特許第6897174号(P6897174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6897174-ソリッドタイヤ 図000003
  • 特許6897174-ソリッドタイヤ 図000004
  • 特許6897174-ソリッドタイヤ 図000005
  • 特許6897174-ソリッドタイヤ 図000006
  • 特許6897174-ソリッドタイヤ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897174
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ソリッドタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20210621BHJP
   B60C 7/10 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B60C7/00 B
   B60C7/10 F
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-44939(P2017-44939)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-144770(P2018-144770A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107940
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 憲吾
(74)【代理人】
【識別番号】100122806
【弁理士】
【氏名又は名称】室橋 克義
(74)【代理人】
【識別番号】100168192
【弁理士】
【氏名又は名称】笠川 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100174311
【弁理士】
【氏名又は名称】染矢 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100182523
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 由賀里
(74)【代理人】
【識別番号】100195590
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 博臣
(72)【発明者】
【氏名】南 博文
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−247305(JP,A)
【文献】 特開平08−091011(JP,A)
【文献】 特開平06−106908(JP,A)
【文献】 特開2010−163123(JP,A)
【文献】 特開平08−216613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00
B60C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外周面に周方向に並べられた複数のラグが形成されており、
その側面に複数の横孔が形成されており、
それぞれのラグの半径方向内側に上記横孔が位置しており、
その側面において、周方向に隣合う横孔を連通させる連通溝が形成されており、
複数の上記横孔と複数の上記連通溝とが上記側面に周方向に一周する周溝を形成しているソリッドタイヤ。
【請求項2】
軸方向において、上記横孔の深さがDhとされ、上記連通溝の深さがDgとされたときに、
深さDhに対する深さDgの比が0.2以上0.8以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
軸方向において、上記横孔の深さがDhとされ、タイヤの幅がWとされたときに、
幅Wに対する深さDhの2倍の比が0.2以上0.7以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
半径方向において、上記横孔の開口高さがHhとされ、上記連通溝の開口高さがHgとされたときに、
開口高さHhに対する開口高さHgの比が0.2以上0.7以下である請求項1から3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
半径方向において、上記横孔の開口高さがHhとされ、タイヤの断面高さがHとされたときに、
高さHに対する開口高さHhの比が0.05以上0.35以下である請求項1から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
上記ラグが形成されているトレッドと、上記トレッドの半径方向内側に位置するベース層とを備えており、
上記ベース層が架橋ゴムからなっており、この架橋ゴムの硬度が60以上85以下であり、
上記横孔が上記トレッドに形成されている請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
上記ラグが形成されているトレッドと、上記トレッドの半径方向内側に位置するベース層とを備えており、
上記ベース層が架橋ゴムと架橋ゴムに分散された繊維とからなっており、
上記横孔が上記トレッドに形成されている請求項1から5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
2以上の複数の芯材を備えており、
それぞれの芯材が周方向に延在するリング状の形状を備えており、
これらの芯材が軸方向に並べられている請求項1から7のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソリッドタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フォークリフト、クレーン車等の産業用車両には、ソリッドタイヤが装着される。空気入りタイヤが内部に空気を保持する構造を備えているのに対して、ソリッドタイヤは内部がゴムからなる構造を備えている。言い換えると、ソリッドタイヤは、中実タイヤである。ソリッドタイヤは、凹凸が散在する路面や金属片等の異物が散乱した路面等の悪路でも、パンクすることなく走行しうる。
【0003】
ソリッドタイヤは、空気入りタイヤに比べて剛性が高い。ソリッドタイヤは、路面の凹凸等によって、振動し易い。ソリッドタイヤの乗り心地は、空気入りタイヤのそれに比べて劣る。ソリッドタイヤを装着した車両では、運転するオペレータの負担が大きい。このオペレータの負担を軽減するため、様々な改良が提案されている。
【0004】
特開2012−35815公報では、その軸方向側面に複数のS字孔が形成されたソリッドタイヤが開示されている。このソリッドタイヤでは、路面に接地する接地面の半径方向内側に、S字孔が形成されている。このS字孔により、走行中の振動が軽減されている。このソリッドタイヤでは、乗り心地が向上している。特開2016−117296公報にも、その側面に複数の孔が形成されたソリッドタイヤが開示されている。このソリッドタイヤでも、この複数の孔によって、乗り心地が向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−35815公報
【特許文献2】特開2016−117296公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
軸方向側面に孔が形成されたソリッドタイヤでは、接地面の半径方向内側部分で剛性が低くされている。この接地面は、使用によって摩耗する。この接地面の摩耗によって、接地面の半径方向内側部分で、剛性が更に低下する。この剛性の更なる低下は、周方向の剛性差を生じさせる。接地面の摩耗の進行は、この周方向の剛性差を更に大きくする。この大きな剛性差は、走行中に振動を発生させる。この振動は、乗り心地を損なう。
【0007】
本発明の目的は、摩耗後においても乗り心地に優れるソリッドタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るタイヤでは、その外周面に周方向に並べられた複数のラグが形成されている。その側面に複数の横孔が形成されている。それぞれのラグの半径方向内側に上記横孔が位置している。その側面において、周方向に隣合う横孔を連通させる連通溝が形成されている。
【0009】
軸方向において、上記横孔の深さがDhとされ、上記連通溝の深さがDgとされる。このときに、好ましくは、深さDhに対する深さDgの比は、0.2以上0.8以下である。
【0010】
軸方向において、上記横孔の深さがDhとされ、タイヤの幅がWとされる。このときに、好ましくは、幅Wに対する深さDhの2倍の比は、0.2以上0.7以下である。
【0011】
半径方向において、上記横孔の開口高さがHhとされ、上記連通溝の開口高さがHgとされる。このときに、好ましくは、開口高さHhに対する開口高さHgの比は、0.2以上0.7以下である。
【0012】
半径方向において、上記横孔の開口高さがHhとされ、タイヤの断面高さがHとされる。このときに、好ましくは、高さHに対する開口高さHhの比は、0.05以上0.35以下である。
【0013】
このタイヤは、上記ラグが形成されているトレッドと、上記トレッドの半径方向内側に位置するベース層とを備えている。上記ベース層は、架橋ゴムからなっている。この架橋ゴムの硬度は、好ましくは60以上85以下である。上記横孔は、上記トレッドに形成されている。
【0014】
このタイヤは、上記ラグが形成されているトレッドと、上記トレッドの半径方向内側に位置するベース層とを備えている。上記ベース層は、好ましくは架橋ゴムと架橋ゴムに分散された繊維とからなっている。上記横孔は、上記トレッドに形成されている。
【0015】
このましくは、このタイヤは、2以上の複数の芯材を備えている。それぞれの芯材は、周方向に延在するリング状の形状を備えている。これらの芯材は、軸方向に並べられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るソリッドタイヤでは、横孔によって、ラグの内側部分の剛性が低くされている。また、連通溝によって、ラグ間の内側部分の剛性も、低くされている。このタイヤでは、接地面が摩耗した後でも、ラグの内側部分の剛性とラグ間の内側部分の剛性との差が小さい。周方向の剛性差が小さいので、接地面が摩耗した後でも、走行による振動が抑制されうる。このソリッドタイヤは、摩耗後においても、乗り心地に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るソリッドタイヤがリムと共に示された断面図である。
図2図2は、図1のソリッドタイヤとリムとの側面図である。
図3図3は、図1のタイヤのトレッドパターンの一部が示された説明図である。
図4図4は、図2の部分拡大図である。
図5図5は、図4の線分V−Vに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1及び図2には、本発明の一実施形態に係るソリッドタイヤ2がリム4と共に示されている。図1には、タイヤ2の断面図が示されている。図1は、図2の線分I−Iに沿った断面である。
【0020】
このタイヤ2は、リム4に組み込まれている。このリム4は、正規リムである。正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は正規リムである。
【0021】
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面と垂直方向がタイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。実線BLは、ビードベースラインを表す。このビードベースラインは、タイヤ2が装着されるリム4(正規リム)のリム径を規定する線である。
【0022】
このタイヤ2は、トレッド6と、ベース層8と、複数本の芯材10とを備えている。このタイヤ2は、外周面2aと一対の軸方向側面2bとを備えている。
【0023】
トレッド6は、図1において、半径方向外向きに凸な形状をしている。トレッド4は、路面と接地するトレッド面12を形成する。トレッド6は、耐摩耗性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。本実施形態では、トレッド6は単一の架橋ゴムから形成されている。このトレッド6が、二以上の架橋ゴムから形成されてもよい。
【0024】
ベース層8は、トレッド6の半径方向内側に位置している。このベース層8は、高硬度の架橋ゴムからなっている。このタイヤ2では、ベース層8のゴム硬度は、トレッド6の硬度より高くされている。
【0025】
それぞれの芯材10は、ベース層8に埋設されている。芯材10は、周方向に延在する。芯材10は、リング状の形状を備えている。芯材10は、1本のスチールコードまたは複数のスチールコードが撚られたものである。このタイヤ2では、4本の芯材10が、軸方向に並べられて配置されている。軸方向において、芯材10は、一定の間隔で並べられている。このタイヤ2では、4本の芯材10を備えているが、これに限られない。この芯材10の数は、2本以上の複数本であることが好ましい。
【0026】
図2に示される様に、このタイヤ2の側面2bに、複数の横孔14及び複数の連通溝16が形成されている。これらの横孔14は、周方向に一定の間隔で並んでいる。これらの連通溝16は、周方向に隣合う横孔14の間に位置している。連通孔16は、周方向に隣合う横孔14を連通させている。連通溝16は、横孔14が並ぶ周方向に沿って延びている。複数の横孔14と複数の連通溝16とは、周方向に連通している。複数の横孔14と複数の連通溝16とは、側面2bに周方向に一周する周溝17を形成している。
【0027】
図1及び図2に示される様に、横孔14は、タイヤ2の側面2bに開口している。この横孔14は、軸方向を深さ方向にして形成された有底孔である。ここでは、タイヤ2の一対の側面2bのうち、一方の側面2bについて説明がされたが、他方の側面2bにも、同様にして、横孔14及び連通溝16が形成されている。この一方の側面2bに形成された横孔14及び連通溝16と、他方の側面2bに形成された横孔14及び連通溝16とは、互いに周方向に位置をずらして形成されている。
【0028】
図1の両矢印Dhは、横孔14の深さを表している。両矢印Hhは、横孔14の開口高さを表している。両矢印Dgは、連通溝16の深さを表している。両矢印Hgは、連通溝16の開口高さを表している。この深さDh及び深さDgは、軸方向の直線距離として測定される。この開口高さHh及び開口高さHgは、半径方向の直線距離として測定される。
【0029】
両矢印Wは、タイヤ2の軸方向幅を表している。この幅Wは、横孔14が形成される位置において、一方の側面2bから他方の側面2bまでの軸方向距離として測定される。符号Pcは、赤道面とトレッド面12との交点を表している。両矢印Hは、タイヤ2の断面高さを表している。この断面高さHは、ビードベースラインから交点Pcまでの半径方向距離として測定される。
【0030】
図3に示される様に、トレッド面12には、複数の横溝18、複数の横溝20、複数の傾斜溝22、複数の傾斜溝24、複数の傾斜溝26及び複数の傾斜溝28が刻まれている。複数の横溝18は、周方向に一定の間隔で形成されている。それぞれの横溝18は、トレッド面12の軸方向一端から軸方向中央に向かって延びている。複数の横溝20は、周方向に一定の間隔で形成されている。それぞれの横溝20は、トレッド面12の軸方向他端から軸方向中央に向かって延びている。横溝18と横溝20とは、周方向に位置をずらして形成されている。
【0031】
それぞれの傾斜溝22は、トレッド面12の軸方向中央に位置している。傾斜溝22は、軸方向に対して傾斜して延在する。傾斜溝22は、横溝18と横溝20とを連通させている。複数の傾斜溝22は、周方向に一定の間隔で形成されている。それぞれの傾斜溝24は、トレッド面12の軸方向中央に位置している。傾斜溝24は、軸方向に対して傾斜溝22と逆向きに傾斜して延在する。傾斜溝24は、横溝18と横溝20と連通させている。複数の傾斜溝24は、周方向に一定の間隔で形成されている。
【0032】
このタイヤ2の外周面2aに、複数のラグ30が形成されている。複数のラグ30は、周方向に一定の間隔で並んでいる。それぞれのラグ30は、横溝18、横溝20、傾斜溝22及び傾斜溝24に区画されて形成されている。ラグ30は、軸方向において一端から中央まで延在する。ラグ30と同様に、このタイヤ2の外周面2aに、複数のラグ32が形成されている。複数のラグ32は、周方向に一定の間隔で並んでいる。それぞれのラグ32は、横溝18、横溝20、傾斜溝22及び傾斜溝24に区画されて形成されている。ラグ32は、軸方向において他端から中央まで延在する。このタイヤ2では、31個のラグ30が周方向に並び、31個のラグ32が周方向に並んでいるが、ラグ30及び32の数は、これに限られない。
【0033】
このラグ30は、路面に接地する接地面34を形成している。この接地面34に、軸方向一端から軸方向に対して傾斜して延びる傾斜溝26が形成されている。このラグ32は、路面に接地する接地面36を形成している。この接地面36に、軸方向他端から軸方向に対して傾斜して延びる傾斜溝28が形成されている。
【0034】
このラグ30とラグ32とは、周方向に位置をずらして形成されている。接地面34と接地面36とは、周方向に位置をずらして形成されている。
【0035】
図4には、図2の一部の拡大図が示されている。図5には、図4の線分V−Vに沿った断面が示されている。図4の一点鎖線Lbは、軸方向一方端において、ラグ30の周方向中央位置を通って半径方向の延びる直線を表している。両矢印θbは、ラグ30のピッチ角度を表している。このピッチ角度θbは、隣合うラグ30の直線Lbのなす角度として求められる。
【0036】
一点鎖線Lhは、側面2bにおいて、横孔14の中心を通って半径方向の延びる直線を表している。両矢印θhは、横孔14のピッチ角度を表している。このピッチ角度θhは、隣合う横孔14の中心を通る直線Lhのなす角度として求められる。このタイヤ2では、横孔14の中心は、周方向において、ラグ30の周方向中央位置にある。このタイヤ2では、軸方向に見て、直線Lbと直線Lhとは重なって延びている。
【0037】
このタイヤ2の製造方法は、予備成形工程及び加硫工程を備えている。予備成形工程では、トレッド6を形成するトレッド部材と、ベース層8を形成するベース層部材と、芯材10が準備される。これらが組み合わされて、ローカバーが形成される。加硫工程では、このローカバーがモールド内で加圧及び加熱される。この加圧及び加熱によって、ローカバーからタイヤ2が形成される。
【0038】
このタイヤ2では、ラグ30及びラグ32の半径方向内側に、横孔14が形成されている。この横孔14は、接地面34の半径方向内側及び接地面36の半径方向内側で、剛性を低下させている。接地面34及び接地面36が路面に接地したときに、タイヤ2は適度に変形しうる。
【0039】
このタイヤ2では、ラグ30の半径方向内側での剛性が、横溝18の半径方向内側での剛性より、高くなり過ぎることが抑制されている。この横孔14は、ラグ30の半径方向内側での剛性と、横溝18の半径方向内側での剛性との差を小さくしている。同様に、横孔14は、ラグ32の半径方向内側での剛性と、横溝20の半径方向内側での剛性との差を小さくしている。このタイヤ2では、周方向において、剛性の均一化がされている。このタイヤ2は、路面に接地したときの振動を緩和する。このタイヤ2では、乗り心地が向上している。
【0040】
このタイヤ2では、横溝18及び横溝20の半径方向内側に、連通溝16が形成されている。この連通溝16は、横溝18の半径方向内側及び横溝20の半径方向内側で、剛性を低下させている。このタイヤ2では、半径方向の荷重に対して、横溝18の半径方向内側及び横溝20の半径方向内側でも、適度に変形しうる。
【0041】
このタイヤ2では、複数の横孔14と複数の連通溝16とによって、周方向に連続する周溝17が形成されている。この周溝17は、周方向において局所的に変形することを抑制している。周溝17は、タイヤ2の周方向において、剛性が急激に変化することを抑制している。この周溝17は、周方向の剛性の均一化に寄与している。
【0042】
走行によって、このタイヤ2の接地面34は摩耗する。この摩耗は、ラグ30の半径方向内側部分の剛性を低下させる。連通溝16を備えているので、横溝18の半径方向内側部分の剛性も低くされている。これにより、ラグ30の半径方向内側での剛性が低下したときに、この低下した剛性と横溝18の半径方向内側での剛性との差が大きくなることが抑制されている。同様に、ラグ32の半径方向内側での剛性と横溝20の半径方向内側での剛性との差が大きくなることが抑制されている。このタイヤ2は、摩耗が進行した後も、周方向において剛性の差が大きくなることが抑制されている。このタイヤ2は、摩耗後において、乗り心地が悪化することが抑制されている。
【0043】
横孔14の深さDhが深いタイヤ2では、ラグ30及び32の内側での剛性が低下する。この剛性の低下により、このタイヤ2の乗り心地が向上する。この乗り心地の観点から、タイヤ2の幅Wに対する深さDhの2倍の比(2・Dh/W)は、好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.3以上である。一方で、この深さDhが浅いタイヤ2では、横孔14に歪みが局部的に集中することが抑制される。このタイヤ2は耐久性の低下を抑制しうる。この耐久性の観点から、比(2・Dh/W)は、好ましくは0.7以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0044】
連通溝16の深さDgが深いタイヤ2では、接地面34及び36の摩耗後も、周方向において剛性差が大きくなることを抑制しうる。このタイヤ2は、接地面34及び36の摩耗後に、乗り心地が悪化することが抑制されている。この観点から、横孔14の深さDhに対する深さDgの比(Dg/Dh)は、好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.4以上である。一方で、連通溝16の深さDgが横孔14の深さDhより浅いタイヤ2では、歪みが局部的に集中することが抑制されている。このタイヤ2は、連通溝16による耐久性の低下を抑制しうる。この耐久性の観点から、比(Dg/Dh)は、好ましくは0.8以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0045】
横孔14の開口高さHhが大きいタイヤ2では、ラグ30及び32の内側部分で、剛性が低下する。これにより、このタイヤ2の乗り心地が向上している。この乗り心地の観点から、断面高さHに対する開口高さHhの比(Hh/H)は、好ましくは0.05以上であり、更に好ましくは0.10以上である。一方で、横孔14の開口高さHhが小さいタイヤ2では、ベース層8の高さを十分に確保しうる。このタイヤ2では、タイヤ2とリム4との間の滑り(リムスリップともいう)の発生が抑制されている。この観点から、比(Hh/H)は、好ましくは0.35以下であり、更に好ましくは0.25以下である。
【0046】
連通溝16の開口高さHgが大きいタイヤ2では、摩耗後も、周方向において剛性差が大きくなることを抑制しうる。このタイヤ2は、接地面34及び36の摩耗後に、乗り心地が悪化することが抑制されている。この観点から、横孔14の開口高さHhに対する開口高さHgの比(Hg/Hh)は、好ましくは0.2以上であり、更に好ましくは0.3以上である。一方で、連通溝16の開口高さHgが横孔14の開口高さHhより小さいタイヤ2では、歪みが局部的に集中することが抑制されている。このタイヤ2は、連通溝16による耐久性の低下を抑制しうる。この耐久性の観点から、比(Hg/Hh)は、好ましくは0.7以下であり、更に好ましくは0.6以下である。
【0047】
このタイヤ2のベース層8は、高硬度の架橋ゴムからなっている。このベース層8は、リムスリップの発生を抑制している。リムスリップの発生を抑制する観点から、このベース層8の硬度は、好ましくは60以上である。ベース層8の硬度が低いタイヤ2は乗り心地に優れている。この観点から、ベース層の硬度は、好ましくは85以下である。
【0048】
本発明において、硬度はJIS−A硬度である。この硬度は、「JIS−K6253」の規定に準拠して、23℃の環境下で、タイプAのデュロメータによって測定される。この硬度は、タイヤ2の断面にタイプAのデュロメータが押し付けられることで測定される。
【0049】
このタイヤ2では、横孔14は、トレッド6に形成されている。この横孔14は、ベース層8より半径方向外側に形成されている。この横孔14はベース層8に形成されていないので、この横孔14によって、リムスリップが発生することが抑制されている。
【0050】
このタイヤ2では、ベース層8を硬度の高い架橋ゴムで形成したが、これに限られない。リムスリップの発生を抑制できればよく、このベース層8は、架橋ゴムと繊維とからなっていてもよい。ベース層8を形成する架橋ゴムに、例えば10質量%から60質量%の繊維が含まれる。この繊維は、架橋ゴムに分散している。この繊維は、繊維コードを長さ1(mm)から300(mm)に裁断したものである。この繊維として、有機繊維や無機繊維が例示される。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。好ましい無機繊維として、スチールファイバー、ガラスファイバーが例示される。これらの複数種類の繊維を混合したものが用いられてもよい。
【0051】
芯材10を備えるタイヤ2では、更にリムスリップの発生が抑制される。横孔14及び連通溝16が形成されても、リムスリップの発生が抑制される。このタイヤ2では、横孔14の一部がベース層8に形成されても、リムスリップの発生が抑制されうる。リムスリップを安定的に抑制する観点から、2以上の複数の芯材10が軸方向に並べられていることが好ましい。
【0052】
タイヤ2はソリッドタイヤであるので、空気入りタイヤに比べて、発熱し易い。連通溝16は、このタイヤ2の放熱に寄与する。このタイヤ2は、連通溝16を備えないソリッドタイヤに比べて放熱性にも優れている。連通溝16は、タイヤ2に耐久性の向上にも寄与している。
【0053】
図示されないが、加硫工程において、このタイヤ2はモールド内で成形される。このモールドには、横孔14及び連通溝16の形状を形成する凸部が形成されている。この凸部は、ローカバーの均一な加熱に寄与する。この横孔14及び連通溝16は、タイヤ2の品質の向上に寄与する。また、この凸部は、加熱時間の短縮に寄与する。この横孔14及び連通溝16は、タイヤ2の生産性の向上に寄与する。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0055】
[実施例1]
図1に示されたタイヤを得た。このタイヤサイズは、「7.00−12/5.00」であった。このタイヤの横孔の深さDh及び開口高さHh、連通溝の深さDg及び開口高さHg、タイヤの幅W及び断面高さH等は、表1に示される通りであった。
【0056】
[比較例1]
横孔及び連通溝を形成しない他は、実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0057】
[比較例2]
連通溝を形成しない他は、実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0058】
[実施例2−5]
横孔の深さDh及び連通溝の深さDgが表1に示される様にされた他は、実施例1と同様にして、タイヤを得た。
【0059】
[乗り心地]
タイヤを正規リム「12X5.00S」に組み込み、2.5トンのフォークリフトに装着した。5(mm)から10(mm)の段差が散在する舗装路面で、このフォークリフトをオペレータが走行させた。このオペレータに乗り心地を官能評価させた。この結果が、比較例1を100とする指数として、下記の表1に示されている。この指数は、数値が小さいほど乗り心地に優れている。この指数は小さいほど好ましい。
【0060】
[発熱温度]
タイヤを正規リム「12X5.00S」に組み込み、このタイヤをドラム式走行試験機に装着した。このタイヤに3kNの縦荷重を負荷した。このドラム式走行試験機で、このタイヤを15km/hの速度で1時間走行させた。走行直後に、タイヤ内部の温度を測定した。この測定位置は、トレッドセンターで半径方向深さ50(mm)の位置であった。その結果が、比較例1を100とする指数として、下記の表1に示されている。この指数は、数値が小さいほど好ましい。
【0061】
[耐久性]
タイヤを正規リム「12X5.00S」に組み込み、2.5トンのフォークリフトに装着した。このフォークリフトを1.5トンの重量物の荷役作業に使用した。6ヶ月間の使用後に、タイヤの損傷が確認された。この結果が、比較例1を100とする指数として、下記の表1に示されている。この指数の100は、損傷がないことを表す。この指数は、数値が大きいほど損傷が少ない。この指数は大きいほど好ましい。実施例3及び4では、使用上問題のない損傷が確認された。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明されたタイヤは、ソリッドタイヤに広く適用されうる。
【符号の説明】
【0065】
2・・・タイヤ
2a・・・外周面
2b・・・側面
4・・・リム
6・・・トレッド
8・・・ベース層
10・・・芯材
12・・・トレッド面
14・・・横孔
16・・・連通溝
17・・・周溝
18、20・・・横溝
22、24、26、28・・・傾斜溝
30、32・・・ラグ
34、36・・・接地面
図1
図2
図3
図4
図5