(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼鏡レンズの加工時に眼鏡レンズを挟み込んで保持するレンズ保持軸の、眼鏡レンズに対する取り付け位置である軸出し位置を設定する軸出し装置に用いられるアタッチメントであって、
前記軸出し装置は、
前記眼鏡レンズの下方に位置する支持台と、
前記眼鏡レンズを支持するために前記支持台から上方に突出すると共に、それぞれが三角形の頂点を成す位置に配置された第1支持ピン、第2支持ピン、および第3支持ピンを備え、
前記アタッチメントは、
ベースとなる部材である基部と、
前記眼鏡レンズを支持するために、前記基部から上方に突出する第4支持ピンと、
前記基部において、前記軸出し装置に設けられている前記第1支持ピン、第2支持ピン、および第3支持ピンの位置および形状に対応する形状に形成された3つの固定孔と、
を備えると共に、前記3つの固定孔の各々に前記第1支持ピン、第2支持ピン、および第3支持ピンが通されることで前記軸出し装置に着脱可能に装着され、
前記眼鏡レンズが前記支持台に接触していない場合に、前記第1支持ピン、第2支持ピン、および第3支持ピンの全てが前記眼鏡レンズに接触し、
前記眼鏡レンズが前記支持台に接触している場合に、前記第1支持ピン、第2支持ピン、および第3支持ピンのうちの少なくとも1つと前記第4支持ピンとが前記眼鏡レンズに接触することを特徴とする軸出し装置用アタッチメント。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<概要>
本開示で例示する軸出し装置は、支持台および第1〜第4支持ピンを備える。支持台は、軸出し装置に載置される眼鏡レンズの下方に位置する。第1〜第4支持ピンは、眼鏡レンズを支持するために支持台から上方に突出する。第1〜第3支持ピンは、それぞれが三角形の頂点を成す位置に配置される。載置された眼鏡レンズが支持台に接触していない場合には、第1〜第3支持ピンの全てが眼鏡レンズの底面に接触して眼鏡レンズを支持する。載置された眼鏡レンズが支持台に接触している場合には、第1〜第3支持ピンのうちの少なくとも1つ(多くの場合は1つのみ)と第4支持ピンが、眼鏡レンズの底面に接触して眼鏡レンズを支持する。
【0012】
3つの支持ピンのみが用いられる軸出し装置では、眼鏡レンズの一部が支持台に接触すると、多くの場合、3つの支持ピンのうちの1つと支持台の2箇所のみによって眼鏡レンズが支持される状態となる。その結果、レンズの支持が不安定となる。これに対し、本開示における軸出し装置では、眼鏡レンズの一部が支持台に接触しても、第1〜第3支持ピンのうちの少なくとも1つ(多くの場合は1つのみ)と、第4支持ピンと、支持台とによって眼鏡レンズが支持される。その結果、眼鏡レンズの支持が適切に行われる。
【0013】
なお、本開示で例示する技術は種々の装置に適用できる。例えば、本開示で例示する技術を適用できる装置は、眼鏡レンズにカップを取り付けることで軸出し位置を設定する装置であってもよいし、眼鏡レンズにレンズ保持軸を直接装着することで軸出し位置を設定する装置であってもよい。また、本開示で例示する技術を適用できる装置は、軸出し位置に印点を打つことで軸出し位置を設定する装置であってもよい。
【0014】
第1〜第3支持ピンは、それぞれが正三角形の頂点を成す位置に配置されてもよい。第1〜第3支持ピンのそれぞれの先端部の高さが等しくてもよい。この場合、眼鏡レンズが支持台に接触していない状態において、種々の形状の眼鏡レンズが第1〜第3支持ピンによって安定に支持される。
【0015】
ただし、第1〜第3支持ピンのそれぞれの頂点が成す三角形は、正三角形でなくてもよい。例えば、第1〜第3支持ピンは、それぞれの頂点が二等辺三角形を成す位置に配置されてもよい。
【0016】
第4支持ピンは、第1〜第3支持ピンが頂点を成す三角形の外側に配置されてもよい。この場合には、第4支持ピンが三角形の内側に配置されている場合とは異なり、眼鏡レンズが支持台に接触した際に第4支持ピンが良好に眼鏡レンズに接触する。
【0017】
第1〜第3支持ピンのうちの2つの支持ピンの中間位置を通り、且つ、前記2つの支持ピンを通過する直線に垂直な基準線上に、第4支持ピンが配置されていてもよい。この場合、載置された眼鏡レンズが基準線に対していずれの方向にずれた場合でも、眼鏡レンズが支持台に接触した状態で、第4支持ピンが眼鏡レンズに接触し易くなる。従って、第4支持ピンによる眼鏡レンズの支持が効率よく行われる。
【0018】
なお、「基準線上」との用語は、厳密に基準線上に配置されることを限定するものではない。つまり、「眼鏡レンズが基準線に対していずれの方向にずれた場合でも第4支持ピンが機能し易くなる」という効果を奏する範囲であれば、第4支持ピンが基準線上から多少ずれていてもよい。
【0019】
加工後の眼鏡レンズを使用者が装用して正面を見た場合に、使用者の視軸よりも上方に位置する側を眼鏡レンズの+y側、視軸よりも下方に位置する側を眼鏡レンズの−y側、視軸の方向を眼鏡レンズのz方向、視軸の方向と上下方向に共に交差する左右方向をx方向と定義する。第1支持ピンおよび第2支持ピンは、載置される眼鏡レンズのx方向に並べて配置されてもよい。第4支持ピンは、第1支持ピンと第2支持ピンの中間位置を通る直線であり、且つ第1支持ピンおよび第2支持ピンを通過する直線に垂直な基準線(以下、「第1基準線」という)上に配置されてもよい。
【0020】
玉型の幾何中心は、眼鏡レンズの光学中心から左右方向(x方向)にずれるのが一般的である。従って、軸出し位置を玉型の幾何中心とする場合、眼鏡レンズは、支持ピンに対して左右方向にずれた状態で載置されることが多い。例えば、眼鏡レンズの載置位置が右方向にずれると、眼鏡レンズは、支持台と、第1支持ピンおよび第2支持ピンのうち左側に配置されたピンの2箇所で支持される。ここで、第4支持ピンが第1〜第3支持ピンよりも左側に配置されていると、第4支持ピンは眼鏡レンズを支持することはできない。左右が逆になった場合も同様の問題が発生する。これに対し、第4支持ピンが第1基準線上に配置されることで、眼鏡レンズの載置位置が左右いずれの方向にずれた場合でも、第4支持ピンが眼鏡レンズに接触しやすくなる。
【0021】
第4支持ピンは、第1基準線上に設けられた1つの第4支持ピンのみであってもよい。この場合、支持ピンの数が増加することが抑制される。その結果、例えば、眼鏡レンズの撮影(眼鏡レンズに投影した指標の撮影も含む)に支持ピンが悪影響を及ぼす可能性が抑制される。
【0022】
ただし、第4支持ピンの位置を変更することも可能である。例えば、第4支持ピンは、第2支持ピンと第3支持ピンの中間位置を通る直線であり、且つ第2支持ピンおよび第3支持ピンを通過する直線に垂直な基準線(以下、「第2基準線」という)上に配置されてもよい。また、第4支持ピンは、第3支持ピンと第1支持ピンの中間位置を通る直線であり、且つ第3支持ピンおよび第1支持ピンを通過する直線に垂直な基準線(以下、「第3基準線」という)上に配置されてもよい。
【0023】
また、第4支持ピンの数を変更することも可能である。例えば、第2基準線上および第3基準線上の各々に第4支持ピンを配置してもよい。この場合、第4支持ピンの数は増加するが、眼鏡レンズの載置位置が左右いずれの方向にずれた場合でも、少なくともいずれかの第4支持ピンが眼鏡レンズに接触する。
【0024】
軸出し装置は、第1〜第3支持ピンのそれぞれが頂点を成す三角形の中心よりも−y側において、眼鏡レンズに対するカップの取り付け、レンズ保持軸の装着、および印点の付与の少なくともいずれかを上方から押さえつけて行う軸出し手段をさらに備えてもよい。玉型の幾何中心は、眼鏡レンズの光学中心よりも−y側(眼鏡レンズにおける下側)に位置する場合が多い。従って、三角形の中心よりも−y側において軸出しを行うことで、幾何中心で軸出しを行う際の眼鏡レンズの姿勢が安定しやすくなる。
【0025】
さらに、第4支持ピンは、眼鏡レンズのうち、第1支持ピンおよび第2支持ピンが接触する位置よりも−y側に接触する位置に配置されてもよい。三角形の中心よりも−y側において軸出しを行う場合に眼鏡レンズの一部が支持台に接触していると、軸出しの際に、眼鏡レンズの−y側を支持台に近づく方向に押さえつける力が働く。これに対し、第1支持ピンおよび第2支持ピンよりも−y側に第4支持ピンが配置されていることで、眼鏡レンズの−y側が第4支持ピンによって適切に支持される。
【0026】
ただし、軸出しを行う位置等に応じて、第4支持ピンの位置および数の少なくともいずれかを変更してもよい。例えば、第4支持ピンは、第1支持ピンおよび第2支持ピンが接触する位置よりも+y側に接触する位置に配置されてもよいし、+y側と−y側の両方に配置されてもよい。
【0027】
レンズカーブ値が基準値である眼鏡レンズの後面と同じ曲率半径を有し、第1〜第3支持ピンの各々の先端部を通ると共に、中心がそれぞれの先端部よりも下方に位置する仮想球面を設定する。第4支持ピンの先端部の高さは、仮想球面に接する高さ以下であってもよい。この場合、後面のレンズカーブ値が基準値以下である眼鏡レンズが載置され、且つ眼鏡レンズが支持台に接触していない状態において、第4支持ピンの影響で第1〜第3支持ピンのいずれかと眼鏡レンズの後面の間に隙間が生じることが無い。よって、多くの種類の眼鏡レンズが、第1〜第3支持ピンによって安定して支持される。
【0028】
なお、第4支持ピンの先端部の高さは、仮想球面に接する高さであってもよい。この場合、後面のレンズカーブ値が基準値である眼鏡レンズに、第1〜第4支持ピンの全てが接触し、支持がさらに安定する。
【0029】
本開示で例示する軸出し装置用アタッチメントは、第4支持ピンを備えると共に、第1〜第3支持ピンを備える軸出し装置に着脱可能に装着される。従って、第4支持ピンを備えない軸出し装置にアタッチメントが装着されるだけで、支持ピンによる眼鏡レンズの支持が適切に行われる。
【0030】
<実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照して説明する。眼鏡レンズ(以下、単に「レンズ」という場合もある)LEを加工する眼鏡レンズ加工装置は、レンズ保持軸によってレンズLEを前面および後面から挟み込んだ状態で加工する場合が多い。本実施形態では、レンズLEに対するレンズ保持軸の取り付け位置(以下、「軸出し位置」という)を設定する軸出し装置1として、レンズ保持軸が装着されるカップCUをレンズLEに取り付けるカップ取り付け装置を例示する。しかし、本実施形態で例示する技術の少なくとも一部は、カップ取り付け装置以外の装置にも適用できる。例えば、カップCUを介さずにレンズ保持軸をレンズLEに直接取り付ける装置、および、レンズLEにおける軸出し位置に印点を付与する装置等にも、本実施形態で例示する技術の少なくとも一部を適用できる。カップCUまたはレンズ保持軸等の取り付け動作を行わずに、決定した軸出し位置をモニタ等によってユーザに通知する装置にも、本実施形態で例示する技術を適用できる。また、眼鏡レンズ加工装置が、軸出し位置を設定する機能を有していてもよい。この場合、眼鏡レンズ加工装置が軸出し装置として機能する。
【0031】
図1を参照して、本実施形態における軸出し装置1の機械的構成について概略的に説明する。
図1は、軸出し装置1の概略構成を右方から見た図である。
図1における紙面前後方向を装置の左右方向(x方向)、紙面左右方向を装置の前後方向(y方向)、紙面上下方向を装置の上下方向(z方向)とする。詳細には、
図1における紙面手前側(装置の右側)を+x側、紙面奥側(装置の左側)を−x側、紙面右側(装置の後側)を+y側、紙面左側(装置の前側)を−y側、紙面上側(装置の上側)を+z側、紙面下側(装置の下側)を−z側とする。
【0032】
本実施形態の軸出し装置1は、本体2、下張り出し部3、および上張り出し部4を備える。本体2は、上下方向に延びる箱状の部材である。下張り出し部3は、本体2の下部から前方に張り出している。上張り出し部4は、本体2の上部から前方に張り出している。下張り出し部3の上部には、レンズ支持機構5が設けられている。レンズ支持機構5は、複数の支持ピン7(
図1では、第2支持ピン7B、第3支持ピン7C、および第4支持ピン7Dのみを図示)の先端部(上端)でレンズLEを支持する。レンズ支持機構5の詳細については後述する。
【0033】
レンズLEの特性を測定する特性測定機構6について説明する。本実施形態の軸出し装置1は、レンズLEの特性を測定し、測定結果に基づいて軸出し位置を設定することができる。軸出し装置1は、照明光源10、反射ミラー11、コリメータレンズ12、指標板13、および撮影素子15を備える。
【0034】
照明光源10は、レンズLEを照明するための照明光を発生させる。一例として、本実施形態の照明光源10は上張出部4の内部に設けられている。しかし、照明光源10の配置を変更することも可能である。反射ミラー11は、照明光源10が発生させた照明光をレンズLEに向けて反射させる。コリメータレンズ12は、反射ミラー11によって反射された照明光を、レンズLEよりも大きな径の平行光束とする。指標板13には、レンズLEの光学中心等を検出するための指標(例えばリング指標等)が形成されている。本実施形態の指標板13は、照明光の光路のうちレンズLEよりも上流側(本実施形態では上張出部4の内部)に設けられている。しかし、指標板13は、レンズLEよりも下流側(撮影素子15側)の光路に設けられていてもよい。
【0035】
撮影素子15(例えばCCDセンサ等)は、レンズ15を通過した照明光の光束を受光する。本実施形態の撮影素子15は、レンズ支持機構5における支持台6の下方に設けられている。支持台6の少なくとも一部は、照明光を透過する透過部材によって形成されている。その結果、支持台6の下方に設けられた撮影素子15によって照明光が受光される。ただし、撮影素子15の位置等を変更することも可能である。例えば、レンズLEの下方にミラーを設置し、ミラーによって反射された照明光が撮影素子15によって受光されてもよい。撮影素子15が撮影した画像によって、レンズLEの屈折力および光学中心の位置等が測定される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の軸出し装置1は、レンズLEに向けて指標を投影して撮影素子15によって撮影することで、レンズLEの屈折力および光学中心の位置等を測定する。しかし、レンズLEの特性を測定する方法、および、測定するレンズLEの特性を変更することも可能である。例えば、軸出し装置1は、撮影素子15によってレンズLEを撮影することで、レンズLEに予め付与された印点の位置をレンズLEの特性として検出してもよい。この場合、指標板13等の構成を省略することも可能である。
【0037】
軸出し機構20について説明する。前述したように、本実施形態の軸出し機構20は、カップCUをレンズLEに取り付けることで軸出し位置を設定する。軸出し機構20は、z方向移動機構21、およびアーム22を備える。z方向移動機構21は、本体2の内部に設けられており、z方向移動モータ(図示外)の動力によってz方向(上下方向)に移動する。ただし、z方向移動機構21は、ユーザによる手動操作によって上下方向に移動してもよい。アーム22は、z方向移動機構21から前方に延びる。アーム22の先端部分には、カップCUが装着される装着部23が設けられている。アーム22の内部には、装着部回転モータ24の動力を装着部23に伝達する動力伝達機構(例えばベルト)25が設けられている。装着部回転モータ24が回転すると、装着部23は、上下方向に延びるカップCUの取り付け中心軸を中心として回転する。
【0038】
なお、本実施形態では、軸出し機構20によって軸出しが行われるxy方向の位置は予め定められている。軸出しが行われるxy方向の位置と、複数の支持ピン7の位置の関係については後述する。また、特性測定機構によってレンズLEの特性が測定される場合、軸出し機構20はアーム22を測定光の光路から退避させるが、この機構の説明は省略する。
【0039】
図2を参照して、レンズLEの方向と、軸出し装置1の方向の関係性について説明する。本実施形態では、加工後のレンズLEを使用者が装用して正面を見た場合の使用者の視軸を基準として、レンズLEの方向を定義する。詳細には、
図2に示すように、視軸よりも上方に位置する側(正面図における上側)をレンズLEの+y側、視軸よりも下方に位置する側(正面図における下側)をレンズLEの−y側、視軸の方向をレンズLEのZ方向、視軸の方向と上下方向に共に交差する方向(つまり、使用者の左右方向)をx方向と定義する。
【0040】
また、前述したように、本実施形態では、軸出し装置1の左右方向をx方向、軸出し装置1の前後方向をy方向、軸出し装置1の上下方向をz方向と定義する。本実施形態では、軸出し装置1を用いて作業を行う作業者は、軸出し装置1のxyz方向とレンズLEのxyz方向とが概ね一致するように、軸出し装置1のレンズ支持機構5にレンズLEを載置する。つまり、作業者は、レンズLEのx方向(左右方向)と、軸出し装置1の左右方向とを概ね一致させる。また、作業者は、レンズLEのy方向と、軸出し装置1の前後方向とを概ね一致させる。ただし、軸出し装置1のxyz方向と、載置されるレンズLEのxyz方向は、完全に一致している必要は無い。
【0041】
図2を参照して、レンズLEに設定される玉型の一例について説明する。
図2で例示する玉型28は、使用者の左眼用の玉型である。
図2に示すレンズLEの光学中心OCは、平面視円形のレンズLEの中心に位置している。玉型28の幾何中心BCは、レンズLEの光学中心OCから左右方向にずれるのが一般的である。
図2に示す例でも、幾何中心BCは光学中心OCよりも+x方向にずれている。また、玉型28の幾何中心BCは、レンズLEの光学中心OCよりも−y側(つまり、正面を見た使用者の視軸よりも下側)に位置することが一般的である。なお、幾何中心BCは、玉型28の左右方向(x方向)の中心、且つ上下方向(y方向)の中心として求められる。例えば、玉型28を四角のボックスで囲んだ場合のボックスの中心(ボクシング中心)が、幾何中心BCとして求められてもよい。
【0042】
また、
図2で例示するレンズLEは、複数の支持ピン7の配置および高さを決定する基準となる基準レンズである。一例として、本実施形態では、後面(正面断面図における下側の面)のカーブ値が7カーブ、前面のカーブ値が4カーブ、直径が75mmであるマイナスレンズが基準レンズとされる。ただし、基準レンズのカーブ値および直径を変更できることは言うまでもない。例えば、軸出し装置1によって軸出し位置が設定される頻度が最も高い種類のレンズを基準レンズとしてもよい。
【0043】
図3〜
図7を参照して、本実施形態の軸出し装置1におけるレンズ支持機構5について詳細に説明する。
図3および
図4に示すように、レンズ支持機構5は、支持台6と複数の支持ピン7を備える。支持台6は、レンズ支持機構5に載置されるレンズLEの下方に位置し、レンズ支持機構5の土台となる。本実施形態における支持台6は、上面が平坦な円盤状に形成されている。しかし、支持台6の形状を変更することも可能である。例えば、支持台6の上面は平坦でなく湾曲していてもよい。支持台6の上面に凹凸が形成されていてもよい。支持台6は、平面視円形である必要は無い。
【0044】
複数の支持ピン7は、レンズLEを支持するために支持台6から上方に突出する。以下、本実施形態における複数の支持ピン7の数、配置、および高さ等について詳細に説明する。
【0045】
本実施形態では、第1支持ピン7A、第2支持ピン7B、第3支持ピン7C、および第4支持ピン7Dの4つの支持ピン7が設けられている。第1支持ピン7A、第2支持ピン7B、および第3支持ピン7C(以下、「第1〜第3支持ピン7」という)は、主に、レンズLEが支持台6に接触していない場合にレンズLEを支持する。第4支持ピン7Dは、主に、レンズLEが支持台6に接触している場合に、レンズLEの支持を補強する。
【0046】
図3に示すように、第1〜第3支持ピン7は、それぞれが仮想的な三角形30の頂点を成す位置に配置される。従って、第1〜第3支持ピン7が一直線上に並んで配置されている場合とは異なり、レンズLEが第1〜第3支持ピン7によって適切に支持される。
【0047】
詳細には、本実施形態の第1〜第3支持ピン7は、それぞれが仮想的な正三角形30の頂点を成す位置に配置される。また、
図4に示すように、第1〜第3支持ピン7の高さHは全て等しい。従って、種々の形状のレンズが、第1〜第3支持ピン7によって安定した状態で支持される。
【0048】
図3に示すように、第4支持ピン7Dは、第1〜第3支持ピン7が頂点を成す三角形30の外側に配置される。従って、レンズLEが支持台6に接触し、第1〜第3支持ピン7のうちの1つまたは2つ(多くの場合は2つ)がレンズLEの後面から離間した場合に、三角形30の外側に配置された第4支持ピン7DがレンズLEの後面に接触し、レンズLEの支持が補強される(この詳細は後述する)。
【0049】
図4の右側面図では、支持台6に接触せずに支持された基準レンズLEを、x方向の中心を通る縦断面で切断した断面図を模式的に図示している。
図4における曲線VSは、第4支持ピン7Dの高さを規定するための仮想球面の一部を示す。仮想球面は、レンズカーブ値が基準値(本実施形態では7カーブ)であるレンズLEの後面と同じ曲率半径を有する。また、仮想球面は、第1〜第3支持ピン7の各々の先端部に接する。さらに、仮想球面の中心は、第1〜第3支持ピン7の各々の先端部よりも下方(本実施形態では、支持台6よりも下方)に位置する。
図4に示すように、第4支持ピン7Dの高さH´は、仮想球面に接する高さ以下に調整されている。従って、後面のレンズカーブ値が基準値以下であるレンズLEが載置され、且つレンズLEが支持台6に接触していない場合、第1〜第3支持ピン7の全てがレンズLEの後面に接触する。その結果、第1〜第3支持ピン7によるレンズLEの支持が安定する。
【0050】
詳細には、本実施形態における第4支持ピン7Dは、仮想球面に接する高さに調整されている。従って、後面のレンズカーブ値が基準値であるレンズLEは、第1支持ピン7A、第2支持ピン7B、第3支持ピン7C、および第4支持ピン7Dの全てに接触し、より安定して支持される。
【0051】
なお、レンズLEの後面のレンズカーブ値が基準値よりも大きい場合には、レンズLEが支持台6に接触していなくても、第4支持ピン7DがレンズLEの後面に接触し得る。しかし、この場合には、第1〜第3支持ピン7のうちの2つ(本実施形態では、第1支持ピン7Aおよび第2支持ピン7B)と第4支持ピン7Dの3つによってレンズLEが支持される。従って、レンズLEの後面のレンズカーブ値が基準値より大きい場合でも、レンズLEの支持の安定度が大幅に低下することは無い。
【0052】
図3を参照して、第4支持ピン7Dの位置について詳細に説明する。第1〜第3支持ピン7のうちの2つの支持ピン7の中間位置を通り、且つ、前記2つの支持ピン7を通過する直線に垂直な直線を、基準線とする。基準線は3つ存在する。本実施形態の第4支持ピン7Dは、少なくともいずれかの基準線上に配置される。従って、レンズ支持機構5に載置されたレンズLEが基準線に対していずれの方向にずれた場合でも、第4支持ピン7DがレンズLEに接触し易くなる。なお、第4支持ピン7Dを基準線上に設ける場合、基準線上に厳密に第4支持ピン7Dが配置される必要は無く、基準線上から第4支持ピン7Dが多少ずれていてもよい。
【0053】
詳細には、本実施形態では、第1支持ピン7Aおよび第2支持ピン7Bはx方向に並べて配置されている。前述したように、作業者は、レンズLEの左右方向と、軸出し装置1のx方向とが概ね一致するように、レンズLEをレンズ支持機構5に載置する。つまり、第1支持ピン7Aおよび第2支持ピン7Bが並ぶ方向(軸出し装置1におけるx方向)は、載置されるレンズLEのx方向に概ね一致する。第1支持ピン7Aと第2支持ピン7Bの中間位置31を通り、且つ第1支持ピン7Aと第2支持ピン7Bを共に通過する直線32に垂直な基準線を、第1基準線K1とする。本実施形態の第4支持ピン7Dは、第1基準線K1上に配置されている。
【0054】
さらに詳細には、本実施形態における軸出し機構20(
図1参照)は、第1〜第3支持ピン7のそれぞれが頂点を成す三角形30の中心TCよりも−y側の位置Pにおいて、上方(+z方向)から軸出しを行う。本実施形態の第4支持ピン7Dは、レンズLEのうち、第1支持ピン7Aおよび第2支持ピン7Bが接触する位置よりも−y側に接触する位置に配置される。換言すると、本実施形態の第4支持ピン7Dは、第1基準線K1のうち、第1支持ピン7Aおよび第2支持ピン7Bよりも軸出し装置1における−y側に配置される。
【0055】
図5は、玉型28の幾何中心BCを軸出し位置Pに合わせてレンズLEが載置された状態を示す。前述したように、玉型28の幾何中心BCは、レンズLEの光学中心OCから左右方向にずれるのが一般的である。従って、幾何中心BCを軸出し位置Pに合わせると、レンズLEは、第1〜第3支持ピン7の中心TCに対して左右方向にずれた状態で載置されることが多い。例えば、
図5に示す例では、載置されたレンズLEの光学中心OCが、第1〜第3支持ピン7の中心TCに対して左方向にずれている。ここで、第1〜第3支持ピン7よりも右側に第4支持ピン7D´が配置されていると仮定すると、第4支持ピン7D´はレンズLEを支持することはできない。これに対し、本実施形態では、y方向に延びる第1基準線K1上に第4支持ピン7Dが配置されている。従って、レンズLEが左右のいずれの方向にずれた場合でも、第4支持ピン7DがレンズLEに接触しやすい。また、本実施形態における第4支持ピン7Dは、第1基準線K1上に1つ設けられているのみである。従って、本実施形態の軸出し装置1は、支持ピン7の数の増加を抑制しつつ、効率よくレンズLEを支持することができる。
【0056】
また、前述したように、玉型28の幾何中心BCは、レンズLEの光学中心OCよりも−y側(レンズLEにおける下側)に位置する場合が多い。従って、例えば、第1〜第3支持ピン7の中心TCと軸出し位置Pが一致していると、幾何中心BCを軸出し位置Pに合わせた際に、第1〜第3支持ピン7の中心TCに対するレンズLEの+y方向へのずれ量が大きくなる。これに対し、本実施形態では、第1〜第3支持ピン7のそれぞれが頂点を成す三角形30の中心TCよりも−y側の位置Pにおいて軸出しが行われる。従って、幾何中心BCを軸出し位置Pに合わせる場合でも、レンズLEの支持が不安定になり難い。
【0057】
また、第1〜第3支持ピン7の中心TCよりも−y側の位置Pにおいて軸出しが行われる場合に、レンズLEの一部(
図5では符号「40」の位置)が支持台6に接触していると、レンズLEの−y側を支持台6に向けて押さえつける力が働く。これに対し、本実施形態では、第1基準線K1のうち、第1支持ピン7Aおよび第2支持ピン7Bよりも軸出し装置1における−y側に第4支持ピン7Dが配置される。従って、レンズLEのうち、支持台6に向けて押さえつけられる−y側が、第4支持ピン7Dによって適切に支持される。
【0058】
図5〜
図7を参照して、複数の支持ピン7によるレンズLEの支持の安定性について説明する。
図5〜
図7に示す状態では、レンズLEの位置40が支持台6に接触している。その結果、第1〜第3支持ピン7のうち、第2支持ピン7BのみがレンズLEの後面に接触した状態となっている(第1支持ピン7Aおよび第3支持ピン7Cは、レンズLEから離間している)。このように、レンズLEが支持台6に接触すると、多くの場合、第1〜第3支持ピン7のうちの1つのみがレンズLEに接触する状態となる。
図5におけるM−M線は、第2支持ピン7Bと位置40を通過する直線である。
図6は、M−M線矢視方向断面図である。また、
図5におけるN−N線は、第2支持ピン7Bと第4支持ピン7Dを通過する直線である。
図7は、N−N線矢視方向断面図である。
【0059】
図6に示すように、第1〜第3支持ピン7のうちの1つのみがレンズLEに接触している場合、仮に第4支持ピン7Dが設けられていなければ、支持台6に接触するレンズLEの位置40が変動してしまう。その結果、レンズLEの支持が不安定となる。しかし、
図7に示すように、本実施形態では、第1〜第3支持ピン7のうちの1つと位置40に加え、第4支持ピン7DがレンズLEに接触する。その結果、レンズLEが3点で支持されて、レンズLEの支持が安定する。
【0060】
上記実施形態で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態では、第1支持ピン7A、第2支持ピン7B、第3支持ピン7C、および第4支持ピン7Dの全てが、軸出し装置1に予め設けられている。しかし、第1〜第3支持ピン7のみを備えた軸出し装置に装着されるアタッチメントを利用することも可能である。
【0061】
図8を参照して、軸出し装置用アタッチメントの一例について説明する。
図8で例示するアタッチメント50は、基部51、固定孔55A,55B,55C,および第4支持ピン7Dを備える。基部51は、アタッチメント50のベースとなる部材である。一例として、
図8で例示するアタッチメント50の基部51は円盤状に形成されている。しかし、基部51の形状を変更できることは言うまでもない。本実施形態では、アタッチメント50が軸出し装置に装着されると、アタッチメント50の基部51は、軸出し装置における支持台の一部となる。第4支持ピン7Dは、基部51から上方に突出する。3つの固定孔55A,55B,55Cは、基部51において、軸出し装置に設けられている第1〜第3支持ピン7の位置および形状に対応する形状に形成されている。作業者は、3つの固定孔55A,55B,55Cの各々に第1〜第3支持ピン7を通すことで、アタッチメント50を軸出し装置の適切な位置に装着することができる。ただし、軸出し装置に対するアタッチメント50の装着方法を変更できることは勿論である。
【0062】
図8で例示するアタッチメント50を軸出し装置に装着させることで、複数の支持ピン7の配置が、上記実施形態と同様の配置となる。従って、第4支持ピン7Dを備えない軸出し装置であっても、アタッチメント50が装着されるだけで、複数の支持ピン7によるレンズLEの支持が適切に行われる。
【0063】
上記実施形態にその他の変更を加えることも可能である。例えば、上記実施形態では、レンズLEのx方向(左右方向)と、軸出し装置1のx方向(左右方向)が一致するように、レンズLEが載置される。しかし、レンズLEの方向と軸出し装置1の方向の関係性を変更してもよいことは言うまでもない。例えば、作業者は、レンズLEのx方向(左右方向)と、軸出し装置1の前後方向とが概ね一致するように、レンズ支持機構5にレンズLEを載置してもよい。この場合、レンズLEの方向と軸出し装置1の方向の関係性に応じて、複数の支持ピン7の位置を変更してもよい。