である。この場合、電源制御部100−1は、順方向の電力変換の場合には、第1電力変換部200−1の出力電流値に基づいて第2電力変換部300−1の出力周波数を制御する。また、電源制御部100−1は、逆方向の電力変換の場合には、第2電力変換部300−1の出力電流値に基づいて第1電力変換部200−1の出力周波数を制御する。
つまり、電力変換装置10−1は、電力の変換方向によらず、電流検出部400−1が検出する直流電流I31に基づいて出力電力の周波数制御を行うことができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態及びその変形を説明したが、これらの実施形態及びその変形は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態及びその変形は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。また、上述した各実施形態及びその変形は、互いに適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…電力変換システム
10…電力変換装置
100…電源制御部
110…演算部(制御演算部)
111…電流値平均化処理部
112…均等電流目標値算出部(直流電力目標値算出部)
113…自他電流偏差演算部
114…周波数補正処理部
115…PLL処理部
116…加算部
120…自機直流電流信号取得回路
130…他機直流電流情報受信部(他機直流電力情報取得部)
140…母線電圧信号取得回路
150…自機直流電流情報送信部(自機直流電力情報供給部)
160…出力周波数指令出力回路
200…第1電力変換部
300…第2電力変換部
400…電流検出部
500…母線電圧検出部
C…平滑容量
図1
図2
図3