特許第6897249号(P6897249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897249
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】溶解炉のノロ取り装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/10 20060101AFI20210621BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20210621BHJP
   F27D 3/15 20060101ALI20210621BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F27B3/10
   F27B3/18
   F27D3/15 S
   F27D21/00 N
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-76544(P2017-76544)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-179348(P2018-179348A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河邑 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】岩本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 明
(72)【発明者】
【氏名】牧野 明男
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜也
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−273872(JP,A)
【文献】 特開2011−033315(JP,A)
【文献】 特開平05−240588(JP,A)
【文献】 特開2010−142812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/10
F27B 3/18
F27D 3/15
F27D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心軸を有し、溶湯を収容する縦型の溶解炉と、
先端部にツールを保持するハンド装置が装着されたアーム機構と、前記アーム機構に連結され、前記アーム機構を旋回駆動する胴部とを備えた産業用ロボットと、
前記ツールの軸線が上下方向となるように前記ツールが縦置きで設置される縦置きツール台と、
前記ツールの軸線が水平方向となるように前記ツールが横置きで設置される横置きツール台と、
前記溶解炉から回収されたノロを収容するノロ回収部材とを備えた溶解炉のノロ取り装置であって、
前記溶解炉と前記横置きツール台とが、前記産業用ロボットの前記胴部の旋回中心軸を中心として三角形状に設置されており、
前記縦置きツール台が前記横置きツール台に対して前記産業用ロボット側に設置されており、
前記縦置きツール台に設置されたツールを縦置きツールとした場合に、前記縦置きツールが前記溶解炉からノロを取るためのノロ取り用ツールとして構成されており、
前記横置きツール台に設置されたツールを横置きツールとした場合に、前記横置きツールが前記溶湯への添加剤投入用ツールとして構成されており、
前記添加剤投入用ツールが、添加剤を収容する容器を有し、前記容器が、前記横置きツール台に対して前記溶解炉と反対側に設置されており、
前記ノロ回収部材が、前記縦置きツール台に対して前記溶解炉と反対側に設置されていることを特徴とする溶解炉のノロ取り装置。
【請求項2】
前記溶解炉は、溶湯を出する排出口を備えており、
前記排出口は、前記産業用ロボットの平面視において、前記旋回中心軸に対する前記アーム機構の旋回域の接線方向に対して外方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の溶解炉のノロ取り装置。
【請求項3】
前記溶解炉に金属材料を投入する投入装置を有し、前記投入装置の搬送路は、前記アーム機構の旋回域の接線方向に対して外方に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶解炉のノロ取り装置。
【請求項4】
前記縦置きツール台は、前記胴部の揺動中心軸、前記溶解炉の中心軸および前記横置きツール台の任意の設置部位を結んだ三角形状の仮想線の外側に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶解炉のノロ取り装置。
【請求項5】
前記縦置きツール台は、前記胴部の揺動中心軸、前記溶解炉の中心軸および前記横置きツール台の任意の設置部位を結んだ三角形状の仮想線のうち、前記胴部の旋回中心軸と前記横置きツール台の任意の設置部位とを結んだ仮想線に対して、前記溶解炉と反対側で、かつ前記胴部の旋回中心軸と前記横置きツール台の任意の設置部位とを結んだ仮想線に沿うように、前記横置きツル台と並んで設置されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の溶解炉のノロ取り装置。
【請求項6】
前記縦置きツール台は、前記胴部の揺動中心軸、前記溶解炉の中心軸および前記横置きツール台の任意の設置部位を結んだ三角形状の仮想線のうち、前記胴部の旋回中心軸と前記横置きツール台とを結んだ仮想線に対して、前記溶解炉側に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶解炉のノロ取り装置。
【請求項7】
前記溶解炉の上方に前記溶解炉に収容された溶湯の湯面を検出する湯面検出装置が設置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の溶解炉のノロ取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解炉のノロ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解炉内の溶湯(溶融金属)に生ずるノロ(金属酸化物等の不純物、スラグ)を除去する産業用ロボットが知られている(特許文献1参照)。この産業用ロボットは、可動ハンドを操作し、可動ハンドを溶解炉に差し込んで溶解炉に付着したノロの除去を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−273872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の可動ハンドを有する産業用ロボットにあっては、可動ハンドで溶解炉に付着したノロを除去することができるが、ノロ取りに伴うその他の作業は自動化されていない。
【0005】
例えば、ノロ取りの前に溶解炉にノロを効果的に除去するための除滓剤を散布する作業は自動化されていない。さらに、ノロ取りおよびそれに伴う作業を産業用ロボットによって自動化するために必要な各装置等が適切に配置されていない。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、ノロ取り作業の作業性を向上できる溶解炉のノロ取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上下方向に延びる中心軸を有し、溶湯を収容する縦型の溶解炉と、先端部にツールを保持するハンド装置が装着されたアーム機構と、前記アーム機構に連結され、前記アーム機構を旋回駆動する胴部とを備えた産業用ロボットと、前記ツールの軸線が上下方向となるように前記ツールが縦置きで設置される縦置きツール台と、前記ツールの軸線が水平方向となるように前記ツールが横置きで設置される横置きツール台と、前記溶解炉から回収されたノロを収容するノロ回収部材とを備えた溶解炉のノロ取り装置であって、前記溶解炉と前記横置きツール台とが、前記産業用ロボットの前記胴部の旋回中心軸を中心として三角形状に設置されており、前記縦置きツール台が前記横置きツール台に対して前記産業用ロボット側に設置されており、前記縦置きツール台に設置されたツールを縦置きツールとした場合に、前記縦置きツールが前記溶解炉からノロを取るためのノロ取り用ツールとして構成されており、前記横置きツール台に設置されたツールを横置きツールとした場合に、前記横置きツールが前記溶湯への添加剤投入用ツールとして構成されており、前記添加剤投入用ツールが、添加剤を収容する容器を有し、前記容器が、前記横置きツール台に対して前記溶解炉と反対側に設置されており、前記ノロ回収部材が、前記縦置きツール台に対して前記溶解炉と反対側に設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、ノロ取り作業の作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置の平面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットおよび溶解炉の側面図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるツール保持棒の正面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるノロ取り用ツール本体の構成図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるサンプル取得用ツール本体の構成図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される除滓材散布用ツールの構成図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される添加剤投入用ツール本体の構成図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットのハンド装置の断面図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットのハンド装置に取付けられた第1の遮熱板をツールの軸線方向から見た図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットのハンド装置に取付けられた第2の遮熱板をツールの軸線方向から見た図である。
図11図11は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるノロ取り用ツール置き台の正面図である。
図12図12は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるノロ取り用ツール置き台の上面図である。
図13図13は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置されるツール置き台の側面図である。
図14図14は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される温度測定用ツールの構成図である。
図15図15は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置によって実行されるノロ取り作業の工程図である。
図16図16は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットがツール置き台からサンプル取得用ツールを取り出す状態を示す図である。
図17図17は、本発明の一実施例に係る溶解炉のノロ取り装置に設置される産業用ロボットが、ノロ取り用ツール置き台からノロ取り用ツールを取り出す状態およびノロ取り用ツール置き台にノロ取り用ツールを戻す状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る溶解炉のノロ取り装置は、上下方向に延びる中心軸を有し、溶湯を収容する縦型の溶解炉と、先端部にツールを保持するハンド装置が装着されたアーム機構と、アーム機構に連結され、アーム機構を旋回駆動する胴部とを備えた産業用ロボットと、ツールの軸線が上下方向となるようにツールが縦置きで設置される縦置きツール台と、ツールの軸線が水平方向となるようにツールが横置きで設置される横置きツール台と、溶解炉から回収されたノロを収容するノロ回収部材とを備えた溶解炉のノロ取り装置であって、溶解炉と横置きツール台とが、産業用ロボットの胴部の旋回中心軸を中心として形成される三角形状に設置されており、縦置きツール台が横置きツール台に対して産業用ロボット側に設置されており、縦置きツール台に設置されたツールを縦置きツールとした場合に、縦置きツールが溶解炉からノロを取るためのノロ取り用ツールとして構成されており、横置きツール台に設置されたツールを横置きツールとした場合に、横置きツールが溶湯への添加剤投入用ツールとして構成されており、添加剤投入用ツールが、添加剤を収容する容器を有し、容器が、横置きツール台に対して溶解炉と反対側に設置されており、ノロ回収部材が、縦置きツール台に対して溶解炉と反対側に設置されている。
これにより、ノロ取り作業の作業性を向上できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明に係る産業用ロボットの実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図17は、本発明に係る一実施例の産業用ロボットを示す図である。
【0012】
まず、構成を説明する。
図1図2において、ノロ取り装置100にはノロ取り用の産業用ロボット1、台座2、溶解炉3が設置されており、産業用ロボット1は、台座2に設置されている。台座2は、ノロ取り装置100が設置される地面から上方に延びており、産業用ロボット1は、地面よりも高所に設置されている。
【0013】
図2において、溶解炉3は、縦方向(上下方向)に延びる中心軸O1を有し、溶解炉3には、例えば、高温(一例として、1500℃程度)の溶湯4が収容可能となっている。本実施例の溶解炉3は、縦型の溶解炉から構成されている。
【0014】
図1において、溶解炉3には排出口3Aが設けられており、溶湯4は、排出口3Aを通して溶解炉3から排出される。溶解炉3は、図示しない駆動装置により中心軸O1が傾くように揺動自在となっており、傾いた状態で排出口3Aから溶湯4が排出される。
【0015】
溶湯4は、例えば、自動車の制動を行うためのディスクブレーキ、ブレーキドラム、あるいは、内燃機関のシリンダブロック等の材料となるアルミニウム合金や、鋼等の鉄系合金等であり、溶湯4を鋳造することにより、これら自動車部品が製造される。
【0016】
自動車部品の鋳造を行う場合に、溶湯4の内部に発生するノロを除去する必要がある。ノロは、溶湯4の表面が酸化することで発生し、溶湯4の表面に浮かぶ。ノロが残存した状態で自動車部品を鋳造した場合には、ノロが鋳物の中に入り込み、ノロ噛みと呼ばれる鋳造不良が生じる。このため、産業用ロボット1によってノロを除去する。
【0017】
図2において、産業用ロボット1は、胴部11を有する。胴部11は、台座2に載置された下側胴部12と、下側胴部12の上方において下側胴部12に連結される上側胴部13とを備えている。
【0018】
上側胴部13は、図示しないモータや減速機等を有する図示しない第1の駆動部により、下側胴部12に対して鉛直方向に延びる旋回中心軸L1回りに揺動される。
【0019】
胴部11の上側胴部13には第1の関節部14を介して第1のアーム部材15が連結されている。第1の関節部14には図示しないモータや減速機等を有する図示しない第2の駆動部が設けられており、第1のアーム部材15は、第2の駆動部によって水平方向に延びる揺動軸L2回りに揺動される。
【0020】
第1のアーム部材15には第2の関節部16を介して第2のアーム部材17が連結されている。第2の関節部16には図示しないモータや減速機等を有する図示しない第3の駆動部が設けられており、第2のアーム部材17は、第3の駆動部によって第1のアーム部材15に対して水平方向に延びる揺動軸L3回りに揺動、かつ、第2のアーム部材17の軸線L4回りに揺動される。
【0021】
第2のアーム部材17には第3の関節部18を介して第3のアーム部材19が連結されている。第3の関節部18には図示しないモータや減速機等を有する図示しない第4の駆動部が設けられている。
【0022】
第3のアーム部材19は、第4の駆動部によって第2のアーム部材17に対して水平方向に延びる揺動軸L5回りに揺動、かつ、第3のアーム部材19の軸線L6回りに揺動される。第3のアーム部材19の先端にはハンド装置21が設けられている。図2において、溶解炉3の輻射熱Hを斜線で示す。
【0023】
このように本実施例の産業用ロボット1は、複数の第1の関節部14、第2の関節部16および第3の関節部18を有する多軸の産業用ロボットから構成されており、第1のアーム部材15、第2のアーム部材17および第3のアーム部材19は、旋回中心軸L1を中心に揺動される。
【0024】
本実施例の第1の関節部14、第2の関節部16および第3の関節部18は、本発明の関節部を構成し、第1のアーム部材15、第2のアーム部材17および第3のアーム部材19は、本発明のアーム部材を構成する。
【0025】
第1の関節部14、第2の関節部16、第3の関節部18、第1のアーム部材15、第2のアーム部材17および第3のアーム部材19は、アーム機構30を構成している。第3のアーム部材19の先端にはハンド装置21が設けられており、ハンド装置21にはツール保持棒51(図3参照)が装着される。
【0026】
図3において、ツール保持棒51には、ノロ取り用ツール本体52A(図4参照)が着脱される。図4において、ノロ取り用ツール本体52Aは、棒状部52aと、棒状部52aの先端に形成され、ノロを引っ掛ける三叉形状のフィンガー部52bとを含んで構成される。
【0027】
ツールとしては、溶解炉3から溶湯4のサンプルを取るためのサンプル取得用ツール本体53A(図5参照)が設けられている。図5において、サンプル取得用ツール本体53Aは、棒状部53aと、棒状部53aの先端に取付けられ、サンプル用の溶湯4を収容するサンプル容器53bとを含んで構成される。
【0028】
ツールとしては、除滓剤散布用ツール本体54Aが設けられており(図6参照)、除滓剤散布用ツール本体54Aは、ノロを効果的に除去するための添加剤である除滓剤を溶解炉3に散布するツールである。
【0029】
図6において、除滓剤散布用ツール本体54Aは、棒状部54aと、棒状部54aの先端に取付けられ、除滓剤を収容する除滓剤容器54bとを含んで構成されており、除滓剤容器54bは、サンプル容器53bよりも大きく形成されている。
【0030】
ツールとしては、添加剤投入用ツール本体55Aが設けられており(図7参照)、添加剤投入用ツール本体55Aは、溶湯4の成分調整を行うための添加剤を溶解炉3に投入する。
【0031】
図7において、添加剤投入用ツール本体55Aは、棒状部55aと、棒状部55aの先端に取付けられ、添加剤を収容する添加剤容器55bとを含んで構成されており、添加剤容器55bは、サンプル容器53bよりも小さく形成されている。
【0032】
本実施例のツール保持棒51およびノロ取り用ツール本体52Aは、ノロ取り用ツール52を構成し、ツール保持棒51およびサンプル取得用ツール本体53Aがサンプル取得用ツール53を構成する。
【0033】
ツール保持棒51および除滓剤散布用ツール本体54Aは、除滓材散布用ツール54を構成し、ツール保持棒51および添加剤投入用ツール本体55Aは、添加剤投入用ツール55を構成する。
【0034】
ノロ取り用ツール52は、本発明の縦置きツールおよびノロ取り用ツールを構成し、除滓材散布用ツール54および添加剤投入用ツール55は、本発明の横置きツールを構成する。除滓剤容器54bおよび添加剤容器55bは、本発明の容器を構成する。本実施の形態の除滓剤は、本発明の添加剤を構成しており、滓材散布用ツール54は、添加剤投入用ツール55と共に本発明の添加剤投入用ツールを構成する。
【0035】
図3において、ツール保持棒51は、棒状に形成されており、細径部51Aと、細径部51Aよりも大径な大径部51B、51C、51D、51Eとを備えている。ツール保持棒51の内部には貫通孔51aが形成されており、貫通孔51aには後述するツール本体52Aから56Aの棒状部52aから56aが嵌合される。これにより、ツール保持棒51に各ツール52から56が装着される。
【0036】
大径部51CにはV字形状の切り込み51m、51nが形成されており、切り込み51m、51nは、ツール保持棒51の軸線を挟んで対向している。
図8において、ハンド装置21は、把持部22および駆動部23を備えている。把持部22は、一対のフィンガー部材24、25を備えている。駆動部23は、シリンダ部材27を備えている。
【0037】
フィンガー部材24、25は、ツール保持棒51の大径部51Cの切り込み51m、51nに嵌合され、ツール保持棒51の大径部51B、大径部51Dを両側から挟持する。
【0038】
フィンガー部材24、25は、シリンダ部材27によってツール保持棒51を把持する把持位置とツール保持棒51の把持を解除する解除位置との間に移動自在に構成されている。
【0039】
ハンド装置21は、筒状のケース39を備えており、ケース39は、シリンダ部材27の周囲を覆うように固定されている。
【0040】
ケース39にはフレーム41が固定されており(図8参照)、フレーム41は、シリンダ本体31からフィンガー部材24、25の先端に向かって延びている。フレーム41の先端には円板状の遮熱板42が設けられており、遮熱板42は、フィンガー部材24、25の先端を覆っている。遮熱板42は、ケース39の前面を覆う大きさに形成されている。
【0041】
図2において、第3の関節部18に対向するケース39の根元には円板状の遮熱板43が設けられており、遮熱板43は、遮熱板42と第3の関節部18との間において第3のアーム部材19を取り囲むようにして設けられている(図8参照)。
【0042】
図8において、遮熱板43は、積層方向の中央部に断熱板43Aが配置され、断熱板43Aを鉄板43B、43Cによって両側から挟んだ多層構造を有する。
【0043】
図2図10において、遮熱板43は、第3の関節部18を覆う大きさに形成されている。
図8において、遮熱板42の半径方向中央部には挿通穴42aが形成されている。
挿通穴42aは、ツール保持棒51の大径部51Bから51Dよりも大きい内径に形成されており、ツール保持棒51は、挿通穴42aを通してフィンガー部材24、25の間の空間に挿入される。
【0044】
図1において、ノロ取り装置100は、ノロ取り用ツール置き台61を有する。図11図12において、ノロ取り用ツール52は、そのツール保持棒51が上向きに高い位置なるようノロ取り用ツール置き台61に縦置き状態で設置されている。ノロ取り用ツール置き台61は、新品のノロ取り用ツール52が設置される新品ツール置き部61Aを有する。
【0045】
ノロ取り用ツール置き台61には新品ツール置き部61Aに隣接して使用済みツール置き部61Bが設けられており、使用済みツール置き部61Bにはノロを回収したノロ取り用ツール52が設置されている。使用済みツール置き部61Bにはノロ回収箱61Cが設けられている。
【0046】
使用済みツール置き部61Bに使用済みのノロ取り用ツール52が縦置きに設置された状態で、使用済みのノロ取り用ツール52が回収したノロ110(図17参照)がノロ回収箱61Cに回収される。本実施例のノロ回収箱61Cは、本発明のノロ回収部材を構成する。
【0047】
図1において、ノロ取り装置100は、ツール置き台62を有する。図16において、ツール置き台62にはサンプル取得用ツール53が横置きで設置されるサンプル取得用ツール置き部62Aと、除滓剤散布用ツール54が横置きで設置される除滓剤散布用ツール置き部62Bが設けられている。
【0048】
ツール置き台62は、添加剤投入用ツール55が設置される添加剤投入用ツール置き部62Cと、溶湯4の温度を測定する温度測定用ツール56が載置される温度測定用ツール置き部62Dが設けられている(図1参照)。
【0049】
図14において、温度測定用ツール56は、温度測定用ツール本体56Aを有し、温度測定用ツール本体56Aは、棒状部56aと、棒状部56の先端に取付けられた温度測定部56bとを備えている。
【0050】
温度測定部56bは、例えば、熱電対から構成されており、温度測定用ツール本体56Aは、温度測定部56bが測定した温度情報を無線によって図示しないコントローラに送信する。コントローラは、図示しない表示器に温度を表示し、作業者は、表示器に表示された温度に基づいて溶解炉3の温度の昇降を行う。
【0051】
本実施例のツール保持棒51および温度測定用ツール本体56Aは、温度測定用ツール56を構成する。また、本実施例のノロ取り用ツール52、サンプル取得用ツール53、除滓材散布用ツール54、添加剤投入用ツール55および温度測定用ツール56は、本発明のツールを構成する。
【0052】
図13において、除滓剤散布用ツール置き部62B、添加剤投入用ツール置き部62Cおよび温度測定用ツール置き部62Dは、上下方向に並んで設けられており、サンプル取得用ツール置き部62Aは、温度測定用ツール置き部62Dと横方向に並んで設けられている。本実施例のノロ取り用ツール置き台61は、本発明の縦置きツール台を構成し、ツール置き台62は、本発明の横置きツール台を構成する。
【0053】
図2において、溶解炉3の上方にはレーダ5が設けられている。レーダ5は、溶湯4の湯面にマイクロ波を照射し、溶湯4の湯面からの反射波を測定することにより、溶湯4の湯面の高さを測定する。
【0054】
産業用ロボット1は、レーダ5によって測定された溶湯4の湯面の高さ情報に基づいて、ハンド装置21の作業位置を修正する。本実施例のレーダ5は、本発明の湯面検出装置を構成する。
【0055】
図1において、産業用ロボット1の平面視、すなわち、ノロ取り装置100の平面視において、溶解炉3およびツール置き台62は、産業用ロボット1の胴部11の旋回中心軸L1を中心として三角形状に設置されている。ツール置き台61は、ツール置き台62に対して産業用ロボット1側に設置されている。
【0056】
サンプル取得用ツール53のサンプル容器53b、除滓剤散布用ツール54の除滓剤容器54b、添加剤投入用ツール55の添加剤容器55bは、ツール置き台62に対して溶解炉3と反対側に設置されている。
【0057】
産業用ロボット1の平面視において、溶解炉3の排出口3Aは、アーム機構30の旋回域の接線方向Rに対して外方に位置している。アーム機構30の旋回域とは、産業用ロボット1の旋回中心軸L1を中心とした半径方向おけるアーム機構30の旋回範囲である。
【0058】
ノロ取り装置100には溶解炉3に金属材料を投入するための投入装置102が設置されている。投入装置102は、仮想線で示すように搬送路103上を移動自在となっており、搬送路103は、アーム機構30の旋回域の接線方向Rに対して外方に配置されている。
【0059】
ノロ取り用ツール置き台61は、胴部11の揺動中心軸L1、溶解炉3の中心軸O1およびツール置き台62の任意の設置部位O2を結んだ三角形状の仮想線VLのうち、旋回中心軸L1とツール置き台62の任意部位O2とを結んだ仮想線VL1に対して溶解炉3の中心軸O1の反対側で、ツール置き台62と並んで設置されている。すなわち、ノロ取り用ツール置き台61は、仮想線VLの外側に設置されている。仮想線VLをなす三角形は、正三角形であってもよく、正三角形でなくともよい。
【0060】
ツール置き台62の任意の設置部位O2は、例えば、ハンド装置21による除滓剤散布用ツール54および添加剤投入用ツール55の把持位置および把持解除位置である。すなわち、任意の設置部位O2は、産業用ロボット1のハンド機構21がツール置き台62において最も遠くに設置されるツールの把持および把持解除可能な部位に設定されている。なお、任意の設置部位O2は、この部位に限定されるものではない。
【0061】
ノロ取り装置100には安全柵104が設置されており、安全柵104の内側には作業員が作業する作業エリア105が設置されている。図16において、安全柵104にはホッパー104A、104Bが設けられている。ホッパー104A、104Bは、それぞれ下端が添加剤容器55bと除滓剤容器54bとに向かって傾斜している。
【0062】
作業者は、安全柵104の外側において、ホッパー104A、104Bから添加剤容器55bおよび除滓剤容器54bに除滓剤および添加剤を投入可能となっている。
【0063】
作業エリア105において、作業員は、ノロ回収箱61Cから冷えたノロを回収する作業、ツール52から56を交換する作業やメンテナンス作業等のノロ取りに関する補助作業を行う。
【0064】
ノロ取り装置100には産業用ロボット1が取得した溶湯4のサンプルを成形するサンプル分析型6が設置されている。溶湯4は、サンプル分析型6で成形後に取り出され成分が解析される。
【0065】
次に、作用を説明する。
図15は、溶解工程のフローを示す図である。搬送路103を構成する投入装置102が仮想線で示す位置に移動して金属材料が溶解炉3に投入される。溶解炉3において金属材料の溶解が完了すると(工程1)、レーダ5によって溶湯4の湯面が検出される(工程2)。
【0066】
産業用ロボット1は、レーダ5が取得した溶湯4の湯面の情報に基づいてハンド装置21の作業位置を修正する。湯面の検出が終了すると、産業用ロボット1は、溶湯4のサンプリングを行う(工程3)。
【0067】
溶湯4のサンプリングを行う場合には、アーム機構30の姿勢制御により、ハンド装置21を待機位置からツール置き台62に移動させる。
【0068】
ハンド装置21は、横方向からツール置き台62に接近し、サンプル取得用ツール置き部62Aに横置きに設置されたサンプル取得用ツール53のツール保持棒51を把持する(図16参照)。
【0069】
具体的には、産業用ロボット1は、ハンド装置21を横向きに移動させ、ハンド装置21を横方向からツール保持棒51に接近させ、遮熱板42の挿通穴42aを通してフィンガー部材24、25の間にツール保持棒51を挿入し、フィンガー部材24、25がツール保持棒51の切り込み51m、51nに嵌合するとともに、ツール保持棒51の大径部51B、51Dを挟持する。これにより、ツール保持棒51を保持した状態でフィンガー部材24、25に強固に保持される。
【0070】
次いで、産業用ロボット1は、サンプル取得用ツール置き部62Aから溶解炉3にハンド装置21を移動させた後、溶解炉3にサンプル容器53bを投入して溶湯4の一部をサンプル容器53bに収容する。
【0071】
産業用ロボット1は、溶湯4の一部をサンプル容器53bに収容した後、ハンド装置21をサンプル分析型6に移動させてサンプル容器53bに収容されたサンプル用の溶湯をサンプル分析型6に投入する。
【0072】
次いで、産業用ロボット1は、ハンド装置21をサンプル取得用ツール置き部62Aに移動させ、サンプル取得用ツール53をサンプル取得用ツール置き部62Aに横置きで設置し、フィンガー部材24、25からツール保持棒51を外す。
【0073】
この後、産業用ロボット1は、ハンド装置21を横向きのまま移動させ、遮熱板42の挿通穴42aからツール保持棒51を引き抜いた後に、アーム機構30を待機位置に移動させて、次の作業まで待機する。
【0074】
サンプル分析型6において成形されたサンプルは、サンプル分析型6から取り出された後、例えば、発光分析によって解析され(工程4)、溶湯4が所望する成分となっていない場合には、成分調整する(工程5)。溶湯4の成分調整は、待機位置のアーム機構30の姿勢を制御し、ハンド装置21をツール置き台62に移動する。
【0075】
次いで、産業用ロボット1は、添加剤投入用ツール置き部62Cに横置きに設置された添加剤投入用ツール55のツール保持棒51を把持する。このとき、添加剤投入用ツール55の添加剤容器55bには添加剤が収容されている。
【0076】
次いで、ハンド装置21を溶解炉3に移動させて溶解炉3に添加剤111を投入した後、ハンド装置21を溶解炉3からツール置き台62に移動させ、添加剤投入用ツール55を添加剤投入用ツール置き部62Cに横置きで設置する。
【0077】
次いで、産業用ロボット1は、アーム機構30を待機位置に移動させる。次いで、産業用ロボット1は、溶湯4の温度を測定する(工程6)。溶湯の温度測定を行う場合には、ハンド装置21をツール置き台62に移動する。
【0078】
次いで、産業用ロボット1は、温度測定用ツール置き部62Dに横置きに設置された温度測定用ツール56のツール保持棒51を把持し、ハンド装置21を溶解炉3に移動させて溶解炉3の溶湯4に温度測定用ツール56を浸して溶湯4の温度を測定する。次いで、溶湯4の温度が所望する温度(一例として、1500℃)となるまで溶湯4を昇温した後(工程7)、溶湯4の温度を再度測定する(工程8)。
【0079】
溶湯4の温度が所望する温度となったら、ハンド装置21を溶解炉3からツール置き台62に移動させ、温度測定用ツール56を温度測定用ツール置き部62Dに横置きで設置する。
【0080】
次いで、産業用ロボット1は、溶湯4に除滓剤を散布する(工程9)。溶湯4に除滓剤の散布を行う場合には、待機位置のハンド装置21をツール置き台62に移動する。除滓剤散布用ツール54の除滓剤容器54bには作業者の作業によりホッパー104Bから除滓剤が収容されている。
【0081】
産業用ロボット1は、除滓剤散布用ツール置き部62Bに横置きに設置された除滓剤散布用ツール54のツール保持棒51を把持した後、ハンド装置21を溶解炉3に移動し、溶解炉3に除滓剤容器54bから除滓剤112を散布する。次いで、ハンド装置21を溶解炉3からツール置き台62に移動させ、除滓剤散布用ツール54を除滓剤散布用ツール置き部62Bに横置きで設置する。
次いで、産業用ロボット1は、ノロの荒取りを行う(工程10)。ノロの荒取りは、待機位置のハンド装置21をノロ取り用ツール置き台61に向かって移動する。
【0082】
このとき、産業用ロボット1は、ノロ取り用ツール置き台61の新品ツール置き部61Aに上方から接近し、新品ツール置き部61Aに縦置きに設置されたノロ取り用ツール52のツール保持棒51を把持した後、ハンド装置21を溶解炉3に移動し、ノロ取り用ツール52の三叉形状のフィンガー部52bを溶湯4に入れて溶湯4の表面に浮かんだノロをフィンガー部52bに引っ掛けて荒取りする。
【0083】
溶湯4には除滓剤が散布されており、溶湯4を撹拌することにより、溶湯4の表面に浮遊しているノロが除滓剤に効率よく付着し、ノロの一部を安定な固体酸化物に変化させて、溶湯4の表面から除去できる。
【0084】
次いで、ハンド装置21を溶解炉3からノロ取り用ツール置き台61に移動させ、ノロ取り用ツール52を使用済みツール置き部61Bに縦置きで設置する。このとき、ノロ取り用ツール52が回収したノロがノロ回収箱61Cに回収される(図17参照)。
【0085】
産業用ロボット1は、除滓剤の散布作業(工程11)とノロ取りの仕上げ作業(工程12)とを行った後に、溶解炉3から溶湯4を取り出す。産業用ロボット1は、除滓剤の散布作業とノロ取りの仕上げ作業を行うに当たって工程9、10と同じ姿勢制御で作業を行うので、説明を省略する。
【0086】
次いで、溶解炉3の中心軸O1を傾け、排出口3Aから溶湯4を排出して、一連のノロ取り作業を含んだ自動車部品の溶解作業を終了する。
【0087】
本実施例の溶解炉3のノロ取り装置は、上下方向に延びる中心軸O1を有し、溶湯4を収容する縦型の溶解炉3と、先端部にツール52から56を保持するハンド装置21が装着されたアーム機構30と、アーム機構30を旋回駆動する胴部11とを備えた産業用ロボット1とを有する。
【0088】
また、溶解炉3のノロ取り装置は、ノロ取り用ツール52の軸線が上下方向となるようにノロ取り用ツール52が縦置きで設置されるノロ取り用ツール置き台61と、サンプル取得用ツール53、除滓剤散布用ツール54、添加剤投入用ツール55および温度測定用ツール56の軸線が水平方向となるようにツール53から56が横置きで設置されるツール置き台62と、溶解炉3から回収されたノロを収容するノロ回収箱61Cとを備えている。
【0089】
溶解炉3およびツール置き台62は、産業用ロボット1の胴部11の旋回中心軸L1を中心として三角形状に設置されており、ノロ取り用ツール置き台61がツール置き台62に対して産業用ロボット1側に設置されている。
【0090】
除滓剤散布用ツール54は、除滓剤を収容する除滓剤容器54bを有し、添加剤投入用ツール55は、添加剤を収容する添加剤容器55bを有する。除滓剤容器54bおよび添加剤容器55bは、ツール置き台62に対して溶解炉3と反対側に設置されており、ノロ回収箱61Cは、ノロ取り用ツール置き台61に対して溶解炉3と反対側に設置されている。
【0091】
これにより、産業用ロボット1を用いてノロ取りを自動的に行うことができ、ノロ取り作業の作業性を向上できる。
【0092】
また、溶解炉3およびツール置き台62は、産業用ロボット1の胴部11の旋回中心軸L1を中心として三角形状に設置されており、ノロ取り用ツール置き台61がツール置き台62に対して産業用ロボット1側に設置されているので、産業用ロボット1によるノロ取り作業の作業効率を向上できる。
【0093】
具体的には、産業用ロボット1は、縦置き型のノロ取り用ツール置き台61に対しては縦方向から接近し、横置き型のツール置き台62に対しては横方向から接近するので、横置き型のツール置き台62に対するアーム機構30の移動距離よりも縦置き型のノロ取り用ツール置き台61の移動距離を短くできる。
【0094】
これにより、横置き型のツール置き台62よりも縦置き型のノロ取り用ツール置き台61を産業用ロボット1側に設けた方が産業用ロボット1の作業効率を上昇させることができる上に、縦置き型のノロ取り用ツール置き台61および産業用ロボット1の設置スペースを小さくできる。
【0095】
さらに、ノロ取り用ツール置き台61を産業用ロボット1に近づけることができる分だけ、ツール置き台62も産業用ロボット1に近づけて設置できる。このため、アーム機構30の可動距離を短くすることができる。
【0096】
したがって、ノロ取り用ツール52によるノロ取り、サンプル取得用ツール53によるサンプルの取得、除滓剤散布用ツール54による除滓剤の散布、添加剤投入用ツール55による添加剤の投入および温度測定用ツール56による温度測定の各種作業に要する時間を短縮して、ノロ取り作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0097】
また、ノロ取り用ツール置き台61およびツール置き台62を産業用ロボット1に近づけて設置することができるので、ノロ取り用ツール置き台61、ツール置き台62および産業用ロボット1の設置スペースを小さくでき、結果的にノロ取り装置100の設置スペースを小さくできる。
【0098】
さらに、除滓剤容器54bおよび添加剤容器55bがツール置き台62に対して溶解炉3と反対側に設置され、ノロ回収箱61Cがノロ取り用ツール置き台61に対して溶解炉3と反対側に設置されているので、作業エリア105において作業員が作業を行うときに、ノロ取り用ツール置き台61およびツール置き台62を遮熱部材として利用できる。
【0099】
また、本実施例の溶解炉3のノロ取り装置100によれば、溶解炉3が、溶湯4を排出する排出口3Aを備えており、排出口3Aは、産業用ロボット1の平面視において、旋回中心軸L1に対するアーム機構30の旋回域の接線方向Rに対して外方に位置している。
これにより、溶解炉3から排出口3Aを通して溶湯4を取り出すときに、溶湯4から産業用ロボット1を離すことができる。このため、産業用ロボット1が溶湯4の輻射熱Hに晒されることを防止して、産業用ロボット1を保護することができる。
【0100】
また、本実施例の溶解炉3のノロ取り装置は、溶解炉3に金属材料を投入する投入装置102を有し、投入装置102の搬送路103が、アーム機構30の旋回域の接線方向Rに対して外方に配置されている。
【0101】
これにより、アーム機構30の旋回時にアーム機構30が投入装置102に接触することを防止できる。このため、アーム機構30の旋回に制約を受けることを防止して、ノロ取り作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0102】
また、本実施例の溶解炉3のノロ取り装置は、ノロ取り用ツール置き台61が、三角形状の仮想線VLの外側に設置されている。これにより、アーム機構30がツール置き台62に近接するときに、高さの高いノロ取り用ツール置き台61がアーム機構30の動きを邪魔することがない。このため、ノロ取り作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0103】
また、本実施例の溶解炉3のノロ取り装置100によれば、ノロ取り用ツール置き台61は、三角形状の仮想線VLのうち、旋回中心軸L1とツール置き台62とを結んだ仮想線VL1に対して溶解炉3と反対側で、かつツール置き台62と並んで設置されている。
【0104】
これにより、作業エリア105に、ノロ取り用ツール置き台61、ノロ回収箱61C、ツール置き台62を集約でき、作業エリア105において作業員の移動範囲を少なくして、ノロの回収等のノロ取り補助作業を容易に行うことができる。
【0105】
また、ノロ取り用ツール置き台61およびツール置き台62に対するアーム機構30の移動領域を共通化することができ、ノロ取り作業時にアーム機構30の移動距離や移動時間を短縮できる。この結果、ノロ取り作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0106】
また、本実施例の溶解炉3のノロ取り装置は、溶解炉3の上方に溶解炉3に収容された溶湯4の湯面を検出するレーダ5が設置されている。これにより、溶湯4の湯面を正確に検知することができ、産業用ロボット1は、溶湯4の湯面に基づいて姿勢を補正することができる。
【0107】
なお、本実施例のノロ取り用ツール置き台61は、旋回中心軸L1とツール置き台62とを結んだ仮想線VL1に対して溶解炉3と反対側に設置されているが、仮想線VL1に対して、溶解炉3側に設置されてもよい。
【0108】
このようにすれば、仮想線VL1に対して溶解炉3と反対側にツール置き台61を設置した場合に比べて、ツール置き台62から溶解炉3までのアーム機構30の移動距離や移動時間を短縮でき、ノロ取り作業の作業性をより効果的に向上できる。
【0109】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0110】
1...産業用ロボット、3...溶解炉、3A...排出口、4...溶湯、5...レーダ(湯面検出装置)、11...胴部、21...ハンド装置、30...アーム機構、52...ノロ取り用ツール(ツール)、53...サンプル取得用ツール(ツール)、54...除滓剤散布用ツール(ツール、添加剤投入用ツール)、54b...除滓剤容器(容器)、55...添加剤投入用ツール(ツール)、55b...添加剤容器(容器)、56...温度測定用ツール(ツール)、61...ノロ取り用ツール(縦置きツール台)、61C...ノロ回収箱(ノロ回収部材)、62...ツール置き台(横置きツール台)、100...ノロ取り装置、102...投入装置、103...搬送路、L1...旋回中心軸、O1...中心軸(溶解炉の中心軸)、R...接線方向(旋回中心軸に対するアーム機構の旋回域の接線方向)、O2...横置きツール台の任意の設置部位、VL...仮想線(胴部の揺動中心軸、溶解炉の中心軸および横置きツール台の任意の設置部位を結んだ三角形状の仮想線)、VL1...仮想線(三角形状の仮想線のうち、胴部の旋回中心軸と横置きツール台とを結んだ仮想線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17