特許第6897075号(P6897075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897075
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】過巻検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/88 20060101AFI20210621BHJP
   B66D 1/54 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B66C23/88 Q
   B66D1/54 E
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-233940(P2016-233940)
(22)【出願日】2016年12月1日
(65)【公開番号】特開2018-90366(P2018-90366A)
(43)【公開日】2018年6月14日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】石原 敬樹
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−143169(JP,A)
【文献】 特開2014−144850(JP,A)
【文献】 特開2000−255978(JP,A)
【文献】 特開2000−047293(JP,A)
【文献】 特開2009−126641(JP,A)
【文献】 米国特許第06140930(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/00 − 23/94
B66D 1/00 − 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン車のブーム又はジブに設けられたカメラによって、前記ブーム又は前記ジブからワイヤロープによって吊り下げられた吊り具を含んで撮影された画像に基づいて、前記吊り具の位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報に基づいて、前記ワイヤロープによる前記吊り具の巻き上げが過巻であるか否かを判定する判定部と、を備え
前記位置情報算出部は、画像解析によって前記画像上で前記吊り具を検出し、該吊り具の移動時の速度の変化量又は位置の変化量を算出し、該変化量に基づいて、前記位置情報を算出するように構成され、
前記判定部で過巻でないと判定されている間は、前記カメラによる前記画像の撮影と、前記位置情報算出部による前記位置情報の算出と、前記判定部による判定と、を繰り返すことを特徴とする過巻検出装置。
【請求項2】
クレーン車のブーム又はジブに設けられたカメラによって、前記ブーム又は前記ジブからワイヤロープによって吊り下げられた吊り具を含んで撮影された画像に基づいて、前記吊り具の位置情報を算出する位置情報算出部と、
前記位置情報に基づいて、前記ワイヤロープによる前記吊り具の巻き上げが過巻であるか否かを判定する判定部と、を備え
前記位置情報算出部は、画像解析によって画像変化量を算出し、該変化量に基づいて、前記位置情報を算出するように構成され、
前記判定部で過巻でないと判定されている間は、前記カメラによる前記画像の撮影と、前記位置情報算出部による前記位置情報の算出と、前記判定部による判定と、を繰り返すことを特徴とする過巻検出装置。
【請求項3】
前記位置情報算出部は、画像解析によって前記画像上で前記吊り具又は前記吊り具に付した目印を検出し、前記吊り具又は前記目印の位置、大きさ、色の少なくともいずれかに基づいて、前記位置情報を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の過巻検出装置。
【請求項4】
前記カメラが、オートフォーカス機能を備え、
前記位置情報算出部は、前記オートフォーカス機能により前記カメラが前記吊り具に対して合焦したときの焦点距離に基づいて、前記位置情報を算出することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の過巻検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記位置情報に基づいて、前記吊り具と前記ブーム又はジブとの距離が所定以下となったとき、若しくは、前記吊り具が、過巻となる所定位置に到達したとき、過巻であると判定することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の過巻検出装置。
【請求項6】
前記位置情報に基づいて、前記吊り具と前記ブーム又はジブとの距離が所定以下となったとき、若しくは、前記吊り具が、過巻となる所定位置近辺に到達したとき、過巻の予告通知を行う過巻予告部を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の過巻検出装置。
【請求項7】
前記カメラによって撮影された前記画像を表示する表示部と、
前記判定部によって、過巻であると判定されたとき、前記画像に重畳して警告情報を前記表示部に表示する警告制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の過巻検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過巻検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン車では、ワイヤロープで吊り下げられたフックのワイヤロープによる過巻を検出する技術の開発がなされている(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
特許文献1には、ブーム先端に吊り下げられたマイクロスイッチ内臓の検出器と、この検出器に吊り下げられた重錘とを備え、巻上げロープの巻上げにより重錐が持上げられ、検出器に作用する荷重が低減することで、検出器が動作して過巻を検知する過巻防止装置が開示されている。特許文献2には、過巻直前の位置でロープの外径サイズを太くして過巻識別部を形成し、この過巻識別部をリミットスイッチで検出することで、過巻を検出する過巻防止装置が開示されている。また、特許文献3には、超音波検出器によって検出したフックの距離に基づいて過巻を検出する巻過警報装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−178579号公報
【特許文献2】特開2003−95583号公報
【特許文献3】特開平2−57897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、リミットスイッチ、過巻識別部、超音波装置等の専用品を用いる必要があり、部品点数が増え、点検や整備の手間もかかっていた。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、より簡易な構成で、より高精度に過巻を検出することができる過巻検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像表示装置は、クレーン車のブーム又はジブに設けられたカメラによって、前記ブーム又は前記ジブからワイヤロープによって吊り下げられた吊り具を含んで撮影された画像に基づいて、前記吊り具の位置情報を算出する位置情報算出部と、前記位置情報に基づいて、前記ワイヤロープによる前記吊り具の巻き上げが過巻であるか否かを判定する判定部と、を備え、前記位置情報算出部は、画像解析によって前記画像上で前記吊り具を検出し、該吊り具の移動時の速度の変化量又は位置の変化量を算出し、該変化量に基づいて、前記位置情報を算出するように構成され、前記判定部で過巻でないと判定されている間は、前記カメラによる前記画像の撮影と、前記位置情報算出部による前記位置情報の算出と、前記判定部による判定と、を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る過巻検出装置によれば、より簡易な構成で、より高精度に過巻を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る過巻検出装置を備えたクレーン車の一例を右側方から見た側面図である。
図2図1のクレーン車に備えられた過巻検出装置の構成を示すブロック図である。
図3】吊り荷監視カメラにより撮影され、表示部に表示されたサブフック近傍の画像の一例を示す模式図である。
図4】サブフックの過巻が検知されたときに表示部に表示される画像の一例を示す模式図である。
図5】過巻検出装置による過巻検出動作の一例を示すフローチャートである。
図6】吊り荷監視カメラにより撮影され、表示部に表示されたメインフック近傍の画像の一例を示す模式図である。
図7】メインフックの過巻が検知されたときに表示部に表示される画像の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る過巻検出装置について、図面を参照して説明する。
<クレーンの概略構成>
本実施の形態の図1は、作業車両の一例としてのクレーン車1を右側方から見た側面図である。この図1に示すクレーン車1は、走行体(キャリヤ)2と旋回体3とを備える。走行体2は、走行機能を有する車両の本体部分(車体)であり、複数の車輪と、車輪および旋回体3を駆動する駆動源とを有する。走行体2は、前側及び後側に各々左右一対のアウトリガ4(図1参照)を備えている。各アウトリガ4は、車幅方向に張り出して接地することで、ブーム7を用いた作業時(作業モード)に走行体2を安定して支持する。
【0011】
旋回体3は、図1に示すように、走行体2の上方に配置されて、水平に旋回可能に設けられ、一体的に旋回可能なキャビン5とブームサポート6とを有している。キャビン5は、オペレータが各種の操作を行うための車室である。キャビン5の内部には、各種の操作に対応した操作部が設けられている。各種の操作としては、例えば、旋回体3の旋回、ブーム7の起伏及び伸縮、ブームサポート6に設けられたメインウインチドラム(主巻ドラム)8及びサブウインチドラム(補巻ドラム)9の巻上げ及び巻下げ、各アウトリガ4の張り出し及び格納、駆動源であるエンジンの始動及び停止等がある。また、キャビン5の内部には、後述する過巻検出装置20(図2参照)、表示部22が配置されている。
【0012】
ブームサポート6は、伏した状態で前後方向に延びたブーム7が取り付けられた部材であり、ブーム7の基端部がブーム根本支点ピンを介してブームサポート6に取り付けられている。ブーム7は、ブーム根本支点ピンを中心にして回転自在に支持されている。ブームサポート6とブーム7との間に起伏用シリンダが設けられていて、起伏用シリンダを伸縮することにより、ブーム7はブーム根本支点ピンを中心に回転して伏した状態から立ち上がり、又立ち上がった状態から伏した状態に起伏動作する。
【0013】
ブーム7は、例えば、内部で伸縮シリンダにより連結された基端ブーム部と中間ブーム部と先端ブーム部とを有している。各伸縮が縮んだ状態では、基端ブーム部の内側に中間ブーム部が配置され、中間ブーム部の内側に先端ブーム部が配置された入れ子式に組み合わされて、ブーム7は縮んだ状態となる。一方、各伸縮シリンダが伸びると、図1に示すように、基端ブーム部の内側から中間ブーム部が突出し、中間ブーム部の内側から先端ブーム部が突出して、ブーム7は伸びた状態となる。
【0014】
先端ブーム部の先端のブームトップに配置されたシーブには、メインウインチドラム8に巻回されたメインワイヤロープ(主巻ロープ)10が掛け回されている。このメインワイヤロープ10には、吊り具としてのメインフック11が設けられている。また、先端ブーム部の先端のシングルトップに配置されたシーブには、サブウインチドラム9に巻回されたサブワイヤロープ(補巻ロープ)12が掛け回されている。このサブワイヤロープ12には、吊り具としてのサブフック13が設けられている。
【0015】
また、クレーン車1にはジブ18が備えられている。ジブ18は、不使用時にはブーム7の側面に格納されている。図1に示すようにブーム7の前方にジブ18を張り出すことで、ブーム7でのクレーン作業時の揚程、作業半径よりもさらに大きな揚程、作業半径でクレーン作業を行うことができる。ジブ18の先端部に配置されたシーブに、サブワイヤロープ12を掛け回し、サブフック13を吊り下げることができる。メインウインチドラム8、サブウインチドラム9は、モータ等からなるメインウインチ駆動部16、サブウインチ駆動部17によって駆動される(図2参照)。
【0016】
以下、メインウインチドラム8、サブウインチドラム9を単にウインチドラム8,9ということがある。メインワイヤロープ10、サブワイヤロープ12を単にワイヤロープ10,12ということがある。メインフック11、サブフック13を、単にフック11,13ということがある。メインウインチ駆動部16、サブウインチ駆動部17を単にウインチ駆動部16,17ということがある。
【0017】
各フック11,13には、玉掛け用具により荷物(吊り荷)14が掛けられる。各フック11,13に掛けられた荷物14は、ブーム7の起伏及び伸縮、旋回体3の旋回並びに各ウインチドラム8,9への各ワイヤロープ10,12の巻き上げ及び巻き下げの各動作の1つ以上により、吊り上げ、移動、吊り下しというクレーン作業に供される。
【0018】
ブーム7の先端又はジブ18の先端には、吊り荷監視カメラ15が取り付けられている。この吊り荷監視カメラ15は、自重又はモータ等によって、常に下方を向くように設置されている。また、吊り荷監視カメラ15は、使用するフック11,13に対応して、ブーム7の先端とジブ18の先端とで付替え可能となっているが、複数台の吊り荷監視カメラ15を用意して、それぞれの位置に取り付けてもよい。図1の例では、ジブ18の先端に吊り下げたサブフック13を用いてクレーン作業を行う様子を示しているため、ジブ18の先端に吊り荷監視カメラ15を取付けている。この取り付け状態では、吊り荷監視カメラ15によって、地面Gから吊り荷監視カメラ15までの間のサブフック13及び荷物14を含む下方の被写体が撮影される。
【0019】
一方、メインフック11やシングルトップに吊り下げたサブフック13を用いてクレーン作業を行う場合は、図1に仮想線で示すように、先端ブーム部のシングルトップやブームトップに吊り荷監視カメラ15を取付ける。この取り付け状態では、吊り荷監視カメラ15によって、地面Gから吊り荷監視カメラ15までの間のメインフック11、サブフック13及び荷物14を含む下方の被写体が撮影される。
【0020】
吊り荷監視カメラ15としては、特に限定されるものではないが、より広い範囲で被写体を撮影可能となるように、本実施形態では、広画角で被写界深度の深いカメラを用いている。本実施形態の吊り荷監視カメラ15の撮影範囲は、例えば、図1において一点鎖線で示したような範囲Wである。吊り荷監視カメラ15で撮影された画像Pは表示用に編集され、図3に示すように、後述の表示部22に表示される。
【0021】
また、クレーン車1には、メインウインチドラム8及びサブウインチドラム9を撮影するドラム監視カメラ、走行体2の前方を撮影するフロントカメラ、後方を撮影するリアカメラ、ブーム7の左側や右側を撮影するブーム左カメラやブーム右カメラ、旋回体3の右側や左側を撮影する右カメラや左カメラ、走行体2の左後方を撮影するワイドサイドビューカメラ等を更に設けることができる。各カメラで撮影された画像も、クレーン車1の作業状態、走行状態、又はオペレータの指示に応じて表示部22に適宜切替られて表示される。
【0022】
<過巻検出装置の構成>
クレーン車1は、メインフック11及びサブフック13のメインワイヤロープ10及びサブワイヤロープ12による過巻を検出する過巻検出装置20を備えている。以下、図2に基づいて、過巻検出装置20の構成について説明する。図2は、過巻検出装置20の構成を示すブロック図である。
【0023】
この図2に示すように、過巻検出装置20は、過巻検出装置20の動作全体を制御する制御部21と、吊り荷監視カメラ15で撮影された画像Pが表示される表示部22と、過巻を検出したことをオペレータに音や光で通知する報知部23と、を主に備えている。
【0024】
表示部22としては、液晶ディスプレイ等を用いることができる。この表示部22は、旋回体3のキャビン5内の表示部や、遠隔操作装置(例えばラジコン、リモコン等)などの表示部や、ヘッドマウントディスプレイでの表示などであって、オペレータが前方を見ながらクレーン車1を操作している状態で、視線を過度に動かすことなく視界に入る位置に設置されている。
【0025】
報知部23としては、例えば、音を発するブザーや、音、音声等を発するスピーカ、光を発したり、光の色を変化させたりするLED、LD、白熱灯等の光源等が挙げられる。また、本実施形態では、表示部22に警告メッセージを表示することで、過巻を検出したことをオペレータに通知しているため、表示部22も報知部23として機能する。
【0026】
制御部21には、吊り荷監視カメラ15で撮影された画像(画素(ピクセル)データ)、焦点距離、露光等の撮影時の条件等が記録されたExif等の撮影情報(メタデータ)が、画像情報(画像ファイル)として入力される。制御部21は、入力された画像情報に基づいてフック11,13の位置情報を算出する位置情報算出部24と、算出された位置情報に基づいてフック11,13の過巻を判定する判定部25と、過巻と判定されたときにオペレータに警告情報を通知する警告制御部26と、過巻が検出されたフック11,13のウインチ駆動部16,17を停止してウインチドラム8,9の巻き上げ動作を停止させるウインチ制御部27と、過巻検出プログラム及び過巻検出に用いるパラメータ等の各種情報が記憶される記憶部28と、を主に備えている。
【0027】
位置情報としては、ブーム7やジブ18の先端とフック11.13との位置関係を把握できれば、特に限定されることはない。本実施形態では、位置情報算出部24は、吊り荷監視カメラ15で撮影された画像Pを解析して被写体を抽出し、記憶部28に予め記憶されたフック11.13のテンプレート画像と比較するパターンマッチングによりフック11,13を検出する。そして、検出したフック11,13の画像P上の位置情報、例えば、フック11,13の上面の座標を算出する。
【0028】
フック11,13の検出は、パターンマッチングによって検出する手法に限定されることはなく、画像特徴量に基づいて物体を認識する等、一般的に用いられる物体認識のアルゴリズムを用いて検出することができる。
【0029】
<過巻検出装置の動作>
次に、上述のような構成の第1実施形態の過巻検出装置20の動作(過巻検出処理)の一例を説明する。過巻検出処理は、記憶部28等に記憶されたプログラムに基づいて、制御部21により実行される。過巻検出装置20は、例えば、クレーン車1が作業モード(PTOスイッチがオン状態)になったときに作動する。
【0030】
本実施形態では、吊り荷監視カメラ15の画像Pから取得した各フック11,13の位置情報に基づいて、ブーム7とメインフック11との距離A、ブーム7とサブフック13との距離Bを算出する。また、ジブ18とサブフック13を用いてクレーン作業を行う場合には、ジブ18とサブフック13との距離B’を算出する。そして、距離Aが所定の「距離1」以下となったときに、メインフック11が過巻であると判定し、距離Bが所定の「距離2」以下となったとき、或いは距離B’が所定の「距離2’」以下となったとき、サブフック13が過巻であると判定する。
【0031】
また、過巻か否かを、オペレータ自身の目でも確認しながらクレーン作業が可能となるように、画像P上で、ブーム7から「距離1」又は「距離2」となる位置、ジブ18から「距離2’」となる位置、つまり過巻が検出される位置(以下、「検出位置」という)に、目印として丸印等のマークを付して表示部22に表示する構成としている。図3に示す例では、ブーム7での作業時のメインフック11やサブフック13の過巻を検出しているため、ブーム7から「距離1」の位置にマークM1が、「距離2」の位置にマークM2が表示されている。なお、画像Pに基づいて過巻を検出できればよいため、必ずしも画像P上にマークM1,M2等の目印を表示する必要はない。
【0032】
なお、本実施形態では、従来の過巻検出装置において各フックに設けるマイクロスイッチに吊り下げられた重錘の下面に相当する位置を検出位置とし、本クレーン車1のブーム7から、各検出位置までの距離を、それぞれ距離1,2としている。各検出位置は、従来の過巻検出装置で各フックが上昇して重錘を押し上げる位置であり、この押し上げによってマイクロスイッチがONとなって過巻が検出されることに対応させたものである。
【0033】
以下、メインフック11又はシングルトップに吊り下げたサブフック13を用いてブーム7によるクレーン作業を行うときの過巻検出装置20による過巻検出手順を説明する。まず、ブーム7のシングルトップに吊り荷監視カメラ15を取付け、各伸縮シリンダを伸ばして、図1に示すように、ブーム7を伸ばした状態とする。吊り荷監視カメラ15は、メインフック11、サブフック13及び荷物14を含む下方の被写体を撮影できるように、図1に仮想線で示したシングルトップに取付ける。
【0034】
表示部22には、図3に示すように、吊り荷監視カメラ15で撮影された画像Pが表示される。この画像Pには、メインフック11、メインワイヤロープ10、サブフック13及びサブワイヤロープ12が表示されている。よって、オペレータは、表示部22の画像Pによって死角となり易い位置にあるフック11,13、障害物、人物等を目視により確認しながらクレーン作業を行うことができる。
【0035】
なお、作業モードの際に表示部22に表示される画像が、必ずしも吊り荷監視カメラ15での画像Pに限定されることはない。オペレータの切り替え操作や、作業状況に応じて、他のカメラで撮影した画像を表示することもできる。また、クレーン車1に搭載された過負荷防止装置によって得られたブーム7の起伏の角度、ブーム7の長さ、旋回体3の旋回角度、ブーム7の先端まで高さ等の各種情報を含む作業情報画面を表示することもできる。
【0036】
表示部22への表示の有無に関わらず、制御部21には、吊り荷監視カメラ15から画像情報が逐次入力される。この画像情報の入力を受けて、位置情報算出部24が、前述したような手法でサブフック13を検出し、画像P上でのメインフック11及びサブフック13の位置情報を算出する(ステップS1)。
【0037】
次に、判定部25は、ステップS1で算出された位置情報に基づいて、ブーム7からメインフック11及びサブフック13までの距離A,Bを算出し、この距離A,Bに基づいて過巻か否かを判定する(ステップS2)。判定部25は、距離Aが「距離1」以下となったときに、メインフック11の巻き上げ状態が過巻であると判定する。また、距離Bが「距離2」以下となったときに、サブフック13の巻き上げ状態が過巻であると判定する。図4には、サブフック13がマークM2の位置まで到達した状態を実線で示している。また、図4には、メインフック11がマークM1の位置まで到達した状態も仮想線で示している。このステップS2で過巻と判定されると(ステップS3の判定がYES)、ステップS4に進む。
【0038】
ステップS4では、警告制御部26が、警告メッセージを画像Pに重畳して表示部22に表示し、オペレータに警告情報を通知する。警告メッセージとしては、例えば、図4に示すように、「過巻を検出したので、巻き上げを停止します。」等の文字であってもよいし、アラームのマーク等を表示してもよく、オペレータに過巻であることを気づかせることができれば、いずれの表示であってもよい。
【0039】
本実施形態では、警告制御部26は、さらに報知部23を制御してブザー音等の警告音や、音声による警告メッセージ等を発したり、光源を点灯させて光を発したりすることで、過巻の警告情報をオペレータに通知する。音や光による警告は、表示部22に吊り荷監視カメラ15の画像Pが表示されていない場合等に、特に有効である。
【0040】
また、表示部22に吊り荷監視カメラ15の画像Pが表示されていない場合でも、現在表示されている画像に警告メッセージを重畳して表示してもよいし、吊り荷監視カメラ15の画像Pに切り替えて、当該画像Pとともに警告メッセージ表示してもよい。
【0041】
そして、過巻が検出されたことで、ステップS5では、ウインチ制御部27が過巻と判定されたメインウインチ駆動部16又はサブウインチ駆動部17を制御して、メインウインチドラム8によるメインロープ10の巻き上げ動作又はサブウインチドラム9によるサブワイヤロープ12の巻き上げ動作を停止させる。
【0042】
一方、過巻でないと判定されている間(ステップS3の判定がNO)は、ステップS1の位置情報の算出とステップS2の過巻判定を繰り返す。この間は、オペレータは表示部22に表示された吊り荷監視カメラ15の画像Pを見ながら、クレーン作業を続行することができる。
【0043】
なお、上記では、メインフック11とサブフック13の双方を画像上で検出して過巻の検出を行っている。しかし、メインフック11とサブフック13とは、単独で使用されることが多いため、スイッチの切替えなどによって、どちらのフック11,13を使用するかを過巻検出装置20に入力することで、メインフック11又はサブフック13の一方のみの過巻を検出する構成とすることもできる。この構成では、計算速度がより向上し、より迅速に過巻検出をすることができる。
【0044】
次に、ジブ18にサブフック13を付替えてクレーン作業を行うときの過巻検出装置20による過巻検出手順を説明する。まず、図1に示すように、ブーム7からジブ18を張り出し、ジブ18の先端にサブフック13を取付ける。このとき、サブフック13に臨ませて、ジブ18の先端に吊り荷監視カメラ15を取付け、サブフック13及び荷物14を含む下方の被写体を撮影できるようにする。
【0045】
図6に、吊り荷監視カメラ15で撮影され、表示部22に表示されたサブフック13近傍の画像Pの模式図を示す。この画像Pには、ほぼ中央にサブフック13とサブワイヤ12が表示されるとともに、サブフック13の過巻の検出位置を示すマークM3が表示されている。
【0046】
そして、ブーム7でのメインフック11又はサブフック13の過巻検知のときと同様に、制御部21の制御によって、図5のフローチャートに示されるステップS1〜S5が実行される。これにより、画像Pに基づいて、ジブ8とサブフック13との距離B’が距離2’以下になったときに過巻が検出され、警告情報の通知、サブウインチドラム9の作動停止等が行われる。図7に、過巻と判定されたときに表示部22に警告メッセージとともに表示される画像Pの模式図を示す。一方、過巻と判定されない間は、オペレータはサブフック13を用いたクレーン作業を円滑に続行することができる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、フック11,13に吊り下げられた荷物14を監視する吊り荷監視カメラ15の画像を用いて過巻を検出することができ、リミットスイッチや垂錘等の過巻検出用の専用品を用いる必要がない。また、リミットスイッチ等を用いた過巻検出装置では、長期使用による経時変化を生じたり、環境条件や使用状況等の影響を受けたりすることがあり、検知精度を保つためには定期的な交換や保守点検が必要となる。これに対して、本実施形態の過巻検出装置20では、画像に基づいて過巻を検知するため、部品の頻繁な交換等の必要がなく、リミットスイッチ等に比べて吊り荷監視カメラ15のメンテナンスも容易であり、高精度な検出精度を長期に保つことが可能となる。また、画像認識技術を用いることで、迅速かつ高精度に過巻を検出することができる。したがって、より簡易な構成で、より高精度に過巻を検出することができる過巻検出装置20を提供することができる。
【0048】
また、過巻と判定されたときに、警告制御部26による警告情報の通知や、ウインチ制御部27によるウインチドラム8,9の作動停止を行うことで、ブーム7やジブ18へのフック11,13等の衝突等を防止することができ、これらの破損を抑制して、耐久性を向上させることも可能となる。
【0049】
また、表示部22に表示された吊り荷監視カメラ15の画像Pをオペレータが視認しながらクレーン作業を行うことで、オペレータ自身もフック11,13の巻き上げ状態を確認することができる。そのため、過巻検出装置20と、オペレータの目視とで、過巻検知をより確実に検知することができるとともに、過巻となる前にオペレータ自身が巻き上げ速度を低速としたり、巻き上げを停止したりするなどの対応を行うことができ、過巻による部品間の衝突等の不具合を効果的に抑制することができる。
【0050】
特に、画像P上にマークM1〜M3を表示することで、フック11,13が過巻の検出位置に近づいたことをオペレータが容易に気づくことができ、過巻の抑制効果をより向上させることができる。
【0051】
ここで、本実施形態の過巻検出装置20の変形例について説明する。従来のリミットスイッチ等の物理スイッチによる過巻検出装置では、ON/OFFによって過巻を検出するのみであった。これに対して、本実施形態の過巻検出装置20は、画像Pに基づいて過巻の判定を行うことができるため、本実施形態の変形例として、過巻の検出に加えて、過巻の発生そのものを抑制して、より円滑で効率的なクレーン作業を可能とする目的で、過巻の予告をする予告通知や、ウインチドラム8,9の作動制御等を行うようにすることもできる。なお、この予告通知やウインチドラム8,9の作動制御等は、過巻検出装置20に設けるだけでなく、過巻予告装置等として過巻検出装置20とは別個に設けることもできる。
【0052】
予告通知は、例えば、警告制御部26により実行することができる。ブーム7又はジブ18と各フック11,13との距離A,B,B’が、距離1,2,2’に近づいてきたとき、すなわち、距離A,B,B’が、第2の所定の距離3,4,4’(距離3>距離1、距離4>距離2、距離2’>距離4’)以下となったとき、警告制御部26は予告通知を実行する。予告通知としては、表示部22の画像Pに重畳して「これ以上巻き上げると過巻となります」等の予告メッセージを表示したり、過巻のときとは異なるブザー音や音声、光の点灯等によってオペレータに通知したりすること等が挙げられる。これにより、オペレータは過巻となる前に、ワイヤロープ10,12の巻き上げ状態を調整することができる。
【0053】
また、ウインチドラム8,9の作動制御は、例えば、ウインチ制御部27により実行することができる。ブーム7又はジブ18と各フック11,13との距離A,B,B’が、距離3,4,4’以下となったときに、ウインチ制御部27の制御によって、ウインチ駆動部16,17によるワイヤロープ10,12の巻き上げ及び巻き下げの速度を低速にする。この速度の変化によっても、オペレータがこれ以上巻き上げを続けると過巻となることを認識することができる。また、過巻の検出位置近辺での巻き上げ又は巻き下げ速度が低速であることから、過巻が検出されてウインチ駆動部16,17の作動を停止した場合でも、停止による衝撃をより緩和することができ、フック11,13や荷物14の揺れ等を効果的に抑制することができる。
【0054】
以上のように、過巻検出装置20では、画像Pに基づいて過巻を検出するため、過巻の検出だけでなく、変形例のように過巻の予告通知や、巻き上げの制御等も行うことが可能となる。よって、過巻によるウインチドラム8,9の不測の停止やフック11,13の揺れ等を抑制して、クレーン作業をより円滑かつ、より効率的に行うことが可能となる。
【0055】
また、上記実施形態及び変形例では、画像Pの解析により検出した各フック11,13の位置情報に基づいてブーム7又はジブ18の先端から各フック11,13までの距離A,B,B’を算出し、当該距離A,B,B’が所定距離1,2,2’以下となったときに過巻と判定しているが、過巻の判定がこの手順に限定されることはない。変形例として、画像Pの解析により、画像P上の各マークM1〜M3の位置(検出位置)に各フック11,13が到達したときに、過巻と判定するように過巻検出装置20を構成することもできる。
【0056】
また、上記ではブーム7又はジブ18に対するフック11,13の位置情報に基づいて過巻を検出しているが、これに限定されることもない。ブーム7やジブ18からの位置が予めわかっている物体であれば、例えば、吊り荷監視カメラ15や、クレーン車1の他の部位に対するフック11,13の位置情報に基づいて過巻を判定することもできる。
【0057】
また、上記実施形態及び変形例では、サブフック13をブーム7先端とジブ18とで付替える際に、吊り荷監視カメラ15の取付け位置を変えたり、複数の吊り荷監視カメラ15を取付けたりしているが、これに限定されることはない。例えば、360度カメラ等、双方のフック11,13を撮影することが可能な、より広角の吊り荷監視カメラ15を用いることもできる。すると、メインフック11は勿論、ブーム7のシングルトップに吊り下げたサブフック13も、ジブ18に吊り下げたサブフック13も撮影することができ、吊り荷監視カメラ15の取り付け位置を変える必要がなくなる。また、複数台の吊り荷監視カメラ15を用いる必要もなくなる。そして、撮影された画像P上での各フック11,13の位置関係や色、形、動き等でメインフック11とサブフック13とを識別したり、サブフック13がブーム7先端又はジブ18のどちらに取り付けられているかを識別したりすることができ、それぞれの過巻を検出することができる。
【0058】
また、本実施形態や変形例の過巻検出装置20と、特許文献1〜3等に開示された従来の過巻検出装置とを併用することもできる。この場合、過巻をダブルでチェックできることから、過巻検出精度をより高精度なものとすることができる。また、各フック11,13に垂錘とリミットスイッチからなる過巻検出装置を本実施形態の過巻検出装置20と併せて設置した場合、画像PにマークM1〜M3を付さなくても、画像Pに映し出される垂錘を検出位置やオペレータが目視できる目印とすることができる。
【0059】
以上、本発明の過巻検出装置を実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については上記実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0060】
例えば、過巻の検出手法が、上記実施形態やその変形例の手法に限定されるものではない。以下、他の異なる過巻の検出手法を列挙するが、これらに限定されることもない。
【0061】
例えば、フック11,13が過巻の検出位置に近づく程に画像P上で検出されるフック11,13の大きさが大きくなることを利用して、この大きさに基づいて位置情報を算出することができる。より具体的には、例えば、画像P上のフック11,13の大きさとブーム7又はジブ18からの距離とを対応づけたテーブルを記憶部28に予め記憶しておく。そして、画像Pから検出されたフック11,13の大きさをキーとしてテーブルを検索し、位置情報としての距離を取得する。この距離に基づいて、過巻を検出することができる。または、単に、画像P上で検出されたフック11,13の大きさが、予め記憶部28に記憶された所定の大きさに達したときに、過巻と判定することもできる。
【0062】
また、フック11,13が過巻の検出位置に近づく程に画像P上で検出されるフック11,13の移動の加速度が速くなったり、フック11,13の位置の変化量や画像全体の変化量が大きくなったりすることを利用して、この加速度や画像変化量に基づいてフック11,13の位置情報を得ることができる。具体的には、例えば、吊り荷監視カメラ15で撮影された画像Pを経時で比較し、画像P上で検出される各フック11,13の加速度が所定速度より速くなったとき、位置変化量や画像変化量が所定変化量より大きくなったとき等に、過巻と判定することができる。過巻の判定基準となる所定速度、所定変化量、距離、位置座標、大きさ、加速度、位置変化量、画像変化量等も、予め記憶部28に記憶しておくことができる。
【0063】
また、上記では、画像P上でフック11,13を検出し、その位置情報を算出して過巻の判定に用いているが、フック11,13の色を予め記憶しておき、画像P上でこの色を検出し、算出した位置情報を、フック11,13の位置情報として過巻の判定に用いることができる。この場合、フック11,13の色を赤色とすれば、オペレータが画像P上でより明確にフック11,13を確認することができる。さらに、検出位置に黄色等のマークMを表示することで、過巻検出装置20が画像P上でのフック11,13の検出や、検出位置との距離の算出等をより容易に行うことができる。また、オペレータも、表示部22に表示された画像P上の黄色と赤色を視認することで、巻き上げ状態をより容易に把握することができる。
【0064】
また、フック11,13に光源を取付け、光源が発する光を検出することでフック11,13を検出することもできる。また、フック11,13に形状や大きさや色等が予め決められた目印を設け、この目印を画像P上で検出することでフック11,13を検出することもでき、フック11,13の大きさ、形状、色等にばらつきがあっても、フック11,13の位置情報を精度よく検出することができる。
【0065】
フック11,13の位置情報の算出は、上記した距離、位置、形状、速度変化量、位置変化量、画像変化量等の1つに基づいて行ってもよいし、複数を組み合わせて行ってもよい。
【0066】
また、上述した各手法では、画像情報の画素に基づいて、フック11,13の位置情報を算出しているが、Exif等の撮影情報に基づいてフック11,13の位置情報を算出することもできる。例えば、Exifから取得した焦点距離を用いることができる。
【0067】
この場合、被写体に対して自動でピントを合わせるオートフォーカス機能を有する吊り荷監視カメラ15を用いることが望ましい。オートフォーカス機能は、いわゆる位相差方式であってもよいしコントラスト方式であってもよい。オートフォーカス機能は、少なくともブーム7やジブ18を最大に伸ばしたときに、地面Gまでの長さ範囲では合焦可能に設定されているものとする。このような吊り荷監視カメラ15では、オートフォーカス機能により、フック11,13に対してピントを合わせるように合焦する。そして、ワイヤロープ10,12の巻き上げ及び巻き下げ動作によってフック11,13が上下移動すると、この移動に伴ってオートフォーカス機能によって、吊り荷監視カメラ15は常にフック11,13にピントを合わせるように合焦する。なお、吊り荷監視カメラ15は、ピント調整できるものであれば、オートフォーカス機能を有するカメラに限定されることはない。
【0068】
このときの焦点距離に基づいて、吊り荷監視カメラ15の設置位置からのフック11,13の距離、さらにはブーム7やジブ18からのフック11,13の距離を算出することができる。この距離が所定以下となったとき、又はこの距離に基づいてフック11,13の位置が検出位置に到達したと判断したときに、過巻と判定することができる。また、フック11,13に常にピントを合わせておく必要はなく、吊り荷監視カメラ15から最も近い位置で合焦された被写体をフック11,13と認定し、このフック11,13までの距離が、所定以下となったとき等に過巻と判定することもできる。
【0069】
または、合焦時にフォーカスレンズを光軸方向に駆動させるステップモータのパルス数に対応した信号を、撮影情報として位置情報算出部24に入力するように構成することもできる。そして、この信号の入力を受けて、位置情報算出部24が、フォーカスレンズの焦点距離とパルス数等に基づいて、吊り荷監視カメラ15の設置位置から合焦したフック11,13までの距離を算出する構成とすることもできる。
【0070】
以上のように、焦点距離等の撮影情報を用いることで、画像解析を行わなくても、フック11,13の位置情報を算出することができ、より迅速かつ高精度に過巻を検出することができる。このように吊り荷監視カメラ15から取得できる情報であれば、画像情報のようなデジタル情報、各種信号情報、或いは機械的な作動情報等に基づいて位置情報を算出することができる。
【0071】
また、吊り荷監視カメラ15として被写界深度が浅いカメラを用いることもできる。この場合、過巻の検出位置付近にピントを合わせておき、合焦した被写体を画像解析して、フック11,13であると認定したときに、フック11,13が検出位置に到達したとして、過巻と判定することができる。または、過巻とはならない位置で被写体にピントが合うようにレンズの焦点距離を調整しておき、ピントが合っている被写体を検出し、この被写体がフック11,13であると認定されている間は過巻ではないと判定する。そして、フック11,13が検出位置を超えて巻き上がり、フック11,13が被写界深度を外れてピントが合わなくなったとき、すなわち、ピントが合っている被写体がフック11,13ではなくなったとき、過巻と判定するものであってもよい。
【0072】
また、上記実施形態及び変形例の過巻検出装置20は、メインフック11及びサブフック13を備えるクレーン車1に適用している。しかし、過巻検出装置20が、このようなクレーン車1のみに適用されるものではなく、フックが1つ設けられたクレーン車や、1つのフックをメインワイヤロープとサブワイヤロープに付替えて使用するクレーン車にも適用することができる。
【0073】
また、吊り荷監視カメラ15の画像情報に基づいて、フック11,13だけでなく、荷物14の近辺に存在する人物を検出し、荷物14に近づかないように警告音や警告メッセージを発する機能を過巻検出装置20に持たせることもできる。また、画像情報に基づいて算出したフック11,13の位置情報に基づいて、フック11,13の揺れ量を検出することもできる。そして、揺れ量が大きい場合は、巻き上げや巻き下げ速度の低速化や停止による揺れ防止制御を行って、吊り荷の揺れを抑制し、より円滑なクレーン作業を可能とすることもできる。
【符号の説明】
【0074】
1 クレーン車 7 ブーム 8 メインウインチドラム
9 サブウインチドラム 10 メインワイヤロープ
11 メインフック(吊り具) 12 サブワイヤロープ
13 サブフック(吊り具) 14 荷物 15 吊り荷監視カメラ(カメラ)
18 ジブ 20 過巻検出装置 21 制御部 22 表示部
24 位置情報算出部 25 判定部 26 警告制御部
M マーク(目印) P 画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7