(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、所定のゴム成分と、シリカと、所定のシランカップリング剤と、カーボンブラックと、所定の軟化剤成分とをそれぞれ所定量含有する。これにより、ウェットグリップ性能、低燃費性能をバランス良く改善できる。
【0010】
特に、所定のスチレンブタジエンゴム(1)と、スチレンブタジエンゴム(2)と、スチレンブタジエンゴム(3)又はブタジエンゴムと、シランカップリング剤と、芳香族系樹脂とをそれぞれ所定量併用することにより、ウェットグリップ性能、低燃費性能の性能バランスが相乗的に改善される。
【0011】
本発明のトレッド用ゴム組成物では、以下の作用効果により、ウェットグリップ性能、低燃費性能の性能バランスが顕著に(相乗的に)改善されるものと推察される。
高スチレン量及び高分子量のスチレンブタジエンゴム(2)及びそれと相性の良い芳香族系樹脂を配合することで、変形が加えられポリマー同士のからみあいがほぐれたときにエネルギーロスが発生しウェットグリップ性能が向上するとともに、低スチレン量のスチレンブタジエンゴム(1)と、低スチレン量及び高分子量のスチレンブタジエンゴム(3)又はブタジエンゴムとの併用により3種のポリマー間におけるシリカの分配状態が均一化され、かつ式(S1)で表わされるシランカップリング剤によりシリカと結合した3種類のポリマーの動きが抑制される結果、ウェットグリップ性能とともに低燃費性能が向上していると考えられる。従って、本発明では、本願所定のスチレンブタジエンゴム(1)と、スチレンブタジエンゴム(2)と、スチレンブタジエンゴム(3)又はブタジエンゴムと、シランカップリング剤と、芳香族系樹脂とを併用することにより、これらの性能バランスが顕著に(相乗的に)改善されるものと考えられる。
なお、本発明において、スチレンブタジエンゴム(3)とブタジエンゴムは同様に機能するため、例えばスチレンブタジエンゴム(3)を配合した場合でも、ブタジエンゴムを配合した場合と同様の効果が得られる。
【0012】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、スチレン量15〜30質量%及び重量平均分子量10〜30万のスチレンブタジエンゴム(1)(SBR(1))、スチレン量35〜55質量%及び重量平均分子量60〜85万のスチレンブタジエンゴム(2)(SBR(2))、並びに、スチレン量5質量%以下及び重量平均分子量30〜55万のスチレンブタジエンゴム(3)(SBR(3))又は重量平均分子量30〜55万のブタジエンゴム(BR)を含有する。
【0013】
SBR(1)、SBR(2)、SBR(3)として使用できるSBRは特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。
【0014】
SBR(1)のスチレン量は、15質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは22質量%以上である。15質量%以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記スチレン量は、30質量%以下、好ましくは28質量%以下である。30質量%以下であると、発熱が小さくなり、良好な低燃費性能が得られる。
なお、本明細書において、スチレン量は、H
1−NMR測定により算出される。
【0015】
SBR(1)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上、好ましくは12万以上である。10万以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記Mwは、30万以下、好ましくは20万以下、より好ましくは18万以下である。30万以下であると、良好な低燃費性能が得られる。
なお、本明細書において、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0016】
SBR(1)のビニル量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、上記ビニル量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0017】
SBR(2)のスチレン量は、35質量%以上、好ましくは38質量%以上である。35質量%以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記スチレン量は、55質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。55質量%以下であると、発熱が小さくなり、良好な低燃費性能が得られる。
【0018】
SBR(2)の重量平均分子量(Mw)は、60万以上、好ましくは65万以上である。60万以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記Mwは、85万以下、好ましくは80万以下、より好ましくは75万以下である。85万以下であると、良好な低燃費性能が得られる。
【0019】
SBR(2)のビニル量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、上記ビニル量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0020】
SBR(3)のスチレン量は、5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。また、上記スチレン量の下限は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%、より好ましくは1質量%である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる。
【0021】
SBR(3)の重量平均分子量(Mw)は、30万以上、好ましくは35万以上である。30万以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記Mwは、55万以下、好ましくは50万以下、より好ましくは45万以下である。55万以下であると、良好な低燃費性能が得られる。
【0022】
SBR(3)のビニル量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、上記ビニル量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0023】
SBR(1)、SBR(2)、SBR(3)はそれぞれ、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよいが、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、変性SBRであることが好ましい。
【0024】
変性SBRとしては、シリカやカーボンブラック等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0025】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0026】
本発明のゴム組成物は、SBR(1)、SBR(2)、SBR(3)以外のSBRを含んでもよい。
SBR(1)、SBR(2)、SBR(3)等のSBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0027】
ゴム成分100質量%中のSBR(1)の含有量は、40質量%以上である。40質量%以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記含有量は、55質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。55質量%以下であると、良好な低燃費性能が得られる。
【0028】
ゴム成分100質量%中のSBR(2)の含有量は、20質量%以上、好ましくは25質量%以上である。20質量%以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。また、上記含有量は、40質量%以下、好ましくは35質量%以下である。40質量%以下であると、良好な低燃費性能が得られる。
【0029】
ゴム成分100質量%中のSBR(3)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%以上であると、より良好な低燃費性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは20質量%以下である。20質量%以下であると、より良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
【0030】
上記BRとして使用できるBRは特に限定されず、例えば、高シス含量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
【0031】
上記BRの重量平均分子量(Mw)は、30万以上、好ましくは35万以上である。30万以上であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。上記Mwは、55万以下、好ましくは50万以下、より好ましくは45万以下である。55万以下であると、良好な低燃費性能が得られる。
【0032】
上記BRのビニル量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。上記ビニル量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0033】
上記BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよいが、本発明の効果がより良好に得られるという理由から、変性BRであることが好ましい。
変性BRとしては、上述の変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0034】
本発明のゴム組成物は、上記BR以外のBRを含んでもよい。
上記BR等のBRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0035】
ゴム成分100質量%中の上記BRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%以上であると、より良好な低燃費性能が得られる傾向がある。また、上記含有量は、好ましくは20質量%以下である。20質量%以下であると、より良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
【0036】
ゴム成分100質量%中のSBR(3)及びBRの合計含有量は、10質量%以上、好ましくは15質量%以上である。10質量%以上であると、良好な低燃費性能が得られる。また、上記合計含有量は、20質量%以下である。20質量%以下であると、良好なウェットグリップ性能が得られる。
【0037】
SBR、BR以外に本発明で使用できるゴム成分としては、イソプレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。これらジエン系ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、低燃費性能をより改善できるという理由から、イソプレン系ゴムが好ましい。
【0038】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上である。また、上記含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0040】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、5m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上が更に好ましく、100m
2/g以上が特に好ましい。5m
2/g以上であると、補強性が向上し、充分な耐摩耗性が得られる傾向がある。また、上記N
2SAは、200m
2/g以下が好ましく、150m
2/g以下がより好ましく、130m
2/g以下が更に好ましい。200m
2/g以下であると、カーボンブラックの良好な分散が得られやすく、良好な耐摩耗性、低燃費性能が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001によって求められる。
【0042】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは5ml/100g以上、より好ましくは50ml/100g以上、更に好ましくは100ml/100g以上である。5ml/100g以上であると、補強性が向上し、充分な耐摩耗性が得られる傾向がある。また、上記DBPは、好ましくは300ml/100g以下、より好ましくは200ml/100g以下、更に好ましくは130ml/100g以下である。300ml/100g以下であると、良好な耐摩耗性が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4:2001の測定方法によって求められる。
【0043】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0044】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは5質量部以上である。1質量部以上であると、十分な補強性を得ることができ、良好な耐摩耗性が得られる。また、上記含有量は、30質量部以下、好ましくは15質量部以下である。30質量部以下であると、良好な転がり抵抗が得られる。
【0045】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有する。シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0046】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0047】
シリカのチッ素吸着比表面積(N
2SA)は、70m
2/g以上が好ましく、150m
2/g以上がより好ましい。70m
2/g以上にすることで、耐摩耗性等がより向上する傾向がある。該シリカのN
2SAは、500m
2/g以下が好ましく、200m
2/g以下がより好ましい。500m
2/g以下にすることで、加工性がより改善される傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0048】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、45質量部以上である。45質量部以上であると、低燃費性能等が改善される。該含有量は、70質量部以下、好ましくは60質量部以下である。70質量部以下であると、加工性と低燃費性能のバランスが改善される。
【0049】
本発明のゴム組成物は、シリカと共に下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤を含有する。
【化2】
[式中、R
1001は−Cl、−Br、−OR
1006、−O(O=)CR
1006、−ON=CR
1006R
1007、−ON=CR
1006R
1007、−NR
1006R
1007及び−(OSiR
1006R
1007)
h(OSiR
1006R
1007R
1008)から選択される一価の基(R
1006、R
1007及びR
1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1〜4である。)であり、R
1002はR
1001、水素原子又は炭素数1〜18の一価の炭化水素基、R
1003はR
1001、R
1002、水素原子又は−[O(R
1009O)
j]
0.5−基(R
1009は炭素数1〜18のアルキレン基、jは1〜4の整数である。)、R
1004は炭素数1〜18の二価の炭化水素基、R
1005は炭素数1〜18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。]
【0050】
上記式(S1)において、R
1005、R
1006、R
1007及びR
1008はそれぞれ独立に、炭素数1〜18の直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R
1002が炭素数1〜18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖、環状もしくは分枝のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R
1009は直鎖、環状又は分枝のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R
1004は例えば炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数5〜18のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数7〜18のアラルキレン基を挙げることができる。前記アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び枝分かれ状のいずれであってもよく、前記シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR
1004としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0051】
上記式(S1)におけるR
1002、R
1005、R
1006、R
1007及びR
1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
上記式(S1)におけるR
1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0052】
上記式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。なかでも、加工性と低燃費性能の両立の点で、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。上記シランカップリング剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲において、前記式(S1)で表されるシランカップリング剤以外のシランカップリング剤を更に添加してもよい。
【0054】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社(NXT等)、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0055】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上であり、5質量部以上が好ましい。3質量部以上であると、シランカップリング剤を配合したことによる効果が得られる。また、上記含有量は、15質量部以下であり、10質量部以下が好ましい。15質量部以下であると、配合量に見合った効果が得られ、良好な混練時の加工性が得られる。
【0056】
本発明のゴム組成物は、芳香族系樹脂を含む軟化剤成分を含有する。本発明において、軟化剤成分とは、アセトンに可溶な成分を意味し、具体的には、芳香族系樹脂の他、プロセスオイルや植物油脂等のオイル、液状ジエン系重合体、ポリテルペン樹脂等が挙げられる。
【0057】
芳香族系樹脂とは、構成成分として芳香族化合物を含むポリマーである。芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
【0058】
芳香族系樹脂としては、例えば、α−メチルスチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペン芳香族樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより良好に得られる点から、α−メチルスチレン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂が好ましく、α−メチルスチレン系樹脂がより好ましい。
α−メチルスチレン系樹脂としては、α−メチルスチレン単独重合体や、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体等が挙げられる。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物(好ましくはスチレン誘導体、より好ましくはスチレン)で変性して得られる樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。テルペン芳香族樹脂としては、テルペン化合物と芳香族化合物(好ましくはスチレン誘導体、フェノール化合物、より好ましくはスチレン)とを共重合した樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。
【0059】
α−メチルスチレン系樹脂としては、例えば、SYLVARES SA85(SYLVATRAX 4401)、SA100、SA120、SA140(アリゾナケミカル社製)、FTR0100、2120、2140、7100(三井化学(株)製)等が挙げられる。クマロンインデン樹脂としては、G−90、V−120(日塗化学(株)製)、NOVARES C10、C30、C70、C80、C90、C100、C120、C140、C160(Rutgers Chemicals社)等が挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、YSレジン TO85、TO105、TO115、TO125、クリアロン M125、M115、M105、K100、K4100(ヤスハラケミカル(株)製)等が挙げられる。テルペン芳香族樹脂としてはYSポリスター U130、U115、T160、T145、T130、T115、T100、T80、T30、S145、G150、G125、N125、K125、TH130、UH115(ヤスハラケミカル(株)製)、タマノル803L、901(荒川化学工業(株)製)、SYLVARES TP95、TP96、TP300、TP2040、TP2019、TP2040HM、TP7042、TP105、TP115(アリゾナケミカル社製)等が挙げられる。
【0060】
芳香族系樹脂の軟化点は、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは160℃以下、より好ましくは130℃以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本発明において、軟化点は、JIS K 6220−1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0061】
芳香族系樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2質量部以上、好ましくは4質量部以上である。また、上記含有量は、10質量部以下、好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0062】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果が良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましい。
【0063】
液状ジエン系重合体としては、重量平均分子量が50000以下のジエン系重合体であれば特に限定されず、例えば、スチレンブタジエン共重合体(ゴム)、ブタジエン重合体(ゴム)、イソプレン重合体(ゴム)、アクリロニトリルブタジエン共重合体(ゴム)等が挙げられる。なかでも、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)が好ましい。
【0064】
液状ジエン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上である。Mwが1000未満では、耐摩耗性能が低下する傾向がある。また、Mwは、好ましくは50000以下、より好ましくは20000以下、更に好ましくは15000以下である。Mwが50000を超えると、雪氷上性能、特に初期雪氷上性能が低下する傾向がある。また、ゴム成分との分子量の差が小さくなり、軟化剤としての効果が発揮されにくい傾向がある。
【0065】
ポリテルペン樹脂としては、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。
【0066】
軟化剤成分の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上である。また、上記含有量は、20質量部以下、好ましくは18質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0067】
軟化剤成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0068】
本発明のゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0069】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
【0070】
本発明のゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0071】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0072】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0073】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0074】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0075】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0076】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0077】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0078】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
【0079】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、本発明の効果が良好に得られる傾向がある。
【0080】
前記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;可塑剤、滑剤などの加工助剤;等を例示できる。
【0081】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0082】
本発明の空気入りタイヤは、上記トレッド用ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0083】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適に使用可能である。
【実施例】
【0084】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0085】
以下、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
NR:RSS#3
SBR1:変性SBR(下記製造例1で調製、スチレン量25質量%、ビニル量60質量%、Mw15万、SBR(1))
SBR2:変性SBR(下記製造例2で調製、スチレン量15質量%、ビニル量65質量%、Mw20万、SBR(1))
SBR3:変性SBR(下記製造例3で調製、スチレン量40質量%、ビニル量40質量%、Mw70万、SBR(2))
SBR4:変性SBR(下記製造例4で調製、スチレン量35質量%、ビニル量50質量%、Mw70万、SBR(2))
BR:変性BR(下記製造例5で調製、ビニル量10質量%、Mw40万)
カーボンブラック:N
2SA111m
2/g、DBP吸収量115ml/100g
シリカ:N
2SA175m
2/g
シランカップリング剤1:モメンティブ社製のNXT(3−オクタノイルチオ−1−プロピルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤2:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:ナフテン系プロセスオイル
樹脂1:アリゾナケミカル社製のSYLVATRAX 4401(α−メチルスチレン系樹脂(α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点85℃、Tg43℃)
樹脂2:ヤスハラケミカル(株)製のTO125(芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂をスチレンで変性)、軟化点125℃、Tg80℃)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
加硫促進剤DPG:N,N′−ジフェニルグアニジン
【0086】
(製造例1)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3−ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n−ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性SBR(SBR1)を得た。
【0087】
(製造例2)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3−ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n−ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性SBR(SBR2)を得た。
【0088】
(製造例3)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、スチレン、及び1,3−ブタジエンを仕込んだ。反応器の内容物の温度を20℃に調整した後、n−ブチルリチウムを添加して重合を開始した。断熱条件で重合し、最高温度は85℃に達した。重合転化率が99%に達した時点でブタジエンを追加し、更に5分重合させた後、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを変性剤として加えて15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性SBR(SBR3)を得た。
【0089】
(製造例4)
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、ヘキサン、1,3−ブタジエン、スチレン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテルを投入した。次に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン及びn−ブチルリチウムを、それぞれ、シクロヘキサン溶液及びn−ヘキサン溶液として投入し、重合を開始した。
撹拌速度を130rpm、反応器内温度を65℃とし、単量体を反応器内に連続的に供給しながら、1,3−ブタジエンとスチレンの共重合を3時間行った。次に、得られた重合体溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドを添加し、15分間反応を行った。重合反応終了後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールにより乾燥して変性SBR(SBR4)を得た。
【0090】
(製造例5)
窒素雰囲気下、メスフラスコに3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシランを入れ、さらに無水ヘキサンを加えて、末端変性剤を作成した。
充分に窒素置換した耐圧容器にn−ヘキサン、ブタジエン、TMEDAを加え、60℃に昇温した。次に、ブチルリチウムを加えた後、50℃に昇温させ3時間撹拌した。次に、上記末端変性剤を追加し30分間撹拌を行った。反応溶液にメタノール及び2,6−tert−ブチル−p−クレゾールを添加後、反応溶液をメタノールが入ったステンレス容器に入れて凝集体を回収した。得られた凝集体を24時間減圧乾燥させ、変性BRを得た。
【0091】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製のバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で10分間プレス加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造した。得られた試験用タイヤを用いて下記に示す評価を行い、結果を表1に示した。
【0092】
(低燃費性能)
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した(低燃費性能指数)。指数が大きいほど、低燃費性能に優れることを示す。
【0093】
(ウェットグリップ性能)
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、比較例1を100とした時の指数で表示した(ウェットグリップ性能指数)。指数が大きいほど制動距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0094】
【表1】
【0095】
表1より、所定のゴム成分と、シリカと、所定のシランカップリング剤と、カーボンブラックと、所定の軟化剤成分とをそれぞれ所定量含有する実施例は、低燃費性能及びウェットグリップ性能をバランス良く改善できることが明らかとなった。