特許第6897166号(P6897166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6897166-半導体装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897166
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20210621BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H01L29/78 652P
   H01L29/06 301G
   H01L29/78 653A
   H01L29/06 301F
   H01L29/06 301V
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-40869(P2017-40869)
(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公開番号】特開2018-148000(P2018-148000A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆司
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
(72)【発明者】
【氏名】合田 健太
(72)【発明者】
【氏名】原田 峻丞
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 英一
【審査官】 恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−147361(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/102549(WO,A1)
【文献】 特開2008−103530(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/132568(WO,A1)
【文献】 特開2000−208768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/06
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置であって、
機能構造が設けられている素子部と終端耐圧構造が設けられている周辺部に区画されている半導体基板を備え、
前記機能構造は、
前記半導体基板内に設けられている第1導電型の素子部側ドリフト領域と、
前記半導体基板の表層部に設けられており、前記素子部側ドリフト領域上に配置されている第2導電型の表面領域と、を有しており、
前記終端耐圧構造は、
前記半導体基板の表面上に設けられており、前記素子部から離れる方向に沿って間隔を置いて配置されている複数の埋込み絶縁膜であって、前記半導体基板の表面に形成されている複数のシャロートレンチに充填されている絶縁体を有する、複数の埋込み絶縁膜と、
前記半導体基板内に設けられている第1導電型の周辺部側ドリフト領域と、
前記半導体基板の前記表層部に設けられている第2導電型の複数のガードリング領域であって、各々が隣り合う前記埋込み絶縁膜の間に配置されている、複数のガードリング領域と、
前記半導体基板の表層部に設けられており、前記周辺部ドリフト領域上に配置されている第2導電型のリサーフ領域であって、前記素子部から離れる方向に沿って前記表面領域から延びており、前記複数のガードリング領域を被覆する、リサーフ領域と、
前記周辺部の終端に対応する範囲の前記半導体基板の表層部に設けられており、前記周辺部ドリフト領域上に配置されている第1導電型の終端等電位領域と、を有しており、
前記複数の埋込み絶縁膜のうちの最も最外周の埋込み絶縁膜は、前記リサーフ領域と前記終端等電位領域の間に配置されており、前記リサーフ領域と前記終端等電位領域の双方に接しており、前記リサーフ領域よりも浅い、半導体装置。
【請求項2】
前記リサーフ領域は、前記素子部から離れる方向に沿って並んでいる複数のリサーフ部分領域を有しており、
隣り合う前記リサーフ部分領域の不純物濃度を比較すると、前記素子部から遠い側の前記リサーフ部分領域の不純物濃度の方が低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
隣り合う前記リサーフ部分領域の間の不純物濃度の変化領域は、前記ガードリング領域の下方に位置する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記終端耐圧構造はさらに、前記半導体基板上に延設して設けられており、前記ガードリング領域に接するフィールドプレート電極を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、機能構造が設けられている素子部と終端耐圧構造が設けられている周辺部に区画されている半導体基板を備えることが多い。このような半導体装置の終端耐圧構造としては、周辺部に対応する範囲の半導体基板の表層部に設けられている複数のガードリング領域が広く採用されている。特許文献1〜4には、複数のガードリング領域が採用された半導体装置が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−32664号公報
【特許文献2】特開2015−207702号公報
【特許文献3】特開2015−207703号公報
【特許文献4】特開2008−147361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
素子部の機能構造を介して順方向電流が流れた後に逆バイアスが印加されると、素子部から周辺部に向けて空乏層が広がる。この空乏層の伸展に伴って、半導体基板内に残存していたキャリアが排出される。半導体基板内に残存しているキャリア量が多いと、空乏層が伸展する速度が遅くなり、半導体基板の周辺部の局所で電界集中が生じる。複数のガードリング領域が設けられている半導体装置では、隣り合うガードリング領域の間の領域において、ガードリング領域とドリフト領域で構成されるpn接合が小さい曲率半径を有して存在していることから、その領域で電界が集中することがある。このため、隣り合うガードリング領域の間の領域において、電界集中に起因したダイナミックアバランシェ現象が発生することがある。隣り合うガードリング領域の間でダイナミックアバランシェ現象が発生すると、アバランシェ電流が半導体基板の表面を集中して流れることから、ジュール熱による熱破損が懸念される。
【0005】
このように、複数のガードリング領域が採用された半導体装置が高いアバランシェ耐量を有するためには、隣り合うガードリング領域の間の領域、即ち、半導体基板の表面部における電界集中を緩和することが肝要である。しかしながら、半導体基板の表面部の電界集中を緩和しただけでは、半導体基板の基板内部においてダイナミックアバランシェ現象が発生することが懸念される。このため、高いアバランシェ耐量を有するためには、半導体基板の基板内部の電界集中も緩和することが肝要である。本明細書は、高いアバランシェ耐量を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体装置としては、ダイオード、MOSFET又はIGBTが例示される。半導体装置は、機能構造が設けられている素子部と終端耐圧構造が設けられている周辺部に区画されている半導体基板を備えることができる。半導体基板の材料としては、特に限定されるものではないが、シリコン、炭化珪素又は窒化物半導体が例示される。機能構造としては、特に限定されるものではないが、MOS構造が例示される。機能構造は、第1導電型の素子部側ドリフト領域と第2導電型の表面領域を有することができる。素子部側ドリフト領域は、半導体基板内に設けられている。表面領域は、半導体基板の表層部に設けられており、素子部側ドリフト領域上に配置されている。表面領域は、アノード領域、ボディ領域又はベース領域と称されることがある。終端耐圧構造は、複数の埋込み絶縁膜と第1導電型の周辺部側ドリフト領域と第2導電型の複数のガードリング領域と第2導電型のリサーフ領域を有することができる。複数の埋込み絶縁膜は、半導体基板の表面上に設けられており、素子部から離れる方向に沿って間隔を置いて配置されている。複数の埋込み絶縁膜は、半導体基板の表面に形成されている複数のシャロートレンチに充填されている絶縁体を有する。周辺部側ドリフト領域は、半導体基板内に設けられている。複数のガードリング領域は、半導体基板の表層部に設けられている。複数のガードリング領域の各々は、隣り合う埋込み絶縁膜の間に配置されている。リサーフ領域は、半導体基板の表層部に設けられており、周辺部ドリフト領域上に配置されている。リサーフ領域は、素子部から離れる方向に沿って表面領域から延びており、複数のガードリング領域を被覆する。このため、複数のガードリング領域は、電気的にフローティングではない。この半導体装置では、隣り合うガードリング領域の間に埋込み絶縁膜が設けられているので、隣り合うガードリング領域の間の領域、即ち、半導体基板の表面部における電界集中が緩和され、その領域でダイナミックアバランシェ現象が発生することが抑制される。さらに、この半導体装置では、リサーフ領域と周辺部ドリフト領域のpn接合から伸びる空乏層によって半導体基板の周辺部の基板内部において空乏化が促進される。これにより、半導体基板の周辺部の基板内部の電界も緩和され、半導体装置は高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0007】
上記半導体装置では、リサーフ領域が、素子部から離れる方向に沿って並んでいる複数のリサーフ部分領域を有していてもよい。この場合、隣り合うリサーフ部分領域の不純物濃度を比較すると、素子部から遠い側のリサーフ部分領域の不純物濃度の方が低い。この半導体装置は、複数のリサーフ部分領域で構成された多段のリサーフ領域を有する。このような多段のリサーフ領域によって半導体基板の周辺部の基板内部の電界が良好に緩和され、半導体装置は高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0008】
上記半導体装置では、隣り合うリサーフ部分領域の間の不純物濃度の変化領域が、ガードリング領域の下方に位置してもよい。この半導体装置では、多段のリサーフ領域の不純物濃度の変化領域がガードリング領域の位置に対応する。ガードリング領域の下方にリサーフ部分領域の間の不純物濃度の変化領域が配置されていると、ダイナミックアバランシェ現象が発生したときの急激な電位低下が、ガードリング領域とリサーフ領域の相乗効果によって抑制される。このような多段のリサーフ領域によって半導体基板の周辺部の基板内部の電界が良好に緩和され、半導体装置は高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0009】
上記半導体装置では、終端耐圧構造がさらに、半導体基板上に延設して設けられており、ガードリング領域に接するフィールドプレート電極を有していてもよい。このようなフィールドプレート電極を有していると、外部電荷による耐圧変動が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】半導体装置の要部断面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示されるように、半導体装置1は、シリコン単結晶からなる半導体基板10を備える。半導体基板10は、MOS構造が設けられている素子部10Aと終端耐圧構造が設けられている周辺部10Bに区画されている。周辺部10Bは、半導体基板10の表面に対して直交する方向から観測したときに(以下、「平面視したときに」という)、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。なお、素子部10Aは、後述するボディ領域13が存在する範囲として特定される。このため、素子部10Aと周辺部10Bの境界は、ボディ領域13の側面の位置に対応する。
【0012】
半導体装置1は、ドレイン電極2、ソース電極3及びトレンチゲート4を備える。ドレイン電極2は、素子部10A及び周辺部10Bの双方に対応する範囲の半導体基板10の裏面に接触する。ソース電極3は、素子部10Aに対応する範囲の半導体基板10の表面に接触する。トレンチゲート4は、素子部10Aに対応する範囲の半導体基板10の表層部に形成されているゲートトレンチ内に設けられている。図1では、1つのトレンチゲート4のみが図示されているが、実際には、複数のトレンチゲート4が素子部10Aに設けられている。それらトレンチゲート4は、半導体基板10を平面視したときに、例えばストライプ状又は格子状のレイアウトを有する。
【0013】
半導体基板10は、n+型のドレイン領域11、n型のドリフト領域12、p+型のボディ領域13、n+型のソース領域14、p++型のボディコンタクト領域15、p++型のガードリング領域16、p型のリサーフ領域17及びn+型の終端等電位領域18を有する。
【0014】
ドレイン領域11は、素子部10A及び周辺部10Bの双方に対応する範囲の半導体基板10の裏層部に設けられている。ドレイン領域11は、半導体基板10の裏面に露出しており、ドレイン電極2にオーミック接触する。
【0015】
ドリフト領域12は、素子部10A及び周辺部10Bの双方に対応する範囲の半導体基板10内に設けられており、ドレイン領域11上に配置されている。ドリフト領域12は、素子部10Aにおいて、ドレイン領域11とボディ領域13の間に配置されて両者を隔てており、ドレイン領域11とボディ領域13に接触する。ドリフト領域12は、周辺部10Bにおいて、ドレイン領域11とリサーフ領域17の間に配置されて両者を隔てており、ドレイン領域11と終端等電位領域18の間に配置されて両者を隔てており、ドレイン領域11とリサーフ領域17と終端等電位領域18に接触する。
【0016】
ボディ領域13は、素子部10Aに対応する範囲の半導体基板10の表層部に設けられており、ドリフト領域12上に配置されている。ボディ領域13は、ドリフト領域12とソース領域14の間に配置されて両者を隔てており、ドリフト領域12とソース領域14とボディコンタクト領域15に接触する。ボディ領域13は、本明細書で開示する表面領域の一例である。
【0017】
ソース領域14は、素子部10Aに対応する範囲の半導体基板10の表層部に設けられており、ボディ領域13上に配置されている。ソース領域14は、トレンチゲート4の側面に接触するとともに、ボディ領域13とボディコンタクト領域15にも接触する。ソース領域14は、半導体基板10の表面に露出しており、ソース電極3にオーミック接触する。
【0018】
ボディコンタクト領域15は、素子部10Aに対応する範囲の半導体基板10の表層部に設けられており、ボディ領域13上に配置されている。ボディコンタクト領域15は、ボディ領域13とソース領域14に接触する。ボディコンタクト領域15は、半導体基板10の表面に露出しており、ソース電極3にオーミック接触する。
【0019】
トレンチゲート4は、半導体基板10の表面から深さ方向に伸びるゲートトレンチ内に設けられており、ゲート電極4a及びゲート電極4aを被覆するゲート絶縁膜4bを有する。トレンチゲート4は、ソース領域14及びボディ領域13を貫通してドリフト領域12に達する。トレンチゲート4のゲート電極4aは、ドリフト領域12とソース領域14を隔てているボディ領域13にゲート絶縁膜4bを介して対向する。このゲート電極4aが対向するボディ領域13は、チャネルが形成される領域である。このように、半導体基板10の素子部10Aには、トレンチゲート4、ドリフト領域12、ボディ領域13及びソース領域14で構成されるMOS構造が設けられている。MOS構造はドリフト領域12とボディ領域13で構成されるpnダイオードを内蔵しており、このpnダイオードが還流ダイオードとして動作する。
【0020】
複数のガードリング領域16は、周辺部10Bに対応する範囲の半導体基板10の表層部に設けられており、リサーフ領域17によって被覆されている。複数のガードリング領域16は、素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)に沿って間隔を置いて配置されている。また、複数のガードリング領域16の各々は、平面視したときに、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。複数のガードリング領域16は、半導体基板10の表面に露出しており、後述するフィールドプレート電極7に接触する。複数のガードリング領域16は、リサーフ領域17を介してボディ領域13に電気的に接続されている。このため、複数のガードリング領域16は、電気的にフローティングではない。
【0021】
リサーフ領域17は、周辺部10Bに対応する範囲の半導体基板10の表層部に設けられており、ドリフト領域12上に配置されており、複数のガードリング領域16及び後述する複数の埋込み絶縁膜5を被覆する。リサーフ領域17は、平板状の形態を有しており、素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)に沿って延びており、一端がボディ領域13に接触する。リサーフ領域17は、平面視したときに、ボディ領域13から複数のガードリング領域16を超えてガードリング領域16と終端等電位領域18の間の位置まで延びている。この例では、リサーフ領域17の下面の深さはボディ領域13の下面の深さに一致しているが、リサーフ領域17の下面の深さはボディ領域13の下面の深さよりも深いことが望ましい。リサーフ領域17は、平面視したときに、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。
【0022】
リサーフ領域17は、素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)に沿って並んでいる複数のリサーフ部分領域17a,17b,17c,17dを有する。以下、素子部10Aに近い順に、第1リサーフ部分領域17a、第2リサーフ部分領域17b、第3リサーフ部分領域17c、第4リサーフ部分領域17dと称する。第1リサーフ部分領域17aの不純物濃度は、約1×1014〜1016cm-3であり、ボディ領域13と同一の濃度である。第2リサーフ部分領域17bの不純物濃度は、約0.8×1014〜1016cm-3である。第3リサーフ部分領域17cの不純物濃度は、約0.6×1014〜1016cm-3である。第4リサーフ部分領域17dの不純物濃度は、約0.4×1014〜1016cm-3である。このように、隣り合うリサーフ部分領域17a,17b,17c,17dの不純物濃度を比較すると、素子部10Aから遠い側のリサーフ部分領域17a,17b,17c,17dの不純物濃度の方が低い。また、第1リサーフ部分領域17aと第2リサーフ部分領域17bの間の不純物濃度の変化領域、即ち、素子部10Aから離れる向きに計測したときに不純物濃度が低下する領域が、ガードリング領域16の下方に存在する。素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)におけるガードリング領域16の最大幅が0.5〜2μmであることから、上記の変化領域がその範囲内に収まっている。同様に、第2リサーフ部分領域17bと第3リサーフ部分領域17cの間の不純物濃度の変化領域及び第3リサーフ部分領域17cと第4リサーフ部分領域17dの間の不純物濃度の変化領域も、ガードリング領域16の下方に存在する。
【0023】
終端等電位領域18は、周辺部10Bの終端に対応する範囲の半導体基板10の表層部に設けられており、ドリフト領域12上に配置されている。終端等電位領域18は、ドリフト領域12に接触する。終端等電位領域18は、平面視したときに、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。終端等電位領域18は、半導体基板10の表面に露出しており、後述する終端電極8に接触する。
【0024】
図1に示されるように、半導体装置1はさらに、複数の埋込み絶縁膜5、層間絶縁膜6、複数のフィールドプレート電極7及び終端電極8を備える。
【0025】
複数の埋込み絶縁膜5の各々は、周辺部10Bに対応する範囲の半導体基板10の表面に形成されている複数のシャロートレンチに充填されている絶縁体を有する。このように、複数の埋込み絶縁膜5は、シャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)の構造を有する。複数の埋込み絶縁膜5は、素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)に沿って間隔を置いて配置されている。また、複数の埋込み絶縁膜5の各々は、平面視したときに、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。複数の埋込み絶縁膜5のうちの一部は、隣り合うガードリング領域16の間に配置されている。換言すると、複数のガードリング領域16の各々は、隣り合う埋込み絶縁膜5の間に配置されている。複数のガードリング領域16は、埋込み絶縁膜5よりも深く形成されている。
【0026】
層間絶縁膜6は、周辺部10Bに対応する範囲の半導体基板10上に設けられている。層間絶縁膜6には複数の貫通孔が形成されており、その貫通孔を介してフィールドプレート電極7とガードリング領域16が接触する。
【0027】
複数のフィールドプレート電極7は、周辺部10Bに対応する範囲の層間絶縁膜6上に延設されている。複数のフィールドプレート電極7は、素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)に沿って間隔を置いて配置されている。また、複複数のフィールドプレート電極7の各々は、平面視したときに、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。複数のフィールドプレート電極7の各々は、複数のガードリング領域16の各々に対応して配置されており、複数のガードリング領域16の各々に接触する。複数のフィールドプレート電極7の電位は、フローティングである。図示省略しているが、半導体基板10の周辺部10B上には、層間絶縁膜6及びフィールドプレート電極7を覆うようにモールド樹脂が形成される。複数のフィールドプレート電極7は、そのモールド樹脂に付着した水分等によってモールド樹脂内に侵入した外部電荷が半導体基板10内にまで侵入するのを防止することができる。これにより、半導体基板10の周辺部10Bにおける局所的なチャージバランスの崩れが抑制され、半導体装置1の耐圧低下が抑制される。
【0028】
終端電極8は、周辺部10Bの終端に対応する範囲の半導体基板10の表面上に設けられている。終端電極8は、平面視したときに、素子部10Aの周囲を一巡するように配置されている。終端電極8は、終端等電位領域18に対応して配置されており、終端等電位領域18に接触する。終端電極8の電位は、ドレイン電極2と同一である。
【0029】
次に、半導体装置1の動作について説明する。ドレイン電極2に正電圧が印加され、ソース電極3に接地電圧が印加され、ゲート電極4aに正電圧が印加されると、ゲート電極4aが対向するボディ領域13にチャネルが形成され、ソース領域14、チャネル、ドリフト領域12及びドレイン領域11を経由して、ソース電極3からドレイン電極2に向かって電子が流れる。このように、ドレイン電極2からソース電極3に向けて電流が流れるモードはオンモードである。一方、ドレイン電極2に正電圧が印加され、ソース電極3に接地電圧が印加され、ゲート電極4aに接地電圧が印加されると、ゲート電極4aが対向するボディ領域13にチャネルが形成されず、電流は遮断される。このように、ドレイン電極2からソース電極3に向けて電流が流れないモードはオフモードである。半導体装置1は、オンモードとオフモードを切り換えることでスイッチング素子として動作することができる。
【0030】
例えば、半導体装置1がインバータ回路に用いられた場合、モータ等の負荷を流れる負荷電流が、素子部10AのMOS構造に内蔵するpnダイオード(ドリフト領域12とボディ領域13で構成される)を介して還流する還流モードが存在する。この還流モードでは、ソース電極3がドレイン電極2よりも正となる電圧が印加されており、内蔵ダイオードには順方向電流が流れる。その後、半導体装置1がオフモードに切り替わり、ドレイン電極2がソース電極3よりも正となる逆バイアスが印加される。このような還流モードからオフモードへの遷移期間に、周辺部10Bにダイナミックアバランシェ現象が発生することがある。半導体装置1は、このようなダイナミックアバランシェ現象に対策することができる。
【0031】
還流モードからオフモードへの遷移期間では、素子部10Aにおいて、ドリフト領域12とボディ領域13のpn接合からドリフト領域12内に向けて空乏層が広がる。この空乏層は、素子部10Aから周辺部10Bに向けて広がる。素子部10Aから広がる空乏層は、周辺部10Bにおいて、素子部10Aから離れる方向(紙面左右方向)に沿って、複数のガードリング領域16の各々に順に到達することにより、周辺部10Bの広範囲に広がることができる。特に、半導体装置1では、周辺部10Bにリサーフ領域17が設けられており、このリサーフ領域17とドリフト領域12のpn接合から広がる空乏層も加わることで、空乏層が周辺部10Bの広範囲に素早く形成される。
【0032】
半導体装置1では、埋込み絶縁膜5が隣り合うガードリング領域16の間に設けられており、さらにリサーフ領域17が半導体基板10の表層部に設けられている。仮に、埋込み絶縁膜5及びリサーフ領域17が設けられていないとすると、隣り合うガードリング領域16の間の領域では、ガードリング領域16とドリフト領域12で構成されるpn接合が小さい曲率半径を有して存在していることから、電界が集中しており、その電界集中に起因したダイナミックアバランシェ現象が発生する。隣り合うガードリング領域16の間でダイナミックアバランシェ現象が発生すると、アバランシェ電流が半導体基板の表面を集中して流れ、ジュール熱による熱破損が懸念される。
【0033】
半導体装置1では、隣り合うガードリング領域16の間に埋込み絶縁膜5が設けられているので、隣り合うガードリング領域16の間の領域において電界集中が緩和され、その領域でダイナミックアバランシェ現象が発生することが抑制される。これにより、半導体装置1では、電界の集中する領域が半導体基板10の表面から基板内部に移動する。半導体装置1ではさらに、半導体基板10内にリサーフ領域17が設けられていることにより、還流モードからオフモードへの遷移期間において半導体基板10の基板内部に空乏層が素早く形成されており、半導体基板10の基板内部の電界が緩和される。このように、半導体装置1では、半導体基板10の表面部及び基板内部の双方においてダイナミックアバランシェ現象の発生が抑えられる。これにより、半導体装置は高いアバランシェ耐量を有することができる。なお、半導体装置1では、リサーフ領域17の下面とドリフト領域12のpn接合面近傍が電界集中箇所となり、高いサージ電圧が印加されたときには、このpn接合面近傍でダイナミックアバランシェ現象が生じ得る。このように半導体装置1では、ダイナミックアバランシェ現象の発生個所が半導体基板10の深い位置に移動しており、ダイナミックアバランシェ現象が発生したとしても、アバランシェ電流が半導体基板10内を拡散して流れることができる。この点でも、半導体装置1は、高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0034】
半導体装置1では、リサーフ領域17が複数のリサーフ部分領域17a,17b,17c,17dを有している。このように、リサーフ領域17が多段で構成されている。さらに、不純物濃度の関係については、第1リサーフ部分領域17a>第2リサーフ部分領域17b>第3リサーフ部分領域17c>第4リサーフ部分領域17dが成立している。この半導体装置1では、還流モードからオフモードへの遷移期間において、半導体基板10の周辺部10Bの等電位線分布が均一化される。このため、多段のリサーフ領域17によって半導体基板10の周辺部10Bの深部の電界が良好に緩和され、半導体装置1は高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0035】
上記半導体装置では、隣り合うリサーフ部分領域17a,17b,17c,17dの間の不純物濃度の変化領域が、ガードリング領域16の下方に位置している。この半導体装置1では、還流モードからオフモードへの遷移期間において、半導体基板10の周辺部10Bの等電位線分布がさらに均一化される。このため、多段のリサーフ領域17と複数のガードリング領域16によって半導体基板10の周辺部10Bの基板内部の電界が極めて良好に緩和され、半導体装置1は高いアバランシェ耐量を有することができる。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
1:半導体装置
2:ドレイン電極
3:ソース電極
4:トレンチゲート
4a:ゲート電極
4b:ゲート絶縁膜
5:埋込み絶縁膜
6:層間絶縁膜
7:フィールドプレート電極
8:終端電極
10:半導体基板
10A:素子部
10B:周辺部
11:ドレイン領域
12:ドリフト領域
13:ボディ領域
14:ソース領域
15:ボディコンタクト領域
16:ガードリング領域
17:リサーフ領域
17a,17b,17c,17d:リサーフ部分領域
18:終端等電位領域
図1